図1に、本発明のエレベーター機器の異常検出方法の一実施例が適用されるエレベーターの概略構成を示す。
図1に示すように、エレベーター1は、昇降路2内に設置された巻上機3により巻上機綱車3aを回転駆動させて、ロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本のロープ4を動かして乗りかご5及び釣合い錘6を昇降させる構成となっている。
乗りかご5及び釣合い錘6を昇降させているロープ4は、一端が乗りかご側ロープエンド部4aで固定され、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、巻上機綱車3a、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6aを介して、もう一端(他端側)が釣合い錘側ロープエンド部4bで固定されている。
ロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本のロープ4には、常時一定の張力がかかっており、その張力は乗りかご側ロープエンド部4a及び釣合い錘側ロープエンド部4bにて管理されている。
しかしながら、それらの各ロープ4の張力は均一ではなく、ロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本のロープ4の伸びや摩損、更には、巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗等の異常により張力が変動するため、それらの異常を検知するために、ロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本の各ロープ4の張力を測定する必要がある。
異常を検知するためのロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本の各ロープ4の張力測定方法を、図2を用いて説明する。
ロープ4の一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本の各ロープ4の張力測定方法は、図2に示すように、まず、作業者7が乗りかご5の上に乗り込み、昇降路2内の中間階8付近まで乗りかご5を移動させて、乗りかご5を停止させる。作業者7は張力測定装置(例えば、ばね秤等)9を使用し、乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1、乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2、乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3、釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4、釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5、釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6の張力をそれぞれ測定する。
前述した張力測定装置9による張力測定は、エレベーター1の定期的な点検時に実施するものであり、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の張力測定値の変化の有無を捉えることで、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の伸びや摩損、更には、巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗の異常を検知する。
各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の張力測定値の変化から各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の伸びや摩損、更には、巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗の検出方法の原理について、図2及び図3を用いて説明する。
図3は、縦軸に張力、横軸に時間を示しており、例として、張力T1ロープ10、張力T2ロープ11、張力T3ロープ12の計3本の張力の時間による変化を示している(張力T1ロープ10、張力T2ロープ11、張力T3ロープ12は、図1及び図2に示す各ロープから任意のロープ3本を抽出したものである)。
エレベーター1の新設またはロープ4の交換時は、乗りかご側ロープエンド部4a及び釣合い錘側ロープエンド部4bにて一端側から他端側間の各機器間に位置する複数本のロープ4の張力を均一に調整しているが、据付時のロープ4の捩れにより、乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1、乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2、乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3、釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4、釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5、釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6のそれぞれに作用している張力は不均一となる。各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の張力が不均一の状態で乗りかご5及び釣合い錘6が昇降路2内を昇降すると、張力が一番大きい張力T1ロープ10の初期伸びが進行する。それに伴い、次に張力が大きい張力T2ロープ11と一番張力が小さい張力T3ロープ12も、張力T1ロープ10に比べると小さいながらも同様に初期伸びが進行する。初期伸びの伸び率は、張力T1ロープ10>張力T2ロープ11>張力T3ロープ12となる。
張力T1ロープ10、張力T2ロープ11、張力T3ロープ12の初期伸びが進行すると、それぞれの張力は、図3に示す張力均一ライン13にて一時的にほぼ均一となる。この時、張力T1ロープ10は初期伸びしきっており、これ以上は初期伸びしない状態であり、一方、張力T2ロープ11及び張力T3ロープ12はまだ初期伸びする状態である。この状態で乗りかご5及び釣合い錘6が昇降路2内を昇降すると、張力T2ロープ11及び張力T3ロープ12は、初期伸びしていき張力が小さくなっていくが、張力T1ロープ10は初期伸びしきっており、これ以上は初期伸びしない状態であるため、張力がかかり続けることとなる。
この状態が続くと、張力T1ロープ10は伸びないかわりに巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6aのいずれか或いは各綱車の溝が摩耗し続けることとなり、ロープ4の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗に繋がることとなる。
それら各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗については、作業者7が定期的に行う点検において、張力T1ロープ10、張力T2ロープ11、張力T3ロープ12の張力が均一となる張力均一ライン13から張力T1ロープ10、張力T2ロープ11、張力T3ロープ12の張力が、再び不均一となる異常検出ライン14とでの張力測定値の変化の有無を捉えることで、異常検出可能である。
前述してきたことを踏まえて、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗の検出方法について図2、図3お及び図4を用いて説明する。
まず、定期的な点検にて、作業者7は乗りかご5の上に乗り込み、昇降路2内の中間階8付近まで乗りかご5を移動させて乗りかご5を停止させる。作業者7は、張力測定装置9にて乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1、乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2、乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3、釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4、釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5、釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6のそれぞれの張力測定を行う(ステップ(以下、Sと記載する)1)。S1で測定した測定値が、張力均一ライン13での張力測定値からの変化の有無の確認を行う(S2)。
この時、張力均一ライン13での張力測定値から変化がなかった場合は、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗は発生していない(S3)ので、作業は終了となる。
一方、張力均一ライン13での張力測定値から変化があった場合は、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗は発生している(S4)ため、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗を確認する(S5)。
そして、乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1にて張力測定値の変化があった場合は、乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1に摩損が発生しており、第1乗りかご下綱車5a1に溝の偏摩耗が発生していることとなる。
乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2にて張力測定値の変化があった場合は、乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2に摩損が発生しており、乗りかご側頂部綱車5b及び第2乗りかご下綱車5a2に溝の偏摩耗が発生していることとなる。
乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3にて張力測定値の変化があった場合は、乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3に摩損が発生しており、乗りかご側頂部綱車5b及び巻上機綱車3aに溝の偏摩耗が発生していることとなる。
釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4にて張力測定値の変化があった場合は、釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4に摩損が発生しており、釣合い錘側頂部綱車6b及び巻上機綱車3aに溝の偏摩耗が発生していることとなる。
釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5にて張力測定値の変化があった場合は、釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5に摩損が発生しており、釣合い錘側頂部綱車6b及び釣合い錘綱車6aに溝の偏摩耗が発生していることとなる。
釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6にて張力測定値の変化があった場合は、釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6に摩損が発生しており、釣合い錘綱車6aに溝の偏摩耗が発生していることとなる。
作業者7は、前述した各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗の異常を確認し、必要に応じて部品の交換を行う。
このような本実施例のように、定期的な点検により乗りかご側ロープエンド部4a−第1乗りかご下綱車5a1間のロープ4c1、乗りかご側頂部綱車5b−第2乗りかご下綱車5a2間のロープ4c2、乗りかご側頂部綱車5b−巻上機綱車3a間のロープ4c3、釣合い錘側頂部綱車6b−巻上機綱車3a間のロープ4c4、釣合い錘側頂部綱車6b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c5、釣合い錘側ロープエンド部4b−釣合い錘綱車6a間のロープ4c6のそれぞれの張力測定を行い、張力均一ライン13から異常検出ライン14の張力測定値の変化の有無を捉えることで、各ロープ4c1、4c2、4c3、4c4、4c5及び4c6の摩損及び巻上機綱車3a、第1乗りかご下綱車5a1、第2乗りかご下綱車5a2、乗りかご側頂部綱車5b、釣合い錘側頂部綱車6b、釣合い錘綱車6a各綱車の溝の偏摩耗が確実に検出可能である。
なお、本発明は上記したエレベーター1に限られず、巻上機3などが機械室に設置されるエレベーターにも適用可能である。また、本発明における張力均一ライン13(張力均一状態)とは、厳密に各張力が均一であることに限定して解釈されるものではなく、エレベーター1の新設時またはロープ交換時の各張力のバラつきの幅が徐々に狭まってきて、所定の範囲に収まった時間帯とすればよい。実際には、各張力のバラつきの幅が狭まり、再度広がる際の変わり目の時間帯となる。
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。即ち、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。