JPWO2016158677A1 - シクロオレフィン開環共重合体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コールドフロー性に優れ、これにより、保存安定性が高く、かつ、製造時の取り扱いも容易であるシクロオレフィン開環共重合体を提供すること。【解決手段】本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、シクロペンテン由来の構造単位、及び、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有するシクロオレフィン開環共重合体であって、前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量が80モル%以上であり、前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が20モル%以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、シクロオレフィン開環共重合体、その製造方法およびゴム組成物に関し、さらに詳しくは、コールドフロー性に優れるシクロオレフィン開環共重合体およびその製造方法と、該共重合体を用いて得られるゴム組成物に関する。
一般に、シクロペンテンは、WCl6やMoCl5などの周期表第6族遷移金属化合物と、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、テトラブチルスズなどの有機金属活性化剤とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒の存在下でメタセシス開環重合することで、不飽和の直鎖状重合体を与えることが知られている。このような直鎖状の重合体は、優れたゴム特性を示し、タイヤ用ゴムとしての特性を有することが知られている。しかしながら、直鎖状の重合体であるがゆえに、タイヤ用ゴムとして使用するに当たって、コールドフロー性に劣るため、保存安定性に問題があった。
特許文献1には、シクロペンテンと、所定量のビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物とを開環共重合して得られるシクロペンテン開環共重合体が記載されている。特許文献1のシクロペンテン開環共重合体は、分岐状の重合体であるため、コールドフロー性に優れている。
しかし、特許文献1のシクロペンテン開環共重合体は、分岐状の構造に起因して、ゲル化しやすく、製造時の取り扱いも難しかった。
特開2011−126966号公報
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、コールドフロー性に優れ、これにより、保存安定性が高く、かつ、製造時の取り扱いも容易であるシクロオレフィン開環共重合体を提供することを目的としている。
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、シクロペンテン由来の構造単位、および、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有するシクロオレフィン開環共重合体において、各構造単位の含有量を特定範囲とすることで、上記課題を解決することを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕シクロペンテン由来の構造単位、及び、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有するシクロオレフィン開環共重合体であって、
前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量が80モル%以上であり、
前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が20モル%以下である、シクロオレフィン開環共重合体。
〔2〕前記単環環状オレフィン化合物の炭素数が3〜8である〔1〕に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
〔3〕前記単環環状オレフィン化合物が、シクロオクタジエンを含む〔1〕または〔2〕に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
〔4〕前記シクロオクタジエンが、1,5−シクロオクタジエンである〔3〕に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
〔5〕前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量が85モル%を超え、
前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が15モル%未満である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体を製造する方法であって、周期表第6族遷移金属化合物(A)と、下記一般式(2)で示される有機アルミニウム化合物(B)の存在下で、シクロペンテンと、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを開環共重合するシクロオレフィン開環共重合体の製造方法。
(R13-abAl(OR2ab (2)
(上記一般式(2)中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2は、ハロゲン原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。aは1または2、bは0または1、かつa+b<3を満たす。)
〔7〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体を含有するゴム成分に、シリカおよび/またはカーボンブラックを配合してなるゴム組成物。
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、シクロペンテン由来の構造単位、及び、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有し、シクロペンテン由来の構造単位の含有量とシクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量とが特定の比率であるため、コールドフロー性に優れる。
シクロオレフィン開環共重合体
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、シクロペンテン由来の構造単位、及び、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位(以下、「単環環状オレフィン化合物由来の構造単位」と記載することがある。)を含有し、前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量は80モル%以上であり、前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量は20モル%以下である。シクロペンテン由来の構造単位とは、シクロペンテンを重合して形成される構造単位のことをいう。また、単環環状オレフィン化合物由来の構造単位とは、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物を重合して形成される構造単位のことをいう。なお、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物を、「単環環状オレフィン化合物」と略記することがある。
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、直鎖状の重合体であるため、ゴム特性および加工性に優れる。また、シクロペンテン由来の構造単位の含有量及び単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量を上記範囲とすることで、シクロオレフィン開環共重合体のコールドフロー性が向上するため、保存安定性に優れる。このような観点から、前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、シクロペンテン由来の構造単位の含有量は、好ましくは85モル%を超え、より好ましくは90モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下である。また、前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量は、好ましくは15モル%未満、より好ましくは10モル%以下であり、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上である。シクロペンテン由来の構造単位の含有量及び/又は単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲外であると、コールドフロー性が低下する。シクロオレフィン開環共重合体における各構造単位の含有量(共重合比率)は、後述の方法により測定できる。
シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とは、一般式(1)で示される化合物であり、開環重合すると、−(CH2)−の構造単位と、−(CH=CH)−の構造単位とを含む重合体を与えるものをいう。
Figure 2016158677
(式中、nは1〜10であり、mは1〜18である。ただし、n=1かつm=3の場合を除く。nが2以上の場合、オレフィン性炭素−炭素二重結合の炭素原子と、他のオレフィン性炭素−炭素二重結合の炭素原子とが直接結合してもよいし、オレフィン性炭素−炭素二重結合の炭素原子以外の炭素原子を介して結合してもよい。)
一般式(1)で示される化合物の中でも、コスト及び取扱い性の観点から、単環環状オレフィン化合物の炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜8である。ただし、炭素数5の無置換の単環環状オレフィン化合物、すなわち、シクロペンテンは除かれる。
単環環状オレフィン化合物の具体例としては、シクロブテン、シクロへキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン化合物;シクロペンタジエン、シクロオクタジエン等の環状ジオレフィン化合物;シクロドデカトリエン(好ましくは1,5,9−シクロドデカトリエン)等の環状トリオレフィン化合物;等が挙げられる。これらの中でも、重合時の共重合比率を制御し易いことから、シクロオクタジエンが好ましく、1,3−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエンがより好ましく、1,5−シクロオクタジエンが特に好ましい。なお、上記単環環状オレフィン化合物は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、シクロオレフィン開環共重合体は、所期の目的を損なわない範囲において、所望により、シクロペンテン由来の構造単位及びシクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の他に、メタセシス反応性のあるその他の環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有していてもよい。このようなその他の環状オレフィン化合物(以下、「共重合可能なその他の環状オレフィン化合物」と記載することがある。)としては、2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのノルボルネン化合物が挙げられる。なお、上記共重合可能なその他の環状オレフィン化合物は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
メタセシス反応性のあるその他の環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量は、20モル%未満とすることが好ましく、より好ましくは14モル%未満、さらに好ましくは7モル%以下とする。
シクロオレフィン開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000〜1,000,000、より好ましくは200,000〜900,000である。シクロオレフィン開環共重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることで、優れた機械物性を有するゴム架橋物(例えば、タイヤ)を与えることが可能となる。重量平均分子量が低すぎると、ゴム特性に劣ることがある。一方、重量平均分子量が高すぎると、製造および取扱いが困難となることがある。
シクロオレフィン開環共重合体の重量平均分子量は、上述の範囲内で使用目的に応じて適宜調整すればよい。シクロオレフィン開環共重合体の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
シクロオレフィン開環共重合体の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、通常4.0以下であり、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下であり、通常、1.5以上である。このようなMw/Mnを有することにより、優れた機械物性を有するゴム架橋物を与えることが可能となる。
シクロオレフィン開環共重合体を構成する構造単位中に存在する二重結合において、そのシス/トランス比は、特に限定されないが、通常10/90〜90/10の範囲で設定され、低温でのゴム特性を良好なものとする観点から、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜90/10の範囲である。シス比率が40%以上であれば、得られるシクロオレフィン開環共重合体は非晶性となり、低温でのゴム特性に優れるため好ましい。特に、本発明に係る製造方法においては、重合触媒として、周期表第6族遷移金属化合物(A)および有機アルミニウム化合物(B)を含有するものを用いるため、室温に近い温度条件である20℃以上の条件で重合反応を行った場合でも、得られるシクロオレフィン開環共重合体のシス比率を40%以上とすることができ、これにより、シクロオレフィン開環共重合体を非晶性であり、低温でのゴム特性に優れるものとすることができる。
シクロオレフィン開環共重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、低温でのゴム特性を良好なものとする観点から、好ましくは−98℃以下であり、より好ましくは−99℃以下、さらに好ましくは−100℃以下であり、好ましくはー120℃以上である。シクロオレフィン開環共重合体のガラス転移温度(Tg)は、繰返し単位中に存在する二重結合におけるシス/トランス比などによって、制御することができる。
シクロオレフィン開環共重合体は、融点(Tm)を有するものであってもよい。シクロオレフィン開環共重合体が融点を有するものである場合、その温度は、低温でのゴム特性を良好なものとする観点から、0℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることがより好ましい。シクロオレフィン開環共重合体の融点の有無や、融点を有する場合のその温度は、繰返し単位中に存在する二重結合におけるシス/トランス比などによって、制御することができる。シクロオレフィン開環共重合体のガラス転移温度(Tg)や融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温で測定される。
シクロオレフィン開環共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、特に限定されないが、好ましくは20〜150であり、より好ましくは22〜120、さらに好ましくは25〜100である。シクロオレフィン開環共重合体のムーニー粘度が上記範囲に制御されると、加工性に優れる。ムーニー粘度が低すぎると、高温での混練が困難になり、加工性に劣ることがある。一方、ムーニー粘度が高すぎると、混練が困難となり、同様に、加工性に劣ることがある。シクロオレフィン開環共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定できる。
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、重合体鎖末端に、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する官能基(以下、「末端官能基」と総称する。)を有してもよい。なお、以下において、末端官能基を有するシクロオレフィン開環共重合体を「変性シクロオレフィン開環共重合体」と記載することがある。シクロオレフィン開環共重合体の重合体鎖末端に末端官能基を導入することにより、本発明に係るゴム組成物に充填剤として配合される、シリカやカーボンブラック等との親和性がより向上し、充填剤の分散性に優れる。その結果、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。このような観点から、上記末端官能基の中でも、窒素原子、酸素原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する官能基がより好ましい。
窒素原子を含有する官能基としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレタン結合基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。
酸素原子を含有する官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。
リン原子を含有する官能基としては、リン酸基、ホスフィノ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。
イオウ原子を含有する官能基としては、スルホニル基、チオール基、チオエーテル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。
ケイ素原子を含有する官能基としては、アルキルシリル基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。
また、末端官能基としては、上記した基を複数含有する官能基であってもよい。これらのなかでも、ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができるという観点から特に好適な官能基の具体例としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エポキシ基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が挙げられ、オキシシリル基が特に好ましい。なお、オキシシリル基とはケイ素−酸素結合を有する基である。
シクロオレフィン開環共重合体の製造方法
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体は、周期表第6族遷移金属化合物(A)、下記一般式(2)で示される有機アルミニウム化合物(B)の存在下で、シクロペンテンと、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを開環共重合することにより、製造される。
(R13-abAl(OR2ab (2)
(上記一般式(2)中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2は、ハロゲン原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。aは1または2、bは0または1、かつa+b<3を満たす。)
(周期表第6族遷移金属化合物(A))
本発明で用いる周期表第6族遷移金属化合物(A)は、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第6族遷移金属原子を有する化合物、具体的には、クロム原子、モリブデン原子、またはタングステン原子を有する化合物であり、重合活性が高いという観点から、モリブデン原子を有する化合物、またはタングステン原子を有する化合物が好ましい。周期表第6族遷移金属化合物(A)は、後述する有機アルミニウム化合物(B)とともに重合触媒として作用する。周期表第6族遷移金属化合物(A)としては、周期表第6族遷移金属原子を有する化合物であればよく、特に限定されないが、周期表第6族遷移金属原子のハロゲン化物、アルコラート、アリレート、オキシ化物、イミド化物などが挙げられ、これらのなかでも、重合活性が高いという観点より、ハロゲン化物、オキシ化物、イミド化物が好ましい。
このような周期表第6族遷移金属化合物(A)の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリド、トリドデシルアンモニウムモリブデート、メチルトリオクチルアンモニウムモリブデート、トリデシルアンモニウムモリブデート、トリオクチルアンモニウムモリブデート、テトラフェニルアンモニウムモリブデートなどのモリブデン化合物;タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリド、タングステンオキソテトラフェノレートなどのタングステン化合物;などが挙げられる。
周期表第6族遷移金属化合物(A)の使用量は、「重合触媒中の第6族遷移金属原子:(シクロペンテン+シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物)」のモル比で、通常1:100〜1:200,000、好ましくは1:200〜1:150,000、より好ましくは1:500〜1:100,000の範囲である。周期表第6族遷移金属化合物(A)の使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、得られるシクロオレフィン開環共重合体からの触媒残渣の除去が困難となる場合がある。
(有機アルミニウム化合物(B))
本発明で用いる有機アルミニウム化合物(B)は、下記一般式(2)で表される化合物である。有機アルミニウム化合物(B)は、上述した周期表第6族遷移金属化合物(A)とともに重合触媒として作用する。
(R13-abAl(OR2ab (2)
上記一般式(2)において、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。
上記一般式(2)において、R2は、ハロゲン原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、触媒活性の観点から、ハロゲン原子を含有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、炭素数1〜20の炭化水素基としては、前記R1で例示したのと同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基としては、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、1,3−ジブロモ−2−プロピル基、1−クロロ−2−ブチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−トリクロロメチル−2−プロピル基、トリブロモメチル−1−エチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基等が挙げられる。
また、Xはハロゲン原子であり、前記R2で例示したものと同様のものが挙げられる。
上記一般式(2)において、aは1または2であり、好ましくは1である。bは0または1、かつa+b<3を満たすものである。なお、a、bの値が異なる化合物の混合物である場合に、その混合物を化学式で示そうとすれば、a及びbは整数ではなく、小数となる場合がある。
有機アルミニウム化合物(B)の具体的な例として以下の化合物が挙げられる。
a=1又は2、b=0の例としては、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムイソプロポキシド、ジイソブチルアルミニウムブトキシド、ジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)、ジエチルアルミニウム(2−トリクロロエトキシド)、ジエチルアルミニウム(2−トリブロモエトキシド)、ジエチルアルミニウム(1,3−ジクロロ−2−プロポキシド)、ジエチルアルミニウム(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシド)、ジエチルアルミニウム(1,1,1−トリクロロ−2−メチル−2−プロポキシド)、ジエチルアルミニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)、エチルアルミニウムジ(2−トリクロロエトキシド)、エチルアルミニウムジ(2−トリブロモエトキシド)、エチルアルミニウムジ(1,3−ジクロロ−2−プロポキシド)、エチルアルミニウムジ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシド)、エチルアルミニウムジ(1,1,1−トリクロロ−2−メチル−2−プロポキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)などが挙げられる。
a=1、b=1の例としては、エチル(クロロ)アルミニウムエトキシド、エチル(クロロ)アルミニウムイソプロポキシド、エチル(クロロ)アルミニウムブトキシド、エチル(クロロ)アルミニウム(2−トリクロロエトキシド)、エチル(クロロ)アルミニウム(2−トリブロモエトキシド)、エチル(ブロモ)アルミニウム(1,3−ジクロロ−2−プロポキシド)、エチル(クロロ)アルミニウム(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシド)、エチル(クロロ)アルミニウム(1,1,1−トリクロロ−2−メチル−2−プロポキシド)、エチル(クロロ)アルミニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)などが挙げられる。
このような上記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物(B)は、たとえば、下記一般式(3)に示すように、トリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドと、アルコールとの反応によって合成することができる。
(R13bAlXb + aR2OH
→ (R13-abAl(OR2ab + aR1H (3)
なお、上記一般式(2)中、aとbは、上記一般式(3)に示すように、対応するトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドとアルコールの反応比を規定することによって、任意に制御することが可能である。
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、用いる有機アルミニウム化合物(B)の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物(A)を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜100倍モル、より好ましくは0.2〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜20倍モルの割合である。有機アルミニウム化合物(B)の使用量が少なすぎると、重合活性が不十分となる場合があり、多すぎると、開環重合時において、副反応が起こりやすくなる傾向にある。
また、本発明においては、シクロオレフィン開環共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤を重合反応系に添加してもよい。分子量調整剤としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシラン等のケイ素含有ビニル化合物;2−ブテン、3−ヘキセン等の二置換オレフィン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン;等が挙げられる。なかでも、重合活性が高く、分子量調整に優れる点において、α−オレフィン類が好ましい。
これら分子量調整剤の使用量は、目的とするシクロオレフィン開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いるシクロペンテンとシクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物の合計量に対して、0.01〜10モル%の範囲とすることが好ましい。これら化合物の添加量が上記範囲にあると、得られるシクロオレフィン開環共重合体の分子量が適切な範囲となる。
また、本発明においては、重合触媒として、酸素原子含有炭化水素化合物をさらに使用してもよい。酸素原子含有炭化水素化合物をさらに使用することにより、重合活性を向上させることができるとともに、得られるシクロオレフィン開環共重合体の重量平均分子量を向上させることができる。酸素原子含有炭化水素化合物としては、酸素原子を有する炭化水素化合物であればよく、特に限定されないが、ハロゲン原子を置換基として有してもよい炭素数2〜30のエステル化合物、ケトン化合物またはエーテル化合物が好ましく、室温以上における重合活性の向上効果、および高分子量化の効果が高いという点より、炭素数4〜10のエステル化合物、ケトン化合物またはエーテル化合物が好ましい。なお、このようなエステル化合物、ケトン化合物またはエーテル化合物としては、環状のエステル化合物、ケトン化合物やエーテル化合物であってもよいし、さらには、1分子中に複数個のエステル結合、ケトン結合やエーテル結合を含有する化合物であってもよい。
エステル化合物の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸オクチル、酢酸2−クロロエチル、アセチルアクリル酸メチル、ε−カプロラクトン、グルタル酸ジメチル、σ−ヘキサノラクトン、ジアセトキシエタンなどが挙げられる。
ケトン化合物の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、1’−アセトナフトン、2−アセチル安息香酸メチル、4’−クロロアセトフェノン、クロロアセトン、1,3−ジクロロ−2−プロパノンなどが挙げられる。
エーテル化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
酸素原子含有炭化水素化合物を使用する場合における、その使用量は、用いる酸素原子含有炭化水素化合物の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物(A)を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜10倍モル、より好ましくは0.2〜8倍モル、さらに好ましくは0.5〜5倍モルの割合である。酸素原子含有炭化水素化合物の使用量が少なすぎると、酸素原子含有炭化水素化合物の添加効果が得難くなる傾向にあり、多すぎると、重合活性が不十分となるおそれがある。
(開環共重合)
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体の製造方法においては、シクロペンテンと、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを、上述した周期表第6族遷移金属化合物(A)と有機アルミニウム化合物(B)に接触させることにより、シクロペンテン/単環環状オレフィン化合物の開環共重合を行なう。
これらを接触させ、開環重合を開始させる方法としては特に限定されない。
たとえば、シクロペンテン、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物および有機アルミニウム化合物(B)の存在下に、周期表第6族遷移金属化合物(A)を添加することにより、シクロペンテン/単環環状オレフィン化合物の開環共重合を開始させる方法が挙げられる。あるいは、周期表第6族遷移金属化合物(A)、および有機アルミニウム化合物(B)を予め混合しておき、これにシクロペンテンと、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを添加することにより、シクロペンテン/単環環状オレフィン化合物の開環重合を行なってもよい。
また、分子量調整剤を使用する場合には、分子量調整剤を、開環共重合を行なう際に、シクロペンテン/単環環状オレフィン化合物と混合すればよい。
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体の製造方法において、開環共重合反応は、無溶媒で行ってもよいし、溶媒中で行なってもよい。開環共重合反応を溶媒中で行う際に用いる溶媒としては、重合反応において不活性であり、開環共重合に用いるシクロペンテン、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物、共重合可能なその他の環状オレフィン化合物、周期表第6族遷移金属化合物(A)、有機アルミニウム化合物(B)、および必要に応じて使用される分子量調整剤を溶解可能な溶媒であればよい。このような溶媒は、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒が好ましく用いられる。炭化水素系溶媒の具体例としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。
重合温度は、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは−20℃以上、特に好ましくは0℃以上である。また、重合温度の上限は特に限定されないが、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは90℃未満、さらに好ましくは80℃未満、特に好ましくは70℃未満である。重合温度が高すぎると、得られるシクロオレフィン開環共重合体の分子量が低くなりすぎるおそれがあり、重合温度が低すぎると、重合速度が遅くなり、結果として、生産性に劣る場合がある。
また、重合反応時間は、好ましくは1分間〜72時間、より好ましくは10分間〜20時間である。
本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体の製造方法においては、周期表第6族遷移金属化合物(A)、有機アルミニウム化合物(B)、場合によっては分子量調整剤と、シクロペンテン及びシクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを接触させて開環重合を開始し、重合転化率が所定の値に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させることにより、シクロオレフィン開環共重合体を製造することができる。
また、本発明においては、所望により、得られたシクロオレフィン開環共重合体に、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、本発明においては、所望により、伸展油を配合してもよい。
さらに、重合反応を行う際に、溶媒を用い、重合反応を溶媒中で行なった場合において、重合体溶液から重合体を取得する方法としては、公知の方法を採用すればよく、特に限定されないが、例えば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状ゴムを取得する方法などが採用できる。
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、上述した本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体を含有するゴム成分に、シリカおよび/またはカーボンブラックを配合してなることが好ましい。
シリカの具体例としては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シリカの窒素吸着比表面積は、好ましくは50〜300m2/g、より好ましくは80〜220m2/g、特に好ましくは100〜170m2/gである。比表面積がこの範囲であると、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。また、シリカのpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5〜6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠して、BET法にて測定することができる。
シリカを用いる場合における配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは15〜100重量部、特に好ましくは20〜80重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。シリカの配合量が少なすぎても、また、多すぎても、ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物の低発熱性が低下するおそれがある。
また、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEFなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、好ましくは5〜200m2/g、より好ましくは20〜130m2/g、さらに好ましくは40〜80m2/gである。また、充填剤としてのカーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸着量は、好ましくは5〜200ml/100g、より好ましくは50〜160ml/100g、さらに好ましくは70〜130ml/100gである。カーボンブラックの比表面積およびジブチルフタレート吸着量が上記範囲にあると、成形性が良好で、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。
カーボンブラックを用いる場合における配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは2〜120重量部、さらに好ましくは15〜100重量部、特に好ましくは5〜80重量部である。カーボンブラックの配合量を上記範囲とすることにより、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。カーボンブラックの配合量が少なすぎても、また、多すぎても、ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物の低発熱性が低下するおそれがある。
また、本発明に係るゴム組成物に、シリカとカーボンブラックとの両方を配合する場合には、シリカとカーボンブラックとの合計量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは25〜200重量部であり、より好ましくは30〜150重量部である。
さらに、本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として、上述した本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体以外のその他のゴムを含有していてもよい。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シスーBR、低シスーBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。上記その他のゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に係るゴム組成物において、シクロオレフィン開環共重合体は、ゴム成分中、10〜100重量%を占めることが好ましく、20〜100重量%を占めることがより好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。ゴム成分中におけるシクロオレフィン開環共重合体の割合を上記範囲とすることで、低発熱性に優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。
ゴム成分に、シリカやカーボンブラックなどの充填剤を配合する方法は特に限定されず、固形ゴムに添加して混練する方法(乾式混練法)、およびゴムの溶液に添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
また、本発明に係るゴム組成物は、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、シランカップリング剤、プロセス油、活性剤、充填剤(シリカおよびカーボンブラックを除く)、粘着付与剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、滑剤、水酸化アルミニウム、ワックスなどの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
本発明に係るゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよい。例えば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と、ゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤および架橋促進剤を混合して目的のゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分の混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。また、混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。混練物と架橋剤および架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
本発明に係るゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物は、上記特性を活かし、各種用途、例えばトレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用、あるいはホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品、電子機器部品、医療用部材、文具用部材、ゴルフボールなどのスポーツ用部材などのゴム製品への利用、さらには耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記によった。
〔分子量〕
テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
重合体のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温で測定した。
〔シス/トランス比〕
重合体のシス/トランス比を、13C−NMRスペクトル測定から求めた。
〔共重合比率〕
キャピラリーカラムとしてInert Cap1(ジーエルサイエンス社製)を使用したガスクロマトグラフィーを用いて重合系中の残留量モノマー量を測定し、その残留量より、重合体の共重合比率を算出した。
〔コールドフロー性評価〕
得られた重合体を50℃に保ち、内径5.0mmのガラス管で10.0kPaの差圧により5分間吸引し、吸い込まれた重合体の重量を測定することにより、1分間当たり吸引された重合体量(mg/min)を求めることにより、コールドフロー性の評価を行った。吸引された重合体量が少ないほど(コールドフロー性の値が小さいほど)、コールドフローし難く好ましいと判断できる。
〔参考例1〕
ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)の調製
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、トルエン88部、および25.4重量%のトリイソブチルアルミニウム/n−ヘキサン溶液(東ソー・ファインケム社製)7.8部を加えた。次いで、容器を−45℃に冷却し、激しく攪拌しながら、n−ヘキサノール1.02部(トリイソブチルアルミニウムに対して当モル量)をゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながら室温になるまで放置し、ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)を調製した。
〔実施例1〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl6/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン285部、1,5−シクロオクタジエン24部および1−ヘキセン0.37部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、0℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿した重合体を回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、207部のシクロオレフィン開環共重合体を得た。
そして、得られたシクロオレフィン開環共重合体について、上記方法に従い、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度(Tg)、シス/トランス比、共重合比率、およびコールドフロー性の各評価、測定を行った。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
シクロペンテン、1,5−シクロオクタジエンおよび1−ヘキセンの配合量を変更した。具体的には、シクロペンテン270部、1,5−シクロオクタジエン48部および1−ヘキセン0.33部に変更した以外は、実施例1と同様にして重合を行い、シクロオレフィン開環共重合体204部を得た。そして、得られたシクロオレフィン開環共重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
シクロペンテン、1,5−シクロオクタジエンおよび1−ヘキセンの配合量を変更した。具体的には、シクロペンテン240部、1,5−シクロオクタジエン95部および1−ヘキセン0.33部に変更した以外は、実施例1と同様にして重合を行い、シクロオレフィン開環共重合体204部を得た。そして、得られたシクロオレフィン開環共重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
シクロペンテン、1,5−シクロオクタジエンおよび1−ヘキセンの配合量を変更した。具体的には、シクロペンテン210部、1,5−シクロオクタジエン143部および1−ヘキセン0.33部に変更した以外は、実施例1と同様にして重合を行い、シクロオレフィン開環共重合体204部を得た。そして、得られたシクロオレフィン開環共重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
シクロペンテン、1,5−シクロオクタジエンおよび1−ヘキセンの配合量を変更した。具体的には、シクロペンテン300部および1−ヘキセン0.41部に変更した以外(1,5−シクロオクタジエンは加えていない)は、実施例1と同様にして重合を行い、シクロペンテン開環重合体222部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016158677
表1に示すように、本発明に係るシクロオレフィン開環共重合体では、コールドフロー性評価が300以下であり、コールドフロー性に優れる(実施例1,2)。
これに対して、シクロオレフィン開環共重合体の全繰り返し単位中、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を20モル%を超えて含有しているシクロオレフィン開環共重合体では、コールドフロー性評価が300以上であり、コールドフロー性に劣る(比較例1,2)。また、シクロペンテン由来の構造単位のみからなるシクロペンテン開環重合体でも、コールドフロー性評価が300以上であり、コールドフロー性に劣るものであった(比較例3)。

Claims (7)

  1. シクロペンテン由来の構造単位、及び、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物由来の構造単位を含有するシクロオレフィン開環共重合体であって、
    前記シクロオレフィン開環共重合体における、全繰り返し単位中の、前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量が80モル%以上であり、
    前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が20モル%以下である、シクロオレフィン開環共重合体。
  2. 前記単環環状オレフィン化合物の炭素数が3〜8である請求項1に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
  3. 前記単環環状オレフィン化合物が、シクロオクタジエンを含む請求項1または2に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
  4. 前記シクロオクタジエンが、1,5−シクロオクタジエンである請求項3に記載のシクロオレフィン開環共重合体。
  5. 前記シクロペンテン由来の構造単位の含有量が85モル%を超え、
    前記単環環状オレフィン化合物由来の構造単位の含有量が15モル%未満である請求項1〜4のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体を製造する方法であって、周期表第6族遷移金属化合物(A)と、下記一般式(2)で示される有機アルミニウム化合物(B)の存在下で、シクロペンテンと、シクロペンテン以外の無置換の単環環状オレフィン化合物とを開環共重合するシクロオレフィン開環共重合体の製造方法。
    (R13-abAl(OR2ab (2)
    (上記一般式(2)中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2は、ハロゲン原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。aは1または2、bは0または1、かつa+b<3を満たす。)
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のシクロオレフィン開環共重合体を含有するゴム成分に、シリカおよび/またはカーボンブラックを配合してなるゴム組成物。
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