JP2017052025A - 溝入れ用切削インサート及び刃先交換式溝入れ工具 - Google Patents

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拓真 木曽
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彰一郎 渡辺
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Abstract

【課題】被削材の外周面及び内周面のいずれに溝入れ加工する際においても、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めを精度よく行え、加工品位を安定して高められ、かつ、部材の管理を簡素化できること。【解決手段】棒状をなし、延在方向Lに沿う両端部のうち一端部に刃部27が形成され、一端部以外の部位に被クランプ部28が形成され、被クランプ部28において延在方向Lに沿う一端部とは反対側を向く背面26は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い下面25から離間するように、下面25に対して傾斜して形成された傾斜壁状背面部26aと、下面25と傾斜壁状背面部26aとの間に形成される角度βよりも、下面25との間に形成される角度γが垂直に近い値とされた縦壁状背面部26bと、を備え、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さよりも長くされている。【選択図】図8

Description

本発明は、被削材に溝入れ加工や突切り加工等を施す溝入れ用切削インサート、及びこれを用いた刃先交換式溝入れ工具に関するものである。
従来、金属材料等からなり円柱状や円筒状をなす被削材を、その軸線回りに回転させつつ、被削材の外周面、内周面、及び軸線方向を向く端面等に、溝入れ用切削インサートの切れ刃で切り込んで、溝入れ加工や突切り加工等(以下、単に溝入れ加工と省略することがある)を施す刃先交換式溝入れ工具が知られている(例えば下記特許文献1、2を参照)。
この種の刃先交換式溝入れ工具では、工具本体の先端部に形成されてスリット状に延びるインサート取付座に、溝入れ用切削インサートが着脱可能に装着される。
溝入れ用切削インサートは、棒状をなし、その延在方向に沿う両端部のうち一端部に、刃部が形成され、延在方向に沿う一端部以外の部位に、被クランプ部が形成されている。刃部は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃と、を有している。被クランプ部は、すくい面と同じ方向を向く上面と、上面とは反対側を向く下面と、延在方向に沿う一端部とは反対側を向く背面と、を有している。
インサート取付座は、溝入れ用切削インサートの上面に当接する頂壁と、溝入れ用切削インサートの下面に当接する底壁と、溝入れ用切削インサートの背面に当接する後壁と、を有している。インサート取付座の延在方向に沿う両端部のうち一端部(インサート挿入口)は、工具本体の先端部の端面(溝入れ方向を向く面)に開口している。インサート取付座に溝入れ用切削インサートが装着されたときに、インサート取付座の延在方向と、溝入れ用切削インサートの延在方向とは、互いに同じ向きとされる。
インサート取付座に溝入れ用切削インサートを装着する際には、該インサート取付座の延在方向に沿って、インサート挿入口から溝入れ用切削インサートを挿入していく。そして、インサート取付座の後壁に、溝入れ用切削インサートの背面が当接させられたときに、それ以上の溝入れ用切削インサートの移動が規制されて、該溝入れ用切削インサートが位置決めされる。この状態から、工具本体の先端部(上顎部)を弾性変形又は復元変形させるとともに、インサート取付座の頂壁と底壁との間隔を縮めることにより、該インサート取付座内において溝入れ用切削インサートがクランプされ、固定される。
このようにインサート取付座に溝入れ用切削インサートが装着された状態で、インサート取付座のインサート挿入口からは、溝入れ用切削インサートの切れ刃が突出して配置される。そして、インサート取付座に対して溝入れ用切削インサートの位置決めが精度よく行われていることにより、切れ刃の位置(突出量)が所定の狙い値通りとなって、溝入れ加工の加工品位を高めることができる。
ところで、下記特許文献1、2においては、溝入れ用切削インサートの背面が、延在方向の一端部側(被クランプ部から刃部側)へ向かうに従い下面から離間させられるように、該下面に対して傾斜させられており、このため下記の作用効果が得られるようになっている。
すなわち、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサートの切れ刃近傍に対して、すくい面が向く方向とは反対側へ向けた切削力が作用し、この溝入れ用切削インサートの下面における延在方向の一端部側の端部近傍を中心とした回転力が生じても、該溝入れ用切削インサートの傾斜した背面に当接されるインサート取付座の後壁が、溝入れ用切削インサートの浮き上がりを抑制するように機能して、クランプ安定性が向上する。
特表2014−526390号公報 米国特許第5921724号明細書
しかしながら、上記特許文献1、2においては、被削材の外周面に対する外径溝入れ加工や突切り加工時には特に問題は生じないが、被削材の内周面に対する内径溝入れ加工時において、下記の問題が生じる。
すなわち、内径溝入れ加工時には、被削材の内周面と、溝入れ用切削インサートの正面下部(溝入れ用切削インサートの延在方向の一端部側を向く正面のうち、切れ刃の下方に位置する部分)との接触を防止するため、該溝入れ用切削インサートの延在方向が、溝入れ加工時に被削材に対して工具が移動させられる「溝入れ方向」に近い向きに設定される。具体的には、本明細書に添付の図15に示されるように、溝入れ用切削インサートの延在方向Lと、白抜き矢印で示される溝入れ方向とが、互いに近い向きとなる。
このため、内径溝入れ加工時においては、上記特許文献1、2のように、溝入れ用切削インサートの背面が下面に対して傾斜させられていると、インサート取付座の後壁に溝入れ用切削インサートの背面が当接させられたときに、溝入れ用切削インサートの移動を規制する効果が安定して得られにくくなる。従って、インサート取付座に対して溝入れ用切削インサートを精度よく位置決めすることができず、切れ刃の位置が不安定になって、溝入れ加工の精度を確保することが難しかった。
特に内径溝入れ加工では、突切り加工とは異なり、加工する溝の深さに高い精度が要求されることから、切れ刃の位置を安定させることが重要視される。
つまり、上記特許文献1、2に示される溝入れ用切削インサートは、外径溝入れ加工や突切り加工には適していても、内径溝入れ加工には不向きであり、内径溝入れ加工時においては、前記溝入れ用切削インサートとは形状が異なる別の溝入れ用切削インサートを工具本体に装着し直す必要があった。このため、複数種類の溝入れ用切削インサートを用意しなければならず、部材の管理が複雑になっていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被削材の外周面に溝入れ加工する際のみならず、内周面に溝入れ加工する際においても、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めを精度よく行うことができるとともに、加工品位を安定して高めることができ、かつ、部材の管理を簡素化できる溝入れ用切削インサート、及びこれを用いた刃先交換式溝入れ工具を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、棒状をなし、その延在方向に沿う両端部のうち一端部に、刃部が形成され、前記延在方向に沿う前記一端部以外の部位に、被クランプ部が形成された溝入れ用切削インサートであって、前記刃部は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃と、を有し、前記被クランプ部は、前記すくい面と同じ方向を向く上面と、前記上面とは反対側を向く下面と、前記延在方向に沿う前記一端部とは反対側を向く背面と、を有し、当該溝入れ用切削インサートの前記延在方向、及び、前記上面と前記下面を結ぶ上下方向に直交する厚さ方向から見て、前記背面は、前記延在方向の一端部側へ向かうに従い前記下面から離間するように、該下面に対して傾斜して形成された傾斜壁状背面部と、前記下面と前記傾斜壁状背面部との間に形成される角度よりも、前記下面との間に形成される角度が垂直に近い値とされた縦壁状背面部と、を備え、前記傾斜壁状背面部の長さが、前記縦壁状背面部の長さよりも長くされていることを特徴とする。
また本発明は、工具本体に設けられたインサート保持板部と、前記インサート保持板部を該インサート保持板部の厚さ方向に貫通するとともに、スリット状に延び、その延在方向に沿う両端部のうち一端部が、前記インサート保持板部の端面に開口するインサート取付座と、前記インサート取付座の前記一端部から切れ刃を突出させて、該インサート取付座に着脱可能に装着される溝入れ用切削インサートと、を備えた刃先交換式溝入れ工具であって、前記溝入れ用切削インサートとして、前述した溝入れ用切削インサートを用い、前記インサート取付座は、前記上面に当接する頂壁と、前記下面に当接する底壁と、前記背面の前記傾斜壁状背面部及び前記縦壁状背面部のうち、いずれかに当接する後壁と、を有し、前記溝入れ用切削インサートの前記すくい面を正面に見た前記工具本体の上面視で、前記インサート保持板部が、前記工具本体のうち該インサート保持板部以外の部位から突出させられる突出方向が、前記工具本体の工具軸線に沿うように延びる場合には、前記後壁が、前記傾斜壁状背面部に当接され、前記突出方向が、前記工具本体の工具軸線に直交するように延びる場合には、前記後壁が、前記縦壁状背面部に当接されることを特徴とする。
本発明の溝入れ用切削インサート及び刃先交換式溝入れ工具によれば、インサート取付座に対して溝入れ用切削インサートを取り付ける際、インサート取付座の底壁に対しては、溝入れ用切削インサートの下面が当接させられる。また、インサート取付座の頂壁に対しては、溝入れ用切削インサートの上面が当接させられる。そして、インサート取付座の後壁に対しては、溝入れ用切削インサートの背面のうち、傾斜壁状背面部及び縦壁状背面部のいずれかを当接させることができる。
具体的に、例えば、被削材の外周面に外径溝入れ加工や突切り加工を施す場合には、溝入れ用切削インサートのすくい面を正面に見た工具本体の上面視で、インサート保持板部が、工具本体のうち該インサート保持板部以外の部位から突出させられる突出方向は、工具本体の工具軸線(工具本体が延在する方向)に沿うように延びる。このような工具本体により外径溝入れ加工や突切り加工を行う場合は、インサート取付座の後壁に対して、溝入れ用切削インサートの背面のうち傾斜壁状背面部を当接させる。これにより、溝入れ加工時に、溝入れ用切削インサートの切れ刃近傍に対して、すくい面が向く方向とは反対側へ向けた切削力が作用し、この溝入れ用切削インサートの下面における延在方向の一端部側の端部近傍を中心とした回転力が生じても、該溝入れ用切削インサートの傾斜壁状背面部に当接されるインサート取付座の後壁が、溝入れ用切削インサートの浮き上がりを抑制するように機能して、クランプ安定性が高められる。
すなわち、溝入れ加工の中でも特に外径溝入れ加工や突切り加工においては、切削速度や切込み等が高く設定されがちであり、溝入れ用切削インサートの切れ刃近傍に大きな切削力や衝撃が作用しやすいことから、上述のように、インサート取付座の後壁に対して、該溝入れ用切削インサートの背面のうち傾斜壁状背面部を当接させることにより、この溝入れ用切削インサートのクランプ安定性を顕著に向上させることができ、加工精度を良好に維持することができる。
なお、外径溝入れ加工や突切り加工時においては、溝入れ用切削インサートの傾斜壁状背面部に当接されるインサート取付座の後壁が、溝入れ方向(突出方向)に対して立った角度で配置される(例えば溝入れ方向に対して垂直に近い角度をなす)ことから、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決め精度を十分に確保することができる。
また、例えば、被削材の内周面に内径溝入れ加工を施す場合には、溝入れ用切削インサートのすくい面を正面に見た工具本体の上面視で、インサート保持板部が、工具本体のうち該インサート保持板部以外の部位から突出させられる突出方向は、工具本体の工具軸線(工具本体が延在する方向)に直交するように延びる。このような工具本体により内径溝入れ加工を行う場合は、インサート取付座の後壁に対して、溝入れ用切削インサートの背面のうち縦壁状背面部を当接させる。これにより、内径溝入れ加工時においても、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めが高精度に行われる。
すなわち、溝入れ加工の中でも特に内径溝入れ加工においては、被削材の内周面と、溝入れ用切削インサートの正面下部(溝入れ用切削インサートの延在方向の一端部側を向く正面(前面)のうち、切れ刃の下方に位置する部分)との接触を防止するため、該溝入れ用切削インサートの延在方向が、溝入れ加工時に被削材に対して工具が移動させられる「溝入れ方向」に近い角度に設定される。つまり、図18に示される角度αが、0°に近い値に設定される。なお、内径溝入れ加工に用いられる工具本体においては、インサート保持板部の下顎部の形状や厚さに制限が生じやすく剛性を確保しにくいが、上述のように角度αが0°に近い値に設定されることにより、下顎部の剛性を確保することができ、ひいては工具本体全体の剛性も確保される。
このような装着姿勢であっても、インサート取付座の後壁に、溝入れ用切削インサートの縦壁状背面部が当接させられることにより、溝入れ用切削インサートの移動を規制する効果が安定して奏功される。従って、インサート取付座に対して溝入れ用切削インサートを精度よく位置決めすることができ、切れ刃の位置が安定して、溝入れ加工の精度を高めることができる。
なお、縦壁状背面部による上述の作用効果を得るにあたっては、この溝入れ用切削インサートを、該溝入れ用切削インサートの延在方向、及び、上面と下面を結ぶ上下方向に直交する厚さ方向から見て、下面と縦壁状背面部との間に形成される角度が、下面と傾斜壁状背面部との間に形成される角度よりも、垂直に近い値とされていればよい。つまり、溝入れ用切削インサートを前記厚さ方向から見て、下面と傾斜壁状背面部との間に形成される角度に比べて、下面と縦壁状背面部との間に形成される角度が、90°により近くされる。具体的に、下面と縦壁状背面部との間に形成される前記角度としては、90°に近い角度が好ましく(つまり厳密に90°である必要はないが、略90°であることが好ましく)、例えば80〜100°である。
そして、溝入れ用切削インサートを前記厚さ方向から見て、傾斜壁状背面部の長さが、縦壁状背面部の長さよりも長くされている。
このため、溝入れ加工の中でも特に高負荷となりやすい外径溝入れ加工や突切り加工時には、インサート取付座の後壁に対して、溝入れ用切削インサートの背面のうち、接触面積(接触長さ)が大きく確保された傾斜壁状背面部を当接させることにより、上述した溝入れ用切削インサートの浮き上がりを抑制する効果やクランプ安定性を高める効果を、より格別顕著なものとすることができる。
また、内径溝入れ加工時においては、インサート取付座の後壁に対して、溝入れ用切削インサートの背面のうち、接触面積(接触長さ)が小さくされた縦壁状背面部を当接させても、上述したインサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決め精度を確保できるという作用効果を十分に奏することができる。これは、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの延在方向に沿う位置精度を確保するにあたって、インサート取付座の後壁に当接する縦壁状背面部の接触面積(接触長さ)の大きさは影響しにくいためである。そして、縦壁状背面部の長さを短くすることにより、溝入れ用切削インサートの外形をよりコンパクトに形成することができる。
このように本発明では、インサート取付座の後壁によって、溝入れ用切削インサートの背面のうち、傾斜壁状背面部及び縦壁状背面部のいずれの面をクランプする(拘束する)かを、溝入れ加工の加工形態によって選択し適宜使い分けることができる。つまり、一種類の溝入れ用切削インサートによって、加工精度を十分に確保しつつ、外径溝入れ加工や突切り加工、内径溝入れ加工等の各種加工形態に柔軟に対応することができる。従って、加工形態に係わらず、溝入れ用切削インサートの加工性能を安定して発揮できる。
以上より本発明によれば、被削材の外周面に溝入れ加工する際のみならず、内周面に溝入れ加工する際においても、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めを精度よく行うことができるとともに、加工品位を安定して高めることができ、かつ、部材の管理を簡素化できる。
また、本発明の溝入れ用切削インサートにおいて、前記上面は、前記延在方向の一端部側へ向かうに従い前記下面に接近するように、該下面に対して傾斜して形成されていることが好ましい。
この場合、インサート取付座に溝入れ用切削インサートが装着された状態で、溝入れ用切削インサートの上面は、該インサート取付座の頂壁に当接され、溝入れ用切削インサートの下面は、該インサート取付座の底壁に当接される。そして、この溝入れ用切削インサートの上面は、延在方向の一端部側へ向かうに従い下面に接近するように傾斜しているので、インサート取付座の頂壁と底壁との間でクランプされた溝入れ用切削インサートには、該インサート取付座の延在方向の一端部とは反対側(後壁側)へ向けた引き込み力が作用する。すなわち、インサート取付座の後壁に対して、溝入れ用切削インサートの背面を押し付ける向きの力が生じることから、該溝入れ用切削インサートのクランプ安定性がより向上する。
そして上記構成によって、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの抜け出しが防止される。
なお、本明細書でいう「抜け出し」とは、インサート取付座に装着された溝入れ用切削インサートが、該インサート取付座の延在方向に沿って意図せず移動し、インサート取付座の一端部(インサート挿入口)から外部へ抜け出てしまうことを指す。具体的には、例えば溝入れ加工後に、被削材から工具を離間させるときに、加工した溝内に位置する溝入れ用切削インサートの切れ刃等が、溝の内壁に当接した場合(引っ掛かりが生じた場合)などにおいて、このような「抜け出し」が生じることがある。
本発明の上記構成によれば、このような抜け出しを防止することができる。
また、本発明の溝入れ用切削インサートにおいて、前記厚さ方向から見て、前記傾斜壁状背面部と、前記下面との間に形成される角度が、40〜70°であることが好ましい。
この場合、外径溝入れ加工や突切り加工時において、溝入れ用切削インサートの傾斜壁状背面部にインサート取付座の後壁が当接されることにより、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めが精度よく行われ、かつ、溝入れ用切削インサートの浮き上がりを顕著に抑制することができる。
詳しくは、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、傾斜壁状背面部と、下面との間に形成される角度が、40°以上であるので、傾斜壁状背面部が、溝入れ加工時に被削材に対して工具が移動させられる「溝入れ方向」に近い傾斜となる(傾き過ぎてしまう)ことを抑制して、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決め精度を安定して確保することができる。
また、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、傾斜壁状背面部と、下面との間に形成される角度が、70°以下であるので、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサートの切れ刃近傍に対して、すくい面が向く方向とは反対側へ向けた切削力が作用しても、溝入れ用切削インサートの傾斜壁状背面部がインサート取付座の後壁に安定して押圧されて、浮き上がりを確実に抑制できる。
また、本発明の溝入れ用切削インサートにおいて、前記厚さ方向から見て、前記縦壁状背面部と、前記下面との間に形成される角度が、80〜100°であることが好ましい。
この場合、内径溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサートの縦壁状背面部にインサート取付座の後壁が当接されることにより、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めが精度よく行われる。
詳しくは、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、縦壁状背面部と、下面との間に形成される角度が、80〜100°であり、つまり垂直に近い角度(90°±10°の範囲内)とされているので、内径溝入れ加工時において、インサート取付座及び溝入れ用切削インサートの延在方向が溝入れ方向(突出方向)に沿うように配置された場合でも、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決め精度が十分に確保される。
また、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサートが被削材に対して溝入れ方向に移動させられつつ切り込み、該溝入れ方向とは反対側へ向けた反作用の力がこの溝入れ用切削インサートに作用して、該溝入れ用切削インサートの縦壁状背面部がインサート取付座の後壁に押圧されても、縦壁状背面部と後壁とが互いにスライド移動させられるようなことが確実に防止される。従って、溝入れ加工の精度が良好に維持される。
また、本発明の溝入れ用切削インサートにおいて、前記厚さ方向から見て、前記傾斜壁状背面部の長さが、前記縦壁状背面部の長さの1.1〜2倍であることが好ましい。
この場合、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、傾斜壁状背面部の長さが、縦壁状背面部の長さの1.1倍以上であるので、溝入れ用切削インサートの背面のうち傾斜壁状背面部の、インサート取付座の後壁に対する接触面積(接触長さ)を確実に大きくして、上述した溝入れ用切削インサートの浮き上がりを抑制する効果やクランプ安定性を高める効果を安定化させることができる。
また、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、傾斜壁状背面部の長さが、縦壁状背面部の長さの2倍以下であるので、傾斜壁状背面部による上述の作用効果が十分に得られつつ、縦壁状背面部によって、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決め精度を確保する効果も安定化できる。
本発明の溝入れ用切削インサート及び刃先交換式溝入れ工具によれば、被削材の外周面に溝入れ加工する際のみならず、内周面に溝入れ加工する際においても、インサート取付座に対する溝入れ用切削インサートの位置決めを精度よく行うことができるとともに、加工品位を安定して高めることができ、かつ、部材の管理を簡素化できる。
本発明の第1実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を用いた溝入れ加工を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を用いた溝入れ加工を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を示す斜視図である。 刃先交換式溝入れ工具を示す側面図である。 図4の刃先交換式溝入れ工具の要部を拡大して示す図である。 刃先交換式溝入れ工具を示す、(a)正面図、(b)上面図である。 刃先交換式溝入れ工具の溝入れ用切削インサートを示す斜視図である。 溝入れ用切削インサートを示す、(a)側面図、(b)上面図、(c)正面図である。 溝入れ用切削インサートを示す、(a)側面図、(b)図9(a)のB−B断面図である。 インサート取付座に溝入れ用切削インサートを着脱する手順を説明する図である。 インサート取付座に溝入れ用切削インサートを着脱する手順を説明する図である。 インサート取付座に溝入れ用切削インサートを着脱する手順を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を示す斜視図である。 インサート取付座に溝入れ用切削インサートを着脱する手順を説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を用いた溝入れ加工を説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具を示す斜視図である。 刃先交換式溝入れ工具を示す正面図である。 図17の刃先交換式溝入れ工具の要部を拡大して示す図である。 刃先交換式溝入れ工具を示す、(a)上面図、(b)側面図である。
以下、本発明の第1〜第3実施形態の溝入れ用切削インサート20、及びこれを用いた刃先交換式溝入れ工具10、30、40について説明する。なお、本発明による作用効果は、第1〜第3実施形態の各構成を一通り説明した後に、詳しく述べることとする。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具10及び溝入れ用切削インサート20について、図1〜図12を参照して説明する。
〔刃先交換式溝入れ工具の概略構成〕
図1及び図2に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具10は、例えば金属材料等からなり円柱状や円筒状をなす被削材Wに、外径溝入れ加工や突切り加工等の旋削加工(ターニング加工)を行うものである。具体的に、被削材Wは、その軸線A回りのうち被削材回転方向Rに回転させられ、刃先交換式溝入れ工具10は、被削材Wに対して軸線Aに直交する径方向の内側(図2(a)(b)に示される白抜き矢印の向き)に向けて移動させられて、被削材Wの外周面に溝入れ用切削インサート20の切れ刃21で切り込んでいき溝入れ加工を施す。
図3〜図6に示されるように、刃先交換式溝入れ工具10は、鋼材等からなる工具本体1と、超硬合金等からなり、工具本体1のインサート取付座4に着脱可能に装着される溝入れ用切削インサート20と、を備えている。
本実施形態では、工具本体1が長方形板状をなしており、該工具本体1が延在する方向の端部(先端部)に、インサート保持板部2が設けられている。本実施形態の例では、工具本体1のインサート保持板部2及び該インサート保持板部2以外の部位が、互いに略同じ厚さの板状に形成されていて、工具本体1全体が平板状をなしている。
インサート取付座4は、インサート保持板部2を該インサート保持板部2の厚さ方向Tに貫通するとともに、スリット状に延びて形成されている。つまりインサート取付座4は、インサート保持板部2の厚さ方向Tを向く両側面(表裏面)に開口している。また、インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部(インサート挿入口)は、インサート保持板部2の端面(本実施形態では工具本体1の先端面)に開口している。
溝入れ用切削インサート20は、インサート取付座4の一端部から切れ刃21を突出させた状態で、該インサート取付座4に装着される。
また、特に図示していないが、工具本体1は、該工具本体1を工具高さ方向HTの両側(つまり上下方向)から挟持するクランプ部材を介して、NC旋盤等の工作機械に着脱可能に装着される。
〔本明細書で用いる向き(方向)の定義〕
本明細書では、工具本体1の先端部に設けられたインサート保持板部2が、該インサート保持板部2以外の部位(工具本体1の先端部以外の部位)から突出させられる向きを、突出方向Pという。突出方向Pは、溝入れ加工時において、被削材Wに対して刃先交換式溝入れ工具10が移動させられる「溝入れ方向」と同じ向きとされる。本実施形態の例では、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体1の上面視で、突出方向Pが、工具本体1の工具軸線(工具本体1の延在方向、工具本体1の長手方向)に沿うように延びている。
また、インサート保持板部2の厚さに沿う向きを、厚さ方向Tという。
また、工具本体1の延在方向(突出方向P)及び厚さ方向Tに直交する向きを、工具高さ方向HTという。工具高さ方向HTのうち、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21のすくい面22が向く方向(図5における上側)を上方(工具上方)といい、すくい面22が向く方向とは反対側(図5における下側)を下方(工具下方)という。
また、インサート保持板部2に形成されたインサート取付座4が延在する方向(延在方向L)は、上述した突出方向P及び工具本体1の延在方向とは異なっている。図5に示されるように、インサート保持板部2の厚さ方向Tから見て、インサート取付座4の延在方向Lは、インサート保持板部2の突出方向Pに対して平行ではなく、突出方向Pに向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方に向けて傾斜している。
なお、後述するインサート取付座4の説明等では、図5において、延在方向Lに沿う後壁4cからインサート取付座4の開口部(インサート挿入口)へ向かう方向を延在方向Lの一端部側といい、延在方向Lに沿う前記開口部から後壁4cへ向かう方向を延在方向Lの他端部側(延在方向Lの一端部とは反対側)ということがある。
また、溝入れ用切削インサート20は、棒状をなしており、その延在方向は、この溝入れ用切削インサート20が装着されるインサート取付座4の延在方向Lと同一である。従って本明細書では、溝入れ用切削インサート20の延在方向を、インサート取付座4の延在方向Lと同じ符号Lを付して表す。
なお、後述する溝入れ用切削インサート20の説明等では、図5において、延在方向Lに沿う被クランプ部28から刃部27側へ向かう方向を延在方向Lの一端部側といい、延在方向Lに沿う刃部27から被クランプ部28側へ向かう方向を延在方向Lの他端部側(延在方向Lの一端部とは反対側)ということがある。
また、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向は、インサート保持板部2の厚さ方向Tと同一である。従って本明細書では、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向を、インサート保持板部2の厚さ方向Tと同じ符号Tを付して表す。
また、溝入れ用切削インサート20の延在方向L及び厚さ方向Tに直交する向きを、インサート高さ方向HIという。インサート高さ方向HIのうち、該溝入れ用切削インサート20のすくい面22が向く方向(図7における上側)を上方(インサート上方)といい、すくい面22が向く方向とは反対側(図7における下側)を下方(インサート下方)という。
図5に示されるように、溝入れ用切削インサート20のインサート高さ方向HIと、工具本体1の工具高さ方向HTとは、互いに向きが異なっている。
〔工具本体〕
図3及び図4に示されるように、工具本体1は、その延在方向の中心及び工具高さ方向HTの中心を通り厚さ方向Tに沿って延びる工具中心線Cに関して、180°回転対称に形成されている。また、インサート取付座4は、工具本体1の延在方向の両端部にそれぞれ配置されている。本実施形態の例では、一対のインサート取付座4同士が、工具本体1の厚さ方向Tを向く両側面の各中心を通る工具中心線C回りに、180°回転対称となるように配置されて、互いに同一形状に形成されている。
なお、インサート取付座4は、工具本体1に1つのみ設けられていてもよい。
図3、図4及び図6(a)に示されるように、工具本体1の工具高さ方向HTを向く上面及び下面は、該工具本体1の延在方向に沿って延びている。工具本体1の上面及び下面のうち、少なくともインサート保持板部2以外の部位は、該工具本体1の延在方向に垂直な断面形状が、それぞれ凸V字状をなしている。
〔インサート保持板部〕
図3〜図5において、インサート保持板部2は、工具高さ方向HTに対向する上顎部5及び下顎部6を備えている。上顎部5と下顎部6とは、工具高さ方向HTに互いに離間しており、これらの間に設けられた隙間に、インサート取付座4が形成されている。
また、工具本体1の前記隙間のうち、インサート取付座4よりも突出方向Pとは反対側(工具本体1の延在方向に沿う工具の内側、工具中央側)に位置する部分には、該インサート取付座4に連通する開閉操作スリット(スリット)7が形成されている。開閉操作スリット7は、インサート保持板部2を厚さ方向Tに貫通しており、インサート取付座4との連通部分から突出方向Pとは反対側へ向けて延びている。
〔上顎部、下顎部、クーラント孔〕
上顎部5は、その突出方向Pの先端部が概略三角形板状をなしている。下顎部6は、その突出方向Pの先端部が概略四角形板状をなしている。上顎部5の突出方向Pの先端部と、下顎部6の突出方向Pの先端部との間には、インサート取付座4が配置されている。上顎部5の前記先端部以外の部分と、下顎部6の前記先端部以外の部分との間には、開閉操作スリット7が配置されている。
上顎部5の工具高さ方向HTに沿う長さ(高さ)は、下顎部6の工具高さ方向HTに沿う長さよりも小さくされている。上顎部5の突出方向Pの先端部における前記高さは、突出方向Pへ向かうに従い小さくなっている。下顎部6の突出方向Pの先端部における前記高さは、突出方向Pへ向かうに従い大きくなっている。
上顎部5の突出方向Pに沿う長さ(突出長さ)は、下顎部6の突出方向Pに沿う長さよりも短くされている。つまり、下顎部6の突出方向Pの先端は、上顎部5の突出方向Pの先端よりも、突出方向Pへ突出して配置されている。
上顎部5は、弾性変形可能に形成されている。具体的に、上顎部5は、弾性変形及び復元変形することにより、該上顎部5における突出方向Pとは反対側の端部(詳しくは、開閉操作スリット7の突出方向Pとは反対側の端部の上方に位置する部分)を中心として、概ね工具高さ方向HTに沿うように回動可能とされており、下顎部6に対して接近離間可能である。
図3及び図6(a)(b)に示されるように、本実施形態の例では、上顎部5において溝入れ用切削インサート20の切れ刃21のすくい面22に接近配置される端面(突出方向P及び上方を向く傾斜面)に、クーラント孔11が開口している。また、下顎部6において溝入れ用切削インサート20の切れ刃21の逃げ面23に接近配置される端面(突出方向Pを向く端面)に、クーラント孔12が開口している。
これらのクーラント孔11、12は、工具本体1の内部を通して、不図示の工作機械のクーラント供給手段に接続される。クーラント孔11、12内には、クーラント(油性又は水溶性の切削液剤)が流通する。これらのクーラント孔11、12のうち、すくい面22に向けて開口するクーラント孔11内を流通するクーラントは、該クーラント孔11の開口から噴出されることにより、すくい面22上を通って切れ刃21近傍に供給される。また、逃げ面23に向けて開口するクーラント孔12内を流通するクーラントは、該クーラント孔12の開口から噴出されることにより、逃げ面23上を通って切れ刃21近傍に供給される。
なお、図3及び図4において符号19で示される穴は、クーラント供給手段に接続され、クーラント孔11、12に連通するクーラント供給口である。図示の例では、クーラント供給口19が、工具本体1の厚さ方向Tを向く側面に開口している。
〔インサート取付座〕
図3〜図6において、インサート取付座4は、インサート保持板部2における工具高さ方向HTの上方部分に配置されている。インサート取付座4は、インサート保持板部2の厚さ方向Tを向く両側面に開口されており、かつ、該インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部(インサートを挿入する部分)が、このインサート保持板部2の先端面(突出方向Pを向く端面)に開口させられている。
図5に示されるように、インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、他端部(インサートが突き当てられる部分)には、後述する後壁4c及びぬすみ部4dが配置されている。また、インサート取付座4の他端部には、開閉操作スリット7が接続する。
インサート取付座4は、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方へ向けて傾斜して延びている。図5において、インサート取付座4の延在方向Lと、突出方向Pとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度αは、例えば15〜30°である。
インサート取付座4は、溝入れ用切削インサート20の上面24に当接する頂壁4aと、溝入れ用切削インサート20の下面25に当接する底壁4bと、溝入れ用切削インサート20の背面26における後述する傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのうち、いずれかに当接する後壁4cと、を有している。図5に示されるように、本実施形態の例では、溝入れ用切削インサート20に対するインサート取付座4の各壁4a、4b、4cの接触長さ(接触面積)が、底壁4b、頂壁4a、後壁4cの順に小さくされている。つまり、底壁4bの接触長さが最も大きく、後壁4cの接触長さが最も小さく、頂壁4aの接触長さがこれらの間の大きさである。
インサート取付座4の頂壁4a及び底壁4bは、突出方向Pに向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方へ向けて傾斜している。インサート取付座4の底壁4bは、該インサート取付座4の延在方向Lに沿って延びている。
図5に示されるように、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20が装着された状態で、インサート取付座4の頂壁4aは、該インサート取付座4の延在方向Lに沿って他端部(後壁4c)から一端部(インサート挿入口)側へ向かうに従い漸次底壁4bに向けて接近するように、該底壁4bに対して傾斜させられている。つまり、図5において頂壁4aと底壁4bとは、互いに平行とされてはおらず、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い漸次互いに接近させられている。これら頂壁4aと底壁4bとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度θは、1〜10°とされ、好ましくは2°程度とされる。
ただし、上述したように上顎部5は弾性変形可能であり、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入する際には、あらかじめ上顎部5が弾性変形させられることにより、上記角度θが略0°とされる(頂壁4aと底壁4bとが平行となる)。
インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱方法については、別途後述する。
インサート取付座4の後壁4cは、工具高さ方向HTの上方に向かうに従い漸次突出方向Pへ向けて傾斜している。本実施形態では、インサート取付座4の後壁4cが、溝入れ用切削インサート20の背面26が備える傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのうち、傾斜壁状背面部26aに当接させられている。図5に示されるように、インサート保持板部2を厚さ方向Tから見て、インサート取付座4の底壁4bと後壁4cとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度βは、例えば40〜70°である。
インサート取付座4の底壁4bと後壁4cとの間には、凹状のぬすみ部4dが形成されている。また、インサート取付座4の頂壁4aと後壁4cとは、開閉操作スリット7により分断されている。言い換えると、インサート取付座4の頂壁4aと後壁4cとの間を通して、該インサート取付座4と開閉操作スリット7とが、互いに連通している。
インサート取付座4のうち、頂壁4aは、上顎部5に形成されており、底壁4b、後壁4c及びぬすみ部4dは、下顎部6に形成されている。
特に図示していないが、インサート取付座4の頂壁4aは、該インサート取付座4の延在方向Lに垂直な断面視で、底壁4b側へ向けて凸となる凸V字状に形成されている。インサート取付座4の底壁4bは、該インサート取付座4の延在方向Lに垂直な断面視で、頂壁4a側へ向けて凸となる凸V字状に形成されている。また、インサート取付座4の後壁4cは、平面状に形成されている。
〔開閉操作スリット〕
図3及び図4に示されるように、開閉操作スリット7は、工具本体1の先端部においてインサート保持板部2を厚さ方向Tに貫通しているとともに、該インサート保持板部2の厚さ方向Tを向く両側面に開口されている。また、開閉操作スリット7は、工具本体1の延在方向(突出方向P)に沿って延びている。開閉操作スリット7の突出方向Pの一端部は、スリット幅が一定となるように形成されており、インサート取付座4に連通している。開閉操作スリット7の突出方向Pとは反対側の他端部には、丸孔が形成されている。なお、特に図示しないが、開閉操作スリット7の前記他端部は、前記丸孔が形成されずに、スリット幅が一定となるように形成されていてもよい。
開閉操作スリット7における工具本体1の延在方向に沿う両端部間に位置する中間部分には、トルクス(登録商標)レンチや六角レンチ等の作業用工具60が係合する係合孔7aが形成されている(図10〜図12を参照)。図4に示される例では、係合孔7aの工具高さ方向HTに沿う長さ(高さ)は、開閉操作スリット7の該係合孔7a以外の部位の工具高さ方向HTに沿う長さよりも、大きくされている。
〔溝入れ用切削インサート〕
図5及び図7〜図9に示されるように、溝入れ用切削インサート20は、棒状をなしている。溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部には、切れ刃21を有する刃部27が形成され、該一端部以外の部位には、インサート取付座4にクランプされる被クランプ部28が形成されている。
図5において、溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に装着されたときに、該溝入れ用切削インサート20の刃部27は、インサート取付座4の延在方向Lの一端部(開口部)から、該インサート取付座4の外部へ突出させられる。
本実施形態の例では、刃部27が概略三角形板状をなしており、被クランプ部28が概略五角形板状をなしている。
〔刃部〕
図8(b)(c)に示されるように、刃部27の厚さ方向Tに沿う長さ(厚さ)は、被クランプ部28の厚さ方向Tに沿う長さよりも大きくされている。また、図6(a)(b)に示されるように、刃部27の前記厚さは、インサート保持板部2の前記厚さよりも大きくなっている。図8(b)において、刃部27の前記厚さは、延在方向Lの一端部側(延在方向Lに沿う被クランプ部28から刃部27側)へ向かうに従い漸次大きくされている。
また、図8(a)に示されるように、刃部27のインサート高さ方向HIに沿う長さ(高さ)は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い漸次小さくなっている。
刃部27は、すくい面22と、逃げ面23と、すくい面22と逃げ面23との交差稜線部に形成された切れ刃21と、を有している。
すくい面22は、刃部27の上面に形成されており、インサート高さ方向HIの上方を向いている。逃げ面23は、刃部27の延在方向Lの一端部側を向く端面(正面、前面)、及び、刃部27の厚さ方向Tを向く両側面に形成されている。切れ刃21は、図8(b)に示される溝入れ用切削インサート20の上面視で、延在方向Lの他端部側へ向けて開口するコ字状又はU字状をなしている。
切れ刃21は、刃部27において延在方向Lの一端部側へ向けて最も突出しており、また、厚さ方向Tの両側へ向けて最も突出している。
図7及び図8に示されるように、切れ刃21は、刃部27における延在方向Lの一端部側の端縁に位置するとともに、厚さ方向Tに沿って延びる主切れ刃(正面切れ刃)21aと、該主切れ刃21aの両端に接続するとともに、この主切れ刃21aから延在方向Lの他端部側へ向けて延びる一対の副切れ刃(側面切れ刃)21bと、を有している。
図8(b)に示されるように、本実施形態の例では、主切れ刃21aのうち、副切れ刃21bに接続する両端部が、凸R形状をなす丸コーナ(コーナ刃)とされている。なお、特に図示していないが、主切れ刃21aの両端部は、丸コーナの代わりに面取りコーナ(コーナ刃)とされていてもよく、或いは、丸コーナや面取りコーナが形成されていなくてもよい。
また、一対の副切れ刃21b同士は、主切れ刃21aから延在方向Lの他端部側へ向かうに従い漸次互いに接近するように延びており、これらの副切れ刃21bには、いわゆるバックテーパが付与されている。なお、特に図示していないが、副切れ刃21bには、厚さ方向Tに直交して延びるさらい刃となる部分が設けられていてもよい。
刃部27において、すくい面22の切れ刃21(具体的には主切れ刃21a)とは反対側に位置する部分には、インサート高さ方向HIの上方に向けて突出する突起29が形成されている。突起29は、刃部27のすくい面22と、後述する被クランプ部28の上面24との間に配置されており、厚さ方向Tに沿って延びている。突起29は、溝入れ用切削インサート20において、最もインサート高さ方向HIの上方に突出して形成されている。
図5に示されるように、溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に取り付けられた状態で、突起29は、上顎部5の先端を覆うように、該先端の突出方向Pに隣り合って配置される。本実施形態の例では、突起29と上顎部5の先端との間に、隙間が設けられている。
〔被クランプ部〕
図5及び図7〜図9に示されるように、被クランプ部28は、すくい面22と同じ方向を向く上面24と、上面24とは反対側を向く下面25と、延在方向Lに沿う一端部とは反対側(延在方向Lの他端部側)を向く背面26と、を有している。
図8(a)において、被クランプ部28の下面25は、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿って延びている。
また、被クランプ部28の上面24には、下面25に対して平行となるように形成されたガイド部24aと、ガイド部24aの延在方向Lの一端部側に隣り合って配置され、該一端部側へ向かうに従い下面25に接近するように、該下面25に対して傾斜して形成された被押圧部24bと、が備えられている。つまり、被押圧部24bを備えたことにより上面24は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い下面25に接近するように、該下面25に対して傾斜して形成されている。この溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に装着されたときに、上面24のうち少なくとも被押圧部24bが、頂壁4aに当接させられる。
また、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、延在方向Lに沿うガイド部24aの長さよりも長くされている。具体的には、延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、延在方向Lに沿うガイド部24aの長さの2〜5倍である。
また、図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20の延在方向L、及び、上面24と下面25を結ぶ上下方向(つまりインサート高さ方向HI)に直交する厚さ方向Tから見て、被クランプ部28の上面24のうち被押圧部24bと、下面25との間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度θは、1〜10°とされ、好ましくは2°程度とされる。
なお、上述したように、被クランプ部28の上面24のうちガイド部24aは、下面25と平行であることから、このガイド部24aと、被押圧部24bとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度θもやはり1〜10°であり、好ましくは2°程度である。
図7、図8(c)及び図9(b)に示されるように、被クランプ部28の上面24及び下面25は、延在方向Lに垂直な断面視の形状が、それぞれ凹V字状をなしている。
このため、図5において、溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に装着されたときに、インサート取付座4において断面凸V字状とされた頂壁4aと、溝入れ用切削インサート20において断面凹V字状とされた上面24とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接される(係止される)。また同様に、インサート取付座4において断面凸V字状とされた底壁4bと、溝入れ用切削インサート20において断面凹V字状とされた下面25とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接される。
なお、本実施形態の例では、溝入れ用切削インサート20の上面24及び下面25がともに断面凹V字状をなしており、インサート取付座4の頂壁4a及び底壁4bがともに断面凸V字状をなしていて、頂壁4aと上面24の組、及び、底壁4bと下面25の組の両方(2組)が、断面V字とされた嵌合をしているが、これら2組のうちいずれか一方の組のみが断面V字の嵌合をしている構成とすることもできる。この場合、2組のうち他方の組については、例えば断面V字とされていない平面同士が当接する構成でもよい。
また、断面凹V字状の構成要素と、断面凸V字状の構成要素とを、互いに入れ替えてもよい。具体的には、インサート取付座4において断面凹V字状とされた頂壁4aと、溝入れ用切削インサート20において断面凸V字状とされた上面24とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接されてもよい。また、インサート取付座4において断面凹V字状とされた底壁4bと、溝入れ用切削インサート20において断面凸V字状とされた下面25とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接されてもよい。
つまり、溝入れ用切削インサート20の上面24及び下面25のうち少なくともいずれかが、延在方向Lに垂直な断面視でV字状(凹V字状と凸V字状を含む)に形成されていればよい。またこれに対応して、インサート取付座4の頂壁4a及び底壁4bのうち少なくともいずれかが、延在方向Lに垂直な断面視でV字状(凸V字状と凹V字状を含む)に形成されていればよい。
図8(a)(b)及び図9(a)において、被クランプ部28の背面26は、傾斜壁状背面部26aと、縦壁状背面部26bと、を有している。
傾斜壁状背面部26aは、背面26におけるインサート高さ方向HIの上方部分に配置されており、上面24のガイド部24aに接続している。傾斜壁状背面部26aは、インサート高さ方向HIの上方に向かうに従い漸次延在方向Lの一端部側へ向けて傾斜している。つまり、傾斜壁状背面部26aは、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い下面25から離間するように、該下面25に対して傾斜して形成されている。図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見た側面視において、傾斜壁状背面部26aと下面25との間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度βは、例えば40〜70°である。
縦壁状背面部26bは、背面26におけるインサート高さ方向HIの下方部分に配置されており、下面25に接続している。図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見た側面視において、下面25と縦壁状背面部26bとの間に形成される角度γは、下面25と傾斜壁状背面部26aとの間に形成される角度βよりも、垂直に近い値とされている。具体的に、下面25と縦壁状背面部26bとの間に形成される角度γとしては、90°に近い角度が好ましく(つまり厳密に90°である必要はないが、略90°であることが好ましく)、例えば80〜100°である。
また、図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見た側面視において、背面26のうち、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さよりも長くされている。具体的には、厚さ方向Tから見たインサート側面視において、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの1.1〜2倍とされている。
また、傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bは、それぞれ平面状に形成されている。本実施形態では図5に示されるように、溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に装着された状態で、背面26のうち傾斜壁状背面部26aに対して、インサート取付座4において平面状をなす後壁4cが当接させられる。
なお、本実施形態の例では、互いに当接する傾斜壁状背面部26a及び後壁4cが、それぞれ平面状をなしているが、これに代えて、傾斜壁状背面部26aを断面凹V字状又は断面凸V字状に形成し、これに対応するように、後壁4cを断面凸V字状又は断面凹V字状に形成してもよい。
〔インサート取付座への溝入れ用切削インサートの着脱方法〕
次に、図10〜図12を参照して、インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱方法について説明する。
本実施形態では、インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱にあたり、トルクス(登録商標)レンチや六角レンチ等の作業用工具60を使用する。作業用工具60の先端部には、該先端部の中心軸回りに沿って、最大径となる部分と、最大径となる部分以外の部分(最大径ではない部分)と、が隣り合って配置されている。
まず、図10に示されるように、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20が装着されていない状態において、開閉操作スリット7の係合孔7a内に、作業用工具60の先端部を挿入する。このとき、図11に示されるように、作業用工具60の先端部の外径のうち最大径となる部分(最大径部分)が、係合孔7aの内径のうち最大径となる部分(最大径部分)に対して係合し、作業用工具60の先端部の外径のうち最大径となる部分以外の部分(非最大径部分。最大径ではない部分)が、係合孔7aの内径のうち最大径となる部分以外の部分(非最大径部分。最大径ではない部分)に係合する。
この状態から、図12に示されるように、作業用工具60の先端部をその中心軸回りに回動させると、該先端部の最大径部分が係合孔7aの内周面上を摺動しつつ、該係合孔7aの非最大径部分(最大径ではない部分)に係合するとともに、係合孔7aが工具高さ方向HTに押し広げられて、上顎部5が上方へ向けて弾性変形させられる。これにより、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとが平行になる。つまり、図5において頂壁4aと底壁4bとの間に形成される角度θが、略0°となる。
次いで、インサート取付座4の延在方向Lの一端部(インサート挿入口)から、溝入れ用切削インサート20を、延在方向Lの他端部側へ向けて挿入していく。このとき、インサート取付座4において互いに平行とされた頂壁4a及び底壁4bに対して、溝入れ用切削インサート20において互いに平行とされた上面24のガイド部24a及び下面25を摺接させつつ、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入する。
図5に示されるように、インサート取付座4の後壁4cに、溝入れ用切削インサート20の背面26が当接したら、作業用工具60の先端部をその中心軸回りに回動させて、該先端部の最大径部分が係合孔7aの最大径部分に係合し、該先端部の非最大径部分が係合孔7aの非最大径部分に係合するように配置する。これにより、上顎部5は下方へ向けて復元変形し、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとの間で、溝入れ用切削インサート20がクランプされる。
次いで、開閉操作スリット7の係合孔7aから、作業用工具60の先端部を取り外す。
また、インサート取付座4に装着された溝入れ用切削インサート20を取り外すには、上述したインサート装着時の手順とは逆の手順を行えばよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具30について、図13及び図14を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式溝入れ工具30も、被削材Wに対して、外径溝入れ加工を施すものである。また、この刃先交換式溝入れ工具30を用いて、被削材Wに突切り加工を施してもよい。
なお、前述の実施形態と同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
〔前述の実施形態との相違点〕
図13及び図14に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具30は、前述の実施形態で説明した刃先交換式溝入れ工具10とは、主に工具本体31の形状、スリット32の形状、及びクランプネジ33を有する点が異なっている。
〔工具本体〕
本実施形態では、工具本体31が、断面四角形の軸状(角棒状)をなしている。そして、工具本体31が延在する方向(工具軸線方向)の端部(先端部)に、板状のインサート保持板部2が設けられている。つまり、工具本体31におけるインサート保持板部2の厚さ方向Tの長さ(厚さ)が、該インサート保持板部2以外の部位の厚さ方向Tの長さよりも小さくされている。また、本実施形態においても、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体31の上面視で、突出方向Pは、工具本体31の工具軸線に沿うように延びている。
〔スリット〕
本実施形態では、前述の実施形態で説明した開閉操作スリット7の代わりに、係合孔7aが設けられていないスリット32が形成されている。スリット32は、突出方向P(工具本体31の延在方向)に沿って延びており、その突出方向Pの一端部はインサート取付座4に連通している。スリット32の突出方向Pとは反対側の他端部には、丸孔が形成されている。スリット32のうち前記丸孔以外の部位は、スリット幅が一定とされている。
〔クランプネジ〕
工具本体31には、インサート保持板部2の上顎部5と下顎部6とを、相対的に接近離間させるためのクランプネジ33が螺設されている。
本実施形態においては、クランプネジ33をネジ穴(不図示)にねじ込む(締め込む)ことにより、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとを互いに接近移動させるように、インサート保持板部2(具体的には上顎部5)を弾性変形させる。そして、インサート取付座4の頂壁4aを、溝入れ用切削インサート20の上面24のうち少なくとも被押圧部24bに当接させる。
詳しくは、図14において、クランプネジ33は緩められており、この状態で上顎部5は弾性変形させられていない。このようにインサート保持板部2を弾性変形させていない状態で、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとが、互いに平行に配置されている。そして、これら頂壁4a及び底壁4bに対して、溝入れ用切削インサート20の上面24のガイド部24a及び下面25を摺接させつつ、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入する。
図13に示されるように、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入し終えたら、クランプネジ33をねじ込み、インサート保持板部2を弾性変形させて、インサート取付座4の頂壁4aで溝入れ用切削インサート20の上面24のうち被押圧部24bを押圧する。つまり、クランプネジ33をねじ込むことで、インサート取付座4の頂壁4aが、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い底壁4bに接近するように傾斜させられていき、被押圧部24bに当接する。これにより、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20がクランプされる。
〔インサート取付座と溝入れ用切削インサート〕
そして、本実施形態においても、前述の実施形態と同様に、溝入れ用切削インサート20の背面26における傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのうち、傾斜壁状背面部26aに対して、インサート取付座4の後壁4cが当接させられる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具40について、図15〜図19を参照して説明する。
なお、前述の実施形態と同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
〔前述の実施形態との相違点〕
図15に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具40は、円筒状をなす被削材Wに、内径溝入れ加工等の旋削加工を行うものである。刃先交換式溝入れ工具40は、被削材Wに対して、該被削材Wの軸線Aに直交する径方向の外側(図15に示される白抜き矢印の向き)に向けて移動させられて、被削材Wの内周面に溝入れ用切削インサート20の切れ刃21で切り込んでいき溝入れ加工を施す。
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具40は、前述の実施形態で説明した刃先交換式溝入れ工具30とは、主に工具本体41の形状、インサート保持板部2の突出方向P(溝入れ方向)及び厚さ方向T、並びにインサート取付座4が異なっている。
〔工具本体及びインサート保持板部〕
図15〜図19に示されるように、本実施形態では、工具本体41が、断面円形の軸状(丸棒状)をなしている。そして、工具本体41が延在する方向(工具軸線O方向)の端部(先端部)に、板状のインサート保持板部2が設けられている。
本実施形態では、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体41の上面視で、工具本体41のインサート保持板部2が該インサート保持板部2以外の部位から突出させられる突出方向Pが、工具本体41の工具軸線Oに直交するように延びている。突出方向Pは、溝入れ加工時において、被削材Wに対して刃先交換式溝入れ工具40が移動させられる「溝入れ方向」と同じ向きとされる。また、インサート保持板部2の厚さ方向Tは、工具軸線O方向に沿っている。
〔インサート取付座〕
インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部(インサート挿入口)は、インサート保持板部2の端面(本実施形態では工具本体41の側面)に開口している。
インサート取付座4は、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方へ向けて傾斜して延びている。特に図示していないが、インサート取付座4は、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの下方へ向けて傾斜して延びていてもよく、或いは、厚さ方向Tから見て突出方向Pに沿って延びていてもよい。
図18に示されるように、インサート保持板部2を厚さ方向Tから見て、インサート取付座4の延在方向Lと、突出方向Pとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度αは、例えば0〜15°である。詳しくは、インサート取付座4が、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方へ向けて傾斜して延びている場合における前記角度αは、例えば15°以下である。また、インサート取付座4が、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの下方へ向けて傾斜して延びている場合における前記角度αは、例えば10°以下である。
インサート取付座4は、溝入れ用切削インサート20の背面26における傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのうち、いずれかに当接する後壁4cを有している。本実施形態では、インサート取付座4の後壁4cが、溝入れ用切削インサート20の背面26が備える傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのうち、縦壁状背面部26bに当接させられている。インサート取付座4の後壁4cは、工具高さ方向HTの上方に向かうに従い漸次突出方向Pとは反対側へ向けて傾斜している。図18に示されるように、インサート保持板部2を厚さ方向Tから見て、インサート取付座4の底壁4bと後壁4cとの間に形成される角度γは、例えば80〜100°である。
〔スリット〕
本実施形態の例では、図17に示されるように、インサート取付座4に連通するスリット32における突出方向Pとは反対側の他端部が、工具本体41の突出方向Pとは反対側を向く側面に開口している。
<第1〜第3実施形態による作用効果>
以上説明した第1〜第3実施形態の溝入れ用切削インサート20及び刃先交換式溝入れ工具10、30、40によれば、インサート取付座4に対して溝入れ用切削インサート20を取り付ける際、インサート取付座4の底壁4bに対しては、溝入れ用切削インサート20の下面25が当接させられる。また、インサート取付座4の頂壁4aに対しては、溝入れ用切削インサート20の上面24が当接させられる。そして、インサート取付座4の後壁4cに対しては、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち、傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのいずれかを当接させることができる。
具体的に、第1実施形態及び第2実施形態のように、被削材Wの外周面に外径溝入れ加工や突切り加工を施す場合には、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体1、31の上面視で、インサート保持板部2が、工具本体1、31のうち該インサート保持板部2以外の部位から突出させられる突出方向Pは、工具本体1、31の工具軸線(工具本体1、31が延在する方向)に沿うように延びる。このような工具本体1、31により外径溝入れ加工や突切り加工を行う場合は、インサート取付座4の後壁4cに対して、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち傾斜壁状背面部26aを当接させる。これにより、溝入れ加工時に、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21近傍に対して、すくい面22が向く方向とは反対側へ向けた切削力が作用し、この溝入れ用切削インサート20の下面25における延在方向Lの一端部側の端部近傍を中心とした回転力が生じても、該溝入れ用切削インサート20の傾斜壁状背面部26aに当接されるインサート取付座4の後壁4cが、溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制するように機能して、クランプ安定性が高められる。
すなわち、溝入れ加工の中でも特に外径溝入れ加工や突切り加工においては、切削速度や切込み等が高く設定されがちであり、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21近傍に大きな切削力や衝撃が作用しやすいことから、上述のように、インサート取付座4の後壁4cに対して、該溝入れ用切削インサート20の背面26のうち傾斜壁状背面部26aを当接させることにより、この溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性を顕著に向上させることができ、加工精度を良好に維持することができる。
なお、外径溝入れ加工や突切り加工時においては、溝入れ用切削インサート20の傾斜壁状背面部26aに当接されるインサート取付座4の後壁4cが、溝入れ方向(突出方向P)に対して立った角度で配置される(具体的には図5において角度(α+β)で配置され、例えば溝入れ方向に対して垂直に近い角度をなす)ことから、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度を十分に確保することができる。
また、第3実施形態のように、被削材Wの内周面に内径溝入れ加工を施す場合には、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体41の上面視で、インサート保持板部2が、工具本体41のうち該インサート保持板部2以外の部位から突出させられる突出方向Pは、工具本体41の工具軸線O(工具本体41が延在する方向)に直交するように延びる。このような工具本体41により内径溝入れ加工を行う場合は、インサート取付座4の後壁4cに対して、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち縦壁状背面部26bを当接させる。これにより、内径溝入れ加工時においても、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決めが高精度に行われる。
すなわち、溝入れ加工の中でも特に内径溝入れ加工においては、被削材Wの内周面と、溝入れ用切削インサート20の正面下部(溝入れ用切削インサート20の延在方向Lの一端部側を向く正面(前面)のうち、切れ刃21の下方に位置する部分)との接触を防止するため、該溝入れ用切削インサート20の延在方向Lが、溝入れ加工時に被削材Wに対して工具が移動させられる「溝入れ方向」に近い角度に設定される。つまり、図18に示される角度αが、0°に近い値に設定される。なお、内径溝入れ加工に用いられる工具本体41においては、インサート保持板部2の下顎部6の形状や厚さに制限が生じやすく剛性を確保しにくいが、上述のように角度αが0°に近い値に設定されることにより、下顎部6の剛性を確保することができ、ひいては工具本体41全体の剛性も確保される。
このような装着姿勢であっても、インサート取付座4の後壁4cに、溝入れ用切削インサート20の縦壁状背面部26bが当接させられることにより、溝入れ用切削インサート20の移動を規制する効果が安定して奏功される。従って、インサート取付座4に対して溝入れ用切削インサート20を精度よく位置決めすることができ、切れ刃21の位置が安定して、溝入れ加工の精度を高めることができる。
なお、縦壁状背面部26bによる上述の作用効果を得るにあたっては、この溝入れ用切削インサート20を、該溝入れ用切削インサート20の延在方向L、及び、上面24と下面25を結ぶ上下方向(インサート高さ方向HI)に直交する厚さ方向Tから見て、下面25と縦壁状背面部26bとの間に形成される角度γが、下面25と傾斜壁状背面部26aとの間に形成される角度βよりも、垂直に近い値とされていればよい。つまり、図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見て、下面25と傾斜壁状背面部26aとの間に形成される角度βに比べて、下面25と縦壁状背面部26bとの間に形成される角度γが、90°により近くされる。
そして、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さよりも長くされている。
このため、溝入れ加工の中でも特に高負荷となりやすい第1実施形態及び第2実施形態のような外径溝入れ加工や突切り加工時には、インサート取付座4の後壁4cに対して、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち、接触面積(接触長さ)が大きく確保された傾斜壁状背面部26aを当接させることにより、上述した溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制する効果やクランプ安定性を高める効果を、より格別顕著なものとすることができる。
また、第3実施形態のような内径溝入れ加工時においては、インサート取付座4の後壁4cに対して、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち、接触面積(接触長さ)が小さくされた縦壁状背面部26bを当接させても、上述したインサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度を確保できるという作用効果を十分に奏することができる。これは、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う位置精度を確保するにあたって、インサート取付座4の後壁4cに当接する縦壁状背面部26bの接触面積(接触長さ)の大きさは影響しにくいためである。そして、縦壁状背面部26bの長さを短くすることにより、溝入れ用切削インサート20の外形をよりコンパクトに形成することができる。
このように本発明では、インサート取付座4の後壁4cによって、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち、傾斜壁状背面部26a及び縦壁状背面部26bのいずれの面をクランプする(拘束する)かを、溝入れ加工の加工形態によって選択し適宜使い分けることができる。つまり、一種類の溝入れ用切削インサート20によって、加工精度を十分に確保しつつ、外径溝入れ加工や突切り加工、内径溝入れ加工等の各種加工形態に柔軟に対応することができる。従って、加工形態に係わらず、溝入れ用切削インサート20の加工性能を安定して発揮できる。
以上より本発明によれば、被削材Wの外周面に溝入れ加工する際のみならず、内周面に溝入れ加工する際においても、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決めを精度よく行うことができるとともに、加工品位を安定して高めることができ、かつ、部材の管理を簡素化できる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20の上面24(の被押圧部24b)は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い下面25に接近するように、該下面25に対して傾斜して形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20が装着された状態で、溝入れ用切削インサート20の上面24は、該インサート取付座4の頂壁4aに当接され、溝入れ用切削インサート20の下面25は、該インサート取付座4の底壁4bに当接される。そして、この溝入れ用切削インサート20の上面24は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い下面25に接近するように傾斜しているので、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとの間でクランプされた溝入れ用切削インサート20には、該インサート取付座4の延在方向Lの一端部とは反対側(後壁4c側)へ向けた引き込み力が作用する。すなわち、インサート取付座4の後壁4cに対して、溝入れ用切削インサート20の背面26を押し付ける向きの力が生じることから、該溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性がより向上する。
そして上記構成によって、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の抜け出しが防止される。
なお、本明細書でいう「抜け出し」とは、インサート取付座4に装着された溝入れ用切削インサート20が、該インサート取付座4の延在方向Lに沿って意図せず移動し、インサート取付座4の一端部(インサート挿入口)から外部へ抜け出てしまうことを指す。具体的には、例えば溝入れ加工後に、被削材Wから工具を離間させるときに、加工した溝内に位置する溝入れ用切削インサート20の切れ刃21等が、溝の内壁に当接した場合(引っ掛かりが生じた場合)などにおいて、このような「抜け出し」が生じることがある。
本発明の上記構成によれば、このような抜け出しを防止することができる。
また前述の実施形態では、図5に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aと、下面25との間に形成される角度βが、40〜70°であるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、外径溝入れ加工や突切り加工時において、溝入れ用切削インサート20の傾斜壁状背面部26aにインサート取付座4の後壁4cが当接されることにより、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決めが精度よく行われ、かつ、溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを顕著に抑制することができる。
詳しくは、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aと、下面25との間に形成される角度βが、40°以上であるので、傾斜壁状背面部26aが、溝入れ加工時に被削材Wに対して工具が移動させられる「溝入れ方向」(突出方向P)に近い傾斜となる(傾き過ぎてしまう)ことを抑制して、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度を安定して確保することができる。
また、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aと、下面25との間に形成される角度βが、70°以下であるので、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21近傍に対して、すくい面22が向く方向とは反対側へ向けた切削力が作用しても、溝入れ用切削インサート20の傾斜壁状背面部26aがインサート取付座4の後壁4cに安定して押圧されて、浮き上がりを確実に抑制できる。
また前述の実施形態では、図18に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見て、縦壁状背面部26bと、下面25との間に形成される角度γが、80〜100°であるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、内径溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサート20の縦壁状背面部26bにインサート取付座4の後壁4cが当接されることにより、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決めが精度よく行われる。
詳しくは、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、縦壁状背面部26bと、下面25との間に形成される角度γが、80〜100°であり、つまり垂直に近い角度(90°±10°の範囲内)とされているので、内径溝入れ加工時において、インサート取付座4及び溝入れ用切削インサート20の延在方向Lが溝入れ方向(突出方向P)に沿うように配置された場合でも、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度が十分に確保される。
また、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサート20が被削材Wに対して溝入れ方向に移動させられつつ切り込み、該溝入れ方向とは反対側へ向けた反作用の力がこの溝入れ用切削インサート20に作用して、該溝入れ用切削インサート20の縦壁状背面部26bがインサート取付座4の後壁4cに押圧されても、縦壁状背面部26bと後壁4cとが互いにスライド移動させられるようなことが確実に防止される。従って、溝入れ加工の精度が良好に維持される。
また前述の実施形態では、図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの1.1〜2倍とされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの1.1倍以上であるので、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち傾斜壁状背面部26aの、インサート取付座4の後壁4cに対する接触面積(接触長さ)を確実に大きくして、上述した溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制する効果やクランプ安定性を高める効果を安定化させることができる。
また、厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの2倍以下であるので、傾斜壁状背面部26aによる上述の作用効果が十分に得られつつ、縦壁状背面部26bによって、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度を確保する効果も安定化できる。
また、前述の実施形態では、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着する際、インサート取付座4の底壁4bに対しては、溝入れ用切削インサート20の下面25が当接する。また、インサート取付座4の頂壁4aに対しては、まず溝入れ用切削インサート20の上面24のうちガイド部24aが当接し、インサート取付座4の延在方向(溝入れ用切削インサート20の延在方向)Lに沿って、該インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入していき、溝入れ用切削インサート20が挿入し終わった状態では、インサート取付座4の頂壁4aに対して、溝入れ用切削インサート20の上面24のうち被押圧部24bが当接させられる。
詳しくは、溝入れ用切削インサート20の上面24におけるガイド部24aと、該溝入れ用切削インサート20の下面25とは、互いに平行となるように形成されているので、インサート取付座4の延在方向Lの一端部(インサート挿入口)から溝入れ用切削インサート20を延在方向Lに沿って挿入していくと、この溝入れ用切削インサート20は、インサート取付座4において互いに平行とされた頂壁4aと底壁4bとの間で、上下方向から安定して支持され続ける。
すなわち、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入していく間、インサート取付座4の底壁4bは、溝入れ用切削インサート20の下面25に摺接し続け、インサート取付座4の頂壁4aは、溝入れ用切削インサート20の上面24のガイド部24aに摺接し続ける。これにより、溝入れ用切削インサート20は、インサート取付座4に挿入し終えるまで上下方向から安定的にガイドされることとなり、該溝入れ用切削インサート20のインサート取付座4からの脱落が防止されて、取り付け操作性を向上できる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20において、延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、延在方向Lに沿うガイド部24aの長さよりも長くされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入する際には、上述したガイド部24aの作用によって溝入れ用切削インサート20の脱落を防止することができる。そして、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着し終えた状態では、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う長さが長くされた被押圧部24bに対して、インサート取付座4の頂壁4aを広範囲に接触させることができる。従って、溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性を顕著に高めつつ、抜け出しを効果的に防止できる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20において、延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、延在方向Lに沿うガイド部24aの長さの2〜5倍とされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入するときには、該溝入れ用切削インサート20の脱落をより確実に防止でき、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着した状態では、溝入れ用切削インサート20の抜け出しを防止する効果、及び溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性を向上させる効果を、より格別顕著なものとすることができる。
詳しくは、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、該延在方向Lに沿うガイド部24aの長さの2倍以上であるので、溝入れ用切削インサート20の被押圧部24bとインサート取付座4の頂壁4aとの接触面積を十分に確保することができる。従って、溝入れ用切削インサート20の抜け出しを確実に防止でき、溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性が顕著に向上する。
また、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、該延在方向Lに沿うガイド部24aの長さの5倍以下であるので、被押圧部24bの長さを十分に確保しつつ、ガイド部24aの長さが短くなりすぎることを抑制して、該ガイド部24aの作用を安定化させることができる。従って、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着する際に、該溝入れ用切削インサート20が脱落することを確実に防止できる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見たインサート側面視において、被押圧部24bと、下面25との間に形成される角度θが、1〜10°とされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、上述した被押圧部24bの作用によって、インサート取付座4に対して溝入れ用切削インサート20の抜け出しを防止する効果、及びクランプ安定性を向上させる効果を、より格別顕著なものとすることができる。
詳しくは、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、被押圧部24bと、下面25との間に形成される角度θが、1°以上であるので、該溝入れ用切削インサート20の被押圧部24bに対してインサート取付座4の頂壁4aが当接したときに、上述した抜け出しを防止する効果やクランプ安定性を向上させる効果を、確実に得ることができる。
また、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、被押圧部24bと、下面25との間に形成される角度θが、10°以下であるので、この溝入れ用切削インサート20をインサート取付座4に装着したときに、インサート保持板部2を弾性変形させたり復元変形させたりすることで、インサート取付座4の頂壁4aを、溝入れ用切削インサート20の被押圧部24bに確実に当接させることができる。従って、上述した作用効果を安定して得ることができる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20の上面24及び下面25のうち少なくともいずれかが、延在方向Lに垂直な断面視でV字状に形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の厚さ方向T(インサート取付座4のスリット貫通方向)への移動が規制されて、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の取り付け操作性をより向上でき、かつ、クランプ安定性を顕著に高めることができる。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、工具本体1、31のインサート保持板部2が該インサート保持板部2以外の部位から突出する突出方向Pと、インサート取付座4の延在方向Lと、が互いに異なる向きとされているので、下記の作用効果を奏する。
溝入れ加工後において、被削材Wから工具を離間させるときに、被削材Wに対して工具を後退させる向きは、突出方向Pとは反対側(溝入れ方向とは反対側)とされる。従って、被削材Wにおける加工した溝内に位置する溝入れ用切削インサート20の切れ刃21等が、該溝の内壁に当接した場合(引っ掛かりが生じた場合)などにおいては、溝入れ用切削インサート20に作用する抜き出し力の向きが、突出方向Pに沿うこととなる。
本発明の上記構成によれば、インサート取付座4から溝入れ用切削インサート20を取り外す向きは延在方向Lに沿っており、この延在方向Lが、突出方向Pとは異なる向きとされている。従って、溝入れ用切削インサート20に上記抜き出し力が作用した場合でも、インサート取付座4と溝入れ用切削インサート20との間でこれらの相対移動を規制する抵抗(摩擦力等)が生じて、溝入れ用切削インサート20の抜け出しが効果的に抑制される。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、インサート保持板部2を厚さ方向Tから見て、インサート取付座4の延在方向Lと、突出方向Pとの間に形成される角度αが、15〜30°とされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、溝入れ用切削インサート20の抜け出しをより確実に防止しつつ、工具本体1、31の剛性を十分に確保できる。
詳しくは、延在方向Lと突出方向Pとの間に形成される角度αが、15°以上であるので、溝入れ用切削インサート20に対して突出方向Pへ向けた抜き出し力が作用したときに、インサート取付座4と溝入れ用切削インサート20との間に生じる抵抗を十分に高めることができ、該溝入れ用切削インサート20の抜け出しを効果的に抑制できる。
また、延在方向Lと突出方向Pとの間に形成される角度αが、30°以下であるので、インサート取付座4(の延在方向L)が突出方向P(溝入れ方向)に対して傾斜させられ過ぎることを抑えて、下顎部6の剛性を確保することができ、ひいては工具本体1、31全体の剛性を確保できる。
また、前述の実施形態では、溝入れ用切削インサート20に、すくい面22に対して延在方向Lの他端部側に隣り合うように突起29が設けられており、インサート取付座4にこの溝入れ用切削インサート20が装着された状態で、突起29が、上顎部5の先端を覆うように配置されるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、溝入れ加工時に、切れ刃21からすくい面22上を流れて延在方向Lの他端部側(突出方向Pとは反対側)へ向かう切屑が、突起29に衝突させられるため、該切屑の擦過による上顎部5の摩耗や損傷が防止される。
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述した実施形態では、刃先交換式溝入れ工具10、30、40が、被削材Wの外周面又は内周面に対して溝入れ加工することとしたが、これに限定されるものではなく、被削材Wに形成された端面(被削材Wの軸線Aに沿う方向を向く面)に溝入れ加工することとしてもよい。
また、角度α、β、γ、θは、前述の実施形態で説明した数値範囲に限定されるものではない。
また、前述の実施形態では、旋削加工(ターニング加工)用の刃先交換式溝入れ工具10、30、40(刃先交換式溝入れバイト)を用いて説明したが、本発明は、転削加工(ミーリング加工)用の刃先交換式溝入れ工具(刃先交換式溝入れカッタ)にも適用可能である。この場合、特に図示していないが、例えば、工具本体は円板状をなし、その外周に、工具軸線(回転軸)回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて、複数のインサート保持板部2を備える。また、インサート保持板部2に形成されるインサート取付座4の延在方向Lに沿う一端部(インサート挿入口)は、工具軸線に直交する径方向の外側へ向けて開口される。そして、各インサート取付座4に対して、溝入れ用切削インサート20がそれぞれ着脱可能に装着される。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
1、31、41 工具本体
2 インサート保持板部
4 インサート取付座
4a 頂壁
4b 底壁
4c 後壁
10、30、40 刃先交換式溝入れ工具
20 溝入れ用切削インサート
21 切れ刃
22 すくい面
23 逃げ面
24 上面
25 下面
26 背面
26a 傾斜壁状背面部
26b 縦壁状背面部
27 刃部
28 被クランプ部
HI インサート高さ方向(上下方向)
L 延在方向
O 工具軸線
P 突出方向(溝入れ方向)
T 厚さ方向
β 角度
γ 角度

Claims (6)

  1. 棒状をなし、その延在方向に沿う両端部のうち一端部に、刃部が形成され、前記延在方向に沿う前記一端部以外の部位に、被クランプ部が形成された溝入れ用切削インサートであって、
    前記刃部は、
    すくい面と、
    逃げ面と、
    前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃と、を有し、
    前記被クランプ部は、
    前記すくい面と同じ方向を向く上面と、
    前記上面とは反対側を向く下面と、
    前記延在方向に沿う前記一端部とは反対側を向く背面と、を有し、
    当該溝入れ用切削インサートの前記延在方向、及び、前記上面と前記下面を結ぶ上下方向に直交する厚さ方向から見て、
    前記背面は、
    前記延在方向の一端部側へ向かうに従い前記下面から離間するように、該下面に対して傾斜して形成された傾斜壁状背面部と、
    前記下面と前記傾斜壁状背面部との間に形成される角度よりも、前記下面との間に形成される角度が垂直に近い値とされた縦壁状背面部と、を備え、
    前記傾斜壁状背面部の長さが、前記縦壁状背面部の長さよりも長くされていることを特徴とする溝入れ用切削インサート。
  2. 請求項1に記載の溝入れ用切削インサートであって、
    前記上面は、前記延在方向の一端部側へ向かうに従い前記下面に接近するように、該下面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする溝入れ用切削インサート。
  3. 請求項1又は2に記載の溝入れ用切削インサートであって、
    前記厚さ方向から見て、前記傾斜壁状背面部と、前記下面との間に形成される角度が、40〜70°であることを特徴とする溝入れ用切削インサート。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートであって、
    前記厚さ方向から見て、前記縦壁状背面部と、前記下面との間に形成される角度が、80〜100°であることを特徴とする溝入れ用切削インサート。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートであって、
    前記厚さ方向から見て、前記傾斜壁状背面部の長さが、前記縦壁状背面部の長さの1.1〜2倍であることを特徴とする溝入れ用切削インサート。
  6. 工具本体に設けられたインサート保持板部と、
    前記インサート保持板部を該インサート保持板部の厚さ方向に貫通するとともに、スリット状に延び、その延在方向に沿う両端部のうち一端部が、前記インサート保持板部の端面に開口するインサート取付座と、
    前記インサート取付座の前記一端部から切れ刃を突出させて、該インサート取付座に着脱可能に装着される溝入れ用切削インサートと、を備えた刃先交換式溝入れ工具であって、
    前記溝入れ用切削インサートとして、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートを用い、
    前記インサート取付座は、
    前記上面に当接する頂壁と、
    前記下面に当接する底壁と、
    前記背面の前記傾斜壁状背面部及び前記縦壁状背面部のうち、いずれかに当接する後壁と、を有し、
    前記溝入れ用切削インサートの前記すくい面を正面に見た前記工具本体の上面視で、
    前記インサート保持板部が、前記工具本体のうち該インサート保持板部以外の部位から突出させられる突出方向が、前記工具本体の工具軸線に沿うように延びる場合には、前記後壁が、前記傾斜壁状背面部に当接され、
    前記突出方向が、前記工具本体の工具軸線に直交するように延びる場合には、前記後壁が、前記縦壁状背面部に当接されることを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
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