JP2017067511A - センサ素子、センサ、センサ素子の製造方法 - Google Patents

センサ素子、センサ、センサ素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温下における応答性を向上させつつ、高温下における耐久性の悪化を抑制することが可能なガスセンサ素子を提供する。
【解決手段】ガスセンサ素子は、軸線方向に延びる固体電解質体と、固体電解質体の一方の面に設けられた検知電極と、固体電解質体の他方の面に設けられた基準電極と、検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層と、を備える。触媒層は、貴金属が担持された金属酸化物粒子と、貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体とを含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、特定ガスの濃度を検出するためのセンサ素子に関する。
自動車やボイラー等から排出される排気ガス中の特定ガス(例えば、酸素、NOx等)の濃度を測定するガスセンサが知られている。ガスセンサには、固体電解質体と、固体電解質体の両面に設けられた一対の電極(検知電極および基準電極)と、を含むガスセンサ素子が用いられている。検知電極は特定ガスに晒され、基準電極は基準ガスに晒される。
従来から、ガスセンサ素子における特定ガスのガス濃度の検出精度を向上させるために、検知電極を覆う触媒層を設ける技術が知られている。触媒層は、排気ガス中の未燃焼ガスを燃焼させる。特許文献1には、このような触媒層として、白金族の金属で構成された触媒金属粒子が担持された多孔質層を採用する技術が記載されている。
特開2014−52327号公報 特開2012−245429号公報
自動車やボイラー等の連続運転に伴って、ガスセンサが置かれる環境は高温になる。高温下では、触媒金属粒子が凝集するいわゆるシンタリングが生じるため、多孔質層における触媒金属粒子の総表面積が小さくなる。触媒金属粒子の総表面積が小さくなることは、触媒層における未燃焼ガスの燃焼効果の低下につながる。未燃焼ガスの燃焼効果の低下は、ガスセンサ素子における特定ガスのガス濃度の検出精度の低下につながる。このように、特許文献1に記載の技術では、高温下におけるガス濃度の検出精度について、改善の余地があった。また、特許文献2に記載の技術では、ガスセンサ素子に触媒層を設けることについては考慮されていない。
このため、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下が少ないガスセンサ素子が望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、センサ素子が提供される。このセンサ素子は、軸線方向に延びる固体電解質体と;前記固体電解質体の一方の面に設けられた検知電極と;前記固体電解質体の他方の面に設けられた基準電極と;前記検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層と、を備え、特定ガスの濃度を検出するためのセンサ素子であって;前記触媒層は;貴金属が担持された金属酸化物粒子と;貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体と、を含むことを特徴とする。
この形態のセンサ素子によれば、触媒層は、貴金属が担持された金属酸化物粒子と、貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体と、を含む。顆粒体内部の貴金属粒子は移動範囲が制限されるため、顆粒体の内部では、貴金属が担持された金属酸化物粒子により構成されている部分と比較して、高温下において貴金属粒子が凝集する、いわゆるシンタリングが生じづらい。このため、本実施形態のセンサ素子は、シンタリングの発生に起因する、触媒としての貴金属の総表面積の低下と、総表面積の低下に起因する排気ガス浄化能力の低下(すなわち、未燃焼ガスの燃焼効果の低下)と、排気ガス浄化能力の低下に起因する特定ガスのガス濃度の検出精度の低下と、を抑制することができる。この結果、本実施形態のセンサ素子は、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下を少なくすることができる。
(2)上記形態のセンサ素子はさらに;前記センサ素子を保持する主体金具を備えるセンサとして構成されてもよい。
この形態のセンサによれば、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下を少なくしたセンサを提供することができる。
(3)本発明の一形態によれば、センサ素子の製造方法が提供される。このセンサ素子の製造方法は、軸線方向に延びる固体電解質体と;前記固体電解質体の一方の面に設けられた検知電極と;前記固体電解質体の他方の面に設けられた基準電極と;前記検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層と、を備え、特定ガスの濃度を検出するためのセンサ素子の製造方法であって;貴金属が担持された金属酸化物粒子を用いて顆粒体を形成する工程と;形成された前記顆粒体と、貴金属が担持された金属酸化物粒子と、を用いて前記触媒層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
この形態のセンサ素子の製造方法によれば、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下を少なくしたセンサ素子を製造することができる。
(4)上記形態のセンサ素子の製造方法では、さらに;形成された前記顆粒体のうちの一部を解砕して、前記触媒層を形成する工程において使用される前記貴金属が担持された金属酸化物粒子を作製する工程を備えていてもよい。
この形態のセンサ素子の製造方法によれば、製造方法の効率化を図ることができる。
(5)上記形態のセンサ素子の製造方法では、さらに;形成された前記顆粒体を加熱する工程を含み;前記触媒層を形成する工程は;形成された前記顆粒体と、前記貴金属が担持された金属酸化物粒子と、を含むスラリーを作製する工程と;前記スラリーを、前記検知電極の少なくとも一部を覆うように配置する工程と;配置された前記スラリーを乾燥させる工程と;前記加熱する工程により形成された貴金属酸化物を還元する工程と、を含んでいてもよい。
この形態のセンサ素子の製造方法によれば、顆粒体と、貴金属が担持された金属酸化物粒子とを含むスラリーを用いて簡便に、検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層を形成することができる。
本発明は、上記以外の種々の態様で実現できる。例えば、ガスセンサ素子、ガスセンサ素子の製造方法、ガスセンサ、ガスセンサの製造方法、これらの製造方法を実現するための製造装置、その製造装置の制御方法、その制御方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。また、本発明の一形態としてのガスセンサ素子は、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下が少ないガスセンサ素子を提供することを課題とする。しかし、この技術には他にも、ガスセンサ素子の性能(例えば、耐久性能、検出性能、低温活性等)の向上、ガスセンサ素子の製造コストの低減、製造工程数の低減、製造方法の簡略化、製造方法の共通化、省資源化等が望まれている。
本発明の一実施形態としてのセンサの全体構成を示す断面図である。 センサ素子の分解斜視図である。 触媒層の構成について説明する図である。 触媒層の構成について説明する図である。 比較例のセンサ素子における触媒層の構成について説明する図である。 比較例のセンサ素子における触媒層の構成について説明する図である。 センサ素子の製造方法の手順を表すフローチャートである。 変形例におけるセンサ素子の断面図である。
A.実施形態:
A−1.センサの構成:
図1は、本発明の一実施形態としてのセンサ1の全体構成を示す断面図である。センサ1は、図示しない内燃機関(エンジン)の排気管に固定されて、被測定ガスとしての排気ガス中に含まれる特定ガスの濃度を測定する。特定ガスとしては、例えば、酸素、NOx等が挙げられ、本実施形態のセンサ1は酸素ガス濃度を測定する。
図1は、軸線方向CDにおける断面を示している。軸線方向CDは、センサ1の軸線CLに平行な方向、すなわち、センサ1の長手方向である。以降では、図1の紙面に対して下側をセンサ1の先端側ASとも呼び、図1の紙面に対して上側をセンサ1の後端側BSとも呼ぶ。
センサ1は、軸線方向CDに延びる板状形状のセンサ素子7と、センサ素子7の後端側BSを挿通するセパレータ66と、センサ素子7の後端側BSに形成された電極端子部30と接触する金属端子部材10と、セパレータ66よりも先端側ASの位置でセンサ素子7の周囲を取り囲む主体金具38と、を備える。センサ素子7は「ガスセンサ素子」として機能する。電極端子部30と、金属端子部材10とは、それぞれ4つずつ設けられている。図1では、電極端子部30および金属端子部材は2つのみ図示する。
センサ素子7は、排気ガス中の酸素濃度を検出するための信号を出力する。センサ素子7は、主面を構成する第1板面21と、第2板面23と、を有する。第1板面21と第2板面23とは対向するように配置されている。ここで、軸線方向CDと直交し、第1板面21と第2板面23とが対向する方向を、対向方向FDと呼ぶ。センサ素子7は、先端側ASに位置して被測定ガスに向けられる検出部8と、後端側BSに位置して対応する金属端子部材10が接触する4つの電極端子部30と、を有する。4つの電極端子部30のうち、2つは第1板面21に形成され、残りの2つは第2板面23に形成されている。センサ素子7は、検出部8が主体金具38の先端より突出すると共に、電極端子部30が主体金具38の後端より突出した状態で、主体金具38の内部に固定される。センサ素子7の詳細は後述する。
セパレータ66は、アルミナ等の絶縁部材によって形成されている。セパレータ66は略筒状である。セパレータ66は、センサ素子7のうち、電極端子部30が位置する後端側部分の周囲を取り囲むように配置されている。セパレータ66は、センサ素子7の後端側部分を挿通するための挿通部65aと、挿通部65aの内壁面に形成された4つの溝部65b(図では2つのみ図示)と、を有する。4つの溝部65bは、軸線方向CDに延びて、セパレータ66の先端側端面68から後端側端面62までを貫通している。4つの溝部65bには、対応する金属端子部材10が挿通される。セパレータ66は、後端側BSに径方向外向きに突出する鍔部67を有する。
金属端子部材10は、対応する溝部65bに挿通された状態で、対向方向FDにおいて、センサ素子7とセパレータ66との間に位置するように配置されている。金属端子部材10は、センサ素子7とセパレータ66とによって挟持される。金属端子部材10は、センサ素子7と、酸素濃度を算出するための外部機器との間の電流経路を形成する。金属端子部材10は、センサ1の外部から内部に配設されるリード線46に対して電気的に接続されると共に、センサ素子7の電極端子部30に対して電気的に接続される。リード線46は、電極端子部30の個数に対応して4つ設けられ、外部機器に対して電気的に接続される(図では2つのみ図示)。
主体金具38は、略筒状の金属製の部材である。主体金具38は、軸線方向CDに貫通する貫通孔54と、貫通孔54の径方向内側に突出する棚部52と、を有する。主体金具38は、検出部8が貫通孔54よりも先端側ASに位置し、電極端子部30が貫通孔54よりも後端側BSに位置するように、貫通孔54内においてセンサ素子7を保持する。棚部52は、軸線方向CDに垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。主体金具38の外表面には、排気管にセンサ1を固定するためのネジ部39が形成されている。
貫通孔54の内部には、センサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ51と、滑石リング53,56と、セラミックスリーブ6とが、先端側ASから後端側BSにかけて、この順に積層されている。セラミックスリーブ6と主体金具38の後端部40との間には、加締パッキン57が配置されている。主体金具38の後端部40は、セラミックスリーブ6を、加締パッキン57を介して先端側ASに向かって押し付けるようにして加締められている。なお、セラミックホルダ51と主体金具38の棚部52との間には、さらに、滑石リング53やセラミックホルダ51を保持し、気密性を維持するための金属ホルダが配置されていてもよい。
センサ1は、さらに、後端側BSにおいて主体金具38の外周に固定された外筒44と、セパレータ66を保持するための保持部材69と、外筒44の後端側BSに配置されたグロメット50と、先端側ASにおいて主体金具38の外周に固定された外部プロテクタ42と、内部プロテクタ43と、を有する。
外筒44は、略筒状の金属製の部材である。外筒44の先端側ASの外周は、レーザ溶接等によって主体金具38に取り付けられている。外筒44は、後端側BSにおいて外径が縮径しており、縮径された開口内にはグロメット50が嵌め込まれている。グロメット50には、リード線46を挿通させるための4つのリード線挿通孔61(図では2つのみ図示)が形成されている。
保持部材69は、略筒状の金属製の部材である。保持部材69は、外筒44に固定され外筒44内に位置決めされている。保持部材69は、その後端側BSにおいてセパレータ66の鍔部67の当接を受けることで、セパレータ66を保持する。
外部プロテクタ42および内部プロテクタ43は、有底筒状であり、複数の孔部を有する金属製の部材である。外部プロテクタ42および内部プロテクタ43は、主体金具38の先端側AS外周に、レーザ溶接等によって取り付けられている。外部プロテクタ42および内部プロテクタ43は、検出部8を覆うことでセンサ素子7を保護する。被測定ガスは、外部プロテクタ42および内部プロテクタ43に設けられた複数の孔部を通過することによって、内部プロテクタ43内に流入する。
A−2.センサ素子の構成:
図2は、センサ素子7の分解斜視図である。図2に示した軸線方向CD、対向方向FD、先端側AS、後端側BSは、それぞれ図1と対応している。センサ素子7は、触媒層72と、絶縁層71と、検知電極73と、固体電解質体74と、基準電極75と、絶縁層76と、ヒータ77と、絶縁層78と、を備え、これらの構成要素は対向方向FDに沿って、この順で積層されている。
また、図2では、4つの電極端子部30(具体的には、電極端子部31〜34)についても図示している。各電極端子部30は、センサ素子7の電気的接続のために使用される。各電極端子部30は、例えば、白金、ロジウムなどを用いて形成されており、表面が略矩形形状である。電極端子部30は、例えば、白金等を主成分とするペーストをスクリーン印刷することにより形成することができる。電極端子部31,32は、後端側BSにおいて、絶縁層71の第1板面21に、対向方向FDに並んで形成されている。電極端子部33,34は、後端側BSにおいて、絶縁層78の第2板面23に、対向方向FDに並んで形成されている。
絶縁層71,76,78は、各層の間を電気的に絶縁する。また、絶縁層71は、検知電極73を保護する保護層としても機能する。絶縁層71,76,78は、アルミナを主成分として形成された、矩形形状のシート状部材である。絶縁層71の先端側ASには、対向方向FDに絶縁層71を貫通する矩形形状の孔が設けられ、この孔に多孔質保護層79が形成されている。多孔質保護層79は、検知電極73へと流れる排気ガス(気体)を拡散するために設けられた多孔質層である。また、絶縁層71の後端側BSには、対向方向FDに絶縁層71を貫通する2つのスルーホール714,716が形成されている。同様に、絶縁層78の後端側BSには、対向方向FDに絶縁層78を貫通する2つのスルーホール784,786が形成されている。
触媒層72は、検知電極73へと流れる排気ガスに含まれる有害物質(例えば、炭化水素、一酸化炭素等)を、貴金属の酸化・還元作用によって、二酸化炭素と水等へ変化させる。以降、触媒層72におけるこの作用を「未燃焼ガスを燃焼させる」とも呼ぶ。触媒層72は、貴金属と、金属酸化物とによって構成された、矩形形状のシート状部材である。触媒層72は、検知電極73のうち検知リード部732を除く全てを覆うように配置されている。なお、触媒層72は、検知リード部732を除く検知電極73の、少なくとも一部を覆うように配置されていればよい。「覆う」とは、他の部材を介さずに直接的に覆う態様のほか、他の部材を介して間接的に覆う態様も含む。
固体電解質体74は、検知電極73と、基準電極75と共に、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃淡電池として機能する。図1では、この酸素濃淡電池(固体電解質体74、検知電極73、基準電極75)を検出部8として説明した。固体電解質体74は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主成分とし、安定化剤としてイットリアまたはカルシアを添加することで形成された、矩形形状のシート状部材である。固体電解質体74の後端側BSには、対向方向FDに固体電解質体74を貫通するスルーホール746が形成されている。
検知電極73は、例えば、白金、ロジウムなどを用いて形成されている。検知電極73は、固体電解質体74のうち、対向方向FDの一方の面に配置されている。検知電極73は、後端側BSへ向かって延伸する検知リード部732を備えている。検知電極73は、検知リード部732から、絶縁層71のスルーホール714を介して、電極端子部31に電気的に接続されている。
基準電極75は、例えば、白金、ロジウムなどを用いて形成されている。基準電極75は、固体電解質体74のうち、対向方向FDの他方の面に配置されている。基準電極75は、後端側BSへ向かって延伸する検知リード部752を備えている。基準電極75は、検知リード部752から、固体電解質体74のスルーホール746と、絶縁層71のスルーホール716とを介して、電極端子部32に電気的に接続されている。
ヒータ77は、センサ素子7を所定の活性温度に昇温し、固体電解質体74における酸素イオンの伝導性を高め、センサ1の動作を安定させる。ヒータ77は、タングステンなどの伝導体によって形成された発熱抵抗体であり、電力の供給を受けて発熱する。ヒータ77は、絶縁層76と絶縁層78によって挟持されている。ヒータ77の先端側ASには、発熱部772を備える。発熱部772は、蛇行状に配置された発熱線を含み、通電により発熱する。ヒータ77の後端側BSには、電極端子774,776を備える。電極端子774,776は、絶縁層78のスルーホール784,786を介して、それぞれ、電極端子部33,34に電気的に接続されている。
A−3.触媒層の構成:
図3および図4は、触媒層72の構成について説明する図である。本実施形態の触媒層72は、主として、以下の要素a、bにより構成されている。
(a)貴金属が担持された金属酸化物粒子PA
(b)貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体PB
要素a、b共に、貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等を採用することができる。要素a、b共に、金属酸化物としては、例えば、ジルコニア、チタニア、アルミナ等を主成分とする金属酸化物を採用することができる。金属酸化物としては、上記以外にも、希土類元素やアルカリ土類金属元素を含有していてもよい。本実施形態の触媒層72では、要素a、b共に、貴金属として白金を、金属酸化物としてアルミナの酸化物を、それぞれ採用する。要素a、b共に、金属酸化物粒子に対する貴金属の担持量は、任意に定めることができ、例えば、0.1質量%以上、1.0質量%以下の範囲とすることができる。
図3は、貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体PB(以降、単に「顆粒体PB」とも呼ぶ。)を示す。図示のように、顆粒体PBは、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAによって形成され、略球状を有している。顆粒体PBの球径は任意に定めることができ、例えば、20μm〜30μmとすることができる。なお、球が楕円である場合、球径は長手方向における距離を採用する。また、図の例では、顆粒体PBの表面には、顆粒体PBの表面の金属酸化物粒子に担持されている貴金属PPが確認できる。
図4は、軸線方向CDにおける触媒層72の断面を示す。触媒層72には、図3で説明した顆粒体PB(図4において破線で囲んだ)が配置され、各顆粒体PB間の隙間は、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAによって埋められている。貴金属が担持された金属酸化物粒子PAの粒径は任意に定めることができ、例えば、0.01μm〜1μmとすることができる。
上記実施形態のセンサ素子7によれば、触媒層72において、顆粒体PB(要素b)の内部は、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(要素a)の集合により構成されている部分と比較して、高温下において貴金属粒子が凝集する、いわゆるシンタリングが生じづらい。このため、本実施形態のセンサ素子7は、シンタリングの発生に起因する、触媒としての貴金属の総表面積の低下と、総表面積の低下に起因する排気ガス浄化能力の低下(すなわち、未燃焼ガスの燃焼効果の低下)と、排気ガス浄化能力の低下に起因する特定ガスのガス濃度の検出精度の低下と、を抑制することができる。この結果、本実施形態のセンサ素子7は、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下を少なくすることができる。
また、触媒層72には、貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体PB(要素b)が含まれている。一般的に顆粒体の内部には多数の空間が含まれているため、顆粒体PBの内部において、各粒子PA(すなわち、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA、要素a)間には、多数の空間が含まれている。このため、図4に矢印で示すように、多孔質保護層79を通過して検知電極73へと流れる排気ガスは、顆粒体PBの内部を通過することができる。排気ガスが顆粒体PBの内部を通過することで、未燃焼ガス(排気ガス中の有害物質)は、顆粒体PB内部の貴金属にも接触する。すなわち、本実施形態のセンサ素子7は、触媒層72に顆粒体PBを含むことにより、未燃焼ガスが触媒として機能する貴金属に接触する確率を向上させることができる。このため、本実施形態のセンサ素子7では、未燃焼ガスを燃焼させることによって排気ガスを浄化する浄化能力を向上させることができる。
また、触媒層72には、顆粒体PBに加えて、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(要素a)が含まれている。貴金属が担持された金属酸化物粒子PAは、顆粒体PBよりも粒径が小さいため、触媒層72において、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAは、顆粒体PBと顆粒体PBとの間の隙間を埋めるようにして配置される。このように、顆粒体PB間の隙間にも、触媒としての貴金属(すなわち、粒子PAに担持されている貴金属)が配置されるため、顆粒体PB間の隙間を未燃焼ガスが通過した場合であっても、未燃焼ガスを燃焼させることができる。このため、本実施形態のセンサ素子7は、未燃焼ガスを燃焼させることによって排気ガスを浄化する浄化能力を、より向上させることができる。
また、顆粒体PB(要素b)は、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(要素a)により形成されているため、顆粒体PB内部においても、貴金属が高分散に配置されている。貴金属が高分散に配置されているということは、顆粒体PB内部における、触媒としての貴金属の総表面積が大きいことを意味する。このため、本実施形態のセンサ素子7は、未燃焼ガスを燃焼させることによって排気ガスを浄化する浄化能力を向上させることができる。換言すれば、所定の排気ガス浄化能力を有するセンサ素子7を製造する際に必要な貴金属の量を低減することができる。
A−4.比較例:
図5および図6は、比較例のセンサ素子における触媒層72xの構成について説明する図である。比較例のセンサ素子では、上記実施形態のセンサ素子7と比べて、以下の2点が相違する。
・触媒層72に代えて触媒層72xを備える。触媒層72xは、顆粒体を含まず、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAx(以降、単に「粒子PAx」とも呼ぶ。)のみにより構成されている。
・粒子PAxの粒径が、センサ素子7の貴金属が担持された金属酸化物粒子PAの粒径よりも大きい。粒子PAxの粒径は任意に定めることができ、例えば、1μm〜15μmとすることができる。
図5は、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAxを示す。図示のように、粒子PAxの表面には、金属酸化物粒子に担持されている貴金属PPが確認できる。図6は、軸線方向CDにおける触媒層72xの断面を示す。触媒層72xには、図5で説明した粒子PAxが配置され、1つの粒子PAxと他の粒子PAxとの間の隙間は、空間となっている。
このように、比較例のセンサ素子では、貴金属PPが粒子PAxの表面上にのみ存在しているため、同じ貴金属量を担持した場合に貴金属密度が高くなり、上記実施形態のセンサ素子7と比較して、高温下において粒子PAxに担持されている貴金属PPの粒子が凝集する、いわゆるシンタリングが生じやすい。従って、比較例のセンサ素子では、高温下におけるシンタリングの発生に起因して、触媒としての貴金属PPの総表面積が低下しやすい。また、総表面積の低下に起因して排気ガス浄化能力が低下し、特定ガスのガス濃度の検出精度が低下しやすい。
また、比較例の触媒層72xは、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAxのみにより構成されている。多孔質保護層79を通過して検知電極73へと流れる排気ガスは、粒子PAxの内部(具体的には、金属酸化物粒子の内部)を通過することができない。このため、図6に示すように、排気ガスは粒子PAxを避けて、粒子PAx間の空間を通過する。すなわち、比較例の触媒層72xでは、触媒層72xの内部において排気ガスが通過可能な経路が、粒子PAx間の空間に限られている。従って、比較例のセンサ素子では、上記実施形態のセンサ素子7と比較して、未燃焼ガスが触媒として機能する貴金属PPに接触する確率が低く、未燃焼ガスを燃焼させることによって排気ガスを浄化する浄化能力が低い。
A−5.センサ素子の製造方法:
図7は、センサ素子7の製造方法の手順を表すフローチャートである。工程P10において、シート状にされた固体電解質体74を準備し、固体電解質体74の一方の面に検知電極73を、他方の面に基準電極75を、それぞれ形成する(図2)。電極73,75の形成には、例えばスクリーン印刷を採用できる。
工程P12において、絶縁層71,76,78と、ヒータ77と、多孔質保護層79とを形成する。具体的には、絶縁層71に矩形形状の孔を形成し、この孔に多孔質保護層79を埋め込む。また、検知電極73および基準電極75が形成された固体電解質体74に対して、図2において示した順に、絶縁層71,76,78と、ヒータ77と、を積層する。
工程P20において、金属酸化物粒子と、貴金属錯体と、を配合したスラリーを作製する。本実施形態では、アルミナの一次粒子と、白金の錯体と、を溶媒(例えば、水)に配合してスラリーを作製する。アルミナの一次粒子は、容器内においてアルミナと水とを混合し、玉石を入れ、容器を回転させることでアルミナを砕いて得る。工程P20によって、貴金属が担持された金属酸化物粒子を得ることができる。
工程P22において、工程P20で作製したスラリーをスプレードライすることで、顆粒体PB(図3)を形成する。なお、工程P20と工程P22とを総称して「顆粒体を形成する工程」とも呼ぶ。
工程P30において、工程P22で形成した顆粒体を熱処理する。本実施形態では、加熱炉を用いて熱処理を実施する。加熱炉の炉内雰囲気温度は任意に定めることができ、例えば300℃とすることができる。本工程では、形成された顆粒体を加熱するため、顆粒体内に錯体として存在する貴金属を、後の工程(触媒層を形成する工程)で作製されるスラリーの溶媒内に溶出しない安定した物質(すなわち、貴金属酸化物)にすることができる。
工程P40において、工程P30で形成した顆粒体の一部を解砕する。本実施形態では、容器内において工程P30で形成した顆粒体の一部と水とを混合し、玉石をいれ、容器を回転させることで顆粒体を解砕する。本工程によって、触媒層72の形成に使用する貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(図4)を得ることができる。
工程P50において、工程P30で熱処理した顆粒体PB(図3)と、工程P40で解砕された顆粒体(すなわち、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA、図4)と、のスラリーを作製する。溶媒としては、例えば水を用いることができる。
工程P52において、工程P50で作製したスラリーを、多孔質保護層79上に塗布する。本実施形態では、スラリーは、検知電極73のうち検知リード部732を除く全てを覆うように塗布する(図2)。なお、スラリーは、検知リード部732を除く検知電極73の、少なくとも一部を覆うように塗布されればよい。本工程によれば、顆粒体PB(要素b)と、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(要素a)とを含むスラリーを用いて簡便に、触媒層72を形成することができる。
工程P54において、工程P52で塗布されたスラリーを乾燥処理する。本実施形態では、塗布されたスラリーに熱風を当てることによって乾燥させる。ここで、図4で説明した通り、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAは、顆粒体PBよりも粒径が小さい。このため、スラリーが塗布された状態において、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAは、顆粒体PBの隙間を埋めるような配置となっている。従って、本工程でスラリーを乾燥させた場合であっても、乾燥時の水分の蒸発に伴うクラック(ひび)が発生しづらい。
工程P56において、工程P54で形成された触媒層72を熱処理する。本実施形態では、触媒層72が形成された固体電解質体74を、加熱炉を用いて加熱することで、熱処理を実施する。加熱炉の炉内雰囲気温度は任意に定めることができ、例えば1000℃とすることができる。本工程によって、触媒層72(図4)に含まれる顆粒体PBの表面の貴金属PP、および、触媒層72に含まれる粒子PAの貴金属PPのシンタリングを促す。本工程によって、予め貴金属PPのシンタリングを発生させておくことで、製品として出荷された後のセンサ素子7の劣化耐久性を向上させることができる。
工程P58において、工程P30で貴金属酸化物となった貴金属を還元する。本工程によって、工程P30で形成された貴金属酸化物を、未燃焼ガスを燃焼させる際の触媒として機能することが可能な貴金属へ還元することができる。本工程によって、最終的な触媒層72(図4)を形成する。なお、工程P50〜P58を総称して「触媒層を形成する工程」とも呼ぶ。
工程P58が終了した後、各部を電気的に接続し、上記実施形態のセンサ素子7を形成することができる。
以上のように、上記実施形態のセンサ素子7の製造方法によれば、排気ガスを浄化する浄化能力を向上させ、高温下におけるガス濃度の検出精度の低下を少なくし、製造の際に必要な貴金属の量を低減し、製造時や使用時におけるクラックの発生を抑制したセンサ素子7を製造することができる。また、上記実施形態のセンサ素子7の製造方法(特に工程P40)によれば、触媒層72を形成するために使用する材料(貴金属が担持された金属酸化物粒子PA)を、同じく触媒層72を形成するために使用する他の材料(顆粒体PB)の一部を利用して作製することができる。この結果、本実施形態のセンサ素子7の製造方法によれば、製造方法の効率化を図ることができる。
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
上記実施形態では、センサの構成の一例を示した。しかし、センサの構成は種々の変更が可能であり、例えば、構成要素の追加、削除、変換等を実施できる。
図8は、変形例におけるセンサ素子7aの断面図である。図2に示したセンサ素子7との主たる違いは、センサ素子7aの形状である。図2に示したセンサ素子7は、シート状の各構成要素を積層することにより構成されていたが、変形例のセンサ素子7aは、各構成要素が有底筒状に重ねられることにより構成されている。図8の「a」を除く各符号は、図2の各符号に対応している。変形例のセンサ素子7aの触媒層72aの構成(貴金属が担持された金属酸化物粒子PAおよび顆粒体PBを含む点)は、図2に示したセンサ素子7の触媒層72と同様である。変形例のセンサ素子7aを製造する場合、図7の説明において「スクリーン印刷」および「塗布」と記載した部分を「ディップ」と読みかえればよい。変形例のセンサ素子7aにおいても、上記実施形態のセンサ素子7と同様の効果を得ることができる。なお、変形例のセンサ素子7aは、触媒層72aと検知電極73aとの間に、多孔質層80が形成されている。多孔質層80は、検知電極73aに流入する排気ガスを制限する。多孔質層80は「ガス制限層」とも呼ばれる。多孔質層80は、図7の工程P12において形成できる。
・変形例2:
上記実施形態では、センサ素子の構成の一例を示した。しかし、センサ素子の構成は種々の変更が可能であり、例えば、構成要素の追加、削除、変換等を実施できる。
例えば、触媒層は、貴金属が担持された金属酸化物粒子PA(要素a)と、顆粒体PB(要素b)と、以外のものを含んでいてもよい。
例えば、触媒層は、検知電極が被測定ガスと接触する側(以降「外側」とも呼ぶ。)において、検知電極の一部を覆っていれば足り、図2のように触媒層が検知電極を間接的に覆っていてもよいし、触媒層が検知電極を直接的に覆っていてもよい。「間接的に覆う」とは、間に他の構成要素が介在していることを意味する。
例えば、絶縁層の一部や、ヒータは省略してもよい。例えば、図2のようにシート状の各構成要素を積層することにより構成されるセンサ素子においても、多孔質層(図8)を備えていてもよい。
・変形例3:
上記実施形態では、センサ素子の製造方法の一例を示した。しかし、センサ素子の製造方法は種々の変更が可能であり、例えば、工程の追加、削除、工程において実施される内容の変更等が可能である。
例えば、貴金属が担持された金属酸化物粒子PAは、顆粒体PBを解砕する以外の方法により準備されてもよい(工程P40)。例えば、顆粒体PBは、スラリーをスプレードライする以外の方法によって形成されてもよい(工程P22)。例えば、工程P30の熱処理とP58の還元処理とは省略してもよい。例えば、工程P56の熱処理は省略してもよい。
・変形例4:
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
1…センサ
6…セラミックスリーブ
7、7a…センサ素子
8…検出部
10…金属端子部材
21…第1板面
23…第2板面
30…電極端子部
31…電極端子部
32…電極端子部
33…電極端子部
38…主体金具
39…ネジ部
40…後端部
42…外部プロテクタ
43…内部プロテクタ
44…外筒
46…リード線
50…グロメット
51…セラミックホルダ
52…棚部
53…滑石リング
54…貫通孔
57…加締パッキン
61…リード線挿通孔
62…後端側端面
65a…挿通部
65b…溝部
66…セパレータ
67…鍔部
68…先端側端面
69…保持部材
71…絶縁層
72…触媒層
72、72a、72x…触媒層
73…検知電極
74…固体電解質体
75…基準電極
76…絶縁層
77…ヒータ
78…絶縁層
79…多孔質保護層
80…多孔質層
714…スルーホール
716…スルーホール
732…検知リード部
746…スルーホール
752…検知リード部
772…発熱部
774…電極端子
784…スルーホール
AS…先端側
BS…後端側
CD…軸線方向
CL…軸線
FD…対向方向

Claims (5)

  1. 軸線方向に延びる固体電解質体と、
    前記固体電解質体の一方の面に設けられた検知電極と、
    前記固体電解質体の他方の面に設けられた基準電極と、
    前記検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層と、
    を備え、特定ガスの濃度を検出するためのセンサ素子であって、
    前記触媒層は、
    貴金属が担持された金属酸化物粒子と、
    貴金属が担持された金属酸化物粒子により形成された顆粒体と、
    を含むことを特徴とする、センサ素子。
  2. 請求項1に記載のセンサ素子と、
    前記センサ素子を保持する主体金具と、を備える、センサ。
  3. 軸線方向に延びる固体電解質体と、
    前記固体電解質体の一方の面に設けられた検知電極と、
    前記固体電解質体の他方の面に設けられた基準電極と、
    前記検知電極の少なくとも一部を覆う触媒層と、
    を備え、特定ガスの濃度を検出するためのセンサ素子の製造方法であって、
    貴金属が担持された金属酸化物粒子を用いて顆粒体を形成する工程と、
    形成された前記顆粒体と、貴金属が担持された金属酸化物粒子と、を用いて前記触媒層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
  4. 請求項3に記載のセンサ素子の製造方法であって、さらに、
    形成された前記顆粒体のうちの一部を解砕して、前記触媒層を形成する工程において使用される前記貴金属が担持された金属酸化物粒子を作製する工程を備える、センサ素子の製造方法。
  5. 請求項3または請求項4に記載のセンサ素子の製造方法であって、さらに、
    形成された前記顆粒体を加熱する工程を含み、
    前記触媒層を形成する工程は、
    形成された前記顆粒体と、前記貴金属が担持された金属酸化物粒子と、を含むスラリーを作製する工程と、
    前記スラリーを、前記検知電極の少なくとも一部を覆うように配置する工程と、
    配置された前記スラリーを乾燥させる工程と、
    前記加熱する工程により形成された貴金属酸化物を還元する工程と、
    を含むことを特徴とする、センサ素子の製造方法。
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