JP2017075394A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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X={0.315×(Pα−61)1/3+2.24}×10000×exp{−6.5×1000/(T+273)}>30 ・・・(1)
なお、Tは焼鈍温度(但し、800℃≦T≦920℃)であり、
Pα=(Cγ−[C])/Cγ×100、但し右辺が負又はCγ=0の場合はPα=0、
Cγ=(A−T)/436.5、但し右辺が負の場合はCγ=0、
A=937.2+56[Si]−19.7[Mn]−16.3[Cu]−26.6[Ni]−4.9[Cr]+38.1[Mo]+124.8[V]+136.3[Ti]−19.1[Nb]+198.4[Al]+3315[B]である。
但し、上記各式中、[ ]は各元素の質量%を示す。
DP≦−0.15×Tc+93.7 ・・・(2)
但し、500≦Tc≦650である。
母材の表層部、つまり、亜鉛めっき層と母材との界面は曲げ変形時に変形が集中して亀裂が発生しやすい部位であり、この部位の成形性を高めることで曲げ性を大幅に向上させることができる。本発明者らは、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の表層部にC濃度が低い領域を形成する、つまり脱炭層を十分深く形成することで、表層部の変形能を確保し、曲げ変形時に表層部に変形が集中しても亀裂の発生を抑制することができることを見出した。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の母材における化学成分組成について説明する。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、先に説明した脱炭層に関する要件が適切であっても、化学成分、つまり母材に含まれる元素の含有量が適正範囲内になければ、上記作用効果を奏することができない場合がある。従って、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、母材の夫々の化学成分の含有量が、以下に説明する範囲内にあることが好ましい。
Cは、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の強度確保に大きく影響する重要な元素であるため、0.11質量%以上含有させる。好ましくは0.12質量%以上である。しかし、Cの含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて遅れ破壊性が悪化するため、Cの含有量は0.28質量%以下とする。好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.21質量%以下である。
Siは、高強度溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性を確保するために必要な元素であり、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の強度と伸びとのバランスを向上させると共に、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の硬質化に寄与する置換型固溶体強化元素であるため、少なくとも0.01質量%以上含有させる必要がある。好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。しかし、Siの含有量が過剰になると靭性が劣化するため、Siの含有量の上限を3.0質量%とする。好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。
Mnは、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の強度確保に有効な元素であり、0.7質量%以上含有させる必要がある。好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上である。一方、Mnを多量に含有させると、偏析が顕著になり加工性が低下し、さらには、溶接性も劣化する。よって、Mnの含有量の上限を3.5質量%とする。好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下である。
高強度溶融亜鉛めっき鋼板には、顕微鏡で表面を観察すると微小な不めっき欠陥が点状に存在する場合がある。この欠陥は、通常直径が50μm以上250μm以下程度であり、微小であるため亜鉛めっき層の犠牲防食性を著しく劣化させるものではないが、外観にムラが生ずる場合がある。このため、外観のムラを抑制する観点から、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層における直径50μm以上250μm以下の点状の不めっき欠陥の数の上限としては、0.1個/mm2が好ましく、0.05個/mm2がより好ましい。一方、上記点状の不めっき欠陥の数の下限は、特に限定されず、例えば0個/mm2とできる。
当該高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法は、母材(スラブ)を熱間圧延する熱間圧延工程と、上記熱間圧延後の母材を冷間圧延する冷間圧延工程と、上記冷間圧延後の母材を焼鈍する焼鈍工程と、上記焼鈍工程後に上記母材の表面に亜鉛めっき層を形成する亜鉛めっき層形成工程とを備えることが好ましく、亜鉛めっき層形成工程後に、さらに合金化工程を備えてもよい。冷間圧延工程後、例えば母材に対し、焼鈍工程、亜鉛めっき層形成工程及び合金化工程を一貫して雰囲気制御しながら行うことで高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
熱間圧延方法は、特に限定されず公知の方法を採用することができるが、例えば上記化学成分組成を有する鋼を通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、このスラブを用いて、例えば平均板厚が1mm以上5mm以下の板状母材を得る。
冷間圧延法は、特に限定されず公知の方法を採用することができるが、例えば上記熱延後の板状の母材をさらに冷間圧延し、例えば平均板厚が0.5mm以上5mm以下の板状母材を得る。
溶融亜鉛めっき鋼板のめっき処理前の焼鈍工程は、鋼板が800℃以上の高温に曝されても鉄の酸化が起こらないように、H2を5容量%以上含有する還元雰囲気で、還元焼鈍として実施するのが通常である。しかし、鉄が酸化しない程度に還元性に維持された焼鈍炉内であっても、母材成分としてSiやMn等を添加している場合には、SiやMn等が炉内に存在する極微量の酸素によって選択的に酸化されることとなり、その一部がSi酸化物やMn酸化物等として母材の表面に付着した状態となることがある。そのような場合には不めっき欠陥が発生することになる。
Pα=(Cγ−[C])/Cγ×100、但し右辺が負又はCγ=0の場合はPα=0、
Cγ=(A−T)/436.5、但し右辺が負の場合はCγ=0、
A=937.2+56[Si]−19.7[Mn]−16.3[Cu]−26.6[Ni]−4.9[Cr]+38.1[Mo]+124.8[V]+136.3[Ti]−19.1[Nb]+198.4[Al]+3315[B]である。但し、上記各式中、[ ]は各元素の質量%を示す。
但し、500≦Tc≦650である。
上記焼鈍工程後に母材の表面に亜鉛めっき層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができるが、例えば焼鈍工程後の母材をめっき浴に含浸する。めっき浴に含浸する際に、例えばガスワイピング等によりめっき付着量を例えば20g/m2以上200g/m2以下に抑制することが好ましい。
合金化処理としては、特に限定されず、上記亜鉛めっき層形成工程後の母材に、公知の方法を適宜用いて行うことができるが、例えば合金化温度470℃以上600℃以下で1秒以上100秒以下再加熱することで行う。
表1に示す鋼種A〜Gの各成分組成を有する鋼を溶製し、スラブとした。このスラブを用いて熱間圧延を行い、板厚が3.2mmの熱延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板をさらに冷間圧延し、表2〜表4に示すように、板厚が1.2mm、1.4mm、1.6mmの冷延鋼板を製造した。
得られた各供試材を用いて、亜鉛めっき層と母材との界面から母材の深さ方向に形成された、C濃度が0.07質量%以下の脱炭層の平均厚み、つまり脱炭深さ(μm)を、GD−OES:Glow discharge optical emission spectrometry(グロー放電発光分析装置)を用いて測定した。
得られた各供試材を用いて90°V曲げ試験を実施した。種々の曲げ半径のVブロックを用いて曲げ試験を行い、曲げ頂上部のクラックの発生の有無をマイクロスコープで確認した。同一の曲げ半径のVブロックを3個ずつ準備してN=3の試験を行い、3個のVブロックともクラックが発生しなかったもののうち、最小の曲げ半径を、限界曲げ半径R(単位:mm)として評価した。なお、曲げ半径を0.1mm以下にしてもクラックが発生しなかったものはR=0とした。
結果を表2〜表4に示す。限界曲げ半径Rについては、供試材の板厚t(単位:mm)と限界曲げ半径R(単位:mm)との比:R/tが、2.0超のものをD、1.0超2.0以下のものをC、1.0以下0超のものをB、0のものをAとし、A〜Cを合格と評価した。このR/tの評価が合格であったものを、強度と成形性とのバランスに優れ、しかも、曲げ加工部のような歪み量が極度に大きくなる箇所でも亀裂が発生することがない高強度溶融亜鉛めっき鋼板であると評価できる。
表5に示す各成分組成を有する鋼を用い、熱間圧延における巻き取り温度Tcを表6に示す温度にした以外は、No.1〜No.51の供試材と同様にして、表6に示すように板厚が1.2mm、1.4mmの冷延鋼板を製造した。
脱炭深さ(μm)は、No.1〜No.No.51の供試材と同様にして測定した。
限界曲げ半径R(mm)は、No.1〜No.51の供試材と同様にして評価した。
得られた各供試材について、表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、不めっき欠陥の個数を測定した。具体的には、視野1000μm×1000μmの領域において互いに10mm以上離れた10箇所で観察し、直径50μm以上250μm以下の点状の不めっき欠陥の個数(個/mm2)を求め、その平均値を評価した。点状の不めっき欠陥は、SEM(走査型電子顕微鏡)画像により供試材の表面において測定されるめっきがされていない部分であり、その直径は、図1に示すようにSEM画像において測定される最大径とした。点状の不めっき欠陥が0.1個/mm2以下のものを合格としてAと評価し、0.1個/mm2を超えるものを不合格としてBと評価した。
結果を表6に示す。なお、No.1〜No.51と同様にしてR/tを評価した。
Claims (5)
- C:0.11質量%以上0.28質量%以下、Si:0.01質量%以上3.0質量%以下、Mn:0.7質量%以上3.5質量%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる成分組成を有する母材と、
この母材の表面を被覆する亜鉛めっき層と
を備え、
上記母材が、上記亜鉛めっき層との界面から母材深さ方向に10μm以上に亘り、C濃度が0.07質量%以下の脱炭層を有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - 上記亜鉛めっき層における直径50μm以上250μm以下の点状の不めっき欠陥の数が0.1個/mm2以下である請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1又は請求項2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
上記母材を焼鈍する工程と、
上記焼鈍工程後に上記母材の表面に亜鉛めっき層を形成する工程と
を備え、
上記焼鈍工程において、上記母材の成分組成と焼鈍温度との関係が下記式(1)の条件を満足し、H2を1容量%以上含有すると共に露点が−25℃以上の雰囲気ガス中で、上記母材に25秒以上の焼鈍を施すことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
X={0.315×(Pα−61)1/3+2.24}×10000×exp{−6.5×1000/(T+273)}>30 ・・・(1)
なお、Tは焼鈍温度(但し、800℃≦T≦920℃)であり、
Pα=(Cγ−[C])/Cγ×100、但し右辺が負又はCγ=0の場合はPα=0、
Cγ=(A−T)/436.5、但し右辺が負の場合はCγ=0、
A=937.2+56[Si]−19.7[Mn]−16.3[Cu]−26.6[Ni]−4.9[Cr]+38.1[Mo]+124.8[V]+136.3[Ti]−19.1[Nb]+198.4[Al]+3315[B]である。
但し、上記各式中、[ ]は各元素の質量%を示す。 - 上記露点が−8℃以上である請求項3に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 上記焼鈍工程前に母材を熱間圧延する工程をさらに備え、
上記熱間圧延工程での巻き取り温度Tc[℃]と上記焼鈍工程での露点DP[℃]とが下記式(2)の条件を満足する請求項3又は請求項4に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
DP≦−0.15×Tc+93.7 ・・・(2)
但し、500≦Tc≦650である。
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