JP2017063666A - ヌクレアーゼs1の生産方法 - Google Patents

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健太郎 伊出
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拓哉 中川
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浩子 堤
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Abstract

【課題】ヌクレアーゼS1を、アスペルギルス・オリゼを宿主として高生産する方法に用いるための形質転換体の提供。【解決手段】ある特定の塩基配列からなるプロモーター、ある特定の塩基配列からなるヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼ内で機能するターミネーターを有する遺伝子発現カセット、並びにアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子が同一又は別々の発現ベクターに搭載され、上記発現ベクターで形質転換されてなるアスペルギルス・オリゼ。【選択図】なし

Description

本発明は、ヌクレアーゼS1(nuclease S1)の生産方法、及び当該方法の実施に有用なアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)形質転換体に関する。
ヌクレアーゼS1(EC 3.1.30.1)は、S1ヌクレアーゼとも呼ばれ、主にアスペルギルス属糸状菌により生産される酵素であり、タカジアスターゼ原末中で発見されている。ヌクレアーゼS1は、一本鎖のDNAやRNAを極めて優先的に5'-モノヌクレオチドと少量のオリゴヌクレオチドに分解するZn2+依存性エンドヌクレアーゼである。また、ヌクレアーゼS1は、267残基のアミノ酸からなる糖タンパク質であり、最適pHは4.0〜4.3である。
このように、ヌクレアーゼS1は、1本鎖のDNA又はRNAを基質として分解し2本鎖DNAやRNAは分解しない。そのため、この性質を利用して、DNAやRNAの構造解析に用いられている。この酵素の用途としては、S1マッピング、二本鎖DNAの末端の平滑化、二本鎖DNA中の一本鎖部分の除去などである。
ヌクレアーゼは、呈味性のある5'-IMPの生産等にも利用できるため工業的にも重要な酵素である。そのため、かかるヌクレアーゼS1を、安全性が高く古くから清酒や醤油などの醸造食品の製造に利用されてきた糸状菌、特に麹菌により提供できることが望ましい。
ヌクレアーゼS1の遺伝子(nucS)は、特許文献1及び非特許文献1により報告されている。特許文献1及び非特許文献1では、アスペルギルス・オリゼからPCRによりnucS遺伝子を単離したこと、nucS遺伝子は287アミノ酸のタンパク質をコードしており、その内、シグナル配列は20アミノ酸であり、成熟タンパク質は267アミノ酸であることが記載されている。さらに、nucS遺伝子をglaA (アスペルギルス・オリゼのグルコアミラーゼ遺伝子)のプロモーターと融合させてアスペルギルス・オリゼを形質転換してヌクレアーゼS1を過剰生産させたところ、分泌されるヌクレアーゼS1の生産量は最大で27 mg/lであり、宿主と比べて約100倍に増加したことが報告されている。
非特許文献2では、シスエレメントRegionIIIを導入したプロモーター(P-agdA142)にヌクレアーゼS1遺伝子を連結してアスペルギルス・オリゼを形質転換したこと、得られた形質転換体のフスマ培養での生産性は、0.5 g/Kg以上を示したことが報告されている。
しかしながら、ヌクレアーゼS1の生産量としては、商業レベルという点では未だ不十分である。また、アスペルギルス・オリゼにおいて一般的に生産性が高いのは液体培養より固体培養であるが、固体培養の場合は夾雑物酵素などが予期せぬ反応を促進する。例えば、ホスファターゼ(ヌクレアーゼを除く)の存在が問題となる。
特許第2685125号公報
Appl Microbiol Biotechnol (1995) 44:425-431 日本農芸化学会1995年度大会講演要旨集、社団法人日本農芸化学会発行、平成9年3月5日発行、342頁、4Xa12
本発明は、アスペルギルス・オリゼを宿主としてヌクレアーゼS1を高生産する方法、特にセルフクローニング法により生産する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ヌクレアーゼS1の生産に用いるための形質転換体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヌクレアーゼS1を、ヘモリシンプロモーター(好ましくは特定の配列が更に追加されたもの)を用いて発現させることにより、液体培養によりヌクレアーゼS1を高生産することができるという知見を得た。
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のアスペルギルス・オリゼ、及びヌクレアーゼS1の生産方法を提供するものである。
(I)形質転換体
(I-1) 以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼ内で機能するターミネーターを有する遺伝子発現カセット、並びにアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子が同一又は別々の発現ベクターで形質転換されてなるアスペルギルス・オリゼ:
(a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つアスペルギルス・オリゼ内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つヌクレアーゼS1活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(I-2) 前記プロモーターと前記ヌクレアーゼS1遺伝子との間に配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAを有する、(I-1)に記載のアスペルギルス・オリゼ。
(I-3) 前記発現ベクターが、実質的にアスペルギルス・オリゼに由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、(I-1)又は(I-2)に記載のアスペルギルス・オリゼ。
(II) ヌクレアーゼS 1 の生産方法
(II-1) (I-1)〜(I-3)のいずれか一項に記載のアスペルギルス・オリゼを液体培地で培養し、当該培地からヌクレアーゼS1を回収する工程を含む、ヌクレアーゼS1の生産方法。
本発明の形質転換体及び生産方法によれば、アスペルギルス・オリゼを宿主として用いてヌクレアーゼS1を液体培養により高生産することができる。このため、本発明の方法によれば、固体培養ではなく液体培養であるため夾雑物が少ない条件で、ヌクレアーゼS1を工業的に生産することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明が対象とする糸状菌としては、長年清酒、醤油、味噌、みりんなどの醸造食品に利用されてきた安全な微生物であり、わが国の産業において利用頻度の高い宿主である点で、麹菌アスペルギルス・オリゼである。
(1)形質転換体
本発明のアスペルギルス・オリゼは、以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼ内で機能するターミネーターを有する遺伝子発現カセット、並びにアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子が同一又は別々の発現ベクターで形質転換されてなることを特徴とする:
(a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つアスペルギルス・オリゼ内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つヌクレアーゼS1活性を有するタンパク質をコードするDNA。
本明細書において、上記(b)のDNAからなるプロモーター、(d)のDNAからなるヌクレアーゼS1遺伝子をそれぞれ改変体とよぶことがある。
(1-1)プロモーター
プロモーターは、配列番号1に記載される塩基配列を有するプロモーターである。この配列番号1に示すプロモーターは、ヘモリシンプロモーター(特開2009-296958号公報)である。当該プロモーターは、特開2009-296958号公報に記載のプロモーターの部分配列に該当するが、この部分配列のみでもプロモーターとして機能する。
また、本発明におけるプロモーターは、配列番号1に記載される塩基配列からなるDNAと90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有し、且つアスペルギルス・オリゼ内でプロモーターとして機能するDNAからなるものであってもよい。
上記(b)における塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。
上記の改変されたプロモーターの製造は常法に従って行うことができる。
遺伝子発現カセットにおけるプロモーターの位置は、アスペルギルス・オリゼ内でプロモーターが機能し、所望のヌクレアーゼS1が発現し産生できる位置であれば、特に限定されないが、通常、ヌクレアーゼS1遺伝子配列の上流域に配置される。
(1-2)ヌクレアーゼS 1
ヌクレアーゼS1(EC 3.1.30.1)は、S1ヌクレアーゼとも呼ばれ、アスペルギルス属糸状菌、好ましくはアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、及びアスペルギルス・パラジチカス(Aspergillus parasiticus)、更に好ましくはアスペルギルス・オリゼにより生産される酵素である。当該酵素は、広義のホスホジエステラーゼに属し、リン酸ジエステル結合を加水分解する。また、一本鎖のDNA又はRNAを基質として加水分解する。ヌクレアーゼS1の酵素活性の測定は、一本鎖DNAの分解活性の測定、又はホスホジエステラーゼ活性測定方法である基質(アデノシン-3'-モノホスフェート)からの遊離リン酸の定量によってもできる。
ヌクレアーゼS1遺伝子は配列番号2に記載される塩基配列を有し、当該塩基配列はヌクレアーゼS1タンパク質をコードする。
本発明におけるヌクレアーゼS1遺伝子は、配列番号2に記載される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有し、且つヌクレアーゼS1活性を有するタンパク質をコードするDNAからなるものであってもよい。
上記(d)における塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。
このような改変されたヌクレアーゼS1遺伝子の製造は常法に従って行うことができる。
(1-3)ターミネーター
ターミネーターは、アスペルギルス・オリゼ内でターミネーターとして機能するものであればよいが、好ましくはアスペルギルス・オリゼに由来するターミネーターである。好ましくはアスペルギルス・オリゼに由来する、例えばα−アミラーゼ遺伝子のターミネーター、グルコアミラーゼ(glaB)ターミネーター(Gene. 207, 127-134, (1998))等を挙げることができ、より好ましくはglaBターミネーターである。
(1-4)遺伝子発現カセット
本発明における遺伝子発現カセットは、これらのプロモーター、ヌクレアーゼS1遺伝子、及びターミネーターが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。ただし、これらのヌクレオチドの配列はアスペルギルス・オリゼに由来する配列であることが望ましい。また、その他のヌクレオチドとして、通常ベクターが備える制限酵素切断部位などを備えていてもよい。
上記プロモーターと上記ヌクレアーゼS1遺伝子との間に配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAを有する場合、ヌクレアーゼS1の生産性が更に向上するため好ましい。配列番号3に記載される塩基配列は、sodMプロモーター(特開2001-224381号公報)の3'側の30 bpである。
(1-5)選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子は、アスペルギルス・オリゼ内で選択マーカーとして機能するもの、すなわち発現できるものであればよいが、好ましくは糸状菌、より好ましくはアスペルギルス属糸状菌、特にアスペルギルス・オリゼに由来する選択マーカー遺伝子である。かかる選択マーカー遺伝子として、例えば、niaD (Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 1795-1797(1995))、argB (Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC (Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA (Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG (Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983))、amdS (Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))、ハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))、及びカルボキシン耐性遺伝子(特開2009-124961号公報、Fungal Genet Biol. 46, 67-76(2009))、その他栄養要求性変異株の当該栄養要求性を相補する遺伝子(例えば、下記ロイシン要求性変異株に対するleu2遺伝子など)から選ばれるマーカー遺伝子を挙げることができる。
これらの選択マーカー遺伝子は、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、アスペルギルス属糸状菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う方法、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプローブを用いてアスペルギルス属糸状菌の染色体DNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより取得する方法などにより容易に入手することができる。また、宿主の糸状菌として、例えば、ロイシン要求性などの栄養要求性変異株を用いる場合、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。例えば、宿主がロイシン要求性変異株である場合、そのロイシン要求性を相補できる選択マーカー遺伝子を用いることができ、かかる遺伝子としてはβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするアスペルギルス・ニジュランス由来の遺伝子ANleu2及びアスペルギルス・オリゼ由来の遺伝子leu2を挙げることができる。なお、これらの場合、宿主として用いる糸状菌は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有していない株を用いる必要がある。
選択マーカー遺伝子としては、好ましくはβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするアスペルギルス・オリゼ由来のleu2遺伝子である。
(1-6)発現ベクター
本発明において、これらのアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子、及び遺伝子発現カセットを、一つの発現ベクターが有していてもよいし、又は別々の発現ベクターが有していてもよい。しかし、選択マーカー遺伝子と遺伝子発現カセットは別々の発現ベクターに存在することの方が、遺伝子発現カセットをより多く宿主に導入することができるため好ましい。
これらのアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子及び遺伝子発現カセットを、一つの発現ベクターが有している場合、選択マーカー遺伝子及び遺伝子発現カセットが直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。ただし、これらのヌクレオチドの配列はアスペルギルス・オリゼに由来する配列であることが望ましい。
また、本発明には、直鎖状の発現ベクター及び環状の発現ベクターの両者が含まれるが、(1)構築したプラスミドから1ステップのPCRで取得できるなど、環状の発現ベクターと比べて少ないステップで調製することができること、(2)形質転換効率が環状の発現ベクターと比べて高いという点から、好ましくは直鎖状の発現ベクターである。
(1-7)形質転換体
本発明の形質転換体は、前述する発現ベクターでアスペルギルス・オリゼを形質転換したものである。
なお、宿主として用いるアスペルギルス・オリゼは、栄養要求性変異株でもよいし、野生株でもよい。栄養要求性変異株としては、各種アミノ酸要求性変異株、亜硝酸要求性変異株などが挙げられる。宿主としては、常にロイシンの生合成ができないようにロイシン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているロイシン要求性変異株が好ましく、leu2遺伝子が欠損しているアスペルギルス・オリゼがより好ましい。
宿主の形質転換方法は、特に限定されず、後述するようなPEG-カルシウム法などの従来公知の方法を用いて行うことができる。
(2)ヌクレアーゼS 1 の生産方法
本発明のヌクレアーゼS1の生産方法は、前述した本発明のアスペルギルス・オリゼの形質転換体を培養する工程と、培養物から目的タンパク質を回収する工程を含む。
培養工程は、固体培地を用いる固体培養、又は液体培地を用いる液体培養のいずれでも行うことができる。好ましくは液体培地を用いた液体培養である。本発明の形質転換体は、固体培養と比べて液体培養の方がヌクレアーゼS1の生産性が高い。その上、液体培養により培養することで、ホスファターゼ(ヌクレアーゼを除く)などの夾雑物を低減させることが可能であり、結果として5'-IMPなどの核酸を蓄積しやすいという利点がある。
固体培地としては、アスペルギルス・オリゼの培養に使用される公知の固体培地を制限なく使用することができる。固体培地とはその固形の支持担体が栄養源を含むか、又は固形の支持担体に栄養源が添加されものであり、そこにアスペルギルス・オリゼが生育できる固形培地を指し示す。このような固体培地として主に、フスマ(小麦などの穀物の殻)、デンプン粉末、米・小麦・大豆の生あるいは蒸したもの、更にはメンブレンや多孔質の人工物(例えば、園芸に使われるバーミキュライト)等に栄養源を添加したもの等が挙げられる。特にフスマ、蒸した米が好ましい。
また、液体培地は、アスペルギルス・オリゼの培養に使用される公知の液体培地を制限なく使用できる。例えば、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、マルトース、フルクトース、グリセロール、スターチ、デキストリン、廃糖蜜などの炭水化物を含有するものが挙げられる。また、無機もしくは有機窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)が挙げられる。これらの炭素源及び窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウム、二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。具体的な液体培地としては、例えば、ポテトデキストロース培地(ニッスイ社)、最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3% NaNO3、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4、0.002% FeSO4、pH6.0)等を挙げることができる。なお、これらは1.5%程度の寒天を添加することで、固体培地として調製することもできる。
形質転換体の培養のpH条件は、通常pH 3.0〜10.0、好ましくはpH 3.5〜9、より好ましくはpH 4〜8、更により好ましくはpH 4.5〜7である。また、培養の温度条件は、通常25〜42℃、好適には30〜37℃で行うことができる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常1〜30日間程度、好ましくは2〜20日間程度、より好ましくは3〜10日程度を挙げることができる。
本発明の方法によれば、実施例で示すように目的とするヌクレアーゼS1を菌体外に生成することができる。このため、ヌクレアーゼS1の取得に際しては、培養上清を回収すればよい。さらに、これらの上清を膜分離などで精製してもよく、膜分離の際には限外濾過膜を用いることが好ましい。また、前記膜分離後あるいは前記上清を直接、公知のタンパク質精製方法、例えば、イオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的とするヌクレアーゼS1を単離し回収することができる。
(3)セルフクローニングベクター及びセルフクローニング株
本発明において、好ましい発現ベクターは、アスペルギルス・オリゼに由来する選択マーカー遺伝子、アスペルギルス・オリゼに由来するプロモーター、アスペルギルス・オリゼに由来するヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼに由来するターミネーターを含む、実質的にアスペルギルス・オリゼに由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである。また、本発明において、好ましい形質転換体は、上記セルフクローニングベクターで形質転換してなるアスペルギルス・オリゼである。
なお、本発明において「セルフクローニング株」とは、前述するように実質的に宿主糸状菌種と同種の生物由来のヌクレオチドから構成される株をいう。また、アスペルギルス・オリゼに由来しないヌクレオチドが含まれる場合も、せいぜい1〜10塩基程度、特に6〜10塩基程度である。この程度の大きさの挿入配列は、例えば制限酵素部位を導入するために挿入される場合がある。overlap PCR法、制限酵素不要型クローニングキット(例えば、商品名:In-Fusion (登録商標)、タカラバイオ社製)などにより構築された、アスペルギルス・オリゼに由来しないヌクレオチドが一切含まれない発現ベクターを用いることがより好ましい。
宿主のアスペルギルス・オリゼとしては、形質転換株が容易に選択できるように、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異した変異株を用いることが好ましい。この場合は、上記で説明した発現ベクターを用いて上記変異株を形質転換した後、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標とすることによって、発現ベクター中の目的ヌクレアーゼS1遺伝子が導入された形質転換体を選択することができる。
また、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異していないアスペルギルス・オリゼを宿主として用いることもできる。この場合は、目的とするヌクレアーゼS1遺伝子の発現又はその発現量の増大などを指標とすることによって形質転換体を選択することができる。形質転換方法は、特に限定されず、後述するようなPEG-カルシウム法などの公知の方法を制限なく採用できる。
斯くして得られるセルフクローニング株は、アスペルギルス・オリゼの染色体DNA中に、前述する発現ベクターが組み込まれた状態で存在し、大腸菌などの異種生物由来のヌクレオチドは実質的に存在しない。
(4)発現ベクターの構築
本発明に用いる発現カセット(プロモーター、アスペルギルス・オリゼに由来するヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼに由来するターミネーターを含む遺伝子断片)とマーカー遺伝子は、適宜アスペルギルス・オリゼのゲノムを鋳型として、PCR法、overlap PCR法などを用いて直接作製してもよい(直接法)。
また、前記作製遺伝子断片を、定法に従って制限酵素などを用いて大腸菌用プラスミドに一旦サブクローニングしてもよい。あるいは、DNAの受託製造を行っている企業(例えば、タカラバイオ社など)に全合成を依頼してもよく、その場合は一般的に発現カセットが大腸菌用プラスミドにサブクローニングされた形で納品される。
大腸菌用プラスミドにサブクローニングされた発現カセットの該当領域のみをPCR法で増幅し、更に別途マーカー部分をPCR法で増幅すれば、本発明で用いる発現ベクターは適宜調製できる(間接法)。
直接法又は間接法のどちらを用いても、本発明で用いる発現ベクターを作製できるが、マーカー遺伝子は直接法を用いて作製し、発現カセットは間接法を用いて作製することが好ましい。
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
実施例1
ヘモリシンプロモーター(配列番号1)、ヌクレアーゼS1遺伝子(配列番号2)及びglaBターミネーターDNA断片(配列番号4)が直接連結されたDNA配列を含むpUC由来大腸菌プラスミドを鋳型として、PCR法によりセルフクローニングベクターPhly-nucS1を増幅した。市販PCR酵素(商品名:Prime Star (登録商標) HS、タカラバイオ社製)を用い、増幅にはプライマー1:5'-TGAGTGAAGTTCCGGTCGGAGCAATCAGGGTCGGTTGGAGTATAT-3'(配列番号6)とプライマー2:5'-AGGATGTAGTATGTATACTTAGTTTGATTGCAGTGGACGTACAGG-3'(配列番号7)のセットを用い、98℃/10秒―55℃/15秒―72℃/3分のサイクルを35回繰り返した。
ヘモリシンプロモーター(配列番号1とその5'上流部を含む全長1499bp(配列番号5))、sodMプロモーターの部分配列(配列番号3)、ヌクレアーゼS1遺伝子(配列番号2)及びglaBターミネーターDNA断片(配列番号4)が直接連結されたDNA配列を含むpUC由来大腸菌プラスミドを鋳型として、PCR法によりセルフクローニングベクターPhly-30bp-nucS1を増幅した。プライマーとPCR条件はPhly-nucS1と同じとした。
アスペルギルス・オリゼのゲノムを鋳型として、PCR法によりマーカー遺伝子を増幅した。市販PCR酵素(商品名:Prime Star (登録商標) HS、タカラバイオ社製)を用い、増幅にはプライマー3:5'-GCGTGGTTTACTAGCTTTAGTGCTACCAAA-3'(配列番号8)とプライマー4:5'-CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGGCGATG-3'(配列番号9)のセットを用い、98℃/10秒−55℃/15秒−72℃/4分のサイクルを35回繰り返した。
得られたPCR産物をアガロース電気泳動し、精製キット(商品名:NucleoSin Extract (登録商標) II、MACHEREY-NAGEL社製)で精製した。精製したPhly-nucS1とマーカー遺伝子を用いて、アスペルギルス・オリゼleu-5(FERM P-20079)をPEG-カルシウム法で形質転換し、定法に従って形質転換体を得た。
Phly-30bp-nucS1についても、Phly-nucS1と同等の条件で形質転換した。得られた形質転換体について、Q-PCR法で導入されたコピー数を測定したところ、Phly-30bp-nucS1は8コピーであった。
試験例1
上記で調製した各形質転換体と宿主とを、以下の培養条件で液体培養した。
培地組成:2%(w/v)一般的な市販炭素源
3%(w/v)一般的な市販酵母由来窒素源
水道水
培地量 :40 ml/100 mlバッフル付きフラスコ
植菌量 :1.0×105個/ml
培養温度:30℃
攪拌 :100rpm
培養時間:69.5h
培養後にホスホジエステラーゼ活性の測定を行った。ホスホジエステラーゼ活性の測定は、第4版既存添加物自主規格(平成20年10月13日、日本食品添加物協会発行、p161-162)に準じた方法に従った。測定用バッファーに溶解させたアデノシン-3'-モノホスフェートを基質とし、70℃で酵素溶液を添加し、30分保温した後、過塩素酸を添加することにて反応を停止させた。遊離したリン酸量を、アミドール試薬とモリブデン酸アンモニウムにより反応させ、ABS 750 nmを測定することにより定量した。リン酸塩を標品として用いた。1分間に1μmolのリン酸を遊離する酵素量を1Uとした。結果を以下の表1に示す。
Figure 2017063666
試験例2
上記で調製した各形質転換体と宿主とを、以下の培養条件で液体培養した。
菌体(胞子):1×106個/ml final
培地 :デキストリン 2%(w/v)
ポリペプトン 1%(w/v)
酵母エキス 0.5%(w/v)
KH2PO4 0.05%(w/v)
MgSO4・7H2O 0.05%(w/v)
条件 :30℃、120rpm、3day
培養後にヌクレアーゼS1(nucS1)の生産量の測定を行った。結果を以下の表2に示す。
(nucS1の生産量の測定方法、非特許文献1と実質同等の方法)
熱変性させたサケ精子DNAをバッファー(100 mM NaCl, 1 mM ZnSO4, 30 mM CH3COONa, pH4.6)に4 mg/mlで融解(溶解)させたものを基質溶液とした。基質溶液50μlに適宜希釈した培養上清を50μl添加し、37℃で20分間反応させた。12%過塩素酸(60%過塩素酸(JIS試薬特級、ナカライテスク社製)を5倍希釈して調整) 100μlを添加して反応を停止させ、氷上で5分間静置した。15,000rpmで5分間遠心後、上清を回収し260 nmの吸光度を測定した。
37℃、pH4.6で1分間にDNAから1μgの可溶性ヌクレオチドを遊離する酵素量を1Uとした。
Figure 2017063666
得られた活性値を、非特許文献1記載のタンパク質あたりの比活性換算によれば、5 g/L以上nucS1を生産している計算となった。
また、炭素源を適宜変更、窒素源を適宜変更しても、nucS1は良好に生産された。
上記で調製したPhly-30bp-nucS1導入形質転換体について、試験例2の液体培養と固体培養(フスマ培養、散水率80%)とにおける夾雑物であるホスファターゼの活性を調べたところ、液体培養の方が固体培養と比べてヌクレアーゼ活性当たりのホスファターゼ活性が1/10以下まで低くなっていた。
また、上記で調製した各形質転換体について、固体培養でのS1ヌクレアーゼ活性を調べたところ、S1ヌクレアーゼ活性は存在していたが、液体培養よりは低かった。

Claims (4)

  1. 以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるヌクレアーゼS1遺伝子、及びアスペルギルス・オリゼ内で機能するターミネーターを有する遺伝子発現カセット、並びにアスペルギルス・オリゼ内で機能する選択マーカー遺伝子が同一又は別々の発現ベクターで形質転換されてなるアスペルギルス・オリゼ:
    (a)配列番号1に記載される塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号1に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つアスペルギルス・オリゼ内でプロモーターとして機能するDNA
    (c)配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
    (d)配列番号2に記載される塩基配列と90%以上の同一性を有し、且つヌクレアーゼS1活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  2. 前記プロモーターと前記ヌクレアーゼS1遺伝子との間に配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAを有する、請求項1に記載のアスペルギルス・オリゼ。
  3. 前記発現ベクターが、実質的にアスペルギルス・オリゼに由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、請求項1又は2に記載のアスペルギルス・オリゼ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアスペルギルス・オリゼを液体培地で培養し、当該培地からヌクレアーゼS1を回収する工程を含む、ヌクレアーゼS1の生産方法。
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