JP2017057443A - 複合修飾金属ナノ粒子、その製造方法、複合修飾金属ナノインク及び配線層形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材との密着性を確保しながら、導電性を確保することを目的とする。【解決手段】金属ナノ粒子8を還元性官能基7で修飾した修飾金属ナノ粒子であるコア部修飾金属ナノ粒子である一次粒子3の周囲に、加水分解性基5を表出した修飾金属ナノ粒子である一次粒子1や反応性官能基6を表出した修飾金属ナノ粒子である一次粒子2をシェル部修飾金属ナノ粒子として形成することにより、基材との密着性を確保しながら、導電性を確保することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、金属ナノ粒子が修飾された複合修飾金属ナノ粒子、その製造方法、複合修飾金属ナノ粒子を用いた複合修飾金属ナノインク及び複合修飾金属ナノ粒子を用いた配線層形成方法に関する。
様々な基材の表面には、機能膜や配線層等の膜が形成されることがある。その膜の材料として、金属ナノ粒子等の機能性粒子が用いられる場合がある。金属ナノ粒子は、粒子径が1nm以上、100nm未満の超微粒子であり、表面に存在する原子が非常に不安定であるために自発的に粒子間で融着を起こし、粗大化することが知られている。そのため、通常、金属ナノ粒子は有機保護基・リガンドを用いて表面を覆うことで安定化されている。
一方で、金属ナノ粒子は金属バルクと異なり、低融点化・低温焼結性といった特異な物性を示すとともに、粒子径が数百nm以上の粒子に比べ、活性度や反応性が飛躍的に向上し、基材上に成膜されたときに、電気的、磁気的、光学的、機械的特性が大きく変化するため、工学的応用として、配線形成用の導電ペースト、センシングデバイス、光捕集アンテナ、超構造形成のためのビルディングブロックなどに利用されている。
また、金属ナノ粒子表面に有機分子が化学修飾された、いわゆる「有機−無機ナノコンポジット(以下、修飾金属ナノ粒子と称す)」は、有機分子のもつ優れた柔軟性や加工性、密着性を、金属等の無機材料の物理化学的に優れた特性へ組み合わせられるため、前述した金属ナノ粒子同様、様々な分野への工学的応用が期待される。
修飾金属ナノ粒子の工学的応用例の一つとして、修飾金属ナノ粒子による微細配線形成技術が挙げられる。修飾金属ナノ粒子表面は化学修飾により、有機保護層で覆われているため、溶剤分散性が高く、ナノ粒子特有の低温融着現象を利用することによって、これまでにない低温での配線形成が可能になる。配線材料として、主に銀を用いた修飾金属ナノ粒子の開発が進められている。しかし、銀は貴金属であるためコストが高く、また高湿度雰囲気下での使用において、配線内の銀が酸化することでイオン化し、基材の絶縁物上を移動して短絡を誘導する、いわゆるマイグレーション現象を起こしやすいことが問題視されている。かかるマイグレーション発生の傾向は、Ag>Pb2+≧Cu2+>Sn2+>Auの順となっており、金はマイグレーション現象を生じにくい点で望ましいものの、銀以上にコストが高い。このため、銀よりもマイグレーション現象が生じにくく、比較的低コストである銅ナノ粒子に注目が集まっている。
しかしながら、従来から金属配線として用いられる銅は、酸化されやすく、酸化により導電率が低下することや、分散させにくいこと、更には、焼結温度が高いこと等の欠点を有する。また、従来の修飾銅ナノ粒子は、粒子凝集を抑制し分散性を高める成分である分散剤等で表面処理されるが、低温で加熱しただけではこれらを完全に除去できず、金属微細配線の導電性を阻害する因子となる可能性がある。更に、加熱を伴わない他の用途に利用する場合には、上記分散剤を除去する工程が別途必要となり、こうした課題を解決すべく、これまで様々な方法で修飾銅ナノ粒子の合成が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)が、本問題を抜本的に解決する技術は未だ確立されていない。
一方、官能基またはリガンドとなる有機修飾分子は、金属ナノ粒子の表面と相互作用することで、その粒子径や形状を制御し、その結果、物理化学特性も調整する。また、有機修飾分子は金属ナノ粒子の熱安定性や溶媒への分散性を向上する効果もある。金属ナノ粒子を化学修飾する有機分子において、カルボキシル基やアミノ基等の官能基を末端に表出できれば、溶媒分散性の向上と同時に、化学結合を介して別の有機分子やハイブリッド材料と繋ぐことが可能になる。修飾法の一例として、金属源となる金属錯体を無溶媒で加熱するだけで修飾金属ナノ粒子を合成できる熱分解制御法が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。この方法の最大の特徴は、無溶媒で加熱するのみという簡便さであり、大量合成も可能である。更に穏やかな還元性を有する有機化合物等を反応系に加えることによって反応条件が緩和され、粒子径や形状、表面保護層の設計も可能となる。
しかしながら、これらの修飾法により得られた修飾金属ナノ粒子は、コアとなる金属ナノ粒子と、シェルとなる有機分子間の特異的な相互作用に依存しているため、金属ナノ粒子に対する有機分子の選択性に乏しく、また、配線材料に本修飾金属ナノ粒子を用いた場合、大気圧プラズマ処理等を行うことで基材表面に形成したヒドロキシル基と、有機分子の末端官能基間に生成された水素結合、または分子間相互作用(界面現象)が密着寄与結合となるため、基材と配線間に十分な密着性を確保することが出来ない。
他にも、基材と配線間の密着性向上のため、銅及び銅酸化物からなる金属ナノ粒子に、修飾剤として親水性官能基で終端化されたアルキル基を含むアルコキシシラン誘導体からなるシランカップリング剤を用いた修飾金属ナノ粒子による配線形成が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この配線形成法に用いられるシランカップリング剤は、一分子中に有機物との反応や相互作用をなすアミノ基、エポキシ基、ビニル基などに代表される有機官能基と、加水分解性基であるアルコキシ基の両者を併せ持つ有機ケイ素化合物であり、この構造を利用し、有機官能基を介することで有機化合物等と、またアルコキシ基を加水分解反応させることで無機物表面等と、化学結合をそれぞれ生成し、化学的性質の異なる両者を強固に結びつける。
特開2008−19503号公報 特開2008−95195号公報 特開2007−63579号公報 特開2007−63580号公報 特開2012−185944号公報
しかしながら、従来のシランカップリング剤を用いて形成された修飾金属ナノ粒子では、次のような問題点があった。
まず、シランカップリング剤は、金属ナノ粒子の表面修飾剤として用いた場合、粒子表面ヒドロキシル基と容易に反応する。更に、分散安定性を向上させるために粒子表面に均一に修飾すると、金属ナノ粒子の表面の露出が低減して粒子間の粒界抵抗を発生させるため、導電性を阻害する可能性があるという問題点があった。これは、電路における粒子間の粒界抵抗が粒子内部(バルク)及び表面抵抗に比べ大きく、配線層の抵抗に対し支配的であることによる。例えば、導電性を確保するために、嵩高い有機官能基を導入して粒界抵抗増加を抑えながら表面修飾を行うか、あるいは絶縁性の低い物質により修飾するなどの工夫を行う必要があるが、工程が複雑になったり、修飾基の選択性が低減するといった問題が別途生じることになる。
また、シランカップリング剤は、基材の種類により作用機構が異なる。無機材料に対しては、加水分解、及び(脱水)縮合反応を経て、基材表面に強固な共有結合を生成するが、有機材料に対しては、特に熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル樹脂等)において、一般的にシランカップリング剤の有機官能基と反応するような活性に富む基は少なく、化学結合は生じにくい。このため、ポリマー(熱可塑性樹脂)主鎖へシランカップリング剤をグラフト反応により導入する方法や、ポリマーとの相溶性を利用する方法を用い、化学結合を生成している。一方で、比較的極性の高い熱可塑性樹脂では、密着性向上効果が得られる。これは、シランカップリング剤末端官能基と樹脂表面間に形成される水素結合生成、または相溶化による効果と推定される。但し、密着性向上効果を最大化させるためには、熱可塑性樹脂表面を相溶性の高い表面に改質することが前提となる。すなわち、従来のシランカップリング剤を用いて形成された修飾金属ナノ粒子では、熱可塑性の基材に対して密着性を確保することが困難であるという問題点があった。
また、シランカップリング剤は、前述したように、化学的性質の異なる両者を強固に結びつける一方、有機ポリマーの一部とグラフト共重合することで、反応副生成物である絶縁性のシラン(架橋)グラフト化合物を生成する。本化合物生成のメカニズムは、
1.UV照射等により発生したヒドロキシルラジカルが、有機ポリマーから水素を引抜き、ポリマーラジカルを生成する。
2.ポリマーラジカルに、シランカップリング剤が付加されることで、シランカップリング剤と有機ポリマーがグラフト共重合する。
以上の反応を経て、シラングラフト化合物が得られるというものである。なお、シランカップリング剤は、グラフト共重合される以外に、シランカップリング剤同士で重合、もしくは未反応のまま残留して絶縁性物が修飾金属ナノ粒子の表面に形成したりするものもある。このように、従来のシランカップリング剤を用いて形成された修飾金属ナノ粒子では、グラフト重合等により修飾金属ナノ粒子の表面に絶縁性の化合物が生成され、導電性が低下する場合があるという問題点があった。
以上のことより、修飾剤としてシランカップリング剤を用いて生成した従来の修飾金属ナノ粒子を用いて基板上に配線等の膜を形成する場合は、基材と配線間に十分な密着性を確保することが出来ない場合や、配線抵抗が増大して導電性が低下する場合があった。
本発明はこれら問題を解決するために、基材との密着性を確保しながら、導電性を確保することを目的とする。
上記目的を達成させるために、本発明の複合修飾金属ナノ粒子は、第1の金属ナノ粒子が還元性官能基で修飾されるコア部修飾金属ナノ粒子と、前記コア部修飾金属ナノ粒子が凝集される凝集体と、前記凝集体の周囲に形成されてカップリング基として加水分解性基又は反応性官能基もしくは加水分解性基及び反応性官能基で第2の金属ナノ粒子が修飾されるシェル部修飾金属ナノ粒子とを有することを特徴とする。
以上により、基材との密着性を確保しながら、導電性を確保することができる。
本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子に用いる修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。 本発明に係る二種類の一次粒子が凝集により粒子が粗大化して二次粒子となる様子を説明する概略図である。 修飾金属ナノ粒子が基材に結合する工程例を順に示す概略図である。 本発明の複合修飾金属ナノ粒子を用いた基材への配線形成フローを工程ごとに例示する概念図である。 本発明の複合修飾金属ナノ粒子を用いた基材への配線形成フローを工程ごとに例示する概念図である。 従来のLDS法により形成した配線部−樹脂基材界面近傍の構造を示す断面図である。 本発明に係る配線部−樹脂基材界面近傍の構造を示す断面図である。
本発明の複合修飾金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子を還元性官能基で修飾した修飾金属ナノ粒子であるコア部修飾金属ナノ粒子の周囲に、加水分解性基を表出した修飾金属ナノ粒子または反応性官能基を表出した修飾金属ナノ粒子、もしくは加水分解性基を表出した修飾金属ナノ粒子および反応性官能基を表出した修飾金属ナノ粒子をシェル部修飾金属ナノ粒子として形成した構成である。
このような構成の複合修飾金属ナノ粒子を用いて基材上に膜を形成する際に、シェル部修飾金属ナノ粒子として反応性官能基を表出した修飾金属ナノ粒子を用いることにより有機材料からなる基材と膜との密着性を確保し、シェル部修飾金属ナノ粒子として加水分解性基を表出した修飾金属ナノ粒子を用いることにより無機材料からなる基材と膜との密着性を確保することができる。また、シェル部修飾金属ナノ粒子として加水分解性基を表出した修飾金属ナノ粒子および反応性官能基を表出した修飾金属ナノ粒子を用いることにより、無機材料からなる基材および有機材料からなる基材のいずれの基材に対しても膜との密着性も確保することができる。
金属ナノ粒子は、超微粒子化により劇的に融点が低下する。これは、金属粒子径が小さくなるのに伴って、単位重量当たりの表面積が増加し表面エネルギーが増大することによるものである。このサイズ効果を利用すれば、100〜300℃程度の低温であっても粒子同士の焼結を進行させることが可能となり、金属ナノ粒子により得られる金属膜は優れた導電性を発現する。
また、成膜のための焼成温度は、粒子表面に修飾(吸着)する官能基の離脱・気化温度に大きく依存するため、分子量1000以上の大きな官能基を含む有機化合物で粒子表面を修飾した場合、成膜時の焼成温度の上昇をもたらす。従って、分子量500以下の小さな官能基を含む有機化合物が表出した修飾金属ナノ粒子を用いるか、非常に温和な条件で離脱・気化する官能基を含む有機化合物が表出した修飾金属ナノ粒子を用いて分散液(インク)を作製することが必要となる。
以上のことから、100℃以上300℃以下程度の低温焼成を行うことにより、コア部修飾金属ナノ粒子の還元性官能基は容易に金属ナノ粒子から離脱・気化する一方、シェル部修飾金属ナノ粒子の加水分解性基および反応性官能基は金属ナノ粒子に修飾基として残る。これにより、還元性官能基は容易に金属ナノ粒子から離脱して金属ナノ粒子の表面が露出するため、粒界抵抗の発生が抑制されて導電性を確保することができる。また、還元性官能基が金属ナノ粒子から離脱して構成割合が低下するため、グラフト重合が抑制され、絶縁性の反応副生成物であるシラングラフト化合物の膜内生成も抑制されるため、導電性を確保することができる。更に、シラングラフト化合物の膜内生成が抑制されて加水分解性基および反応性官能基の修飾部の面積が拡大することで、膜と基材との密着性の更なる向上も期待できる。
基材表面に機能膜や配線層等の膜を形成する際に、本発明では複合修飾金属ナノ粒子を用いる。
以下、本発明の実施の形態について、基材に配線層を形成する場合を例に、図面を参照して説明する。
まず、複合修飾金属ナノ粒子の構造及びその生成方法について説明する。
図1は本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子に用いる修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図、図2〜図8は本発明に係る複合修飾金属ナノ粒子の構造を例示する概略図である。
図1において、一次粒子である修飾金属ナノ粒子の原材料となる金属ナノ粒子8は、ナノオーダーの銅または銅酸化物、あるいはこれらの少なくとも一方を含む化合物からなる粒子であれば良く、金属ナノ粒子8の一次粒子径は、3nm以上70nm以下であることが望ましい。一次粒子径が3nm未満だと、後述の極性溶媒への分散性確保のため、分散剤を別途添加する必要があり、本分散剤は焼成後の導電性阻害因子となりうる。更に粒子径の減少に伴う表面エネルギーの急激な増加により、一層凝集されやすくなることから、2種以上の粒子からなる凝集体の構造制御が困難となる。また、一次粒子径が70nmを超えると、焼成温度が200℃以上とする必要が生じ、樹脂基材に対し加熱軟化による塑性変形を生じる懸念がある。なお、配線層を形成する場合は、金属ナノ粒子8は銅や銅酸化物に限らず、導電性を備える材料であれば良い。また機能膜の場合は、その機能に応じた様々な材料を用いることが出来る。
一次粒子である修飾金属ナノ粒子を生成する際には、まず、金属ナノ粒子8には、アルコキシシラン誘導体からなるシランカップリング剤4が修飾され、シランカップリング剤はアルコキシ基からなる加水分解性基5が表出するよう配向した場合一次粒子1となり、アミノ基、ビニル基、エポキシ基等からなる反応性官能基6が表出するよう配向した場合は一次粒子2となる。
金属ナノ粒子8に対し、修飾基の結着部位を選択的に制御(配向)するメカニズムについて説明する。
金属ナノ粒子表面には、原料由来の官能基を溶媒分子と置換することで、表面に親水性官能基であるヒドロキシル基が生成されている。一次粒子2を生成する場合は、本ヒドロキシル基に対し、シランカップリング剤の加水分解性基5であるアルコキシ基が、水素結合生成に伴う引力で誘引・吸着し、反応性官能基6が表出するよう配向する。これにより一次粒子2が生成される。
さらに、反応性官能基6が、対金属共有結合性を有すメルカプト基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基等である場合、金属ナノ粒子に対し、これら官能基が共有結合生成に伴う引力で誘引・吸着し、加水分解性基5が表出するよう配向する。これにより一次粒子1が生成される。
また、シランカップリング剤4の表面修飾密度は10個/nm以上、100個/nm以下である。
ここで、アルコキシシラン誘導体を含むシランカップリング剤4は、アルキル基を介して一分子中に有機物との反応や相互作用をなすアミノ基、ビニル基、エポキシ基などに代表される反応性官能基6と、加水分解性基5であるアルコキシ基の両者を併せ持つ有機ケイ素化合物である。アルコキシシラン誘導体を含むシランカップリング剤は、親水性官能基で終端化されたアルキル基を含む2種類以上の有機分子から構成されても良い。また、アルキル基は、メルカプト基、またはアミノ基で終端化されても良い。この構造を利用し、従来の修飾金属ナノ粒子では、反応性官能基6を介することで周囲の修飾金属ナノ粒子等の有機化合物等と化学結合をそれぞれ生成する。また、アルコキシ基を加水分解反応させることで基材等の無機物表面等と化学結合をそれぞれ生成する。これにより、それぞれの化学結合が生成され、化学的性質の異なる膜となる修飾金属ナノ粒子間および基材に対して各修飾金属ナノ粒子が強固に結びつくことができる。
加水分解の反応速度は加水分解性基の種類によって変化する。例えば、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の嵩が高くなるのに従い、立体障害により加水分解速度が遅くなる一方、加水分解性基にアセトキシ基やハロゲン基などが含まれる場合は、逆に加水分解速度が速くなる。また、シランカップリング剤4分子中で、ケイ素−炭素結合を介して結合している置換基の種類も、加水分解速度に影響を与える。この場合、前述した立体障害効果の他に、有機官能基の電気的性質、即ち、電子供与性(ドナー)か電子吸引性(アクセプター)かによって、加水分解速度は変わる。例えば、ビニル基やハロアルキル基のような電子吸引性の官能基を有す有機ケイ素化合物では、ケイ素原子上の電荷を下げやすいため、エチル基等のアルキル基を有するシラン化合物より、加水分解速度が速くなる。シランカップリング剤4の加水分解機構は、酸性条件下では水素イオン(プロトン)がアルコキシ基の酸素に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に、それぞれ配位し、その後、置換反応によってアルコキシシランの加水分解反応が進行するというものである。一方、アルカリ溶液中では、水酸化物イオンが付加した5配位中間体を経由して、加水分解が進行すると考えられる。
シランカップリング剤4は、加水分解によってシラノール(Si−OH)を生成した後、シラノール同士が徐々に縮合してシロキサン結合(Si−O−Si)となり、シランオリゴマーを形成する。この縮合反応によって、シランカップリング剤4はシリコーンとしての性質が強くなる一方、シラノール基数が減少することで反応性が低下し、水に対し難溶となる。また、縮合反応の速度はpHによって変化し、一般にpHが3.5〜4の場合に最も遅くなる。以上の反応を通じて、修飾金属ナノ粒子の加水分解性基5は基材表面に強固な共有結合を生成させ、高い密着性を担保することが可能となる。
なお、シランカップリング剤4は、基材の種類により作用機構が異なる。無機材料に対しては、前述の加水分解、及び(脱水)縮合反応を経て、基材表面に強固な共有結合を生成するが、熱可塑性樹脂からなる有機材料に対しては、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル樹脂等)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等)の種類によってそれぞれ機構が異なる。
従来の修飾金属ナノ粒子において、熱可塑性樹脂の場合、一般的にシランカップリング剤の有機官能基と反応するような活性に富む基は少なく、化学結合は生じにくい。一方で、比較的極性の高い熱可塑性樹脂では密着性向上効果が得られる。これは、シランカップリング剤4の末端官能基と樹脂表面間に形成される水素結合生成、または相溶化による効果と推定される。この場合、熱可塑性樹脂表面を相溶性の高い表面に改質することが前提となる。
一方、従来の修飾金属ナノ粒子において、熱硬化性樹脂の場合、熱可塑性樹脂のような(臨界)表面張力、溶解性パラメータなどの相溶性と複合材料との強度の間に相関がないことから、樹脂の硬化系に組み込まれるような有機官能基を含むシランカップリング剤4を選択しないと密着性向上効果が得られない。
本発明の複合修飾金属ナノ粒子を生成する際には、一次粒子1、2の他に、金属ナノ粒子8に、一次粒子1、2と同様に、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、アクリルアルデヒド、グルタルアルデヒドのいずれかまたはこれらの組み合わせ等のアルデヒド類またはギ酸等からなる還元性官能基7が修飾される一次粒子3が生成される。金属ナノ粒子表面には酸化膜が形成されているため、非水系かつ還元性を有す溶媒が分散媒として用いられる場合があり、本溶媒として極性官能基を含むアルデヒド類等の溶液が挙げられる。一方、アルデヒド類を含む分散媒に、炭素数5以上の長鎖アルキル基を含む有機化合物を分散させると、長鎖アルキル基末端がアルデヒド基で選択的に終端化される。また、金属ナノ粒子表面は還元により水素化しており、還元性官能基7であるアルデヒド基は水素結合を生成しないため、一次粒子3は、金属ナノ粒子表面と静電相互作用または分子間相互作用などの非共有結合性相互作用により、アルキル基を介して表出するよう配向、もしくは、金属ナノ粒子8表面が水素化し、カルボキシル基と静電相互作用または分子間相互作用などの非共有結合性相互作用により、還元性官能基7を表出するよう配向することで生成される。また、還元性官能基7の表面修飾密度も、10個/nm以上100個/nm以下である。
次に、図2から図8を用いて、複合修飾金属ナノ粒子である、修飾金属ナノ粒子の二次粒子(凝集体)の構造について説明する。
図2から図8において、二次粒子の構成粒子となる修飾金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1及び一次粒子2、金属ナノ粒子にアルデヒド類またはギ酸等からなる還元性官能基が修飾された一次粒子3である。一次粒子3はコア部修飾金属ナノ粒子となり、一次粒子1及び一次粒子2はシェル部修飾金属ナノ粒子となる。本発明の複合修飾金属ナノ粒子は、凝集されたコア部修飾金属ナノ粒子の周囲にシェル部修飾金属ナノ粒子が配される構成である。
図2〜図4に示す二次粒子9、10、11は、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3の凝集体に対して、その周りを覆うようシェル部にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1または一次粒子2が配された構造となっている。凝集体サイズは100nm以上500nm以下である。また、コア部修飾金属ナノ粒子とシェル部修飾金属ナノ粒子の構成比は、10:1〜10:3であり、コア部修飾金属ナノ粒子が10に対して、シェル部修飾金属ナノ粒子が1以上3以下となる。なお、シェル部に配した一次粒子1及び一次粒子2は、どちらか一種類で構成される場合と、二種類で構成される場合があり、後者の場合はどちらか一方の一次粒子を規則的に、またはランダムに配している。
図5、図6における二次粒子14、15は、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3凝集体の周りを覆うシェル部のシランカップリング剤が修飾された一次粒子1または一次粒子2の形成領域に、一次粒子1が形成されない領域である未充填(空隙)部12、または一次粒子2が形成されない領域である未充填(空隙)部13を有す構造となっている。二次粒子14、15は、シェル部にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1または一次粒子2が形成されない領域である未充填(空隙)部13を有す構造であるため、二次粒子に対するシランカップリング剤の構成割合が低下する。それに伴い、還元性官能基は容易に金属ナノ粒子から離脱して金属ナノ粒子の表面が露出するため、粒界抵抗の発生が抑制されて導電性を確保することができる。また、樹脂基材(有機ポリマー)を用いた場合、シランカップリング剤と基材の間でグラフト重合が抑制され、絶縁性の反応副生成物であるシラングラフト化合物の膜内生成も抑制されて導電性を確保することができる。
図7、図8における二次粒子17、18は、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3凝集体と、その周りを覆うシェル部のシランカップリング剤が修飾された一次粒子1または一次粒子2に、一次粒子1の未充填(空隙)部12、または一次粒子2の未充填(空隙)部13、および一次粒子3が形成されない領域である未充填(空隙)部16を有す構造となっている。二次粒子17、18は、シェル部にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1または一次粒子2が形成されない領域である未充填(空隙)部12、13を、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3が形成されない領域である未充填(空隙)部16を、それぞれ有す構造であるため、二次粒子に対する有機化合物(修飾基)の構成割合が低下し、二次粒子の粗大化も抑制される。それに伴い、樹脂基材(有機ポリマー)を用いた場合、有機化合物と基材の間でグラフト重合が抑制され、絶縁性の反応副生成物であるグラフト化合物等の膜内生成も抑制されて導電性を確保することができる。また、二次粒子の粗大化が抑制されることで、更なる低温での焼成が可能となる。
次に、図9を用いて、修飾金属ナノ粒子が分散媒中で凝集により二次粒子となる過程を説明する。
図9は本発明に係る二種類の一次粒子が凝集により粒子が粗大化して二次粒子となる様子を説明する概略図である。ここでは、コア部修飾金属ナノ粒子である一次粒子3とシェル部修飾金属ナノ粒子である一次粒子1とが修飾金属ナノインク中で凝集する様子を例に説明する。
はじめに、分散媒19中の修飾金属ナノ粒子(一次粒子1、3)は、自身の表面電荷によってイオンや界面活性物質などを引き寄せ、これにより、粒子表面電荷とイオン固定層からなる電気二重層を形成している。更にその周囲はイオン濃度の高いイオン拡散層で覆われている(図示せず)。
修飾金属ナノ粒子である一次粒子1、3及びこれらの層を含む塊が電界に従って挙動するとき、イオン拡散層中のイオンは、粒子とともに移動するものと、分散媒19に取り残されるものとに分離される。この境界のことをすべり面と呼び、すべり面の電位のことをゼータ電位と呼ぶ。修飾金属ナノ粒子同士は、前述の電気二重層の存在により分子間相互作用に逆らうことで、一定の粒子間距離を保つ(分散状態維持)ことが出来る一方、分子間相互作用が電気二重層の存在による斥力(静電反発)を上回る場合、修飾金属ナノ粒子は凝集を開始する。最終的に凝集体が分散媒19の比重を上回ると、ブラウン運動(熱運動)が停止し、修飾金属ナノ粒子が沈降を開始する。なお、修飾金属ナノ粒子の分散には、ゼータ電位及び分子間相互作用によるものの他、修飾官能基の高分子鎖の立体障害によるものもある。後者の場合、ゼータ電位の絶対値の大きさに関わらず、修飾金属ナノ粒子同士は相互に凝集しにくい状態にある。
図9において、状態21は、金属ナノ粒子にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1と、金属ナノ粒子にアルデヒド類またはギ酸からなる還元性官能基が修飾された一次粒子3が、テルペン類またはポリオール類からなる分散媒19に分散している状態である。この状態21から、加熱して分散媒揮発による濃縮を行うと、徐々に分散媒19中の一次粒子間距離が小さくなり、最初に還元性官能基(ギ酸)が表出した一次粒子3同士が修飾基由来のゼータ電位及び水素結合で結びつき、コア(凝集体)20を形成し、状態22となる。
次に、一次粒子3であるコア部修飾金属ナノ粒子からなるコア20に対し、シランカップリング剤が修飾された一次粒子1が、修飾基由来のゼータ電位及び分子間相互作用により、シェル部修飾金属ナノ粒子として結びついた状態23となる。このように、コア部修飾金属ナノ粒子とシェル部修飾金属ナノ粒子とを分散媒19中に分散させることにより、分子間相互作用で凝集したコア部修飾金属ナノ粒子の周囲にシェル部修飾金属ナノ粒子が形成された複合修飾金属ナノ粒子が生成される。ここでは、シェル部修飾金属ナノ粒子として一次粒子1を用いて説明したが、シェル部修飾金属ナノ粒子は一次粒子2でも良く、一次粒子1および一次粒子2が混合されていても良い。
次に、図10を用いて、修飾金属ナノ粒子が基材に結合する工程例を説明する。この結合工程は従来の修飾金属ナノ粒子と同様である。
図10は修飾金属ナノ粒子が基材に結合する工程例を順に示す概略図である。ここでは、シェル部修飾金属ナノ粒子24として、図1に示す一次粒子1を用いる場合を例に説明する。シェル部修飾金属ナノ粒子24は、一次粒子1の修飾基であるシランカップリング剤4のアルキル基末端に、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、エポキシ基などからなる反応性官能基6と、アルコキシ基からなる加水分解性基5が導入された分子構造となっている。
図10に示すように、まず、修飾金属ナノ粒子24のアルコキシ基からなる加水分解性基5は、加水分解によりヒドロキシル基26に改質する。
次に、修飾金属ナノ粒子24は、シラノール縮合によるシロキサン結合25を生成する一方、一部のヒドロキシル基26が基材29表面の親水性官能基27と会合する。
次に、修飾金属ナノ粒子24の一部のヒドロキシル基26は、基材29表面の親水性官能基27と水素結合による配向を行う。つまり、基材29表面の親水性官能基27は、一部のヒドロキシル基26との会合により、水素結合生成による分子配向を生じる。
最後に、基材29表面の親水性官能基27と一部のヒドロキシル基26とが配向した状態で脱水縮合することにより、強固な共有結合28が生成され、修飾金属ナノ粒子24が基材29に結合する。
続いて、基材上に膜を形成する例として、基材へ配線を形成する工程例について、図11、図12を用いて説明する。
基材上への微細配線形成は、本発明の複合修飾金属ナノ粒子堆積の他に、電解銅めっきによる方法がある。この方法は、LDS(Laser Direct Structurig)と呼ばれ、金属(錯体)粒子などを混ぜた成形樹脂材料を用いて射出成形を行い、回路を形成したい領域をレーザにより活性化し、成形樹脂材料内の金属粒子を導体化させ、その導体化させた部分に電解銅めっきを行うことで回路を形成する工法である。特長は電解銅めっきで選択的に回路形成を行うことで、不要な電解銅めっき層が除去されるとともに、除去する電解銅めっき層自体が薄いことから、微細配線化に有利とされる。一方で、この方法は基材と電解銅めっきとの密着性を、主に基材表面の粗さ(アンカー効果)により確保しているため、その表面粗さはRaで0.5um以上と大きいことが課題である。また、近年の半導体パッケージの小型化・高密度化に伴って、更なる回路の微細化が要求されており、こうした状況において、表面粗化による大きな粗化形状(アンカー効果)を利用し、電解銅めっきとの密着性を確保する方法では、厚さ10um以下の微細な回路は、ショートやオープン不良の発生に繋がるため、基材(多層配線板)を歩留まり良く製造することが出来ない。このため、基材と電解銅めっきとの密着性を、アンカー効果に依存させない新たな方法として、両者間に結着(補助)層を設ける技術が提案されている。しかし、硬化した基材に結着剤を塗布して結着層を形成するため、結着層と基材との界面の密着性を考慮した場合、結着層厚みを10um以上、50um以下とする必要があり、薄型化には不適である。また、基材と結着層との密着性は、両者間に作用する分子間相互作用に依存するが、本結合エネルギーは1kJ/mol程度と微小であるため、性能担保に必要な密着強度(1.0N/mm)を確保することが出来ない。
本発明の複合修飾金属ナノ粒子は、シェル部修飾金属ナノ粒子において、例えば、修飾剤にシランカップリング基であるアルコキシシラン誘導体(化合物)を用いているため、配線材である金属ナノ粒子と基材の間に、シランカップリング基による加水分解・縮合両反応を経て、結合エネルギーが500kJ/mol程度と大きい共有結合が生成され、強固な密着性を得ることが出来る。また、金属ナノ粒子の修飾剤であるアルコキシシラン誘導体は、本誘導体が持つ炭化水素鎖が粒子表面に導入されることで、溶媒との親和性を高め、粒子凝集を抑制する効果と、銅微粒子の表面酸化皮膜を除去する効果も有している。
図11は本発明の複合修飾金属ナノ粒子を用いた基材への配線形成フローを工程ごとに例示する概念図であり、シランカップリング処理〜露光〜金属ナノインク塗布〜乾燥〜電解めっき〜光焼成の各工程を工程の順に示す概略図である。各ステップの図では、基材の断面構造が付記される。
STEP1のシランカップリング処理は、ディスペンサーノズル30を介して、シランカップリング剤4が基材29上に、ラインアンドスペース(以下L/Sと称す)状に塗布され、シランカップリング処理エリア32が形成されるものである。塗布方法はL/S状に限らず任意であり、配線層を形成するシランカップリング処理エリア32に、シランカップリング剤4が塗布されれば良い。
塗布後、シランカップリング剤4を硬化させるため、110℃以上140℃未満で焼成する。なお、焼成温度が140℃を超えると、シランカップリング分子が構造破壊する懸念がある。そのため、この焼成処理は、シランカップリング剤4を構成する有機化合物が分解を開始する温度以下の温度で行う。
基材29は、ガラス、金属及びその酸化物、無機フィラーなどからなる無機化合物や、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などからなる有機化合物で構成される。一方、本処理に用いるディスペンサーノズル30の孔径は、濡れ拡がり抑制の観点から、100um以上、300um以下が好適である。ディスペンサーノズル30の孔径が100um未満だと、低抵抗配線形成に必要なシランカップリング処理エリア32を確保することが出来ず、また、ディスペンサーノズル30の孔径が300umを超えると、シランカップリング剤4の塗布量過多により、L/Sパターンを所望のピッチで形成することが出来ない。
STEP2のLD露光は、波長266nm(遠紫外域)、365nm(i線)、436nm(g線)などを有す固体レーザ31を用い、複数のミラーを介して集光させた状態で、基材29上に形成されたシランカップリング処理エリア32にレーザを照射することで、シランカップリング分子のアルコキシ基が親水性官能基に改質(光吸収による共有結合断裂)し、局所親水化処理された露光エリア33が形成されるものである。この露光エリア33を形成することにより、基材29表面に親水部が形成され、後述の修飾金属ナノ粒子のヒドロキシル基と親水部と基材29とを水素結合により会合(分子配向)させることが出来る。
STEP3の金属ナノインク塗布は、上記露光エリア33上に、ディスペンサーノズル34を介して、金属(銅)ナノ粒子分散液である金属ナノインク35が電解めっきのシード層として、シランカップリング剤4と同様に、L/S状に塗布されるものである。金属ナノインク35の塗布領域は、形成したい配線層のパターンに対応する位置に行われる。なお、本発明の複合修飾金属ナノ粒子を用いた配線等の膜の形成の際には、金属ナノインク35は一次粒子3が分散される。
一方、本処理に用いるディスペンサーノズル34の孔径は、濡れ拡がり抑制するため、及びシランカップリング処理エリア32よりも線幅が細く形成されるようにするため、30um以上、70um以下が好適である。ディスペンサーノズル34の孔径が30um未満だと、低抵抗配線形成に必要な金属ナノインク35塗布エリアを確保することが出来ず、また、ディスペンサーノズル34の孔径が70umを超えると、金属ナノインク35の塗布量過多により、L/Sパターンを所望のピッチ間隔で形成することが出来ない。
STEP4の乾燥は、金属ナノインク35を塗布後、金属ナノ粒子分散媒除去のため、乾燥炉37で乾燥を行うものである。なお、乾燥過程で生じる揮発性有機化合物(VOC)は、形成膜内に取り込まれないよう、排気口36を介して乾燥炉37から排出される。この工程により、金属ナノ粒子がシランカップリング基で修飾されてシェル部修飾金属ナノ粒子が形成される。
STEP5の電解めっきは、乾燥・焼成後、硫酸銅水和物(CuSO・5HO)及び硫酸を含む電解銅めっき浴41に、アノード38として銅、カソード39としてL/S状にシード層が形成された基材29が、外部直流電源を介し接続された状態で浸漬され、銅めっき層が形成されるものである。
電解めっき浴41中では、硫酸銅と硫酸はそれぞれ解離して、銅イオン(II)40、水素イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオンとして存在し、電子は溶液中に入り込めないので、溶液中において電流はこれらのイオンの移動により運ばれる。被めっき体であるカソード39では、外部回路を通じて電子が運ばれて、電極界面の溶液中の銅イオン(II)40を還元し、金属銅が析出することで金属ナノインク35上に銅めっき(皮膜)層が形成される。これがカソード反応である。一方、銅アノードでは逆の現象が起こる。即ち、銅アノードと溶液の界面でイオン化反応が起こり、銅は電子を放出して銅イオン(II)40として溶液中に溶け出す。これがアノード反応であり、放出された電子はアノード38と導線を経て直流電源の端子に入り、導線を経てカソード39に供給される。
STEP6の光焼成は、電解銅めっきにて、基材29のシード層上に所望の膜厚(5um以上、10um以下)の銅めっき層を形成した後、可視光パルス照射による光焼成にて120℃以上、200℃以下で焼結処理がなされ、基材−配線間に強固な共有結合が生成されるものである。光焼成は、金属ナノインク中の粒子径が1um未満の金属ナノ粒子が、基材29上にパターン形成された後、可視光をパルス照射することで、金属ナノ粒子が黒体としての挙動を示し、高い電磁線吸収率と粒子自身の熱質量が小さいことで、粒子が急速に加熱・融着し回路パターンを形成する。
図12は本発明の複合修飾金属ナノ粒子を用いた基材への配線形成フローを工程ごとに例示する概念図であり、図11とは異なる方法における露光〜修飾金属ナノインク塗布〜乾燥〜電解めっき〜光焼成の各工程を工程の順に示す概略図である。各ステップの図では、基材の断面構造が付記される。なお、以下の説明において、図1,図2で用いた符号も用いる。
図12に示すように、STEP1のLD露光は、シランカップリング処理がなされていない基材29上に、図11のSTEP2のLD露光と同様に、固体レーザ31を用い、複数のミラーを介して集光させた状態でレーザを直接照射することで、基材29のレーザ照射位置が熱処理されて、局所表面が化学的に改質された露光エリアが基材29上に形成されるものである。
STEP2の修飾金属ナノインク塗布は、図11のSTEP3の金属ナノインク塗布と同様、上記露光エリア上に、ディスペンサーノズル34を介して、二次粒子9に相当する複合修飾金属ナノ粒子の分散液である修飾金属ナノインク42が、電解銅めっきのシード層として、L/S状に塗布されるものである。
なお、修飾金属ナノインク42は、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3であるコア部修飾金属ナノ粒子の凝集体に、その周りを覆うようシェル部にシランカップリング剤が修飾された一次粒子1を配した構造の二次粒子9である複合修飾金属ナノ粒子と、テルペン類またはポリオール類からなる溶媒と、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、イソシアナート樹脂、アクリル樹脂、レゾール樹脂、シロキサン樹脂及びこれらの前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機結着剤とを含む。複合修飾金属ナノ粒子は、二次粒子9に限らず、二次粒子10〜18のいずれでも良い。
STEP3の乾燥は、図11のSTEP4の乾燥と同様、修飾金属ナノインク42を塗布後、金属ナノ粒子分散媒除去のため、乾燥炉37で乾燥・焼成を行うものである。
STEP4の電解めっきは、図11のSTEP5の電解めっきと同様、乾燥・焼成後、硫酸銅水和物(CuSO・5HO)及び硫酸を含む電解銅めっき浴41に、アノード38として銅、カソード39としてL/S状にシード層が形成された基材29が、外部直流電源を介し接続された状態で浸漬され、本シード層上に所望の膜厚(例えば、5um以上、10um以下)で銅めっき層が形成されるものである。
STEP5の光焼成は、図11のSTEP6の光焼成と同様、電解銅めっきにて、基材29のシード層上に所望の膜厚(5um以上、10um以下)の銅めっき層を形成した後、可視光パルス照射による光焼成にて120℃以上、200℃以下で焼結処理がなされ、基材−配線間に強固な共有結合が生成されるものである。
以上のことから、図12の基材29への配線形成フローは、図11の基材29への配線形成フローに対し、配線工程中にシランカップリング処理を行わず、コア部に還元性官能基が修飾された一次粒子3の凝集体を、その周りを覆うようシェル部にシランカップリング剤で修飾された一次粒子1または一次粒子2を配した構造の二次粒子9が分散された修飾金属ナノインク42を、LD露光によりL/S状に局所親水化処理した基材29上に塗布するという簡便な方法を用いた場合でも、粒子修飾基と基材表面間に共有結合を生成し、高密着な電解銅めっきのシード層を形成するものである。
図13は従来のLDS法により形成した配線部−樹脂基材界面近傍の構造を示す断面図である。
本図における配線部は、金属結合により結びついているめっき粒子43からなるめっき層48にて構成され、めっき層48とポリカーボネートからなる基材47との結着は、基材表面の粗さ(アンカー効果)と、基材47内に添加・分散された金属錯体44における配位子44bがレーザにより活性化され、中心金属44aが導体化し、めっき粒子43と金属結合のような相互作用を生成することでなされている。
図14は本発明に係る配線部−樹脂基材界面近傍の構造を示す断面図である。
本図における配線部は、図13に示すめっき層48と、共有結合により結びついている複合修飾金属ナノ粒子(二次粒子9)からなる修飾金属ナノ粒子層49にて構成され、複合修飾金属ナノ粒子(二次粒子9)からなる修飾金属ナノ粒子層(複合層)49とポリカーボネートからなる基材47との結着は、二次粒子9を構成する修飾金属ナノ粒子(一次粒子1)のシランカップリング基(加水分解性基)が、焼成工程を経て、基材47表面との間に共有結合を生成することでなされている。
以上のように、本発明はシランカップリング剤で修飾された修飾金属ナノ粒子、及びアルデヒド類またはギ酸等の還元性官能基で修飾された修飾金属ナノ粒子からなる複合修飾金属ナノ粒子を用いて基材上に膜を形成し、複合修飾金属ナノ粒子上に金属や無機物等の機能性物質を形成させるとともに、基材と複合修飾金属ナノ粒子とを共有結合させることにより、基材上に機能膜を形成することを特徴とする。
このように、シランカップリング(基)剤で修飾された修飾金属ナノ粒子を用い、シランカップリング基を加水分解したヒドロキシル基を介して、複合修飾金属ナノ粒子と基材とを共有結合させることにより、基材上に共有結合で機能膜を形成することが出来るので、基材と機能膜との密着を強固にするとともに、強固な密着を永続的に維持することが出来る。
また、結着層を設けずに共有結合により基材と金属ナノ粒子を密着させるため、配線層等の機能層を薄型化することが出来る。また、金属ナノ粒子をアルコキシシラン誘導体で修飾するため、修飾金属ナノ粒子が一次粒子として存在する場合は、溶媒との親和性が高まり、粒子凝集を抑制することができるため、分散性を向上させることができ、分散剤を添加する必要がなくなる。
また、還元剤を分散媒に添加し、複合修飾金属ナノ粒子を生成することにより、金属ナノ粒子表面の金属酸化膜を除去することができ、高密度で金属ナノ粒子を修飾できるため、十分な数の共有結合を生成することができ、より密着性を向上させることが出来る。更に非酸化性雰囲気中で熱処理を行うことにより、銅等の金属が酸化されることを抑制でき、導電性の低下をより防止することが出来る。
なお、基材上に複合修飾金属ナノ粒子を直接塗布しても良いし、シランカップリング剤を基材上に塗布した後に修飾金属ナノ粒子を塗布し、シランカップリング剤と金属ナノ粒子とを反応させて、複合修飾金属ナノ粒子を基材上に形成しても良い。
シランカップリング剤は密着性と分散性の向上が実現できる一方で、金属ナノ粒子の修飾剤として用いた場合、導電性を阻害する因子となりうるが、シランカップリング基修飾金属ナノ粒子と、100〜300℃程度の低温焼成で粒子表面から容易に離脱・気化が可能な、アルデヒド類またはギ酸からなる還元性官能基修飾金属ナノ粒子を複合化し、二次粒子である複合修飾金属ナノ粒子とすることで、従来の粒子修飾では困難であった一次粒子に異なる2種以上の官能基を修飾することが可能になると共に、密着性向上に必要な機能性官能基であるシランカップリング基を焼成後も残しつつ、不要な還元性官能基を離脱・気化させることで、基材に対し、密着性と導電性を担保した状態で配線形成を行うことなどが可能である。
また、分散媒中の構成粒子であるシェル部修飾金属ナノ粒子において、特にシランカップリング基の対金属ナノ粒子結着部位を加水分解性基、反応性官能基の2種類とし、更にコア部修飾金属ナノ粒子である還元性官能基修飾金属ナノ粒子を分散媒中に新たに添加し、構成粒子のゼータ電位を最適化させつつ、分散媒揮発による濃縮(凝集制御)にて、コア部に還元性官能基修飾金属ナノ粒子を、シェル部にシランカップリング基修飾金属ナノ粒子を配した構造を有す二次粒子である複合修飾金属ナノ粒子を合成することが可能である。
また、シェル部のシランカップリング基修飾金属ナノ粒子を粒子結着部位の異なる2種類からなるものとすることで、無機基材のみならず有機基材への結着も可能となる。この二次粒子は粗大化により、金属に対するシランカップリング剤の構成割合が低下する一方、シランカップリング剤修飾部の面積が拡大することで、基材上に本二次粒子を堆積・焼成させた場合、密着性も向上する。
(実施例)
次に本発明の実施例について説明する。
まず、高周波誘導熱プラズマ法により、平均粒径が50nmになるよう造粒された銅ナノ粒子と、修飾剤である(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランまたは(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシランと、還元剤である水素化ホウ素ナトリウムとを、テルピネオールからなる揮発性溶媒に添加して、非酸化性雰囲気下で、120℃/60分間、熱処理することにより、シェル部修飾金属ナノ粒子であるアルコキシシラン修飾銅ナノインクを得た。揮発性溶媒は、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、ハロゲン系溶媒、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物が含有される極性溶媒である。得られた修飾銅ナノインク中の平均粒子径を、透過型電子顕微鏡像の中から無作為に選ばれた100個の粒子の粒子径を測定し平均することにより算出した結果、75nmであった。
次に、同じく高周波誘導熱プラズマ法により、平均粒径が50nmになるよう造粒された銅ナノ粒子と、修飾剤であるギ酸とを、テルピネオールからなる揮発性溶媒に添加して、非酸化性雰囲気下で、100℃/60分間、熱処理することにより、コア部修飾金属ナノ粒子であるギ酸修飾銅ナノインクを得た。得られた修飾銅ナノインク中の平均粒子径を、同じく透過型電子顕微鏡像の中から無作為に選ばれた100個の粒子の粒子径を測定し平均することにより算出した結果、60nmであった。
次に、アルコキシシラン修飾銅ナノインクとギ酸修飾銅ナノインクを、非酸化性雰囲気下で3:7の割合で調合した後、150℃/60分間加熱して、分散媒揮発による濃縮(凝集制御)により、コア部にギ酸修飾金属ナノ粒子を、シェル部にアルコキシシラン修飾金属ナノ粒子を配した構造を有す二次粒子である複合修飾金属ナノ粒子を含む修飾金属ナノインクを得た。
次に、0.7mm厚のガラス基材表面を、波長266nmである固体レーザにて照射(露光)し、局所親水化処理を行った。その後、照射エリア上に、孔径30umのディスペンサーノズルにて、修飾銅ナノインクである複合修飾金属ナノインクを、電解めっきのシード層として配線パターンの体積抵抗率が20um・cm以下となるよう、幅50um、ピッチ150umにて、L/S状にパターン塗布した。
修飾銅ナノインクを塗布後、粒子分散媒除去のため、乾燥炉で、120℃/10分間、乾燥を行った。
乾燥後、硫酸銅水和物、硫酸、光沢・還元剤、イオン交換水などからなる電解銅めっき(液)浴に、アノードとして銅、カソードとしてパターン塗布基材を、外部直流電源を介し接続した状態で浸漬し、浴温20℃、陰極電流密度4A/dmにて、シード層上にめっき処理を行った。得られた銅めっき層の膜厚を、触針段差計を用いて確認した結果、25umであった。
最後に、銅めっき層が形成された基材上に、フラッシュランプ照射距離20mm、照射エネルギー4J/cm、パルス幅500usの設定条件にて、光焼成による焼結処理を行い、銅ナノ粒子及び銅めっきの複合層からなる配線パターンを得た。得られた配線パターンの体積抵抗率は、四端子法にて計測した結果、10uΩ・cmであった。
合わせて、得られた配線パターンと基材の密着強度を、JIS C 5012のプリント配線板試験方法に基づいて計測した。本試験方法は、配線の一端を基材から剥がして引張試験機に固定し、基材表面に対して垂直方向に一定の速さ、かつ一定長さ以上引き剥がした際の、単位幅当たりの荷重(N/mm)の最低値を、密着強度と定義するものである。計測した結果、密着強度は1.2N/mmであった。
以上より、本実施例の修飾金属ナノ粒子は、修飾剤にアルコキシシラン誘導体、及びアルデヒド類またはギ酸を、金属ナノ粒子に銅を、それぞれ用いることで、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などの樹脂を始め、ガラス、セラミックスなど、様々な被着体に対し、高い密着強度を保持した状態で堆積することが出来る。このことから、各種基材(筺体)上への微細な電気配線形成、フィルムインモールドによる樹脂基材への加飾成形などに好適である。
本発明の複合修飾金属ナノ粒子、その製造方法、複合修飾金属ナノインク及び配線層形成方法は、基材と配線材間の密着性を、基材表面の粗化や結着層形成といった基材前処理を行うことなく、複合修飾金属ナノ粒子を堆積させるという簡便な方法で高めることが可能であり、また、密着寄与結合が共有結合であるため、強固な密着を永続的に得ることが出来ることを示唆するものである。
本発明は、基材との密着性を確保しながら、導電性を確保することができ、金属ナノ粒子が修飾された複合修飾金属ナノ粒子、その製造方法、複合修飾金属ナノ粒子を用いた複合修飾金属ナノインク及び複合修飾金属ナノ粒子を用いた配線層形成方法等に有用である。
1 一次粒子(シランカップリング修飾:無機基材用)
2 一次粒子(シランカップリング修飾:樹脂基材用)
3 一次粒子C(還元性官能基修飾)
4 シランカップリング剤
5 加水分解性基(アルコキシ基)
6 反応性官能基
7 還元性官能基
8 金属ナノ粒子
9 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子1)
10 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子2)
11 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子1,2)
12 未充填(空隙)部:一次粒子1
13 未充填(空隙)部:一次粒子2
14 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子1)
15 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子2)
16 未充填(空隙)部:一次粒子3
17 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子1)
18 二次粒子(コア:一次粒子3凝集体/シェル:一次粒子2)
19 分散媒
20 コア(凝集体)
21 状態
22 状態
23 状態
24 シェル部修飾金属ナノ粒子
25 シロキサン結合
26 ヒドロキシル基
27 親水性官能基
28 共有結合
29 基材
30 ディスペンサーノズル(太)
31 固体レーザ
32 シランカップリング処理エリア
33 露光エリア
34 ディスペンサーノズル(細)
35 金属ナノインク(分散液)
36 排気口
37 乾燥炉
38 アノード
39 カソード(被めっき体)
40 銅イオン(II)
41 めっき浴
42 修飾金属ナノインク(分散液)
43 めっき粒子
44 金属錯体(四配位型)
44a 金属
44b 配位子
47 基材(ポリカーボネート)
48 めっき層
49 修飾金属ナノ粒子層

Claims (15)

  1. 第1の金属ナノ粒子が還元性官能基で修飾されるコア部修飾金属ナノ粒子と、
    前記コア部修飾金属ナノ粒子が凝集される凝集体と、
    前記凝集体の周囲に形成されてカップリング基として加水分解性基又は反応性官能基もしくは加水分解性基及び反応性官能基で第2の金属ナノ粒子が修飾されるシェル部修飾金属ナノ粒子と
    を有することを特徴とする複合修飾金属ナノ粒子。
  2. 前記第1の金属ナノ粒子は、銅又は銅酸化物、あるいはこれらの少なくとも一方を含む化合物からなることを特徴とする請求項1記載の複合修飾金属ナノ粒子。
  3. 前記第1の金属ナノ粒子及び前記第2の金属ナノ粒子の粒径は、いずれも3nm以上70nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合修飾金属ナノ粒子。
  4. 前記第1の金属ナノ粒子に対する前記還元性官能基の表面修飾密度、及び前記第2の金属ナノ粒子に対する前記カップリング基の表面修飾密度は、いずれも10個/nm以上100個/nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子。
  5. 前記凝集体の大きさは、100nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子。
  6. 前記コア部修飾金属ナノ粒子と前記シェル部修飾金属ナノ粒子の構成比は、前記コア部修飾金属ナノ粒子が10に対して、前記シェル部修飾金属ナノ粒子が1以上3以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子と、
    テルペン類またはポリオール類からなる溶媒と、
    エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、レゾール樹脂、シロキサン樹脂またはこれらの前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機結着剤と
    から構成されることを特徴とする複合修飾金属ナノインク。
  8. 基材上に請求項7に記載の複合修飾金属ナノインクを配線層形成領域に塗布する工程と、
    前記複合修飾金属ナノインク上に金属めっきを形成する工程と、
    前記複合修飾金属ナノインク及び前記金属めっきを120℃以上200℃以下で焼成する工程と、
    前記金属めっきが施された前記複合修飾金属ナノインクを前記基材と共有結合させる工程と
    を有することを特徴とする配線層形成方法。
  9. 前記複合修飾金属ナノインクを配線層形成領域に塗布する前に、レーザ照射することにより、前記基材に親水性官能基を形成して露光エリアを形成する工程を更に有し、前記親水性官能基に前記複合修飾金属ナノ粒子が分子間相互作用により自己集合することを特徴とする請求項8に記載の配線層形成方法。
  10. 還元性官能基で修飾されたコア部修飾金属ナノ粒子が凝集された凝集体の周囲に、加水分解性基又は反応性官能基もしくは加水分解性基及び反応性官能基であるカップリング基で修飾されたシェル部修飾金属ナノ粒子が形成される複合修飾金属ナノ粒子の製造方法であって、
    前記カップリング基を修飾剤として含むカップリング剤と、還元剤と、金属ナノ粒子とを揮発性溶媒に添加し、非酸化性雰囲気下で前記カップリング剤を構成する有機化合物の分解開始温度以下の温度で熱処理して前記カップリング基で修飾された修飾金属ナノ粒子を生成する工程と、
    修飾剤であるアルデヒド類またはギ酸からなる還元性有機化合物と、金属ナノ粒子とを揮発性溶媒に添加し、非酸化性雰囲気下で前記有機化合物の分解開始温度以下の温度で熱処理して前記還元性官能基で修飾された修飾金属ナノ粒子を生成する工程と、
    前記カップリング基で修飾された修飾金属ナノ粒子と前記還元性官能基で修飾された修飾金属ナノ粒子とをテルペン類またはポリオール類からなる溶媒に添加して、各々の前記修飾金属ナノ粒子が有すゼータ電位の差で発現する自己組織化により凝集し、前記還元性官能基で修飾された修飾金属ナノ粒子が凝集された凝集体の周囲に前記カップリング基で修飾された前記修飾金属ナノ粒子が配される工程と
    を有することを特徴とする複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
  11. 前記カップリング剤は、アルコキシシラン誘導体を含むシランカップリング剤、チオアルコール類、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、または(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシランであることを特徴とする請求項10記載の複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
  12. 前記アルコキシシラン誘導体を含むシランカップリング剤は、親水性官能基で終端化されたアルキル基を含む2種類以上の有機分子から構成されることを特徴とする請求項11記載の複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
  13. 前記アルキル基は、メルカプト基、またはアミノ基で終端化されることを特徴とする請求項12記載の複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
  14. 前記アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクリルアルデヒド、グルタルアルデヒドのいずれかまたはこれらが組み合わせて用いられることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
  15. 前記揮発性溶媒は、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、ハロゲン系溶媒、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物が含有される極性溶媒であることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の複合修飾金属ナノ粒子の製造方法。
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