JP2017063669A - 合成ペプチドを用いた神経幹細胞の生産方法 - Google Patents

合成ペプチドを用いた神経幹細胞の生産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】線維芽細胞を分化転換(ダイレクトプロミング)を行って、神経幹細胞を生産するために用いる神経幹細胞生産用組成物の提供。
【解決手段】線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む人為的に合成した合成ペプチドと、薬学的に許容可能な1種または2種以上の担体と、を含む神経幹細胞用組成物。前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列は、以下の(i)〜(iii)に示すアミノ酸配列のいずれかである。(i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列(ii)前記(i)のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列(iii)前記(i)又は(ii)のアミノ酸配列の改変アミノ酸配列
【選択図】図1

Description

本発明は、線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる組成物に関する。特に、線維芽細胞を神経幹細胞へ分化誘導し得る合成ペプチド、即ち、前記組成物に用いられる合成ペプチドに関する。また、かかる合成ペプチド(或いは上記組成物)を用いて線維芽細胞から神経幹細胞を生産する方法に関する。
再生医療分野における一つの課題として、種々の神経系疾患や外傷等により失われた神経機能の再生および回復が挙げられる。
例えば、生体外(インビトロ)培養系で生産した神経細胞を患部に移入することで、脱落した神経細胞を補う方法が模索されている。しかし、すでに神経軸索を伸長した神経細胞を患部(例えば脳などの中枢神経系組織)に移入したとしても、損傷以前の神経ネットワークを再構築することは困難な場合があった。また、特に中枢神経系組織は、神経細胞とそれ以外の種々の細胞(例えばアストロサイト等)が影響し合う生理学的環境を構成することにより神経機能を発揮、維持しているため、神経細胞のみの補充で失われた神経機能を回復させることは難しい場合があった。
そこで、神経幹細胞を利用した神経機能の再生技術および回復技術の確立が期待されている。例えば、患部(例えば脳などの中枢神経系組織)に神経幹細胞を移入すること若しくは内在性の神経幹細胞の再生能力を利用することにより、生体内(典型的には患部)において必要な細胞(例えば神経細胞やアストロサイト等)に分化させ、それにより脱落した細胞を補充し、神経ネットワークおよび生理学的環境を再構築することで、神経機能回復を実現する方法の開発が期待されている。
患部に移入可能な神経幹細胞の入手方法としては、脳組織から単離する方法、または、胚性幹細胞(ES細胞、embryonic stem cell)や誘導多能性幹細胞(iPS細胞、induced pluripotent stem cell)等の多能性幹細胞から誘導する方法が挙げられる。しかし、脳内の神経幹細胞を利用する方法やES細胞から誘導する方法は、倫理的課題や拒絶反応の課題等から実用が困難である。また、iPS細胞から誘導する方法についても、安全性や効率、コストの観点から、実用化への課題が残る。
そこで、近年、多能性幹細胞(例えばiPS細胞)を作製する手順を踏まず、体細胞から目的の細胞(例えば神経幹細胞)を直接作製する手法(「ダイレクトリプログラミング」ともいう)の開発に注目が集まっている。例えば、特許文献1および非特許文献1、2には、体細胞に特定の遺伝子を導入することで、該体細胞を神経幹細胞(或いは神経細胞)に分化転換(運命転換)する技術、即ち、該体細胞を神経幹細胞(或いは神経細胞)にダイレクトリプログラミングする技術について記載されている。
特表2013−535973号公報 国際公開第2009/093692号
ネイチャー(Nature)、463巻、2010年、pp.1035−1041 ネイチャー(Nature)、476巻、2011年、pp.220−223 ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(The Journal of Neuroscience)、26巻、2006年、pp.1551−1561
上記特許文献1および非特許文献1、2に記載の方法は、所定の体細胞に特定の遺伝子を導入することで当該体細胞を神経幹細胞(或いは神経細胞)に分化転換する(ダイレクトリプログラミングする)方法であるため、上記導入遺伝子がゲノムへ組み込まれる可能性(遺伝子挿入の可能性)、およびそれに伴う腫瘍発生の可能性、遺伝子導入などの操作の煩雑性、神経幹細胞(或いは神経細胞)の誘導効率等の課題が存在する。
本発明は、従前のダイレクトリプログラミングによる神経幹細胞の生産方法とは異なり、人為的に合成可能な比較的短い鎖長のペプチドを用いて線維芽細胞から神経幹細胞を作製する(直接的に作製する)方法を提供することを目的とする。また、線維芽細胞を神経幹細胞に分化転換(即ち、ダイレクトリプログラミング)する目的に資する合成ペプチドの提供および該合成ペプチドを含む組成物(即ち、線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる神経幹細胞生産用組成物)の提供を他の目的とする。
本発明者らは、線維芽細胞から神経幹細胞を生産する方法に使用可能なペプチドを得るため、種々のペプチドの研究を鋭意推進した。そして、驚くべきことに、従来は細胞の初期化および分化誘導とは全く関係のない機能で知られていたタンパク質である、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein:APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列(以下シグナルペプチド配列ともいう)の全部又は一部のアミノ酸配列を含むように合成したペプチドが、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP(glial fibrillary acidic protein)共発現細胞)に分化転換し得る(即ちダイレクトリプログラミングし得る)能力(以下、「神経幹細胞誘導活性」ともいう)を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで、APPのファミリーに属するタンパク質の典型例としては、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein:APP)およびAPPの類縁のタンパク質である2種のアミロイド前駆体様タンパク質(Amyloid Precursor-Like Protein 1:APLP1、Amyloid Precursor-Like Protein 2:APLP2)が挙げられる。
本発明によって、線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる組成物(神経幹細胞生産用組成物)を提供する。かかる組成物は、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む人為的に合成した合成ペプチドと、薬学的に許容可能な1種または2種以上の担体(例えば上記ペプチドの安定性向上に資する少なくとも1種の基材、或いは生理食塩水や各種の緩衝液等の液状媒体)とを含む。ここで、上記神経幹細胞誘導性ペプチド配列は、以下の(i)〜(iii)に示すアミノ酸配列:
(i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
(ii)上記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および
(iii)上記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(好ましくは同類置換)されて形成された改変アミノ酸配列;
のうちのいずれかのアミノ酸配列である。
なお、本明細書において、神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む合成ペプチド(即ち神経幹細胞誘導活性を有する合成ペプチド)を「神経幹細胞誘導性合成ペプチド」とも呼ぶ。
また、本明細書において、APPファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列又は該シグナルペプチド配列中の部分アミノ酸配列(即ち上記シグナルペプチド配列のうちの一部分の連続した部分配列)を総称して「APPシグナルペプチド関連配列」とも呼称する。
ここで開示される神経幹細胞生産用組成物は、神経幹細胞誘導性合成ペプチドを含むため、例えば、対象の線維芽細胞(典型的には当該細胞を培養する培地中)に該神経幹細胞生産用組成物を供給するという簡易な処理を行うことによって、対象の線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に誘導することができる。
また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物に含まれる神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、単純な構造(典型的には直鎖状のペプチド)であり、化学合成(若しくは生合成)によって容易に人為的に製造され得る。このため、所望量の神経幹細胞生産用組成物を容易に、或いは低コストで、調製することができる。また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を用いると、高価なサイトカイン等の液性因子を大量に使用することなく(典型的には液性因子の代替物として)線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することができる。
なお、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を用いると、外来遺伝子の導入を伴うことなく線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することができる。このため、外来遺伝子がゲノムDNAに組み込まれる心配がない。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物は、上記アミロイド前駆体タンパク質ファミリーに属するタンパク質が、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体様タンパク質1、またはアミロイド前駆体様タンパク質2のいずれかである。
上記アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体様タンパク質1、またはアミロイド前駆体様タンパク質2はいずれもAPPファミリーに属するタンパク質の典型例である。これらのタンパク質のAPPシグナルペプチド関連配列および該配列の改変アミノ酸配列を有する合成ペプチドは、神経幹細胞誘導活性を有するペプチドの典型例であり、本発明の実施に好適に採用することができる。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物は、上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドに含まれる神経幹細胞誘導性ペプチド配列が、以下のi)〜vi)に示すいずれかのアミノ酸配列から設定されることで特徴付けられる。
i)以下の配列番号1のアミノ酸配列:
MAATGTAAAAATGRLLLLLLVGLTAPALA(配列番号1);
または、配列番号1に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号16に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
ii)以下の配列番号2のアミノ酸配列:
MAATGTAAAAATGKLLVLLLLGLTAPAAA(配列番号2);
または、配列番号2に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号17に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
iii)以下の配列番号3のアミノ酸配列:
MGPASPAARGLSRRPGQPPLPLLLPLLLLLLRAQPAIG(配列番号3);
または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号18に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号19に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
iv)以下の配列番号4のアミノ酸配列:
MGPTSPAARGQGRRWRPPLPLLLPLSLLLLRAQLAVG(配列番号4);
または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号20に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号21に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
v)以下の配列番号5のアミノ酸配列:
MLPGLALLLLAAWTARA(配列番号5);
または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号22に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号23に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
vi)以下の配列番号6のアミノ酸配列:
MLPSLALLLLAAWTVRA(配列番号6);
または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号24に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列。
配列番号1〜6として開示されるアミノ酸配列は、APPファミリーに属するタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列の典型例である。また、配列番号1〜6に示すアミノ酸配列及びここに開示される当該アミノ酸配列の部分アミノ酸配列(配列番号16〜25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列)はAPPシグナルペプチド関連配列の典型例である。これらのアミノ酸配列またはその改変アミノ酸配列を含むペプチドは、高い神経幹細胞誘導活性を有するペプチドであり、本発明の実施に好適に採用することができる。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物では、前記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、上記神経幹細胞誘導性ペプチド配列のアミノ酸配列のN末端側若しくはC末端側に膜透過性ペプチド配列を有する。
このような膜透過性ペプチド配列を有する上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドを対象の線維芽細胞に(典型的には培地中に)添加することによって、上記神経幹細胞誘導性ペプチド配列を該線維芽細胞の外部(細胞膜の外側)から細胞内に高効率に移送することができる。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物では、前記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、上記膜透過性ペプチド配列として以下のアミノ酸配列:
KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)
を有する。
配列番号7としてここで開示されるアミノ酸配列は、膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列の典型例であり、本発明の実施に好適に採用することができる。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物では、前記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が100以下である。より好ましくは、神経幹細胞誘導性合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数は50以下である。
このような短いペプチド鎖からなるペプチドは、構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)が高く、取扱い性や保存性に優れる。さらに、このような短いペプチド鎖のペプチドは化学合成が容易であり、比較的安価な製造コストで製造(入手)可能である。このため、かかるペプチドは、ここで開示する神経幹細胞生産用組成物の成分として好ましく使用し得る。また、かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドを使用して神経幹細胞を生産することで、神経幹細胞の生産コストの削減や神経幹細胞の生産効率の向上等を実現し得る。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物では、前記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を有する。
かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する効率が特に高い。なかでも、ヒト由来の線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する能力に優れている。このため、かかるペプチドは、ここで開示する神経幹細胞生産用組成物の成分として好ましく使用することができる。
また、ここで開示される好ましい一態様の神経幹細胞生産用組成物では、上記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である。
ヒト由来の細胞から生産された神経幹細胞は、医療分野(特に、再生医療分野、新薬開発分野、基礎医学分野等)での利用価値が極めて高い。また、皮膚(特に真皮)には線維芽細胞が豊富に存在し、必要量の細胞を比較的容易に確保し得るため、皮膚由来の線維芽細胞は対象細胞として好ましい。
また、本発明は、他の側面として、線維芽細胞から神経幹細胞をインビトロ(in vitro)あるいはインビボ(in vivo)において生産する方法を提供する。かかる神経幹細胞の生産方法は、対象の線維芽細胞を含む細胞培養物を準備すること、および、上記細胞培養物中に、人為的に製造した合成ペプチドを供給すること、を包含する。ここで、前記合成ペプチドは、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む合成ペプチドである。そして、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列は、以下の(i)〜(iii)に示すアミノ酸配列:
(i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
(ii)前記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および、
(iii)前記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(好ましくは同類置換)されて形成された改変アミノ酸配列;
のうちのいずれかのアミノ酸配列である。
換言すると、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、対象の線維芽細胞を含む細胞培養物を準備すること、および、上記細胞培養物中に、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドのいずれか(即ち、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物のいずれか)を供給すること、を包含する。
ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、対象の線維芽細胞(典型的には当該細胞を培養する培地中)に神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む合成ペプチドを供給するという簡易な手法によって線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に誘導することが出来る。具体的には、多能性幹細胞(例えばiPS細胞等)を作製する手順を踏むことなく、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導(線維芽細胞から神経幹細胞を直接的に作製)することができる。このため、適当な体細胞を多能性幹細胞にリプログラミング(初期化)した後で該多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導する手法と比べて、短期間に効率よく神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産することができる。また、かかる神経幹細胞の生産方法は、高い再現性をもって線維芽細胞を神経幹細胞に誘導し得るため、神経幹細胞の生産方法として好ましい。
また、かかる神経幹細胞の生産方法は、遺伝子導入を必要としないため、生産される神経幹細胞のゲノム中に外来遺伝子が挿入される心配がない。また、特定の遺伝子を対象細胞に導入する操作の煩雑性および遺伝子導入にかかるコストを低減することができる。
また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法の好ましい一態様では、上記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である。上述のとおり、ヒト由来の細胞から神経幹細胞を生産する方法は、医療産業上の利用価値が極めて高い。また、皮膚(特に真皮)の線維芽細胞を対象細胞とすることで、所望量の線維芽細胞を比較的容易に確保し得る。
一実施形態に係る神経幹細胞誘導性合成ペプチド(サンプル1)の存在下で18日間培養した線維芽細胞の形態およびネスチン(Nestin)タンパク質の発現を調べた顕微鏡写真(画像)である。DICの列(左の列)の写真(画像)は線維芽細胞の形態を示す光学顕微鏡写真(画像)であり、NESTINの列(右の列)の写真(画像)は該線維芽細胞(同一視野)におけるネスチンの発現を示す蛍光顕微鏡写真(画像)である。 一実施形態に係る神経幹細胞誘導性合成ペプチド(サンプル1)の存在下で18日間培養した線維芽細胞の形態およびGFAPの発現を調べた顕微鏡写真(画像)である。DICの列(左の列)の写真(画像)は線維芽細胞の形態を示す光学顕微鏡写真(画像)であり、GFAPの列(右の列)の写真(画像)は該線維芽細胞(同一視野)におけるGFAPの発現を示す蛍光顕微鏡写真(画像)である。 神経幹細胞誘導性合成ペプチドを添加せずに18日間培養した線維芽細胞の形態およびネスチンタンパク質の発現を調べた顕微鏡写真(画像)である。左の写真(画像)は線維芽細胞の形態を示す光学顕微鏡写真(画像)であり、右の列の写真(画像)は該線維芽細胞(同一視野)におけるネスチンの発現を示す蛍光顕微鏡写真(画像)である。 神経幹細胞誘導性合成ペプチドを添加せずに18日間培養した線維芽細胞の形態およびGFAPの発現を調べた顕微鏡写真(画像)である。左の写真(画像)は線維芽細胞の形態を示す光学顕微鏡写真(画像)であり、右の写真(画像)は該線維芽細胞(同一視野)におけるGFAPの発現を示す蛍光顕微鏡写真(画像)である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項(例えばここで開示される合成ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチドの化学合成法、細胞培養技法、ペプチドを成分とする薬学的組成物の調製に関するような一般的事項)は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、遺伝学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、場合に応じてアミノ酸をIUPAC-IUBガイドラインで示されたアミノ酸に関する命名法に準拠した1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
また、本明細書において「合成ペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみ独立して自然界に安定的に存在するものではなく、人為的な化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって製造され、所定の組成物(例えば線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いられる神経幹細胞生産用組成物)中で安定して存在し得るペプチド断片をいう。
また、本明細書において「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されないが、典型的には全アミノ酸残基数が概ね200以下(好ましくは100以下、例えば50以下)のような比較的分子量の小さいものをいう。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する機能(例えば上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドが有する神経幹細胞誘導活性、後述する膜透過性ペプチド配列が有する膜透過性能)を損なうことなく、1個から数個のアミノ酸残基、例えば、1個、2個、または3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個、2個、または3個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列:例えばリジン残基とアルギニン残基との相互置換)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個、2個、または3個のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。従って、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドには、各配列番号のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列で構成される合成ペプチドに加え、各配列番号のアミノ酸配列において1個、2個、または3個のアミノ酸残基が置換(例えば上記同類置換)、欠失及び/又は付加したアミノ酸配列であって、同様に神経幹細胞誘導活性を示すアミノ酸配列からなる合成ペプチドを包含する。
また、本明細書において「神経幹細胞」とは、自己複製能を有し、1以上、好ましくは2以上の神経系細胞、またはそれらの細胞から構成される組織等に分化し得る細胞をいう。なお、上記「神経系細胞」とは、神経系(中枢神経および末梢神経)を構成する細胞を意味し、典型例として神経細胞(所謂ニューロン)、およびグリア細胞(例えばアストロサイト、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞等)が挙げられる。本明細書において、神経幹細胞は、神経幹細胞で特徴的に発現することが知られている遺伝子(所謂神経幹細胞マーカー遺伝子)を発現することで特徴づけられる細胞であり得るが、上記の能力を有している限り、それに限定されない。
上記神経幹細胞マーカー遺伝子の典型例としては、ネスチンおよびGFAPが挙げられるが、神経幹細胞で特徴的に発現することが知られている遺伝子であれば特に限定されない。即ち、上記神経幹細胞は、少なくともネスチン(好ましくはネスチンおよびGFAPの両方)を発現することで特徴づけられる細胞であり得る。典型的には、上記神経幹細胞マーカー遺伝子(例えばネスチン、好ましくはネスチンおよびGFAPの両方)の遺伝子産物であるmRNA或いはタンパク質(以下、神経幹細胞マーカータンパク質ともいう)の存在を確認し得る細胞である。なお、生体(典型的には成体)の脳内に存在する神経幹細胞はネスチンおよびGFAPの両方を発現していることが確認されている(非特許文献3)。このことから、ネスチンおよびGFAPを両方発現している神経幹細胞は、生体脳内に存在する神経幹細胞により近い細胞であるため好ましい。
ここで開示される神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)の生産方法は、神経幹細胞誘導活性を有する合成ペプチド(即ち神経幹細胞誘導性合成ペプチド)を対象の線維芽細胞(典型的には該細胞の培養物中)に供給することを特徴とする生産方法である。具体的には、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、多能性幹細胞を作製する手順を踏むことなく線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する、即ち、線維芽細胞を神経幹細胞に分化転換する(換言すると線維芽細胞を神経幹細胞にダイレクトリプログラミングする)ことによって、線維芽細胞から神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産する方法である。
なお、上記神経幹細胞の生産方法は、インビトロ培養系における神経幹細胞の生産に限定されず、生体内(インビボ)における神経幹細胞の産生或いは神経幹細胞の産生促進にも適応可能である。
また、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物は、線維芽細胞から神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産するために用いられる組成物である。具体的には、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドの少なくとも1種を有効成分(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞へ分化誘導することに関与する物質)として含むことで特徴付けられる組成物である。
上述のとおり、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、線維芽細胞(典型的には該細胞を培養している培地中)に供給されたときに、該線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に誘導し得る(即ち、神経幹細胞誘導活性を有する)ことが本発明者によって見出された神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む合成ペプチドである。換言すると、上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、線維芽細胞を神経幹細胞に分化転換し得る(即ちダイレクトリプログラミングし得る)。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドにおいて、上記神経幹細胞誘導性ペプチド配列は、APPファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチド配列又は該シグナルペプチド配列の部分アミノ酸配列(即ち、APPシグナルペプチド関連配列)、又はこれらのアミノ酸配列の改変アミノ酸配列から選択される。
ここで、APPファミリーに属するタンパク質とは、典型的にはAPP、APLP1、またはAPLP2をいう。APPとは、アルツハイマー病の発症機序の一説であるアミロイド仮説において、いわばアルツハイマー病の出発物質ともいうべきタンパク質であり、APLP1およびAPLP2は当該APPの類縁タンパク質として知られるタンパク質である。
本発明の実施に当たって好ましく使用されるAPPファミリーに属するタンパク質のシグナルペプチド配列は、配列番号1〜6にそれぞれ示されている。
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成する合計29アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号2のアミノ酸配列は、マウス由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成する合計29アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号3のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPLP1のシグナルペプチドを構成する合計38アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号4のアミノ酸配列は、マウス由来のAPLP1のシグナルペプチドを構成する合計37アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号5のアミノ酸配列は、ヒト由来のAPPのシグナルペプチドを構成する合計17アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
また、配列番号6のアミノ酸配列は、マウス由来のAPPのシグナルペプチドを構成する合計17アミノ酸残基から成るアミノ酸配列である。
そして、本発明の神経幹細胞誘導性合成ペプチドを構成するに当たっては、神経幹細胞誘導性ペプチド配列として、上記配列番号1〜6に示すアミノ酸配列をそのまま適用することができる。
なお、上記の配列番号1〜6には、ヒトもしくはマウス由来のAPP、APLP1、若しくはAPLP2のシグナルペプチド配列を示したが、当該配列はあくまでも例示であり、利用可能なアミノ酸配列はこれに限定されない。例えば、ラット、モルモット等の齧歯類、ウマ、ロバ等の奇蹄類、ブタ、ウシ等の偶蹄類、チンパンジー、オランウータン、カニクイザル等の霊長類等(典型的には哺乳動物)に由来する種々のAPP、APLP1若しくはAPLP2のシグナルペプチド配列を使用可能である。
或いは、神経幹細胞誘導性ペプチド配列として、APPファミリーに属するタンパク質のシグナルペプチド配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列(以下、単に部分アミノ酸配列ともいう)を使用することができる。例えば、本発明の実施にあたっては、配列番号16〜25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列を神経幹細胞誘導性ペプチド配列として好適に使用することができる。
ここで、本明細書において「少なくとも有する」とは、特定の連続したアミノ酸残基(典型的には配列番号16〜25に示すいずれかのアミノ酸残基)を必須のアミノ酸配列として有し、それよりもC末端側のアミノ酸配列とN末端側のアミノ酸配列とは任意であることを意味する。即ち、上記の部分アミノ酸配列は、特定の連続したアミノ酸残基(典型的には配列番号16〜25に示すアミノ酸残基)のC末端に1個、2個、3個、4個、・・・・又はX個のアミノ酸残基及び/又はN末端に1個、2個、3個、4個、・・・・・又はX個のアミノ酸残基をさらに有するアミノ酸配列であり得る。なお、C末端側にX個目のアミノ酸残基とは全長のシグナルペプチド配列のC末端のアミノ酸残基のことをいい、N末端側にX個目のアミノ酸残基とは全長のシグナルペプチド配列のN末端のアミノ酸残基のことをいう。
配列番号16〜25に示すアミノ酸配列は、具体的には以下のとおりである。
即ち、配列番号16に示すアミノ酸配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて15番目のロイシン残基から27番目のアラニン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号17に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて16番目のロイシン残基から27番目のアラニン残基までの12個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号18に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて19番目のプロリン残基から31番目のロイシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号19に示すアミノ酸配列は、配列番号3に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて26番目のロイシン残基から38番目のグリシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号20に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて18番目のプロリン残基から30番目のロイシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号21に示すアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて25番目のロイシン残基から37番目のグリシン残基までの13個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号22に示すアミノ酸配列は、配列番号5に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて1番目のメチオニン残基から14番目のスレオニン残基までの14個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号23に示すアミノ酸配列は、配列番号5に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて3番目のプロリン残基から17番目のアラニン残基までの15個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号24に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて1番目のメチオニン残基から14番目のスレオニン残基までの14個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
配列番号25に示すアミノ酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって該アミノ酸配列のN末端のアミノ酸残基から数えて3番目のプロリン残基から17番目のアラニン残基までの15個の連続するアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
或いはまた、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、上述した神経幹細胞誘導性ペプチド配列のみから成るペプチドであってもよいが、神経幹細胞誘導活性を向上する観点からは、当該神経幹細胞誘導性ペプチド配列のN末端側もしくはC末端側に膜透過性ペプチド配列を有する合成ペプチドであり得る。膜透過性ペプチド配列を有する合成ペプチドであれば、目的の細胞に供給した際に、該合成ペプチドが対象細胞の細胞外から細胞内に速やかに導入され得る。これにより、神経幹細胞誘導活性を向上させることができる。
当該膜透過性ペプチド配列は、細胞膜及び/又は核膜を通過し得る膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列であれば特に限定なく使用することができる。多くの好適な膜透過性ペプチド配列が知られているが、特にNoLS(核小体局在シグナル、Nucleolar localization signal)に関連するアミノ酸配列(改変アミノ酸配列を含む)が神経幹細胞誘導性合成ペプチドの膜透過性ペプチド配列のアミノ酸配列として好ましい。配列番号7〜15に、上記NoLSに関連する膜透過性ペプチド配列および他の膜透過性ペプチド配列(改変アミノ酸配列を含む)の好適例を挙げる。具体的には以下のとおりである。
即ち、配列番号7のアミノ酸配列は、細胞内情報伝達に関与するプロテインキナーゼの1種であるヒト内皮細胞に存在するLIMキナーゼ2(LIM Kinase 2)の第491番目のアミノ酸残基から第503番目のアミノ酸残基までの合計13アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号8のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号9のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、アデノウイルスのPTP(新生末端タンパク質:pre-terminal protein)1及びPTP2由来の合計13アミノ酸残基からなるNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計11アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計16アミノ酸配列から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、ポリアルギニンとして、連続した合計9個のアルギニン残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、MyoD(筋芽細胞決定因子:myoblast determination)ファミリー阻害ドメイン含有タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成る膜透過性ペプチド配列に対応する。
なお、配列表に示した上述の膜透過性ペプチド配列はあくまでも例示であり、使用可能な膜透過性ペプチド配列はこれに限定されない。本発明の実施に使用可能な様々な膜透過性ペプチド配列が本願出願当時に出版されている数々の文献に記載されている。それら膜透過性ペプチド配列のアミノ酸配列は一般的な検索手段によって容易に知ることができる。
特に、特許文献2にも記載されている配列番号7に示すアミノ酸配列(改変アミノ酸配列を含む)が膜透過性ペプチド配列として好ましい。かかる配列番号7に示すアミノ酸配列と上述の神経幹細胞誘導性ペプチド配列とを組み合わせることにより、高い神経幹細胞誘導活性を示す合成ペプチドを得ることができる。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドの好適な一態様は、以下のアミノ酸配列:
LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
を含む。配列番号26に示すアミノ酸配列は、配列番号16に示すヒト由来のAPLP2のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列(配列番号1)の部分アミノ酸配列と、上記の配列番号7に示すLIMキナーゼ2由来のアミノ酸配列(膜透過性ペプチド配列)とをリンカーとしての1個のグリシン残基(G)を介して組み合わせることにより構築された合計27アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドのペプチド鎖(アミノ酸配列)のうちの幾つかは、上述したような神経幹細胞誘導性ペプチド配列と、膜透過性ペプチド配列とを適宜組み合わせることにより構築することができる。神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列の何れが相対的にC末端側(N末端側)に配置されてもよい。また、神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列とは隣接して配置されるのが好ましい。即ち、神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列との間には、両配列部分に包含されないアミノ酸残基が存在しないか或いは存在していても該残基数が1〜3個程度が好ましい。例えば、神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列との間にリンカーとして機能する1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基(例えば1個又は数個のグリシン(G)残基)を含むものであり得る。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、合成ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させることができる。
上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、神経幹細胞誘導活性を失わない限りにおいて、神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列を構成するアミノ酸配列以外の配列(アミノ酸残基)部分を含み得る。特に限定するものではないが、かかるアミノ酸配列としては神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列部分の3次元形状(典型的には直鎖形状)を維持し得る配列が好ましい。該神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下が適当であり、60以下が望ましく、50以下が好ましい。例えば30以下の合成ペプチドが特に好ましい。
このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に神経幹細胞誘導性合成ペプチドを提供することができる。なお、ペプチドのコンホメーション(立体構造)については、使用する環境下(生体外、典型的には対象細胞を培養する培地中)で線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導活性を発揮する限りにおいて、特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はヘリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。かかる観点から、神経幹細胞の生産方法に使用する神経幹細胞誘導性合成ペプチド(或いはまた、神経幹細胞生産用組成物に適用する神経幹細胞誘導性合成ペプチド)としては、直鎖状のものが好ましく、また、比較的低分子量(典型的には100以下、例えば60以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下のアミノ酸残基数)のものが好適である。
また、比較的低分子量の神経幹細胞誘導性合成ペプチドによると、かかる神経幹細胞誘導性合成ペプチドを有効成分(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することに関与する物質)とする神経幹細胞生産用組成物を比較的容易且つ低コストで調製することができる。また、上述のように比較的単純な構造(典型的には直鎖状のペプチド鎖)の合成ペプチドは、構造安定性に優れ、取扱いが容易であるため、この点からも神経幹細胞生産用組成物の有効成分として好適である。
全体のアミノ酸配列に対して神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列とが占める割合(即ち、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数に占める神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列とを構成するアミノ酸残基数の個数%)は、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に誘導する神経幹細胞誘導活性を失わない限り特に限定されないが、当該割合は概ね60%以上が望ましく、80%以上が好ましい。90%以上が特に好ましい。神経幹細胞誘導性ペプチド配列と膜透過性ペプチド配列とから成る(即ち、これらの配列が全アミノ酸配列の100%を占める)ペプチドは好適な一形態である。
なお、本発明の神経幹細胞誘導性合成ペプチドとしては、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導活性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部又は全部がD型アミノ酸に置換されているものであってもよい。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、一般的な化学合成法に準じて容易に製造することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)或いはFmoc(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、市販のペプチド合成機(例えば、Intavis AG社、Protein Technologies社等から入手可能である。)を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
或いは、遺伝子工学的手法に基づいて神経幹細胞誘導性合成ペプチドを生合成してもよい。すなわち、所望する神経幹細胞誘導性合成ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(ATG開始コドンを含む。)のポリヌクレオチド(典型的にはDNA)を合成する。そして、合成したポリヌクレオチド(DNA)と該アミノ酸配列を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する。)とから成る発現用遺伝子構築物を有する組換えベクターを、宿主細胞に応じて構築する。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からペプチドを単離し、必要に応じてリフォールディング、精製等を行うことによって、目的の神経幹細胞誘導性合成ペプチドを得ることができる。
なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
例えば、宿主細胞内で効率よく大量に生産させるために融合タンパク質発現システムを利用することができる。すなわち、目的の神経幹細胞誘導性合成ペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子(DNA)を化学合成し、該合成遺伝子を適当な融合タンパク質発現用ベクター(例えばノバジェン社から提供されているpETシリーズ及びアマシャムバイオサイエンス社から提供されているpGEXシリーズのようなGST(Glutathione S-transferase)融合タンパク質発現用ベクター)の好適なサイトに導入する。そして該ベクターにより宿主細胞(典型的には大腸菌)を形質転換する。得られた形質転換体を培養して目的の融合タンパク質を調製する。次いで、該タンパク質を抽出し、精製する。次いで、得られた精製融合タンパク質を所定の酵素(プロテアーゼ)で切断し、遊離した目的のペプチド断片(設計した神経幹細胞誘導性合成ペプチド)をアフィニティクロマトグラフィー等の方法によって回収する。また、必要に応じて適当な方法によってリフォールディングする。このような従来公知の融合タンパク質発現システム(例えばアマシャムバイオサイエンス社により提供されるGST/Hisシステムを利用し得る。)を用いることによって、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドを製造することができる。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち神経幹細胞誘導性合成ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の(株)セルフリーサイエンスから入手可能なPROTEIOS(商標)Wheat germ cell-free protein synthesis kit)が市販されている。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に製造(合成)することができる。すなわち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを選択することによって、神経幹細胞誘導性合成ペプチドのアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNA合成機等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、種々の酵素的合成手段(典型的にはPCR)を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。また、ポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNAは、二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
こうして得られるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、神経幹細胞誘導性合成ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、上記神経幹細胞誘導活性を損なわない限りにおいて塩の形態であってもよい。例えば、常法に従って通常使用されている無機酸又は有機酸を付加反応させることにより得られ得る該ペプチドの酸付加塩を使用することができる。或いは、上記神経幹細胞誘導活性を有する限り、他の塩(例えば金属塩)であってもよい。従って、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「ペプチド」は、かかる塩形態のものを包含する。
また、本発明によると、上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドの少なくとも1種を含む組成物が提供される。かかる組成物は、該組成物を線維芽細胞(典型的には該細胞を含む培養物)に供給したときに、該線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に誘導し得る組成物(神経幹細胞誘導剤)であり、線維芽細胞から神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産するために用いることができる。即ち、本発明によると、線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる神経幹細胞生産用組成物が提供される。ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導剤)は、有効成分(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導することに関与する物質)である神経幹細胞誘導性合成ペプチドをその神経幹細胞誘導活性が失われない状態で保持し得る限りにおいて、使用形態に応じて薬学(医薬)上許容され得る種々の担体を含み得る。希釈剤、賦形剤等としてペプチド医薬において一般的に使用される担体が好ましい。神経幹細胞生産用組成物の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、典型的には、水、生理学的緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS))、種々の有機溶媒が挙げられる。適当な濃度のアルコール(エタノール等)水溶液、グリセロール、オリーブ油のような不乾性油であり得る。或いはリポソームであってもよい。また、神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導剤)に含有させ得る副次的成分としては、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、色素、香料等が挙げられる。
神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導剤)の形態に関して特に限定はない。例えば、典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、水性ジェル剤等が挙げられる。また、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、神経幹細胞誘導性合成ペプチド(主成分)及び種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の薬剤(組成物)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。この書籍の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)の適用対象である線維芽細胞は特に制限されず、種々の線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する(若しくは誘導を促進する)ことが可能である。例えば、ヒト又はヒト以外の動物(典型的には脊椎動物、特に哺乳動物)由来の細胞が挙げられる。一般的に、実験動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ等)、家畜(例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、トリ等)、愛玩動物(例えばイヌ、ネコ等)として飼育される動物(典型的には哺乳動物)への適用は産業上の利用価値が高い。対象の哺乳動物の好適例として、例えば、マウス、ラット、モルモット等の齧歯類、ウマ、ロバ等の奇蹄類、ブタ、ウシ等の偶蹄類、チンパンジー、オランウータン、カニクイザル等の霊長類(ヒトを除く)、等が例示される。或いはまた、特にヒト由来の細胞は、医学分野への利用価値が高いため、対象細胞として好ましい。換言すると、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)は、ヒト由来の線維芽細胞を神経幹細胞胞に好適に誘導し得る、或いは誘導を促進し得る。なお、患者由来の線維芽細胞は、当該細胞を用いることでドナー不足や拒絶反応といった課題を解決し得るため、ここで開示する神経幹細胞の生産方法の適用対象細胞として特に好ましい。
ここで、線維芽細胞は全身のあらゆる組織に存在する細胞であり、主に結合組織に存在する。線維芽細胞は、一般的に増殖力が高い。また、線維芽細胞は、典型的に単独培養が可能な細胞であるため、インビトロ培養系での培養(維持)を行い易い細胞である。即ち、必要量の線維芽細胞を比較的容易に入手し得るため、線維芽細胞は神経幹細胞を生産するための初発細胞(原料細胞)として好ましい。換言すると、ここで開示する神経幹細胞生産用組成物の適用対象として線維芽細胞を適用することで、神経幹細胞を生産するために必要な原料細胞(対象細胞)を確保するための労力、コスト、時間を低減(削減)し得る。
例えば、皮膚(典型的には真皮)、消化管、血管、骨、歯、軟骨、脳、眼球、肺等の組織由来の線維芽細胞を、神経幹細胞を生産するための対象細胞(原料細胞)として使用することができる。
例えば、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)の適用対象である線維芽細胞として、インビトロ培養系で培養する線維芽細胞を対象とする場合であれば、皮膚、血液、歯、粘膜等の組織由来の細胞は、生体に大きなダメージを与えることなく低侵襲での採取が可能であるため好ましい。なかでも、生体からの採取の容易性(侵襲性の低さ)およびインビトロ培養系での培養(維持)の容易性の観点から、特に皮膚(典型的には真皮)由来の線維芽細胞が適用対象として好ましい。なお、かかるインビトロ培養系で培養する線維芽細胞は、特に限定されず、例えば初代培養細胞、継代細胞、細胞株(セルライン)等の各種培養細胞であってもよいし、生体内の組織から採取した組織由来(生体組織由来)の線維芽細胞であってもよい。
なお、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)は、対象細胞の種類(由来動物、由来組織など)等に応じて、適宜、他の細胞分化誘導因子(分化誘導因子)と併用することができる。かかる細胞誘導因子としては、例えば、レチノイン酸、種々の骨形成因子(BMPファミリーに属する因子)、TGF−β等のTGF−βスーパーファミリーに属する因子、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)等のFGFスーパーファミリーに属する因子、白血病阻害因子(LIF)、コリン作動性神経分化因子(CDF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)その他のサイトカインファミリーに属する因子、各種インターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターフェロンγ(IFNγ)、肝細胞増殖因子(HGF)等が挙げられる。
ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)は、その形態及び目的に応じた方法や用量で使用することができる。
例えば、生体外(インビトロ)で培養(継代)している線維芽細胞(例えばヒト由来の線維芽細胞)を神経幹細胞に誘導させる場合においては、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(即ち該組成物に含まれる神経幹細胞誘導性合成ペプチド)の適当量を、誘導を行う対象の線維芽細胞(典型的には該細胞を含む細胞培養物)に対し、培養過程のいずれかの段階(例えば、培養開始と同時、若しくは培養開始後の早い段階、又は所定期間の培養(増殖)や継代を行った後)で培地に添加するとよい。添加量及び添加回数は、培養細胞の種類、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。例えば、培地中の神経幹細胞誘導性合成ペプチド濃度が概ね0.1μM〜100μMの範囲内、好ましくは0.5μM〜20μM(例えば1μM〜10μM)の範囲内となるように、1〜複数回添加する(例えば培養開始時ならびに細胞の継代時や培地交換時に合わせて追加添加する)ことが好ましい。
上記神経幹細胞誘導性合成ペプチドを供給した線維芽細胞(典型的には該細胞を含む細胞培養物)を培養する培養条件は、対象の線維芽細胞を通常培養する場合と同様の条件或いは該条件を適宜変更した培養条件を採用することができる。培養温度については、哺乳動物由来の線維芽細胞から神経幹細胞を作製する場合であれば、例えば通常の哺乳動物由来の線維芽細胞の培養温度を適用可能である。最適な温度条件は対象の線維芽細胞の種類およびコンディション等により異り得るが、典型的には哺乳動物由来の細胞であれば、例えば25℃以上37℃未満(好ましくは25℃以上35℃以下、より好ましくは30℃以上35℃以下)の温度範囲の中で適宜設定することができる。培養に用いる培地は、例えば対象の線維芽細胞を通常培養する場合と同様の組成の培地、或いは神経幹細胞を培養するのと同様の組成の培地等を特に制限なく使用することができる。また、インキュベータ内の湿度、CO濃度についても、例えば対象の分化細胞を培養する場合と同様の条件(例えば、5%CO、相対湿度95%以上)を特に制限なく適用することができる。
上記神経誘導性合成ペプチドを供給した線維芽細胞(典型的には該線維芽細胞を含む細胞培養物)を培養する時間は、対象の線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する(即ちダイレクトリプログラミングする)ことが可能な時間であれば、特に制限されない。かかる培養時間は、対象の線維芽細胞の種類、状態(細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類)等の条件によって異なり得るため特に限定されないが、一般的に線維芽細胞から多能性幹細胞(典型的にはiPS細胞)を作製した後で、該多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導するのに要する期間よりも短い。例えば、ここで開示される神経幹細胞の生産方法に係る一実施形態では、対象の線維芽細胞に上記神経幹細胞誘導性合成ペプチド(神経幹細胞生産用組成物)を供給してから凡そ15日後(典型的には18日後、例えば20日後、一般的には25日後)に神経幹細胞を得ることが出来る。一方で、一般的に、線維芽細胞等の体細胞から多能性幹細胞を作製する為に凡そ1か月、多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導する為に凡そ2か月要するとされる。ここで開示する神経幹細胞の生産方法によると、多能性幹細胞を入手して神経幹細胞を作製するよりも短い期間で神経幹細胞を作製し得る。
また、ここで開示される神経幹細胞生産方法は、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)を供給して所定期間培養した後の細胞培養物中から神経幹細胞を選別(分離)することをさらに包含してもよい。かかる選別(分離)した神経幹細胞を回収することで、全細胞に占める神経幹細胞の割合(純度)が高い細胞集団を生産することができる。なお、上記神経幹細胞の生産方法は、インビトロ培養系における神経幹細胞の生産に限定されず、生体内における神経幹細胞の産生或いは神経幹細胞の産生促進にも適応可能である。即ち、ここで開示される神経幹細胞産生用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)を生体内に添加して産生した神経幹細胞について、該生体中から選別(採取、単離)してもよい。
上記神経幹細胞を含む細胞培養物中からの神経幹細胞の選別は、神経幹細胞に特徴的な性質(マーカー、標識、目印)を指標にして従来公知の細胞選別方法を適用することによって行い得る。
上記神経幹細胞に特徴的な性質は、細胞培養物中に存在することが予想される神経幹細胞以外の細胞と神経幹細胞とを区別可能な特徴であれば特に限定されない。例えば、神経幹細胞に特徴的な遺伝子(典型的には神経幹細胞に特異的(選択的)に発現する遺伝子、いわゆる神経幹細胞マーカー遺伝子)の発現状態又は神経幹胞の生理的性質(増殖性、接着性、遊走性、細胞分裂の特徴、栄養要求性等)等が挙げられる。上記神経幹細胞マーカー遺伝子としては、例えばネスチンおよびGFAPが挙げられる。これらマーカー遺伝子の遺伝子産物(典型的にはmRNA又はタンパク質(マーカータンパク質))の存在を指標として、神経幹細胞を細胞培養物中から好適に選別することができる。かかるmRNAおよび、タンパク質の存在は比較的簡易な方法で判別可能であるため、本発明の実施に好適に用いることができる。特にタンパク質は、該タンパク質を認識する抗体を用いた免疫学的手法(抗原抗体反応を利用した手法)によってその存在を判別可能であるため好ましい。例えば、蛍光標識された抗ネスチン抗体を用いてネスチンタンパク質を標識し、該標識を目印として神経幹胞を選別可能である。
神経幹細胞の選別方法は特に限定されず、種々の細胞選別方法を利用して神経幹細胞胞を選別可能である。例えば、蛍光標識式細胞分取器(FACS、fluorescence-activated cell sorter)を用いた細胞選別、磁気細胞分離装置(MACS(登録商標))を用いた細胞分別、顕微鏡下での細胞選別、光ピンセットを利用した細胞選別、各種カラムを用いた細胞選別、抗原抗体反応を応用した細胞選別、細胞染色を応用した細胞選別、特定遺伝子導入による標識を利用した細胞選別、細胞の生理的性質(増殖性、接着性、遊走性、細胞分裂の特徴、栄養要求性等)を利用した細胞選別などが挙げられる。FACS、MACS並びに光ピンセットを応用した細胞選別装置は、自動化により高効率に神経幹細胞を分取(選別)可能なため、本発明の実施に好適に用いることができる。特にFACSおよびMACSは高精度な分取が可能なため、好ましい。
ここで開示の方法で生産された細胞が神経幹細胞であることは、例えば、上述した神経幹細胞に特徴的な性質(典型的には神経幹細胞マーカー遺伝子の発現、又は神経幹細胞の生理的特徴)を有していることを確認することで、評価することができる。例えば、上記神経幹細胞マーカー遺伝子の典型例である上記ネスチンを少なくとも発現していること、(好ましくはネスチンおよびGFAPの両方を発現していること)、即ち、これら神経幹細胞マーカー遺伝子の遺伝子産物(典型的にはmRNAまたはタンパク質(マーカータンパク質))が存在することを従来公知の方法により確認すればよい。上記mRNAは例えばPCR(好ましくはRT−PCR)法によって確認することができ、上記タンパク質は例えば免疫学的手法を用いた方法(例えば細胞免疫染色、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー等)により確認することができる。
ここで開示される神経幹細胞の生産方法によると、上述のとおり比較的単純な構成の合成ペプチドを線維芽細胞に供給するという比較的簡易な方法によって、生体外或いは生体内に存在する線維芽細胞から神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、器官等)を効率よく(典型的には高い生産効率で)生産することができる。特に、ここに開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)を使用することで、多能性幹細胞等(例えばiPS細胞)を分化誘導して神経幹細胞を作製する場合に使用される高価な液性因子(例えば神経幹細胞分化誘導因子、典型的にはレチノイン酸等)を大量に使用することなく(典型的にはかかる液性因子を使用しない又はその使用量を低減し得る。)、線維芽細胞から神経幹細胞を作製することが出来る。即ち、神経幹細胞の生産コストの低減を図ることが出来る。
また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、上述のような人為的に合成したペプチドを対象の線維芽細胞に供給することで、当該線維芽細胞から神経幹細胞を生産することができる。即ち、ここで開示する神経幹細胞の生産方法は遺伝子導入を必要としないため、生産される神経幹細胞のゲノム中に外来遺伝子が挿入される心配がない。したがって、ゲノムに外来遺伝子が挿入されることに起因するがん化のリスクを低減(典型的には回避)することが出来る。また、特定の遺伝子を対象細胞に導入する操作の煩雑性および遺伝子導入にかかるコストを低減することができる。
また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法によると、線維芽細胞を多能性幹細胞にする手順を踏むことなく神経幹細胞を生産することができる。換言すると、線維芽細胞を神経幹細胞に(直接的に)分化転換(運命転換)することができる(即ち、線維芽細胞を神経幹細胞にダイレクトリプログラミングすることができる)。このため、線維芽細胞を多能性幹細胞に初期化した後で、該多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導する場合よりも少ない手順で線維芽細胞から神経幹細胞を生産することができる。従って、高い再現性での神経幹細胞の生産が可能であり、また、神経幹細胞の生産に要する時間の短縮を図ることが出来る。
さらに、ここで開示される神経幹細胞の生産方法によると、多能性幹細胞を経ることなく線維芽細胞を神経幹細胞に分化転換(ダイレクトリプログラミング)することができるため、神経幹細胞を含む細胞培養物中に未分化の多能性幹細胞が混入する虞を低減(典型的には回避)することができる。これにより、生体内への未分化の多能性幹細胞の移植が原因で生じ得る奇形種の発生(所謂がん化)のリスクを低減(典型的には回避)することができる。
ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)をインビトロ培養系に適用する(典型的には細胞を培養する培地中に添加する)ことで、インビトロで培養(継代)している線維芽細胞(典型的にはヒト由来の線維芽細胞)から神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、器官等)を効率よく生産することができる。或いはまた、生体から一時的に又は永久的に摘出した細胞材料、即ち生組織や細胞塊(例えば生体由来の線維芽細胞の培養物)に、適当量の神経細胞生産用組成物(神経細胞誘導性合成ペプチド)を供給することによって、神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、器官等)を効率よく生産することができる。即ち、ここで開示される神経幹細胞の生産方法(線維芽細胞から神経幹細胞を誘導する方法)を採用することによって、神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、または神経幹細胞を増殖、分化誘導させた組織体等)を生体外(インビトロ)で効率よく生産することができる。
このように生体外(インビトロ)で生産した神経幹細胞(或いは該細胞を含む組織、または神経幹細胞を増殖、分化誘導させた組織体等)を修復や再生が必要とされる患部(即ち患者の生体内)に戻すことにより、当該修復や再生を効果的に行うことができる。即ち、組織体の再生が有力な治療法となる種々の疾患を効率的に治療することが可能となる。例えば、ここで開示される生産方法によって生体外で生産された神経幹細胞を患部(即ち患者の生体内)に移入することにより、例えば、パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、脊髄損傷による身体の麻痺、脳挫傷、筋委縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳腫瘍、網膜変性症等の神経疾患および外傷を再生医療的アプローチによって治療することが可能となる。また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法の実施によって生体外で生産された神経幹細胞は、再生医療的治療に資する医療用資材として使用できる。また、被験体(患者)自身から得た線維芽細胞を用いて神経幹細胞を生産することで、ドナー不足や拒絶反応といった課題を解決し得る。
或いはまた、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)を、例えば液剤として、或いは、錠剤等の個体形態のものや軟膏等のゲル状若しくは水性ジェリー状のものを生体内(典型的には患者)に所望量供給することもできる。投与方法は特に限定されない。例えば、静脈内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内等への注射、経口投与、吸入投与、経皮投与、経粘膜投与、坐剤投与等が挙げられる。或いはまた、埋め込み製剤として皮下、筋肉膜下、脳内(典型的には髄膜下(硬膜下或いはくも膜下))等に埋め込む方法で投与してもよい。
これにより、生体内で、典型的には患部またはその周辺に存在する線維芽細胞若しくは患部へ遊走可能な線維芽細胞から、神経幹細胞を産生(生産)することができる。このため、該神経幹細胞を利用することで、種々の神経疾患や外傷により失われた神経機能を効果的に回復させることが可能となる。例えば、パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、脊髄損傷による身体の麻痺、脳挫傷、筋委縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳腫瘍、網膜変性症等の神経疾患および外傷を再生医療的アプローチによって治療することが実現できる。換言すると、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物を上記神経疾患および外傷の再生医療的治療に資する薬剤組成物(薬学的組成物)として使用できる。或いはまた、ヒト以外の動物(典型的にはヒト以外の哺乳動物)の生体内で、移植用の神経幹細胞を作製することも可能である。
或いはまた、インビトロ(インビトロ培養系)で大量に生産した神経幹細胞および該神経幹細胞から分化誘導した神経細胞を医薬品の毒性及び有効性の評価に資することで、当該評価の効率および精度の向上およびコストの削減が実現可能である。また、インビトロ(インビトロ培養系)で大量に生産した神経幹細胞および該神経幹細胞から分化誘導した神経細胞を利用することで、該細胞由来の生合成物、典型的には分泌タンパク質やホルモン等の生理活性物質(例えば神経ペプチド等の神経分泌ホルモン、具体的には、脳下垂体ホルモン、視床下部ホルモン等)を生産することができる。
或いはまた、インビトロ(インビトロ培養系)で大量に生産した神経幹細胞および該神経幹細胞から分化誘導した神経細胞を試験対象とすることで、従来は評価が困難であった試験の実施が可能となる。例えば、疾患の病態解明や治療薬の研究開発等の分野において、ヒト由来の線維芽細胞から生産された神経幹細胞を利用することで、効率的な研究が実現される。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1:ペプチド合成>
上述した配列番号26に示すアミノ酸配列から成る合成ペプチドを後述するペプチド合成機を用いて製造した。なお、以下の説明では、当該合成ペプチドをサンプル1と呼称する。なお、当該合成ペプチドは、C末端アミノ酸のカルボキシル基(−COOH)はアミド化(−CONH)されている。
上記サンプル1に係るペプチドは、市販のペプチド合成機(Intavis AG社製)を用いてマニュアルどおりに固相合成法(Fmoc法)を実施して合成した。なお、ペプチド合成機の使用態様自体は本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
合成したペプチドはDMSOに溶かし、ストック液を調製した。
<実施例2:神経幹細胞誘導性合成ペプチドの神経幹細胞誘導活性の評価試験>
上記実施例1で得られた神経幹細胞誘導性合成ペプチド(サンプル1)を用いて、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導(神経幹細胞を作製)した。供試細胞としては、ヒトの皮膚組織由来の線維芽細胞の培養細胞株である、CCD1079SK細胞(ATCC(登録商標) CRL-2097)を用いた。試験の詳細は以下のとおりである。
凍結保存しておいたCCD1079SK細胞を、細胞培養チャンバー(チャンバースライド、Slide Chamber、ともいう)中に1.2×10個/ウェルの細胞密度となるように播種した。上記細胞培養チャンバーは、スライド1枚当たりのウェル数が1個(培養面積は19mm×44mm)のものを用いた。具体的には、まず解凍したCCD1079SK細胞を一般的なDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)培地中に懸濁して細胞密度が1.2×10個/mLの細胞懸濁液を調製し、該細胞懸濁液のうちの1mLを上記細胞培養チャンバー内に播種した。ここで、上記DMEM培地としては、一般的なDMEM(和光純薬社製、Cat No. 043-30085)中に10%のFBS、100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含有させたものを用いた。そして、上記細胞培養チャンバー中に播種したCCD1079SK細胞を、5%CO、37℃の条件下のインキュベータ内で、細胞が培養容器の底面へ接着するまで数時間(凡そ6時間)前培養(プレ培養)した。
上記数時間のプレ培養後のCCD1079SK細胞(細胞培養物)について、培地を10%のFBS、100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンに加えて、10μMとなる量のサンプル1に係るペプチドを含有するDMEM培地に交換し、5%CO、30℃の条件下で本培養を行った。かかる本培養では、ペプチド存在下での培養開始後4日目、6日目、8日目、10日目、13日目、18日目に、上記10%のFBS、100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンに加えて、10μMとなる量のサンプル1に係るペプチドを含有するDMEM培地に培地交換した。
また、コントロール区として、培地中にペプチドを添加しないペプチド無添加を設けた。かかるペプチド無添加区は上記ペプチド添加区と同様に、本培養開始後4日目、6日目、8日目、10日目、13日目、18日目のタイミングで10%のFBS、100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含有するDMEM培地に培地交換した。
そして、以下の細胞免疫染色(蛍光免疫染色)により、本培養(ペプチド存在下での培養)を開始後18日目の各試験区の細胞について、神経幹細胞マーカータンパク質であるネスチンタンパク質およびGFAPの発現状態について調べた。
まず、各試験区の細胞の固定、透過処理およびブロッキング処理を行った。具体的には、上記18日間のペプチド存在下での培養が終わった各試験区の培養容器(チャンバースライド)の中から培地を除去し、各チャンバースライド内の細胞を冷たいPBSで洗浄した。次いで、4体積%のパラホルムアルデヒドを含むPBS(4%パラホルムアルデヒド溶液)をチャンバースライド内に添加し、氷上に15分間静置して細胞を固定した。所定時間が経過後、4%パラホルムアルデヒド溶液を除去し、冷たいPBSで各チャンバースライド内の細胞を洗浄した。
次いで、0.25体積%のTriton(登録商標) X−100を含むPBS(以下、かかる溶液を「PBS−T」という。)を各チャンバースライド内に添加し、室温で30分間静置して細胞膜の透過処理を行った。所定時間が経過後、PBS−Tを除去し、冷たいPBSで各チャンバースライド内の細胞を洗浄した。
そして、1%のBSAを含むPBS(1%BSA含有PBS)を各チャンバースライド内に添加して室温で1時間のブロッキング処理を行った。所定時間が経過後、1%BSA含有PBSを除去し、冷たいPBSで各チャンバースライド内の細胞を洗浄した。
次に、抗ネスチン抗体と該抗体を認識する二次抗体または抗GFAP抗体と該抗体を認識する二次抗体とを用いて細胞免疫染色を行った。
具体的には、各試験区の細胞について、ネスチンタンパク質を以下のとおりに染色した。まず、抗ネスチン抗体(ラビット由来、abcam社製、cat. No. ab92391)を1%BSA含有PBSを用いて250倍希釈した一次抗体希釈液を上記スライドチャンバー内に添加し、4℃で一晩(約16〜18時間)静置した。そして、所定時間経過後、上記一次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、二次抗体として蛍光色素(Alexa Fluor(登録商標) 488)で標識した抗ラビットIgG抗体(ヤギ由来、Life Technologies社製、A-11008)を上記スライドチャンバー内に添加し、室温で1時間、暗所に静置した。そして、所定時間経過後、上記二次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、上記の細胞免疫染色を行った各試験区の細胞をDAPI含有封入液であるSlow Fade(Life Technologies社製、Cat. No. S36946)とカバーガラスを用いて封入した。
また、各試験区の細胞について、GFAPを以下のとおりに染色した。まず、抗GFAP抗体(ラビット由来、abcam社製、at. No. ab7260)を1%BSA含有PBSを用いて1000倍希釈した一次抗体希釈液を上記スライドチャンバー内に添加し、4℃で一晩(約16〜18時間)静置した。そして、所定時間経過後、上記一次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、二次抗体として蛍光色素(Alexa Fluor(登録商標) 555)で標識した抗ラビットIgG抗体(ヤギ由来、Thermo Fisher Scientific社製、A-21428)を上記スライドチャンバー内に添加し、室温で1時間、暗所に静置した。そして、所定時間経過後、上記二次抗体希釈液を除去し、冷たいPBSで3回洗浄した。そして、上記の細胞免疫染色を行った各試験区の細胞をDAPI含有封入液であるSlow Fade(Life Technologies社製、Cat. No. S36946)とカバーガラスを用いて封入した。
上述のとおりに細胞免疫染色(蛍光免疫染色)を行った各試験区の細胞について、共焦点レーザー顕微鏡による蛍光観察を行った。
共焦点レーザー顕微鏡による蛍光観察を行った結果を図1〜図4に示す。これらの図面は各試験区におけるネスチンタンパク質或いはGFAPの発現状態を調べた蛍光顕微鏡写真であり、右列には上記免疫蛍光抗体法でネスチンタンパク質或いはGFAPの発現状態を調べた結果を示す蛍光画像を示し、左列にはかかる蛍光顕微鏡観察と同一視野を光学顕微鏡(微分干渉顕微鏡)観察した結果を示す画像(写真)を示す。図1および図2にはサンプル1添加区の結果、図3および図4にはペプチド無添加区の結果を示す。
図1および図2に示すように、サンプル1添加区では、ペプチド無添加区(図3および図4)と比較して、ネスチンタンパク質およびGFAPの存在量が増大した細胞が多く存在することを確認した。即ち、サンプル1添加区では、神経幹細胞マーカー遺伝子であるネスチンおよびGFAPの発現量が増大した細胞が多く存在していた。このことは、サンプル1に係るペプチドを添加したサンプル1添加区には、神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)が存在していることを示している。
これらの結果は、ここで開示する方法によると、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に分化誘導し得る、即ち、神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)を生産し得ることを示している。なお、かかる線維芽細胞からの神経幹細胞の生産に際して、多能性幹細胞を作製する手順を必要としなかった。即ち、上記の結果は、ここで開示する方法によると、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に(直接的に)分化転換し得る(即ちダイレクトリプログラミングし得る)ことを示している。
また、上記の結果は、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチド(即ち該ペプチドを有効成分として含む神経幹細胞分化誘導剤)が、線維芽細胞を神経幹細胞(典型的にはネスチン発現細胞、例えばネスチンおよびGFAP共発現細胞)に分化誘導し得るペプチド(組成物)であることを示している。
<実施例3:顆粒剤の調製>
上記サンプル1に係る合成ペプチド(神経幹細胞誘導性合成ペプチド)50mgと結晶化セルロース50mg及び乳糖400mgとを混合した後、エタノールと水の混合液1mLを加え混練した。この混練物を常法に従って造粒し、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドを主成分とする顆粒剤(顆粒状組成物)を得た。
上述のように、ここで開示される神経幹細胞誘導性合成ペプチドは、線維芽細胞を神経幹細胞へ分化させる神経幹細胞誘導能を有している。このため、対象とする線維芽細胞(特にヒト由来の線維芽細胞)を誘導して神経幹細胞を産生する目的に好適に使用し得る。したがって、ここで開示される神経幹細胞生産用組成物は、例えば再生医療用途の組成物として好適に利用することができる。
また、ここで開示される神経幹細胞の生産方法は、多能性幹細胞を作製する手順を踏むことなく、線維芽細胞から神経幹細胞を作製することが出来る。このため、線維芽細胞から神経幹細胞を効率よく生産することができる。かかる方法により生産した神経幹細胞は、再生医療用途の細胞資源として好適に利用することが出来る。
配列番号1〜26 合成ペプチド

Claims (18)

  1. 線維芽細胞から神経幹細胞を生産するために用いる組成物であって、
    線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む人為的に合成した合成ペプチドと、
    薬学的に許容可能な1種または2種以上の担体と、を含み、
    ここで、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列が、以下の(i)〜(iii)に示すアミノ酸配列:
    (i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
    (ii)前記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および
    (iii)前記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が同類置換されて形成された改変アミノ酸配列;
    のうちのいずれかのアミノ酸配列である、神経幹細胞生産用組成物。
  2. 前記アミロイド前駆体タンパク質ファミリーに属するタンパク質が、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体様タンパク質1、またはアミロイド前駆体様タンパク質2のいずれかである、請求項1に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  3. 前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列が、以下のi)〜vi)に示すいずれかのアミノ酸配列:
    i)以下の配列番号1のアミノ酸配列:
    MAATGTAAAAATGRLLLLLLVGLTAPALA(配列番号1);
    または、配列番号1に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号16に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    ii)以下の配列番号2のアミノ酸配列:
    MAATGTAAAAATGKLLVLLLLGLTAPAAA(配列番号2);
    または、配列番号2に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号17に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    iii)以下の配列番号3のアミノ酸配列:
    MGPASPAARGLSRRPGQPPLPLLLPLLLLLLRAQPAIG(配列番号3);
    または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号18に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号19に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    iv)以下の配列番号4のアミノ酸配列:
    MGPTSPAARGQGRRWRPPLPLLLPLSLLLLRAQLAVG(配列番号4);
    または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号20に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号21に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    v)以下の配列番号5のアミノ酸配列:
    MLPGLALLLLAAWTARA(配列番号5);
    または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号22に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号23に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    vi)以下の配列番号6のアミノ酸配列:
    MLPSLALLLLAAWTVRA(配列番号6);
    または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号24に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    のうちから設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  4. 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列のアミノ酸配列のN末端側若しくはC末端側に膜透過性ペプチド配列を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  5. 前記合成ペプチドは、前記膜透過性ペプチド配列として、以下のアミノ酸配列:
    KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)
    を有する、請求項4に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  6. 前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が100以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  7. 前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が50以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  8. 前記合成ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
    LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
    を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  9. 前記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の神経幹細胞生産用組成物。
  10. 線維芽細胞から神経幹細胞をインビトロにおいて生産する方法であって、
    前記線維芽細胞を含む細胞培養物を準備すること、および
    前記細胞培養物中に、人為的に製造した合成ペプチドを供給すること、
    を包含し、
    前記合成ペプチドが、線維芽細胞を神経幹細胞に誘導する神経幹細胞誘導性ペプチド配列を含む合成ペプチドであり、
    前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列が、以下の(i)〜(iii)に示すアミノ酸配列:
    (i)アミロイド前駆体タンパク質(APP)のファミリーに属するいずれかのタンパク質のシグナルペプチドを構成するアミノ酸配列、
    (ii)前記(i)のアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸残基を有する部分アミノ酸配列、および、
    (iii)前記(i)または(ii)のアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が同類置換されて形成された改変アミノ酸配列;
    のうちのいずれかのアミノ酸配列である、神経幹細胞の生産方法。
  11. 前記アミロイド前駆体タンパク質ファミリーに属するタンパク質が、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体様タンパク質1、またはアミロイド前駆体様タンパク質2のいずれかである、請求項10に記載の神経幹細胞の生産方法。
  12. 前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列が、以下のi)〜vi)に示すいずれかのアミノ酸配列:
    i)以下の配列番号1のアミノ酸配列:
    MAATGTAAAAATGRLLLLLLVGLTAPALA(配列番号1);
    または、配列番号1に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号16に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    ii)以下の配列番号2のアミノ酸配列:
    MAATGTAAAAATGKLLVLLLLGLTAPAAA(配列番号2);
    または、配列番号2に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号17に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    iii)以下の配列番号3のアミノ酸配列:
    MGPASPAARGLSRRPGQPPLPLLLPLLLLLLRAQPAIG(配列番号3);
    または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号18に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号3に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号19に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    iv)以下の配列番号4のアミノ酸配列:
    MGPTSPAARGQGRRWRPPLPLLLPLSLLLLRAQLAVG(配列番号4);
    または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号20に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号4に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号21に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    v)以下の配列番号5のアミノ酸配列:
    MLPGLALLLLAAWTARA(配列番号5);
    または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号22に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号5に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号23に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    vi)以下の配列番号6のアミノ酸配列:
    MLPSLALLLLAAWTVRA(配列番号6);
    または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号24に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、配列番号6に示すアミノ酸配列のうちの一部の連続するアミノ酸配列であって配列番号25に示すアミノ酸配列を少なくとも有する部分アミノ酸配列;
    または、これらのアミノ酸配列において1個、2個、又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されて形成された改変アミノ酸配列;
    のうちから設定されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の神経幹細胞の生産方法。
  13. 前記合成ペプチドは、前記神経幹細胞誘導性ペプチド配列のアミノ酸配列のN末端側若しくはC末端側に膜透過性ペプチド配列を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
  14. 前記合成ペプチドは、前記膜透過性ペプチド配列として、以下のアミノ酸配列:
    KKRTLRKNDRKKR(配列番号7)
    を有する、請求項13に記載の神経幹細胞の生産方法。
  15. 前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が100以下である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
  16. 前記合成ペプチドを構成する全アミノ酸残基数が50以下である、請求項10〜15のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
  17. 前記合成ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
    LLLLLLVGLTAPAGKKRTLRKNDRKKR(配列番号26)
    を有する、請求項10〜16のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
  18. 前記線維芽細胞が、ヒトの皮膚由来の線維芽細胞である、請求項10〜17のいずれか一項に記載の神経幹細胞の生産方法。
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