以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の電界紡糸装置の第1実施形態である、電界紡糸されたナノファイバを製造するナノファイバ製造装置1A(以下、単に「製造装置1A」とも言う。)の斜視図が示されている。図2は、図1に示すナノファイバ製造装置の断面構造を示す模式図である。これらの図に示すとおり、第1実施形態のナノファイバ製造装置1Aは、基本的にはESD(Electro−Spray Deposition)と高速噴出気流(ジェット)を組み合わせたジェットESD法を採用したものである。製造装置1Aは、例えばナノファイバ製造用の原料液を噴射する導電性のノズル21を備えた原料噴射部2と、ノズル21と電気的に絶縁して配置された凹曲面部3Aを有する電極3と、ノズル21と電極3の間に電圧を発生させる電圧発生部4とを備えている。更に、製造装置1Aは、本実施形態では、ノズル21の基部の近傍に位置し、ノズル21の延びる方向に沿って、かつノズル21の先端21a方向に向けて、ノズル21と電極3の間に空気流を噴射する空気流噴射部5を備えている。
以下の説明において、製造装置1Aでは、図1に示すように、凹曲面部3Aにおける開口端部31aによって画成される平面の図心3Gを通る電極中心軸CLの延びる方向をY方向、それと直交する方向をX方向として説明する。ここで、平面の図心3Gとは、重心と同じ概念である。しかし、開口端部31aによって画成される平面は仮想の平面であり、質量がないため、重心と呼ぶのは正確でないことから、本明細書では、重心に代えて図心と呼ぶこととする。
製造装置1Aでは、電極3の凹曲面部3Aは、図1に示すように、全体として凹球面形状をしており、特に略椀形をしている。そして凹曲面部3Aは、その略椀形の内面であるノズル21と対向する面3Afが凹曲面に形成されている。ここで、凹曲面部3Aのノズル21と対向する面3Afとは、ノズル21の先端21a(原料液が噴射する開口部)から臨むことのできる凹曲面部3Aの表面のことを意味し、製造装置1Aでは、凹曲面と同じ面である。凹曲面部3Aは、その内面が凹曲面となっている限りにおいて、その外面の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。凹曲面部3Aは、導電性材料から構成されている。凹曲面部3Aは、電気絶縁性材料からなる基台30に固定されている。
製造装置1Aでは、図1に示すように、電極3の凹曲面部3Aにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Afを、その開口端部31a側から見たとき、該開口端部31aの周縁は円形をしている。従って、製造装置1Aでは、開口端部31aによって画成される平面は、円形となっており、前記平面の図心3Gとは、円の中心を意味している。尚、開口端部31aの周縁とは、開口端部31aが厚みを有している場合には、開口端部31aのノズル21側の輪郭、即ち、内側の輪郭のことを意味している。開口端部31aによって画成される円形は、真円形でもよく、あるいは楕円形でもよいが、ノズル21の先端に電界を集中させる観点からは、開口端部31aの周縁は、真円形であることが好ましい。
製造装置1Aでは、凹曲面部3Aにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Afは、図1に示すように、内面のいずれの位置においても曲面になっている。ここで言う曲面とは、(イ)平面部を全く有していない曲面のことであるか、又は(ロ)平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることのいずれかを言う。(ロ)の場合は、例えば縦及び横の長さが0.5mm以上5mm以下程度の矩形となっている、同一の又は異なる大きさの平面部を有するセグメントを繋ぎ合わせて凹曲面を形成することが好ましい。
凹曲面部3Aのノズル21と対向する面(凹曲面)3Afは、その任意の位置における法線がノズル21の先端又はその近傍を通るような形状となっていることが好ましい。この観点から、該凹曲面は、真球の球殻の内面である略半球面と同じ形状をしていることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すとおり、電極3の凹曲面部3Aのノズル21と対向する面(凹曲面)3Afの最底部は開口しており、その開口部に原料噴射部2を構成するノズルアセンブリ20が取り付けられている。したがって、凹曲面3Afが真球の内面と同じ形状をしている場合、凹曲面部3Aの凹曲面3Afは、球帯の球殻の内面と同じ形状をしていることになる。
製造装置1Aでは、凹曲面部3Aは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、その電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)の長さが、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることが更に好ましく、そして、165mm以下であることが好ましく、147mm以下であることが更に好ましく、具体的には、5mm以上165mm以下であることが好ましく、7mm以上147mm以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、凹曲面部3Aは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点、及びノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が凹曲面部3Aに付着し難くなる観点から、開口端部31aによって画成される円の半径の値が、8mm以上であることが好ましく、13mm以上であることが更に好ましく、そして、170mm以下であることが好ましく、80mm以下であることが更に好ましく、具体的には、8mm以上170mm以下であることが好ましく、13mm以上80mm以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、凹曲面部3Aは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、ノズル21と対向する面(凹曲面)3Afの面積自体の値が、400mm2以上であることが好ましく、1000mm2以上であることが更に好ましく、そして、180000mm2以下であることが好ましく、40000mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、400mm2以上180000mm2以下であることが好ましく、1000mm2以上40000mm2以下であることが更に好ましい。
尚、開口端部31aによって画成される平面が楕円である場合には、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、その楕円の離心率は、0以上0.6未満であることが好ましく、0以上0.3未満であることが更に好ましく、離心率0の真円であることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、電極3は、図1及び図2に示すように、凹曲面部3Aにおける開口端部31aから外方に延出する延出部3Bを更に有している。延出部3Bは、開口端部31aから外方に延出していれば、特に形状が限定されるものではないが、製造装置1Aでは、円形の開口端部31bの全周縁から延出した円筒の形状をしている。電極3における凹曲面部3Aと延出部3Bとの境界は、図2に示すように、電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)に沿って断面視した際に、凹曲面部3Aにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3AfのY方向の曲率が0となる位置である。
製造装置1Aでは、電極3の延出部3Bは、図1に示すように、全体としてY方向に延びる円筒の形状をしている。そして延出部3Bは、その円筒形状の内面であるノズル21と対向する面3Bfが凹曲面に形成されている。ここで、延出部3Bのノズル21と対向する面3Bfとは、ノズル21の先端21a(原料液が噴射する開口部)から臨むことのできる延出部3Bの表面のことを意味し、製造装置1Aでは、凹曲面と同じ面である。延出部3Bは、その内面が凹曲面となっている限りにおいて、その外面の形状は円筒形状になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。延出部3Bは、導電性材料から構成されている。
製造装置1Aでは、図1に示すように、電極3の延出部3Bにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Bfを、その開口端部31b側から見たとき、該開口端部31bの周縁は、円形をしている。尚、開口端部31bの周縁とは、開口端部31bが厚みを有している場合には、凹曲面部3Aの開口端部31aの周縁と同じく、開口端部31bのノズル21側の輪郭、即ち、内側の輪郭のことを意味している。開口端部31bによって画成される円形は、真円形でもよく、あるいは楕円形でもよいが、凹曲面部3Aの開口端部31aの周縁の形状と相似の形状であることが好ましく、ノズル21の先端に電界を集中させる観点からは、開口端部31bの周縁は、凹曲面部3Aの開口端部31aの周縁と同じ、真円形であることが好ましい。
製造装置1Aでは、延出部3Bは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点、及びノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が延出部3Bに付着し難くなる観点から、その電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)の長さが、5mm以上であることが好ましく、15mm以上であることが更に好ましく、そして、340mm以下であることが好ましく、170mm以下であることが更に好ましく、具体的には、5mm以上340mm以下であることが好ましく、15mm以上170mm以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、延出部3Bは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点、及びノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が延出部3Bに付着し難くなる観点から、開口端部31bによって画成される円の半径の値が、8mm以上であることが好ましく、13mm以上であることが更に好ましく、そして、366mm以下であることが好ましく、170mm以下であることが更に好ましく、具体的には、8mm以上366mm以下であることが好ましく、13mm以上170mm以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、延出部3Bは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点、及びノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が延出部3Bに付着し難くなる観点から、その電極中心CLの延びる方向(Y方向)の長さの開口端部31bによって画成される円の半径の値に対する比が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることが更に好ましく、そして、2以下であることが好ましく、1以下であることが更に好ましく、具体的には、0.1以上2以下であることが好ましく、0.3以上1以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、延出部3Bは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点、及びノズル21の先端21aから噴射され、ファイバ状になった原料液が延出部3Bに付着し難くなる観点から、延出部3Bの凹曲面3Bfの面積自体の値は、250mm2以上であることが好ましく、750mm2以上であることが更に好ましく、そして、660000mm2以下であることが好ましく、270000mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、250mm2以上660000mm2以下であることが好ましく、750mm2以上270000mm2以下であることが更に好ましい。
尚、延出部3Bの開口端部31bによって画成される平面が楕円である場合には、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、その楕円の離心率は、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面が楕円である場合と同様に、0以上0.6未満であることが好ましく、0以上0.3未満であることが更に好ましく、離心率0の真円であることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すように、電極3の延出部3Bは、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の図心3Gを通る電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)に垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aよりも大きいか又は等しい部分を有している。ここで、平面の面積S3A,S3Bとは、開口端部31a,31bが厚みを有している場合には、開口端部31a,31bの内側の輪郭で囲まれた領域の面積を意味する。好適には、上述したように、製造装置1Aでは、凹曲面部3Aの凹曲面3Afは、真球の球殻の略半球面と同じ形状をしており、電極中心軸の延びる方向(Y方向)に曲率を有し、Y方向に垂直な面方向を構成する、互いに直交する縦軸及び横軸にも、それぞれ、曲率を有している。一方、製造装置1Aでは、延出部3Bの凹曲面3Bfは、Y方向に延びる円筒形状の内面と同じ形状をしており、縦軸及び横軸には、それぞれ、曲率を有しているが、Y方向に曲率を有していない。即ち、電極3の延出部3Bは、製造装置1Aでは、凹曲面部3Aの開口端部31aから延出部3Bの開口端部31bに到るまで、開口端部31aからY方向に平行に延在している。その為、延出部3Bは、X方向に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが全体に亘って、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aと等しく形成されている。
凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aは、ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、200mm2以上であることが好ましく、530mm2以上であることが更に好ましく、そして、91000mm2以下であることが好ましく、20100mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、200mm2以上91000mm2以下であることが好ましく、530mm2以上20100mm2以下であることが更に好ましい。
同様な観点から、垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bは、200mm2以上であることが好ましく、530mm2以上であることが更に好ましく、そして、421000mm2以下であることが好ましく、91000mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、200mm2以上421000mm2以下であることが好ましく、530mm2以上91000mm2以下であることが更に好ましい。
製造装置1Aでは、図2に示すように、電極3の凹曲面部3A及び延出部3Bは、別々の部材から形成されている。尚、製造装置1Aでは、凹曲面部3A及び延出部3Bが別々の部材から形成されているが、別々の部材でなくてもよい。製造装置1Aでは、凹曲面部3A及び延出部3Bは、別々の部材から形成されているので、凹曲面部3A及び延出部3Bが、粘着剤又はネジで接合されて、一体化した電極3が形成されている。その為、加工が容易になり安価に製造でき、また、延出部の長さを容易に調整可能となる。粘着剤又はネジで接合する場合、接合強度の安定化の観点から、凹曲面部3Aの開口端部31aに、開口端部31aから垂直な方向(X方向)のノズル21と反対側の外方に延びるフランジ部を設け、更に、延出部3Bの凹曲面部3A側の端部にも垂直な方向(X方向)のノズル21と反対側の外方に延びるフランジ部を設け、凹曲面部3Aのフランジ部と延出部3Bのフランジ部とを、粘着剤又はネジを介して、接合することが好ましい。
電極3の凹曲面部3A及び延出部3Bは、それぞれ、金属等から構成されており導電性を有している。具体的に、凹曲面部3A及び延出部3Bは、それぞれ、厚みが略均等な板金、或いは導電性のシート等から形成されている。板金の材料としては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。導電性のシートとしては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属製のシート、或いは、カーボンブラック、グラファイト粉等の炭素系のフィラー等の導電性粉末を含有したシート等が挙げられる。金属製のシートとしては、コストの観点、軽さと厚みの均一性の観点から、アルミテープ、家庭用のアルミホイル等が好ましく用いられる。
凹曲面部3Aと延出部3Bとを接合固定する粘着剤としては、電界紡糸装置の分野で一般的に用いられる公知の接着剤を使用することができ、具体的には、エポキシ樹脂系の接着剤等が挙げられる。
凹曲面部3Aと延出部3Bとを接合固定するネジとしては、後述する被覆体と同種又は異種の誘電体製や木製のものを使用することができる。これらの材料からなるネジによって凹曲面部3Aと延出部3Bとを接合すれば、両者間に空気層が生じにくくなり、凹曲面部3Aと延出部3Bとの間の電界を安定させることができる。ネジで接合する場合には、例えば、上述した凹曲面部3Aのフランジ部に、貫通孔を形成し、該貫通孔にネジを通し、該ネジを、延出部3Bのフランジ部に形成されたネジ穴にねじ込むことにより接合固定できる。
以上のようして形成された電極3は、凹曲面部3A及び延出部3Bが同電位となっている。凹曲面部3A及び延出部3Bから形成された電極3は、図2に示すとおり電圧発生部4である直流高圧電源41に接続され、負電圧が印加されるようになっている。このように、凹曲面部3Aと延出部3Bとが電気的に接合された際に、凹曲面部3Aと延出部3Bとが同電位になるように形成されている。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すとおり、電極3の凹曲面部3Aの最底部の開口部に、原料噴射部2を構成するノズルアセンブリ20が設けられている。ノズルアセンブリ20は、ノズル21と、ノズル21を支持する支持部22とを有している。
製造装置1Aでは、原料噴射部2のノズル21は、導電性材料から構成されており、一般には金属から構成されている。好適には、ノズル21は、針状の直管から構成されている。ノズル21内には、原料液が流通可能になっている。ノズル21の内径は、その下限値を好ましくは200μm以上、更に好ましくは300μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは3000μm以下、更に好ましくは2000μm以下に設定することができる。ノズル21の内径は、例えば好ましくは200μm以上3000μm以下、更に好ましくは300μm以上2000μm以下に設定することができる。ノズル21の外径は、その下限値を好ましくは300μm以上、更に好ましくは400μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは4000μm以下、更に好ましくは3000μm以下に設定することができる。ノズル21の外径は、例えば好ましくは300μm以上4000μm以下、更に好ましくは400μm以上3000μm以下に設定することができる。ノズル21の内径及び外径をこの範囲内に設定することで、高分子を含有し粘性をもつ原料液を容易に、かつ定量的に送液できるとともに、ノズル周辺の狭い領域に電界が集中し、原料液を効率よく帯電させられるので好ましい。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すように、ノズル21は、その延びる方向が、凹曲面部3Aにおける開口端部31aによって画成される平面の図心3Gか、又はその図心3Gの近傍を通るように、配置されている。好適には、ノズル21が、図心3Gか又はその図心3Gの近傍と、凹曲面部3Aの凹曲面3Afにおける最底部に設けられた開口の中心か、又はその中心の近傍とを通るように配置されることが好ましい。製造装置1Aでは、ノズル21の先端21aに電界が更に一層集中する観点から、ノズル21は、その延びる方向が、電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)と平行であり、ノズル21が電極中心軸CL上に配されている。即ち、製造装置1Aでは、ノズル21の延びる方向と、電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)とが一致している。
ノズル21の延びる方向が図心3Gの近傍を通るようにノズル21が配置されているとは、開口端部31aによって画成される平面の最長の対角線をLとしたとき、該平面上に図心を同じくして描かれる、半径がL/10である仮想円を考えた場合、ノズル20は、その延びる方向が、該仮想円の内側と、凹曲面3Afにおける最底部とを通るように配置されることが好ましい。とりわけ、前記仮想円として、半径がL/20であるものを考えた場合、ノズル20は、その延びる方向が、半径がL/20である該仮想円の内側と、凹曲面3Afにおける最底部とを通るように配置されることが更に好ましい。そして、ノズル20は、その延びる方向が、図心3Gと、該凹曲面3Afにおける最底部とを通るように配置されている製造装置1Aの形態が特に好ましい。
また、ノズル21の先端21aの位置に関しては、図2に示すように、該先端21aが、凹曲面部3Aにおける開口端部31aによって画成される平面内に位置するか、又は該平面の近傍に位置するように、ノズル21が配置されている。好適には、ノズル21の先端21aが前記平面よりも該対向する面(凹曲面)3Afの内側に位置するようにノズル21を配置することが好ましい。更に好適には、該平面よりも1〜10mm内側にノズル21を配置することが好ましい。ノズル21の先端21aの位置をこのようにすることで、ノズル21の先端21aと該対向する面(凹曲面)3Afとの距離が近くなり、かつ、電界が更に一層集中し、高い帯電量が得られる。この観点から、凹曲面部3Aの該対向する面(凹曲面)3Afは、真球の球殻の略半球面の形状をしていることが特に好ましい。
製造装置1Aでは、原料噴射部2の支持部22は、電気絶縁性材料から構成されている。したがって、先に述べた電極3とノズル21とは、図2に示すように、支持部22によって電気的に絶縁されている。また、ノズル21は接地されている。ノズル21の先端21aは、凹曲面部3A及び延出部3Bから形成された電極3内に露出している。ノズル21は、支持部22を貫通しており、ノズル21の後端21bは、電極3の背面側(すなわち、ノズル21と対向する面(凹曲面)3Afと反対側の面側)において露出している。なおノズル21は必ずしも支持部22を貫通している必要はなく、支持部22に設けた原料液供給用の貫通孔の途中にノズル21の後端21bが位置していてもよい。ノズル21の後端21bあるいは支持部22に設けた原料液供給用の貫通孔は、例えばナノファイバ製造用の原料液の供給源(図示せず)に接続されている。ノズルアセンブリ20は、原料の供給源を構成するとともに原料噴射部2を構成する。
製造装置1Aでは、図2に示す、ノズル21の先端21aと、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3Af,3Bfとの間の距離(最短距離)は、20mm以上、特に30mm以上に設定することが好ましい。これよりも狭いと、ノズル21の先端から噴射され、ファイバ状になった原料液が電極3の凹曲面部3Aにおける凹曲面3Af,3Bfに付着しやすくなる。ノズル21の先端21aと、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面)3Af,3Bfとの間の距離(最短距離)の上限値は、100mm以下、特に50mm以下に設定することが好ましい。これよりも広いとノズル21と電極3との間に形成される電界が弱くなり、高い帯電量が得られ難くなる。このような観点から、例えば両者間の距離(最短距離)は、20mm以上100mm以下に設定することが好ましく、30mm以上50mm以下に設定することが更に好ましい。
製造装置1Aでは、先に述べたように、図2に示すように、ノズル21が接地されており、これに対して電極3には電圧発生部4の直流高圧電源41により負電圧が印加されている。従って、電極3が陰極になり、かつノズル21が陽極になり、電極3とノズル21との間に電圧が発生し、電界が形成される。なお、電極3とノズル21との間に電界を生じさせるためには、図2に示す電圧の印加のしかたに代えて、ノズル21に正電圧を印加するとともに、電極3を接地してもよい。尤も、ノズル21に正電圧を印加するよりも、該ノズル21を接地する方が、絶縁対策を簡便にできるので好ましい。また電圧発生部4によって発生させる電圧は、電極3が陰極に保たれ、かつノズル21が陽極に保たれる限り、すなわちノズル21が陰極よりも高電位に保たれる限り、直流電圧に交流電圧を重畳したような変動電圧でもよい。原料液の帯電量を一定に保ち、均一な太さのナノファイバを製造するという観点からは電圧は直流電圧であることが好ましい。
製造装置1Aでは、電圧発生部4に高圧電源装置などの公知の装置を用いることができる。電極3とノズル21との間に加わる電位差は、1kV以上、特に10kV以上とすることが、原料液を十分に帯電させ得る点から好ましい。一方、この電位差は100kV以下、特に50kV以下とすることが、ノズル21と電極3との間における放電を防止する点から好ましい。例えば1kV以上100kV以下、特に10kV以上50kV以下とすることが好ましい。なお電圧発生部4で印加した電圧が変動電圧である場合は、電極3とノズル21との間に発生する電位差の時間平均が前記範囲内とすることが好ましい。
製造装置1Aでは、空気流噴射部5は、図1及び図2に示すとおり、ノズル21の基部の近傍に位置している。空気流噴射部5は、ノズルアセンブリ20におけるノズル21の基部の近傍に、貫通孔51を有している。空気流噴射部5は、ノズル21の延びる方向に沿って形成されている。更に空気流噴射部5は、ノズル21の先端21aの方向に向けて高速空気流を噴射させることが可能なように形成されている。電極3の開口端部31b側から見たとき、空気流噴射部5の貫通孔51は、ノズル21を取り囲むように2個設けられている。貫通孔51は、ノズル21を挟んで対称な位置に形成されている。貫通孔51を有する空気流噴射部5は、その後端側の開口部が空気流の供給源(図示せず)に接続されている。この供給源から空気が供給されることで、ノズル21の周囲から空気が噴射されるようになっている。噴射した空気は、ノズル21の先端21aから噴射され、かつ電界の作用によって細長く引き伸ばされた原料液を、空気流噴射部5に対向する位置に配置された後述する捕集部(図示せず)に向けて搬送すると共に、ナノファイバを延伸させることに寄与する。なお、製造装置1Aでは、空気流噴射部5の貫通孔51が2個設けられている状態が示されているが、貫通孔51の個数はこれに限られず、1個又は3個以上であってもよい。更に、貫通孔51の形状(断面形状)は円形に限られず、矩形、楕円、二重円環、三角、ハニカム等でもよい。均一な空気流を得る観点からはノズル21を囲む環状の貫通孔51が望ましい。
空気流噴射部5から噴射される空気流としては、例えばドライヤー等によって湿度30%RH以下に乾燥させたものを用いることができる。また空気流は、製造されるナノファイバの状態が一定に維持されるようにするために、温度が一定に保たれていることが好ましい。空気流の流速は、例えば10m/sec以上、特に20m/sec以上とすることが好ましい。これよりも遅いと、ナノファイバの進行方向を、ノズル21と電極3の間の電界に逆らって、捕集部のある方向に搬送するのが難しくなる。空気流の流速の上限は、例えば60m/sec以下、特に50m/sec以下とすることが好ましい。これよりも速い流速を作ることは設備的負荷が大きくなるとともに、空気流でファイバが千切れる心配がある。このような観点から、空気流の流速は、10m/sec以上60m/sec以下にすることが好ましく、特に20m/sec以上50m/sec以下であることが好ましい。
製造装置1Aは、空気流噴射部5に対向する位置に、電界紡糸を捕集する捕集部(図示せず)を備えている。特に捕集部の一部として捕集用電極(図示せず)を配置することができる。捕集用電極は、金属等の導電性材料から構成されている平板状のものとすることができる。捕集用電極の板面と、空気流噴射部5による空気流の噴射方向とは略直交している。また後述するように、捕集用電極はその略全面を表面に誘電体の露出した被覆体で被覆することができ、更に好ましくは全面を被覆体で被覆することができる。ここで略全面とは当該面の全表面積の90%以上の面積を占める面を意味する。全面とは、当該面の全表面積の100%を占める面を意味する。正に帯電したナノファイバを捕集用電極に誘引するために、捕集用電極には陽極であるノズル21よりも低い(負の)電位を与える。誘引を更に効率的にするため、陰極である電極3よりも低い(負の)電位を与えることが好ましい。捕集用電極(電極表面)とノズル21の先端21aとの距離(最短距離)は、その下限値を好ましくは100mm以上、更に好ましくは500mm以上とすることができる。これよりも狭いと、捕集用電極に到達するまでにナノファイバが十分に固化できないことがある。上限値は好ましくは3000mm以下、更に好ましくは1500mm以下とすることができる。これよりも広いと、捕集用電極による電気的誘引の力が弱くなり、ナノファイバの捕集率が低下する。例えば好ましくは100mm以上3000mm以下、更に好ましくは500mm以上1500mm以下とすることができる。
製造装置1Aでは、捕集用電極に加えて、該捕集用電極に隣接するように、該捕集用電極とノズル21との間に、ナノファイバが捕集される捕集体(図示せず)を捕集部として配置している。捕集体としては、例えばフィルム、メッシュ、不織布、紙などの絶縁体を用いることができる。
製造装置1Aでは、更に、空気流噴射部5に対向するように、噴射された空気流の排気を行う空気排気部(図示せず)を配置することもできる。空気排気部は、上述した捕集用電極よりもノズル21から遠い側に配置されることが好ましい。空気排気部としては、例えばサクションボックス等の公知の装置を用いることができる。
以上説明した第1実施形態の製造装置1Aにおいては、静電誘導の原理を使用して帯電を行っている。静電誘導とは、安定状態の導体に、例えば正に帯電させた物体(帯電体)を近づけると、該導体のうち、帯電体に近い部位に負電荷が移動し、逆に正電荷が帯電体から遠ざかって静電導体となる現象を言う。この導体に帯電体を近づけたままで、該導体のうち正に荷電している部位を接地すると、正電荷が電気的に中和されて、該導体は負電荷を持つ帯電体となる。製造装置1Aでは、電極3を負に帯電させた帯電体として用いているので、ノズル21は正電荷を持つ帯電体となる。したがって、正に帯電したノズル21内を原料液が流通すると、該ノズル21から正電荷が供給されて、該原料液は正に帯電する。
製造装置1Aでは、図1及び図2に示すように、凹曲面部3A及び延出部3Bから形成された電極3の内面にノズル21が露出している部位は少ないので、電極3の面積がノズル3の面積よりも圧倒的に大きく、そのことによって電極3に比べてノズル21の方が電荷密度が高くなり、かつ電場も強くなる。そして、製造装置1Aでは、電極3が凹曲面部3Aを有しているので、平面状の電極を用いるよりもノズル21の先端21aに電荷が集中し易い。更に、電極3が、凹曲面部3Aの開口端部31aから外方に延出する延出部3Bを有しており、延出部3Bは、X方向に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが全体に亘って、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aと等しく形成されているので、ノズル21の先端21aに更に電荷が集中するようになる。その結果、ノズル21内を流通する紡糸液の帯電量が非常に多くなる。このように原料液の帯電量を従来よりも更に増加させることができ、その結果、製造装置1Aは、ナノファイバの生産性を従来よりも更に高めることが可能となる。しかも電極3が凹曲面部3Aを有することで、平面状の電極を用いた場合よりも電極の嵩を減らすことができるので、製造装置1Aを小型化することができ、省スペース化を達成することができる。しかも、製造装置1Aには、可動部位が存在しないので、装置が複雑化しないという利点もある。
また、製造装置1Aでは、凹曲面部3Aの凹曲面3Afは、図1に示すように、真球の球殻の略半球面と同じ形状をしているので、ノズル21の先端21aに電荷が更に一層集中するようになる。その為、原料液の帯電量を従来よりも更に増加させることができ、その結果、ナノファイバの生産性を従来よりも更に高めることが可能となる。
また、製造装置1Aでは、延出部3Bは、図1に示すように、円筒の形状をしているので、ノズル21の先端21aに電荷が更に一層集中するようになる。その為、原料液の帯電量を従来よりも更に増加させることができ、その結果、ナノファイバの生産性を従来よりも更に高めることが可能となる。
以上説明した第1実施形態の製造装置1Aを用いたナノファイバの製造方法においては、電極3とノズル21との間に電界を生じさせた状態下に、ノズル21の先端21aから原料液を噴射する。電界によって、原料液中の陽イオンは電極3(陰極)側に引き寄せられるため、ノズル21から噴射される原料液には陽イオンが多く含まれ、原料液は正に帯電する。そして前述のように、凹曲面部3A及び延出部3Bから形成された電極3を用いることにより、原料液の単位質量当たりの帯電量は極めて高くなる。そして、噴射した原料液に向けて空気流噴射部5から空気流を噴射させることで、原料液を捕集体(図示せず)の方向に向かわせる。この間、原料液のもつ電荷の自己反発の連鎖によってファイバはナノサイズにまで細くなり、同時に、溶媒の揮発や高分子の凝固等が進行し、ナノファイバが生成する。生成したナノファイバは、空気流噴射部5から噴射された空気流にのり、かつ捕集用電極(図示せず)の作る電界に誘引されて、空気流噴射部5と対向する位置に配置された捕集体の表面に堆積する。正に帯電したナノファイバを捕集体に誘引するため、捕集用電極には陽極であるノズル21よりも低い(負の)電位を与える。あるいは誘引を更に効率的にするため、陰極である電極3よりも低い(負の)電位を与える。
第1実施形態の製造装置1Aを用いたナノファイバの製造方法によれば、ノズル21の先端から噴射される原料液の帯電量が極めて高くなっているので、電極3の方向に原料液を引き付ける力が大きなものとなる。したがって、従来よりも(単位時間当たり)多量の原料液をノズル21から噴射しても、従来と同程度に細いナノファイバを製造することが可能になる。しかも得られるナノファイバに欠陥等が生じ難く、ナノファイバの生産性を従来よりも高めることが可能となる。尚、ここで言う欠陥とは、例えば原料液の液滴がそのまま固化したものや、原料液の液滴が十分に引き伸ばされないまま固化して生じたビーズ状のもののことである。
第1実施形態の製造装置1Aにおいては、原料液の帯電量を更に増加させ、ナノファイバの生産性を更に高める観点から、電極3はノズル21と対向する面の略全面が、表面に誘電体の露出した被覆体で被覆され、電極3と被覆体とが接していることが好ましい。電極3のノズル21と対向する面とは、凹曲面部3Aの凹曲面3Af及び延出部3Bの凹曲面3Bfを意味する。また、略全面とは、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面3Af,3Bf)の全表面積(100%)の90%以上の面積を占める面積であることを意味する。また、表面に誘電体の露出した被覆体とは、該表面の略全面(90%以上の面積)が誘電体のみで構成された被覆体のことである。被覆体は、表面の全面(100%の面積)が誘電体のみで構成されていることが好ましい。すなわち、被覆体は、表面に誘電体が露出し、表面に金属などの導電体が非存在とした被覆体であることが好ましい。単一種の誘電体から構成された被覆体がその典型例であるが、被覆体は複数種の誘電体が積層された複合体であってもよいし、表面が誘電体のみで構成されていれば、内部(表面に露出しない部分)に金属や空気の粒子又は層等を含んだ複合体であってもよい。このような被覆体が、電極3のノズル21と対向する面(凹曲面3Af,3Bf)に密着している方が好ましい。
電極3と被覆体との固定には、電界紡糸装置の分野で一般的に用いられる公知の接着剤を使用することができ、具体的には、例えばエポキシ樹脂系の接着剤や外付けテープなどを用いることができる。
被覆体に使用する誘電体としては、絶縁材料であるマイカ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等のセラミック材料や、ベークライト(フェノール樹脂)、ナイロン(ポリアミド)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂系材料が挙げられる。これらのうち、アルミナ、ベークライト、ナイロン、塩化ビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種以上の絶縁材料を用いることが好ましく、特にナイロンを用いることが好ましい。ナイロンとしては、6ナイロンや66ナイロンなどの各種のポリアミドを用いることができる。またナイロンとして市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばMCナイロン(登録商標)が挙げられる。被覆体に用いる誘電体には帯電防止剤を含有させることができる。帯電防止剤を含有させることによって、帯電した原料液やナノファイバ等が被覆体に付着したとき、被覆体の帯電を低減することができる。帯電防止剤としては公知の市販品を使用することができ、例えばペレクトロン(三洋化成工業(株))、エレクトロストリッパー(花王(株))、エレクトロマスター(花王(株))、リケマール(理研ビタミン(株))、リケマスター(理研ビタミン(株))などを用いることができる。
製造装置1Aでは、被覆体は、均一な厚みで電極3を被覆していることが好ましい。被覆体を構成する、表面に露出した誘電体の厚みは、0.8mm以上、特に2mm以上、とりわけ8mm以上であることが好ましく、具体的には0.8mm以上25mm以下、特に2mm以上20mm以下、とりわけ8mm以上15mm以下とすることが好ましい。こうすることで、電極からの電子の放出を十分に抑制でき、原料液の帯電量を高めることができる。これよりも薄いと、電極3からの電子の放出を十分に抑制できず、原料液の帯電量を高められない場合がある。なお当該厚みは、被覆体が単一種又は複数種の誘電体から構成されている場合、被覆体の厚みを指す(被覆体の厚みに等しい)ものとする。
また、第1実施形態の製造装置1Aにおいては、原料液の固化に影響を及ぼす温度及び湿度からなる紡糸環境を調整し、ナノファイバの生産性を更に高める観点から、電極3の凹曲面部3A及び延出部3Bの少なくとも一方は、加熱又は冷却する調整機構を備えていることが好ましい。上記観点から、凹曲面部3A及び延出部3Bのそれぞれに、前記調整機構を備えていることが更に好ましい。
また、第1実施形態の製造装置1Aにおいては、製造装置1Aのメンテナンス性が向上し、ナノファイバの生産性を更に高める観点、及びノズル21の先端21a近傍での紡糸状態を観察できる観点から、電極3の凹曲面部3A及び延出部3Bの少なくとも一方は、ノズル21の先端21aを観察する貫通孔を備えていることが好ましい。上記観点から、凹曲面部3A及び延出部3Bのそれぞれに、前記貫通孔を備えていることが更に好ましい。
次に、本発明の電界紡糸装置の第2〜4実施形態であるナノファイバ製造装置1B〜1Dについて説明する。図3〜図5には、ナノファイバ製造装置1B〜1Dの断面構造の図が示されている。なお、第2〜4実施形態の製造装置1B〜1Dに関し、特に説明しない点については、第1実施形態の製造装置1Aに関する説明が適宜適用される。また、図3〜図4において、図1ないし図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
図3に示す第2実施形態の製造装置1Bでは、電極3は、凹曲面部3Aにおける開口端部31aから外方に延出する延出部3Bを更に有している。延出部3Bは、製造装置1Bでは、円錐台の形状をしている。そして延出部3Bは、その円錐台形状の内面であるノズル21と対向する面3Bfが凹曲面に形成されている。
製造装置1Bでは、電極3の延出部3Bにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Bfを、その開口端部31b側から見たとき、該開口端部31bの周縁は、円形をしている。
製造装置1Bでは、図3に示すように、電極3の延出部3Bは、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の図心3Gを通る電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)に垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aよりも大きい部分を有している。好適には、製造装置1Bでは、電極3の延出部3Bは、凹曲面部3Aの開口端部31aから延出部3Bの開口端部31bに到るまで、Y方向に平面の面積S3Bが漸次広く形成されている。その為、延出部3Bは、X方向に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが全体に亘って、開口端部31aによって画成される平面の面積S3A以上に大きく形成されている。
ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bは、最も広い部位で、200mm2以上であることが好ましく、530mm2以上であることが更に好ましく、そして、421000mm2以下であることが好ましく、91000mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、200mm2以上421000mm2以下であることが好ましく、530mm2以上91000mm2以下であることが更に好ましい。
第2実施形態の製造装置1Bを用いた場合にも、第1実施形態の製造装置1Aと同様に、ノズル21の先端21aに更に電荷が集中するようになる。その結果、ノズル21内を流通する紡糸液の帯電量が非常に多くなる。
次に、図4に示す第3実施形態の製造装置1Cでは、電極3は、凹曲面部3Aにおける開口端部31aから外方に延出する延出部3Bを更に有している。延出部3Bは、製造装置1Cでは、Y方向に延びる円筒の形状をしているが、その開口端部31bがノズル21側に湾曲している。
製造装置1Cでは、電極3の延出部3Bにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Bfを、その開口端部31b側から見たとき、該開口端部31bの周縁は、円形をしている。
製造装置1Cでは、図4に示すように、電極3の延出部3Bは、凹曲面部3Aの開口端部31aからY方向に所定の長さの部分において、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の図心3Gを通る電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)に垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aと等しく形成されている。そして、製造装置1Cの延出部3Bでは、ノズル21側に湾曲する開口端部31bにおいて、垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3B’が、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aよりも小さく形成されている。このように、製造装置1Cの延出部3Bは、平面の面積S3Bが平面の面積S3Aと等しい部分を有している形態となっている。
ノズル21の先端21aと電極3との間に形成される電界が強くなり、高い帯電量が得られる観点から、製造装置1Cの延出部3Bでは、ノズル21側に湾曲する開口端部31bにおける、垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3B’は、180mm2以上であることが好ましく、470mm2以上であることが更に好ましく、そして、82000mm2以下であることが好ましく、18000mm2以下であることが更に好ましく、具体的には、180mm2以上82000mm2以下であることが好ましく、470mm2以上18000mm2以下であることが更に好ましい。
第3実施形態の製造装置1Cを用いた場合にも、第1実施形態の製造装置1Aと同様に、ノズル21の先端21aに更に電荷が集中するようになる。その結果、ノズル21内を流通する紡糸液の帯電量が非常に多くなる。
次に、図5に示す第4実施形態の製造装置1Dでは、電極3は、凹曲面部3Aにおける開口端部31aから外方に延出する延出部3Bを更に有している。延出部3Bは、製造装置1Dでは、Y方向に延びる円筒の形状の部分と、円錐台の形状の部分と、その開口端部31bがノズル21側に湾曲している部分とを、Y方向に、この順で有している。
製造装置1Dでは、電極3の延出部3Bにおけるノズル21と対向する面(凹曲面)3Bfを、その開口端部31b側から見たとき、該開口端部31bの周縁は、円形をしている。
製造装置1Dでは、図5に示すように、電極3の延出部3Bは、凹曲面部3Aの開口端部31aからY方向に所定の長さの部分において、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の図心3Gを通る電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)に垂直な方向(X方向)に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bが、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aと等しく形成されている。そして、円筒の形状の部分からY方向に所定の長さの部分において、平面の面積S3B’が漸次広く形成されており、平面の面積S3Aよりも大きく形成されている。さらに、円錐台の形状の部分よりもY方向外方の、ノズル21側に湾曲する開口端部31bにおいて、平面の面積S3B’’が、開口端部31aによって画成される平面の面積S3Aよりも広く形成されている。このように、製造装置1Dの延出部3Bは、平面の面積S3Bが平面の面積S3Aと等しい部分と、平面の面積S3Bが平面の面積S3Aよりも大きい部分とを有している形態となっている。
第4実施形態の製造装置1Dを用いた場合にも、第1実施形態の製造装置1Aと同様に、ノズル21の先端21aに更に電荷が集中するようになる。その結果、ノズル21内を流通する紡糸液の帯電量が非常に多くなる。
以上の各実施形態の製造装置1A〜1Dにおいて用いられる原料液としては、ファイバ形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液あるいは高分子化合物を加熱、溶融した融液を用いることができる。原料液に高分子溶液を用いるエレクトロスピニング法は溶液法、高分子融液を用いる方法は溶融法と呼ばれることがある。該溶液又は融液には適宜、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を配合することができる。
ナノファイバ製造用の高分子化合物としては一般に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。用いられる高分子化合物は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子化合物から任意の複数種類を組み合わせて用いることができる。
原料液に、高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
特に溶媒として水を用いる場合は、水への溶解度の高い下記のような天然高分子及び合成高分子を用いるのが好適である。天然高分子としては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。合成高分子としては、例えば部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの高分子化合物のうち、ナノファイバの調製が容易である観点から、プルラン等の天然高分子、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。
また、水への溶解度は高くないが、ナノファイバ形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの高分子化合物も用いることができる。これらの高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以上の各実施形態の製造装置1A〜1Dによって製造されるナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって測定することができる。
本発明のナノファイバ製造装置を使用して製造したナノファイバは、それを集積させたナノファイバ成型体として各種の目的に使用することができる。成型体の形状としては、シート、綿(わた)状体、糸状体などが例示される。ナノファイバ成型体は他のシートと積層したり、各種の液体、微粒子、ファイバなどを含有させたりして使用してもよい。ナノファイバシートは、例えば医療目的や、美容目的等の非医療目的でヒトの肌、歯、歯茎等に付着されるシートとして好適に用いられる。また、高集塵性でかつ低圧損の高性能フィルタ、高電流密度での使用が可能な電池用セパレータ、高空孔構造を有する細胞培養用基材等としても好適に用いられる。ナノファイバの綿状体は防音材や断熱材等として好適に用いられる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態の製造装置1A〜1Dに制限されない。
例えば、製造装置1A〜1Dにおいては、図1〜図5に示すように、電極3の凹曲面部3Aは、全体として凹球面形状をしているが、凹球面形状の内面であるノズル21と対向する面3Afが凹曲面に形成されている限りにおいて、その背面側の外面の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。
また、製造装置1A〜1Dにおいては、図1〜図5に示すように、電極3の凹曲面部3Aは、ノズル21と対向する面(凹曲面)3Afは、半球面と同じ形状をしているが、凹曲面であればよく、例えば、図6に示すような球面であってもよい。図6に示す電極3の凹曲面部3Aは、図1に示す製造装置1Aにおける略椀形の凹曲面部3Aの対向する2つの側部を、電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)と平行な面に沿って切断して形成された第1切り欠き面32a及び第2切り欠き面32bを有している。2つの切り欠き面32a,32bは互いに平行になっている。電極中心軸CLから第1切り欠き面32aまでの距離と、電極中心軸CLから第2切り欠き面32bまでの距離とは同じになっているか、又は異なっている。第1切り欠き面32aと、基台30の第1側面30aとは、好ましくは同一面上に位置している。同様に、第2切り欠き面32bと、基台30の第2側面30bとは、好ましくは同一面上に位置している。
図6に示す電極3の凹曲面部3Aは、図1に示す製造装置1Aにおける凹曲面部3Aの凹曲面3Afの面積に対して、好ましくは1%以上の面積を切り欠いて形成されていることが好ましい。また、図6に示す電極3の凹曲面部3Aは、図1に示す製造装置1Aにおける凹曲面部3Aの凹曲面3Afの面積に対して、好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下の面積を切り欠いて形成されていることが好ましい。具体的には、図6に示す電極3の凹曲面部3Aは、図1に示す製造装置1Aにおける凹曲面部3Aの凹曲面3Afの面積に対して、好ましくは1%以上50%以下、更に好ましくは1%以上20%以下の面積を切り欠いて形成されていることが好ましい。
また、製造装置1A〜1Dにおいて、ノズル21は曲率を有する曲管であってもよい。また、製造装置1においては、ノズル21を凹曲面部3Aの最底部に配置したが、それ以外の位置にノズル21を配置してもよい。
また、製造装置1A〜1Dにおいては、図1〜図5に示すように、1つの板状の基台30に、1個の製造装置1A〜1Dが配置されているが、ナノファイバの生産性を更に高める観点から、複数個配置されていてもよい。電界紡糸装置を複数並べて配置した場合でも、ノズルを電極で囲っているため、隣接する電界紡糸装置間での電場干渉が軽減できる。複数の製造装置1A〜1Dを板状の基台30に固定する場合には、各製造装置1A〜1Dを基台30の板面の方向にわたり二次元状に配置することが好ましく、ノズル21がいずれも同方向を向くように、各製造装置1A〜1Dを複数配置することが好ましい。各製造装置1A〜1Dにおいては、電極3に負の直流電圧が印加されているとともに、ノズル21が接地されている。
更に、本発明によって奏される有利な効果が損なわれない範囲において、一の実施形態の技術要素を他の実施形態の技術要素と置換してもよい。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の電界紡糸装置を開示する。
<1>
原料液を噴射する導電性のノズルを備えた原料噴射部と、
前記ノズルと電気的に絶縁して配置された凹曲面部を有する電極と、
前記ノズルと前記電極の間に電圧を発生させる電圧発生部とを備えた電界紡糸装置であって、
前記ノズルの延びる方向が、前記凹曲面部における開口端部によって画成される平面の図心か、又は該図心の近傍を通り、かつ該ノズルの先端が、該開口端部によって画成される平面内に位置するか、又は該平面の近傍に位置するように、該ノズルが配置されており、
前記電極は、前記凹曲面部における開口端部から外方に延出する延出部を更に有し、該凹曲面部及び該延出部は同電位であり、
前記電極の前記延出部は、前記凹曲面部の前記開口端部によって画成される平面の図心を通る電極中心軸の延びる方向に垂直な方向に沿って断面視した際の該延出部で画成される平面の面積が、該凹曲面部の該開口端部によって画成される平面の面積よりも大きいか又は等しい部分を有している電界紡糸装置。
<2>
前記電極の前記凹曲面部は、真球の球殻の略半球面の形状をしている前記<1>に記載の電界紡糸装置。
<3>
前記電極の前記延出部は、円筒の形状をしている前記<1>又は<2>に記載の電界紡糸装置。
<4>
前記電極の前記凹曲面部は、平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっている前記<1>〜<3>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<5>
前記電極の前記凹曲面部及び前記延出部は、別々の部材から形成されており、前記凹曲面部及び前記延出部が、粘着剤又はネジで接合されて、一体化した前記電極が形成されている前記<1>〜<4>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<6>
前記凹曲面部と前記延出部とを接合固定する前記粘着剤としては、エポキシ樹脂系の接着剤を用いる前記<5>に記載の電界紡糸装置。
<7>
前記凹曲面部と前記延出部とを接合固定する前記ネジとして、誘電体製や木製のものを使用する前記<5>に記載の電界紡糸装置。
<8>
前記電極は、その前記ノズルと対向する面の略全面が、表面に誘電体の露出した被覆体で被覆され、該電極と該被覆体とが接している前記<1>〜<7>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<9>
前記被覆体に使用する誘電体として、アルミナ、ベークライト、ナイロン、塩化ビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種以上の絶縁材料を用い、好ましくはナイロンを用いる前記<8>に記載の電界紡糸装置。
<10>
前記被覆体を構成する、表面に露出した誘電体の厚みは、0.8mm以上、好ましくは2mm以上、更に好ましくは8mm以上であり、具体的には0.8mm以上25mm以下、好ましくは2mm以上20mm以下、更に好ましくは8mm以上15mm以下である前記<8>又は<9>に記載の電界紡糸装置。
<11>
前記電極の前記凹曲面部及び前記延出部の少なくとも一方は、加熱又は冷却する調整機構を備えている前記<1>〜<10>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<12>
前記電極の前記凹曲面部及び前記延出部の少なくとも一方は、前記ノズルの先端を観察する貫通孔を備えている前記<1>〜<11>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<13>
前記ノズルの基部の近傍に位置し、該ノズルの延びる方向に沿って、かつ該ノズルの先端方向に向けて、該ノズルと前記電極との間に空気流を噴射する空気流噴射部を備えている前記<1>〜<12>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<14>
前記空気流噴射部の貫通孔は、前記ノズルを挟んで対称な位置に形成されており、該ノズルを囲む環状の貫通孔である前記<13>に記載の電界紡糸装置。
<15>
前記空気流の流速は、10m/sec以上、好ましくは20m/sec以上であり、そして、60m/sec以下、好ましくは50m/sec以下であり、具体的には、10m/sec以上60m/sec以下、好ましくは20m/sec以上50m/sec以下である前記<13>又は<14>に記載の電界紡糸装置。
<16>
前記空気流噴射部に対向する位置に、電界紡糸されたナノファイバを捕集する捕集部を備えている前記<1>〜<15>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<17>
前記捕集部は、捕集用電極と、該捕集用電極及び前記ノズルの間に配された捕集体とを備えている前記<16>に記載の電界紡糸装置。
<18>
前記ノズルがいずれも同方向を向くように、前記電界紡糸装置を複数配置した前記<1>〜<17>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<19>
前記凹曲面部における開口端部によって画成される平面は円形となっており、 前記凹曲面部における前記開口端部によって画成される円の半径の値が、8mm以上、好ましくは13mm以上であり、そして、170mm以下、好ましくは80mm以下であり、具体的には、8mm以上170mm以下、好ましくは13mm以上80mm以下である前記<1>〜<18>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<20>
前記開口端部によって画成される平面の円形が楕円であり、該楕円の離心率は、0以上0.6未満、好ましくは0以上0.3未満であるか、又は
前記開口端部によって画成される平面の円形が離心率0の真円である前記<1>〜<19>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<21>
前記電極における前記凹曲面部と前記延出部との境界は、電極中心軸の延びる方向に沿って断面視した際に、該凹曲面部における前記ノズルと対向する面の電極中心軸の延びる方向の曲率が0となる位置である前記<1>〜<20>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<22>
前記電極の延出部は、導電性材料から構成されている前記<1>〜<21>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<23>
前記延出部の開口端部によって画成される円形は、前記凹曲面部の前記開口端部の周縁の形状と相似の形状であり、
前記延出部の開口端部の周縁は、前記凹曲面部の前記開口端部の周縁と同じ、真円形である前記<1>〜<22>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<24>
前記延出部は、その電極中心軸の延びる方向の長さが、5mm以上、好ましくは15mm以上であり、そして、340mm以下、好ましくは170mm以下であり、具体的には、5mm以上340mm以下、好ましくは15mm以上170mm以下である前記<1>〜<23>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<25>
前記延出部は、その開口端部によって画成される円の半径の値が、8mm以上、好ましくは13mm以上であり、そして、366mm以下、好ましくは170mm以下であり、具体的には、8mm以上366mm以下、好ましくは13mm以上170mm以下である前記<1>〜<24>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<26>
前記延出部は、その電極中心の延びる方向の長さの、前記延出部の開口端部によって画成される円の半径の値に対する比が、0.1以上、好ましくは0.3以上であり、そして、2以下、好ましくは1以下であり、具体的には、0.1以上2以下、好ましくは0.3以上1以下である前記<1>〜<25>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<27>
前記延出部の開口端部によって画成される平面の円形は楕円であり、該楕円の離心率は、0以上0.6未満、好ましくは0以上0.3未満であるか、又は
前記延出部の開口端部によって画成される平面の円形は離心率0の真円である前記<1>〜<26>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<28>
前記凹曲面部の前記開口端部に、該開口端部から、電極中心軸の延びる方向に垂直な方向のノズルと反対側の外方に延びるフランジ部を設け、更に、前記延出部の凹曲面部側の端部にも、電極中心軸の延びる方向に垂直な方向のノズルと反対側の外方に延びるフランジ部を設け、
前記凹曲面部のフランジ部と前記延出部のフランジ部とを、粘着剤又はネジを介して、接合する前記<1>〜<27>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<29>
前記凹曲面部及び前記延出部は、それぞれ、厚みが略均等な板金、或いは導電性のシート等から形成されており、
前記板金の材料としては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウムを用い、
前記導電性のシートとしては、銀、金、パラジウム、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属製のシート、或いは、カーボンブラック、グラファイト粉等の炭素系のフィラー等の導電性粉末を含有したシートを用い、
前記金属製のシートとしては、アルミテープ、家庭用のアルミホイル用いる前記<1>〜<28>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<30>
前記ノズルは、前記図心か又は該図心の近傍と、前記凹曲面部の凹曲面における最底部に設けられた開口の中心か、又はその中心の近傍とを通るように配置されており、前記ノズルは、その延びる方向が、電極中心軸の延びる方向と平行であり、該ノズルが電極中心軸上に配されている前記<1>〜<29>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<31>
前記凹曲面部における前記開口端部によって画成される平面の最長の対角線をLとしたとき、該平面上に前記図心を同じくして描かれる、半径がL/10である仮想円を考えた場合、前記ノズルは、その延びる方向が、該仮想円の内側と、前記凹曲面部の凹曲面における最底部とを通るように配置されているか、
前記凹曲面部における前記開口端部によって画成される平面の最長の対角線をLとしたとき、該平面上に前記図心を同じくして描かれる、半径がL/20であるものを考えた場合、前記ノズルは、その延びる方向が、半径がL/20である該仮想円の内側と、前記凹曲面部の凹曲面における最底部とを通るように配置されているか、又は、
前記ノズルは、その延びる方向が、前記図心と、前記凹曲面部の凹曲面における最底部とを通るように配置されている前記<1>〜<31>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<32>
前記ノズルの先端が、前記開口端部によって画成される平面よりも前記凹曲面部の凹曲面の内側に位置するように前記ノズルを配置するか、又は、
前記ノズルの先端が、前記開口端部によって画成される平面よりも1〜10mm内側に位置するように前記ノズルを配置する前記<1>〜<31>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<33>
前記ノズルが接地されており、前記電極には前記電圧発生部の直流高圧電源により負電圧が印加されていることから、該電極が陰極になり、かつ該ノズルが陽極になり、該電極と該ノズルとの間に電圧が発生し、電界が形成される前記<1>〜<32>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<34>
前記凹曲面部の凹曲面は、真球の球殻の略半球面と同じ形状をしている前記<1>〜<33>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<35>
前記延出部は、円錐台の形状をしており、
前記延出部は、その円錐台形状の内面であるノズルと対向する面が凹曲面に形成されている前記<1>〜<34>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<36>
前記延出部は、電極中心軸の延びる方向に延びる円筒の形状をしており、その開口端部が前記ノズル側に湾曲している前記<1>〜<34>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<37>
前記延出部は、電極中心軸の延びる方向に延びる円筒の形状の部分と、円錐台の形状の部分と、その開口端部が前記ノズル側に湾曲している部分とを、電極中心軸の延びる方向に、この順で有している前記<1>〜<34>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<38>
前記延出部は、前記円錐台の形状の部分よりも電極中心軸の延びる方向外方の、前記ノズル側に湾曲する開口端部において、平面の面積が、前記凹曲面部における開口端部によって画成される平面の面積よりも広く形成されている前記<37>に記載の電界紡糸装置。
<39>
前記電極の前記凹曲面部は、略椀形の前記凹曲面部の対向する2つの側部を、電極中心軸の延びる方向)と平行な面に沿って切断して形成された第1切り欠き面及び第2切り欠き面を有しおり、
前記第1切り欠き面及び前記第2切り欠き面は互いに平行になっている前記<1>〜<38>の何れか1に記載の電界紡糸装置。
<40>
前記電極の前記曲面部は、前記凹曲面部の凹曲面の、1%以上の面積を切り欠いて形成されており、50%以下、好ましくは20%以下の面積を切り欠いて形成されており、具体的には、1%以上50%以下、好ましくは1%以上20%以下の面積を切り欠いて形成されている前記<39>に記載の電界紡糸装置。
<41>
前記<1>〜<40>の何れか1に記載の電界紡糸装置を用いて、電界紡糸されたナノファイバを製造するナノファイバの製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
〔実施例1〕
図1及び図2に示す製造装置1Aを用いた。該製造装置1Aにおける原料液の帯電量を評価するため、水をモデル原料液として用い、水の帯電量を測定した。帯電量の測定方法は後述する。水はファイバ化しないため、帯電した液の捕集が容易であり、後述の方法で簡便に帯電量を測定することができる。また、後述する製造方法で、ナノファイバの製造も行った。電極3を構成する凹曲面部3Aは、電極中心軸CLの延びる方向(Y方向)の長さが39mmであり、開口端部31aによって画成される円の半径の値が45mmであり、凹曲面3Afの面積自体の値が8482mm2であった。また、電極3を構成する延出部3Bは、Y方向の長さが15mmであり、開口端部31bによって画成される円の半径の値が45mmであり、凹曲面3Bfの面積自体の値が4241mm2であった。また、凹曲面部3Aの開口端部31aによって画成される平面の面積S3AとX方向に沿って断面視した際の延出部3Bで画成される平面の面積S3Bとは、同じ6361mm2であった。電極3の凹曲面部3A及び延出部3Bは、アルミニウム製の板金の材料を用いて作製した。ノズル21は、その延びる方向と、電極中心軸CLの延びる方向とを一致させた。ノズル21から水を噴射する速度は1g/minとし、ノズル21の内径は280μm、長さは15mmとした。また、電極3に−5kVの直流電圧を印加した。ノズル21は接地した。得られた結果を表1に示す。
〔実施例2および3〕
実施例2に用いる製造装置に関し、電極3を構成する延出部3Bは、Y方向の長さが30mmであり、凹曲面3Bfの面積自体の値が8482mm2であった。また、実施例3に用いる製造装置に関し、電極3を構成する延出部3Bは、Y方向の長さが30mmであり、凹曲面3Bfの面積自体の値が12723mm2であった。実施例2及び実施例3の製造装置は、それ以外の構成は、実施例1の製造装置1Aと同様であった。
〔参考例1〕
実施例の製造装置である図1及び図2に示す製造装置1Aから、延出部3Bを除き、凹曲面部3Aのみから形成された電極3を有する製造装置を用いた。参考例1の製造装置は、それ以外の構成は、実施例1の製造装置1Aと同様であった。該製造装置を用いて、後述する測定方法により水の帯電量を測定し、また、後述する製造方法でナノファイバの製造を行った。得られた結果を表1に示す。
以上の実施例と参考例において、水の帯電量は図7に示す装置を用いて以下の方法で測定した。なお、図7は、実施例1〜3の製造装置1A、又は参考例1の製造装置に対するものである。
製造装置1Aに対しては、図7に示すように、ノズル21の延びる方向が鉛直下向きになるように、装置全体を配置する。そしてノズル21と電極3との間に−5kVの直流電圧を高電圧発生装置(松定プレシジョン(株)製 HAR−60R1−LF)で印加し、ノズル21から水を1g/minの速度で噴射する。この状態で、帯電した水は重力によって略鉛直下方に滴下する。滴下した水滴をファラデーケージ(春日電機(株)製 KQ−1400)内に接地した金属容器に受け、一定時間内(数分内)に溜まった水の帯電量をクーロンメータ(春日電機(株)製 NK−1001、1002)で測定した。同時に、溜まった水の質量を化学天秤で測定し、両者の比から水の単位質量あたりの帯電量(nC/g)を求めた。なお、ノズル21と電極3との間に印加する電圧を−5kVよりも低くする(印加する電圧の絶対値を5kVよりも大きくする)と、帯電した水が霧散して金属容器に水滴を捕集できないことがあったため、測定はすべて−5kVの印加電圧で行った。
実施例1〜3及び参考例1に示す製造装置を用いてナノファイバの製造を行った。製造は、23℃、20%RHの環境下で行った。捕集用電極は、ノズルの先端から900mm隔てた位置に配置した。電極3を接地し、ノズルに+25kV、捕集用電極に−30kVの直流電圧を印加した。ノズルアセンブリの気体流噴出部から空気を200L/minで噴出させた状態下に、紡糸液を0.5mL/minの吐出量で10分間にわたって連続して吐出させた。紡糸液として、プルラン(株式会社林原製)の濃度が17%となるよう調整した溶液を用いた。溶媒には、主に水を用い、エタノールを15%配合した。吐出によって形成されたナノファイバを、捕集用電極に隣接して配置したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面に堆積させた。このようにしてナノファイバを得た。得られたナノファイバを走査型電子顕微鏡で観察し、ファイバの繊維径を測定した。測定結果を表1に示す。
表1に示す結果から、実施例1〜3の製造装置1Aは、参考例1の製造装置よりも、帯電量が大幅に増加し、また、それに伴い繊維径が減少することがわかった。その為、実施例1〜3の製造装置1Aを用いれば、ナノファイバの生産性が従来よりも更に高まることが期待できる。
〔実施例4〕
実施例2の製造装置を用いてナノファイバの製造を行った。製造は、23℃、25%RHの環境下で行った。捕集用電極は、ノズルの先端から1400mm隔てた位置に配置した。電極3を接地し、ノズルに+25kV、捕集用電極に−30kVの直流電圧を印加した。ノズルアセンブリの気体流噴出部から空気を200L/minで噴出させた状態下において、紡糸液の吐出量を0.3〜1mL/min/ノズルの範囲で変化させながら、各吐出量において10分間にわたり連続して吐出した。紡糸液として、PVP K30(和光純薬工業株式会社製、ポリビニルピロリドン、分子量abt.40,000)の濃度が18%、Luviskol(登録商標) K90(BASF社製、ポリビニルピロリドン、K値88.0〜96.0)の濃度が2%となるよう調整した溶液を用いた。溶媒は、水とエタノールが1:1の割合となるよう配合した。吐出によって形成されたナノファイバを、捕集用電極に隣接して配置したPETフィルムの表面に堆積させた。紡糸時のノズル先端の様子を高速カメラ(KEYENCE製)で観察し、ノズル先端での紡糸の挙動が不安定となり、捕集されたナノファイバに十分に乾燥できず液滴欠陥の発生が目視で確認できた時点で、紡糸不可と判断し、その1つ前段階の吐出量条件を安定紡糸可能吐出量の上限値(最大吐出量)として記録した。得られた結果を表2に示す。
〔実施例5〕
実施例2の製造装置を、ノズルがいずれも同方向を向くように2個並べた状態でナノファイバの製造を行った。それ以外の構成は、実施例4と同様であった。得られた結果を表2に示す。なお、結果は2個の合計値である。
〔実施例6〕
実施例2の製造装置を、ノズルがいずれも同方向を向くように4個並べた状態でナノファイバの製造を行った。それ以外の構成は、実施例4と同様であった。得られた結果を表2に示す。なお、結果は4個の合計値である。
〔参考例2〕
参考例1の製造装置を用いてナノファイバの製造を行った。それ以外の構成は、実施例4と同様であった。得られた結果を表2に示す。
〔参考例3〕
参考例1の製造装置を、ノズルがいずれも同方向を向くように2個並べた状態でナノファイバの製造を行った。それ以外の構成は、実施例4と同様であった。得られた結果を表2に示す。なお、結果は2個の合計値である。
〔参考例4〕
参考例1の製造装置を、ノズルがいずれも同方向を向くように4個並べた状態でナノファイバの製造を行った。それ以外の構成は、実施例4と同様であった。得られた結果を表2に示す。なお、結果は4個の合計値である。
表2に示す実施例4〜6及び参考例2〜4の結果から、実施例2の製造装置1Aを複数個並べて配置した製造装置は、参考例1の製造装置を複数個並べて配置した製造装置よりも、最大吐出量が大幅に増加することがわかった。その為、実施例2の製造装置1Aを用いれば、ナノファイバの生産性が従来よりも更に高まることが期待できる。