JP2017077571A - 鋳型用粘結剤含有砂及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳造に繰り返し使用しても鋳型強度の低減が抑制された鋳型用粘結剤含有砂を提供することを課題とする。【解決手段】人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含み、前記ブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂により上記課題を解決する。【選択図】図4

Description

本発明は、鋳型用粘結剤含有砂及びその製法に関する。更に詳しくは、本発明は、鋳造に繰り返し使用しても鋳型強度の低減が抑制された鋳型用粘結剤含有砂及びその製法に関する。
鋳物工業において鋳型を作る造形法の一つとして、例えばシェルモールド法がある。この方法は、粘結剤と必要に応じて硬化剤とを被覆した砂(レジンコーテッドサンド:RCS、鋳型用粘結剤含有砂)を予熱した金型に充填し、焼成して鋳型を作る方法である。
現在、シェルモールド法のような造型法に使用されている鋳型用粘結剤含有砂の骨材には、用途によってけい砂を始め様々なものがある。鋳型用粘結剤含有砂は、人工砂又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含んでいる。ここで、粘結剤には、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂)が用いられ、硬化剤(例えば、ヘキサメチレンテトラミン)も必要に応じて用いられる。
また、ブロッキング防止剤は、製品のブロッキング防止のために、又は鋳型用粘結剤含有砂を所望の鋳型の形状に成形しやすく(流動性の向上)するために用いられ、鋳物工業の分野ではステアリン酸カルシウムが一般的に使用されている。例えば、ブロッキング防止剤としてステアリン酸カルシウムを用いることが、特開2006−334612号公報(特許文献1)に記載されている。
特開2006−334612号公報
鋳物工業の分野においても、資源枯渇や産廃物規制の問題から、一旦鋳造に使用された鋳型廃砂を再生して、再度、鋳造に使用することで、廃棄される鋳型廃砂量を減少させることが検討されている。
鋳型廃砂には、ブロッキング防止剤や粘結剤成分に由来する炭化物及び無機物が含まれている。鋳型廃砂は、一般的に400〜1000℃の温度範囲で焙焼して焙焼砂を得、前記焙焼砂を乾式磨鉱して骨材に再生される(以下、再生砂と呼ぶ)。この再生砂を用いた場合、十分な鋳型強度が得られなかった。そのため、再生しても十分な鋳型強度を示し得る鋳型用粘結剤含有砂を提供することが望まれていた。
本発明の発明者等は、再生された鋳型用粘結剤含有砂により鋳型強度が低下する原因を検討したところ、再生砂から水に溶出するカルシウムイオン溶出濃度と鋳型強度との間に一定の関係が存在することを見い出した。具体的には、カルシウムイオン溶出濃度が大きいほど、鋳型強度が低下することが確認された。カルシウムイオンは、ブロッキング防止剤として使用されるステアリン酸カルシウムに由来するとの観点から、ブロッキング防止剤種を検討することで鋳型強度の低下が抑制可能であることを見い出し、発明者等は本発明に至った。
かくして本発明によれば、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含み、前記ブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂が提供される。
更に、本発明によれば、上記鋳型用粘結剤含有砂の製造方法であって、
鋳造後に生じる鋳型廃砂を400〜1000℃の温度範囲で焙焼して焙焼砂を得、前記焙焼砂を乾式磨鉱して骨材として再生する工程と、
前記骨材を粘結剤と必要に応じて硬化剤と混合する工程と、
前記粘結剤と骨材と必要に応じて硬化剤との混合物をブロッキング防止剤と混合する工程とを含むことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製法が提供される。
本発明の再生方法によれば、再生しても十分な鋳型強度を示し得る鋳型用粘結剤含有砂を提供できる。なお、発明者等は、鋳物工業の分野において、カルシウムイオンが鋳型強度の低減と関係していることが意外なことであり、脂肪酸アミドのブロッキング防止剤としての使用も、この分野では通常行われていなかったと認識している。
また、以下のいずれかの場合、再生してもより十分な鋳型強度を示し得る鋳型用粘結剤含有砂を提供できる。
(1)ブロッキング防止剤が、90℃以上の融点を示す脂肪酸アミドである。
(2)ブロッキング防止剤が、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド及びメチレンビスステアリン酸アミドから選択される。
(3)ブロッキング防止剤が、骨材と粘結剤と硬化剤との合計100質量部に対して、0.01〜10.0質量部含まれる。
(4)ブロッキング防止剤が、15%以下のブロッキング率を生じる量で含まれる。
実施例に使用した焙焼炉の概略説明図である。 実施例に使用したロータリーリクレマーの概略説明図である。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例1の鋳型用粘結剤含有砂の新砂使用時の曲げ強さと5回目の再生時の曲げ強さとの関係を示すグラフである。 実施例2の鋳型用粘結剤含有砂のエチレンビスステアリン酸アミド添加量とブロッキング率との関係を示すグラフである。 実施例3の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例3の鋳型用粘結剤含有砂の再生繰り返し数と、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度との関係を示すグラフである。 実施例3の鋳型用粘結剤含有砂の新砂使用時の曲げ強さと5回目の再生時の曲げ強さとの関係を示すグラフである。
(鋳型用粘結剤含有砂)
鋳型用粘結剤含有砂は、骨材と、粘結剤と、ブロッキング防止剤とを含む。
(1)ブロッキング防止剤
ブロッキング防止剤は、脂肪酸アミドである。
脂肪酸アミドには、炭素数6〜24の脂肪酸のアミドを使用できる。高級脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
脂肪酸アミドは、90℃以上の融点を有することが好ましい。より好ましい融点は120℃以上である。なお、融点は、JIS K 0064−1992に準じて測定できる。
好ましい脂肪酸アミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
ブロッキング防止剤は、脂肪酸アミドを主成分とし、400〜1000℃の温度範囲で焙焼して焙焼砂を得、前記焙焼砂を乾式磨鉱して得られる骨材を用いて鋳型用粘結剤含有砂を製造した場合、曲げ強さが低下しない程度にその他ブロッキング防止剤と併用できる。なお、主成分とは、例えば、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上又は100質量%を意味する。
上記脂肪酸アミドは、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材に粘結剤と必要に応じて硬化剤を被覆し、その最外面に存在することが望ましい。
上記脂肪酸アミドは、15%以下のブロッキング率を生じる量で含まれることが好ましい。ブロッキング率がこの範囲内であれば、鋳型用粘結剤含有砂に含まれる脂肪酸アミド量が鋳型用に適切であると判断できる。ブロッキング率が15%より大きい場合、流動性が十分でないため、鋳型が適切に製造できず、鋳物の表面に荒れが生じたりすることがある。また、鋳型用粘結剤含有砂が、製品を保存するフレコンバッグ等の内部でブロッキングしてしまう可能性が高くなる。
具体的な脂肪酸アミド含有量は、ブロッキング防止の観点から、骨材と粘結剤と硬化剤の合計100質量部あたり、0.01〜10.0質量部とすることができる。より好ましい含有量は0.02〜5.0質量部、更に好ましい含有量は0.03〜1.0質量部である。
なお、鋳型用粘結剤含有砂を構成するブロッキング防止剤種は、例えば、以下の手順で、確認できる。
即ち、まず、マイクロマニピュレータ(例えば、島津製作所社製マイクロマニピュレータシステムMMS−77)を用いて、鋳型用粘結剤含有砂の表面からブロッキング防止剤を採取する。得られた採取物を赤外分光分析法(例えば、SpectrumOne FT−IR/MultiScope マイクロスコープ赤外顕微鏡システム:パーキンエルマ社製)に付してIRチャートを得る。得られたIRチャートを、既知の脂肪酸アミドのIRチャートと比較することにより、ブロッキング防止剤種を確認できる。
また、鋳型用粘結剤含有砂を構成するブロッキング防止剤量は、適当な溶剤を用いてブロッキング防止剤を単離し、単離物を、分光分析法、ガスクロマトグラフィ法、液体クロマトグラフィ法等の公知の方法で分析することで測定できる。
(2)骨材
骨材は、人工砂及び/又は天然砂に由来する。人工砂及び天然砂は、特に限定されず、アルミナ砂、ケイ砂、ジルコン砂、クロマイト砂、MgO・SiO2系砂及びこれら砂の混合砂等が挙げられる。
アルミナ砂には、Al23以外にSiO2、Fe23、Cr23、CrO2、MgO、CaO、K2O、TiO2等の他の成分が含まれていてもよい。また、アルミナ砂は、Al23とSiO2とを含む合成ムライト及び/又は合成コランダムを含む人工砂であってもよい。
合成ムライト及び合成コランダムは、アルミナ(Al23)40〜90質量%、シリカ(SiO2)60〜10質量%から構成されていてもよい。またアルミナとシリカの割合は、それぞれ60〜90質量%と40〜10質量%であってもよい。合成ムライト及び合成コランダムには、アルミナ及びシリカ以外に、Fe23、Cr23、CrO2、MgO、CaO、K2O、TiO2等の他の成分が含まれていてもよい。人工砂に占める合成ムライト及び/又は合成コランダムの割合は、50質量%以上とすることができる。
更に、骨材は、6万/d〜180万/d(dは球状物の平均粒子径(μm))の範囲の単位体積あたりの表面積(cm2/cm3)を有することが好ましい。例えば、300〜425μmの範囲の骨材を例として説明する。この骨材の平均粒子径は300μmと425μmの中間の362.5μmであると仮定すると、表面積は165.5〜4965.5cm2/cm3の範囲となる。ここで、表面積が180万/d(cm2/cm3)以上の場合、骨材表面の凹凸が大きくなり、骨材相互の接触により骨材が破砕することによる廃棄物の発生量が増えるため好ましくない。この表面積は、比表面積測定器(BELSORP 28SA AUTOMATIC GAS ADSORPTION APPARATUS:日本ベル社製)を用いて単位gあたりの比表面積を測定し、その比表面積に真密度を積算することで得られた値である。単位体積あたりの表面積は、160万/d以下が好ましく、145万/d以下がより好ましく、130万/d以下が更に好ましく、110万/d以下が特に好ましい。
また、骨材は、丸い粒形を有することが好ましい。具体的には、丸さの指標である粒形係数が1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましい。1.2以下の場合、骨材の鋳型への充填率が向上し、かつ鋳型の通気性が向上する。更に、球に近い形状のため、骨材相互の接触により生じる廃棄物の発生量を減らすことができる。
なお、上記粒形係数は、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて算出した値を意味する。すなわち、粒形係数とは1g当たりの実際の骨材の表面積を理論表面積で割った値を意味する。理論表面積とは、骨材がすべて球であると仮定した場合の表面積をいう。従って、粒形係数が1に近いほど球に近い形状であることを表している。
骨材は、30〜1180μmの粒度分布を有していることが好ましい。30μmより小さい場合、鋳型の通気性が低下することがある。1180μmより大きい場合、鋳物の表面が荒れることがある。より好ましい粒度分布は、212〜1180μm(JIS10と14号相当)、150〜820μm(JIS20と28号相当)、106〜600μm(JIS35と48号相当)、75〜425μm(JIS65と100号相当)、53〜300μm(JIS150と200号相当)が挙げられる。これら粒度分布は、例えば鋳鉄又は鋳鋼品の種類(鋳鉄品、普通鋳鋼品、ステンレス鋳鋼品、高Mn鋼品、アルミ合金品、銅合金品等)、鋳物の大きさ、鋳物の肉厚等の鋳造条件に応じて適宜選択できる。骨材は、30μm未満の微小骨材を発明の効果が阻害されない範囲(例えば、25質量%以下)で含んでいてもよい。
粒度分布は、JISの鋳物砂の粒度試験方法(Z2601)に準じて測定した値をいう。この方法を概略説明すると、例えば、ふるいの呼び寸法が30μmのふるいの上に1180μmのふるいを重ね、1180μmのふるいの上に原料を載せ、ロータップ型ふるい機のようなふるい分け機械を使用し、2つのふるい間に残ったものを、粒度分布30〜1180μmの骨材と称する。
なお、骨材と鋳型用粘結剤含有砂の単位体積あたりの表面積、粒形係数及び粒度分布は、ほぼ同じである。
上記表面積を有する合成ムライト及び/又は合成コランダムを含む骨材は、アルミナとシリカを含む合成ムライト及び/又は合成コランダムの原料を溶融させ、溶融物にエアーを吹き付けることで得ることができる。つまり、溶融物はエアーを吹き付けられることで所定の粒度分布の粒子に溶融状態で風砕され、風砕後、溶融粒子自体の表面張力によって、所定の表面積の骨材となる。溶融方法は特に限定されず、アーク炉、るつぼ炉、誘導電気炉(高周波炉、低周波炉等)、抵抗式電気炉、反射炉、回転炉、真空溶解炉、キュポラ炉等が挙げられる。この内、操作が比較的簡便なアーク炉が好ましい。
合成ムライト及び/又は合成コランダムを含む骨材の粒度分布、外観等は、合成ムライト及び合成コランダムの原料の組成、溶融温度、エアー吹き付け時のエアー速度、溶融物とエアーとの接触角度で調整できる。ここで、溶融温度は、1600〜2200℃の範囲であることが好ましく、エアー速度は、80〜120m/secであることが好ましく、接触角度は、60〜90°であることが好ましい。
なお、エアー吹き付け後、水冷することが好ましい。
(3)粘結剤
粘結剤は、特に限定されず、フラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、ケイ酸ソーダー、ベントナイト等が挙げられる。粘結剤は、その種類に応じた硬化剤で硬化できる。フラン樹脂用の硬化剤としては、硫酸、リン酸、リン酸エステル、ピロリン酸等の無機酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。アルカリフェノール樹脂用の硬化剤としては、ラクトン類(例えば、プロピオンラクトン)、ギ酸エチル、ギ酸メチル、トリアセチン等の有機エステル等が挙げられる。フェノール樹脂用の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。フェノールウレタン樹脂用の硬化剤としては、トリエチルアミン、ピリジン系化合物等が挙げられる。ケイ酸ソーダー用の硬化剤としては、炭酸ガス、ダイカルシウムシリケート、有機エステル等が挙げられる。
粘結剤は、骨材100質量部あたり、0.4〜10質量部含まれていることが好ましい。含有量が0.4質量部未満の場合、骨材間の結合が十分でないため、鋳型強度が低下することがある。含有量が10質量部より多い場合、鋳物の表面に粘結剤由来成分が付着したり、鋳型廃砂の再生に時間がかかったりすることがある。より好ましい含有量は0.2〜2.0質量部であり、更に好ましい含有量は0.4〜3質量部である。
上記6万/d〜180万/d(dは球状物の平均粒子径(μm))の範囲の単位体積あたりの表面積を有する骨材は、粘結剤量を0.2〜2.0質量部に少なくすることができる。粘結剤量が少ない場合、カルシウムイオンが鋳型強度を低下させる影響がより大きくなるため、特に本発明の適用が有効である。
(4)鋳型用粘結剤含有砂の製造方法
鋳型用粘結剤含有砂は、公知の方法で製造できる。例えば、骨材をミキサー中で加温及び混合しつつ、ミキサー内に粘結剤を投入することにより、粘結剤と骨材との混合物を得る。ここで、粘結剤が硬化剤で硬化されるものである場合、硬化剤を混合する。次いで、ミキサー内にブロッキング防止剤を投入することにより、粘結剤と必要に応じて硬化剤とで被覆した骨材の最外面にブロッキング防止剤を存在させることができる。なお、粘結剤及び硬化剤は、骨材の全表面又は一部表面を被覆していると考えられる。また、ブロッキング防止剤は、粘結剤及び硬化剤で被覆された骨材の全表面又は一部表面を被覆していると考えられる。
なお、ブロッキング防止剤の投入量と、鋳型用粘結剤含有砂中のブロッキング防止剤の含有量とは、ほぼ同じであることを確認している。
脂肪酸アミドをブロッキング防止剤とした鋳型用粘結剤含有砂を用いて鋳造した後に生じる鋳型廃砂由来の再生砂を使用する場合は、例えば以下の焙焼工程と磨鉱工程を経ることで、鋳型廃砂を再生砂に変えることができる。
(i)焙焼工程
焙焼工程は、400〜1000℃の範囲の温度下で行うことができる。鋳型廃砂を焙焼工程に付すことで、鋳型廃砂に含まれるブロッキング防止剤及び粘結剤に由来する成分が炭化すると共に焼失する。次の磨鉱工程で、骨材表面の残留物を除去して再生砂を得ることができる。ここで、従来のブロッキング防止剤としてのステアリン酸カルシウムに由来するカルシウム分は、砂表面に蓄積していく。このカルシウム分は、磨鉱工程を経ても完全に取り除くことができない。
焙焼工程の温度が400℃より低い場合、十分に炭化及び焼失できないことがあり、その結果、再生された鋳型用粘結剤含有砂(再生砂)による鋳型強度が低下することがある。また、1000℃より高い場合、炭化及び焼失は十分行えるが、再生砂を構成する無機成分の種類によっては、再生砂の表面が溶融することで砂同士が凝集することがある。より好ましい温度範囲は400〜800℃、更に好ましい温度範囲は500〜800℃である。
焙焼時間は、例えば、0.5〜2.5時間とすることができる。焙焼時間が、0.5時間未満の場合、十分に炭化及び焼失できないことがあり、その結果、再生砂による鋳型強度が低下することがある。ここで、焙焼時間の上限を2.5時間とした理由は、それ以上の長時間鋳型廃砂を焙焼しても、焙焼による効果を期待できず、燃料の消費により再生コストが掛かることがあるからである。より好ましい焙焼時間は1.5〜2.5時間であり、更に好ましい焙焼時間は1.75〜2.25時間である。
焙焼工程の雰囲気は、鋳型廃砂に含まれる粘結剤を炭化及び焼失できさえすれば、特に限定されず、通常、酸素を含有する雰囲気中(例えば、空気中)で行われる。
焙焼装置は、鋳型廃砂を焙焼できさえすれば、その構成は特に限定されない。焙焼装置内の鋳型廃砂は、流動していてもしていなくてもよいが、均一に焙焼された焙焼砂を得るために、流動していることが好ましい。焙焼装置は、バッチ式でも、連続式でもよい。処理効率を考慮すると、連続式の流動焙焼装置を使用することが好ましい。
連続式の流動焙焼装置には、種々の構成の装置が知られている。例えば、砂が流れる方向と砂を流動させるための空気が流れる方向とが交差する構成の装置、両方向が対向しかつ平行な構成の装置が挙げられる。この内、熱効率を考慮すると後者の装置が好ましい。特に、砂が流れる方向が重力の方向と同じであり、空気が流れる方向が重力の方向と逆方向である構成の装置は、熱効率が高く、焙焼用の燃料を低減できるため好ましい。
砂が流れる方向が重力の方向と同じである上記の装置では、装置上部から鋳型廃砂が投入され、装置内部を落下する。落下した砂は、装置下部から吹き上げる空気により一定位置に流動層として一定時間保持される。一定位置に保持された砂は、バーナーのような加熱手段により一定時間焙焼される。流動層の下部に位置する砂は、流動層の上部に供給される砂により、徐々に位置が下がり、装置底部に焙焼砂として落下することになる。この装置では、流動層内で、既に焙焼された砂の熱を、新たに投入される鋳型廃砂の加熱に使用できるので、熱効率が高いという特徴を有する。
(ii)磨鉱工程
焙焼工程で得られた焙焼砂は、磨鉱工程に付される。磨鉱工程により、焙焼砂の表面に存在する残留物を除去することで鋳型廃砂を骨材に再生できる。
磨鉱は、乾式磨鉱でも、湿式磨鉱でも、両磨鉱を組み合わせてもよい。
乾式法には、砂を高速気流により装置内で上昇させ、衝突板に衝突させることによって、砂粒相互の衝突と摩擦により磨鉱処理するサンドリクレマー、高速回転するロータ上に砂を投入し、その遠心力で生ずる投射砂と落下する投入砂との間で起こる衝突と摩擦によって磨鉱処理する高速回転するロータリーリクレマー、砂粒同士の摩擦を利用して磨鉱処理するアジテーターミル等を用いた方法が挙げられる。
一方、湿式法には、例えば、羽を回転させたトラフ内の砂粒相互の摩擦によって磨鉱処理するトラフ磨鉱機を用いた方法が挙げられる。
磨鉱は乾式であることが好ましい。乾式であることで、水資源の乏しい場所においても鋳型用粘結剤含有砂を製造することが可能となる。更に、排水の処理を行う必要がないため、環境への影響を抑制できる。
ところで、ブロッキング防止剤としてステアリン酸カルシウムを使用した従来の鋳型用粘結剤含有砂では、乾式で磨鉱する場合、鋳型廃砂から鋳型用粘結剤含有砂への再生を繰り返すと、鋳型強度が低下するという課題があった。発明者等は、再生砂のカルシウム量を測定したところ、再生を繰り返すごとに、カルシウム量が増加しており、カルシウム量と鋳型強度との間に一定の関係が存在することを見い出した。そこで、発明者等は、ブロッキング防止剤としてカルシウムを含まない脂肪酸アミドを使用すれば、磨鉱を乾式で行っても、再生砂へのカルシウムの蓄積を抑制できるので、鋳型強度の低下を防止できることを見い出している。
乾式磨鉱は、焙焼砂の表面に存在する炭化物を除去できさえすれば、その条件は特に限定されない。
(iii)その他
(1)焙焼工程に付す前に鋳型廃砂を粉砕機にかけてもよい。粉砕機にかけることで、鋳型廃砂の凝集体を解砕できるので、鋳型廃砂から再生砂を取り出す収量を増やすことができる。
(2)焙焼工程に付す前に鋳型廃砂を磁気選別機(マグネットセパレータ)にかけてもよい。磁気選別機にかけることで、鋳型廃砂に含まれる鋳造残渣を除去できるので、鋳型廃砂から再生砂を取り出す収量を増やすことができる。
(3)焙焼工程から得られた焙焼砂は、磨鉱工程に付す前に、冷却工程に付すことが好ましい。冷却工程に付すことで、急激な温度変化により、焙焼砂の割れを防ぐことができるので、鋳型廃砂から再生砂を取り出す収量を増やすことができる。冷却工程は、焙焼砂を流動させつつ行うことで、焙焼砂の冷却を均一に行うことができる。
(4)磨鉱工程に付された砂を、分級工程に付すことで、所望の粒度分布の再生砂に分級してもよい。
実施例1
ブロッキング防止剤として、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド及びエチレンビスカプリン酸アミドをそれぞれ使用して、鋳型用粘結剤含有砂を以下の手順で作製し、曲げ強さ及びカルシウムイオン溶出濃度を測定した。
(1)鋳型用粘結剤含有砂の製造
骨材として、一度も鋳型用粘結剤含有砂として使用されていないエスパール#60〔山川産業社製:単位体積当たりの表面積3300cm2/cm3、粒度分布53〜600μm、粒形係数1.03、アルミナとシリカを合計で94質量%(アルミナ:シリカ=77質量%:23質量%)含み、合成ムライトを40質量%、合成コランダムを10質量%含む〕を使用した。このエスパール#60を新砂と称する。骨材を160℃に加熱した後、ミキサー(遠州鉄工社製NSC−1型)に入れ、骨材の温度を150℃に保持した。骨材100質量部に対して0.8質量部の粘結剤HP−333N(日立化成社製ノボラック系フェノール樹脂)を添加しつつ骨材を約60秒間攪拌することで、骨材に粘結剤を被覆した。次に、これらを攪拌しつつ、粘結剤100質量部に対して15質量部のヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)と、骨材100質量部に対して1.3質量部の水(硬化剤の分散媒)とを添加し約45秒間撹拌することで、骨材に粘結剤と硬化剤の混合物を被覆させた。次いで、粘結剤と硬化剤と骨材との混合物を攪拌しつつ、粘結剤と硬化剤と骨材との合計100質量部に対して0.06質量部のブロッキング防止剤を添加して、約15秒間攪拌することで、鋳型用粘結剤含有砂(RCS)を得た。なお、得られたRCSは、目開き1180μmのふるいを使ってダマを除去した。
得られたRCSを用いて、以下の手順で曲げ強さを測定した。曲げ強さは、鋳型強度を示す指標とした。
(2)曲げ強さの測定
(a)測定用テストピースの作製
JACT試験法SM−1曲げ強さ試験法に準じて、テストピースの曲げ強さを測定した。具体的な測定条件を下記する。
深さ10mm、幅10mm及び長さ60mmの凹部を5つ有する下金型と、その蓋としての上金型を用意した。下金型と上金型とを250℃±3℃に加熱した後、凹部を約50gの鋳型用粘結剤含有砂で満たした。凹部を満たした鋳型用粘結剤含有砂の上面は、平になるように試料かきとり板で均した。この後、下金型と上金型とを合わせて、60秒間焼成した。焼成後、上金型を取り、下金型の上面に焼成物の上面が合うように、平やすりで焼成物を削った。この後、焼成物を下金型から取り出すことによりテストピースを得た。なお、上金型を開いて、下金型からテストピースを取り出すまでの時間を30秒とした。
得られたテストピースは、デシケーター内で室温(約25℃)まで温度を下げ、曲げ強さの測定時までそのままにした。
上記テストピースの作製を3回行ない、1種類のRCSにつき計15本のテストピースを得た。
(b)曲げ強さ測定
60°の先端角度、1.5Rの最先端の曲率、長さ10mm以上の1対の凸部を、長さ方向が平行であり、間隔が50mmになるように配置したテストピース載置台に、テストピースを載置した。なお、テストピースは、載置台側及びその対向面(上面)側に、平やすりで削った面が位置しないように載置した。
テストピースの上面の中央に、60°の先端角度及び1.5Rの最先端の曲率を有する加圧クサビを用いて荷重を加えた。荷重を加えることで、テストピースが折れた時点の荷重値を記録した。この荷重試験を15本のテストピース毎に行った。
得られた荷重値から、以下の式により曲げ荷重を算出した。
σfb=3×l×P/2×W×h2
(式中、σfbは曲げ荷重(kgf/cm2)、lはテストピース載置台の1対の凸部の間隔(5cm)、Pは荷重値(kgf)、Wはテストピースの幅(1cm)、hはテストピースの高さ(1cm)である)
曲げ強さ(kgf/cm2)は、15本の曲げ荷重の平均値とした。
(3)鋳型用粘結剤含有砂の再生
上記曲げ強さを測定したテストピースを粉砕した後、粉砕物を焙焼工程及び乾式磨鉱工程に付すことで骨材に再生した。
なお、焙焼工程は、図1に示すJFE継手焙焼炉(JFE継手社製JTR−G−1型)を使用し、焙焼温度を600℃、焙焼炉内流動差圧を4.5MPa、砂投入量を2.5t/時間の条件で行った。なお、この条件では、鋳型廃砂の実処理時間は約1時間であった。図1中、1は焙焼炉、2は粉砕物投入口、3はバーナー、4は流動床、5は熱交換器、6は砂流動用空気入口、7は冷却用空気入口、8は流動クーラー、9は砂排出バルブ、10は空気ノズル、11は流動差圧計、12は排ガス出口を意味する。
乾式磨鉱は、図2に示すS型ロータリーリクレマー(日本鋳造社製)を使用し、電流負荷を20〜40A、砂投入量を2〜3t/時間とする条件で連続で行った。図2中、21はオリフィス、22はシェルフ、23はシェルフリング、24はロータリードラム、25はファン、26はモーター、27はキャップを意味する。
(4)再生されたRCSからの曲げ強さの測定
工程(1)と同様にしたRCSの製造、工程(2)と同様にした曲げ強さの測定、工程(3)と同様にしたRCSの再生を5回繰り返した。得られた曲げ強さを表1に示す。
また、表1には、新砂及び再生された骨材のカルシウムイオン(Ca2+イオン)溶出濃度を併せて示す。
(カルシウムイオン溶出濃度)
(1)内標準溶液及び標準溶液の作製
・内標準溶液(Y:50mg/L)
関東化学社製イットリウム標準原液(Y:1000mg/L、原子吸光分析用)25mLを全量フラスコ500mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Ca:100mg/L)
関東化学社製ICP発光分光分析用標準溶液IV(Ca:1000mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Ca:10mg/L)
標準溶液(Ca:100mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Ca:1mg/L)
標準溶液(Ca:10mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Ca:0.1mg/L)
標準溶液(Ca:1mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Ca:0.01mg/L)
標準溶液(Ca:0.1mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
(2)検量線の作成(測定範囲Ca:0〜10mg/L)
内標準溶液(Y:50mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、標準溶液(Ca:10mg/L)、標準溶液(Ca:1mg/L)、標準溶液(Ca:0.1mg/L)、標準溶液(Ca:0.01mg/L)をそれぞれ標線まで加えた。併せて、別に空試験として内標準溶液(Y:50mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた標準溶液を調整した。これらを島津製作所社製ICP発光分析装置(ICPS−8100)にて測定し、Ca濃度と指示値との関係線(検量線)を作成した。
(3)試料溶液の調整
供試砂50gを300mLポリエチレン製ビーカーにとり、精製水50mL及び0.1mol/L塩酸溶液50mLを加えマグネチックスターラーにて1時間攪拌する。攪拌後、JIS P 3801ろ紙(化学分析用)に規定されたガラス繊維ろ紙によりろ過した。ろ過後、溶液を再度、ADVANTEC社製メンブランフィルター(孔径0.45μm)にて吸引ろ過し、試料溶液(原液)とした。併せて、別に空試験として300mLポリエチレン製ビーカーに精製水50mL及び0.1mol/L塩酸溶液50mLをとり、同様の操作を行った。
(4)試料溶液の測定
内標準溶液(Y:50mg/L)10mLを全量フラスコ50mLにとり、試料溶液(原液)を標線まで加え、島津製作所社製ICP発光分析装置(ICPS−8100)にて測定した。得られたCa濃度と空試験の濃度の差をCa2+イオン溶出濃度とした。なお、Ca濃度が検量線の測定範囲を超える場合には、測定範囲内となるように試料溶液(原液)を精製水にて希釈、調整し、試料溶液(希釈液)を得、内標準溶液(Y:50mg/L)10mLを全量フラスコ50mLにとり、試料溶液(希釈液)を標線まで加え、再度、島津製作所社製ICP発光分析装置(ICPS−8100)にて測定し、Caの濃度を得た。試料溶液(希釈液)を測定した場合には、得られたCaの濃度と希釈率の積より空試験の濃度を差し引いた値をCa2+イオン溶出濃度とした。
表1に基づいて、再生繰り返し数(横軸)と、曲げ強さ及びCa2+イオン溶出濃度(縦軸)との関係を、各ブロッキング防止剤種毎に図3〜7に示す。図3はステアリン酸カルシウム、図4はエチレンビスステアリン酸アミド、図5はエチレンビスベヘン酸アミド、図6はエチレンビスラウリン酸アミド、図7はエチレンビスカプリン酸アミドをブロッキング防止剤とした結果である。また、各ブロッキング防止剤の新砂使用時の曲げ強さと5回目の再生時の曲げ強さとの関係を抜き出して図8にまとめた。図8中、Ca−Stはステアリン酸カルシウムを、StAはエチレンビスステアリン酸アミドを、BeAはエチレンビスベヘン酸アミド、LaAはエチレンビスラウリン酸アミド、CpAはエチレンビスカプリン酸アミドを意味する。
表1及び図3〜7から、ステアリン酸カルシウムは、再生を繰り返すたびに、曲げ強さが低下しているのに対して、脂肪酸アミドは、ほとんど変化していないことが判る。図3から、曲げ強さは、骨材に付着する二価のイオンであるカルシウムイオンの増加と共に低下している傾向がみられる。そのため、カルシウムイオンは、粘結剤に何らかの悪影響(例えば、カルシウムイオンと粘結剤のキレートによる高粘度化)を与えていることが推察される。これに対して、図4〜7から、脂肪酸アミドはカルシウムを含まないので、そのような悪影響を与えないことが推察される。
各ブロッキング防止剤の曲げ強さの低下に与える影響を示す図8から明らかなように、脂肪酸アミドをブロッキング防止剤として使用する優位性は、顕著であることが理解できる。
なお、図4〜7で検出されているカルシウムイオンは、粘結剤に含まれるカルシウムイオン由来であると考えられる。これら図で検出されているカルシウムイオン量は、カルシウムを含まない粘結剤を使用すれば更に低減できる。
実施例2
エチレンビスステアリン酸アミドの添加量が、ブロッキング率に与える影響を以下の手順で確認した。
(1)鋳型用粘結剤含有砂の製造
骨材として、一度も鋳型用粘結剤含有砂として使用されていないエスパール#60(山川産業社製)を使用した。骨材を160℃に加熱した後、ミキサー(遠州鉄工社製NSC−1型)に入れ、骨材の温度を150℃に保持した。骨材100質量部に対して0.8質量部の粘結剤HP−333N(日立化成社製ノボラック系フェノール樹脂)を添加しつつ骨材を約60秒間攪拌することで、骨材に粘結剤を被覆した。次に、これらを攪拌しつつ、粘結剤100質量部に対して24質量部のヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)と、骨材100質量部に対して1.6質量部の水(硬化剤の分散媒)とを添加し約45秒間撹拌することで、骨材に粘結剤と硬化剤の混合物を被覆させた。次いで、粘結剤と硬化剤と骨材との混合物を攪拌しつつ、粘結剤と硬化剤と骨材との合計100質量部に対して表2に示す種々の量のエチレンビスステアリン酸アミドを添加して、約15秒間攪拌することで、RCSを得た。なお、得られたRCSは、目開き1180μmのふるいを使ってダマを除去した。
(2)ブロッキング率の測定
JACT試験法C−3のブロッキング試験法を参考に、以下の手順でブロッキング率を測定した。
50mlのガラス製ビーカーに100gのRCSを投入して試料を得た。試料を45〜50℃に保たれた恒温槽(アズワン社製ONW−450S)で60分間加温した。ここで、恒温槽内の湿度を、アルミニウム製バットに約1Lの水を張り、それを恒温槽内に入れることで、40〜60%に湿度に維持した。
60分後、加温したRCSを6メッシュの篩で篩った。篩上に残存したRCS量を測定し、全RCS量に対する百分率をブロッキング率として算出した。
結果を表2に示す。表2の結果を図9でグラフ化した。
表2及び図9より、エチレンビスステアリン酸アミド添加量が骨材と粘結剤と硬化剤との合計100質量部に対して、0.01〜10.0質量部の範囲では、添加しない場合と比較して、ブロッキング率を15%以下とすることが可能であることが分かる。
実施例3
ブロッキング防止剤として、ステアリン酸カルシウム及びエチレンビスステアリン酸アミドをそれぞれ使用し、骨材として一度も鋳型用粘結剤含有砂として使用されていないシリカ砂(山川産業社製フラタリーサンド、粒度分布75〜600μm、粒形係数1.43)を使用し、粘結剤使用量を1.0質量部/骨材100質量部とすること以外は、実施例1と同様にして曲げ強さを測定した。測定結果を各滑剤種毎に図10及び11に示す。図10はステアリン酸カルシウム、図11はエチレンスビステアリン酸アミドをブロッキング防止剤とした結果である。また、各ブロッキング防止剤の新砂使用時の曲げ強さと5回目の再生時の曲げ強さとを抜き出して図12にまとめた。
図10〜12から、シリカ砂を骨材とした場合でも、ステアリン酸カルシウムは、再生を繰り返すたびに、曲げ強さが低下しているのに対して、エチレンビスステアリン酸アミドは、ほとんど変化していないことが判る。
1 焙焼炉、2 粉砕物投入口、3 バーナー、4 流動床、5 熱交換器、6 砂流動用空気入口、7 冷却用空気入口、8 流動クーラー、9 砂排出バルブ、10 空気ノズル、11 流動差圧計、12 排ガス出口、21 オリフィス、22 シェルフ、23 シェルフリング、24 ロータリードラム、25 ファン、26 モーター、27 キャップ
かくして本発明によれば、人工砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含み、前記ブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであり、
前記人工砂が、
(1)アルミナ40〜90重量%、シリカ60〜10重量%の合成ムライト及び/又は合成コランダムを主とし、
(2)前記鋳型用粘結剤含有砂を600℃で1時間焙焼し、乾式磨鉱工程に付した後、0.05M−HCl水溶液中で1時間撹拌させた後の溶液において、0.25mg/Lより多く、51.11mg/L未満のカルシウムイオン溶出濃度を示す
ことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂が提供される。
かくして本発明によれば、人工砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含む鋳型用粘結剤含有砂であって、前記ブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであり、
前記人工砂が、
(1)アルミナ40〜90重量%、シリカ60〜10重量%の合成ムライト及び/又は合成コランダムを主とし、
(2)前記鋳型用粘結剤含有砂を600℃で1時間焙焼し、乾式磨鉱工程に付した後、0.05M−HCl水溶液中で1時間撹拌させた後の溶液において、0.25mg/Lより多く、51.11mg/L未満のカルシウムイオン溶出濃度を示すことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂が提供される。

Claims (6)

  1. 人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含み、前記ブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂。
  2. 前記ブロッキング防止剤が、90℃以上の融点を示す脂肪酸アミドである請求項1に記載の鋳型用粘結剤含有砂。
  3. 前記ブロッキング防止剤が、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド及びメチレンビスステアリン酸アミドから選択される請求項1又は2に記載の鋳型用粘結剤含有砂。
  4. 前記ブロッキング防止剤が、前記骨材と粘結剤と硬化剤との合計100質量部に対して、0.01〜10.0質量部含まれる請求項1〜3のいずれか1つに記載の鋳型用粘結剤含有砂。
  5. 前記ブロッキング防止剤が、15%以下のブロッキング率を生じる量で含まれる請求項1〜4のいずれか1つに記載の鋳型用粘結剤含有砂。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載された鋳型用粘結剤含有砂の製造方法であって、
    鋳造後に生じる鋳型廃砂を400〜1000℃の温度範囲で焙焼して焙焼砂を得、前記焙焼砂を乾式磨鉱して骨材として再生する工程と、
    前記骨材を粘結剤と必要に応じて硬化剤と混合する工程と、
    前記粘結剤と骨材と必要に応じて硬化剤との混合物をブロッキング防止剤と混合する工程とを含むことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製法。
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