JP4238076B2 - 気体中汚染物質の除去材料及びその製造方法 - Google Patents

気体中汚染物質の除去材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中に微量存在するガス状化学汚染物質を除去する技術に係り、特に、半導体製造等の工程において問題となっている、乾燥気体中のアンモニア等の塩基性ガスを効果的に除去する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体工場等に代表される精密産業では、製品の品質を維持するために清浄な空間が必要である。この場合の清浄性とは、雰囲気中の微粒子状物質が除かれているだけでなく、アンモニア等の塩基性ガス、塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガス、あるいはフタル酸エステル等の中性有機物のガス状化学汚染物質が除去されていることも重要である。
【0003】
従来、これらのガス状化学汚染物質を除去する方法としては、古くは活性炭や活性炭素繊維に被処理気体を接触させることによって汚染物質を吸着除去するということを行なっていたが、除去性能は十分でなく、また、温度等の環境条件の変化により被吸着物質を再放出するなどの問題点があった。この問題点を改善するための一つの方法として、活性炭に酸又はアルカリ性物質を添着した材料が提案されている。他方では、ビーズ状イオン交換樹脂を充填した吸着材や、イオン交換基を導入した繊維よりなる不織布材料や織布材料も提案されている(特許文献1)。これらの材料は、気体中のイオン性成分を吸着する能力に優れ、ケミカルフィルターとして着実に半導体業界において実績を積み重ねてきた。
【0004】
しかしながら、イオン交換による化学吸着を主な作用原理として、イオン交換体への吸着によって酸性ガス又は塩基性ガスを除去するという手法においては、除去効率は処理対象となる気体の湿度(相対水蒸気圧)に大きく依存する。すなわち、処理対象気体が低湿度(乾燥状態)の場合には、イオン交換体の表面において水が失われてイオン性が低下するだけでなく、イオン交換体の収縮が起こり、吸着分子(酸性ガス又は塩基性ガス成分)の内部拡散が著しく抑制されると考えられる。したがってこのような場合には、イオン交換体の吸着容量の低下をもたらし、イオン交換体が本来持つ性能を十分に発揮することができない。一方、被処理気体の湿度が十分高い状態の場合には、乾燥状態の場合のような不具合は発生しない。半導体産業においては、製造工程で雰囲気気体の湿度を低減させることが通常的に行なわれており、イオン交換によるガス状化学汚染物質の除去には制約があった。また、中和作用を利用したフィルター材の場合もイオン交換体の場合と同様の理由のために除去性能は満足いくものではなかった。
【0005】
近年、半導体工業の精密化が進行し、特に光リソグラフィー技術関連分野では空気環境の清浄化要求基準が一層厳しくなった。具体的には、空気中の酸素、水分、及び構造材料から放出される有機物等を低減させる必要性が増している。特に露光装置(ステッパー)では、パターンの微細化に伴って使用するビームの波長が短くなっているため、雰囲気中に汚染物質が存在するとビームが吸収あるいは拡散され、光量を著しく低下させたり、加工精度を低下させる原因となる。そのため、窒素ガス等の不活性ガスでステッパーなどの特定装置の内部を充満(置換)させるなどの対策が講じられるようになっている。このような場合、雰囲気中の湿度も低下するので、従来のケミカルフィルターを使用した場合には、前述した理由により、十分な汚染物質の除去性能が得られない。そのため、乾燥雰囲気であっても十分な除去性能を発揮することのできる化学汚染物質除去フィルターの開発が求められている。この課題に対して、無機吸着剤のフィルターへの利用(特許文献2)が試みられているが、このようなフィルターは、現状ではまだコストや性能面で十分との評価が得られていない。
【0006】
イオン交換による化学汚染物質の吸着除去に代わる手法として、金属酸化物を樹脂や繊維基材に固定して、金属酸化物の持つ吸着能を利用して、空気中の化学汚染物質、特に硫黄酸化物や硫化水素、メチルメルカプタンなどの硫黄系のガスを吸着除去するという方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、かかる手法に関して更なる改良が求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−279713号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2000−334242号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−177767号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特に乾燥雰囲気に対しても十分な化学汚染物質の吸着除去特性を発揮する高性能な空気清浄材料を開発することによって、半導体工業等の精密加工分野での良好な空気環境を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を導入した有機高分子材料に金属塩を接触させて金属イオンを担持させた後、金属イオンを酸化することによって金属酸化物を微粒子として担持させることにより気体中のガス状汚染物質の除去材料を形成する方法において、最終工程として、金属酸化物微粒子を担持した高分子材料を酸で処理することによって、特に乾燥気体中のアンモニア等の塩基性ガスを極めて効率よく除去することのできる気体中汚染物質の除去材料を提供することができることを見出し、本発明を完成するに到った。即ち、本発明の一態様は、有機高分子基材の主鎖上に、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を導入し、得られた有機高分子材料に、金属の塩を接触させることによって前記金属のイオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、担持された金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子の形態で析出させ、次に有機高分子材料を酸で処理することを特徴とする、気体中汚染物質の除去材料を製造する方法に関する。
【0012】
金属としてマンガンを例に挙げて説明すると、この金属の酸化物を微粒子の形態で有機高分子基材に担持させるには、有機高分子基材にアニオン交換基を導入して、これに7価のマンガンイオンを担持させた後、担持させたマンガンイオン(VII)を還元して4価のマンガン(IV)酸化物とする方法と、有機高分子基材にカチオン交換基又はキレート基又は親水基を導入して、これに2価のマンガンイオンを担持させた後、担持させたマンガンイオン(II)を酸化して4価のマンガン(IV)酸化物とする方法とがある。前者の方法では、4級アンモニウム基、低級アミノ基などのアニオン交換基を有機高分子基材に導入し、次に過マンガン酸塩水溶液を基材に接触させることによって過マンガン酸イオン(7価のマンガンイオン)を官能基に担持させ、最後に、例えば過酸化水素や他の還元剤によって過マンガン酸イオンを還元することによって、二酸化マンガンを微粒子の形態で析出させることができる。しかしながら、過マンガン酸塩が強力な酸化剤であるために、有機高分子基材が劣化したり、作業環境が劣悪になるという問題点があった。
【0013】
一方、後者の方法では、スルホン酸基などのカチオン交換基や、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、エチレンジアミン基などのキレート基、或いは水酸基などの親水基等の官能基を有機高分子基材に導入して、次にマンガンの塩、例えば塩酸塩や硝酸塩などを作用させて2価のマンガンイオンを官能基に担持させる。次に、基材を水酸化ナトリウムなどのアルカリの水溶液で処理することによって2価のマンガンイオンをマンガン水酸化物とした後、水洗、乾燥させることにより、マンガン水酸化物を脱水させてマンガン酸化物とすることによって、二酸化マンガンを微粒子の形態で析出させることができる。また、別法として、2価のマンガンイオンが担持した有機高分子基材を次亜塩素酸塩などの酸化剤の水溶液で処理することによって2価のマンガンイオンをマンガン酸化物とすることによっても、二酸化マンガンを微粒子の形態で析出させることができる。しかしながら、このような方法で製造した金属酸化物担持材料は、気体中のガス状汚染物質の吸着・除去能力が十分に満足できるものではなかった。特に、湿分の低い乾燥気体中のアンモニアなどの塩基性ガスを吸着除去する能力に関しては、上記のようにカチオン交換基又はキレート基又は親水基を導入した有機高分子基材に金属イオンを担持させて、この金属イオンを酸化することによって製造した金属酸化物担持材料では、十分なものは得られなかった。
【0014】
本発明者らは、上記の問題点に関して鋭意検討を行なったところ、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を導入した有機高分子基材を用いて、これに金属イオンを担持させた後に酸化して金属酸化物として析出させる方法によって製造された金属酸化物担持材料では、金属酸化物に加えて金属水酸化物が相当割合存在しており、この水酸化物が汚染物質に対する吸着除去能に劣るために、材料の汚染物質吸着・除去能力が低下するという知見を得るに到った。更には、金属水酸化物が金属酸化物微粒子の表面上を覆って金属酸化物微粒子の汚染物質吸着除去能を低下させてしまうという場合もあると考えられる。即ち、2価のマンガンイオンを担持させた有機高分子基材を水酸化ナトリウムのようなアルカリで処理して2価のマンガンイオンをマンガン水酸化物とした後に、水洗、乾燥させることにより、マンガン水酸化物を脱水させてマンガン酸化物微粒子を析出させる場合においては、水酸化物の一部が脱水されずに水酸化物のままで残留し、これが汚染物質吸着除去能の低下の原因となる。特に、有機高分子基材は高温乾燥ができないので、乾燥の際に金属水酸化物から金属酸化物への脱水の進行度合いが少ない場合がある。また、2価のマンガンイオンを担持させた有機高分子基材を次亜塩素酸塩などの酸化剤の水溶液で処理することによって2価のマンガンイオンをマンガン酸化物として微粒子の形態で析出させる場合においては、次亜塩素酸塩水溶液がアルカリ性であるため、マンガンイオンの一部が酸化物ではなく水酸化物となって、これが汚染物質吸着除去能の低下の原因となる。
【0015】
しかしながら、上記のような金属酸化物担持材料でも、被処理気体が非乾燥気体、即ちある程度の湿分を保持している場合には、アンモニアなどの塩基性ガスをある程度良好に吸着除去することができる。本発明者らの研究により、これは、担持された金属酸化物による物理的な吸着ではなく、基材が有するカチオン交換基による吸着、即ちイオン交換による化学的な吸着によるものであることが分かった。イオン交換による塩基性ガスの吸着には水分の存在が不可欠であり、したがって、このメカニズムでは、乾燥気体中の塩基性ガスを吸着除去することはできない。
【0016】
本発明者らは、かかる知見に基づき、カチオン交換基又はキレート交換基又は親水基を導入した有機高分子基材に金属イオンを担持させて、担持させた金属イオンを酸化して金属酸化物を微粒子として析出させた材料を、更に酸水溶液で処理して、金属酸化物と共に存在する金属水酸化物を溶解除去することによって、金属酸化物担持材料の化学汚染物質除去能、特に乾燥気体中のアンモニアガスのような塩基性ガスの吸着除去能を大きく向上させることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる気体中汚染物質の除去材料を製造するための素材として用いられる有機高分子基材としては、ポリオレフィン系の有機高分子材料が好ましく用いられる。ポリオレフィン系の有機高分子材料は、放射線に対して崩壊性ではないので、後述する放射線グラフト重合法によってグラフト重合体側鎖を導入する目的に用いるのに適している。更に、有機高分子基材の形態としては、繊維、又は繊維の集合体である織布又は不織布、或いはそれらの加工品、例えばスポンジ状の材料等が好ましく用いられる。これらの材料は、表面積が大きく、孔径の調整やプリーツ加工等の成形加工も容易であるため、エアフィルタなどに利用されている。したがって、これらの基材を用いて、フィルタの形態の気体中汚染物質の除去材料を提供することができ、被処理気体中のガス状汚染物質を除去することができるばかりでなく、被処理気体中の微粒子も合わせて除去することができるので、被処理気体の清浄化手段として好ましく用いることができる。また、織布/不織布から製造したフィルタは、活性炭やゼオライトを用いたものが焼却処理が容易でないのに比較して、使用済みのフィルタの取り扱いも簡単で、容易に焼却処理することができる。
【0018】
本発明において、上記のような有機高分子基材の高分子主鎖上にカチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体鎖の形態の側鎖を導入する手段としては、グラフト重合法を用いることができる。中でも、放射線グラフト重合法は、ポリマー基材に放射線を照射してラジカルを生成させ、それにグラフトモノマーを反応させることによって、所望のグラフト重合体側鎖を基材に導入することのできる方法であり、グラフト鎖の数や長さを比較的自由にコントロールすることができ、また、各種形状の既存の高分子材料に重合体側鎖を導入することができるので、本発明の目的のために用いるのに最適である。
【0019】
本発明の目的のために好適に用いることのできる放射線グラフト重合法において、用いることのできる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができるが、本発明において用いるのにはγ線や電子線が適している。放射線グラフト重合法には、グラフト用基材に予め放射線を照射した後、重合性単量体(グラフトモノマー)と接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後、モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などが挙げられるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0020】
繊維や繊維の集合体である織布/不織布は本発明にかかる気体中汚染物質の除去材料を製造するための基材として用いるのに最も適した素材であるが、これはモノマー溶液を保持し易いので、含浸気相グラフト重合法において用いるのに適している。
【0021】
また、重合体側鎖の導入に放射線グラフト重合法を用いると、織布/不織布のような複雑な形状の有機高分子基材の表面ばかりでなく、その内部にもグラフト側鎖を導入することができるので、基材中に多量の金属を担持させることが可能である。放射線グラフト重合法によってカチオン交換基又はキレート基又は親水基を基材に導入すると、これらの基は分子レベル(ナノメートルサイズ)で分散して導入される。したがって、この分散して導入された基を利用して金属酸化物を担持させることによって、金属酸化物微粒子を高度に分散させて担持させることが可能である。担持された金属酸化物微粒子は、単位体積あたりの表面積が大きいので、本発明の乾燥雰囲気における微量汚染物質の除去に適しており、良好な除去材料を作製することが可能である。
【0022】
放射線グラフト重合法は有機高分子基材の内部まで効果的にラジカルを生成することができるため、繊維状基材に有効に側鎖及び官能基(カチオン交換基又はキレート基又は親水基)を高分散にかつ高密度に導入することができる。更にそのように作製したグラフト重合物は架橋構造でないため、金属酸化物を多量に有機高分子基材表面に担持させることができる。また、各種形状の素材を利用できるので、汚染物質の濃度、除去性能、必要な寿命、圧力損失などを考慮して素材を選択することができる。側鎖(グラフト鎖)はモビリティー(可動性)が高いため、架橋構造のイオン交換樹脂や繊維と比べ、金属イオンを酸化物に変化させる段階で微小構造の破壊が少なく、物理的強度低下が小さい。また、放射線グラフト重合法によって基材に導入されたイオン交換基又はキレート基又は親水基においては、隣接する基同士の間隔がナノメートルサイズであり、したがってこれらの基に吸着する金属イオンも高度に分散することになり、金属酸化物のアルカリ性条件下での析出工程においても、金属酸化物微粒子が偏って析出せず、良好に分散して金属微粒子が基材繊維上に担持される。特に放射線グラフト重合法を利用した材料においては、その析出過程での微小構造の破壊が少ないために物理的強度低下が小さく、多量の微粒子を担持することができる。
【0023】
本発明において、重合体側鎖の形態で有機高分子基材に導入することのできるカチオン交換基としては、例えばスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基などを挙げることができる。これらのカチオン交換基は、官能基がマイナス(−)に解離しているので、グラフト鎖中のカチオン交換基同士がお互いに反発してグラフト鎖が膨潤する。このため、カチオン交換基が基材中で分散するので、カチオン交換基に担持させる金属も基材中に分散することになる。また、本発明において、重合体側鎖の形態で有機高分子基材に導入することのできるキレート基としては、例えばカチオン交換性を有するキレート基であるイミノジ酢酸基などを挙げることができる。また、アニオン交換性を有するキレート基であるイミノジエタノール基やエチレンジアミン基を導入した有機高分子基材を用いた場合でも、金属塩溶液を接触させて金属イオンを担持させた後、金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子として析出させることによって、金属酸化物を担持させる方法を採用する場合があり、この場合においても本発明を適用することができる。また、本発明において用いることのできる親水基としては、アミド基、水酸基を挙げることができる。
【0024】
本発明において、高分子基材の主鎖上に、カチオン交換基を有する重合体側鎖を導入する方法としては、カチオン交換基を有する重合性単量体をグラフト重合によって高分子基材の主鎖上に導入するか、或いは、それ自体はカチオン交換基を有しないが、カチオン交換基に変換させることのできる基を有する重合性単量体をグラフト重合によって高分子基材の主鎖上に導入した後、更に反応させて、前記基をカチオン交換基に変換することによって、重合体側鎖上にカチオン交換基を導入することができる。
【0025】
この目的で用いることのできるカチオン交換基を有する重合性単量体の具体例としては、例えばスルホン酸基を有する重合性単量体として、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0026】
また、それ自体はカチオン交換基を有しないが、カチオン交換基に変換させることのできる基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸グリシジル、スチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、クロロメチルスチレンなどを挙げることができる。例えば、メタクリル酸グリシジルをグラフト重合によって高分子基材上に重合体側鎖として導入した後、亜硫酸ナトリウムを反応させてスルホン化することによってカチオン交換基に転換させることができる。更に、上記のメタクリル酸グリシジル、スチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、クロロメチルスチレンなどの重合性単量体を高分子基材にグラフト重合させた後、イミノジ酢酸などのキレート化剤を作用させるとイミノジ酢酸基などのキレート基を導入することができる。また、メタクリル酸グリシジルを高分子基材にグラフト重合させた後、硫酸などの無機酸水溶液中に浸漬してメタクリル酸グリシジルの有するエポキシ基を水酸基に変換することによって、高分子基材に親水基である水酸基を導入した材料を得ることができる。但し、本発明において用いることのできる重合性単量体は、上記の例に限定される訳ではない。
【0027】
本発明に係る気体中汚染物質の除去材料を製造するには、次に、上記に説明した方法で得られた高分子基材の主鎖上に配置された重合体側鎖上に存在するカチオン交換基又はキレート基又は親水基に、化学汚染物質を吸着除去するための金属酸化物を構成する金属のイオンを担持させる。本発明において用いることのできる、化学汚染物質を吸着除去するための金属酸化物を構成する金属としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウムを挙げることができる。基本的には、金属酸化物の微粒子を生成させることが可能な金属であればよいが、特にマンガン、鉄が好ましい。また、金属の塩が水等の溶液に溶解し易いものが好ましい。上記の金属の酸化物は、気体中のアンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような塩基性ガス状汚染物質、二酸化硫黄、硫化水素、メチルメルカプタンなどのような酸性ガス状汚染物質、及び、フタル酸エステル類(DMP,DEP,DBP等)、環状シロキサンのような中性ガス状汚染物質を物理的に吸着する場として極めて有効に用いることができる。
【0028】
本発明においては、金属をイオン交換的に担持させて基材中に導入するので、金属の担持量を容易に制御することができる。
【0029】
本発明において、高分子基材に重合体側鎖の形態で導入されたカチオン交換基又はキレート基又は親水基に所定の金属のイオンを担持させるには、マンガン等の所定の金属の塩酸塩や硝酸塩の水溶液を、カチオン交換基又はキレート基又は親水基が重合体側鎖の形態で導入された高分子基材に接触させることによって行なうことができる。本発明においては、イオン交換吸着もしくはキレートによる吸着を利用することで、交換容量に相当する金属を安定して効率よい操作で担持することが可能である。
【0030】
次に、金属イオンを担持させた高分子基材をアルカリで処理して、担持させた金属イオンを金属水酸化物とした後、脱水させることによって金属酸化物微粒子として析出させることができる。例えば、カチオン交換基又はキレート基又は親水基が導入された高分子基材に、塩化マンガン(II)水溶液を接触させることによってマンガン(II)イオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、次に水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤で処理して、マンガン(II)イオンをマンガン水酸化物とする。次に、基材を水洗し、乾燥することによって、マンガン水酸化物を脱水させてマンガン酸化物として析出させることができる。また、別法として、金属イオンを担持させた高分子基材を酸化剤で処理して、担持させた金属イオンを金属酸化物として析出させることができる。例えば、上記の方法によってマンガン(II)イオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、次に次亜塩素酸塩水溶液などの酸化剤で処理して、マンガン(II)イオンをマンガン酸化物として析出させることができる。
【0031】
本発明にかかる方法は、上記のようにして得られた金属酸化物が担持した有機高分子材料を、乾燥した後、酸溶液に浸漬して、不要な金属水酸化物を溶解除去することを特徴とする。これにより、金属酸化物による気体中汚染物質に対する吸着除去能の低下を招いていた不要な金属水酸化物が取り除かれて、金属酸化物が効率よく利用できる状態になる。かかる目的で使用する酸溶液は、比較的低濃度、具体的には0.1mol/L程度の濃度が好ましい。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸を用いることができる。酸溶液への有機高分子材料の浸漬は、あまり長時間行なうと金属水酸化物だけでなく金属酸化物の溶解も大きくなるので、30分以下とすることが好ましい。有機高分子材料を酸溶液へ浸漬した後は、洗浄液がほぼ中性になるまで純水で洗浄することが好ましい。水洗は、酸成分の発ガスを抑えるためにも十分に行なう必要があり、また2回以上に分けて行なうことが好ましい。
【0032】
更に、上記のように、金属酸化物が担持した有機高分子材料を酸溶液に浸漬することにより、カチオン交換基又はキレート基の一部が再生型(H型)となり、被処理気体が乾燥状態から湿度が増加した場合(例えば、除去材料の交換時、あるいガス供給装置停止時等)に、被吸着物質の再放出による環境汚染を防止することができる。すなわち、本発明に係る気体中汚染物質の除去材料においては、通常時(乾燥状態)には物理吸着によって汚染物質を吸着し、異状時(湿度増加時)には、イオン交換基又はキレート基による化学吸着を行なうことにより、湿度変化に対する被吸着物質の捕捉機能を維持することができる。
【0033】
上記に記載した本発明によって製造した気体中汚染物質の除去材料は、特に乾燥気体中のアンモニアなどの塩基性ガスを除去するのに好適に使用することができる。本発明に係る気体中汚染物質の除去材料をケミカルフィルターとして利用する場合は、基本的に湿度5%以下の通気環境で使用することが好ましい。本発明に係る気体中汚染物質の除去材料においては、金属酸化物微粒子を織布、不織布等の形態の有機高分子基材に担持させているため、圧損も少なく、加工も容易であり、フィルター形状にも自由度がある。従って、ラインフィルター状や、プリーツ織りしたフィルターユニットとしての使用も可能である。
【0034】
本発明に係る気体中汚染物質の除去材料は、特に、半導体製造施設におけるクリーンルームや、ステッパー又はクリーンボックス内などの乾燥雰囲気から、アンモニアやテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基性ガスを除去する場合に、これまでになかった優れた性能を示す。更に、本発明に係る気体中汚染物質の除去材料は、乾燥気体中の二酸化硫黄などの酸性ガスを除去するのにも優れた性能を示す。
【0035】
本発明の各種形態は、以下の通りである。
【0036】
1.有機高分子基材の主鎖上に、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を導入し、得られた有機高分子材料に、金属の塩を接触させることによって前記金属のイオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、担持された金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子の形態で析出させ、次に有機高分子材料を酸で処理することを特徴とする、気体中汚染物質の除去材料を製造する方法。
【0037】
2.グラフト重合法を用いて有機高分子基材上に重合体側鎖を導入する上記第1項に記載の方法。
【0038】
3.有機高分子基材が、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、あるいはそれらの加工品から選択される上記第1項又は第2項に記載の方法。
【0039】
4.前記金属が、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウムから選ばれる少なくとも一種である上記第1項〜第3項のいずれかに記載の方法。
【0040】
5.カチオン交換基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基から選択され、キレート基が、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、エチレンジアミン基から選択され、親水基が、アミド基、水酸基から選択される上記第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。
【0041】
6.高分子の主鎖上にカチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を有する有機高分子基材に、金属酸化物が微粒子の形態で担持されており、酸溶液で処理することによって金属水酸化物が除去されていることを特徴とする気体中汚染物質の除去材料。
【0042】
7.高分子の主鎖上にカチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を有する有機高分子基材に、金属の塩を接触させることによって前記金属のイオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、担持された金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子の形態で析出させ、次に基材を酸で処理することによって製造される気体中汚染物質の除去材料。
【0043】
8.グラフト重合法を用いて有機高分子基材上に重合体側鎖が導入されている上記第6項又は第7項に記載の材料。
【0044】
9.有機高分子基材が、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、あるいはそれらの加工品から選択される上記第6項〜第8項のいずれかに記載の材料。
【0045】
10.前記金属が、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウムから選ばれる少なくとも一種である上記第6項〜第9項のいずれかに記載の材料。
【0046】
11.上記第6項〜第第10項のいずれかに記載の材料を組み込んだ気体中汚染物質の除去装置。
【0047】
12.上記第11項に記載の装置に乾燥気体を通過させることを特徴とする乾燥気体中の塩基性ガスを除去する方法。
【0048】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。以下において記載する%(百分率)は、他に定義していない限りにおいて全てwt%(重量百分率)である。
【0049】
比較例1
A.カチオン交換不織布の製造
ポリエチレンテレフタレート(PET)芯/ポリエチレン鞘の構造の直径15μmの繊維で構成される、目付け55g/m2、厚さ0.2mmの熱融着不織布を10cm角に切り取った基材試験片を用意した。不織布基材試験片に、電子線を150kGy照射することによって基材表面にラジカルを生成させた。グラフトモノマーとしてメタクリル酸グリシジル(GMA)を使用し、上記不織布試験片をモノマー液(GMA100%液)中に浸漬することで、基材試験片にGMA100%液を十分に含浸させた。これを、真空下(0.67kPa)、45℃の条件で4時間静置して、グラフト重合反応を行った。その結果、グラフト率135%のグラフト重合物(GMAグラフト不織布)が得られた。
【0050】
次に、グラフト不織布にスルホン酸基を導入するため、GMAグラフト不織布をスルホン化液(8%の亜硫酸ナトリウム及び12%のイソプロピルアルコールを含む水溶液)中に10時間浸漬した。スルホン化したGMAグラフト不織布をスルホン化液から取り出し、水洗後、5%塩酸水溶液に浸漬・攪拌することでスルホン酸基をH型にした。得られたスルホン化GMAグラフト不織布はカチオン交換不織布であり、中性塩分解容量は2.62meq/gであった。
【0051】
B.マンガン酸化物担持材料の製造
上記で得られたカチオン交換不織布を200mLの2%塩化マンガン(II)水溶液に30分間浸漬した。次に、不織布を200mLの1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(アルカリ性)中に浸漬することによって、カチオン交換不織布の繊維表面にマンガン酸化物(マンガン水酸化物を含む)を析出させた。この操作によって、カチオン交換不織布は黒褐色に変化した。得られたマンガン酸化物担持不織布を恒温槽に入れ、80℃で3時間乾燥した。
【0052】
C.乾燥状態でのアンモニア除去性能試験
上記で得られたマンガン酸化物担持不織布(以下、Mn不織布と記す)を用いて、乾燥状態での気体中のアンモニア除去性能試験を行った。試験には、図1に示すような実験装置を用い、被処理ガス試料として、フローシステム内で湿度0.3%の窒素ガスとアンモニアガスを、窒素ガス中のアンモニア濃度が2ppmになるように流量を調整して混合し、フィルタホルダに通ガスした。フィルタホルダには、上記で得られたMn不織布を3枚装着し、Mn不織布(有効面積2cm2)に被処理ガスが流量0.5L/分で透過するようにした。フィルタの入口側のガスと出口側のガスを分取して、ガス中のアンモニア濃度を測定し、フィルタによるアンモニアの除去率を求めた。アンモニア濃度の測定は、アンモニアガス検知管[ガステック社製、商品名No.3L(アンモニア用)]によって行なった。
【0053】
混合ガスのフィルタへの通ガスと共に試験を開始した。運転初期のアンモニア除去率は99%で、15分後までその除去率を維持したが、さらに試験を継続したところ、試験開始後11時間で除去率90%まで低下し、更に15時間後に除去率が10%以下となった。この時点をもって試験を終了した。
【0054】
実施例1
比較例1のA,Bで製造したMn不織布を、さらに1%塩酸水溶液中に30分間浸漬した後、純水5Lで2回洗浄した。このMn不織布を恒温槽中80℃の条件で3時間乾燥し、比較例1と同様にアンモニア除去性能試験を行った。その結果、試験開始後20時間であってもアンモニア除去率は99%以上を維持し、試験開始後23時間で除去率90%まで低下した。
【0055】
実施例2
実施例1で製造したMn不織布を用い、二酸化硫黄について乾燥状態における除去性能試験を行った。試験には比較例1のCと同様に、図1に示すような実験装置を用い、被処理ガス試料としては、フローシステム内で湿度0.3%の窒素ガスと二酸化硫黄ガスとを、二酸化硫黄濃度が2ppmになるように流量を調整して混合し、フィルタホルダに通ガスした。フィルタホルダには、実施例1で製造したMn不織布を3枚装着し、Mn不織布(有効面積2cm2)に被処理ガスが0.5L/分で透過するようにした。その結果、除去率90%以上を試験開始後4時間まで維持した。したがって、本発明にかかるMn不織布が乾燥雰囲気における酸性ガスに対する除去性能をも併せ持つことが示された。
【0056】
比較例2
比較例1のAで製造されたH型にしたスルホン化GMAグラフト不織布を、比較例1と同様に図1に示すような実験装置に装填し、同様な方法で、乾燥気体中のアンモニア除去性能試験を行った。その結果、試験開始後30分までは除去率99%以上を維持したが、試験開始後45分で除去率は90%に低下した。即ち、乾燥雰囲気でのアンモニア除去については、フィルタ材料としては単にイオン交換基(スルホン酸基)をもつだけでは寿命が短く、実用的にアンモニア除去材料として使用することは困難であることが示された。
【0057】
比較例3
A.イミノジ酢酸基導入不織布の製造
比較例1と同様の方法で製造したGMAグラフト不織布(グラフト重合時のグラフト率138%)を10cm角の大きさに切り取り、80℃に調整したイミノジ酢酸塩溶液(イミノジ酢酸ナトリウムを10%、及びイソプロピルアルコールを20%含み、残部が水からなる溶液)中に6時間浸漬して、不織布にイミノジ酢酸基を導入した。これをさらに2%塩酸水溶液に浸漬することでイミノジ酢酸基をH型とした後、酸吸着量からイミノジ酢酸基導入量を求めた。その結果、得られた不織布のイミノジ酢酸基導入量は、2.5mmol/gであった。
【0058】
B.マンガン酸化物担持材料の製造
上記Aで得られたイミノジ酢酸基導入不織布を用い、比較例1のBと同様の方法によってマンガン酸化物を担持させた。この不織布を80℃の恒温層内で3時間乾燥した。
【0059】
C.乾燥状態でのアンモニア除去性能試験
上記Bで得られたマンガン酸化物担持不織布(以下、Mn不織布と記す)を用いて、乾燥状態でのアンモニア除去性能試験を行った。試験には、図1に示すような実験装置を用い、被処理ガス試料として、フローシステム内で湿度0.3%の窒素ガスとアンモニアガスとをアンモニア濃度が2ppmになるように流量を調整して、フィルタホルダに通ガスした。フィルタホルダには上記Bで得られたMn不織布を3枚装着し、Mn不織布(有効面積2cm2)に被処理ガスが0.5L/分で透過するようにした。
【0060】
試験開始初期のアンモニア除去率は99%であり、試験開始後15分までその除去率を維持したが、さらに試験を継続したところ、試験開始後3時間で除去率10%以下となった。この時点で試験を終了した。
【0061】
実施例3
比較例3のBで製造されたMn不織布をさらに1%塩酸水溶液中に30分間浸漬した後、純水5Lで2回に分けて洗浄した。このMn不織布を恒温槽中80℃の条件で3時間乾燥した。得られたMn不織布を用いて、比較例3と同様にアンモニア除去性能試験を行った。その結果、試験開始初期のアンモニア除去率は99%で、試験開始後12時間までその除去率を維持した。除去率が95%になった試験開始後13.5時間で試験を終了した。
【0062】
比較例4
A.親水性不織布の製造
比較例1のAで得られたGMAグラフト物を1%硫酸水溶液中に80℃で2時間浸漬することによって、GMA由来のエポキシ基のほぼ100%をジオール(水酸基)に変換して、親水性の不織布を製造した。
【0063】
B.マンガン酸化物担持材料の製造
上記Aで得られた親水性不織布を5%塩化マンガン(II)水溶液200mL中に30分間浸漬して、マンガンイオンを十分浸透させた。次に、取り出した不織布から液を拭い取り、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液200mL中に1時間浸漬した。この時点で不織布の色調は黒褐色に変化した。この不織布を恒温槽内で80℃、3時間乾燥を行った。
【0064】
C.乾燥状態でのアンモニア除去性能試験
上記Bで得られたマンガン酸化物担持不織布(以下、Mn不織布と記す)を用いて、乾燥状態でのアンモニア除去性能試験を行った。試験には、図1に示すような実験装置を用い、被処理ガス試料として、フローシステム内で湿度0.3%の窒素ガスとアンモニアガスを、アンモニア濃度が2ppmになるように流量を調整して混合して、フィルタホルダに通ガスした。フィルタホルダには、上記Bで得られたMn不織布を3枚装着し、Mn不織布(有効面積2cm2)に被処理ガスが0.5L/分で透過するようにした。比較例1と同様に、被処理ガス中のアンモニア除去率を求めた。試験開始初期のアンモニア除去率は99%であり、試験開始後15分までその除去率を維持したが、さらに試験を継続したところ、試験開始後2時間で除去率が95%となった。この時点で試験を終了した。
【0065】
実施例4
比較例4のBで製造されたMn不織布を更に1%塩酸水溶液中に30分間浸漬した後、純水5Lで2回に分けて洗浄した。このMn不織布を恒温槽中80℃の条件で3時間乾燥した。得られたMn不織布を用いて、比較例4と同様にアンモニア除去性能試験を行った。その結果、試験開始初期のアンモニア除去率は99%で、試験開始後5時間までその除去率を維持した。除去率が20%になった試験開始後6時間で試験を終了した。
【0066】
実施例5
実施例1で行ったアンモニア除去性能試験の後、アンモニアを吸着させたMn不織布をフィルタホルダに入れたままにして、実験装置の運転条件を、湿度0.3%の窒素ガスから湿度55%の空気に代えて全体の流量を0.5L/分とし、さらにMn不織布の後段に別の強酸性カチオン交換不織布(スルホン化GMAグラフト重合不織布、H型)を遊離(再放出)アンモニア捕捉用として設置した。しばらく運転した後、このアンモニア捕捉用強酸性カチオン交換不織布を塩酸中に浸漬し、Mn不織布から遊離したアンモニアを定量したところ、Mn不織布の有効面積あたりのアンモニア遊離量は0.01meq/m2であった。この量はMn不織布に吸着された全アンモニア量の0.1%以下であるため、高湿度通気によってもほとんどのアンモニアは遊離(再放出)されなかったといえる。なお、アンモニア捕捉用に用いた強酸性カチオン交換不織布は、湿度55%、25℃でアンモニアに対して99%の除去率を30時間以上維持する能力を有しているものである。
【0067】
比較例5
A.鉄酸化物担持材料の製造
比較例1のAで得られた強酸性カチオン交換不織布を、2%塩化鉄(III)水溶液200mL中に30分間浸漬して、鉄イオンを吸着させた。次に、不織布を1%次亜塩素酸ナトリウム200mL中に1時間浸漬して、鉄酸化物を繊維表面に析出させた。これを恒温槽内で80℃、10時間乾燥した。
【0068】
B.乾燥状態でのアンモニア除去性能試験
上記Aで得られた鉄酸化物担持不織布(以下、Fe不織布と記す)を用いて、乾燥状態でのアンモニア除去性能試験を行った。試験には、図1に示すような実験装置を用い、被処理ガス試料として、フローシステム内で湿度0.3%の窒素ガスとアンモニアガスとを、アンモニア濃度が2ppmになるように流量を調整して混合し、フィルタホルダに通ガスした。フィルタホルダには、上記Aで得られたFe不織布を3枚装着し、Fe不織布(有効面積2cm2)に被処理ガスが0.5L/分で透過するようにした。比較例1等と同様に、被処理ガス中のアンモニアの除去率を求めた。
【0069】
試験開始初期のアンモニア除去率は40%であり、試験開始後30分までに除去率が10%以下に急速に低下した。
【0070】
実施例6
比較例5のBで製造されたFe不織布を、さらに1%塩酸水溶液中に30分間浸漬した後、純水5Lで2回に分けて洗浄した。このFe不織布を恒温槽中80℃の条件で3時間乾燥し、比較例1等と同様にアンモニア除去性能試験を行った。
【0071】
その結果、試験開始後3時間までアンモニア除去率99%以上を維持し、試験開始後3.5時間で除去率90%まで低下した。
【0072】
比較例1と実施例1、比較例3と実施例3、比較例4と実施例4、比較例5と実施例6とを比較すると、有機高分子材料に金属酸化物を担持させた後、塩酸洗浄を行なって不要な水酸化物を溶解除去した場合、塩酸洗浄をしなかった場合と比較して、特に乾燥気体中のアンモニアの除去性能が大きく向上したことが分かる。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を重合体側鎖の形態で有する有機高分子材料を用いて、特に乾燥気体中のアンモニア等の塩基性ガス状汚染物質を有効に吸着除去することのできる気体中汚染物質の除去材料を提供することができる。特に本発明によれば、金属酸化物を微粒子状の形態で担持させた後に、材料を酸溶液で処理することによって、不要な金属水酸化物を溶解除去して、金属水酸化物による汚染物質の吸着除去能を高く発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例及び比較例で用いた乾燥雰囲気におけるガス流通実験装置の概要を示す模式図である。

Claims (11)

  1. 有機高分子基材の主鎖上に、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を導入し、得られた有機高分子材料に、金属の塩を接触させることによって前記金属のイオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、担持された金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子の形態で析出させ、次に有機高分子材料を酸で処理することを特徴とする、気体中汚染物質の除去材料を製造する方法。
  2. グラフト重合法を用いて有機高分子基材上に重合体側鎖を導入する請求項1に記載の方法。
  3. 有機高分子基材が、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、あるいはそれらの加工品から選択される請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記金属が、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウムから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. カチオン交換基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基から選択され、キレート基が、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、エチレンジアミン基から選択され、親水基が、アミド基、水酸基から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 高分子の主鎖上にカチオン交換基又はキレート基又は親水基を有するグラフト重合体側鎖を有する有機高分子基材に、金属酸化物が微粒子の形態で担持されており、金属水酸化物が除去されてカチオン交換基又はキレート基の一部が再生型(H型)に変換されていることを特徴とする気体中汚染物質の除去材料。
  7. グラフト重合法により、高分子の主鎖上に、カチオン交換基又はキレート基又は親水基を有する重合体側鎖を導入してなる有機高分子基材に、金属の塩を接触させることによって前記金属のイオンをカチオン交換基又はキレート基又は親水基に担持させ、担持された金属イオンを酸化して金属酸化物微粒子の形態で析出させ、次に基材を酸で処理することによって金属水酸化物を溶解除去しカチオン交換基又はキレート基の一部を再生型(H型)に変換して、製造される気体中汚染物質の除去材料。
  8. 有機高分子基材が、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布、あるいはそれらの加工品から選択される請求項6又は7に記載の材料。
  9. 前記金属が、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウムから選ばれる少なくとも一種である請求項6〜8のいずれかに記載の材料。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載の材料を組み込んだ気体中汚染物質の除去装置。
  11. 請求項10に記載の装置に、湿度が5%以下の乾燥気体を通過させることを特徴とする乾燥気体中の塩基性ガスを除去する方法。
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