上記のX線検出器は、光反射層によって水分を遮断して蛍光変換膜の劣化の防止を図っている。また、上記のX線検出器は、光反射層の蛍光変換膜の内部への浸透を抑制することにより、X線解像度の改善を図っている。しかしながら、光反射層は、粘着物質の流動によって先端部に追従するように変形し、互いに隣り合う柱状結晶の先端部同士の間の空間を充填する。また、粘着物質の流動性の大きさによっては、柱状結晶のより基端側においても、互いに隣り合う柱状結晶間に浸透することが想定される。これらの場合には、柱状結晶から光反射層に可視光が漏れることにより、X線解像度及び光出力が低下するそれがある。
本発明は、解像度及び光出力を向上可能なシンチレータパネル及び放射線検出器を提供することを目的とする。
本発明に係るシンチレータパネルは、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、主面を有し、シンチレーション光に対して透過性を有する基板と、主面上に設けられたシンチレータ層と、主面に交差する方向からみてシンチレータ層を囲うように主面上に設けられた枠体と、主面及びシンチレータ層上に配置され、シンチレータ層を封止するように枠体に固定された保護層と、シンチレータ層と保護層との間に配置されたシート状の光機能層と、光機能層と保護層とに挟まれて弾性変形された弾性部材と、を備え、主面からの枠体の高さは、主面からのシンチレータ層の高さよりも大きく、シンチレータ層は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶を含み、光機能層は、弾性部材の弾性力によってシンチレータ層に押圧され、複数の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このシンチレータパネルにおいては、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層が、基板の主面に設けられ、保護層により封止されている。シンチレータ層と保護層との間にはシート状の光機能層が配置され、光機能層と保護層との間には弾性部材が配置されている。弾性部材は、光機能層と保護層とにより挟まれて弾性変形されている。光機能層は、弾性部材の弾性力によってシンチレータ層に押圧され、シンチレータ層の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このように、このシンチレータパネルにおいては、シート状の光機能層が用いられる。このため、光機能層が、互いに隣り合う柱状結晶の先端の間の間隙を充填したり、柱状結晶間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層が弾性部材の弾性力によりシンチレータ層に押圧されるので、光機能層が柱状結晶の先端から離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層は、シンチレータ層よりも高い(厚い)枠体に固定される。このため、例えば平板状の保護層を用いることにより、枠体とシンチレータ層との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層と保護層との間に形成される。したがって、そのスペースに光機能層と弾性部材を配置することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、弾性部材は、主面に沿って延びるシート状であってもよい。このとき、弾性部材は、発泡プラスチックを含んでもよい。この場合、弾性部材によって、基板の主面に沿って一様に光機能層を押圧することができる。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、弾性部材は、光機能層又は保護層と一体化されていてもよい。この場合、弾性部材によって光機能層をシンチレータ層に押圧するように構成することが容易である。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、柱状結晶の先端は、平坦化されていてもよい。このように柱状結晶の先端が平坦化されている場合であっても、光機能層が互いに隣り合う柱状結晶の先端同士の間隙を充填したり柱状結晶間に浸透したりすることが避けられるので、解像度及び光出力を向上可能である。
本発明に係る放射線検出器は、主面と、主面上に形成された複数の光電変換素子と、を有する基板と、光電変換素子上に設けられ、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータ層と、主面に交差する方向からみてシンチレータ層を囲うように主面上に設けられた枠体と、主面及びシンチレータ層上に配置され、シンチレータ層を封止するように枠体に固定された保護層と、シンチレータ層と保護層との間に配置されたシート状の光機能層と、光機能層と保護層とに挟まれて弾性変形された弾性部材と、を備え、主面からの枠体の高さは、主面からのシンチレータ層の高さよりも大きく、シンチレータ層は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶を含み、光機能層は、弾性部材の弾性力によってシンチレータ層に押圧され、複数の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
この放射線検出器においては、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層が、複数の光電変換素子を有する基板の主面に設けられ、保護層により封止されている。シンチレータ層と保護層との間にはシート状の光機能層が配置され、光機能層と保護層との間には弾性部材が配置されている。弾性部材は、光機能層と保護層とにより挟まれて弾性変形されている。光機能層は、弾性部材の弾性力によってシンチレータ層に押圧され、シンチレータ層の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このように、この放射線検出器においては、シート状の光機能層が用いられる。このため、光機能層が、互いに隣り合う柱状結晶の先端の間の間隙を充填したり、柱状結晶間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層が弾性部材の弾性力によりシンチレータ層に押圧されるので、光機能層が柱状結晶の先端から離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層は、シンチレータ層よりも高い(厚い)枠体に固定される。このため、例えば平板状の保護層を用いることにより、枠体とシンチレータ層との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層と保護層との間に形成される。したがって、そのスペースに光機能層と弾性部材を配置することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。
本発明に係る放射線検出器においては、弾性部材は、主面に沿って延びるシート状であってもよい。このとき、弾性部材は、発泡プラスチックを含んでもよい。この場合、弾性部材によって、基板の主面に沿って一様に光機能層を押圧することができる。
本発明に係る放射線検出器においては、弾性部材は、光機能層又は保護層と一体化されていてもよい。この場合、弾性部材によって光機能層をシンチレータ層に押圧するように構成することが容易である。
本発明に係る放射線検出器においては、柱状結晶の先端は、平坦化されていてもよい。このように柱状結晶の先端が平坦化されている場合であっても、光機能層が互いに隣り合う柱状結晶の先端同士の間隙を充填したり柱状結晶間に浸透したりすることが避けられるので、解像度及び光出力を向上可能である。
本発明に係るシンチレータパネルは、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、主面を有し、シンチレーション光に対して透過性を有する基板と、主面上に設けられたシンチレータ層と、主面に交差する方向からみてシンチレータ層を囲うように主面上に設けられた枠体と、主面及びシンチレータ層上に配置され、シンチレータ層を封止するように枠体に固定された保護層と、保護層のシンチレータ層に対向する面に一体的に形成された硬質の光機能層と、を備え、主面からの枠体の高さは、主面からのシンチレータ層の高さよりも大きく、シンチレータ層は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶を含み、光機能層は、保護層が枠体に固定された状態においてシンチレータ層に押圧され、複数の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このシンチレータパネルにおいては、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層が、基板の主面に設けられ、保護層により封止されている。保護層のシンチレータ層に対向する面には、硬質の光機能層が一体的に形成されている。そして、光機能層は、保護層が枠体に固定された状態でシンチレータ層に押圧される。これにより、光機能層は、シンチレータ層の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このように、このシンチレータパネルにおいては、保護層に一体形成された硬質の光機能層が用いられる。このため、光機能層が、互いに隣り合う柱状結晶の先端の間の間隙を充填したり、柱状結晶間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層が保護層の固定に応じてシンチレータ層に押圧されるので、光機能層が柱状結晶の先端から離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層は、シンチレータ層よりも高い(厚い)枠体に固定される。このため、例えば平板状の保護層を用いることにより、枠体とシンチレータ層との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層と保護層との間に形成される。したがって、そのスペースに応じて光機能層を形成することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。また、光機能層が硬質であるとは、例えば、樹脂を含む材料を硬化させることにより光機能層が形成されることによって、硬化した樹脂の硬度に応じた硬度を有することを意味する。
本発明に係る放射線検出器は、主面と、主面上に形成された複数の光電変換素子と、を有する基板と、光電変換素子上に設けられ、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータ層と、主面に交差する方向からみてシンチレータ層を囲うように主面上に設けられた枠体と、主面及びシンチレータ層上に配置され、シンチレータ層を封止するように枠体に固定された保護層と、保護層のシンチレータ層に対向する面に一体的に形成された光機能層と、を備え、主面からの枠体の高さは、主面からのシンチレータ層の高さよりも大きく、シンチレータ層は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶を含み、光機能層は、保護層が枠体に固定された状態においてシンチレータ層に押圧され、複数の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
この放射線検出器においては、複数の柱状結晶を含むシンチレータ層が、複数の光電変換素子を有する基板の主面に設けられ、保護層により封止されている。保護層のシンチレータ層に対向する面には、硬質の光機能層が一体的に形成されている。そして、光機能層は、保護層が枠体に固定された状態でシンチレータ層に押圧される。これにより、光機能層は、シンチレータ層の柱状結晶の先端を含む複数の領域においてシンチレータ層に接触している。
このように、この放射線検出器においては、保護層に一体形成された硬質の光機能層が用いられる。このため、光機能層が、互いに隣り合う柱状結晶の先端の間の間隙を充填したり、柱状結晶間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層が保護層の固定に応じてシンチレータ層に押圧されるので、光機能層が柱状結晶の先端から離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層は、シンチレータ層よりも高い(厚い)枠体に固定される。このため、例えば平板状の保護層を用いることにより、枠体とシンチレータ層との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層と保護層との間に形成される。したがって、そのスペースに応じて光機能層を形成することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。
本発明によれば、解像度及び光出力を向上可能なシンチレータパネル及び放射線検出器を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
本実施形態に係るシンチレータパネルは、X線等の放射線を可視光等のシンチレーション光に変換するためのものである。以下の実施形態に係るシンチレータパネルは、例えば、マンモグラフィー装置、胸部検査装置、CT装置、歯科口内撮影装置、及び、放射線カメラ等において、放射線イメージング用のデバイスとして用いることができる。
図1は、本実施形態に係るシンチレータパネルの断面図である。図2は、図1に示されたシンチレータパネルの平面図である。図1,2に示されるように、シンチレータパネル1は、基板2、シンチレータ層3、枠体4、保護層5、光機能層6、及び、弾性部材7を備えている。
基板2は、主面2sを有する。基板2は、例えば矩形板状である。基板2は、シンチレータ層3で生じるシンチレーション光に対して透過性を有する。基板2の厚さは、例えば2.0mm程度である。基板2は、例えば、FOP(ファイバオプティックプレート:多数の光ファイバを束ねて構成される光学デバイス(例えば、浜松ホトニクス(株)製J5734))等から構成される。
シンチレータ層3は、X線等の放射線Rの入射に応じて、可視光等のシンチレーション光を生じさせる。シンチレータ層3は、基板2の主面2s上に設けられている。シンチレータ層3は、例えば、主面2sに交差(例えば直交)する方向からみて、主面2sの矩形状のエリアに形成されている。シンチレータ層3の外縁部は、シンチレータ層3の中心から縁に向かう方向にシンチレータ層3の厚さが減少するように、傾斜部が設けられている。したがって、シンチレータ層3の全体としての断面形状は、例えば台形状である。
シンチレータ層3の厚さ(上記の傾斜部以外の厚さ)は、例えば600μm程度である。シンチレータ層3は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶30を含む(図3の(b)参照)。シンチレータ材料は、例えば、CsI:TlといったCsIを主成分とする材料である。シンチレータ層3は、例えば、真空蒸着法等によって基板2の主面2s上に柱状結晶30を成長させることにより形成される。
枠体4は、基板2の主面2sに交差する方向からみてシンチレータ層3を囲うように、主面2s上に設けられている。枠体4は、例えば矩形環状である。主面2sからの枠体4の高さH4は、主面2sからのシンチレータ層3の高さH3(厚さ)よりも大きい。枠体4は、主面2sと保護層5との間に介在して主面2sと保護層5とを互いに接合する。主面2s、枠体4、及び、保護層5は、シンチレータ層3、光機能層6、及び、弾性部材7が配置される空間を形成する。枠体4は、その空間を少なくとも液密(さらには気密)に封止するように、主面2s及び保護層5に接合される。枠体4は、例えばエポキシ樹脂等からなる透湿性が低い樹脂である。
保護層5は、主面2s及びシンチレータ層3上に配置されている。保護層5は、主面2sに交差する方向からみて、シンチレータ層3及び枠体4を覆うように配置されている。保護層5は、例えば、主面2sに沿って延びる矩形平板状である。保護層5は、放射線Rを透過する。保護層5の厚さは、例えば0.5mm以上2.0mm以下程度である。保護層5は、例えば、化学強化ガラス等のガラス板である。保護層5は、上述したように、シンチレータ層3を少なくとも液密に封止するように枠体4に固定(接合)される。以上の封止構造により、シンチレータ層3に対する防湿が実現される。
光機能層6は、シンチレータ層3と保護層5との間に配置されている。光機能層6は、シート状である。すなわち、光機能層6は、流動性を有さない。一例として、光機能層6は、主面2sに沿って延びる矩形シート状である。光機能層6は、主面2sに交差する方向からみて、シンチレータ層3を覆っている。光機能層6は、放射線Rを透過する。光機能層6は、例えば、シンチレータ層3で生じたシンチレーション光を反射する光反射層、又は、シンチレーション光を吸収する光吸収層である。光機能層6の厚さは、例えば、100μm程度である。光機能層6は、顔料とバインダ樹脂とからなる層を含むことができる。光機能層6は、例えば、PETフィルムである。
弾性部材(弾性層)7は、光機能層6と保護層5との間に配置されている。弾性部材7は、例えば、主面2sに沿って延びるシート状である。弾性部材7は、主面2sに交差する方向からみて、少なくともシンチレータ層3を覆うように光機能層6上に配置されている。弾性部材7は、放射線Rを透過する。弾性部材7は、光機能層6と保護層5とに挟まれて弾性変形されている(すなわち、主面2sに交差する方向に圧縮されている)。これにより、弾性部材7は、弾性力によって、光機能層6をシンチレータ層3に押圧する。すなわち、弾性部材7は、光機能層6に圧力を付与する圧力付与層である。
弾性部材7の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下程度である。弾性部材7の材料は、例えば、ポリエチレン、ウレタン樹脂、及び、メラミン樹脂等のプラスチック、ゴム、並びに、シリコーンゲル等である。弾性部材7は、例えば、上記のプラスチックを発泡させて形成される発泡プラスチックのシート、ウレタンマット(ウレタン樹脂のシート)、シリコンゲルシート、メラミンスポンジのシート、及び、シート状の気泡緩衝材等である。
図3は、図1に示されたシンチレータパネルの一部を拡大して示す断面図である。図3の(a)は、図1の領域Raを示し、図3の(b)は図1の領域Rbを示す。図3に示されるように、弾性部材7は、ここでは、接着層8により光機能層6に接着され、光機能層6と一体化されている。接着層8は、例えば、粘着性を有する樹脂である。
ここで、シンチレータ層3の柱状結晶30は、その基端において基板2の主面2sに接合されている。柱状結晶30は、柱状部31とテーパ部32とを含む。柱状部31は、柱状結晶30における主面2s側の基端を含む。柱状部31は、主面2sから主面2sに交差する方向に延びている。
テーパ部32は、柱状結晶30の先端30tを含む。テーパ部32は、柱状部31と一体的に構成されている。テーパ部32は、主面2sから離れるにつれて縮小するテーパ状である。テーパ部32の断面形状は、例えば三角形状である。柱状結晶30は、互いに離間している。すなわち、互いに隣り合う柱状結晶30の間には間隙が形成されている。より具体的には、互いに隣り合う柱状結晶30間において、柱状部31の側面31s同士の間、及び、テーパ部32の側面32s同士の間に間隙が形成されている。
上述したように、弾性部材7は、弾性力によって、光機能層6をシンチレータ層3に押圧する。つまり、光機能層6は、弾性部材7の弾性力によって押圧され、シンチレータ層3の接触している。ここでは、光機能層6は、複数の柱状結晶30の先端30tに接触する。柱状結晶30の先端30tは、互いに離間して独立している。したがって、光機能層6は、複数の柱状結晶30の先端30tを含む複数の独立した領域において、シンチレータ層3に接触している(すなわち多点で接触している)。
一方、光機能層6は、互いに隣り合う柱状結晶30同士の間隙を充填しない。換言すれば、光機能層6は、互いに隣り合う柱状結晶30同士の間隙を維持するように、シンチレータ層3に接触している。より具体的には、シート状の光機能層6は、柱状結晶30の先端30tの形状に追従するように変形するが、テーパ部32の側面32sの先端30t側の一部のみに接触する。このため、テーパ部32の側面32sの柱状部31側の大部分においては、光機能層6と接触せず、光機能層6及びシンチレータ層3よりも屈折率の低い空気層との接触が維持される。また、光機能層6は、柱状部31の側面31s同士の間隙に浸透しない。したがって、柱状部31の側面31sの全体においても、光機能層6と接触せず、空気層との接触が維持される。
他方、例えば、流動性を有する材料(液状の材料)をシンチレータ層3に塗布することによって光機能層を形成した場合には、その光機能層は、テーパ部32の側面32s同士の間隙を充填すると共に、柱状部31の側面31s同士の間隙に浸透する。このため、テーパ部32の側面32sの全体、及び、柱状部31の側面31sの少なくとも一部において、空気層よりも屈折率の高い光機能層との接触が形成される。
以上説明したように、シンチレータパネル1においては、複数の柱状結晶30を含むシンチレータ層3が、基板2の主面2sに設けられ、保護層5及び枠体4により封止されている。シンチレータ層3と保護層5との間にはシート状の光機能層6が配置されている。光機能層6と保護層5との間には弾性部材7が配置されている。弾性部材7は、光機能層6と保護層5とにより挟まれて弾性変形している(圧縮されている)。光機能層6は、弾性部材7の弾性力によってシンチレータ層3に押圧されている。これにより、光機能層6は、柱状結晶30の先端30tを含む複数の独立した領域において、シンチレータ層3に接触している。
このように、シンチレータパネル1においては、シート状の光機能層6が用いられる。このため、光機能層6が、互いに隣り合う柱状結晶30のテーパ部32同士の間隙を充填したり、柱状結晶30の柱状部31間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層6が弾性部材7の弾性力によりシンチレータ層3に押圧されるので、光機能層6が柱状結晶30の先端30tから離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶30から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層5は、シンチレータ層3よりも高い(厚い)枠体4に固定される。このため、例えば平板状の保護層5を用いることにより、枠体4とシンチレータ層3との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層3と保護層5との間に形成される。したがって、そのスペースに光機能層6と弾性部材7を配置することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。
また、シンチレータパネル1においては、弾性部材7を、基板2の主面2sに沿って延びるシート状とすることができる。このとき、弾性部材7は、例えば発泡プラスチックを含むことができる。この場合、弾性部材7によって、主面2sに沿って一様に光機能層6を押圧することができる。
また、シンチレータパネル1においては、弾性部材7が、光機能層6と一体化されている。このため、弾性部材7によって光機能層6をシンチレータ層3に押圧するように構成することが容易である。
さらに、弾性部材7の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下程度とすることができる。弾性部材7の厚さが100μm以上であれば、光機能層6をシンチレータ層3に押圧してシンチレータ層3に接触させるのに十分な弾性力を得ることができる。弾性部材7の厚さが1000μm以下であれば、シンチレータパネル1の大型化(厚みが増すこと)が避けられる。すなわち、弾性部材7の厚さを100μm以上1000μm以下とすれば、シンチレータパネル1の小型化(厚み増加の抑制)と、解像度及び光出力の向上と、を両立することが可能である。
図4は、変形例に係るシンチレータパネルの断面図である。図5は、図4に示されたシンチレータパネルの一部を拡大して示す断面図である。図5の(a)は、図4の領域Raを示す。図5の(b)は、図4の領域Rbを示す。図4,5に示されるように、シンチレータパネル1Aは、シンチレータ層3に代えてシンチレータ層3Aを備える点、及び、弾性部材7が保護層5と一体化されている点において、シンチレータパネル1と相違している。
シンチレータ層3Aは、柱状結晶30に代えて柱状結晶30Aを含む点において、シンチレータ層3と相違している。柱状結晶30Aは、テーパ部32に代えてテーパ部32Aを有する点において、柱状結晶30と相違している。テーパ部32Aは、先端30tを含む。テーパ部32Aは、柱状部31と一体的に構成されている。テーパ部32Aは、主面2sから離れるにつれて縮小するテーパ状である。テーパ部32Aの断面形状は、例えば台形状である。
ここでは、柱状結晶30Aの先端30tは、例えば、加圧処理、加熱処理、レーザ光等のエネルギー線照射処理、研磨処理、及び、研削処理の少なくとも1つによって平坦化されている。すなわち、柱状結晶30Aの先端30tは、テーパ部32Aの側面32sの縁部により規定される平坦面である。
弾性部材7は、接着層8により保護層5に接着され、保護層5と一体化されている。光機能層6は、弾性部材7の弾性力によって押圧され、シンチレータ層3Aに接触している。ここでは、光機能層6は、複数の柱状結晶30Aの先端30tに接触する。すなわち、光機能層6は、複数の柱状結晶30Aの先端30tを含む複数の独立した平坦な領域において、シンチレータ層3Aに接触している(すなわち多点で接触している)。
ここでも、光機能層6は、互いに隣り合う柱状結晶30A同士の間隙を充填しない。すなわち、光機能層6は、互いに隣り合う柱状結晶30A同士の間隙を維持するように、シンチレータ層3Aに接触している。より具体的には、光機能層6は、テーパ部32Aの側面32sにより規定される平坦面(先端30t)のみに接触する。このため、テーパ部32Aの側面32sの略全体においては、光機能層6と接触せず、光機能層6及びシンチレータ層3Aよりも屈折率の低い空気層との接触が維持される。また、光機能層6は、柱状部31の側面31s同士の間隙に浸透しない。したがって、柱状部31の側面31sの全体においても、光機能層6と接触せず、空気層との接触が維持される。
このように、柱状結晶30Aの先端30tが平坦化されている場合であっても、シート状の光機能層6を弾性部材7の弾性力によってシンチレータ層3Aに押圧してシンチレータ層3Aに接触させる構成とすれば、シンチレータパネル1と同様に、解像度及び光出力の向上が可能である。
また、シンチレータパネル1Aにおいては、弾性部材7が、保護層5と一体化されている。このため、弾性部材7によって光機能層6をシンチレータ層3Aに押圧するように構成することが容易である。
以上の実施形態は、本発明に係るシンチレータパネルの一実施形態を例示したものである。したがって、本発明は、上記のシンチレータパネル1,1Aに限定されない。本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上記のシンチレータパネル1,1Aを任意に変形したもの、或いは、他のものに適用したものとすることができる。
例えば、図6に示されるように、シンチレータパネル1においては、シンチレータ層3に代えて、シンチレータ層3Bを用いることができる。シンチレータ層3Bは、柱状結晶30に代えて、柱状結晶30Bを有している点において、シンチレータ層3と相違している。柱状結晶30Bは、先端30tが平坦化されている点において、柱状結晶30と相違している。柱状結晶30Bは、柱状結晶30のテーパ部32の全体を除去するように、先端30tを平坦化することにより構成されている。すなわち、柱状結晶30Bは、柱状部31のみを有する。
この場合には、シート状の光機能層6が、弾性部材7の弾性力によって押圧され、柱状部31の側面31sの縁部により規定される平坦面(先端30t)のみに接触する。このため、シンチレータ層3を用いる場合と同様に、解像度及び光出力の向上が可能である。
なお、シンチレータパネル1においては、シンチレータパネル1Aと同様に、弾性部材7を保護層5と一体化してもよい。また、シンチレータパネル1Aにおいては、シンチレータパネル1と同様に、弾性部材7を光機能層6と一体化してもよい。また、シンチレータパネル1Aにおいても、シンチレータ層3Aに代えてシンチレータ層3Bを用いることができる。
ここで、本発明に係るシンチレータパネルは、図7に示されるシンチレータパネル1Cに適用することができる。シンチレータパネル1Cは、光機能層6に代えて光機能層9を備える点、及び、弾性部材7を備えない点において、シンチレータパネル1と相違している。
光機能層9は、シンチレータ層3と保護層5との間に配置されている。光機能層9は、保護層5のシンチレータ層3に対向する面5sに形成されている。光機能層9は、例えば、保護層5の面5sに対して、反射又は吸収等の光機能を有する顔料とバインダ樹脂とからなる樹脂層を配置し、その樹脂層を乾燥させて硬化させることにより作製することができる。したがって、光機能層9は、硬質である。すなわち、光機能層9は、流動性を有さない。また、光機能層9は、保護層5の面5sに一体的に形成されている。なお、光機能層9が硬質であるとは、上記の通り樹脂を含む材料を硬化させて形成されることにより、硬化した樹脂の硬度に応じた硬度を有することを意味する。
このような光機能層9は、保護層5が枠体4に固定された状態において(固定されることによって)、シンチレータ層3に押圧される。これにより、光機能層9は、シンチレータ層3に接触している。特に光機能層9は、複数の柱状結晶30の先端30tを含む複数の独立した領域において、シンチレータ層3に接触している(すなわち多点で接触している)。
以上説明したように、シンチレータパネル1Cにおいては、保護層5のシンチレータ層3に対向する面5sには、硬質の光機能層9が一体的に形成されている。光機能層9は、保護層5が枠体4に固定された状態で、保護層5とシンチレータ層3との間に挟持されてシンチレータ層3に押圧される。これにより、光機能層9は、シンチレータ層3の柱状結晶30の先端30tを含む複数の領域においてシンチレータ層3に接触している。
このように、シンチレータパネル1Cにおいては、保護層5に一体形成された硬質の光機能層9が用いられる。このため、光機能層9が、互いに隣り合う柱状結晶30の先端30tの間の間隙を充填したり、柱状結晶30間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層9が保護層5の固定に応じてシンチレータ層3に押圧されるので、光機能層9が柱状結晶30の先端30tから離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶30から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。つまり、保護層5と光機能層9とは、上述した保護層5と光機能層6と弾性部材7との組み合わせと同等の特性を得ることができる。
なお、シンチレータパネル1Cにおいても、シンチレータ層3に代えてシンチレータ層3Aやシンチレータ層3Bを用いてもよい。
上記実施形態においては、本発明をシンチレータパネル(例えばシンチレータパネル1,1A,1C)に適用した場合について説明した。このようなシンチレータパネルにおいては、光電変換素子を有するセンサパネル(例えばTFTパネルやCMOSイメージセンサパネル)を基板として用いることにより、放射線検出器を構成することができる。引き続いて、放射線検出器の一実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る放射線検出器の断面図である。図8に示されるように、放射線検出器1Dは、基板2に代えて、センサパネルとしての基板2Dを備える点において、シンチレータパネル1と相違している。基板(センサパネル)2Dは、主面2sと、主面2sに形成された複数の光電変換素子10と、を有する。より具体的には、基板2Dは、主面2sを含む板状の基部2pを有している。また、光電変換素子10は、主面2sに沿って2次元状に配列されている。
シンチレータ層3は、例えば蒸着等によって、主面2s及び光電変換素子10上に設けられている。ここでは、主面2s及び光電変換素子10上には、パッシベーション膜又は平坦化膜等の膜部11が形成されている。シンチレータ層3は、膜部11を介して、主面2s及び光電変換素子10上に設けられている。シンチレータ層3は、光電変換素子10に光学的に結合されている。したがって、光電変換素子10は、シンチレータ層3において発生したシンチレーション光を入力し、シンチレーション光に応じた電気信号を出力する。電気信号は、図示しない配線等により外部に取り出される。これにより、放射線検出器1Dは放射線Rを検出する。
放射線検出器1Dは、少なくとも、上記のシンチレータパネル1の奏する効果と同様の効果を奏する。より具体的には、放射線検出器1Dにおいては、複数の柱状結晶30を含むシンチレータ層3が、複数の光電変換素子10を有する基板2Dの主面2sに設けられ、保護層5により封止されている。シンチレータ層3と保護層5との間にはシート状の光機能層6が配置され、光機能層6と保護層5との間には弾性部材7が配置されている。弾性部材7は、光機能層6と保護層5とにより挟まれて弾性変形されている。光機能層6は、弾性部材7の弾性力によってシンチレータ層3に押圧され、シンチレータ層3の柱状結晶30の先端30tを含む複数の領域においてシンチレータ層3に接触している。
このように、放射線検出器1Dにおいては、シート状の光機能層6が用いられる。このため、光機能層6が、互いに隣り合う柱状結晶30のテーパ部32同士の間隙を充填したり、柱状結晶30の柱状部31間に浸透したりすることが避けられる。また、光機能層6が弾性部材7の弾性力によりシンチレータ層3に押圧されるので、光機能層6が柱状結晶30の先端30tから離間することが避けられる。このため、シンチレーション光が柱状結晶30から漏れることが抑制される。よって、解像度及び光出力が向上される。
なお、保護層5は、シンチレータ層3よりも高い(厚い)枠体4に固定される。このため、例えば平板状の保護層5を用いることにより、枠体4とシンチレータ層3との高さの差に応じたスペースが、シンチレータ層3と保護層5との間に形成される。したがって、そのスペースに光機能層6と弾性部材7を配置することにより、容易且つ確実に上記の構成を実現して解像度及び光出力を向上可能である。
ここで、放射線検出器1Dによれば、次のような別の効果を奏することができる。すなわち、放射線検出器1Dは、センサパネルとしての基板2D上(及び膜部11上)に、例えば蒸着等によって直接的にシンチレータ層3を形成することにより構成されている。このため、放射線検出器を構成するに際して、互いに別体として用意したセンサパネルとシンチレータパネルとを貼り合わせる必要がない。ただし、シンチレータパネル1,1A,1Cにおいて、基板2における主面2sの反対側の裏面に対して、センサパネルを別途設けることにより放射線検出器を構成してもよい。
なお、放射線検出器1Dは、シンチレータ層3に代えて、シンチレータ層3A又はシンチレータ層3Bを備えていてもよい。また、放射線検出器1Dにおいては、弾性部材7は、シンチレータパネル1のように、光機能層6と一体化されていてもよいし、シンチレータパネル1Aのように、保護層5と一体化されていてもよい。さらに、シンチレータパネル1Cの基板2を基板2Dに変更することにより放射線検出器を構成してもよい。この場合の放射線検出器は、光機能層6に代えて、保護層5のシンチレータ層3に対向する面5sに一体的に形成された硬質の光機能層9を備えると共に、弾性部材7を備えないことになる。