JP6620471B2 - 溝入れ用切削インサート及び刃先交換式溝入れ工具 - Google Patents
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Description
すなわち、インサート取付座に溝入れ用切削インサートを装着する際、インサート取付座の延在方向に沿って一端部(インサート挿入口)から溝入れ用切削インサートを挿入していくときに、溝入れ用切削インサートがインサート取付座から意図せず脱落することがあった。このため、インサート取付座への溝入れ用切削インサートの取り付け操作性を向上することに、改善の余地があった。
すなわち本発明は、棒状をなし、その延在方向に沿う両端部のうち一端部に、刃部が形成され、前記延在方向に沿う前記一端部以外の部位に、被クランプ部が形成された溝入れ用切削インサートであって、前記刃部は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃と、を有し、前記被クランプ部は、前記すくい面と同じ方向を向く上面と、前記上面とは反対側を向く下面と、を有し、前記上面には、前記下面に対して平行となるように形成されたガイド部と、前記ガイド部の前記延在方向の一端部側に隣り合って配置され、前記一端部側へ向かうに従い前記下面に接近するように、該下面に対して傾斜して形成された被押圧部と、が備えられ、前記延在方向に沿う前記被押圧部の長さが、前記延在方向に沿う前記ガイド部の長さよりも長いことを特徴とする。
また本発明は、工具本体に設けられたインサート保持板部と、前記インサート保持板部を該インサート保持板部の厚さ方向に貫通するとともに、スリット状に延び、その延在方向に沿う両端部のうち一端部が、前記インサート保持板部の端面に開口するインサート取付座と、前記インサート取付座の前記一端部から切れ刃を突出させて、該インサート取付座に着脱可能に装着される溝入れ用切削インサートと、を備えた刃先交換式溝入れ工具であって、前記溝入れ用切削インサートとして、前述した溝入れ用切削インサートを用い、前記インサート取付座は、前記上面に当接する頂壁と、前記下面に当接する底壁と、を有することを特徴とする。
すなわち、例えば、インサート取付座に溝入れ用切削インサートを挿入するときに、あらかじめインサート取付座の頂壁と底壁とを互いに離間移動させるように、インサート保持板部を弾性変形させておき、溝入れ用切削インサートを挿入し終えたときに、インサート保持板部の弾性変形を解除するとともに復元変形させて、インサート取付座の頂壁が、被押圧部に当接するように構成する。詳しくは、インサート保持板部を弾性変形させた状態で、インサート取付座の頂壁と底壁とを互いに平行に配置して、これら頂壁及び底壁に対して、溝入れ用切削インサートの上面のガイド部及び下面を摺接させつつ、インサート取付座に溝入れ用切削インサートを挿入すればよい。
また、溝入れ用切削インサートの延在方向に沿う被押圧部の長さが、前記延在方向に沿うガイド部の長さの5倍以下であるので、被押圧部の長さを十分に確保しつつ、ガイド部の長さが短くなりすぎることを抑制して、該ガイド部の作用を安定化させることができる。従って、インサート取付座に溝入れ用切削インサートを装着する際に、該溝入れ用切削インサートが脱落することを確実に防止できる。
また、溝入れ用切削インサートの厚さ方向から見て、被押圧部と、下面との間に形成される角度が、10°以下であるので、この溝入れ用切削インサートをインサート取付座に装着したときに、インサート保持板部を弾性変形させたり復元変形させたりすることで、インサート取付座の頂壁を、溝入れ用切削インサートの被押圧部に確実に当接させることができる。従って、上述した本発明の作用効果を安定して得ることができる。
また、本発明の溝入れ用切削インサートにおいて、前記被クランプ部は、前記延在方向の他端部側を向く背面を有し、前記背面は、前記上面と前記下面を結ぶ上下方向の上方に向かうに従い漸次前記延在方向の一端部側へ向けて傾斜する傾斜壁状背面部を有することが好ましい。
以下、本発明の第1実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具10及び溝入れ用切削インサート20について、図1〜図12を参照して説明する。
図1及び図2に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具10は、例えば金属材料等からなり円柱状や円筒状をなす被削材Wに、外径溝入れ加工や突切り加工等の旋削加工(ターニング加工)を行うものである。具体的に、被削材Wは、その軸線A回りのうち被削材回転方向Rに回転させられ、刃先交換式溝入れ工具10は、被削材Wに対して軸線Aに直交する径方向の内側(図2(a)(b)に示される白抜き矢印の向き)に向けて移動させられて、被削材Wの外周面に溝入れ用切削インサート20の切れ刃21で切り込んでいき溝入れ加工を施す。
本実施形態では、工具本体1が長方形板状をなしており、該工具本体1が延在する方向の端部(先端部)に、インサート保持板部2が設けられている。本実施形態の例では、工具本体1のインサート保持板部2及び該インサート保持板部2以外の部位が、互いに略同じ厚さの板状に形成されていて、工具本体1全体が平板状をなしている。
溝入れ用切削インサート20は、インサート取付座4の一端部から切れ刃21を突出させた状態で、該インサート取付座4に装着される。
本明細書では、工具本体1の先端部に設けられたインサート保持板部2が、該インサート保持板部2以外の部位(工具本体1の先端部以外の部位)から突出させられる向きを、突出方向Pという。突出方向Pは、溝入れ加工時において、被削材Wに対して刃先交換式溝入れ工具10が移動させられる「溝入れ方向」と同じ向きとされる。本実施形態の例では、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体1の上面視で、突出方向Pが、工具本体1の工具軸線(工具本体1の延在方向、工具本体1の長手方向)に沿うように延びている。
また、工具本体1の延在方向(突出方向P)及び厚さ方向Tに直交する向きを、工具高さ方向HTという。工具高さ方向HTのうち、溝入れ加工時において、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21のすくい面22が向く方向(図5における上側)を上方(工具上方)といい、すくい面22が向く方向とは反対側(図5における下側)を下方(工具下方)という。
なお、後述するインサート取付座4の説明等では、図5において、延在方向Lに沿う後壁4cからインサート取付座4の開口部(インサート挿入口)へ向かう方向を延在方向Lの一端部側といい、延在方向Lに沿う前記開口部から後壁4cへ向かう方向を延在方向Lの他端部側ということがある。
なお、後述する溝入れ用切削インサート20の説明等では、図5において、延在方向Lに沿う被クランプ部28から刃部27側へ向かう方向を延在方向Lの一端部側といい、延在方向Lに沿う刃部27から被クランプ部28側へ向かう方向を延在方向Lの他端部側ということがある。
また、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向は、インサート保持板部2の厚さ方向Tと同一である。従って本明細書では、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向を、インサート保持板部2の厚さ方向Tと同じ符号Tを付して表す。
図5に示されるように、溝入れ用切削インサート20のインサート高さ方向HIと、工具本体1の工具高さ方向HTとは、互いに向きが異なっている。
図3及び図4に示されるように、工具本体1は、その延在方向の中心及び工具高さ方向HTの中心を通り厚さ方向Tに沿って延びる工具中心線Cに関して、180°回転対称に形成されている。また、インサート取付座4は、工具本体1の延在方向の両端部にそれぞれ配置されている。本実施形態の例では、一対のインサート取付座4同士が、工具本体1の厚さ方向Tを向く両側面の各中心を通る工具中心線C回りに、180°回転対称となるように配置されて、互いに同一形状に形成されている。
なお、これらインサート取付座4同士は、互いに異なる形状とされているとともに、複数種類の溝入れ用切削インサート20を装着可能な工具本体1とされていてもよい。また、インサート取付座4は、工具本体1に1つのみ設けられていてもよい。
図3〜図5において、インサート保持板部2は、工具高さ方向HTに対向する上顎部5及び下顎部6を備えている。上顎部5と下顎部6とは、工具高さ方向HTに互いに離間しており、これらの間に設けられた隙間に、インサート取付座4が形成されている。
また、工具本体1の前記隙間のうち、インサート取付座4よりも突出方向Pとは反対側(工具本体1の延在方向に沿う工具の内側、工具中央側)に位置する部分には、該インサート取付座4に連通する開閉操作スリット(スリット)7が形成されている。開閉操作スリット7は、インサート保持板部2を厚さ方向Tに貫通しており、インサート取付座4との連通部分から突出方向Pとは反対側へ向けて延びている。
上顎部5は、その突出方向Pの先端部が概略三角形板状をなしている。下顎部6は、その突出方向Pの先端部が概略四角形板状をなしている。上顎部5の突出方向Pの先端部と、下顎部6の突出方向Pの先端部との間には、インサート取付座4が配置されている。上顎部5の前記先端部以外の部分と、下顎部6の前記先端部以外の部分との間には、開閉操作スリット7が配置されている。
上顎部5の突出方向Pに沿う長さ(突出長さ)は、下顎部6の突出方向Pに沿う長さよりも短くされている。つまり、下顎部6の突出方向Pの先端は、上顎部5の突出方向Pの先端よりも、突出方向Pへ突出して配置されている。
なお、図3及び図4において符号19で示される穴は、クーラント供給手段に接続され、クーラント孔11、12に連通するクーラント供給口である。図示の例では、クーラント供給口19が、工具本体1の厚さ方向Tを向く側面に開口している。
図3〜図6において、インサート取付座4は、インサート保持板部2における工具高さ方向HTの上方部分に配置されている。インサート取付座4は、インサート保持板部2の厚さ方向Tを向く両側面に開口されており、かつ、該インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部(インサートを挿入する部分)が、このインサート保持板部2の先端面(突出方向Pを向く端面)に開口させられている。
図5に示されるように、インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、他端部(インサートが突き当てられる部分)には、後述する後壁4c及びぬすみ部4dが配置されている。また、インサート取付座4の他端部には、開閉操作スリット7が接続する。
図5に示されるように、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20が装着された状態で、インサート取付座4の頂壁4aは、該インサート取付座4の延在方向Lに沿って他端部(後壁4c)から一端部(インサート挿入口)側へ向かうに従い漸次底壁4bに向けて接近するように、該底壁4bに対して傾斜させられている。つまり、図5において頂壁4aと底壁4bとは、互いに平行とされてはおらず、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い漸次互いに接近させられている。これら頂壁4aと底壁4bとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度θは、1〜10°とされ、好ましくは2°程度とされる。
インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱方法については、別途後述する。
インサート取付座4のうち、頂壁4aは、上顎部5に形成されており、底壁4b、後壁4c及びぬすみ部4dは、下顎部6に形成されている。
図3及び図4に示されるように、開閉操作スリット7は、工具本体1の先端部においてインサート保持板部2を厚さ方向Tに貫通しているとともに、該インサート保持板部2の厚さ方向Tを向く両側面に開口されている。また、開閉操作スリット7は、工具本体1の延在方向(突出方向P)に沿って延びている。開閉操作スリット7の突出方向Pの一端部は、スリット幅が一定となるように形成されており、インサート取付座4に連通している。開閉操作スリット7の突出方向Pとは反対側の他端部には、丸孔が形成されている。なお、特に図示しないが、開閉操作スリット7の前記他端部は、前記丸孔が形成されずに、スリット幅が一定となるように形成されていてもよい。
図5及び図7〜図9に示されるように、溝入れ用切削インサート20は、棒状をなしている。溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部には、切れ刃21を有する刃部27が形成され、該一端部以外の部位には、インサート取付座4にクランプされる被クランプ部28が形成されている。
本実施形態の例では、刃部27が概略三角形板状をなしており、被クランプ部28が概略五角形板状をなしている。
図8(b)(c)に示されるように、刃部27の厚さ方向Tに沿う長さ(厚さ)は、被クランプ部28の厚さ方向Tに沿う長さよりも大きくされている。また、図6(a)(b)に示されるように、刃部27の前記厚さは、インサート保持板部2の前記厚さよりも大きくなっている。図8(b)において、刃部27の前記厚さは、延在方向Lの一端部側(延在方向Lに沿う被クランプ部28から刃部27側)へ向かうに従い漸次大きくされている。
また、図8(a)に示されるように、刃部27のインサート高さ方向HIに沿う長さ(高さ)は、延在方向Lの一端部側へ向かうに従い漸次小さくなっている。
すくい面22は、刃部27の上面に形成されており、インサート高さ方向HIの上方を向いている。逃げ面23は、刃部27の延在方向Lの一端部側を向く端面(前面)、及び、刃部27の厚さ方向Tを向く両側面に形成されている。切れ刃21は、図8(b)に示される溝入れ用切削インサート20の上面視で、延在方向Lの他端部側へ向けて開口するコ字状又はU字状をなしている。
図7及び図8に示されるように、切れ刃21は、刃部27における延在方向Lの一端部側の端縁に位置するとともに、厚さ方向Tに沿って延びる主切れ刃(正面切れ刃)21aと、該主切れ刃21aの両端に接続するとともに、この主切れ刃21aから延在方向Lの他端部側へ向けて延びる一対の副切れ刃(側面切れ刃)21bと、を有している。
また、一対の副切れ刃21b同士は、主切れ刃21aから延在方向Lの他端部側へ向かうに従い漸次互いに接近するように延びており、これらの副切れ刃21bには、いわゆるバックテーパが付与されている。なお、特に図示していないが、副切れ刃21bには、厚さ方向Tに直交して延びるさらい刃となる部分が設けられていてもよい。
図5及び図7〜図9に示されるように、被クランプ部28は、すくい面22と同じ方向を向く上面24と、上面24とは反対側を向く下面25と、延在方向Lの他端部側を向く背面26と、を有している。
そして、被クランプ部28の上面24には、下面25に対して平行となるように形成されたガイド部24aと、ガイド部24aの延在方向Lの一端部側に隣り合って配置され、該一端部側へ向かうに従い下面25に接近するように、該下面25に対して傾斜して形成された被押圧部24bと、が備えられている。
なお、上述したように、被クランプ部28の上面24のうちガイド部24aは、下面25と平行であることから、このガイド部24aと、被押圧部24bとの間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度θもやはり1〜10°であり、好ましくは2°程度である。
このため、図5において、溝入れ用切削インサート20がインサート取付座4に装着されたときに、インサート取付座4において断面凸V字状とされた頂壁4aと、溝入れ用切削インサート20において断面凹V字状とされた上面24とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接される(係止される)。また同様に、インサート取付座4において断面凸V字状とされた底壁4bと、溝入れ用切削インサート20において断面凹V字状とされた下面25とが、互いに厚さ方向Tへの相対移動が規制された状態で当接される。
傾斜壁状背面部26aは、背面26におけるインサート高さ方向HIの上方部分に配置されており、上面24のガイド部24aに接続している。傾斜壁状背面部26aは、インサート高さ方向HIの上方に向かうに従い漸次延在方向Lの一端部側へ向けて傾斜している。図8(a)に示されるように、溝入れ用切削インサート20を厚さ方向Tから見た側面視において、傾斜壁状背面部26aと下面25との間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度βは、例えば40〜70°である。
なお、本実施形態の例では、互いに当接する傾斜壁状背面部26a及び後壁4cが、それぞれ平面状をなしているが、これに代えて、傾斜壁状背面部26aを断面凹V字状又は断面凸V字状に形成し、これに対応するように、後壁4cを断面凸V字状又は断面凹V字状に形成してもよい。
次に、図10〜図12を参照して、インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱方法について説明する。
本実施形態では、インサート取付座4への溝入れ用切削インサート20の着脱にあたり、トルクス(登録商標)レンチや六角レンチ等の作業用工具60を使用する。作業用工具60の先端部には、該先端部の中心軸回りに沿って、最大径となる部分と、最大径となる部分以外の部分(最大径ではない部分)と、が隣り合って配置されている。
図5に示されるように、インサート取付座4の後壁4cに、溝入れ用切削インサート20の背面26が当接したら、作業用工具60の先端部をその中心軸回りに回動させて、該先端部の前記最大径となる部分以外の部分が、係合孔7a内に係合するように配置する。これにより、上顎部5は下方へ向けて復元変形し、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとの間で、溝入れ用切削インサート20がクランプされる。
次いで、開閉操作スリット7の係合孔7aから、作業用工具60の先端部を取り外す。
以上説明した本実施形態の溝入れ用切削インサート20及び刃先交換式溝入れ工具10では、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着する際、インサート取付座4の底壁4bに対しては、溝入れ用切削インサート20の下面25が当接する。また、インサート取付座4の頂壁4aに対しては、まず溝入れ用切削インサート20の上面24のうちガイド部24aが当接し、インサート取付座4の延在方向(溝入れ用切削インサート20の延在方向)Lに沿って、該インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入していき、溝入れ用切削インサート20が挿入し終わった状態では、インサート取付座4の頂壁4aに対して、溝入れ用切削インサート20の上面24のうち被押圧部24bが当接させられる。
すなわち、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入するときに、あらかじめインサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとを互いに離間移動させるように、インサート保持板部2(具体的には上顎部5)を弾性変形させておき、溝入れ用切削インサート20を挿入し終えたときに、インサート保持板部2の弾性変形を解除するとともに復元変形させて、インサート取付座4の頂壁4aが、被押圧部24bに当接するように構成する。詳しくは、インサート保持板部2を弾性変形させた状態で、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとを互いに平行に配置して、これら頂壁4a及び底壁4bに対して、溝入れ用切削インサート20の上面24のガイド部24a及び下面25を摺接させつつ、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入すればよい。
すなわちこの場合、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入する際には、上述したガイド部24aの作用によって溝入れ用切削インサート20の脱落を防止することができる。そして、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着し終えた状態では、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う長さが長くされた被押圧部24bに対して、インサート取付座4の頂壁4aを広範囲に接触させることができる。従って、溝入れ用切削インサート20の抜け出しを効果的に防止することができ、かつ、溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性を高めることができる。
すなわちこの場合、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を挿入するときには、該溝入れ用切削インサート20の脱落をより確実に防止でき、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着した状態では、溝入れ用切削インサート20の抜け出しを防止する効果、及び溝入れ用切削インサート20のクランプ安定性を向上させる効果を、より格別顕著なものとすることができる。
また、溝入れ用切削インサート20の延在方向Lに沿う被押圧部24bの長さが、該延在方向Lに沿うガイド部24aの長さの5倍以下であるので、被押圧部24bの長さを十分に確保しつつ、ガイド部24aの長さが短くなりすぎることを抑制して、該ガイド部24aの作用を安定化させることができる。従って、インサート取付座4に溝入れ用切削インサート20を装着する際に、該溝入れ用切削インサート20が脱落することを確実に防止できる。
すなわちこの場合、上述した被押圧部24bの作用によって、インサート取付座4に対して溝入れ用切削インサート20の抜け出しを防止する効果、及びクランプ安定性を向上させる効果を、より格別顕著なものとすることができる。
また、溝入れ用切削インサート20の厚さ方向Tから見て、被押圧部24bと、下面25との間に形成される角度θが、10°以下であるので、この溝入れ用切削インサート20をインサート取付座4に装着したときに、インサート保持板部2を弾性変形させたり復元変形させたりすることで(本実施形態においては、あらかじめ弾性変形させた上顎部5を復元変形させることで)、インサート取付座4の頂壁4aを、溝入れ用切削インサート20の被押圧部24bに確実に当接させることができる。従って、上述した本実施形態の作用効果を安定して得ることができる。
すなわちこの場合、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の厚さ方向T(インサート取付座4のスリット貫通方向)への移動が規制されて、上述した本実施形態の作用効果がより安定したものとなる。
溝入れ加工後において、被削材Wから工具を離間させるときに、被削材Wに対して工具を後退させる向きは、突出方向Pとは反対側(溝入れ方向とは反対側)とされる。従って、被削材Wにおける加工した溝内に位置する溝入れ用切削インサート20の切れ刃21等が、該溝の内壁に当接した場合(引っ掛かりが生じた場合)などにおいては、溝入れ用切削インサート20に作用する抜き出し力の向きが、突出方向Pに沿うこととなる。
本実施形態の上記構成によれば、インサート取付座4から溝入れ用切削インサート20を取り外す向きは延在方向Lに沿っており、この延在方向Lが、突出方向Pとは異なる向きとされている。従って、溝入れ用切削インサート20に上記抜き出し力が作用した場合でも、インサート取付座4と溝入れ用切削インサート20との間でこれらの相対移動を規制する抵抗(摩擦力等)が生じて、溝入れ用切削インサート20の抜け出しが効果的に抑制される。
すなわちこの場合、溝入れ用切削インサート20の抜け出しをより確実に防止しつつ、工具本体1の剛性を十分に確保できる。
また、延在方向Lと突出方向Pとの間に形成される角度αが、30°以下であるので、インサート取付座4(の延在方向L)が突出方向P(溝入れ方向)に対して傾斜させられ過ぎることを抑えて、下顎部6の剛性を確保することができ、ひいては工具本体1全体の剛性を確保できる。
すなわちこの場合、溝入れ加工時に、溝入れ用切削インサート20の切れ刃21近傍に対して、工具高さ方向HTの下方へ向けた切削力が作用することにより、この溝入れ用切削インサート20の下面25における延在方向Lの一端部側の端部近傍を中心とした回転力が生じても、インサート取付座4の頂壁4aとともに後壁4cが、溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制して、クランプ安定性が向上する。
すなわちこの場合、角度βが40°以上であるので、下面25に対して傾斜壁状背面部26aを傾斜させるために、溝入れ用切削インサート20(の被クランプ部28)の延在方向Lに沿う全長が大きくなり過ぎるようなことを抑制できる。
また、角度βが70°以下であるので、上述した溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制する効果が、より顕著なものとなる。
すなわちこの場合、厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの1.1倍以上であるので、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち傾斜壁状背面部26aの、インサート取付座4の後壁4cに対する接触面積(接触長さ)を確実に大きくして、上述した溝入れ用切削インサート20の浮き上がりを抑制する効果やクランプ安定性を高める効果を安定化させることができる。
また、厚さ方向Tから見て、傾斜壁状背面部26aの長さが、縦壁状背面部26bの長さの2倍以下であるので、傾斜壁状背面部26aによる上述の作用効果が十分に得られつつ、例えば図16に示されるように、この溝入れ用切削インサート20を内径溝入れ用の工具本体41に装着した場合に、インサート取付座4の後壁4cに当接される縦壁状背面部26bによって、インサート取付座4に対する溝入れ用切削インサート20の位置決め精度を安定して確保することができる。
すなわちこの場合、溝入れ加工時に、切れ刃21からすくい面22上を流れて延在方向Lの他端部側(突出方向Pとは反対側)へ向かう切屑が、突起29に衝突させられるため、該切屑の擦過による上顎部5の摩耗や損傷が防止される。
なお、本実施形態の例では、突起29と上顎部5の先端との間に、隙間が設けられているが、これらは互いに当接していてもよい。この場合、溝入れ用切削インサート20の背面26に、インサート取付座4の後壁4cが当接しなくてもよい。
次に、本発明の第2実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具30について、図13及び図14を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式溝入れ工具30も、被削材Wに対して、外径溝入れ加工を施すものである。また、この刃先交換式溝入れ工具30を用いて、被削材Wに突切り加工を施してもよい。
なお、前述の実施形態と同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
図13及び図14に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具30は、前述の実施形態で説明した刃先交換式溝入れ工具10とは、主に工具本体31の形状、スリット32の形状、及びクランプネジ33を有する点が異なっている。
本実施形態では、工具本体31が、断面四角形の軸状(角棒状)をなしている。そして、工具本体31が延在する方向(工具軸線方向)の端部(先端部)に、板状のインサート保持板部2が設けられている。つまり、工具本体31におけるインサート保持板部2の厚さ方向Tの長さ(厚さ)が、該インサート保持板部2以外の部位の厚さ方向Tの長さよりも小さくされている。また、本実施形態においても、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体31の上面視で、突出方向Pは、工具本体31の工具軸線に沿うように延びている。
本実施形態では、前述の実施形態で説明した開閉操作スリット7の代わりに、係合孔7aが設けられていないスリット32が形成されている。スリット32は、突出方向P(工具本体31の延在方向)に沿って延びており、その突出方向Pの一端部はインサート取付座4に連通している。スリット32の突出方向Pとは反対側の他端部には、丸孔が形成されている。スリット32のうち前記丸孔以外の部位は、スリット幅が一定とされている。
工具本体31には、インサート保持板部2の上顎部5と下顎部6とを、相対的に接近離間させるためのクランプネジ33が螺設されている。
本実施形態においては、クランプネジ33をネジ穴(不図示)にねじ込む(締め込む)ことにより、インサート取付座4の頂壁4aと底壁4bとを互いに接近移動させるように、インサート保持板部2(具体的には上顎部5)を弾性変形させる。そして、インサート取付座4の頂壁4aを、溝入れ用切削インサート20の上面24のうち少なくとも被押圧部24bに当接させる。
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具30によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第3実施形態に係る刃先交換式溝入れ工具40について、図15及び図16を参照して説明する。
なお、前述の実施形態と同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
図15及び図16に示されるように、本実施形態の刃先交換式溝入れ工具40は、円筒状をなす被削材Wに、内径溝入れ加工等の旋削加工を行うものである。刃先交換式溝入れ工具40は、被削材Wに対して、該被削材Wの軸線Aに直交する径方向の外側(図15に示される白抜き矢印の向き)に向けて移動させられて、被削材Wの内周面に溝入れ用切削インサート20の切れ刃21で切り込んでいき溝入れ加工を施す。
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具40は、前述の実施形態で説明した刃先交換式溝入れ工具30とは、主に工具本体41の形状、インサート保持板部2の突出方向P(溝入れ方向)及び厚さ方向T、並びにインサート取付座4が異なっている。
本実施形態では、工具本体41が、断面円形の軸状(丸棒状)をなしている。そして、工具本体41が延在する方向(工具軸線O方向)の端部(先端部)に、板状のインサート保持板部2が設けられている。
本実施形態では、溝入れ用切削インサート20のすくい面22を正面に見た工具本体41の上面視で、工具本体41のインサート保持板部2が該インサート保持板部2以外の部位から突出させられる突出方向Pが、工具本体41の工具軸線Oに直交するように延びている。突出方向Pは、溝入れ加工時において、被削材Wに対して刃先交換式溝入れ工具40が移動させられる「溝入れ方向」と同じ向きとされる。また、インサート保持板部2の厚さ方向Tは、工具軸線O方向に沿っている。
また、インサート取付座4の延在方向Lに沿う両端部のうち、一端部(インサート挿入口)は、インサート保持板部2の端面(本実施形態では工具本体41の側面)に開口している。
インサート取付座4は、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの上方へ向けて傾斜して延びている。特に図示していないが、インサート取付座4は、突出方向Pへ向かうに従い漸次工具高さ方向HTの下方へ向けて傾斜して延びていてもよく、或いは、厚さ方向Tから見て突出方向Pに沿って延びていてもよい。本実施形態では、インサート取付座4の後壁4cが、溝入れ用切削インサート20の背面26のうち、縦壁状背面部26bに当接させられている。
本実施形態の刃先交換式溝入れ工具40によれば、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
2 インサート保持板部
4 インサート取付座
4a 頂壁
4b 底壁
10、30、40 刃先交換式溝入れ工具
20 溝入れ用切削インサート
21 切れ刃
22 すくい面
23 逃げ面
24 上面
24a ガイド部
24b 被押圧部
25 下面
27 刃部
28 被クランプ部
HI インサート高さ方向(上下方向)
L 延在方向
T 厚さ方向
θ 角度
Claims (6)
- 棒状をなし、その延在方向に沿う両端部のうち一端部に、刃部が形成され、前記延在方向に沿う前記一端部以外の部位に、被クランプ部が形成された溝入れ用切削インサートであって、
前記刃部は、
すくい面と、
逃げ面と、
前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃と、を有し、
前記被クランプ部は、
前記すくい面と同じ方向を向く上面と、
前記上面とは反対側を向く下面と、を有し、
前記上面には、
前記下面に対して平行となるように形成されたガイド部と、
前記ガイド部の前記延在方向の一端部側に隣り合って配置され、前記一端部側へ向かうに従い前記下面に接近するように、該下面に対して傾斜して形成された被押圧部と、が備えられ、
前記延在方向に沿う前記被押圧部の長さが、前記延在方向に沿う前記ガイド部の長さよりも長いことを特徴とする溝入れ用切削インサート。 - 請求項1に記載の溝入れ用切削インサートであって、
前記延在方向に沿う前記被押圧部の長さが、前記延在方向に沿う前記ガイド部の長さの2〜5倍であることを特徴とする溝入れ用切削インサート。 - 請求項1又は2に記載の溝入れ用切削インサートであって、
当該溝入れ用切削インサートの前記延在方向、及び、前記上面と前記下面を結ぶ上下方向に直交する厚さ方向から見て、前記被押圧部と、前記下面との間に形成される角度が、1〜10°であることを特徴とする溝入れ用切削インサート。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートであって、
前記上面及び前記下面のうち少なくともいずれかが、前記延在方向に垂直な断面視でV字状に形成されることを特徴とする溝入れ用切削インサート。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートであって、
前記被クランプ部は、前記延在方向の他端部側を向く背面を有し、
前記背面は、前記上面と前記下面を結ぶ上下方向の上方に向かうに従い漸次前記延在方向の一端部側へ向けて傾斜する傾斜壁状背面部を有することを特徴とする溝入れ用切削インサート。 - 工具本体に設けられたインサート保持板部と、
前記インサート保持板部を該インサート保持板部の厚さ方向に貫通するとともに、スリット状に延び、その延在方向に沿う両端部のうち一端部が、前記インサート保持板部の端面に開口するインサート取付座と、
前記インサート取付座の前記一端部から切れ刃を突出させて、該インサート取付座に着脱可能に装着される溝入れ用切削インサートと、を備えた刃先交換式溝入れ工具であって、
前記溝入れ用切削インサートとして、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溝入れ用切削インサートを用い、
前記インサート取付座は、
前記上面に当接する頂壁と、
前記下面に当接する底壁と、を有することを特徴とする刃先交換式溝入れ工具。
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