以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、まず、ラップドVベルトの概略及びラップドVベルトの製造工程の概略について説明し、次いで、ラップドVベルトの製造に関して適用される本発明の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成装置及び未加硫ゴムベルト形成方法について説明する。
[ラップドVベルトの概略]
図1は、ラップドVベルト100の一部を示す斜視図であって、一部を断面で示す図である。ラップドVベルト100は、コンプレッサーなどの一般産業用機械、或いは、田植え機などの農業機械、等において、動力伝達用の無端状の伝動ベルトとして用いられる。そして、ラップドVベルト100は、V字状の断面を有する環状の伝動ベルトとして構成されている。
尚、図1においては、環状に延びるラップドVベルト100の周方向に対して垂直な断面が図示されている。また、図1においては、ラップドVベルト100の周方向が、両端矢印Aで示されており、周方向に対して直交するベルト幅方向が、両端矢印Bで示されている。
ラップドVベルト100は、外被布101、圧縮ゴム層102、伸張ゴム層103、心線104を備えて構成されている。
環状に設けられたラップドVベルト100のベルト本体は、積層構造を有しており、ベルト内周側からベルト外周側に向かって、圧縮ゴム層102、心線104、伸張ゴム層103が、順次積層されている。よって、ラップドVベルト100においては、圧縮ゴム層102と伸張ゴム層103との間において、心線104が埋設されている。心線104は、ラップドVベルト100の周方向に沿って延びるように配置されている。そして、心線104は、ラップドVベルト100の周方向に垂直な断面において、ベルト幅方向に沿って所定の間隔で配列されている。
また、ラップVベルト100は、環状に設けられた無端状のベルト本体の周囲全体が周方向の全長に亘って外被布101で被覆されて構成されている。そして、ラップドVベルト100は、その周方向に対して垂直な断面の形状が、V字状の断面形状である。より具体的には、ラップドVベルト100の断面形状は、ベルト外周側からベルト内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状に構成されている。
[ラップドVベルトの製造工程の概略]
図2は、ラップドVベルト100の製造工程を示すチャート図である。図2に示すように、ラップドVベルト100の製造工程は、未加硫スリーブ形成工程S101、未加硫ゴムベルト形成工程S102、スカイブ工程S103、カバー巻き工程S104、加硫工程S105を備えて構成されている。
図3は、未加硫ゴム層と心線とを有する筒状の未加硫スリーブ105を示す斜視図である。未加硫スリーブ形成工程S101は、未加硫スリーブ105を形成する工程として構成されている。
未加硫スリーブ形成工程S101においては、まず、未加硫ゴム(即ち、加硫が行われていない状態のゴム)のシートが、圧延によって形成される。そして、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが、所定の長さに切断され、円筒状或いは円柱状の回転体に対して、巻き付けられる。回転体の外周に巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。筒状に成形された未加硫ゴムのシートが、ラップドVベルト100における圧縮ゴム層102の素材となる。
そして、回転体の外周に筒状の未加硫ゴムの成形体が形成されると、次いで、前述の心線104が、周方向に沿って巻き付けられる。心線104は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向に沿って所定のピッチでずらされながら、周方向に沿ってスパイラル状に巻き付けられる。尚、筒状の未加硫ゴムの成形体の幅方向は、上記の回転体の軸方向と平行な方向として構成される。心線104は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向のほぼ全長に亘って、巻き付けられる。
筒状の未加硫ゴムの成形体の外周への心線104の巻き付けが終了すると、次いで、心線104の上から、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが巻き付けられる。心線104の上から巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。心線104の外周側に巻き付けられた筒状の未加硫ゴムのシートが、ラップドVベルト100における伸張ゴム層103の素材となる。
上述した未加硫スリーブ形成工程S101によって、未加硫スリーブ105が形成される。尚、図3に示す未加硫スリーブ105は、回転体から取り外された状態が示されている。
図4は、未加硫ゴムベルト106を示す斜視図である。未加硫ゴムベルト形成工程S102は、未加硫スリーブ105を周方向に切断して環状の未加硫ゴムベルト106を形成する工程として構成されている。未加硫ゴムベルト形成工程S102は、本発明の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法として構成され、本発明の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成装置を用いることで実施される。
図5は、未加硫ゴムベルト106の一部を示す斜視図であって、一部を断面で示す図である。図5においては、環状に延びる未加硫ゴムベルト106の周方向に対して垂直な断面が図示されている。また、図5においては、未加硫ゴムベルト106の周方向が、両端矢印Aで示されており、周方向に対して直交するベルト幅方向が、両端矢印Bで示されている。
図5に示すように、未加硫ゴムベルト106は、内周側未加硫ゴム層107、心線104、外周側未加硫ゴム層108を備えて構成されている。そして、未加硫ゴムベルト106においては、内周側未加硫ゴム層107と外周側未加硫ゴム層108との間において、心線104が配置されている。
内周側未加硫ゴム層107は、ラップドVベルト100における圧縮ゴム層102の素材となる。外周側未加硫ゴム層108は、ラップドVベルト100における伸張ゴム層103の素材となる。内周側未加硫ゴム層107及び外周側未加硫ゴム層108を構成するゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴム、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示でき、これらのゴム成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)、クロロプレンゴムである。特に好ましいゴム成分は、クロロプレンゴムである。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプであってもよく、非硫黄変性タイプであってもよい。尚、内周側未加硫ゴム層107のゴム成分、及び、外周側未加硫ゴム層108のゴム成分は、同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。
心線104としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線104を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などが使用できる。心線104の表面には、慣用の接着処理(又は表面処理)が施されていてもよい。
スカイブ工程S103は、未加硫ゴムベルト106の両側面における内周側の両角部分を周方向に亘って削るように切削することでスカイブ(skive)し、未加硫ゴムベルト106の断面形状を変更する工程として構成されている。スカイブ工程S103においては、未加硫ゴムベルト106の内周側未加硫ゴムの内周側の両角部分が周方向に亘って削れるように切削される。これにより、スカイブ工程S103の処理が施される前の状態で矩形状の断面だった未加硫ゴムベルト106の断面の形状は、スカイブ工程S103の処理が施された後の状態においては、矩形状の部分と台形状の部分とが組み合わされた断面の形状となる。
カバー巻き工程S104は、スカイブ工程S103の処理が終了した未加硫ゴムベルト106を外被布101で被覆する工程として構成されている。カバー巻き工程S104においては、環状の未加硫ゴムベルト106の周囲全体が周方向の全長に亘って外被布101で被覆される。これにより、未加硫ゴムベルト106が外被布101で被覆されて構成された未加硫ベルト成形体が形成される。
加硫工程S105は、未加硫ベルト成形体における可塑性の未加硫ゴムを加熱して弾性ゴムに変化させる工程として構成されている。加硫工程S105においては、例えば、逆台形状の断面の溝が外周に設けられた円筒状のリングモールドが用いられる。リングモールドに設けられた複数の溝に対して未加硫ベルト成形体がそれぞれ嵌め込まれる。そして、複数の未加硫ベルト成形体が嵌め込まれたリングモールドの周囲に、円筒状のゴムスリーブが更に嵌め込まれる。
加硫工程S105においては、上記のようにリングモールド及び未加硫ベルト成形体の外周面に円筒状のゴムスリーブが嵌め込まれた状態で、それらが加硫缶に収納され、所定の温度等の条件で加硫が行われる。加硫が終了してリングモールド等が解体され、加硫された成形体がラップドVベルト100として取り出される。このように、加硫工程S105まで終了することで、ラップドVベルト100が製造されることになる。
[未加硫ゴムベルト形成装置の概略]
図6は、本発明の一実施の形態に係る未加硫ゴムベルト形成装置1を示す正面図である。図7は、未加硫ゴムベルト形成装置1の平面図である。図8は、未加硫ゴムベルト形成装置1の側面図である。未加硫ゴムベルト形成装置1が作動することで、本発明の一実施の形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法が実施され、前述のラップドVベルト100の製造工程における未加硫ゴムベルト形成工程S102が実施されることになる。
図6乃至図8に示す未加硫ゴムベルト形成装置1は、未加硫ゴム層と心線104とを有する筒状の未加硫スリーブ105を周方向に切断して環状の未加硫ゴムベルト106を形成するための装置として構成されている。そして、未加硫ゴムベルト形成装置1は、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13、制御装置14、等を備えて構成されている。
また、本実施形態においては、ベース15が更に備えられている未加硫ゴムベルト形成装置1が、例示されている。尚、図7においては、ベース15の図示が省略されている。回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13、制御装置14は、ベース15上に設置されている。本実施形態では、ベース15が備えられた未加硫ゴムベルト形成装置1が例示されているが、ベース15が備えられていない形態の未加硫ゴムベルト形成装置1が実施されてもよい。
[回転機構]
図6乃至図8に示すように、回転機構11は、主軸16、支持部17、回転ドラム18、外周スリーブ19、モータ20、ベルト駆動機構21、等を備えて構成されている。
主軸16は、金属製の円筒状又は円柱状の軸として構成され、支持部17に対して回転自在に支持されている。また、主軸16は、モータ20からの駆動トルクが入力されることで回転するように構成されている。支持部17は、ベース15上に設置され、主軸16を回転自在に支持するとともにモータ20を収納する筐体として構成されている。
回転ドラム18は、円筒状の部分を有する金属製の筒状体として設けられている。そして、回転ドラム18は、主軸16とともに回転するように、主軸16に対して取り付けられている。例えば、回転ドラム18の円筒軸方向における両端部のそれぞれに蓋部が設けられ、これらの蓋部が主軸16に対して固定される。また、回転ドラム18は、主軸16の回転中心軸線と回転ドラム18の回転中心軸線とが一致するように、主軸16に対して取り付けられている。
外周スリーブ19は、ゴム製の円筒形状のスリーブとして設けられ、回転ドラム18の外周に装着される。外周スリーブ19の内周の直径は、回転ドラム18の外周の直径にほぼ対応する寸法に設定されている。回転ドラム18が回転する際、回転ドラム18に装着された外周スリーブ19は、回転ドラム18とともに同一の回転速度で回転する。尚、外周スリーブ19は、後述する切断機構12によって未加硫スリーブ105が切断される際に回転ドラム18の表面を切断機構12から保護するために設けられている。
回転ドラム18の外周に外周スリーブ19が装着されて構成された回転体22に対して、未加硫スリーブ105が配置される。即ち、未加硫スリーブ105は、回転ドラム18の外周に装着された外周スリーブ19の外周に対して配置される。
未加硫スリーブ105は、例えば、回転体22に対して未加硫のゴムシート及び心線104が巻き付けられることで形成され、これにより、未加硫スリーブ105が回転体22に配置される。即ち、回転ドラム18及び外周スリーブ19を備えて構成された回転体22を用いて前述の未加硫スリーブ形成工程S101が実施されて未加硫スリーブ105が形成され、未加硫スリーブ105が回転体22に配置された状態となる。
上記のように、回転機構11は、主軸16とともに回転するように構成された回転体22を有し、回転体22の外周に未加硫スリーブ105が配置されるように構成されている。
尚、本実施形態では、未加硫スリーブ105が配置される回転体として、回転ドラム18及び外周スリーブ19を備えて構成された回転体22を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、回転ドラム18が、未加硫スリーブ105が配置される回転体として構成され、未加硫スリーブ105が回転ドラム18の外周に直接に配置される形態が実施されてもよい。また、本実施形態では、回転ドラム18及び外周スリーブ19を備えて構成された回転体22を用いて未加硫スリーブ105が形成され、未加硫スリーブ105が回転体22に対してそのまま配置される形態を例示したが、この通りでなくてもよい。回転機構11の回転体22とは異なる別の回転体を用いて未加硫スリーブ105が形成され、その別の回転体から取り外された未加硫スリーブ105が、回転機構11の回転体22に対して装着されて配置される形態が実施されてもよい。
モータ20は、主軸16を回転駆動するための駆動トルクを発生させる電動モータとして構成されている。本実施形態では、モータ20は、支持部17に収納されている。モータ20は、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回転速度で回転する。モータ20は、出力軸20aの軸方向が主軸16の軸方向と平行となるように、支持部17に設置されている。
ベルト駆動機構21は、モータ20からの駆動トルクを主軸16に伝達する機構として設けられている。ベルト駆動機構21は、駆動プーリ21a、従動プーリ21b、駆動ベルト21cを備えて構成されている。
駆動プーリ21aは、モータ20の出力軸20aに固定され、出力軸20aとともに回転するように構成されている。従動プーリ21bは、主軸16に対して、支持部17を介して回転ドラム18側とは反対側の端部において、固定されている。駆動ベルト21cは、無端状のベルトとして設けられている。そして、駆動ベルト21cは、駆動プーリ21a及び従動プーリ21bに対して巻き掛けられ、駆動ベルト21aの駆動トルクを従動プーリ21bに伝達するベルトとして構成されている。
後述する制御装置14からの制御指令に基づいてモータ20の運転が行われると、出力軸20aとともに駆動プーリ21aが回転する。駆動プーリ21aが回転することで、駆動プーリ21a及び従動プーリ21bに巻き掛けられた駆動ベルト21cの周回動作が行われる。駆動ベルト21cの周回動作が行われると、従動プーリ21bが回転し、従動プーリ21bとともに主軸16が回転することになる。そして、主軸16とともに、回転ドラム18及び外周スリーブ19が回転する。尚、回転ドラム18及び外周スリーブ19が回転する方向については、図6において、矢印C1で示されている。
[切断機構]
図9は、図6に示す未加硫ゴムベルト形成装置1の一部を拡大して示す図である。図10は、図7に示す未加硫ゴムベルト形成装置1の一部を拡大して示す図である。図9及び図10においては、切断機構12が拡大して示されている。図6乃至図10に示す切断機構12は、幅方向移動機構23、進退移動機構24、カッター部25、基台部26、等を備えて構成されている。
基台部26は、ベース15上に設置され、幅方向移動機構23、進退移動機構24、及びカッター部25を支持する台座部として設けられている。幅方向移動機構23、進退移動機構24、及びカッター部25は、基台部26の上面に設置されている。
幅方向移動機構23は、進退移動機構24及びカッター部25を、基台部26に対して、回転体22の外周に配置された未加硫スリーブ105の幅方向と平行な方向に沿って移動させる機構として、構成されている。尚、未加硫スリーブ105の幅方向は、未加硫スリーブ105が筒状に延びる方向であり、図7及び図8において、両端矢印Bで示されている。また、未加硫スリーブ105が回転体22の外周に配置された状態においては、未加硫スリーブ105の幅方向は、主軸16の軸方向と平行な方向となる。
幅方向移動機構23は、一対のレール(27a、27b)、ボールネジ機構28、移動プレート29、等を備えて構成されている。一対のレール(27a、27b)は、移動プレート29の移動方向をガイドするレールとして設けられている。一対のレール(27a、27b)は、基台部26の上面に固定されて設置されている。そして、一対のレール(27a、27b)は、主軸16の軸方向、即ち、回転体22に配置された未加硫スリーブ105の幅方向と平行に延びるように設置されている。
ボールネジ機構28は、ネジ軸28a、ボールネジモータ28b、軸受28c、ナット部28d、図示が省略された複数のボール、等を備えて構成されている。
ネジ軸28aは、一方の端部がボールネジモータ28bによって支持され、他方の端部が軸受28cによって回転自在に支持されている。そして、基台部26上において、ネジ軸28aは、その軸方向が一対のレール(27a、27b)と平行に延びるように、配置されている。ボールネジモータ28bは、ネジ軸28aをその軸心を中心として回転駆動する電動モータとして構成されている。そして、ボールネジモータ28bは、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回数分だけ回転するように、構成されている。
ナット部28dは、ネジ軸28aが貫通しており、ネジ軸28aが回転することでネジ軸28aの軸方向に沿ってネジ軸28aに対して相対移動するブロック状の要素として設けられている。ナット部28dの内部においては、ネジ軸28aのネジ溝に対向するネジ溝が形成されている。そして、ナット部28dのネジ溝とネジ軸28aのネジ溝との間には、両方の溝に対して転動自在に嵌まり込む複数のボールが配置されている。ネジ軸28aが軸心回りに回転することで、ナット部28d及びネジ軸28aの間で複数のボールが循環し、ナット部28dが、ネジ軸28aに対して軸方向に相対移動する。
また、ナット部28dは、その上面側において、移動プレート29の下面に対して固定されている。また、ナット部28dは、一対のレール(27a、27b)の間に嵌りこむように配置されている。そして、ナット部28dは、一対のレール(27a、27b)に対して摺動自在の状態で配置されている。このため、ネジ軸28aが回転すると、ナット部28dが、一対のレール(27a、27b)によってガイドされながら、ネジ軸28aの軸方向に沿って移動する。
移動プレート29は、平板状の部材として設けられ、その下面側においてナット部28dに固定されている。更に、移動プレート29は、その下面側において、一対のレール(27a、27b)の上面に対して、摺動自在の状態で、支持されている。そして、移動プレート29の上面には、進退移動機構24が設置されている。
進退移動機構24は、カッター部25を、移動プレート29に対して、回転体22の外周に配置された未加硫スリーブ105に対して進出及び退避させる方向に沿って移動させる機構として、構成されている。進退移動機構24は、一対のレール(30a、30b)、移動ブロック31、シリンダ機構32、等を備えて構成されている。
一対のレール(30a、30b)は、移動ブロック31の移動方向をガイドするレールとして設けられている。一対のレール(30a、30b)は、移動プレート29の上面に固定されて設置されている。そして、一対のレール(30a、30b)は、移動プレート29上において、回転体22に配置された未加硫スリーブ105に向かって接近する方向に沿って延びるように、設置されている。より具体的には、一対のレール(30a、30b)は、回転体22に配置された未加硫スリーブ105に向かって接近する方向であって、且つ、主軸16の軸方向と平行な方向に対して直交する方向に沿って、延びるように、移動プレート29上で設置されている。
移動ブロック31は、移動プレート29上に配置されブロック状の要素として設けられている。また、移動ブロック31は、移動プレート29の上面に対してスライド移動自在に配置される。そして、移動ブロック31の下面側には、一対のレール(30a、30b)に対してスライド移動自在に嵌まり込む一対の溝が設けられている。
シリンダ機構32は、シリンダ体32aとロッド32bとを備えた油圧シリンダ機構として設けられている。シリンダ体32aは、移動プレート29の上面において移動プレート29に対して固定されている。ロッド32bには、シリンダ体32aの内部を一対の油室に区画するピストン(図示省略)が、一方の端部に設けられている。そして、ロッド32bは、シリンダ体32a内の一対の油室への圧油の給排が行われることで、シリンダ体32aから突出し或いはシリンダ体32aに向かって縮退する。尚、上記の一対の油室は、例えば、圧油源(図示省略)及び油回収タンク(図示省略)に対して切換弁(図示省略)を介して接続されている。そして、制御装置14からの制御指令に基づいて、上記の切換弁の状態が切り換えられ、シリンダ体32a内の一対の油室への圧油の給排が制御され、シリンダ機構32の作動が制御される。
また、ロッド32bは、ピストンが設けられた一方の端部と反対側の端部において、移動ブロック31に対して固定されている。これにより、進退移動機構24は、ロッド32aがシリンダ体32bから突出することで、移動ブロック31が一対のレール(30a、30b)に沿って、回転体22に配置された未加硫スリーブ105に向かって進出する方向に移動するように、構成されている。また、進退移動機構24は、ロッド32aがシリンダ体32bに向かって縮退することで、移動ブロック31が一対のレール(30a、30b)に沿って、回転体22に配置された未加硫スリーブ105から退避する方向に移動するように、構成されている。
カッター部25は、外周に刃が設けられた回転刃36を有し、回転する回転刃36によって未加硫スリーブ105を周方向に切断する機構として設けられている。そして、カッター部25は、カッターモータ33、動力伝達部34、回転刃カバー35、上記の回転刃36、等を備えて構成されている。
カッターモータ33は、動力伝達部34を介して回転刃を回転駆動する駆動トルクを発生する電動モータとして構成されている。そして、カッターモータ33は、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回転速度で回転するように構成されている。
動力伝達部34は、カッターモータ33からの駆動トルクを回転刃36に伝達する機構として設けられている。動力伝達部34は、例えば、駆動プーリ、従動プーリ、駆動ベルトを有する機構として構成され、ベルト駆動機構21と同様の機構として構成されている。尚、図9及び図10においては、駆動プーリ、従動プーリ、駆動ベルトを収納する動力伝達部34のハウジングのみが図示されており、駆動プーリ、従動プーリ、駆動ベルトの図示は省略されている。
動力伝達部34の駆動プーリは、カッターモータ33の出力軸(図示省略)に連結され、動力伝達部34の従動プーリは、回転刃36の回転軸(図示省略)に連結されている。カッターモータ33が回転すると、その駆動トルクが動力伝達部34の駆動プーリに入力されて駆動ベルトが周回動作を行い、従動プーリも回転する。そして、従動プーリの回転とともに、回転刃36が回転する。
回転刃カバー35は、回転刃36の周囲を部分的に覆うカバーとして設けられている。回転刃カバー35には、回転刃36の回転軸の両端部のそれぞれを回転自在に支持する軸受部(図示省略)が設けられている。また、回転刃カバー35は、動力伝達部34のハウジングに固定されている。
回転刃36は、外周に刃が設けられた円形形状の丸刃として構成されている。即ち、回転刃36には、外周側に向かって鋭く切っ先状に尖るように形成された刃が設けられている。そして、回転刃36の外周の刃は、円形の回転刃の外周の全周に亘って設けられている。尚、回転刃36が回転する方向については、図6において、矢印C2で示されている。回転刃36は、例えば、鉄鋼材料等の金属材料で形成されている。また、回転刃36は、外周に刃が設けられた回転刃本体と、回転刃本体の表面における少なくとも刃の表面を覆うように設けられたコーティング層と、を有した形態として、構成されてもよい。この場合、例えば、回転刃本体は、鉄鋼材料等の金属材料で形成される。そして、回転刃本体の表面を覆うコーティング層は、摩擦抵抗の小さい低摩擦コーティングの表面処理層として構成される。このため、コーティング層を構成する材料としては、切断対象の未加硫スリーブ105との間で規定される摩擦係数を、回転刃本体と未加硫スリーブ105との間で規定される摩擦係数よりも、小さく設定できる材料が、選定される。例えば、コーティング層を構成する材料として、フッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)であるポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。或いは、コーティング層を構成する材料として、ダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon、DLC)を挙げることができる。
図11は、未加硫ゴムベルト形成装置1の平面図であって、未加硫ゴムベルト形成装置1の作動を説明するための図である。未加硫ゴムベルト形成装置1の切断機構12は、上述した幅方向移動機構23、進退移動機構24、カッター部25を備え、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。また、切断機構12が作動する際には、制御装置14からの制御指令に基づいて、回転機構11も作動する。そして、回転機構11及び切断機構12が作動することで、図11に示すように、未加硫スリーブ105が周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成される。
切断機構12の作動の際には、まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ28bが所定の回数分だけ回転し、幅方向移動機構23が作動する。これにより、未加硫ゴムベルト106のベルト幅方向の寸法に対応した位置で未加硫スリーブ105の切断が行われるように、未加硫スリーブ105の幅方向と平行な方向における移動プレート29の位置の位置決めが行われる。即ち、未加硫ゴムベルト106のベルト幅方向の寸法に対応した位置で未加硫スリーブ105の切断が行われるように、進退移動機構24及びカッター部25の位置の位置決めが行われる。
上記のように進退移動機構24及びカッター部25の位置の位置決めが行われると、次いで、制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ20が所定の回転速度で回転し、カッターモータ33も所定の回転速度で回転する。これにより、回転機構11の作動が開始され、主軸16とともに回転体22とその回転体22の外周に配置された未加硫スリーブ105の回転が開始される。そして、カッター部25の作動も開始され、回転刃36の回転が開始される。また、回転機構11及びカッター部25の作動が開始されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、後述する吹き付け機構13の作動も開始される。
上記のように制御装置14からの制御指令に基づいて回転機構11及びカッター部25が作動する際におけるモータ20及びカッターモータ33の回転速度は、未加硫スリーブ105及び回転刃36の条件に応じて予め定められたそれぞれの回転速度に設定される。より具体的には、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が、1.1以上16以下の範囲の値に設定されるように、モータ20及びカッターモータ33の回転速度が定められている。
上記のように回転機構11及びカッター部25の作動が開始されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、シリンダ機構32が作動する。これにより、シリンダ体32aからロッド32bが突出し、移動ブロック31とともにカッター部25が未加硫スリーブ105に向かって進出する。そして、カッター部25の進出に伴い、回転刃36は、未加硫スリーブ105を厚み方向に切断して外周スリーブ19に回転刃36の刃先の先端が僅かに接触する位置まで、未加硫スリーブ105に向かって進出する。
上記のように回転刃36が未加硫スリーブ105に向かって進出することで、主軸16及び回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して、回転刃36が回転しながら押し付けられることになる。そして、図11に示すように、回転刃36の刃先が外周スリーブ19に僅かに接触する位置まで回転刃36が進出することで、未加硫スリーブ105が回転刃36によって周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成される。図11においては、回転刃36によって切断ライン106aにて未加硫スリーブ105から未加硫ゴムベルト106が切断されて形成された状態が図示されている。尚、カッター部25が作動して回転刃36が回転している間は、後述する吹き付け機構13の作動も維持されている。
上記のように、切断機構12は、外周に刃が設けられた回転刃36を有し、回転体22に配置されて回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して、回転刃36が回転しながら押し付けられることで、未加硫スリーブ105を周方向に切断し、未加硫ゴムベルト106を形成する機構として、構成されている。また、切断機構12は、回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して回転刃36が回転しながら押し付けられる際における、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が、1.1以上16以下の値に設定されている。
[吹き付け機構]
図12は、未加硫ゴムベルト形成装置1の吹き付け機構13を説明するための図である。図6、図7、図9乃至図12に示す吹き付け機構13は、切断機構12によって未加硫スリーブ105が切断される際に、回転刃36に対してミスト状の水(霧状の水)を吹き付ける機構として、構成されている。吹き付け機構13は、一対のノズル支持フレーム(37a、37b)、一対のノズル(38a、38b)、等を備えて構成されている。
一対のノズル支持フレーム(37a、37b)は、一対のノズル(38a、38b)を支持するフレームとして設けられている。ノズル支持フレーム37aがノズル38aを支持し、ノズル支持フレーム37bがノズル38bを支持している。
ノズル支持フレーム37a及びノズル支持フレーム37bのそれぞれは、それぞれの一方の端部において、回転刃カバー35に対して固定されて支持されている。即ち、ノズル支持フレーム37a及びノズル支持フレーム37bのそれぞれは、回転刃カバー35から片持ち状に延びた状態で、回転刃カバー35に支持されている。また、ノズル支持フレーム37a及びノズル支持フレーム37bは、回転刃36を挟んだ状態で、配置されている。即ち、ノズル支持フレーム37aが、回転刃36の両側面のうちの一方の面に対向する位置に配置され、ノズル支持フレーム37bが、回転刃36の両側面のうちの他方の面に対向する位置に配置されている。
また、ノズル支持フレーム37aには、ノズル38aに対して水を供給するための水供給チューブ39aと、ノズル38aに対して圧縮空気を供給するためのエアー供給チューブ40aとが、接続されている。そして、ノズル支持フレーム37bには、ノズル38bに対して水を供給するための水供給チューブ39bと、ノズル38bに対して圧縮空気を供給するためのエアー供給チューブ40bとが、接続されている。
一対のノズル(38a、38b)のそれぞれは、ミスト状の水を回転刃36に向かって吹き付けるように構成されている。即ち、一対のノズル(38a、38b)のそれぞれは、回転刃36に向かって水を噴霧するように構成されている。本実施形態では、一対のノズル(38a、38b)のそれぞれが二流体ノズルとして構成された形態が、例示されている。
ノズル38aは、ノズルフレーム37aに支持されており、回転刃カバー35から片持ち状に延びるノズル支持フレーム37aの先端側の端部に設置されている。ノズル38aは、ノズル支持フレーム37aの先端側の端部において、回転刃36に対向する位置に設置されている。そして、ノズル38aは、ミスト状の水を噴射する噴射口が回転刃36に向かって開口した状態で、ノズル支持フレーム37aに設置されている。これにより、ノズル38aは、回転刃36の両側面のうちの一方の側面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。
また、ノズル38aには、水供給チューブ39a及びエアー供給チューブ40aが接続されている。水供給チューブ39a及びエアー供給チューブ40aは、ノズル支持フレーム37aの内部において、ノズル38aに接続されている。水供給チューブ39aは、ノズル38aに接続される側の端部と反対側の端部において、図示が省略された開閉電磁弁を介して図示が省略された水供給源に接続されている。エアー供給チューブ40aは、ノズル38aに接続される側の端部と反対側の端部において、図示が省略された開閉電磁弁を介して図示が省略された圧縮空気供給源に接続されている。水供給チューブ39a及びエアー供給チューブ40aにそれぞれ設けられた上記の開閉電磁弁は、制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。制御装置14からの制御指令に基づいて上記の開閉電磁弁がいずれも開くことで、ノズル38aから回転刃36の一方の側面に向かってミスト状の水が吹き付けられる。
ノズル38bは、ノズルフレーム37bに支持されており、回転刃カバー35から片持ち状に延びるノズル支持フレーム37bの先端側の端部に設置されている。ノズル38bは、ノズル支持フレーム37bの先端側の端部において、回転刃36に対向する位置に設置されている。そして、ノズル38bは、ミスト状の水を噴射する噴射口が回転刃36に向かって開口した状態で、ノズル支持フレーム37bに設置されている。これにより、ノズル38aは、回転刃36の両側面のうちの他方の側面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。
また、ノズル38bには、水供給チューブ39b及びエアー供給チューブ40bが接続されている。水供給チューブ39b及びエアー供給チューブ40bは、ノズル支持フレーム37bの内部において、ノズル38bに接続されている。水供給チューブ39bは、ノズル38bに接続される側の端部と反対側の端部において、図示が省略された開閉電磁弁を介して図示が省略された水供給源に接続されている。エアー供給チューブ40bは、ノズル38bに接続される側の端部と反対側の端部において、図示が省略された開閉電磁弁を介して図示が省略された圧縮空気供給源に接続されている。水供給チューブ39b及びエアー供給チューブ40bにそれぞれ設けられた上記の開閉電磁弁は、制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。制御装置14からの制御指令に基づいて上記の開閉電磁弁がいずれも開くことで、ノズル38bから回転刃36の他方の側面に向かってミスト状の水が吹き付けられる。
上記のように、ノズル38a及びノズル38bは、回転刃36の両側面における互いに異なる面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。従って、吹き付け機構13は、ミスト状の水を、回転刃36に対して、回転刃36の両側面において、吹き付けるように構成されている。尚、図11及び図12においては、ノズル38a及びノズル38bから噴射されるミスト状の水を破線で模式的に図示している。
図12においては、ノズル38aがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向が、一点鎖線N1で図示されている。ノズル38aがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向(一点鎖線N1で示された方向)は、ノズル38aの噴射口が回転刃36に向かって開口する方向である。また、図12においては、ノズル38bがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向が、一点鎖線N2で図示されている。ノズル38bがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向(一点鎖線N2で示された方向)は、ノズル38bの噴射口が回転刃36に向かって開口する方向である。また、図12においては、回転刃36の回転軸と平行な方向が、一点鎖線Pで図示されている。回転刃36の回転軸と平行な方向(一点鎖線Pで示された方向)は、主軸16の軸方向と平行である。
図12に示すように、一点鎖線N1で示す方向(ノズル38aがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向)は、一点鎖線P(回転刃36の回転軸と平行な方向)で示す方向に対して、回転刃36に向かう方向において、未加硫スリーブ105側とは反対側に向かって傾いている。そして、一点鎖線N2で示す方向(ノズル38bがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向)は、一点鎖線P(回転刃36の回転軸と平行な方向)で示す方向に対して、回転刃36に向かう方向において、未加硫スリーブ105側とは反対側に向かって傾いている。よって、吹き付け機構13は、ミスト状の水を、回転刃36の回転軸と平行な方向に対して未加硫スリーブ105側とは反対側に傾いた方向に向かって、回転刃36に対して吹き付けるように構成されている。
[制御装置]
図7に示す制御装置14は、未加硫ゴムベルト形成装置1において、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13の作動を制御する制御部として設けられている。前述の通り、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13は、制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。
制御装置14は、CPU等のプロセッサ、メモリ、ユーザによって操作される操作パネル又は操作盤等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御装置14のメモリには、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。ユーザによって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがプロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13が作動する。
制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ20が回転し、駆動トルクがベルト駆動機構21を介して主軸16に伝達される。そして、主軸16とともに回転体22が回転し、回転体22とともに回転体22に配置された未加硫スリーブ105が回転する。また、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ28bが所定の回数分だけ回転して移動プレート29が基台部26上で所定量移動する。
そして、制御装置14からの制御指令に基づいて、カッターモータ33が回転し、駆動トルクが動力伝達部34を介して回転刃36に伝達され、回転刃36が回転する。また、制御装置14からの制御指令に基づいて、吹き付け機構13が作動し、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられる。更に、制御装置14からの制御指令に基づいて、シリンダ機構32が作動し、移動ブロック31とともに回転刃36が未加硫スリーブ105に向かって進出する。これにより、未加硫スリーブ105が周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成される。尚、前述の通り、モータ20及びカッターモータ33は、制御装置14からの制御指令に基づいて、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が1.1以上16以下の範囲の値に設定された状態で、回転する。尚、本実施形態では、制御装置14からの制御指令に基づいて、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13が作動する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。未加硫ゴムベルト形成装置1において、制御装置14が備えられておらず、ユーザによる操作に基づいて、回転機構11、切断機構12、吹き付け機構13が作動する形態が実施されてもよい。
[吹き付け機構の変形例]
次に、前述した吹き付け機構13とは異なる形態を有する吹き付け機構の変形例について、図13乃至図17を参照しながら説明する。前述の未加硫ゴムベルト形成装置1において、吹き付け機構13が含まれた形態ではなく、図13乃至図17に示す第1乃至第5の変形例に係る吹き付け機構(41、42、43、44、45)のいずれかが含まれた形態が実施されてもよい。
尚、図13乃至図17に示す第1乃至第5の変形例に係る吹き付け機構(41、42、43、44、45)の説明において、吹き付け機構13を含む前述の未加硫ゴムベルト形成装置1における要素と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは、同一の符号を引用して説明することで、重複する説明を省略する。
図13は、第1の変形例に係る吹き付け機構41を説明するための図である。第1の変形例に係る吹き付け機構41は、ノズル支持フレーム及びノズルの設置数において、吹き付け機構13と異なっている。具体的には、吹き付け機構41は、1つのノズル支持フレーム37aと1つのノズル38aとを備えて構成されている。このように、回転刃36の両側面に対してではなく、片方の側面に対して、ミスト状の水を吹き付ける形態の吹き付け機構41が実施されてもよい。
尚、他の変形例として、1つのノズル支持フレーム37bと1つのノズル38bとを備えて構成された吹き付け機構が実施されてもよい。即ち、吹き付け機構41によってミスト状の水が吹き付けられる側面とは反対側の側面のみに対してミスト状の水を吹き付ける形態の吹き付け機構が実施されてもよい。また、3つ以上のノズル支持フレーム及びノズルを備えた構成の吹き付け機構が実施されてもよい。
図14は、第2の変形例に係る吹き付け機構42を説明するための図である。第2の変形例に係る吹き付け機構42は、ノズル支持フレーム及びノズルの設置数及び設置位置において、吹き付け機構13と異なっている。
具体的には、吹き付け機構42は、1つのノズル支持フレーム46と1つのノズル47とを備えて構成されている。そして、ノズル支持フレーム46は、回転刃カバー35の上部において、回転刃カバー35に対して固定されて支持されている。ノズル支持フレーム46は、回転刃カバー35の上部から片持ち状に上方に延び、その後、屈曲して水平方向に沿って延び、更に、水平方向に延びたその先端部が回転刃36の上方に位置するように、設けられている。
また、ノズル支持フレーム46は、回転刃36の上方に位置する先端部において、ノズル47を支持している。そして、ノズル支持フレーム46には、ノズル47に対して水を供給するための水供給チューブ39aと、ノズル47に対して圧縮空気を供給するためのエアー供給チューブ40aとが、接続されている。
ノズル47は、ミスト状の水を回転刃36に向かって吹き付けるように構成されている。即ち、ノズル47は、回転刃36に向かって水を噴霧するように構成されている。また、ノズル47は、二流体ノズルとして構成されている。ノズル47は、ノズルフレーム46に支持されている。そして、ノズル47は、回転刃カバー35から屈曲して片持ち状に延びるノズル支持フレーム46において、回転刃36の上方に位置する先端側の端部に設置されている。ノズル47には、水供給チューブ39b及びエアー供給チューブ40bが接続されている。
また、ノズル47は、ミスト状の水を噴射する噴射口が下方に向かって且つ回転刃36に向かって開口した状態で、ノズル支持フレーム46に支持されている。尚、回転刃36の回転軸は水平方向に延びるように配置されている。そして、ノズル47は、回転刃36の回転軸と平行な方向に対して垂直な方向或いは斜めの方向に沿って、ミスト状の水を下方の回転刃36に向かって吹き付けるように、構成されている。これにより、ノズル47は、ノズル47から噴霧された水(ノズル47から噴射されたミスト状の水)が、回転刃36の外周の刃先と回転刃36の両側面とに対して吹き付けられるように、構成されている。尚、図14においては、ノズル47から噴射されるミスト状の水を破線で模式的に図示している。上記のように、回転刃36の外周の刃先に向かってミスト状の水を吹き付ける形態の吹き付け機構42が実施されてもよい。
図15は、第3の変形例に係る吹き付け機構43を説明するための図である。第3の変形例に係る吹き付け機構43は、カバー(48、49)が設けられている点と、ノズルがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向とにおいて、吹き付け機構13と異なっている。
吹き付け機構43は、一対のノズル支持フレーム(37a、37b)、一対のノズル(50a、50b)、一対のカバー(48、49)、等を備えて構成されている。ノズル支持フレーム37aがノズル50aを支持し、ノズル支持フレーム37bがノズル50bを支持している。
一対のノズル(50a、50b)のそれぞれは、ミスト状の水を回転刃36に向かって吹き付けるように構成されている。即ち、一対のノズル(50a、50b)のそれぞれは、回転刃36に向かって水を噴霧するように構成されている。また、一対のノズル(50a、50b)のそれぞれは、二流体ノズルとして構成されている。
ノズル50aは、ノズルフレーム37aに支持されており、回転刃カバー35から片持ち状に延びるノズル支持フレーム37aの先端側の端部に設置されている。ノズル50aは、ノズル支持フレーム37aの先端側の端部において、回転刃36に対向する位置に設置されている。そして、ノズル50aは、ミスト状の水を噴射する噴射口が回転刃36に向かって開口した状態で、ノズル支持フレーム37aに設置されている。これにより、ノズル50aは、回転刃36の両側面のうちの一方の側面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。また、ノズル50aには、水供給チューブ39a及びエアー供給チューブ40aが接続されている。
ノズル50bは、ノズルフレーム37bに支持されており、回転刃カバー35から片持ち状に延びるノズル支持フレーム37bの先端側の端部に設置されている。ノズル50bは、ノズル支持フレーム37bの先端側の端部において、回転刃36に対向する位置に設置されている。そして、ノズル50bは、ミスト状の水を噴射する噴射口が回転刃36に向かって開口した状態で、ノズル支持フレーム37bに設置されている。これにより、ノズル50aは、回転刃36の両側面のうちの他方の側面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。また、ノズル50bには、水供給チューブ39b及びエアー供給チューブ40bが接続されている。
上記のように、ノズル50a及びノズル50bは、回転刃36の両側面における互いに異なる面に向かってミスト状の水を噴射して吹き付けるように構成されている。従って、吹き付け機構43は、ミスト状の水を、回転刃36に対して、回転刃36の両側面において、吹き付けるように構成されている。尚、図15においては、ノズル50a及びノズル50bから噴射されるミスト状の水を破線で模式的に図示している。
また、ノズル50aがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向は、回転刃36の回転軸と平行な方向である。そして、ノズル50bがミスト状の水を回転刃36に対して吹き付ける方向は、回転刃36の回転軸と平行な方向である。よって、吹き付け機構43は、ミスト状の水を、回転刃36の両側から、回転刃36の回転軸と平行な方向に向かって、回転刃36に対して吹き付けるように構成されている。
一対のカバー(48、49)は、一対のノズル(50a、50b)に対応して設けられている。即ち、カバー48はノズル50aに対応して設けられ、カバー49はノズル50bに対応して設けられている。
カバー48は、ノズル50aと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置され、ミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることを規制するように構成されている。より具体的には、カバー48は、一体に設けられた下方壁部48aと上下壁部48bとを備えて構成されている。
下方壁部48aは、一方の端部が移動プレート29に固定され、移動プレート29から水平方向に沿って延びるプレート状の壁部として設けられている。上下壁部48bは、上下方向に延びる壁部として設けられている。そして、上下壁部48bは、下端部が下方壁部48aに一体に固定され、上方に向かって片持ち状に延びるプレート状の壁部として設けられている。上下壁部48bは、ノズル50aと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置されている。この上下壁部48bが設けられていることにより、ノズル50aから回転刃36に向かって吹き付けられるように噴射されたミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることが規制されている。
尚、図15に例示する形態においては、未加硫スリーブ105が周方向に切断された状態では、上下壁部48bは、未加硫ゴムベルト106に対向した状態となる。そして、未加硫スリーブ105が周方向に切断される前の状態では、上下壁部48bは、ノズル50aと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置される状態となる。
カバー49は、ノズル50bと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置され、ミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることを規制するように構成されている。より具体的には、カバー49は、一体に設けられた下方壁部49aと上下壁部49bとを備えて構成されている。
下方壁部49aは、一方の端部が移動プレート29に固定され、移動プレート29から水平方向に沿って延びるプレート状の壁部として設けられている。上下壁部48bは、上下方向に延びる壁部として設けられている。そして、上下壁部49bは、下端部が下方壁部49aに一体に固定され、上方に向かって片持ち状に延びるプレート状の壁部として設けられている。上下壁部49bは、ノズル50bと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置されている。この上下壁部49bが設けられていることにより、ノズル50bから回転刃36に向かって吹き付けられるように噴射されたミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることが規制されている。
上記のように、ノズル(50a、50b)と回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置されてミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることを規制するカバー(48、49)が設けられた形態の吹き付け機構43が実施されてもよい。
図16は、第4の変形例に係る吹き付け機構44を説明するための図である。第4の変形例に係る吹き付け機構44は、図15に示す第3の変形例に係る吹き付け機構44と同様に、カバー51を備えて構成されている。但し、吹き付け機構44のカバー51は、上方にも更に壁部が設けられている点において、吹き付け機構43のカバー(48、49)とは異なっている。
吹き付け機構44は、一対のノズル支持フレーム(37a、37b)、一対のノズル(50a、50b)、一対のカバー(51、51)、等を備えて構成されている。尚、図16においては、一対のカバー(51、51)のうちの一方、ノズル支持フレーム37b、及び、一対のノズル(50a、50b)の図示が、省略されている。吹き付け機構44の一対のノズル(50a、50b)は、吹き付け機構43の一対のノズル(50a、50b)と同様に構成されている。
一対のカバー(51、51)の一方は、ノズル50aと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置され、ミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることを規制するように構成されている。一対のカバー(51、51)の他方は、ノズル50bと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置され、ミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることを規制するように構成されている。一対のカバー(51、51)は、上述した設置位置を除き、同様に構成されているため、一対のカバー(51、51)のうち図16に表れた一方のみについて説明し、一対のカバー(51、51)のうちの他方についての説明を省略する。
図16に表れたカバー51は、一体に設けられた下方壁部51aと上下壁部51bと上方壁部51cとを備えて構成されている。下方壁部51aは、一方の端部が移動プレート29に固定され、移動プレート29から水平方向に沿って延びるプレート状の壁部として設けられている。
上下壁部51bは、上下方向に延びる壁部として設けられている。そして、上下壁部51bは、下端部が下方壁部51aに一体に固定され、上方に向かって延びるプレート状の壁部として設けられている。上下壁部51bは、ノズル50aと回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に配置されている。この上下壁部51bが設けられていることにより、ノズル50aから回転刃36に向かって吹き付けられるように噴射されたミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることが規制されている。
上方壁部51cは、一方の端部が上下壁部51bの上端部に一体に固定され、水平方向に沿って片持ち状に延びるプレート状の壁部として設けられている。また、上方壁部51cは、ノズル50aの上方を覆うように配置されている。上下壁部51bに加えて上方壁部51cも設けられていることにより、ノズル50aから回転刃36に向かって吹き付けられるように噴射されたミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることが更に効率よく規制されている。
図17は、第5の変形例に係る吹き付け機構45を説明するための図である。第5の変形例に係る吹き付け機構45は、第4の変形例に係る吹き付け機構44の構成と前述の実施形態に係る吹き付け機構13の構成とが組み合わされた形態として構成されている。より具体的には、第5の変形例に係る吹き付け機構45は、ノズル支持フレーム37a、ノズル支持フレーム37b、ノズル50a、ノズル37b、カバー48、を備えて構成されている。よって、吹き付け機構45は、回転刃36の両側面のうちの一方の側面に対応する構成が、第4の変形例に係る吹き付け機構44と同様に構成されている。そして、吹き付け機構45は、回転刃36の両側面のうちの他方の側面に対応する構成が、前述の実施形態に係る吹き付け機構13と同様に構成されている。
上記のように、回転刃36の両側面のうちの一方の側面に対応する構成と他方の側面に対応する構成とにおいて、異なる構成を有する形態の吹き付け機構45が実施されてもよい。
[未加硫ゴムベルトの形成方法]
次に、本発明の一実施の形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法について説明する。図18は、本発明の一実施の形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法を示すチャート図である。図18に示す未加硫ゴムベルト形成方法は、未加硫ゴム層と心線104とを有する未加硫スリーブ105を周方向に切断して環状の未加硫ゴムベルト106を形成する未加硫ゴムベルト形成方法として構成されている。
図18に示す未加硫ゴムベルト形成方法は、前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成装置1が作動することで実施される。又は、図18に示す未加硫ゴムベルト形成方法は、未加硫ゴムベルト形成装置1において吹き付け機構13が第1乃至第5の変形例に係る吹き付け機構(41〜45)のいずれかに置換された形態の未加硫ゴムベルト形成装置が作動することで実施される。尚、以下の説明においては、未加硫ゴムベルト形成装置1において吹き付け機構13が第1乃至第5の変形例に係る吹き付け機構(41〜45)のいずれかに置換された形態の未加硫ゴムベルト形成装置についても、「未加硫ゴムベルト形成装置1」と称する。
図18に示すように、本実施形態の未加硫ゴムベルト形成方法は、未加硫スリーブ配置工程S201、切断吹き付け工程S202、未加硫ゴムベルト取り外し工程S204を備えて構成されている。未加硫スリーブ配置工程S201が実施され、次いで、切断吹き付け工程S202が複数回実施され、最後に未加硫ゴムベルト取り外し工程S204が実施される。これらの工程が終了することで、1つの未加硫スリーブ105から複数の未加硫ゴムベルト106が形成されることになる。
未加硫スリーブ配置工程S201は、主軸16とともに回転するように構成された回転体22の外周に未加硫スリーブ105が配置される工程として、構成されている。本実施形態では、例えば、回転体22に対して未加硫のゴムシート及び心線104が巻き付けられることで回転体22の周りに未加硫スリーブ105が形成され、これにより、未加硫スリーブ105が回転体22に配置された状態となる。即ち、回転体22を用いて前述の未加硫スリーブ形成工程S101が実施されて未加硫スリーブ105が形成され、未加硫スリーブ105が回転体22に配置された状態となる。
尚、回転体22の外周に未加硫スリーブ105を配置する方法としては、上述の通りでなくてもよい。例えば、回転機構11の回転体22とは異なる別の回転体を用いて未加硫スリーブ105が形成され、その別の回転体から取り外された未加硫スリーブ105が、回転機構11の回転体22に対して装着されて配置される形態が実施されてもよい。
切断吹き付け工程S202は、切断工程S205と吹き付け工程S206とを備えて構成されている。切断工程S205及び吹き付け工程S206は、同時に実施される。
切断工程S205は、制御装置14からの制御指令に基づいて、回転機構11及び切断機構12が作動することで、実施される。まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ20が回転し、駆動トルクがベルト駆動機構21を介して主軸16に伝達される。そして、主軸16とともに回転体22が回転し、回転22とともに回転体22に配置された未加硫スリーブ105が回転する。また、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ28bが所定の回数分だけ回転して移動プレート29が基台部26上で所定量移動する。
そして、制御装置14からの制御指令に基づいて、カッターモータ33が回転し、駆動トルクが動力伝達部34を介して回転刃36に伝達され、回転刃36が回転する。更に、制御装置14からの制御指令に基づいて、シリンダ機構32が作動し、移動ブロック31とともに回転刃36が未加硫スリーブ105に向かって進出する。これにより、未加硫スリーブ105が周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成される。
上記のように、切断工程S205は、外周に刃が設けられた回転刃36が、回転体22に配置されて回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して、回転しながら押し付けられることで、未加硫スリーブ105が周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成される工程として、構成されている。
尚、切断工程においては、制御装置14からの制御指令に基づいて、回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して回転刃36が回転しながら押し付けられる際における、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が、1.1以上16以下の値に設定される。即ち、モータ20及びカッターモータ33が、制御装置14からの制御指令に基づいて、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が1.1以上16以下の範囲の値に設定された状態で、回転する。
吹き付け工程S206は、切断工程S205の実施と同時並行で実施される。そして、吹き付け工程S206においては、制御装置14からの制御指令に基づいて、吹き付け機構13が作動し、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられる。このように、吹き付け工程S206は、切断工程S205中において、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられる工程として、構成されている。
尚、吹き付け工程S206は、吹き付け機構13ではなく第1乃至第5の変形例に係る吹き付け機構(41〜45)のうちのいずれかが作動することで実施されてもよい。即ち、吹き付け工程S206において、制御装置14からの制御指令に基づいて、吹き付け機構41、吹き付け機構42、吹き付け機構43、吹き付け機構43、及び吹き付け機構45のうちのいずれかが作動し、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられてもよい。
また、吹き付け機構13、吹き付け機構43、吹き付け機構44、及び吹き付け機構45のうちのいずれかが作動することで実施される吹き付け工程S206においては、ミスト状の水は、回転刃36に対して、回転刃36の両側面において、吹き付けられる。
また、吹き付け機構13又は吹き付け機構41が作動することで実施される吹き付け工程S206においては、ミスト状の水は、回転刃36の回転軸と平行な方向に対して未加硫スリーブ105側とは反対側に傾いた方向に向かって、回転刃36に対して吹き付けられる。尚、吹き付け機構45が作動することで実施される吹き付け工程S206においては、ミスト状の水は、回転刃36の一方の側面に対しては、回転刃36の回転軸と平行な方向に対して未加硫スリーブ105側とは反対側に傾いた方向に向かって、吹き付けられる。
また、吹き付け機構43又は吹き付け機構44が作動することで実施される吹き付け工程S206においては、ミスト状の水を回転刃36に向かって吹き付けるノズル(50a、50b)と回転体22に配置された未加硫スリーブ105との間に、カバー(48、49、51)が配置されている。カバー(48、49、51)が配置されていることで、ミスト状の水が未加硫スリーブ105に対して直接に吹き付けられることが規制されている。尚、吹き付け機構45が作動することで実施される吹き付け工程S206においては、一方のノズル50aと未加硫スリーブ105との間のみに、カバー48が配置されている。
未加硫スリーブ105が全周に亘って周方向に切断され、未加硫ゴムベルト106が形成されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、シリンダ機構32が作動し、移動ブロック31とともに回転刃36が未加硫スリーブ105から離間する方向に向かって移動する。即ち、ロッド32aがシリンダ体32bに向かって縮退し、移動ブロック31とともに回転刃36が、未加硫スリーブ105から退避する方向に移動する。これにより、切断工程S205及び吹き付け工程S206が終了し、切断吹き付け工程S202が一旦終了する。
切断吹き付け工程S202が一旦終了すると、制御装置14において、未加硫スリーブ105を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かが判断される(工程S203)。即ち、工程S203においては、未加硫スリーブ105が周方向に切断されて未加硫ゴムベルト106が形成される処理が、未加硫スリーブ105の幅方向(図7及び図8で両端矢印Bで示す方向)における全長に亘って所定回数行われ、未加硫スリーブ105の全体が複数の未加硫ゴムベルト106に切断されたか否かが、判断される。尚、制御装置14は、例えば、予め入力されている未加硫スリーブ105の切断前の状態の幅方向の寸法と、ボールネジモータ28bの回転量の積算値とに基づいて、未加硫スリーブ105を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かを判断する。
工程S203において、未加硫スリーブ105を全幅に亘って切断する処理が終了していないと判断されると(工程S203、No)、まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ28bが所定の回数分だけ回転し、移動プレート29が、基台部26上で、未加硫ゴムベルト106のベルト幅寸法に対応した所定量だけ移動する。そして、再び、切断吹き付け工程S202が実施される。これにより、回転体22の外周において、次の未加硫ゴムベルト106が形成されることになる。
上記のように切断吹き付け工程S202が実施され、未加硫ゴムベルト106が新たに形成されると、再び、制御装置14にて、未加硫スリーブ105を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かが判断される(工程S203)。未加硫スリーブ105が全幅に亘って切断する処理が終了していないと判断されるかぎり(工程S203、No)、上記の処理が繰り返されることになる。そして、工程S203と切断吹き付け工程S202とが繰り返されることで、回転体22の外周に複数の未加硫ゴムベルト106が形成されていくことになる。
図19は、未加硫ゴムベルト形成装置1によって未加硫スリーブ105が全幅に亘って周方向に切断され、複数の未加硫ゴムベルト106が形成された状態を示す図である。工程S203と切断吹き付け工程S202とが繰り返され、図19に示すように、未加硫スリーブ105が全幅に亘って切断されると、制御装置14において、未加硫スリーブ105を全幅に亘って切断する処理が終了したと判断される(工程S203、Yes)。上記のように判断されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、回転機構11、切断機構12、及び吹き付け機構13(又は、吹き付け機構41〜45のいずれか)の作動が停止される。
図19に示すように、未加硫スリーブ105が全幅に亘って切断され、複数の未加硫ゴムベルト106が形成されると、次いで、未加硫ゴムベルト取り外し工程S204が実施される。未加硫ゴムベルト取り外し工程S204では、回転体22の外周に配置された状態の複数の未加硫ゴムベルト106の全てが、回転体22から取り外される。回転体22から全ての未加硫ゴムベルト106が取り外されることで、図18に示す未加硫ゴムベルト形成方法は終了することになる。
[実施例]
次に、上述した実施形態の未加硫ゴムベルト形成装置1及び未加硫ゴムベルト形成方法によって未加硫ゴムベルト106を形成した本発明の実施例について説明する。図20は、本発明の実施例及び比較例に関する実施条件と実施結果とを一覧表にして示す図である。
実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14は、上述した実施形態又はそれに類似する形態によって未加硫ゴムベルト106を形成した実施例である。実施例No.1〜No.7においては、切断機構12の回転刃36として、表面に低摩擦コーティングのコーティング層が設けられておらず全体が鉄鋼材料で形成された回転刃36を用い、未加硫ゴムベルト106を形成した。一方、実施例No.9〜No.14においては、切断機構12の回転刃36として、回転刃本体の表面に低摩擦コーティングの表面処理層としてのコーティング層が設けられた回転刃36を用い、未加硫ゴムベルト106を形成した。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14においては、切断機構12によって未加硫スリーブ105が切断される際に、回転刃36に対してミスト状の水を吹き付けて(水を噴霧して)、未加硫ゴムベルト106を形成した。よって、図20において、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14については、未加硫スリーブ105の切断中に未加硫スリーブ105と回転刃36との間で発生する摩擦熱を抜熱する冷却手段に関する実施条件として、「冷却手段」の欄において、「ミスト噴霧」と記載している。
尚、実施例No.1においては、回転刃36及び未加硫スリーブ105の表面の両方に対してミスト状の水の吹き付けながら、未加硫ゴムベルト106の形成を行った。よって、図20において、実施例No.1については、吹き付け箇所に関する実施条件として、「吹き付け箇所」の欄において、「回転刃+スリーブ」と記載している。一方、実施例No.2〜No.7、No.9〜No.14については、ミスト状の水を、未加硫スリーブ105には吹き付けず、回転刃36のみに対して直接に吹き付けながら、未加硫ゴムベルト106の形成を行った。よって、図20において、実施例No.2〜No.7については、「吹き付け箇所」の欄において、「回転刃」と記載している。そして、実施例No.9〜No.14については、「吹き付け箇所」の欄において、「回転刃(コーティング刃)」と記載している。尚、実施例No.2〜No.7、No.9〜No.14においては、図17に示す第5の変形例に係る吹き付け機構45を備えた未加硫ゴムベルト形成装置1とその未加硫ゴムベルト形成装置1を用いた未加硫ゴムベルト形成方法によって、未加硫ゴムベルト106を形成した。
比較例No.8は、本発明の実施例との比較のための例として実施したものであり、ミスト状でない水を回転刃36及び未加硫スリーブ105の表面の両方に対して流し掛けながら、未加硫ゴムベルト106の形成を行った。よって、図20において、比較例No.8については、「冷却手段」の欄に「水掛け」と記載し、「吹き付け箇所」の欄に「回転刃+スリーブ」と記載している。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、図20の「水量(L/min)」の欄に記載した水量のミスト状の水又はミスト状でない水を吹き付けて又は掛けて、未加硫ゴムベルト106を形成した。尚、各例(No.1〜8)において吹き付ける又は掛けるミスト状の水又はミスト状でない水の水量は、1分間あたりに吹き付けられる又は掛けられる水を容器に採取することで、測定した。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、図20の「周速比」の欄に記載した周速比にそれぞれ設定し、未加硫ゴムベルト106を形成した。図20に記載した周速比は、回転体22とともに回転する未加硫スリーブ105に対して回転刃36が回転しながら押し付けられる際における、未加硫スリーブ105の外周の周速度と、回転刃36の外周の周速度との比として、記載している。即ち、「未加硫スリーブ105の外周の周速度:回転刃36の外周の周速度」の比として記載している。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、図20の「環境温度」の欄に記載した通り、いずれも、温度が25℃に保たれた室内の環境下で、未加硫ゴムベルト106を形成した。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、未加硫スリーブ105から切断された後の未加硫ゴムベルト106の表面における水の付着状態について観察を行った。観察結果については、図20の「切断後未加硫ゴムベルト表面の水付着状態」の欄に記載した通りとなった。即ち、実施例No.1では、未加硫ゴムベルト106の表面に水滴が見られた。一方、実施例No.2〜No.7、No.9〜No.14については、未加硫ゴムベルト106の表面には、極わずかな水滴しか見られなかった。これに対し、比較例No.8については、未加硫ゴムベルト106の表面がずぶ濡れの状態となった。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、未加硫スリーブ105を切断した後の状態における回転刃36に対する未加硫ゴムの粘着状態についても観察を行った。観察結果については、図20の「切断後回転刃の未加硫ゴム粘着状態」の欄に記載した。上記の観察においては、未加硫スリーブ105を切断した後の回転刃36の表面を目視で観察し、回転刃36における未加硫ゴムの粘着状態を確認した。その結果、回転刃36の刃先の全周に亘って未加硫ゴムが粘着していると確認された場合は、「×」判定とした。そして、回転刃36の刃先の半周以上に未加硫ゴムが付着していると確認された場合は、「△」判定とした。一方、回転刃36の刃先の全周に亘って未加硫ゴムの粘着が見られなかった場合は、「○」判定とした。その結果、実施例No.1〜No.6、No.9〜No.14、及び比較例No.8については、「○」判定となった。一方、実施例No.7については、「△」判定となった。尚、「△」判定以上、即ち、「△」判定及び「○」判定であれば、その未加硫ゴムベルト106を用いてラップドVベルト100を製造しても、品質上の問題は生じない水準であることも確認した。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、未加硫スリーブ105から切断されて形成された未加硫ゴムベルト106の外観の観察も行った。観察結果については、図20の「未加硫ゴムベルトの外観」の欄に記載した。未加硫ゴムベルト106の外観の観察においては、未加硫スリーブ105から切断されて形成された未加硫ゴムベルト106に生じた変形の状況について目視で確認した。
尚、回転刃36による未加硫スリーブ105の切断時における切断抵抗の状況により、未加硫ゴムベルト106において、外周側未加硫ゴム層108の角部分が変形する。とくに、未加硫スリーブ105が回転刃36によって押し切られるようにして切断される状態では、外周側未加硫ゴム層108の角部分が潰れるように大きく変形する。図21は、未加硫スリーブ105から切断されて形成された未加硫ゴムベルト106の外観の判断基準について説明するための図である。図21では、未加硫ゴムベルト106の外観の判断基準を説明するための未加硫ゴムベルト106の断面形状が模式的に示されている。
図21(a)においては、外周側未加硫ゴム層108の角部分が潰れるように変形した未加硫ゴムベルト106の断面形状が示されている。押し切られるように切断されると、回転刃36による切りこみの初期段階で外周側未加硫ゴム層108が押しつぶされるため、図21(a)に示すように、角部分が変形する。尚、図21(a)においては、外周側未加硫ゴム層108の厚み寸法を寸法Hで表しており、外周側未加硫ゴム層108において押しつぶされた部分の厚み寸法を寸法hで表している。一方、図21(b)においては、押し切られるように切断されることなく、外周側未加硫ゴム層108が押しつぶされていない状態で切断された未加硫ゴムベルト106の断面形状が示されている。
未加硫ゴムベルト106の外観の観察においては、まず、外周側未加硫ゴム層108の角部分の変形の有無を確認した。そして、図21(b)に示すように、外周側未加硫ゴム層108が押しつぶされていない状態で切断されている場合は、「○」判定とした。一方、外周側未加硫ゴム層108の角部分の変形があり、上記の寸法hが上記の寸法Hの2分の1以下の場合、即ち、h≦1/2×Hの場合、「△」判定とした。更に、外周側未加硫ゴム層108の角部分の変形があって、上記の寸法hが上記の寸法Hの2分の1より大きい場合、即ち、h>1/2×Hの場合、「×」判定とした。その結果、実施例No.1〜No.6、No.9〜No.14、及び比較例No.8については、「○」判定となった。一方、実施例No.7については、「△」判定となった。尚、「△」判定以上、即ち、「△」判定及び「○」判定であれば、その未加硫ゴムベルト106を用いてラップドVベルト100を製造しても、品質上の問題は生じない水準であることも確認した。
また、実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14、及び比較例No.8においては、未加硫スリーブ105から切断されて形成された複数の未加硫ゴムベルト106が回転体22から取り外される際における、未加硫ゴムベルト106同士の分割の容易性の確認も行った。確認結果については、図20の「未加硫ゴムベルトの分割の容易性」の欄に記載した。
回転体22において隣り合って配置された未加硫ゴムベルト106同士を分割して回転体22から未加硫ゴムベルト106を取り外す分割作業の容易性は、未加硫ゴムベルト106における未加硫ゴムの状況により、異なる。未加硫ゴムの粘着性が高い状態の場合、上記の分割作業の容易性が低下することになる。未加硫ゴムベルト106の分割の容易性を確認した結果、問題無く容易に分割作業を行えると確認された場合は、「○」判定とした。そして、未加硫ゴムベルト106の未加硫ゴムの粘着性があり、分割作業において僅かに手間を要するが、作業能率に影響を与える程度ではないと判断された場合は、「△」判定とした。一方、未加硫ゴムベルト106の未加硫ゴムの粘着性があり、分割作業に手間を要し、作業能率に影響を与えると判断された場合は、「×」判定とした。その結果、実施例No.1〜No.6、No.9〜No.14、及び比較例No.8については、「○」判定となった。一方、実施例No.7については、「△」判定となった。尚、「△」判定以上である実施例No.1〜No.7、No.9〜No.14については、作業能率への影響が生じる程度ではないことが確認された。
図20に実施結果を示す通り、「冷却手段」が「ミスト噴霧」であって「吹き付け箇所」が「回転刃」又は「回転刃(コーティング刃)」である実施例No.2〜No.7、No.9〜No.14については、未加硫ゴムベルト106の表面に極わずかな水滴しか付着しないことが確認された。よって、実施例No.2〜No.7、No.9〜No.14、によると、余分な水分が未加硫ゴムベルト106に付着してしまうことを効率よく抑制することができる。尚、実施例No.1については、未加硫ゴムベルト106の表面に水滴が付着することが確認された。よって、実施例No.2〜No.7のように、ミスト状の水が未加硫スリーブ105側と反対側に向かって斜めの方向で回転刃36に吹き付けられる形態、或いは、ノズル50aと未加硫スリーブ105との間にカバー48が配置される形態が望ましいことが確認された。
「冷却手段」が「水掛け」であって「吹き付け箇所」が「回転刃+スリーブ」である比較例No.8については、未加硫ゴムベルト106の表面がずぶ濡れとなった。また、比較例No.8で形成した未加硫ゴムベルト106については、表面だけでなく、心線104とゴムとの間にまで水が染み込んだ状態となっていることが確認された。そして、比較例No.8の場合、心線104とゴムとの間に浸透した水分を十分に除去するためには、非常に多くの乾燥時間が必要となることが確認された。
また、図20に実施結果を示す通り、表面に低摩擦コーティングが施されていない回転刃36が用いられ、「冷却手段」が「ミスト噴霧」であって、「水量(L/min)」が0.02L/minであり、「周速比」が1:1.1以上1:16未満の範囲で設定された実施例No.2〜No.6については、「切断後回転刃の未加硫ゴム粘着状態」、「未加硫ゴムベルトの外観」、及び「未加硫ゴムベルトの分割の容易性」のいずれの確認においても、全て「○」判定であり、問題ないことが確認された。尚、表面に低摩擦コーティングが施されていない回転刃36が用いられ、「冷却手段」が「ミスト噴霧」であって、「水量(L/min)」が0.02L/minであり、「周速比」が1:16に設定された実施例No.7については、「切断後回転刃の未加硫ゴム粘着状態」、「未加硫ゴムベルトの外観」、及び「未加硫ゴムベルトの分割の容易性」のいずれの確認においても、「△」判定であった。よって、実施例No.7の条件であっても、その条件で形成された未加硫ゴムベルト106を用いてラップドVベルト100を製造しても品質上の問題は生じず、作業能率への影響もとくに生じないことが確認された。
また、図20に実施結果を示す通り、回転刃本体の表面に低摩擦コーティングが施された回転刃36が用いられ、「冷却手段」が「ミスト噴霧」であって、「水量(L/min)」が0.01L/minであり、「周速比」が1:1.1以上1:16以下の範囲で設定された実施例No.9〜No.14については、「切断後回転刃の未加硫ゴム粘着状態」、「未加硫ゴムベルトの外観」、及び「未加硫ゴムベルトの分割の容易性」のいずれの確認においても、全て「○」判定であり、問題ないことが確認された。
また、上記の結果より、回転刃本体の表面に低摩擦コーティングのコーティング層が設けられた回転刃36を用いる場合、表面に低摩擦コーティングが施されていない回転刃36を用いる場合と比べると、「水量(L/min)」が、半分の0.01L/minであっても、いずれの評価項目でも問題が生じないことが確認された。即ち、低摩擦コーティングの表面処理が施された回転刃36を用いる場合は、「水量(L/min)」が0.01L/minと少なくても、「周速比」が1:1.1以上1:16以下の範囲において、「切断後回転刃の未加硫ゴム粘着状態」、「未加硫ゴムベルトの外観」、及び「未加硫ゴムベルトの分割の容易性」のいずれの確認においても、全て問題ないことが確認された。よって、摩擦抵抗の小さい低摩擦コーティングの表面処理を施した回転刃36を用いると、回転刃36と未加硫スリーブ105との間の発熱を更に抑制でき、表面に低摩擦コーティングが施されていない回転刃36を用いる場合に比して大幅に少ない水量であっても十分に冷却でき、問題無く、未加硫ゴムベルト106を形成できることが確認された。
[実施形態の作用効果]
未加硫ゴムベルト形成装置1によると、回転機構11及び切断機構12が作動し、未加硫スリーブ105が周方向に切断されて未加硫ゴムベルト106が形成される際に、吹き付け機構(13、41、42、43、44、45)によって、回転刃36に対してミスト状の水(霧状の水)が吹き付けられる。また、前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105が周方向に切断されて未加硫ゴムベルト106が形成される際に、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられる。このため、未加硫スリーブ105の切断中に未加硫スリーブ105と回転刃36との間で発生する摩擦熱が、回転刃36に対して吹き付けられたミスト状の水によって効率よく抜熱されることになる。これにより、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇を抑制することができる。
そして、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇を抑制できるため、未加硫スリーブ105の切断中に発煙して作業性の低下を招いてしまうことを抑制することができる。
更に、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇を抑制できるため、未加硫スリーブ105のゴムの粘性の上昇を抑制でき、回転刃36にゴムが粘り付くように付着して粘着し易くなることも抑制できる。そして、所望の寸法通りに未加硫スリーブ106を切断することが容易となり、一つの未加硫ゴムベルト106の周方向において、ベルト幅方向の寸法のばらつきが生じてしまうことを抑制することができる。このため、この未加硫ゴムベルト106を素材として製造されるラップドVベルト100におけるベルト断面の寸法のばらつきが生じてしまうことを抑制でき、ベルト寿命の低下を招いてしまうことも抑制することができる。
更に、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇を抑制し、回転刃36にゴムが粘り付くように付着して粘着し易くなることを抑制できるため、切断中に回転刃36の鋭さが鈍ってしまうことも抑制することができる。このため、未加硫スリーブ105が押し切られるように切断され、未加硫ゴムベルト106の角部分の形状が大きく変形してしまうことを抑制することができる。これにより、加硫されてラップドVベルト100が製造された際に心線104の並びが乱れてしまう現象が生じることも抑制でき、ベルト耐久性の低下を招いてしまうことを抑制することができる。
よって、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫ゴムベルト106の品質の低下を抑制し、更に、未加硫ゴムベルト106を素材として製造されるラップドVベルト100の品質の低下も抑制することができる。
また、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105が周方向に切断されて未加硫ゴムベルト106が形成される際に、回転刃36に対してミスト状の水が吹き付けられる。このため、未加硫ゴムベルト106に対して水分が付着及び浸透することを抑制することができる。これにより、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、ミスト状でない水を切断中の回転刃36にかけながら未加硫スリーブ105を切断して未加硫ゴムベルト106を形成する手法とは異なり、乾燥工程がほぼ不要となる。よって、ラップドVベルト100の製造時に、多くの乾燥時間を要して作業能率の低下を招いてしまうことも抑制できる。
以上説明したように、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇を抑制でき、作業能率の低下を招いてしまうことを抑制できるとともに、未加硫ゴムベルト106の品質の低下を抑制し、更に、未加硫ゴムベルト106を素材として製造されるラップドVベルト100の品質の低下も抑制することができる。
また、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、ミスト状の水が、回転刃36に対して、その両側面において吹き付けられるため、未加硫スリーブ105の切断中に未加硫スリーブ105と回転刃36との間で発生する摩擦熱が、より効率よく抜熱されることになる。これにより、未加硫スリーブ105の切断中における摩擦熱による温度上昇をより効率よく抑制することができる。
また、吹き付け機構(13、41、45)のいずれかを含む未加硫ゴムベルト形成装置1及びその未加硫ゴムベルト形成装置1の作動によって実施される未加硫ゴムベルト形成方法によると、ミスト状の水が、回転刃36に対して、未加硫スリーブ105側と反対側に傾いて吹き付けられる。このため、余分な水分が未加硫スリーブ105に付着してしまうことを効率よく抑制することができる。これにより、余分な水分が付着した状態で未加硫スリーブ105が加硫されてラップドVベルト100の品質の低下を招く虞を効率よく排除することができる。
また、吹き付け機構(43、44、45)のいずれかを含む未加硫ゴムベルト形成装置1及びその未加硫ゴムベルト形成装置1の作動によって実施される未加硫ゴムベルト形成方法によると、ミスト状の水を吹き付けるノズル(50a、50b)と未加硫スリーブ105との間にカバー(48、49、51)が配置されている。このため、余分な水分が未加硫スリーブ105に付着してしまうことを効率よく抑制することができる。これにより、余分な水分が付着した状態で未加硫スリーブ105が加硫されてラップドVベルト100の品質の低下を招く虞を効率よく排除することができる。
また、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が、1.1以上の値に設定されていることで、未加硫スリーブ105が回転刃36によって押し切られるようにして切断されてしまうことを抑制することができる。更に、未加硫ゴムベルト形成装置1及び前述の実施形態に係る未加硫ゴムベルト形成方法によると、未加硫スリーブ105の外周の周速度に対する回転刃36の外周の周速度の比が、16以下の値に設定されていることで、未加硫スリーブ105の切断中における回転刃36へのゴムの粘着を容易に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。