JP2017071528A - 層間熱接合材料およびパワー半導体用冷却システム - Google Patents

層間熱接合材料およびパワー半導体用冷却システム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、150℃以上の高温下での長期間使用及び高温と低温との間での繰り返し使用において、優れた熱抵抗低減効果を有し、化学的な安定性に優れる層間熱接合材料(TIM)及びパワー半導体用冷却システムを提供する事を課題とする。【解決手段】炭素純度が99.0%以上、比重が1.80以上、厚さが10μm以下0.1μm以上、算術平均表面粗さ(Ra)が0.2μm以上10μm以下のグラファイト質膜である事を特徴とする層間熱接合材料、及び少なくともパワー半導体と、ヒートシンクと、その間に挟持される前記層間熱接合材料とを含む事を特徴とするパワー半導体用冷却システム。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒートシンクとパワー半導体チップ間の熱抵抗を低減し、温度変化に伴って発生する歪応力を緩和し、発熱に伴っても低分子有機化合物の蒸発がなく、耐熱性に優れた層間熱接合材料、およびパワー半導体用冷却システムに関する。
パワー半導体は電源(電力)の制御や供給を行う半導体であり、自動車、ハイブリッド車、電車、家電製品などの省電力化、省スペース化、軽量化に重要な役割を果たしている(非特許文献1)。特に近年では自動車、家電製品を始め、あらゆる分野での省電力化、省スペース化、軽量化が必須の課題となっており、これらの目的でパワー半導体が広く利用されている。なお、本発明でパワー半導体とは1A以上、電圧で20V以上のダイオード、トランジスタ、FET等の事と定義する。
現在、シリコンパワー半導体は、スイッチング電源やインバータとしてテレビやエアコンの小型、省エネルギー化に貢献し、産業界において不可欠の半導体素子になっている。このシリコンパワー半導体のデバイス性能の改善は現在限界に近づいており、さらなる小型化、省エネルギー化のために、新たな高性能パワー半導体の出現が期待されている。炭化ケイ素(SiC)やチッ化ガリウム(GaN)はその様な次世代パワー半導体として位置づけられ、これらのパワー半導体による大幅な省スペース化と省電力化の実現が期待されている。しかしながらSiCやGaNなどのデバイスにおいては、高密度化、高性能化が達成されると同時に、その素子温度範囲は150℃から200℃まで上昇する。今後パワー半導体の高密度化はさらに促進されると考えられるため、素子の発熱温度はさらに200℃以上に上昇すると予測されており、素子を正常に作動させるためには、その放熱化技術開発が重要な課題となっている。
具体的な放熱・冷却技術として、いくつかの手法が報告されている。例えば、パワー半導体の冷却方法は従来片面放熱、両面放熱であったが、最近ではさらには冷却効率の高い直接冷却構造とすることが報告されている(非特許文献2)。しかし、直接冷却法では、ヒートシンクを冷却媒体等で直接冷却する事により、熱源とヒートシンク間での熱膨張係数の差が拡大して歪応力が大きくなるためその歪を緩和・吸収させる必要がある、と言う新たな課題が明らかになっている。そのため、例えば基材とヒートシンクの線膨張係数を可能な限り近づける、または発生する熱を放出するために基材の熱伝導率を高める、などの手法によりその歪応力を緩和する試みが行われている。
このような目的のために、発熱体であるパワー半導体とヒートシンクの間に層間熱接合材料(Thermal interface material:TIM)が用いられる。代表的な商品としては高分子系の接着剤に放熱性の高いフィラーなどを添加してその熱伝導率を向上させたTIMがある。この高分子系TIMは熱抵抗を低減すると同時に、その柔らかさによって歪応力を緩和する事も出来る(特許文献1、2)。しかしながら、高分子TIMは高温での加熱・冷却を繰り返すことにより高分子が少しずつ劣化して硬くなり、その熱抵抗低減効果、歪緩和効果のいずれもが低下する。高分子としてはシリコーン樹脂やエポキシ樹脂が用いられる事が多いが、シリコーン系樹脂は加熱により環状シロキサンなどの分解物が放出されることが知られており、その分解物の影響により周辺の配線などを汚染することが知られている。また、エポキシ樹脂系の接着材の場合は合成時の副生成物である塩素がアルミや銅の配線を腐食することが問題となっている。また熱伝導性をあげるためにフィラーを50Vol%以上に高充填するため粘度が上昇し、接着剤が硬くなり、実際の工程では塗工しにくくなるといった課題も指摘されている。
パワー半導体とヒートシンクの間に用いられるTIMとしてサーマルグリースが用いられる事もある。一般的に、この様なグリースでは耐熱性の観点からシリコーン系のオイルが用いられる。この様なシリコーン系のオイルを含むものは200℃以上の加熱により環状シロキサンなどの分解物が放出されることが知られており、その分解物の周辺回路などへの悪影響は同じである。
以上のような背景から優れた熱抵抗低減効果を有し、化学的な安定性に優れ、好ましくはヒートシンクと半導体チップ間に発生する歪応力を緩和できる層間熱接合材料の開発が急務となっていた。
特許第3571009号公報 特許第3483817号公報
材料化学2015年1月号 35号 富士電機技報 2013年 Vol.86 No.4
本発明は、150℃以上の高温下での長期間使用及び高温と低温との間での繰り返し使用において、優れた熱抵抗低減効果を有し、化学的な安定性に優れ、好ましくはヒートシンクと半導体チップ間に発生する歪応力を緩和できる層間熱接合材料(TIM)及びパワー半導体用冷却システムを提供する事を課題とする。
以上の様な背景から、本発明者らは長期間、150℃以上の高温領域での使用が可能で、化学的安定性に優れ、また加熱と冷却を繰り返しても性能の劣化が少なく、好ましくはパワー半導体素子とヒートシンク間における線膨張係数の差により生ずる応力歪を解消できる様な高性能TIMの開発を行った。我々は、グラファイト材料の柔らかさ、潤滑性(滑り易さ)に注目し、その様なTIMをシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などのバインダー樹脂を全く使用する事無く、上記課題が解決できないかについて鋭意検討した。その結果、炭素純度が99.0%以上であり、比重が1.80以上であり、算術平均表面粗さ(Ra)が0.2μm以上10μm以下であり、厚さが10μm以下0.1μm以上である(好ましくは面方向の電気伝導度が14000S/cm以上であり、静止摩擦係数が0.2以下である)グラファイト質膜とする事によって、10N/cm2の荷重下での熱抵抗値を0.40℃・cm2/W以下にする事が出来、150℃以上の環境下で長時間使用しても全く熱抵抗値に変化が生じず、しかも低分子分解物の発生も全くないTIM材料の開発に成功し、本発明を成すに至った。以下に詳しく本発明の手法について述べる。
<従来のTIM>
TIMの熱抵抗特性はTIM材料そのものに起因するバルク熱抵抗(RB)と、界面熱抵抗(RS)の2種類からなっており、当然界面熱抵抗RSは2ヶ所(TIMの上面と下面)存在する。一般的にRBを小さくするためには材料自体の熱伝導率を大きくする事、およびTIM層の厚さを小さくする事が必要となる。一方RSを小さくするにはTIMを柔らかくして接合界面を十分に接触させる事が必要である。接合界面は完全な平面では無いために、TIMが硬いと界面に熱伝導率の非常に小さい空気層が存在する事となり、これがTIMの特性を著しく低下させる事になる。TIMが柔らかい事は接合面の凹凸部分にTIMが入り込み空気層が存在しないようにする働きを持っている。
この様にTIMを柔らかくするために一般的には柔軟性のある高分子材料が使用される。これらの高分子としてはシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などが使用されるが、本発明の目的であるパワー半導体用のTIMとしては、上記の理由によりこれらは使用できない。
高分子系TIMとは異なり、炭素系のTIMが商品化されている。しかしながら従来の炭素系TIMでは、そのRSを小さくするためにその表面にシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの柔らかい高分子材料を塗布する事が行なわれている。この様な表面処理は一般に炭素系TIMでは必須と考えられている。しかしながら、この様な表面処理を行なった炭素系TIMは高分子系TIMの場合と同じ理由で、パワー半導体用TIMとして使用できないことは明らかである。
<必要特性>
パワー半導体の冷却システムは前述の通り直接冷却法が主流になりつつあり、その様な系で使用されるTIMの熱抵抗値は小さいほど好ましい事は言うまでもない。好ましいTIMの熱抵抗値は0.40℃・cm2/W以下である。
パワー半導体の発熱温度は現在150℃を上回る温度に達しており、TIMの耐熱温度は150℃以上である事が好ましく、175℃以上である事はより好ましく、200℃以上である事はさらに好ましく、250℃以上である事は最も好ましい。従ってTIMはこれらの加熱試験において分解物が発生しない事が必要である。
直接冷却法においては、上記の様にパワー半導体の温度が150℃以上であるのに対して、例えば、水冷ヒートシンクは20℃程度であるからこの様な温度差に対して安定に作動し、その繰り返しによって熱抵抗特性が変化しない事が必要である。すなわち、パワー半導体用のTIMには、上記熱抵抗特性、耐熱特性、繰り返し安定性の3条件を満足する必要がある。
<必要特性実現の方法>
必要特性実現のためには、まず耐熱特性の点から、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの柔らかい高分子材料は使用出来ないと判断した。その様な場合に解決するべき第一の課題は、これらの高分子を用いずに如何にして界面熱抵抗(RS)を小さくするかと言う事になる。そこで、基本的に炭素のみから成る各種の膜を、後述する高分子焼成法により作製し、その熱抵抗値を測定した。検討した因子は、処理温度を変える事による炭素の結晶系の違い(アモルファス炭素であるかグラファイト化炭素であるか)、炭素膜の厚さの違い、膜表面の凹凸状態の違いである。特に凹凸状態の違いは界面熱抵抗(RS)値に大きな影響を与えると考え、詳細に検討した。
その結果、炭素純度が99.0%以上、比重が1.80以上、厚さが10μm以下0.1μm以上、算術平均表面粗さ(Ra)が0.2μm以上10μm以下のグラファイト質膜をTIMとして用いた場合に、その熱抵抗値を0.40℃・cm2/W以下とする事が出来る事を発見した。純度の条件は200℃の加熱によって分解物が全く発生しないための条件である。高分子の熱処理によって99.0%以上の炭素純度を実現するためには、不活性ガス中、あるいは真空中で1000℃以上の温度で加熱・炭素化する事が必要であり、本発明の場合には2600℃以上で熱処理する事で炭素純度の条件を達成できる。この様な処理を行なった膜は300℃、10時間の加熱によっても減量(揮発成分)は全く観察されない。この事は同時に、本発明においては表面処理の目的のためのシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などは全く使用しない事も意味している。
比重の条件は本発明のグラファイト質膜TIMが、界面熱抵抗低減のために柔らかい必要がある事、と関連している。炭素はグラファイト化が進行するに従い、その構造に起因して柔らかくなるが、2400℃以上の条件で熱処理する事により、グラファイト構造が発達し、それに伴い比重1.80以上の条件が達成される。
厚さの条件はバルク熱抵抗(RB)を小さくするための条件である。本発明の目的にはその厚さが10μm以下である事が必要である。本発明の厚さの条件の中で薄い方の条件(0.1μm以上)は実質的にTIMとして取り扱いが可能な膜としての条件である。0.1μm未満のグラファイト質膜は事実上そのハンドリングが極めて困難で、実用的なTIMとはならない。
本発明のTIMの算術平均表面粗さ(表面粗度、表面粗さともいう)(Ra)が0.2μm以上である事、と言う条件は界面熱抵抗(RS)を低減するための条件である。通常は界面熱抵抗低減のためにはその表面粗度は小さい方がよいと推測されるが、検討の結果、本発明のグラファイト質膜の場合にはRa値は0.2μm以上である事が分かった。これは本発明によって始めて明らかになった従来の常識とは異なる点である。表面粗度が0.2μm以上である事がRs低減に有効である理由は、荷重によってTIMを圧縮する際に、柔らかいグラファイト質膜の凹凸部分が界面に、より密に接触するためであると考えている。
一方で、本発明のTIMの場合、表面粗度が大き過ぎるとRsの値は増加する。本発明の表面粗度は10μm以下である。これは荷重によってTIMを圧縮する際に、表面粗度が大きすぎる場合には荷重によってもTIM膜の凹凸部分が解消されず、密に接触する事が出来ないためであると考えている。
Raの値は具体的には本発明のグラファイト質膜のシワやうねりの程度を表現している。本発明のグラファイト質膜のシワは膜全体にわたって均一である事が好ましく、不均一である事は好ましくない。ここで均一なシワとは、例えば、図1(a)に示すようなシワの事を言い、不均一なシワとは、例えば図1(b)に示すようなシワの事を言う。不均一なシワのあるグラファイト質膜をTIMとして使用する場合、圧縮によって大きなシワの部分でグラファイト質膜が多重に折り重なることが起こり密な界面接触が出来なくなる。そのため結果的にTIM膜の界面熱抵抗が増加する。
表面凹凸の評価は既存の方法、すなわち触針式表面粗さ計や、レーザー顕微鏡等の光学的方法や、STM(Scanning Tunneling Microscope)、AFM(Atomic Force Microscope)等の方法により評価する事が出来る。表面凹凸の指標としては算術平均表面粗さRa、輪郭曲線要素の平均長さRsm、最大高さRz、十点平均粗さRzjisなどにより表すことができる。これらに関する規定としては、例えばJIS B0601−1994を適用または準用することができるが、本発明の範囲の厚さのグラファイト質膜の場合には、Raの値を本発明の大きさの範囲に作製できれば、シワの均一性はほぼ好ましい程度に抑える事ができる。
静止摩擦係数が0.2以下という好ましい条件は、本発明のTIMが滑り易く、加熱による発熱体の膨張による歪を、この滑性機能によって緩和する事を意味している。炭素質膜がグラファイト質膜である場合には静止摩擦係数が小さくなり、滑りによって歪を緩和する目的のためには有益である。
本発明の炭素質膜がグラファイト質膜であるという事は、X線回折やレーザーラマン測定によって確認する事ができる。例えば、炭素のレーザーラマン測定では、ほぼ完全なグラファイトである場合には1600cm-1付近に一本のラマンバンドが出現し、一方、アモルファス(未組織)炭素においては1350cm-1付近に一本のラマンバンドが出現する。従って炭素質膜がグラファイト質膜であるかどうかを判断するにはこの二つのラマンバンドの強度比を測定すればよい。強度比をR(R=R1600/R1350)とすると、本発明のグラファイト質膜は、Rの値が5.0以上と定義される。
本発明のグラファイト質膜はグラファイトのBasal面が膜面方向に優先的に配向している事が好ましい。この様な優先配向は膜面方向の電気伝導度や熱伝導度を測定する事で確認できる。本発明においては膜面方向の電気伝導度は14000S/cm以上である事が好ましい。この様な優先配向を熱伝導率の値で表現すると、1400W/mK以上であってもよい。この様な所定の電気伝導度や熱伝導度を持つグラファイト質膜はグラファイトのBasal面が膜面方向に優先的に配向しているので、面表面あるいは面間での滑りが起こり易く、本発明の好ましい態様で、静止摩擦係数が0.2以下という物性を実現できる。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)炭素純度が99.0%以上、比重が1.80以上、厚さが10μm以下0.1μm以上、算術平均表面粗さ(Ra)が0.2μm以上10μm以下のグラファイト質膜である事を特徴とする層間熱接合材料。
(2)静止摩擦係数が0.2以下であり、膜面のレーザーラマン測定において1600cm-1付近のラマンバンドと1350cm-1付近のラマンバンドの強度比R(R=R1600/R1350)が5.0以上であり、面方向の電気伝導度が14000S/cm以上のグラファイト質膜である事を特徴とする(1)に記載の層間熱接合材料。
(3)10N/cm2荷重時の熱抵抗値が0.40℃・cm2/W以下を示す事を特徴とする(1)又は(2)に記載の層間熱接合材料。
(4)少なくともパワー半導体と、ヒートシンクと、その間に挟持される(1)〜(3)のいずれかに記載の層間熱接合材料を含む事を特徴とする、パワー半導体用冷却システム。
(5)層間熱接合材料が、パワー半導体とヒートシンクの両者に挟まれた状態で荷重が印加され、その荷重の大きさが10N/cm2以上である、(4)に記載のパワー半導体用冷却システム。
(6)荷重の印加が、発熱素子又はヒートシンクの少なくともどちらか一方又は両方に形成されたビスの締め付けによるものである(5)に記載のパワー半導体用冷却システム。
本発明によれば、150℃以上の高温下での長期間使用及び高温と低温との間での繰り返し使用において、優れた熱抵抗低減効果を有し、化学的な安定性に優れ、好ましくはヒートシンクと半導体チップ間に発生する歪応力を緩和できる。
図1(a)は、グラファイト質膜の均一なシワの状態、図1(b)は不均一なシワの状態を示す図である。 図2は、パワー半導体用冷却システムとして用いた場合の冷却効果を評価するための試験例を示す概略断面図である。
以下に本発明の詳細について述べるが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
1.グラファイト質膜の製造方法
本発明のTIMに使用するグラファイト質膜は、高分子膜から得られる炭素化膜をグラファイト化することによって製造可能であり、特にその適切な段階でスペーサーを用いて炭素化・グラファイト化処理を施すことが重要である。まず始めに、高分子膜から炭素化膜を経てグラファイト質膜にする基本部分について詳述する。
<高分子膜原料>
前記高分子膜原料としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である事が好ましい。高分子膜からグラファイト質膜を作製する場合は高分子中の水素、酸素、窒素などの元素を加熱処理により脱離させ炭素源素を残留させる必要がある。そのためにポリエチレンなどの様に加熱により分解、ガス化して散逸する熱可塑性の高分子膜は本発明の目的には適さない。
<ポリイミドの合成、製膜>
本発明の目的に最も適した高分子膜の例として芳香族ポリイミドを挙げる事ができる。ここでは、その様な芳香族ポリイミドの合成、製膜について記載する。中でも以下に記載する酸二無水物(特に芳香族酸二無水物)とジアミン(特に芳香族ジアミン)からポリアミド酸を経て作製される芳香族ポリイミドは本発明のグラファイト質膜作製のための高分子膜原料として特に好ましい。
前記酸二無水物は、ピロメリット酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。特に、直線的で剛直な構造を有した高分子構造を持つほどポリイミド膜の配向性が高くなること、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
前記ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を用いることができる。これらは、単独で、または任意の割合の混合物で用いることができる。さらにポリイミド膜の配向性を高くすること、入手性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成する事が好ましい。
ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類の両方又は片方をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法があるが、そのいずれを用いてもよい。
本発明のポリイミドは公知の手法によって製膜できる。例えば、上記ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液をエンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。具体的にケミカルキュアによる膜の製造法は以下のようになる。まず上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量のイミド化促進剤を加え支持板やPET等の有機フィルム、ドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延又は塗布して膜状とし、有機溶媒を蒸発させることにより自己支持性を有する膜を得る。次いで、これを更に加熱して乾燥させつつイミド化させ、ポリイミド膜を得る。加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲の温度が好ましい。さらに、ポリイミドの製造工程中に、収縮を防止するために膜を固定したり、延伸したりする工程を含む事が好ましい。
本発明のTIMの厚さは10μm以下0.1μm以上の範囲であるが、この様な範囲のグラファイト質膜を得るためには原料高分子膜の厚さは25μm〜0.2μmの範囲である事が好ましい。これは、芳香族ポリイミドの場合、最終的に得られるグラファイト質膜の厚さは一般に出発高分子膜が1μm以上では厚さの60〜40%程度となり、1μm未満では50%〜30%程度となる事が多い事によっている。
<炭素化・グラファイト化>
次に、ポリイミドに代表される高分子膜の炭素化・グラファイト化の手法について述べる。本発明では出発物質である高分子膜を不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度で行う。通常ポリイミド膜は500〜600℃付近で熱分解し、1000℃付近で炭化する。予備処理の段階では出発高分子膜の配向性が失われない様に、膜の破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
上記の方法で炭素化された膜を高温炉内にセットし、グラファイト化を行なう。炭素化膜のセットはCIP材やグラッシーカーボン基板等の自己支持性基板に挟んで行う事が出来る。グラファイト化は通常2600℃以上の高温で行われるが、この様な高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当である。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来る。熱分解と炭素化によりその面積は元のポリイミド膜より約10〜40%程度収縮し、グラファイト化の過程では逆に約10%程度拡大する事が多い。
本発明においては膜面方向の電気伝導度は14000S/cm以上である事、熱伝導度は1400W/mK以上である事が好ましいが、この様な物性のグラファイト質膜を得るためには2600℃以上で熱処理する事が好ましい。処理温度が2800℃以上である事はより好ましく、3000℃以上の温度で処理する事は最も好ましい。この処理温度はグラファイト化過程における最高処理温度としてもよく、得られたグラファイト質膜をアニーリングの形で再熱処理してもよい。なお熱処理温度の上限は、例えば、3600℃以下、好ましくは3500℃以下、より好ましくは3400℃以下である。当該処理温度での保持時間は、例えば、10分以上、好ましくは20分以上であり、1時間以上であってもよい。保持時間の上限は特に限定されないが、通常、5時間以下、特に3時間以下程度としてもよい。
2800℃以上で熱処理してグラファイト化する場合、高温炉内の雰囲気は前記不活性ガスによって加圧されているのが好ましい。熱処理温度が高いと膜表面から炭素の昇華が始まり、グラファイト質膜表面の穴、割れの拡大と薄膜化などの劣化現象が生じるが、加圧することによってこの様な劣化現象を防止でき、優れたグラファイト質膜を得ることができる。不活性ガスによる高温炉の雰囲気圧力(ゲージ圧)は、例えば、0.10MPa以上、好ましくは0.12MPa以上、さらに好ましくは0.14MPa以上である。この雰囲気圧力の上限は特に限定されないが、例えば、2MPa以下、特に1.8MPa以下程度であってもよい。
<シワの制御>
以上のようにして高分子膜からグラファイト質膜を製造するだけでは、適切な大きさのRaにすることは困難である。芳香族ポリイミドの場合、炭素化後の炭素化膜の膜面方向の寸法は、炭素化時に膜を自然収縮させた場合には、元の高分子膜の75〜85%程度に収縮することが多い。また、最終的なグラファイト質膜の膜面方向の寸法は、炭素化時及び黒鉛化時の膜の収縮・膨張を自然に任せた場合には、元の高分子膜の寸法の85〜95%程度となることが多い。こうした自然の収縮・膨張のために、従来の方法で単純に炭素化、黒鉛化を行うと自然にシワが発生し、グラファイト質膜の凹凸の高さの制御は難しい。また大きなシワが偏っている領域とシワがあまり無い領域が混在したりする。従って、本発明になる最適な表面粗度(均一なシワ)を持つグラファイト質膜を作製するには、いくつかの工夫が必要である。
例えば、前記層間熱接合材料は、所定の厚さを有する高分子膜と自己支持性基板との間にスペーサーを介在させ、かつ前記基板上に荷重を印加した状態で炭素化及び/又はグラファイト化することで算術平均表面粗さRaを適度な範囲に制御できる。
(粒子・繊維をスペーサーにする場合)
すなわち、最適な大きさの表面粗度を形成するための具体的な方法として粒子又は繊維状の無機フィラー(スペーサー)となる物質を自己支持性基板と高分子膜の間に介在させて、さらに荷重下で炭素化、あるいは黒鉛化を行なう方法が挙げられる。スペーサーを使用する目的は、主にスペーサーの大きさ(粒径など)に応じて基板の間に一定の間隔を形成することであり、その間隔を利用して最適表面粗度を持つグラファイト質膜を作製する。
スペーサーとして存在させる粒子等の種類としては、ある程度の高温に耐えられ、スペーサーとしてある程度の物理的強度を持つものであれば特に制限はなく、既知の様々なものを用いることができる。例えばグラッシーカーボン粒子、黒鉛粒子、黒鉛鱗片、フラーレン、炭素繊維、カーボンナノチューブのような炭素系の粒子、繊維等や、シリカ、アルミナ、球状アルミナ、鱗片状窒化ホウ素のような無機粒子、ポリイミド粒子、ポリパラフェニレンビニレン粒子などの様に、加熱により炭素化、黒鉛化する粒子、等を適宜用いることができる。炭素系、黒鉛系のスペーサーは、入手しやすく、グラファイト質膜や電気炉内に付着しても問題にならず、一定の潤滑性もあるという利点がある。また、シリカのように黒鉛化の高温にまで耐えられない物質であっても、ある程度の高温までスペーサーとして働くことができれば、あとは形成された炭素化膜、あるいはグラファイト質膜のシワ自体が、ある程度はスペーサーとしての機能も果たすので使用が可能である、またスペーサーとして使われる粒子等は、複数種類の物質を混合して用いてもよく、スペーサーとペーストやオイル、ワックス等を複合化して用いることも、潤滑性の調節や、形成するグラファイト質膜のシワの凹凸の程度をさらに細かく制御するという観点から好ましく用いられる。
中でも黒鉛粒子、あるいはシリカ粒子を使用することが好ましい。
スペーサーが粒子状物である場合、その平均粒径(d50)は、例えば0.01〜50μm、好ましくは0.05〜30μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
スペーサーの塗布方法は、スペーサーの分散液を膜やプレス板に塗布後、乾燥させる方法、ふるいを用いて粒子等をサンプル膜やプレス板に撒く方法など、既知の方法を適宜用いればよい。
スペーサーの表面被覆率は0.5%〜100%となる量である事が好ましい。シワの凹凸制御に用いるために、高分子膜や炭素化膜、グラファイト質膜を挟みこむための自己支持性基板としては特に制限は無く、炭素化や黒鉛化の加熱温度に耐えられるものであればよいが、一般的にはカーボン材料や黒鉛系材料が好ましい。例えば、等方性黒鉛であるCIP(Cold Isotropic Press:冷間静水圧プレス)材の板や、グラッシーカーボン製の板を用いることができる。炭素化のプロセスではサファイア基板等を用いることもできる。
この様に焼成するべき高分子膜又は炭素化膜の少なくとも片面にスペーサー層を形成し、これを基板の間に挟んで膜面と垂直な方向から例えば0.3gf/cm2以上、1000gf/cm2以下、好ましくは1gf/cm2以上、800gf/cm2以下、より好ましくは10gf/cm2以上、800gf/cm2以下の圧力にて黒鉛化、あるいは炭素化と黒鉛化の両方のプロセスを実施する。加圧の方法には制限は無く、単純に支持基版を重石代わりに用いることや、支持基板の上に黒鉛製やカーボン製の重石を置くことにより、炭素化及び黒鉛化のいずれかの一方又は両方に、終始一定の荷重を加える方法でもよい。このような方法でも十分にグラファイト質膜に適度な高さのシワを形成する事ができる。この方法は、軽い荷重での処理をしたい場合に有効である。
なおスペーサーを粒子又は繊維で形成することは必須ではなく、例えば、プレス板の表面に凹凸を設け、この凹凸をスペーサーとして利用してもよい。サンドペーパーによる研磨や、サンドブラスト、型押しなどにより、プレス板表面に一定の形状や表面粗さを持たせることは、粒子状のスペーサーを用いる事を同じ効果を発揮する場合がある。例えば表面を一定の程度に粗化したCIP材やグラッシーカーボン等のプレス材を用いることは好ましい。
グラファイト質膜のシワの大きさが本発明の好ましい範囲より大きい場合には、その表面を研磨処理によって好ましい範囲内にする操作を行なってもよい。具体的にはブラスト研磨、ベルト研磨、ラップ研磨、バフ研磨、ショット研磨、電解研磨、イオンミリング、集束イオンビーム(FIB)等の処理が用いられ、中でも、グラファイト質膜の研磨はバフ研磨が好ましい。
研磨剤としては、アルミナ、ダイヤモンド(ダイヤモンドスラリー)、コロイダルシリカ、酸化セリウムのいずれか、またはこれらを組み合わせたものを用いてよい。
研磨は研磨装置を用いてもよく、その際はグラファイト質膜を黒鉛製のブロックなどに貼り付けた後、研磨を行うことで良好な研磨が行える。前記ブロックへの貼り付けは、室温下や高温下で行ってもよく、再度取り外す観点から、高温下で行うことが好ましい。
研磨剤の粒径は、例えば0.01μm以上100μm以下であり、0.02μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上30μm以下である。研磨では1種類の粒径を有する研磨剤を使用してもよく、粒径の異なる研磨剤を2種類以上組み合わせて同時にまたは別々に使用してもよい。
研磨剤は、乾式または湿式のいずれで使用してもよいが、湿式で使用する場合の溶媒は、水、エタノール、メタノールなどのアルコール等であればよい。
研磨剤を塗布した研磨用部材は、対象グラファイト質膜に対して荷重0.01〜1500gf/cm2で押圧してもよく、好ましくは0.1〜1000gf/cm2、より好ましくは1〜700gf/cm2で押圧する。
2.グラファイト質膜(TIM)の特性
本発明のグラファイト質膜の比重は1.80以上である。欠損や空洞によって膜内部に空気層が存在すると、空気の熱伝導率は極めて低いため、TIM特性が低下する傾向がある。この事からグラファイト質膜の比重は1.85以上であることがより好ましく、さらには1.90以上であることがさらに好ましく、2.00以上2.26以下であることは最も好ましい。
本発明のグラファイト質膜の炭素純度は99.0%以上である。本発明の高分子原料は金属をなどの不純物を含まず、さらには2600℃以上で焼成するため炭素以外の不純物が存在していたとしても、蒸発してしまうので極めて高純度の炭素膜となるという特徴を有する。グラファイト質膜の炭素純度は好ましくは99.1%以上、より好ましくは99.2%以上、さらに好ましくは99.3%以上、さらにより好ましくは99.4%以上100%以下である。99.0%未満であると、不純物が多くなり、グラファイト質膜の諸物性が低下する可能性がある。
炭素純度は、例えば、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡と、それに付属するエネルギー分散型X線分析装置等とを組み合わせて測定することができる。
本発明のグラファイト質膜の厚さは、10μm以下0.1μm以上、好ましくは8μm以下0.2μm以上、より好ましくは7μm以下0.3μm以上、さらに好ましくは5μm以下0.4μm以上である。10μm超となると、表面粗度や熱抵抗値が大きくなったり、電気伝導度が低下する虞がある。一方、0.1μm未満であると、グラファイト質膜の取り扱いが困難となり、TIMとして実用的ではなくなる。
膜の厚さは、公知の装置を用いて測定でき、例えばノギスや触針式などの接触式の測定方法や、レーザー変位計、分光エリプソメトリー等の光学的測定方法、SEMやTEMを用いた断面観察による方法などにより、測定することができる。
本発明のグラファイト質膜の算術平均表面粗さ(Ra)としては0.2μm以上であり、0.3μm以上である事は好ましく、0.5μm以上である事は最も好ましい。また、算術平均表面粗さは大きい方がよい訳ではなく、10μm以下であり、7μm以下である事は好ましく、6μm以下である事はより好ましく、5μm以下である事はさらに好ましく、4μm以下である事は最も好ましい。
すなわち、本発明の目的に取ってはグラファイト質膜の表面粗さは0.2μm以上10μm以下である。一般的には、TIMとして使用するには出来る限り平坦であることが好ましいと考えられるが、実際はそうではなく、好ましい表面粗さの範囲がある事は、本発明によって初めて明らかになった事である。これは本発明の範囲であるグラファイト質膜が、本発明の範囲の表面粗さを持つ場合には、これらが接続面の凹凸にうまく入り込んで、その界面熱抵抗を小さくする事が出来るためである。
表面粗さが小さすぎる場合にはこの様な効果は期待出来ず、結果的に界面抵抗が大きくなる。この事は本発明のグラファイト質膜の表面をバフ研磨法により研磨して、その表面粗さを0.2μm未満にした膜の熱抵抗が大きくなる事で実験的に確かめられた。一方、表面粗さが大きすぎる場合には、荷重によってもTIMの凹凸を平滑に出来ず、TIM層の一部が折りたたまれる現象が起こり、これが界面抵抗を大きくすると考えられる。
算術平均表面粗さRaは、既存の方法、すなわち触針式表面粗さ計や、レーザー顕微鏡などの光学的方法や、STM(Sccanning Tunneling Microscope)、AFM(Atomic Force Microscope)等の方法により決定できる。これらに関する規定としては、例えばJIS B0601−1994を準用してもよい。
パワー半導体等の分野では、省スペース化、高効率化の観点から、冷却方式もヒートシンクと半導体チップの間に基板を挿入して接合する間接冷却構造から、半導体チップとヒートシンクを直接接合する直接冷却構造へとなりつつある。このような場合、アルミ(23.5ppm/K)、銅(16.5ppm/K)などのヒートシンク側の線膨張係数と、炭化ケイ素(6.6ppm/K)、窒化ガリウム(5.59ppm/K)、窒化ケイ素(3.4ppm/K)、窒化アルミニウム(4.6ppm/K)などの線膨張係数との差が大きな課題となる。しかも線膨張係数の差のみならず、チップ近傍は200℃付近まで上昇するのに対し、冷却するヒートシンク側は20〜30℃付近であるために温度差は増加する。このような場合、発生する応力歪はさらに大きくなり、この応力を緩和する必要があり、TIMにはこの様な応力緩和の機能も求められる。
TIMには、銀グリースなどのグリース状のTIMと、比較的柔軟な高分子に熱導電性フィラーを加えたTIMがあり、フィラーとしてはAlNやグラファイト粉末が用いられる。グリース状のTIMには、上記の応力緩和機能が十分に備わっていると考えられるが、パワー半導体などのような高温での使用時にはいわゆるブリードアウト現象が起こり、これらのグリース状TIMは使用できない。また、高分子と熱伝導性フィラーの複合体TIMは高温での使用により、高分子成分の劣化が進行し、高温・長時間の使用によってそのTIM特性は劣化する。すなわち、パワー半導体などの分野で、応力緩和の能力を持ったTIMを開発するには、高分子やグリースなどの成分を含まない事が必要条件となる。本発明のグラファイト質膜TIMは、高分子やグリースを使用せずとも、低い静止摩擦係数を有し、すぐれた応力緩和能力を持っているので、この様な目的のTIMに取っては最適の素材である。
静止している物体を動かそうとする際に働く摩擦力を静止摩擦力といい、荷重をN、比例定数をμとすれば摩擦力Fは式1で示される。
F=μN(式1)
このときのμが静止摩擦係数であり、界面の状態などにより固有の値を有する。この値が小さければ小さいほど、静止状態から動き出すまでの力が小さく、応力緩和の能力を持つ事になる。
本発明のTIMにとって静止摩擦係数は0.2以下である事が好ましく、0.15以下である事はより好ましく、0.1以下である事は最も好ましい。本発明のグラファイト質TIMがこの様な小さな摩擦係数を有しているのは、グラファイト面がTIM層と並行になる様に配向しているために層間での滑りが容易に起こるためである。静止摩擦係数の下限は特に限定されないが、例えば0.01程度である。この様な静止摩擦係数は、例えばJIS P 8147:1994の方法により測定する事ができる。
グラファイト化の指標として、膜面のレーザーラマン測定において1600cm-1付近のラマンバンドと1350cm-1付近のラマンバンドの強度比R(R=R1600/R1350)は、好ましくは5.0以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、さらにより好ましくは100以上である。
本発明のTIMは加圧する事によりその界面熱抵抗を小さくする事ができ、結果的にその熱抵抗値を低減できる。グラファイト質膜TIMは比較的柔らかいがグリースなどで表面処理したTIMと比べてある程度の大きさの加圧力が必要である。本発明のTIMが必要とする荷重は10N/cm2以上である事が好ましく、20N/cm2以上である事はより好ましく、30N/cm2以上である事は最も好ましい。本発明のTIMは10N/cm2の加圧下で、その熱抵抗値を0.40℃・cm2/W以下にする事ができる。この値は20N/cm2以上の加圧下では0.30℃・cm2/W以下になり、さらに、30N/cm2以上の加圧下では0.20℃・cm2/W以下になる。さらに、厚さや処理温度条件を最適に選定する事により、0.10℃・cm2/W以下と言う極めて高品質なTIMを作製する事も出来る。これらの特性はパワー半導体の冷却システムに用いられるTIMとして非常に好ましい。
TIMの熱抵抗値は、10N/cm2荷重時に、0.40℃・cm2/W以下である事が好ましく、0.35℃・cm2/W以下である事がより好ましく、0.30℃・cm2/W以下である事はさらに好ましく、0.25℃・cm2/W以下である事はさらにより好ましく、0.20℃・cm2/W以下である事は最も好ましい。TIMの熱抵抗値は小さい方がよいのでその下限値は特に限定されないが、本発明のTIMにおいて厚さの下限である0.1μmの場合、界面熱抵抗がゼロであり、バルク熱抵抗のみと仮定すると、例えば0.01〜0.02℃・cm2/W程度である。一方、熱抵抗値が0.40℃・cm2/Wを超えると、半導体チップを十分に冷却する事が困難になり好ましくない。
本発明のTIMの膜面方向の電気伝導度は14000S/cm以上である事が好ましく、16000S/cm以上である事はより好ましく、18000S/cm以上である事は最も好ましい。一方、膜面方向の電気伝導度は26000S/cm以下であってもよい。
電気伝導度は、例えばVan der Pauw法や一般的な4端子法など既知の手法により求まる電気抵抗(シート抵抗)と、グラファイト質膜の寸法、厚さから計算できる。
TIMの面方向の熱伝導率は1400W/mK以上である事が好ましく、1600W/mK以上である事はより好ましく、1800W/mK以上である事は最も好ましい。
熱伝導度は、所定の大きさのグラファイト質膜を周期加熱法によって測定することができる。
本発明には、少なくともパワー半導体と、ヒートシンクと、その間に挟持される前記層間熱接合材料とを含むパワー半導体用冷却システムが包含される。
本発明のTIMはパワー半導体とヒートシンクの両者に挟まれた状態で荷重が印加され、その荷重の大きさは10N/cm2以上である事が好ましいが、その荷重を加える方法は特に制限されない。中でも荷重の印加は、発熱素子又はヒートシンクの少なくともどちらか一方又は両方に形成されたビスによる締め付けによるものである方法は簡易にパワー半導体の冷却システムの中にとり入れる事が可能であり、好ましい。
本発明のTIMは、300℃で100時間処理した後、好ましくは熱抵抗値の上昇が抑制され、より好ましくは熱抵抗値が変化しないという特性を備え、耐久性に優れる。
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
<実施例(1)〜(15)>
(TIMの作製)
ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔を除去した。塗布厚さを変えることで、厚さの異なるポリイミド膜を作製した(厚さ0.2〜25μm)。
厚さの異なるポリイミド膜をそれぞれ黒鉛製ガスケットに挟み込み、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気中、2℃/分の速度で950℃まで昇温し、950℃で10分間保ったのち自然冷却させた。
得られた炭素化膜の両面に、スペーサーとしてとして平均粒径(d50)が1.0μmの黒鉛粒子を刷毛を用いて塗布し、次に炭素化膜の縁の1辺を持って炭素化膜を鉛直方向に垂らし、軽く揺らして余分な黒鉛粒子を落とした。この黒鉛粒子が付着した炭素化膜を、表面を鏡面研磨したCIP材板の間に挟みこんだものを準備した。黒鉛化時の圧力が20gf/cm2となる様にグラファイト製のブロック重石をCIP基板上に置いた。
CIP材で狭持した炭素化膜をグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度でそれぞれの最高処理温度(HTT)まで加熱した。HTTで30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.1MPaの加圧下で行った。厚さ、及びHTTの異なるTIM膜(1)〜(15)を作製した。また、作製されたTIM膜は下記の物性測定を行い、また必要に応じて表面研磨(バフ研磨)を行い(実施例(8)〜(12))、その表面粗度を測定した。
<比較例(1)〜(9)>
黒鉛化時の最高処理温度を2000〜2400℃の範囲のいずれかにするか(比較例(1)〜(4))、スペーサー粒子を介して炭素化膜をCIP材板に挟み込んで黒鉛化する代わりに、炭素化膜を表面研磨したグラファイト膜に挟んで荷重を加えずに黒鉛化するか(比較例(5)〜(7))、又はポリアミド酸の塗布厚さを厚くしてTIMの膜を厚くするか(比較例(7)〜(9))のいずれかの点で実施例(1)〜(15)を変更して実施した。
<比較例(10)〜(12)>
(市販品TIM)
比較のために市販品のTIMとして銀グリース(akasa製hi−spec−450)、放熱シート(タイカ製COH400LVC)、フェイズチェンジシート(Ainex製 HT08)を入手し検討した。
以上のようにして得られたTIMについて、以下の点から評価した。
(比重測定)
TIM膜の比重は、SEM測定と面積測定から算出した体積と、重量測定の結果から算出した。ただし、厚さが0.2μmおよび0.1μmの試料については測定誤差が大きすぎて正確な測定は出来なかった。
(炭素純度の測定)
作製したTIM膜(グラファイト質膜)の炭素純度は、(株)日立ハイテクノロジーサービス製走査型電子顕微鏡(SU8000)(以後SEM)と(株)堀場製作所製大口径SDD検出器(以後EDX-XMax)を用いて測定した。加速電圧20kVにて炭素膜の元素分析を行い、付属ソフトウエアで解析後に算出された各元素の原子数濃度(%)を基に算出した。結果を下記表1〜2に示す。なお実施例(1)〜(15)のTIMの炭素純度は99.5%以上であった。
(電気伝導度)
TIM膜の電気伝導度は4端子法、およびファン・デル・ポー法により行なった。結果を下記表1〜2に示す。なお実施例(1)〜(15)の様に2600℃以上で処理した本発明の範囲のTIMは、いずれも14000S/cm以上の電気伝導度を示した。
(ラマン測定)
TIM表面のレーザーラマン測定を行った。測定に用いた機器はナノフォトン(株)製ラマン−11である。なお実施例(1)〜(15)の様に、所定の厚さを持ち、最高処理温度が2600℃以上で製造されたTIMでは、膜面のレーザーラマン測定において1600cm-1付近のラマンバンドと1350cm-1付近のラマンバンドの強度比R(R=R1600/R1350)はいずれも5.0以上であった。特に最高処理温度が2800℃以上ではその比は100倍以上であった(表には示さず)。
(算術平均表面粗さRaの測定)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(キーエンス製、VK9500)を使用しTIM試料の表面粗さを測定した。算術平均表面粗さRaは測定データを顕微鏡付属の解析ソフトウエアを用いて解析し、JIS B0601−1994の規格に基づき算出した。結果を下記表1〜2に示す。
(摩擦角測定と静止摩擦係数の算出)
摩擦角の測定と静止摩擦係数の算出はJIS P 8147:1994に準じ、次の様に行なった。まず、ガラス板に10cm角に切断したTIM膜を貼り付けた後、その上に大きさ5.5×5.5×4.0cm、重さ68gのアルミ製ヒートシンクをのせた。その後ガラス板の角度を変えていき、ヒートシンクが動きだした角度を摩擦角θとした。得られた摩擦角をθ、ヒートシンクの重さをmg、最大静止摩擦力をF=mg・sinθ、垂直抗力をN=mg・cosθで表し、この式を以下の式(1)及び(2)に示す静止摩擦係数の定義に代入することで求まる式(3)より最大静止摩擦係数μを算出し、これを静止摩擦係数とした。結果を下記表1〜2に示す。
(熱抵抗特性の測定)
日立テクノロジーアンドサービス(株)製熱抵抗測定装置を用いてTIM材料の熱抵抗を測定した。測定試料の寸法は10×10mm2、測定温度は60℃、荷重は10N/cm2とした。温度変化が一定になるのを待った後、10回測定を行い、その平均を測定値とした。測定結果を下記表1〜2に示す。
(耐熱特性試験)
本発明のTIMと市販TIMの耐熱特性測定のために、スライドガラス板に、2cm角の大きさでTIMを塗布(銀グリースは40mg)または置き、アルバック理工製赤外真空炉内にセットした。その後昇温速度5℃/分、最高温度300℃まで加熱し、そのまま10時間保持した後、室温まで冷却した後サンプルを取り出し、熱抵抗特性を測定した。測定結果を下記表1〜2に示す。
(ヒートサイクル試験)
図2はヒートサイクル試験方法を説明するための概略断面図である。この試験方法は、パワー半導体用冷却システムを模擬したものであり、パワー半導体と同等の熱を発生し得る発熱源1(ヒーター)の表面にヒートシンク4が設けられ、このヒートシンク4内の冷却水路5には冷却水を流して冷却できるようになっている。
これらの間にTIM2を狭持し、全体をビス3で止める事によって締め付け、サイクル試験評価用の素子とした。なお、前記発熱源1は、電気的に発熱可能になっており、発熱源1(ヒーター)にヒートシンク4を取り付けない場合に発熱源1表面が300℃になるような電力(W)を発熱源1(ヒーター)に供給した。
ヒートサイクル試験では、上記素子に同じ電力を印加して加熱する一方、ヒートシンク4には冷却水を通水し、TIM2を通じて発熱源1を冷却し、この間のヒーター表面の温度を測定した。測定の後、一旦、通電(加熱)を停止して、再度、加熱をした。この加熱、冷却のステップを1時間毎に繰り返しヒーター表面の温度変化を測定した。ヒーター表面の温度はTIMの性能によって異なるが、もしもTIMの特性が繰り返し試験によって変わらないとしたら、ヒーター表面の温度も変わらないはずである。一方、TIMの特性がサイクル加熱により劣化したとすると、ヒーター表面の温度は上昇するはずである。
この様な方法でサイクル試験を100回実施した。結果を定量的に記述するのは難しいので100回のヒートサイクル試験によりヒーター温度の変化率が0%以上2%未満の物をOKとし(○で表示)、2%以上10%未満の範囲の温度変化率である場合を△で表示し、10%以上増加した物をNGとして×で評価した。評価結果を下記表1〜2に示す。
表1(実施例(1)〜(15))について:
表1には本発明となるTIMの作製条件(最高処理温度、厚さ)、得られたTIMの物性(比重、炭素純度、電気伝導度、表面粗度、静止摩擦係数、熱抵抗値)、および耐久性(300℃10時間熱処理後のTIM特性、ヒートサイクル試験結果)をまとめて示した。
この結果から以下の事実が確認された。
(1)本実施例(1)〜(15)はいずれも、最高処理温度が2600℃以上の黒鉛化条件で得られた厚さ0.1μm〜10μmの範囲のグラファイト質膜をTIMとして用いた例であり、この時、得られるTIMは比重が1.80以上と高く、炭素純度が99.5%以上と高い。また、その表面の算術平均表面粗さRaは0.2μm以上4.5μm以下である。なお、実施例のTIMは、電気伝導度は14000S/cm以上、静止摩擦係数は0.20以下の物性値を持っている。
(2)この様なTIMは、熱抵抗特性がいずれも0.40℃・cm2/W(ただし10Nの荷重下)以下であって、極めて優れている。
(3)本発明のTIMは、所定の厚さであって、所定の高品質(比重、炭素純度)を有し、表面が適度に粗面化されているため、300℃、10時間の耐熱性試験によっても全くその特性は変化せず、極めて優れた耐熱性(耐久性)を示した。
(4)また本発明の好ましいTIMでは、ヒートサイクル試験によってもその特性は変化せず、静止摩擦係数を0.2以下にすることでTIMが滑り易くなり、加熱による発熱体の膨張による歪を、この滑りの機能によって緩和できており、こうしたことでさらに耐久性が向上したものと思われる。このような本発明のTIMはパワー半導体の冷却システムのような大きな温度差が繰り返し生じる系では極めて有効に機能する事を示している。
(5)実施例(8)〜(12)は同じ条件で作製した2.0μm厚さのTIM表面をバフ研磨により研磨してその表面粗度(Ra)を4.5〜0.2μmとした場合の熱抵抗値である。熱抵抗値は0.20℃・cm2/W〜0.32℃・cm2/Wであって、表面粗度が2.2μmの場合が熱抵抗は最も小さく、熱抵抗値が小さくなる最適な表面粗度が存在する。
表2(比較例(1)〜(9))について:
表2には本発明の範囲(最高処理温度、比重、厚さ、表面粗度等)以外の条件で作製したTIM膜の物性を示す。比較例(1)〜(4)はスペーサーを用いてシワ発生制御を行う方法で作製したTIM膜である。ただしこれらの例では、熱処理温度が2000℃、および2400℃であって2600℃以上という条件を満足していない。この様な条件では比重が1.8未満となり、膜自体も硬い。そのため熱抵抗値は3.10〜6.90℃・cm2/Wと非常に大きくTIMとしては特性の悪い物となる。これは接合界面の熱抵抗が極めて大きくなるためである。この様なTIMではヒートサイクルによってその特性も著しく劣化する。これは、滑り効果による熱歪緩和効果が無いためである。
比較例(5)、(6)、(7)は表面粗度が大き過ぎる例である。これらの比較例(5)、(6)、(7)はいずれも、実施例(1)〜(15)で示したスペーサーを用いた最適なシワ形成法を用いずに作製したものである。具体的には所定のポリイミドフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、得られた炭素化フィルムを厚さ40μmのグラファイト膜に挟み、グラファイトヒーター内部にセットし、20℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温して作製した。
比較例(5)、(6)、(7)の表面粗度は12、15、14μmであって熱抵抗値も0.42℃・cm2/W,0.80℃・cm2/W,1.80℃・cm2/Wであり、好ましいTIMの熱抵抗特性である0.40℃・cm2/W以下を実現する事が出来ない。すなわち表面平均粗度には最適な値が存在し、その上限は10μmである事が分かる。
比較例(6)〜(9)は試料厚さが20μm以上で本発明の範囲をはずれる場合である。なお、(7)は比較例(5)(6)と同様な手法で作製したものであり、(8)(9)はスペーサーを用いたシワ形成法により作製したものである。この様な場合には熱抵抗値は0.70℃・cm2/W〜2.80℃・cm2/Wであってこの場合にも、好ましいTIMの特性である0.40℃・cm2/W以下を実現する事が出来ない。これは、この様な厚さではバルク熱抵抗値が増加するためである。したがって本発明のTIMの厚さの範囲は0.1μm〜10μmである事が分かる。
表3(比較例(10)〜(12))について:
比較例(10)〜(12)は、市販のTIMである、銀グリース(akasa製hi−spec−450)(10)、放熱シート(タイカ製COH400LVC)(11)、フェイズチェンジシート(Ainex製 HT08)(12)を評価した結果である。
これらの市販TIMの特性を表3にまとめて示す。この結果から明らかな様に銀グリースやフェイズチェンジシートは良好な熱抵抗特性を示したが、300℃、10時間の耐熱試験で大きく特性が劣化した。またヒートサイクル試験の結果も不十分であった。
この結果から本発明のTIMが耐久性、耐熱性にすぐれた従来にないTIMである事が分かる。
本発明のTIMは極めて優れた熱抵抗特性を示し、150℃以上の高温で連続使用される様な環境や、発熱体と冷却システムの温度差が極めて大きいシステムに用いられるTIMとして広く利用する事が可能である。特に、パワー半導体等の冷却システム用のTIMとして極めて好ましい。
1:発熱源(パワー半導体)
2:TIM
3:ビス
4:ヒートシンク
5:冷却水路

Claims (6)

  1. 炭素純度が99.0%以上、比重が1.80以上、厚さが10μm以下0.1μm以上、算術平均表面粗さ(Ra)が0.2μm以上10μm以下のグラファイト質膜である事を特徴とする層間熱接合材料。
  2. 静止摩擦係数が0.2以下であり、膜面のレーザーラマン測定において1600cm-1付近のラマンバンドと1350cm-1付近のラマンバンドの強度比R(R=R1600/R1350)が5.0以上であり、面方向の電気伝導度が14000S/cm以上のグラファイト質膜である事を特徴とする請求項1に記載の層間熱接合材料。
  3. 10N/cm2荷重時の熱抵抗値が0.40℃・cm2/W以下を示す事を特徴とする請求項1又は2に記載の層間熱接合材料。
  4. 少なくともパワー半導体と、ヒートシンクと、その間に挟持される請求項1〜3のいずれかに記載の層間熱接合材料とを含む事を特徴とするパワー半導体用冷却システム。
  5. 層間熱接合材料がパワー半導体とヒートシンクの両者に挟まれた状態で荷重が印加され、その荷重の大きさが10N/cm2以上である、請求項4に記載のパワー半導体用冷却システム。
  6. 荷重の印加が、発熱素子又はヒートシンクの少なくともどちらか一方又は両方に形成されたビスの締め付けによるものである請求項5に記載のパワー半導体用冷却システム。
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