JP2017063720A - 植物栽培装置及び植物栽培方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この植物工場において果樹や果菜のような果実植物の果実の収量をより増やすべく、果実植物の成長をより促進させるための技術として、果実植物の形態形成に作用する光質(光の波長組成)や光強度を制御することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
当該栽培方法によれば、優れた成長促進効果を得ることができる。
このような複雑な成長過程を考慮して、果実植物の成長度合いに応じて人工光の光質や光強度を最適化することができれば、より果実植物の成長を促進させることができる可能性がある。
しかしながら、特許文献1のような植物栽培方法では、植物に対して赤色光を照射するステップと青色光を照射するステップとを一定期間内に複数サイクル行う工夫が開示さなされているものの、あくまで所定の照射時間によって赤色照射と青色照射の切り替えを行っていた。そのため、必ずしも、植物の成長度合いに応じて適切な光質や光強度からなる人工光を照射することができない虞があった。
また、植物に対して光質や光強度の異なる光を複数サイクル照射することは、比較的複雑な制御となる虞があり、また植物にとって光合成ための体内調整に支障を生ずる虞があった。
また本発明の他の目的は、シンプルな工程で植物に対して光質や光強度の異なる光を照射することで、当該植物の成長を促進させることが可能な植物栽培装置及び植物栽培方法を提供することにある。
具体的に説明すると、植物の成長度合いに応じて光照射部を制御するにあたって、まず植物に対して白色光のみを照射することで、植物の栽培初期(栄養成長期)に重要となる葉数や葉身長の増加を促すことができる。
その後、植物に対して白色光と青色光を同時に照射することで、植物の葉数や葉身長の増加を促しながら、同時に生殖成長期の初期に重要となる主茎の花芽形成や開花を促すことができる。
その後、植物に対して白色光と赤色光を同時に照射することで、植物の葉数や葉身長の増加を促しながら、同時に生殖成長期の後期に重要となる脇芽の形成、脇芽からの花芽形成や開花を促すことができる。その結果、主茎から枝(脇茎)にかけて長期間にわたり植物の成長を促進させることができる。
また上記構成により、1サイクルのシンプルな工程で植物に対して光質の異なる光を効果的に照射することで、当該植物の成長を促進させることができる。
上記構成により、植物の中で、特に成長過程が比較的複雑で、収穫までの栽培期間が長くなる果実植物の成長を効果的に促進させることができる。その結果、主茎から枝にかけて長期間にわたって果実を収穫することができ、収量を増加させることができる。
上記構成により、主茎の葉が所定以上の大きさとなって、花芽の形成直前となったときに(生殖成長期の直前となったとき)に白色光と青色光を同時に照射することができ、植物の葉数や葉身長の増加に加えて主茎の花芽形成や開花を促すことができる。
また、植物の主茎の花芽が開花を終えて、果実の肥大が始まるタイミングとなったときに白色光と赤色光を同時に照射することができ、植物の葉数や葉身長の増加に加えて脇芽の形成、脇芽からの花芽形成や開花を促すことができる。その結果、より植物の成長過程を考慮した植物栽培装置となる。
また、前記青色光及び前記赤色光の光強度が、50〜70μmol/m2sの光合成光量子束密度であると良い。
上記構成により、植物に対して光質だけでなく光強度の異なる光を効果的に照射することで、当該植物の成長を一層促進させることができる。
上記構成により、より精度の高い切り替えタイミングによって光照射部の制御を実行することができ、植物の成長を一層促進させることができる。
なお、植物の成長度合いに応じて変化する物性値の検出方法としては、例えば植物の形態を画像センシングによって検出する方法や、植物のエチレン濃度を検出する方法、植物の花に紫外線を照射したときの紫外線反射率を検出する方法等が考えられる。
また、シンプルな工程で植物に対して光質や光強度の異なる光を照射することで、当該植物の成長を促進させることができる。
本実施形態は、果実植物に対して白色光を照射する白色光照射部と、青色光を照射する青色光照射部と、赤色光を照射する赤色光照射部と、を有する光照射部と、果実植物の成長度合いに応じて光照射部を制御する光制御部と、を備えており、光制御部は、白色光照射を行う第1制御と、白色光照射と青色光照射を同時に行う第2制御と、白色照射と赤色照射を同時に行う第3制御と、を順に1サイクル実行することを特徴とする植物栽培装置の発明に関するものである。
植物栽培装置1は、内部環境をコントロールした閉鎖的又は半閉鎖的な空間内(植物工場内)で果実植物を計画的に生産するために用いられるものである。
植物栽培装置1は、図1に示すように、略直方体状の比較的小型な箱体からなり、果実植物栽培用の栽培トレイを載置するための栽培装置本体10と、栽培装置本体10の上方部分に取り付けられ、栽培トレイに植えられた果実植物に対して光質や光強度の異なる光を真上から照射する光照射部20と、果実植物の成長度合いに応じて光照射部20を制御する光制御部30と、をから主に構成されている。
光制御部30は、果実植物の成長度合いに応じて変化する物性値を検出する検出センサ31、32を備えており、検出センサ31、32から当該物性値に基づく検出信号を受信して、光照射部20に制御信号を送信することで、光照射部20の制御を実行している。
そして光制御部30は、検出センサ31によって検出された物性値が第1の閾値に到達したときに第1制御を終えて第2制御を開始し、また、検出センサ32によって検出された物性値が第2の閾値に到達したときに第2制御を終えて第3制御を開始する。
本実施例の検出センサ31は、果実植物において主茎の最も大きな葉(例えば上から3番目の位置にある葉)を対象物とし、当該葉の大きさを物性値として検出する。
そして光制御部30は、主茎の最も大きな葉が所定の大きさ(例えば約5cm)に到達したときを第1の閾値に到達したものと判断して、第1制御を終えて第2制御を開始する。
本実施例の検出センサ32は、栽培装置本体10内の果実植物のエチレン濃度の値、特に果実植物の主茎近辺のエチレン濃度の値を物性値として検出する。
そして光制御部30は、果実植物のエチレン分泌量がその成熟過程を通して変化していくことを利用して、主茎の花芽(例えば上から3番目の位置にある花芽)が開花を終えて果実の肥大が始まるタイミングとなるエチレン濃度の所定値を第2の閾値として設定し、当該第2の閾値に到達したときに第2制御を終えて第3制御を開始する。
次に、光照射部20の光質(光色)及び光強度の詳細について説明する。
白色光照射部21によって照射される白色光は、青色光及び赤色光を含む可視光線の全ての波長の光が均等に混ざった光であって、本実施例においては、その光強度が約160〜180μmol/m2sの光合成光量子束密度で設定されている。
植物の光合成にはクロロフィル(葉緑素)と呼ばれる色素が大きく関与しており、植物の光反応の作用スペクトルによると赤色光(波長が約660nm近辺)と青色光(波長が約450nm近辺)において2つの吸光合収ピークが存在し、これらの波長が光合成に特に有効であることが分かっている。つまり、植物の健全な生育には赤色光と青色光がバランスよく配合された白色光を照射しておくことが望ましい。
本実施例においては、図2に示すように、果実植物の栽培初期から栄養成長期、生殖成長期を経て栽培後期まで常に白色光を照射している。そのため、果実植物の生育を長期にわたって促進させることができる。特に、白色光の照射によって果実植物の葉数、葉身長の増加を促すことができる。
青色光の照射は、植物に対して主茎の花芽形成、開花を促進させることができる。
メカニズムを簡単に説明すると、植物に青色光を照射することで、まず植物体内にある青色光受容体タンパク質の一つであるクリプトクロムが活性化し、植物体内にCOタンパク質が安定して蓄積する。COタンパク質は、花成ホルモンに関与するFT遺伝子の転写を促進させることから、結果として花成ホルモンが促進されることになる。
本実施例においては、図2に示すように、果実植物の生殖成長期の直前となったとき、具体的には主茎の葉が所定以上の大きさとなって、花芽の形成直前となったときに白色光の補光として青色光を同時照射している。そのため、生殖成長期の初期に重要となる主茎の花芽形成や開花を促すことができる。
赤色光の照射は、植物に対して脇芽の形成、脇芽からの花芽形成や開花を促進させることができる。
メカニズムを簡単に説明すると、植物に赤色光を照射すると、まず植物体内にある赤色光受容体タンパク質の一つであるフィトクロムが活性化し、植物体内で植物ホルモンであるジベレリンの合成が誘導される。植物体内にジベレリンが蓄積し活性化することで、脇芽の成長を促進させ、さらに脇芽からの花成を促進させることができる。
本実施例においては、図2に示すように、果実植物の生殖成長期の後期となったとき、具体的には植物の主茎の花芽が開花を終えて、果実の肥大が始まるタイミングとなったときに白色光の補光として赤色光を同時照射している。そのため、生殖成長期の後期に重要となる脇芽の形成、脇芽からの花芽形成や開花を促すことができる。
本実施例においては、青色光照射部22による青色補光と、赤色光照射部23による赤色補光とをそれぞれ独立して順番に光照射している。そのため、光周期依存促進経路とジベレリン依存促進経路とをタイミングをずらして促進させることができ、花芽形成を断続的に行うことができる。
また、白色光と同時に赤色光を照射するときには、白色光と赤色光との光強度比が、2:1〜4:1、望ましくは、2.2:1〜3.6:1であることが望ましい。
上記実施形態の植物栽培装置1では、果樹や果菜等の果実植物を栽培するために用いられているが、果実植物の栽培に特に限定されることなく、広く植物を栽培するために用いられても良い。
望ましくは、ベリー類、イチジク、オリーブ、カキ、柑橘類、キウイ、クリ、ビワ、フェイジョア、ブドウ、またはリンゴ等の果樹類を栽培するために用いられると良い。これら果樹類は、葉芽が花芽とほぼ同時に、または先に萌芽する植物になるためである。
また望ましくは、長日植物や短日植物に分類される果菜類を栽培するために用いられると良い。一方で、日長に関係なく開花、結実する中日植物については、光に対する感度や光受容体の花芽形成への寄与の仕方が異なり、本発明の効果が得られない可能性がある。
例えば照射光に対する青色光の発光強度比が60%以上であれば、青色光以外の光を含んでいても良い。
同様に、赤色光照射部23による照射光は、照射光に対する赤色光の発光強度比(光の成分比)が100%であるが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば照射光に対する赤色光の発光強度比が60%以上であれば、赤色光以外の光を含んでいても良い。特に限定されることなく変更可能である。
以下、本発明の実施例について詳しく説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
本実施例の果実植物としてラズベリー(インディアンサマー)とラズベリー(ヘリテージ)を採用した。どちらも、冬期休眠中の苗木を購入し、植物工場内において休眠から覚醒させた。植物工場内の気温は明期20℃、暗期15℃、明期14時間、暗期10時間に設定した。
白色光照射部21を光源として植物の真上から白色光を全体に照射し、同時に葉が約5cm程度の大きさに達した萌芽部の葉に青色光照射部22による青色光を補光した。
青色光は、萌芽部のみに局所的に照射し、かつ、葉が照明熱によって葉焼けを起こさないように葉表面から光照射部20までの距離を約5cm程度あけた。
青色光による補光を白色光の点灯と同時に行い、白色光のみの光強度は葉表面で160〜180μmol/m2sとし、青色光のみの光強度は葉表面で約50〜70μmol/m2sとした。
上記植物工場内にてラズベリー(インディアンサマー)を栽培し、青色補光の照射開始から21日後に、補光を与えていないControl区(Control)と、補光を与えたBlue区(Blue)とで花芽数を比較した。
本試験において、Control区にはラズベリー3株を、Blue区には1株を供試した。
試験結果を図3に示す。青色光による補光を与えたBlue区では、Control区の約2倍の花芽数となった。
試験例1−1と同様の試験条件で試験を行い、試験例1−1の試験結果の再現性を確認した。
本試験において、Control区、Blue区共にラズベリー3株を供試した。
試験結果を図4に示す。青色光による補光を与えたBlue区では、Control区の約5倍の花芽数となった。
試験例1−1と同様の試験条件で試験を行い、試験例1−1、1−2の試験結果がラズベリーの異なる品種(ヘリテージ)であっても適用可能であるか確認した。
本試験において、Control区、Blue区共にラズベリー(ヘリテージ)1株を供試した。
試験結果を図5に示す。試験例1−1、1−2の試験結果と同様に、Blue区では、Control区よりも多くの花芽を形成していた。
試験例1−1〜1−3の試験結果から、光強度が約50〜70μmol/m2sの青色光の補光によってラズベリーの花芽の形成が促進されたことが分かった。
詳しく言うと、ラズベリーの葉が約5cm程度の大きさとなって花芽の形成直前となったときに(生殖成長期の直前となったとき)に、ラズベリーに対して白色光と青色光を同時に照射することで、ラズベリーの花芽の形成が促進されたことが分かった。
白色光照射部21を光源として植物の真上から白色光を全体に照射し、同時に葉が約5cm程度の大きさに達した萌芽部の葉に赤色光照射部23による赤色光を補光した。
赤色光は、萌芽部のみに局所的に照射し、かつ、葉が照明熱によって葉焼けを起こさないように葉表面から光照射部20までの距離を約5cm程度あけた。
赤色光による補光を白色光の点灯と同時に行い、白色光のみの光強度は葉表面で160〜180μmol/m2sとし、赤色光のみの光強度は葉表面で約50〜70μmol/m2sとした。
上記植物工場内にてラズベリー(インディアンサマー)を栽培し、赤色補光の照射開始から21日後と42日後に、補光を与えていないControl区(Control)と、補光を与えたRed区(Red)とで花芽数を比較した。
本試験において、Control区、Red区共にラズベリー1株を供試した。
試験結果を図6に示す。補光開始から21日後、赤色光による補光を与えたRed区とControl区の間には花芽数の差はなかった。補光開始から42日後、Red区ではControl区の約2倍の花芽数となった。
試験例2−1と同様の試験条件で試験を行い、試験例2−1の試験結果がラズベリーの異なる品種(ヘリテージ)であっても適用可能か確認した。
本試験において、Control区、Red区共にラズベリー(ヘリテージ)1株を供試した。
試験結果を図7に示す。試験例2−1の試験結果と同様に、補光開始から21日後、Red区とControl区の間に花芽数の差はなかった。補光開始から42日後、Red区ではControl区よりも多くの花芽を形成していた。
試験例2−1、2−2共に赤色光を照射したRed区の花芽数が増加した理由についてラズベリーを観察したところ、主茎から脇芽が多く発生し、その脇芽に花芽が多く形成されていた。
試験例2−1、2−2の試験結果及び上記観察結果から、光強度が約50〜70μmol/m2sの赤色光による補光は、ラズベリーの脇芽成長を促進し、青色補光よりも時間をかけて花芽数の増大に効果を示すことが分かった。
詳しく言うと、ラズベリーの主茎の花芽が開花を終えて、果実の肥大が始まるタイミングとなったとき(生殖成長期の後期となったとき)に、ラズベリーに対して白色光と赤色光を同時に照射することで、ラズベリーの脇芽の形成、脇芽成長が促進されたことが分かった。
10 栽培装置本体
20 光照射部
21 白色光照射部
22 青色光照射部
23 赤色光照射部
30 光制御部
31、32 検出センサ(検出部)
40 電源
Claims (7)
- 植物に対して白色光を照射する白色光照射部と、青色光を照射する青色光照射部と、赤色光を照射する赤色光照射部と、を有する光照射部と、
前記植物の成長度合いに応じて前記光照射部を制御する光制御部と、を備え、
該光制御部は、
前記白色光照射部による白色光照射を行う第1制御と、
前記白色光照射部による白色光照射と、前記青色光照射部による青色光照射とを同時に行う第2制御と、
前記白色光照射部による白色照射と、前記赤色光照射部による赤色照射とを同時に行う第3制御と、を順に1サイクル実行することを特徴とする植物栽培装置。 - 前記植物は、果実を有する果実植物であることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
- 前記光制御部は、
前記植物において主茎の葉が所定以上の大きさとなったときに前記第1制御を終えて前記第2制御を開始し、
前記植物において主茎の花芽が開花を終えたときに前記第2制御を終えて前記第3制御を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置。 - 前記第2制御において前記白色光と前記青色光との光強度比が、2:1〜4:1であり、
前記第3制御において前記白色光と前記赤色光との光強度比が、2:1〜4:1であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。 - 前記青色光及び前記赤色光の光強度が、50〜70μmol/m2sの光合成光量子束密度であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
- 前記光制御部は、
前記植物の成長度合いに応じて変化する物性値を検出する検出部を備え、
該検出部によって検出された前記物性値が第1の閾値に到達したときに前記第1制御を終えて前記第2制御を開始し、
前記検出部によって検出された前記物性値が第2の閾値に到達したときに前記第2制御を終えて前記第3制御を開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の植物栽培装置。 - 植物の成長度合いに応じて前記植物に対して所定の光を照射する植物栽培方法であって、
白色光照射を行う第1工程と、
白色光照射と、青色光照射とを同時に行う第2工程と、
白色照射と、赤色照射とを同時に行う第3工程と、を備え、
前記第1工程から前記第3工程までの工程を1サイクル行うことを特徴とする植物栽培方法。
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