JP2017061591A - 環状オレフィン開環重合体の製造方法 - Google Patents

環状オレフィン開環重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒残渣を効果的に除去することができ、これにより触媒残渣が残存することによる色調の低下を有効に防止することのできる環状オレフィン開環重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】環状オレフィン開環重合体を製造する方法であって、環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を得る重合工程と、前記重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和する中和工程と、中和した前記重合体溶液中に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させる凝固工程と、を備えることを特徴とする環状オレフィン開環重合体の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状オレフィン開環重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、触媒残渣を効果的に除去することができ、これにより触媒残渣が残存することによる色調の低下を有効に防止することのできる環状オレフィン開環重合体の製造方法に関する。
シクロペンテンなどの環状オレフィンをメタセシス開環重合して得られる環状オレフィン開環重合体は、ゴム材料として広く知られており、カーボンブラックやシリカなどの無機粒子を配合して、ゴム材料として使用される。一般に、環状オレフィン開環重合体は、たとえば、特許文献1に開示されるように、WClやMoClなどの周期表第6族遷移金属化合物と、アルミニウム化合物やスズ化合物などの有機金属化合物とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒を用い、バルク重合や溶液重合で製造され、場合によっては分子量調整剤としてα−オレフィンが添加される。
このような環状オレフィン開環重合体は、タイヤ用のゴム材料などに好適に用いられている。しかしその一方で、たとえば、特許文献1の技術により得られる環状オレフィン開環重合体中には、開環重合で使用する重合触媒が触媒残渣として相当量残存しており、このような触媒残渣に起因して、環状オレフィン開環重合体の色調が悪化してしまい、応用範囲が限られてしまうという課題があった。特に、このような課題は、環状オレフィン開環重合体をより安定的かつ効率的に製造するという観点より、重合触媒を比較的多量に用いた場合に、より顕著なものとなっていた。
特開昭54−50598号公報
本発明の目的は、このような実状に鑑みてなされたものであり、触媒残渣を効果的に除去することができ、これにより触媒残渣が残存することによる色調の低下を有効に防止することのできる環状オレフィン開環重合体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで得られた環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和した後、凝固させることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、環状オレフィン開環重合体を製造する方法であって、環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を得る重合工程と、前記重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和する中和工程と、中和した前記重合体溶液中に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させる凝固工程と、を備えることを特徴とする環状オレフィン開環重合体の製造方法が提供される。
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法において、好ましくは、前記重合工程で用いる前記重合触媒として、ハロゲン化金属化合物を含むものを使用し、前記中和工程における、前記塩基性化合物の使用量を、前記ハロゲン化金属化合物に含まれるハロゲン原子1モルに対して、0.05〜10モルとする。
また、本発明によれば、環状オレフィン開環重合体中に含まれる触媒残渣を除去する方法であって、前記環状オレフィン開環重合体を含有する重合体溶液に、塩基性化合物を添加することで中和し、中和した前記重合体溶液に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させることを特徴とする触媒残渣の除去方法が提供される。
本発明によれば、触媒残渣を効果的に除去することができ、これにより触媒残渣が残存することによる色調の低下を有効に防止することのできる環状オレフィン開環重合体の製造方法が提供される。
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法は、
環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を得る重合工程と、
前記重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和する中和工程と、
中和した前記重合体溶液中に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させる凝固工程と、を備える。
<重合工程>
本発明の製造方法における、重合工程は、環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を得る工程である。
環状オレフィンとしては、特に限定されず、たとえば、モノ環状オレフィン、モノ環状ジエン、モノ環状トリエンや多環の環状オレフィン、多環の環状ジエン、多環の環状トリエンなどが挙げられる。モノ環状オレフィンとしては、置換基を有していてもよいシクロペンテン、置換基を有していてもよいシクロオクテンが例示される。モノ環状ジエンとしては、置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンが例示される。モノ環状トリエンとしては、置換基を有していてもよい1,5,9−シクロドデカトリエンが例示される。また、多環の環状オレフィンとしては置換基を有していてもよいノルボルネン化合物が例示される。これらのなかでも、シクロペンテンが好ましい。
本発明の製造方法においては、開環重合に用いる単量体として、シクロペンテンのみを使用し、得られる環状オレフィン開環重合体を、その主鎖を構成する繰返し単位として、シクロペンテン由来の構造単位のみからなる重合体としてもよいが、開環重合に用いる単量体として、シクロペンテンに加えて、シクロペンテンと共重合可能な単量体を使用し、得られる環状オレフィン開環重合体を、シクロペンテンと、シクロペンテンと共重合可能な単量体由来の構造単位とからなる共重合体としてもよい。シクロペンテンと共重合可能な単量体としては、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロペンテン以外の上述した環状オレフィンが例示される。開環重合に用いる単量体中における、シクロペンテンの使用量は、得られる環状オレフィン開環重合体中における、シクロペンテン由来の構造単位の割合が、全繰り返し単位に対して、80モル%以上となる量が好ましく、90モル%以上となる量がより好ましく、95モル%以上となる量がさらに好ましい。
開環重合に用いる重合触媒としては、特に限定されず、環状オレフィンを開環重合できるものである限りにおいて特に限定されないが、ハロゲン化金属化合物を含むものを用いることが好ましい。このようなハロゲン化金属化合物を含むものとしては、たとえば、ハロゲン原子を含有する周期表第6族遷移金属化合物や、ハロゲン原子を含有するルテニウムカルベン錯体などを好適に用いることができ、ハロゲン原子を含有する周期表第6族遷移金属化合物を用いることが、得られる環状オレフィン開環重合体の分子量を制御し易いという観点より、より好ましい。
本発明で用いることができる周期表第6族遷移金属化合物は、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第6族遷移金属原子を有する化合物、具体的には、クロム原子、モリブデン原子、またはタングステン原子を有する化合物であり、モリブデン原子を有する化合物、またはタングステン原子を有する化合物が好ましく、特に、環状オレフィンに対する溶解性が高いという観点より、タングステン原子を有する化合物がより好ましい。
このようなハロゲン原子を含有する周期表第6族遷移金属化合物(以下、適宜、「周期表第6族遷移金属化合物」という。)の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドなどのモリブデン化合物;タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリドなどのタングステン化合物;などが挙げられる。
周期表第6族遷移金属化合物の使用量は、「重合触媒中の第6族遷移金属原子:開環重合に用いる単量体」のモル比で、好ましくは1:100〜1:200,000、より好ましくは1:200〜1:150,000、さらに好ましくは1:500〜1:100,000の範囲である。周期表第6族遷移金属化合物の使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、得られる環状オレフィン開環重合体からの触媒残渣の除去が困難となり、得られる環状オレフィン開環重合体の色調に劣るものとなってしまう。
また、重合触媒として、周期表第6族遷移金属化合物を使用する場合には、周期表第6族遷移金属化合物は、下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物と組み合わせて用いることが好ましい。有機アルミニウム化合物は、上述した周期表第6族遷移金属化合物とともに重合触媒として作用する。
(R3−xAl(OR (1)
上記一般式(1)中、RおよびRは、炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜10の炭化水素基である。また、xは、0<x<3である。
およびRの具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。
また、上記一般式(1)において、xは、0<x<3である。すなわち、一般式(1)においては、RとORとの組成比は、それぞれ0<3−x<3、および0<x<3の各範囲において、任意の値をとることができるが、重合活性を高くできるという点より、xは、0.5<x<1.5であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物は、たとえば、下記一般式(2)に示すように、トリアルキルアルミニウムと、アルコールとの反応によって合成することができる。
(RAl + xROH → (R3−xAl(OR + (RH (2)
なお、上記一般式(1)中のxは、上記一般式(2)に示すように、対応するトリアルキルアルミニウムとアルコールの反応比を規定することによって、任意に制御することが可能である。
有機アルミニウム化合物の使用量は、用いる有機アルミニウム化合物の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜100倍モル、より好ましくは0.2〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜20倍モルの割合である。有機アルミニウム化合物の使用量が少なすぎると、重合活性が不十分となる場合があり、多すぎると、開環重合時において、副反応が起こりやすくなる傾向にある。
また、本発明で用いることができるハロゲン原子を含有するルテニウムカルベン錯体(以下、適宜、「ルテニウムカルベン錯体」という。)の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドが挙げられる。
ルテニウムカルベン錯体の使用量は、「ルテニウムカルベン錯体:開環重合に用いる単量体」のモル比で、好ましくは1:500〜1:2,000,000、より好ましくは1:700〜1:1,500,000、さらに好ましくは1:1,000〜1:1,000,000の範囲である。
周期表第6族遷移金属化合物や、ルテニウムカルベン錯体などの開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
また、環状オレフィンを含む単量体を開環重合させる際には、必要に応じて、得られる環状オレフィン開環重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2−ブテン、3−ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
ジオレフィン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造する環状オレフィン開環重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いる環状オレフィンを含む単量体に対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。
また、分子量調整剤としては、上述したオレフィン化合物やジオレフィン化合物に代えて、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いてもよい。変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物は、変性基を有し、かつ、メタセシス反応性を有するオレフィン性炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物であり、このような変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることで、重合により得られる環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端に、変性基を導入することができる。環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端に、変性基を導入することにより、シリカやカーボンブラックなどの充填剤を配合した場合における、ゴム組成物中の充填剤の分散性をより高めることができる。このような変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物としては、特に限定されないが、シリカに対する親和性の観点より、たとえば、環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端にオキシシリル基を導入することを望む場合には、オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を使用すればよい。なお、オキシシリル基とは、ケイ素−酸素結合を有する基をいう。
オキシシリル基の具体例としては、アルコキシシリル基、アリーロキシシリル基、アシロキシ基、アルキルシロキシシリル基、またはアリールシロキシシリル基などが挙げられる。また、アルコキシシリル基またはアリーロキシシリル基、アシロキシ基を加水分解してなるヒドロキシシリル基を挙げることができる。これらのなかでも、シリカに対する親和性の観点より、アルコキシシリル基が好ましい。
アルコキシシリル基は、1つ以上のアルコキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリメトキシシリル基、(ジメトキシ)(メチル)シリル基、(メトキシ)(ジメチル)シリル基、(メトキシ)(ジクロロ)シリル基、トリエトキシシリル基、(ジエトキシ)(メチル)シリル基、(エトキシ)(ジメチル)シリル基、(ジメトキシ)(エトキシ)シリル基、(メトキシ)(ジエトキシ)シリル基、トリプロポキシシリル基などが挙げられる。
このようなオキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物としては、たとえば、下記一般式(3)〜(6)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2017061591
(上記一般式(3)中、R〜Rは、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。また、Lは、単結合、またはオキシシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、pは、0〜10の整数である。ただし、p=0のとき、R〜R10のうち、少なくとも1つは、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。)
Figure 2017061591
(上記一般式(4)中、R11〜R13は、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R14〜R18は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。また、Lは、単結合、またはオキシシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、qは、1〜10の整数である。)
Figure 2017061591
(上記一般式(5)中、R24、R25は、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R19〜R23、R26〜R30は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。また、L、Lは、単結合、またはシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、r、sは、0〜10の整数である。ただし、r=0のとき、R19〜R21のうち、少なくとも1つは、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基であり、s=0のとき、R28〜R30のうち、少なくとも1つは、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。)
Figure 2017061591
(上記一般式(6)中、R36、R37は、水素原子、または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R31〜R35、R38〜R42は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アシロキシ基、アルキルシロキシ基、およびアリールシロキシ基から選択される基である。また、L、Lは、単結合、またはオキシシリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結ぶ基であり、t、uは、1〜10の整数である。)
上記一般式(3)〜(6)において、R〜R、R11〜R13、R24、R25、R36、R37は水素原子であることが好ましく、これらを水素原子とすることにより、オキシシリル基含有オレフィン性炭化水素化合物をメタセシス反応性により優れたものとすることができる。
また、上記一般式(3)〜(6)において、L〜Lは、シリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とを結合可能な基であればよく特に限定されないが、オキシシリル基含有オレフィン性炭化水素化合物をメタセシス反応性により優れたものとすることができという点より、炭化水素基、エーテル基、または三級アミノ基が好ましく、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基がより好ましい。また、シリル基とオレフィン性炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子とは、これらの基を介さずに、直接結合するような構成であってもよい。
なお、上記一般式(3)〜(6)で示される化合物のうち、一般式(3)、(4)で示される化合物を用いた場合には、これらがメタセシス反応することにより、環状オレフィン開環重合体の片末端にオキシシリル基を導入することができ、また、上記一般式(5)、(6)で示される化合物を用いた場合には、これらがメタセシス反応することにより、環状オレフィン開環重合体の両末端にオキシシリル基を導入することができる。
一般式(3)、(4)で示される化合物の好ましい具体例としては、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1−アリルヘプタメチルトリシロキサン、1−アリルノナメチルテトラシロキサン、1−アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1−アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
一般式(5)、(6)で示される化合物の好ましい具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、2−ブテン−1,4−ジ(トリメトキシシラン)、2−ブテン−1,4−ジ(トリエトキシシラン)、1,4−ジ(トリメトキシシリルメトキシ)−2−ブテンなどのアルコキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリフェノキシシラン)などのアリーロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリアセトキシシラン)などのアシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]などのアルキルシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリフェニルシロキシ)シラン]などのアリールシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(ヘプタメチルトリシロキサン)、2−ブテン−1,4−ジ(ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン)などのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
オキシシリル基含有オレフィン性炭化水素化合物などの変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物は、環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端への変性基の導入作用に加えて、分子量調整剤としても作用するため、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物の使用量は、製造する環状オレフィン開環重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いる環状オレフィンを含む単量体に対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。
重合反応は、通常、上述した重合触媒の存在下、溶媒中で行う。この際に用いる溶媒としては、重合反応において不活性であり、環状オレフィンを含む単量体、および重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは90℃未満、さらに好ましくは80℃未満、特に好ましくは70℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間〜72時間、より好ましくは10分間〜20時間である。
<中和工程>
本発明の製造方法における中和工程は、上述した重合工程により、環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることによって得られた環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和する工程である。
本発明の製造方法においては、上述した重合工程により得られた環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和することにより、重合体溶液中に含まれる触媒残渣が、溶媒や水に可溶な形態となると推察される。そして、本発明の製造方法においては、後述する凝固工程において、このような触媒残渣が、溶媒または水と共に除去される。これにより、本発明の製造方法によれば、触媒残渣を効果的に除去することが可能となる。ただし、本発明の技術的範囲は、前記の推察によって制限されるものでは無い。
中和工程で用いる塩基性化合物としては、水溶液とした場合のpHが7より大きく塩基性を示す物質である限り特に限定されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラートなどのアルカリ金属アルコラート;マグネシウムメチラート、マグネシウムエチラートなどのアルカリ土類金属アルコラート;アンモニア;ピリジン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]7−ウンデセン(DBU)などのアミン類;などが挙げられる。これらの塩基性化合物は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、触媒残渣の除去効果が大きいという観点より、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩が好ましい。
中和工程における塩基性化合物の使用量は、重合工程に用いる重合触媒の量に応じた量とすればよいが、たとえば、重合触媒としてハロゲン化金属化合物を含むものを用いる場合には、用いるハロゲン化金属化合物中に含まれるハロゲン原子1モルに対して、塩基性化合物の使用量を0.05〜10モルとすることが好ましく、0.2〜5モルとすることがより好ましく、0.25〜2モルとすることが特に好ましい。塩基性化合物の使用量が少なすぎると、触媒残渣を効果的に除去することができなくなる場合があり、多すぎると、生産効率が低下したり、得られる環状オレフィン開環重合体の一部がゲル化するおそれがある。
中和工程において、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液に、塩基性化合物を添加する際には、塩基性化合物を、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液にそのまま添加してもよいが、塩基性化合物の溶解性、重合体溶液との混合のし易さの観点より、塩基性化合物を水に溶解させた水溶液の状態、または、塩基性化合物を有機溶媒に溶解させた状態にて添加することが好ましい。
なお、中和工程において、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液に、所望により、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステルを添加してもよい。多価アルコールの脂肪酸エステルを添加することにより、得られる環状オレフィン開環重合体のゲル化を抑制することができる。多価アルコールの脂肪酸エステルの添加量は、環状オレフィン開環重合体100重量部に対して、好ましくは0.0002〜15重量部である。
<凝固工程>
本発明の製造方法における凝固工程は、上述した中和工程により、中和した環状オレフィン開環重合体の重合体溶液中に含まれる、環状オレフィン開環重合体を凝固させる工程である。
凝固工程における凝固方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用すればよいが、たとえば、スチームストリッピングにより、環状オレフィン開環重合体と、溶媒とを分離することで、環状オレフィン開環重合体を凝固させる方法や、アルコール(たとえば、メタノールやエタノールなど)などの貧溶媒を用いて、環状オレフィン開環重合体を凝固させる方法などが挙げられる。
本発明においては、上述した中和工程において、塩基性化合物を用いて中和することにより、重合体溶液中に含まれる触媒残渣が溶媒や水に可溶な形態となると推察され、凝固工程では、このような触媒残渣が溶媒または水とともに除去されることとなる。そして、これにより、得られる環状オレフィン開環重合体中の触媒残渣の含有量を効果的に低減することができる。
なお、凝固工程において、環状オレフィン開環重合体を凝固させる前に、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液に、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。
そして、本発明の製造方法においては、凝固を行った後、必要に応じて、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いて、環状オレフィン開環重合体をろ別し、次いで、乾燥させることにより、固形状の環状オレフィン開環重合体を得ることができる。乾燥方法としては、たとえば、ロール、バンバリー式脱水機、スクリュー押出機式脱水機などの圧縮水絞機を用いて脱水する方法;スクリュー型押出乾燥機、ニーダー型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの乾燥機を用いる方法;などを挙げることができる。
本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、上述した重合工程、中和工程および凝固工程を経て得られるものであるため、触媒残渣の含有量が低減されており、これにより触媒残渣が残存することによる色調の低下が有効に防止されたものである。そのため、タイヤ用途をはじめとして、広範な用途に好適に用いることができる。
また、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、このように触媒残渣が低減されたものであることから、環状オレフィン開環重合体を保存した後におけるゲル化の発生、特に、環状オレフィン開環重合体の重合体鎖末端に変性基を導入した場合における、保存後におけるゲル化の発生をも有効に防止することができるものであり、これにより、保存安定性に優れたものである。具体的には、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、トルエン不溶分量が好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下と低減されたものである。なお、トルエン不溶分量は、環状オレフィン開環重合体を1重量%の濃度でトルエン中に浸漬し、室温で8時間撹拌した後、100メッシュの金網で濾過し、金網上の残留物を乾燥して重量を測定し、測定に用いた環状オレフィン開環重合体の重量に対する、残留物の重量割合を算出することにより、求めることができる。
なお、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、好ましくは20,000〜900,000であり、より好ましくは50,000〜800,000である。重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで、ゴム特性を十分なものとしながら、製造および取扱いが良好なものとすることができるため、好ましい。また、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜5、より好ましくは1.1〜2.5である。
本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは−130〜−10℃であり、より好ましくは−125〜−20℃、さらに好ましくは−120〜−90℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲であることにより、低温時のゴム特性を良好なものとすることができる。
<ゴム組成物>
また、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体は、各種配合剤を配合することで、ゴム組成物とすることができる。
このような配合剤としては、ゴム加工分野において通常用いられている、充填剤、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などが挙げられる。これらの配合剤は、その配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
充填剤としては、たとえば、シリカやカーボンブラックなどが挙げられる。
シリカとしては、特に限定されないが、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは15〜100重量部、特に好ましくは20〜80重量部である。
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
また、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体を用いて、ゴム組成物を得る際には、ゴム成分として、本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体以外のゴムを配合することもできる。本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50重量%、ブタジエン部分の1,2−結合含有量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのゴムの配合量は、その配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
本発明の製造方法により得られる環状オレフィン開環重合体を用いて得られるゴム組成物は、通常、ゴム架橋物として使用される。ゴム組成物の架橋方法は、特に限定されず、ゴム架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中にゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、予め成形しておいたゴム組成物を加熱して架橋してもよい。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分程度である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、各種の試験および評価は、下記の方法にしたがって行った。
〔重合体収率〕
重合により得られた重合体溶液を耐圧ガラス反応容器から2g採取し、大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿した重合体を回収し、40℃で3日間、真空乾燥することにより固形状の重合体を得て、重量法により環状オレフィン開環重合体の重合体収率を算出した。
〔分子量〕
重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定器 :HLC−8320 EcoSCE(東ソー社製)
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した。
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔残留タングステン量の定量〕
環状オレフィン開環重合体を約0.02g程度メスフラスコにて秤量し、硫酸および硝酸を添加して湿式分解を行った。放冷後、超純水約6mlを添加し、ヒーターで透明になるまで加熱した後、10mlに定容し、ICP−AES測定を行い、ICP−AES測定結果より残留タングステン量を定量した。
〔トルエン不溶分量の測定〕
環状オレフィン開環重合体を1重量%となるようにトルエン中に浸漬させ、室温にて、8時間撹拌下した。次いで、100メッシュのフィルターで濾過して、フィルター残留部(フィルター上に残留したろ物)を室温で真空乾燥したのち、フィルター残留物重量を測定し、測定に用いた環状オレフィン開環重合体の重量に対する、フィルター残留物重量の割合を算出することで、トルエン不溶分量(重量%)を求めた。
〔参考例1〕
ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)の調製
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、トルエン88部、および25.4重量%のトリイソブチルアルミニウム/n−ヘキサン溶液(東ソー・ファインケム社製)7.8部を加えた。次いで、容器を−45℃に冷却し、激しく攪拌しながら、n−ヘキサノール1.02部(トリイソブチルアルミニウムに対して当モル量)をゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながら室温になるまで放置し、ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)を調製した。
〔合成例1〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液116部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液57部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1−ヘキセン0.26部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液173部を加えて、0℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止し、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−1)を得た。重量法による算出された重合体収率は17%であった。また、環状オレフィン開環重合体の重量平均分子量は378,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.88であった。
〔合成例2〕
1−ヘキセン0.26部の代わりに、1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン1.24部を使用した以外は、合成例1と同様にして、重合反応を行い、重合体鎖の両側の末端に変性基としてのトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−2)を得た。重量法による算出された重合体収率は18%であった。また、重合体鎖末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体の重量平均分子量は369,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。
〔実施例1〕
合成例1で得られた環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−1)200部に、10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を加えて激しく攪拌した。次いで、重合体溶液に、重合体に対して0.2重量%となるように老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を添加し、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、40℃で3日間、真空乾燥することにより、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−1)を得た。そして、得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−1)について、上記方法にしたがって、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
合成例1で得られた環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−1)200部に、10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を加えて激しく攪拌した。次いで、重合体に対して0.2重量%となるような量にて老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を添加した大過剰のエチルアルコール中に、重合体溶液を注いだ。次いで、沈殿した重合体を回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−2)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−2)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部に代えて、10重量%水酸化ナトリウムのエチルアルコール溶液2.96部を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−3)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−3)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部に代えて、10重量%炭酸ナトリウム水溶液3.92部を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−4)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−4)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部に代えて、10重量%炭酸カリウム水溶液5.11部を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−5)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−5)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部に代えて、0.1重量%水酸化カルシウム水溶液274部を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−6)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−6)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
合成例2で得られた、重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−2)200部に、重合体に対して1重量%となるようにソルビタンモノラウラート(製品名「スパン20」、東京化成工業社製)を添加した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を加えて激しく攪拌した。次いで、重合体溶液に、重合体に対して0.2重量%となるように老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を添加し、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、40℃で3日間、真空乾燥することにより、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)を得た。そして、得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)について、上記方法にしたがって、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例8〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を2.96部から2.22部に変更した以外は、実施例7と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−8)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−8)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔実施例9〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を2.96部から1.48部に変更した以外は、実施例7と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−9)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−9)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−10)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−10)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−11)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−11)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部に代えて、1規定塩酸7.4部を使用した以外は、実施例2と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−12)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−12)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
10重量%水酸化ナトリウム水溶液2.96部を添加しなかった以外は、実施例7と同様にして、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−13)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−13)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
〔比較例5〕
合成例2で得られた、重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する環状オレフィン開環重合体の重合体溶液(S−2)200部に、重合体に対して1重量%となるようにソルビタンモノラウラート(製品名「スパン20」、東京化成工業社製)を添加した。次いで、重合体に対して0.2重量%となるような量にて老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を添加した大過剰のエチルアルコール中に、重合体溶液を注いだ。次いで、沈殿した重合体を回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、固形状の環状オレフィン開環重合体(A−14)を得た。得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−14)について、上記方法に従い、残留タングステン量を定量した。結果を表1に示す。
Figure 2017061591
〔実施例1〜9、比較例1〜5の評価〕
表1に示すように、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液に対し、塩基性化合物を添加し、次いで、凝固を行うことにより得られる固形状の環状オレフィン開環重合体は、重合体中に含まれる、触媒残渣としてのタングステン量が低減されたものであった。また、得られた環状オレフィン開環重合体は、いずれも色調に優れるものであった(実施例1〜9)。
一方、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液に対し、塩基性化合物を添加しなかった場合や、塩基性化合物に代えて酸性化合物を使用した場合には、重合体中に含まれる、触媒残渣としてのタングステン量は高い水準であった。また、得られた環状オレフィン開環重合体は、いずれも色調に劣るものであった(比較例1〜5)。
〔実施例10〕
実施例7で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)を空気下、温度80℃の条件でイナートオーブンに3日間保管した。そして、3日後に取り出して、上記方法にしたがって、トルエン不溶分量を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例11〕
実施例7で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)に代えて、実施例8で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−8)を使用した以外は、実施例10と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
〔実施例12〕
実施例7で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)に代えて、実施例9で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−9)を使用した以外は、実施例10と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
〔比較例6〕
実施例7で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)に代えて、比較例4で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−13)を使用した以外は、実施例10と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
〔比較例7〕
実施例7で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−7)に代えて、比較例5で得られた固形状の環状オレフィン開環重合体(A−14)を使用した以外は、実施例10と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
Figure 2017061591
〔実施例10〜12、比較例6,7の評価〕
表2に示すように、触媒残渣としてのタングステン量が低減された環状オレフィン開環重合体は、空気下、温度80℃の条件でイナートオーブンに3日間保管した後における、トルエン不溶分量が低く抑えられており、長期安定性に優れたものであることが確認できる(実施例10〜12)。
一方、触媒残渣としてのタングステン量が高い水準にある環状オレフィン開環重合体は、空気下、温度80℃の条件でイナートオーブンに3日間保管した後における、トルエン不溶分量が高くなり、長期安定性に劣るものであることが確認できる(比較例6,7)。

Claims (3)

  1. 環状オレフィン開環重合体を製造する方法であって、
    環状オレフィンを含む単量体を、溶媒中で、重合触媒の存在下にて開環重合させることで、環状オレフィン開環重合体の重合体溶液を得る重合工程と、
    前記重合体溶液を、塩基性化合物を用いて中和する中和工程と、
    中和した前記重合体溶液中に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させる凝固工程と、を備えることを特徴とする環状オレフィン開環重合体の製造方法。
  2. 前記重合工程で用いる前記重合触媒として、ハロゲン化金属化合物を含むものを使用し、
    前記中和工程における、前記塩基性化合物の使用量を、前記ハロゲン化金属化合物に含まれるハロゲン原子1モルに対して、0.05〜10モルとする請求項1に記載の環状オレフィン開環重合体の製造方法。
  3. 環状オレフィン開環重合体中に含まれる触媒残渣を除去する方法であって、
    前記環状オレフィン開環重合体を含有する重合体溶液に、塩基性化合物を添加することで中和し、中和した前記重合体溶液に含まれる環状オレフィン開環重合体を、凝固させることを特徴とする触媒残渣の除去方法。
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