JP2017070939A - 金属触媒担持繊維、その製造方法ならびにそれを利用した酸化還元性物質の除去方法 - Google Patents

金属触媒担持繊維、その製造方法ならびにそれを利用した酸化還元性物質の除去方法 Download PDF

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恭一 斎藤
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Abstract

【課題】分離材料に使用される金属担持触媒として担体であるイオン交換機能を積極的に利用し機能を複合化し、使用方法や処理対象物質適用範囲を拡大する方法の提供。【解決手段】既存の繊維に放射線グラフト重合法を適用してイオン交換繊維を製造し、さらに触媒金属を担持する材料及びその製造法。前記触媒金属担持繊維は、大きな表面積、低圧力損失、成型加工の容易さなどさまざまな特長を有し、液体又は気体中の酸化性又は還元性物質の除去などに利用でき、担持した金属の酸化還元能力とイオン交換機能の両方の機能を生かす機能性繊維。【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
本発明は酸化還元性物質を除去するための金属触媒を有機高分子に担持した金属触媒担持材料及びそれを利用した液体中又は気体中の酸化還元性物質の除去方法に関する。
有機高分子の表面に金属を担持する技術として、溶液中の金属イオンを化学薬品によって還元析出させる無電解めっきがよく知られている。電気を使用しない無電解めっきは基材の電気的特性に関係なく、樹脂等の表面に金属被膜を形成することができるという点で有用性が高い。無電解めっきされた材料は導電性材料や金属光沢をもたせる用途に利用される。
このような用途とは別に、水処理や気体処理などの技術分野では、担持した金属触媒によって、目的物質の酸化・還元などを行っている。ここでは、化学変化が効率よく起こせればよく導電性や金属光沢のような特性は不要である。このような例としてイオン交換樹脂に触媒金属を担持させ、その触媒機能を利用して水処理や気体処理に利用することが行われている。
水処理への応用では、イオン交換樹脂(特にアニオン交換樹脂)に金属パラジウム,白金,ロジウム等の触媒金属を担持した後、充填塔に充填し、この充填塔に溶存酸素を含む液体を通過させ、溶存酸素を除去することが行われている。(特許文献1)。この例では、溶存酸素と水素との触媒反応を促進するため、パラジウム担持イオン交換樹脂が利用されている。
また、気体処理への応用では次に示す例がある。水素ガス中の酸素及び水分を除去するために、パラジウムを担持したイオン交換樹脂充填容器に水素ガスを導入し、パラジウムの触媒作用で酸素を水素と反応させて水として除去し、イオン交換樹脂の吸着作用により生成した水と原ガス中の水分を吸着して除去している(特許文献2)。ここでは、触媒金属担持樹脂の製造方法として、アニオン交換樹脂に塩化パラジウムを担持し、さらに還元剤で処理したものが使用され、流速SV100程度で処理されている。
さらに、超純水処理において、溶存酸素を除去するためにパラジウムを担持した中空糸膜が使用されている(特許文献3)。ここでは、接ガス側に水素を供給し、接液側の超純水中の溶存酸素と反応させ水を生成することが行われている。処理量3m/hに対して6mと大きな膜面積が必要とされている。
このように従来技術においては、ビーズ状イオン交換樹脂や中空糸に触媒金属を担持しているため、使用方法が充填塔や中空糸膜モジュール方式に限られ、高価な触媒金属を多量に担持するにかかわらず高流速で処理できないという課題がある。
また、イオン交換樹脂を担体として利用する理由は、無電解めっきにおいて必要とする担体と金属層とのつなぎの役割を果たす触媒層を付与する工程を省略できるという利点を有しているからである。そのため、担持しやすい官能基を選択することに主眼が置かれ、担体固有のイオン交換機能やキレート機能を有効に利用した例はない。
特開平5−96283 特開2004−256328 特開平6−99197
これまで、形状がビーズ状や中空糸膜状であるため使用方法が充填塔方式や膜モジュールに限られていた。このような使用方法では、圧力損失が高くなることを避けるために、低流速の処理にしか利用されてこなかった。また、応用例としては、液体中の溶存酸素や気体中の酸素の除去の例にみられるように、酸化・還元触媒として液体や気体中の酸素を除去する利用例が多く、担体であるイオン交換繊維が有しているイオン交換機能を積極的に利用し、機能を複合化する試みが少なかった。このように使用方法や処理対象物質が限定されていることに鑑み、適用範囲を拡大することが課題である。
本発明の材料及びその製造法は次にあげる特徴を有し、放射線グラフト重合法を利用して製造したイオン交換繊維に触媒金属を担持し、液体又は気体中の酸化性又は還元性物質の除去に使用する。放射線グラフト重合法を利用して繊維にイオン交換基を導入することによって、低圧力損失と成型加工の容易さという特長を生かすことが可能となり、さまざまな使用方法が選択できるようになる。また、担持した金属の酸化還元能力とイオン交換機能の両方の機能を生かすことができる。ここで、説明を簡略化するため、イオン交換機能にはキレート機能も含まれるものとして説明する。
本発明は次の特徴を有する金属触媒担持繊維、その製造方法ならびにそれを利用した酸化還元性物質の除去方法である。
(1)放射線グラフト重合法を利用してイオン交換基又はキレート基の官能基が導入された繊維に対して、繊維の官能基の一部を利用して触媒金属が担持されたイオン交換及び触媒機能を有する分離機能性繊維
(2)前記、官能基が導入された繊維は、放射線グラフト重合法によって、強酸性カチオン交換基、強塩基性アニオン交換基、キレート官能基、弱酸性カチオン交換基、弱塩基性アニオン交換基を有するモノマーをグラフト重合するか、又は該官能基に転換可能なモノマーをグラフト重合した後、二次反応によって該官能基に転換することによって導入されたことを特徴とする(1)記載のイオン交換機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
(3)前記、触媒金属が金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、ロジウム、鉄、コバルト、マンガン、銅より選択された(1)又は(2)記載のイオン交換機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
(4)繊維状基材に放射線を照射する第1工程、イオン交換基を有するモノマーをグラフト重合するか、イオン交換基に転換可能な重合性モノマーをグラフト重合し、さらにイオン交換基に転換する第2工程、イオン交換基を利用して、イオン交換基の一部に触媒金属イオンを吸着させる第3工程、還元剤又は酸化剤を使用して触媒金属イオンを酸化又は還元し、繊維状基材上に金属を担持させる第4工程を含むイオン交換機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維の製造方法
(5)前記、イオン交換機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維と酸化性物質及び/又は還元性物質を含有する液体又は気体とを接触させる酸化還元性物質の除去方法
放射線グラフト重合には第1の特徴として、既存の有機高分子を基材として使用できるという点が挙げられる。第2に基材内部までイオン交換基やキレート基を導入できるという点がある。さらに、第3の特徴として、グラフト鎖の片端は基材に結合しているが、他端は自由端であるため、被処理物質が材料の内部にまで入りこみやすいという特徴があり、単なる表面改質とは異なっている。以下、その特徴をさらに詳細に説明する。
放射線グラフト重合法は既存の高分子に放射線を照射することによってラジカルを生成した後、モノマーを反応させることにより機能を導入できる。基材の材質により、ラジカル生成・保存の効率に多少の違いはあるが、多くの既存の高分子、例えば粒子、膜、多孔膜、繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布などを利用することができる。これら基材高分子の中から繊維を選ぶことにより、表面績が大きいことによる反応速度向上と成型加工の容易さを兼ね備えた機能材料ができる。
放射線は照射線源にもよるが、工業的にはエネルギーの高いガンマ線や電子線などを用いることができる。これら放射線の照射によって、高分子基材の表層ばかりでなく内部にまでラジカルを生成できる。そのため、基材の内部にまで機能の導入が可能である。したがって、内部にまでイオン交換基が存在し、大きな交換容量が得られる。
金属触媒を担持するには、イオン交換基を利用して触媒金属イオンを吸着させ、さらに還元又は酸化反応を行うことによって触媒金属を担持できる。この際、触媒金属イオンの濃度やイオン交換基との接触時間を選択することにより、繊維の表層に金属触媒を担持できる。繊維の表層で還元反応を行い、化学形態の変化した処理対象物質をイオン交換基で除去できる。
従来のイオン交換樹脂はビーズ状のスチレンージビニルベンゼン架橋構造を有するため、樹脂骨格が3次元網目構造を有し、処理対象物質が基材内部に入りこむ障壁となっていた。これに対し、グラフト鎖は片端が基材に結合しているが、他端が自由端であるため、触媒金属や処理対象物質は繊維内部にまで入り込むことができる。処理対象物質の還元作用とイオン交換吸着が同時に可能となる。また、触媒金属を担持した繊維と触媒金属を担持していないイオン交換繊維とを併用することも可能であり、使用条件によって選択できる。
以上、放射線グラフト重合法によるイオン交換繊維又はキレート繊維に触媒金属を担持することが可能となった。従来の粒状樹脂を充填した充填塔方式では得られなかった低圧力損失化により、高速処理化が可能となった。加えて、成型加工が容易であるため、さまざまな製品形状が可能となり、多様な使用方法を採用できるようになった。さらに、繊維の内部にまでイオン交換基が存在するため、化学形態にもよるが、触媒による形態変化と吸着が同時に可能となった。即ち、液体中や気体中の酸化・還元性物質を酸化・還元反応によって化学変化させ、材料自体に吸着保持することも可能となった。
放射線グラフト重合法による触媒金属担持繊維の作製経路 ワインドフィルター モール 過酸化水素除去試験装置 流速と過酸化水素分解率の関係 ヨウ素酸除去のためのカラム試験装置
本発明を実施するための形態
本発明の触媒金属担持繊維の代表的作製経路を図1に示す。基材としてはさまざまな市販の有機高分子が利用できる。繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、フィルム、多孔性シート、中空糸、粉末、スポンジ状材料などを利用できる。この中でも、繊維は成型加工の容易さ、表面積が大きく反応速度や吸着速度が大きい、圧力損失が小さいなどの特徴がある。例えば、液体処理に用いる使用方法として、カットして充填塔方式で利用できることやワインドフィルターに加工しカートリッジフィルターとして利用できる。このように触媒機能と粒子のろ過という機能の複合化が可能である。本発明では、イオン交換基を利用して触媒金属を担持するため、触媒機能、イオン交換機能及び微粒子ろ過機能とさらなる複合機能化が可能である。
本発明を用いて放射線グラフト重合処理することができる繊維素材としては、合成繊維の他、綿などのセルロース系繊維、動物性繊維、若しくは再生繊維、又はそれらの混合繊維も利用できる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれるが、これらに限定されるものではない。セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれるが、これらに限定されるものではない。動物性繊維には、羊毛等の獣毛繊維、絹等が含まれるが、これらに限定されるものではない。再生繊維には、キチン・キトサン繊維、コラーゲン繊維などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、これら繊維の混紡であってもよい。
本発明の目的のために好適に用いることのできる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などがあげられるがこれらに限定されるものではない。工業的には、γ線又は電子線が適している。照射工程では、先ずグラフト重合すべき繊維物質に放射線を照射する。照射条件は、特に限定はないが、十分なグラフト効率を得るためには、脱酸素状態で、5〜200kGy、特に20〜100kGyが好ましい。酸素濃度は、必要とされる重合率でグラフト重合が達成される濃度であればよく、好ましくは、酸素濃度1%以下、より好ましくは、酸素濃度100ppm以下である。
次のグラフト重合工程では、照射のタイミングにより、前照射グラフト重合法と同時照射グラフト重合法に分けられ、本発明はどちらの照射方法をも採用できる。前照射グラフト重合法はあらかじめ基材に放射線を照射した後、モノマーと接触させる重合方法であり、単独重合物の生成量が少ないため分離材料の製造方法にふさわしい。同時照射グラフト重合法は基材とモノマーとの共存下に放射線を照射するグラフト重合法である。本発明においては前照射グラフト重合法及び同時照射グラフト重合法のいずれも利用することが可能であるが、単独重合物(ホモポリマー)生成量の少ない前照射グラフト重合法がより好ましい。
接触させるモノマーが液体か又は気体かにより、それぞれ液相グラフト重合法と気相グラフト重合法とに分けられる。本発明では液相又は気相グラフト重合のいずれのグラフト重合方法も利用できる。また、液相及び気相グラフト重合法の中間に位置するグラフト重合法として含浸重合法がある。この方法は、予め所定のグラフト率が得られるようモノマー量を制御して基材に浸み込ませるグラフト重合法であるが、本発明はこの含浸グラフト重合法にも利用できる。
放射線グラフト重合法を利用して繊維にイオン交換基を導入することができる。代表的なイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、4級アンモニウム基、1〜3級アミノ基が挙げられる。また、代表的なキレート基としてアミノ酸基、アミノリン酸基、イミノジ酢酸基、アミドキシム基、ヒドロキサム酸基などが挙げられる。
これら官能基を導入するには、放射線グラフト重合法に利用する重合性ビニルモノマーとして、カチオン交換基、アニオン交換基及びキレート基を有するモノマーに加え、2次反応を行ってカチオン交換基、アニオン交換基及びキレート基に転換できるモノマーが好適に利用できる。カチオン交換基を有するモノマーとして、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸、メタクリル酸などがある。アニオン交換基を有するモノマーとしては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アリールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが利用できる。2次反応を行って、カチオン交換基やアニオン交換基又はキレート基に転換できるモノマーとしてはアクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルなどが好適に利用できる。
繊維に導入するイオン交換基の量はグラフト率(グラフト重合前後の重量増加率)によって任意に決めることができるが、グラフト率が大きいと物理的強度が小さくなる。したがって、グラフト率は触媒金属の種類、その担持量、処理対象物質の種類やその濃度、本発明の吸着材の使用環境等によって決めることができる。
工業的に利用できる放射線のエネルギーは通常数百keV以上であるため、通常の繊維であれば繊維内部にまで均一にラジカルを生成させることができる。グラフト重合に利用できるモノマーは繊維表面から内部に浸透し、非晶部を押し広げながら重合する。したがって、基材高分子の材質とモノマー種類にもよるが、グラフト率(重量増加率)が数十%以下と小さい場合においては、繊維の比較的表層にグラフト鎖を付与することができる。高いグラフト率においては、繊維の中心付近までグラフト鎖を付与することができる。
触媒金属の担持は、先ず繊維に導入されたイオン交換基による触媒金属イオンの吸着によって行う。触媒金属として、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、ロジウム、鉄、コバルト、マンガン、銅などを利用できる。これら金属のイオン形態によってイオン交換基を選択できる。例えば、触媒金属として多用されるパラジウムの場合は、「PdCl2−とアニオンであるため、アニオン交換基を有する繊維に吸着させる。イオン交換吸着させる金属イオンの濃度や接触時間によって、繊維表層に吸着させ又は内部にまで吸着させることが可能であり、触媒金属の担持場所を制御できる。他の触媒金属についても、安定に存在するイオン形態と吸着に適した官能基を選択することによって触媒金属イオンをイオン交換吸着させることができる
次に、触媒金属イオンを吸着した繊維に対して酸化剤や還元剤を接触させることで、触媒金属を繊維に担持できる。触媒金属イオンは繊維表面ばかりでなく、繊維内部にまで担持される。例えば、塩化パラジウム([Pdcl2−)を吸着したアニオン交換繊維に還元剤であるヒドラジン水溶液を接触することでパラジウムを担持できる。ヒドラジン以外にも、ヒドロキシルアミン、テトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH)、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸などが利用できる。
マンガン酸化物のように触媒金属酸化物を担持する場合の例を挙げると、カチオン交換基を利用してマンガンイオンを吸着させ、次に次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を接触させることで、マンガン酸化物を担持できる。また、アニオン交換基を利用して過マンガン酸カリウムを吸着させた後、還元しても良い。
触媒金属担持繊維は短繊維、長繊維、撚糸、カット繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、それらの成型加工品であるワインドフィルタ(図2)、モール(図3)、ロープなどさまざまな形状で提供できるため、液体又は気体とを接触させる方法は多様である。また、重要な点は、繊維の表面積が大きいため反応速度が大きい点、成型加工が容易なため、さまざまな使用方法が可能な点、フィルター状への成型が容易なためイオン(又はガス)と粒子の同時除去が可能となる点である。
使用環境によって様々な形状と液体(又は気体)との接触方法を選択できる。図2に示すようなワインドフィルターや不織布をプリーツ折りしたプリーツフィルター及び不織布を巻き回したのり巻き状のフィルターなどがカートリッジフィルターとして利用できる。これらフィルターをフィルターハウジングに収納したものがコンパクトで取扱い容易である。本発明に用いるカートリッジフィルターは流通方式で使用するため、ろ過機能と触媒機能の両方を有しており、機能の複合化が可能となる。
また、図3に示すようなモール状繊維構造物、またはその切断加工品より選択されたものなどを利用できる。モール状構造物とはロープ3の外側に放射状に繊維や撚糸を突出させた構造の一種の組みひもである。滞留した液体を処理する場合、通常は受水槽、原水槽、吸着塔、処理水層などを配管で連結し、ポンプで流通させる必要がある。しかし、モールを使用する場合、本モールを吊下げることで液体(又は気体)中の酸化又は還元性物質を除去できる。使用後はモールを適当な手段で巻き取ることにより容易に固液分離が図れる廃棄物発生量も少ない。
以下、実施例にて具体的に説明するが、本発明の態様は以下の実施例に限られたものではない。
(1)強塩基性アニオン交換繊維1の製造
繊維径約40μmのナイロン繊維よりなる撚糸500g巻いたボビンをポリエチレン袋に入れ、減圧排気−窒素ガス導入という窒素置換操作を3回繰り返した。この袋に、ガンマ線100kGyを照射した。照射後、照射済みのポリエチレン繊維織布を袋のまま発泡スチロールの箱に入れ、ここにドライアイスも入れて冷温保存した。一方、クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル社製)5Lを活性アルミナ充填カラム1000mlに通液し、クロロメチルスチレン中に含有されている重合禁止剤を取り除いた。先の放射線照射済みナイロン繊維のボビンをステンレス製反応容器に入れ、真空ポンプにて10分間吸引した後、窒素を導入して脱酸素した。ここに脱酸素したクロロメチルスチレン溶液を導入し、45℃の恒温水槽中で6時間グラフト重合を行った。重合後、ボビンをアセトン及びメタノールで洗浄しとり出した。一緒に反応させたダミーの撚糸の重量変化から概略グラフト率は62%であることが分かった。グラフト重合後のボビンをトリメチルアミン5%水溶液に浸漬し、40℃で3時間4級アンモニウム化反応を行った。得られたナイロン繊維は中性塩分解容量1.9meq/gの強塩基性アニオン交換繊維であった。
(2)パラジウム担持繊維1の製造
強塩基性アニオン交換繊維1を10g採取し、塩化パラジウム1%水溶液1Lに1時間浸漬し、塩化パラジウムを吸着させた。次にヒドラジン5%水溶液1Lに30分間浸漬し、パラジウムイオンをパラジウム金属に還元した。さらに純水1Lで5回洗浄後真空乾燥した。パラジウムの担持量を塩酸及び硝酸溶出して測定したパラジウム濃度から計算ところ、約53mg/g―繊維であった。
(3)過酸化水素除去試験
パラジウム担持繊維1を0.6g採取し、長さ約1cmにカットした後、図4に示す内径13mmのシリンジに装填した。 層高は11mmであった。シリンジポンプにより、過酸化水素30μg/Lを含む純水を流速SV30から3000まで変えて通水した。処理液の過酸化水素濃度を測定したところ、図5に示すように、いずれのSVにおいても0.2μg/L以下となり、高流速にも関わらず圧力損失が上昇せず、過酸化水素を除去できることが分かった。
(4)強塩基性アニオン交換繊維2の製造
直径約45μmのナイロン繊維にガンマ線を40kGy照射した。次に予め窒素バブリングにより脱酸素したメタクリル酸グリシジル/メタノール(=1/9)のモノマー溶液に浸漬し、45℃で6時間反応した。反応終了後の繊維をジメチルホルムアミド溶液に浸漬し、さらにメタノールに浸漬して洗浄した。乾燥後の重量を測定することにより、重量増加率(グラフト率)133%が得られた。次に、GMAグラフト繊維を1規定塩酸に浸漬し、60℃で2時間加温し、エポキシ基を開環した。さらに、TEDA10%水溶液に浸漬し、70℃で5時間反応させた。この繊維をメタノール洗浄後、乾燥重量を測定し、重量増加率から1.5mmol/gのTEDA導入繊維が得られた。TEDA導入繊維1gを1規定水酸化ナトリウム100mlに浸漬し30分間攪拌することによって再生し、純水500mlで10回バッチ洗浄した。次に塩化ナトリウム1%水溶液100mlに浸漬して、30分攪拌した。上澄み液を別のビーカーにとり、繊維を100ml純水で3回洗浄し、洗浄済みの液は先のビーカーに合わせた。このビーカーの液を0.02規定塩酸で中和滴定することにより、1.9mmeq/gの中性塩分解容量を有する強塩基性アミオン交換繊維であることが分かった。
(5)パラジウム担持繊維2の製造
強塩基性アニオン交換繊維2を10g採取し、(2)と同様の操作でパラジウム担持繊維を製造した。パラジウムの担持量は約46mg/g―繊維であった。
(6)ヒドラジン除去試験
パラジウム担持繊維2を5g採取し、長さ約1cmに切断した。ヒドラジン濃度を18mg/Lに調製したヒドラジン含有液500mlにカット繊維を入れ、2L/分の空気量でバブリングを行った。ヒドラジン濃度の変化を測定した。バブリング開始30分後のヒドラジン濃度は0.8mg/Lに低下していた。
(7)パラジウム担持繊維3の製造
強塩基性アニオン交換繊維1を50g採取し、塩化パラジウム0.2%水溶液300mLに浸漬し、塩化パラジウムを吸着させた。次に、ヒドラジン5%水溶液1Lに浸漬し、パラジウムイオンを還元した。(2)と同様にパラジウム担持量を測定したところ、10mg/g―繊維であった。
(8)ヨウ素酸の除去
パラジウム担持繊維3を約1cmに切断し、内径25mmのアクリル製カラムに充填し図6に示すカラム試験装置を組み立てた。パラジウム担持繊維の充填層高は450mmであった。ヨウ素酸ナトリウムと塩化ナトリウムを純水に溶解し、ヨウ素酸濃度1mg/LおよびCl濃度200mg/Lの合成原水を作製した。この合成原水をSV10で通液し、入口でヒドラジン濃度が10mg/Lとなるよう注入した。1L通液時点でカラム出口の処理液をサンプリングし、ヨウ素を測定したところヨウ素酸及びヨウ素ともに検出されず、パラジウム担持繊維3で除去されていることが分かった。パラジウム担持繊維3の充填層中でヨウ素酸のヨウ素イオンへの還元、パラジウム担持繊維3の強塩基性アニオン交換基によるヨウ素イオンのイオン交換吸着が起きていることが分かった。
(9)強酸性カチオン交換繊維1の製造
(4)のメタクリル酸グリシジルグラフト物20gを亜硫酸ナトリウム10%、イソプロピルアルコール12%、水77%のスルホン化液500mLに浸漬し、80℃で9時間加温することによってスルホン化した。得られた繊維は2.4meq/gの強酸性カチオン交換繊維であった。
(10)酸化マンガン担持繊維の製造
強酸性カチオン交換繊維1を10g採取し、塩化マンガン1%水溶液500mLに2時間浸漬し、マンガンイオンを吸着させた。水洗いを十分に行った後、次亜塩素酸ナトリウム5%水溶液に浸漬し、マンガンイオンを酸化した。1時間経過後、マンガンイオンは酸化され黒褐色のマンガン酸化物が繊維に担持されていた。重量増加率から約12%のマンガン酸化物が担持された。
(11)空気中のオゾン除去
マンガン酸化物担持繊維10gを内径20mmのガラスカラムに入れ、空気を5L/分の流速で流通させた。層高は約100mmであった。入口配管の途中でオゾン発生器からのオゾンを30ppbとなるよう注入し、オゾン除去試験を行った。1時間経過後のカラム出口のオゾン濃度を測定したところ、4ppbに低下していた。この時のSVは約10000と高流速であった。
放射線グラフト重合法によるイオン交換繊維又はキレート繊維に触媒金属を担持することが可能となった。従来の粒状樹脂を充填した充填塔方式では得られなかったような低圧力損失化が達成でき、高速処理が可能となった。加えて、成型加工が容易であるため、さまざまな製品形状が可能となり、実施例に示したように、超純水製造装置に発生する過酸化水素の除去、発電所の定期点検時に発生するヒドラジン含有廃液の処理、オゾン酸化等によって水中に含有される臭素酸やヨウ素酸などハロゲンのオキソ酸の除去など、さまざまな産業分野で使用できるようになった。
1 コア
2 金属触媒担持繊維
3 ロープ

Claims (6)

  1. 放射線グラフト重合法を利用してイオン交換基又はキレート基より選択される官能基が導入された繊維に対して、該繊維の官能基の一部を利用して触媒金属が担持されたイオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
  2. 前記、繊維の官能基は放射線グラフト重合法によって強酸性カチオン交換基、強塩基性アニオン交換基、キレート官能基、弱酸性カチオン交換基、弱塩基性アニオン交換基を有するモノマーをグラフト重合するか、又は該官能基に転換可能なモノマーをグラフト重合した後、二次反応によって該官能基に転換することによって導入されたことを特徴とする請求項1記載のイオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
  3. 前記、該繊維の官能基の一部を利用して、繊維に触媒金属が担持された請求項1又は2記載のイオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
  4. 前記、触媒金属が金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、ロジウム、鉄、コバルト、マンガン、銅より選択された請求項1、2又は3記載のイオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維
  5. 繊維状基材に放射線を照射する第1工程、イオン交換基又はキレート基を有するモノマーをグラフト重合するか、イオン交換基又はキレート基に転換可能な重合性モノマーをグラフト重合し、さらにイオン交換基又はキレート基に転換する第2工程、イオン交換基又はキレート基を利用して、イオン交換基又はキレート基の一部に触媒金属イオンを吸着させる第3工程、酸化剤又は還元剤を使用して触媒金属イオンを酸化又は還元し、繊維状基材上に金属を担持させる第4工程を含むイオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維の製造方法
  6. 前記、イオン交換機能又はキレート機能及び触媒機能を有する分離機能性繊維と酸化性物質及び/又は還元性物質を含有する液体又は気体とを接触させる酸化又は還元性物質の除去方法
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