JP2017051031A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータインダクタンスに起因する不具合を解消する。【解決手段】スイッチトリラクタンスモータMを操作対象とするモータ制御装置Aであって、モータインダクタンスLに起因する駆動電流Iu,Iv,Iwの過大化を抑制するデューティ制限部3(駆動電流抑制手段)を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、モータ制御装置に関する。
スイッチトリラクタンスモータは、周知のように回転子として鉄心を用いるものであり、回転子(鉄心)と固定子(電磁石)との間に発生するリラクタンストルクを利用する電動機である。下記特許文献1には、このようなスイッチトリラクタンスモータの制御装置が開示されている。この制御装置は、制御周期をキャリアに同期させて管理し、スイッチトリラクタンスモータの相毎に、回転子位置に応じてモータ電流の電流立ち上げ区間、定電流区間、電流立ち下げ区間のそれぞれについて制御周期ごとに電圧指令値の推定演算を行うことにより、汎用インバータを使用しても比較的長い制御周期にて高精度な電流指令値追従制御を実現するものである。
特開2014−045542号公報
ところで、スイッチトリラクタンスモータではモータインダクタンスが周期的に変化するので、電流指令値に対する実電流(駆動電流)の追従性(制御性)が悪い。すなわち、スイッチトリラクタンスモータでは、モータインダクタンスの周期的な変化に起因して駆動電流が変動するので、制御性の低下、運転音や振動の増大あるいは/及びモータ巻線の破損といった不具合が発生する虞がある。特に、モータインダクタンスが比較的小さい回転領域では、スイッチトリラクタンスモータに給電される駆動電流が過大となる虞があり、この結果として上記不具合が発生する虞がある。また、駆動電流が過大(過電流)となることによって、スイッチトリラクタンスモータを駆動する駆動回路(例えばインバータ)を構成するパワー半導体素子が破損する虞がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、モータインダクタンスに起因する不具合の発生を防止することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、スイッチトリラクタンスモータを操作対象とするモータ制御装置であって、モータインダクタンスに起因する駆動電流の過大化を抑制する駆動電流抑制手段を備える、という手段を採用する。
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、PWM(Pulse Width Modulation)信号を駆動回路に供給することにより前記駆動電流を発生するものであって、前記駆動電流抑制手段は、前記モータインダクタンスに基づいて前記PWM信号のデューティ比の制限値を調節することにより前記駆動電流の増大を抑制する、という手段を採用する。
本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記駆動電流を検出して駆動電流検出値を出力する電流センサをさらに備え、前記駆動電流抑制手段は、前記スイッチトリラクタンスモータの回転角及び前記駆動電流とに対応する前記モータインダクタンスが数値データとして登録されたインダクタンステーブルを備え、前記駆動電流検出値及び前記スイッチトリラクタンスモータから入力される回転角検出値に基づいて前記インダクタンステーブルから前記モータインダクタンスを検索することにより前記制限値を演算する、という手段を採用する。
本発明では、第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記駆動電流抑制手段は、電流指令値に所定の許容係数を乗算した乗算値を演算し、当該乗算値と前記駆動電流検出値との差分値、前記モータインダクタンス及び前記PWM信号のスイッチング周波数に基づいて前記制限値を演算する、という手段を採用する。
本発明によれば、モータインダクタンスに起因する駆動電流の過大化を抑制する駆動電流抑制手段を備えるので、モータインダクタンスに起因する不具合、例えば制御性の低下、運転音や振動の増大あるいは/及びモータ巻線の破損を防止することが可能である。
また、本発明によれば、駆動電流が過大(過電流)となることによって駆動回路を構成するパワー半導体素子が破損することを防止することが可能である。
本発明の一実施形態に係るモータ制御装置の全体構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態における電圧指令演算部の詳細構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態におけるデューティ制限部の詳細構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態におけるPWM信号、駆動電流及びモータインダクタンスの波形図である。 本発明の一実施形態の作用を示す波形図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るモータ制御装置Aは、スイッチトリラクタンスモータM(以下では単にモータMという。)を操作対象とするものであって、目標電流設定部1、電圧指令演算部2、デューティ制限部3(駆動電流抑制手段)、PWM(Pulse Width Modulation)信号生成部4、駆動回路5、電流センサ6及び速度演算部7を備えている。
なお、上記モータMは、周知のように鉄心を回転子とするものであり、ロータ(回転子)の極歯とステータ(固定子)のスロットとの間に発生するリラクタンストルクを利用する三相(U相、V相、W相)の電動機である。このモータMは、例えばステータのスロット数が12、ロータの極数が8に構成されており、位置センサSを付属機器として備えている。この位置センサSは、上記ロータの回転角を検出し、当該回転角を示す回転角検出値θをモータ制御装置Aに出力する。
目標電流設定部1は、電流指令値Irefを生成して電圧指令演算部2に出力する。この電流指令値Irefは、駆動回路5からモータMの各相(U相、V相、W相)のステータ巻線に給電される各駆動電流Iu、Iv、Iwの目標値であり、モータ制御装置AがモータMを操作する上で基準となる量である。
電圧指令演算部2は、上記電流指令値Irefと電流センサ6から入力される各駆動電流Iu、Iv、Iwの検出値(電流検出値Iad)との差分に基づいて電圧指令値Vrefを演算する。この電圧指令演算部2は、図2に示すように減算器2a、PI演算部2b、インダクタンステーブル2c、誘起電圧演算部2d及び加算器2eを備えている。
減算器2aは、上記電流指令値Irefと電流検出値Iadとの差分ΔIを演算してPI演算部2bに出力する。PI演算部2bは、PID制御理論に基づいて処理することにより電圧値Vaを加算器2eに出力する。なお、PI演算部2bは、PID制御理論に基づく比例操作量(P操作量)、積分操作量(I操作量)及び微分操作量(D操作量)のうち、比例操作量(P操作量)及び積分操作量(I操作量)を演算し、当該比例操作量(P操作量)及び積分操作量(I操作量)の合算量として電圧値Vaを演算する。
インダクタンステーブル2cは、モータMにおけるロータの回転角(回転角検出値θ)と駆動電流Iu、Iv、Iw(電流検出値Iad)とに対応するモータMのモータインダクタンスL(各ステータ巻線のインダクタンス)の数値データが登録された制御テーブル(2次元テーブル)である。このインダクタンステーブル2cは、位置センサSから入力される回転角検出値θ及び電流センサ6から入力される電流検出値Iadに対応するモータインダクタンスL(数値データ)を検索して誘起電圧演算部2dに出力する。
モータMは、所定の個数(極数)の極歯(突極)を備えたロータを備えるものであり、よってモータインダクタンスLは、ステータ巻線が巻回されたステータのスロットと上記極歯(突極)との位置関係に応じて周期的に変化する。すなわち、モータインダクタンスLは、スロットが極歯(突極)と正対した時(最も近づいたとき)に最大値となり、スロットと極歯(突極)とが最も離れたときに最小となる。
このようなモータMでは、ロータが回転することによりスロットと極歯(突極)とは正対と離間とを交互に繰り返すので、モータインダクタンスLは、ロータの回転数に応じた周期で最大値と最小値とを交互に繰り返すものとまる。このようにロータの回転角(回転角検出値θ)に応じて変化するモータインダクタンスLは事前に計測可能な量であり、インダクタンステーブル2cには、ロータの回転角(回転角検出値θ)毎に事前に計測されたモータインダクタンスLの値が登録される。
誘起電圧演算部2dは、上記インダクタンステーブル2cから入力されるロータの回転角(回転角検出値θ)毎のモータインダクタンスL、電流検出値Iad及び速度演算部7から入力されるモータMの回転角速度ωに基づいて、ロータの回転角(回転角検出値θ)に応じたモータMの誘起電圧Veを演算する。すなわち、誘起電圧演算部2dは、モータインダクタンスLと電流検出値Iadとに基づいてステータのスロットが発生する磁束φの変化率dφ/dtを計算すると共に回転角速度ωからモータMの回転数Nを計算し、上記変化率dφ/dtに回転数Nを乗算することにより誘起電圧Veを計算する。
加算器2eは、誘起電圧演算部2dから入力されるロータの回転角(回転角検出値θ)毎の誘起電圧VeとPI演算部2bから入力される電圧値Vaとを加算することにより電圧指令値Vrefを演算する。加算器2eは、このような電圧指令値Vrefをデューティ制限部3に出力する。
デューティ制限部3は、上記加算器2eから入力される電圧指令値Vrefに所定のリミッタ処理(最大値制限処理)を施すことにより、後段のPWM信号生成部4におけるデューティ比の最大値を制限する。このデューティ制限部3は、電圧指令値Vrefにリミッタ処理を施すことによって制限電圧指令値Vref’を生成し、当該制限電圧指令値Vref’をPWM信号生成部4に出力する。なお、デューティ制限部3が生成する制限電圧指令値Vref’は、後段にPWM信号生成部4に対してPWM信号のデューティ比を指定する量である。
詳細については後述するが、このデューティ制限部3は、本実施形態における駆動電流抑制手段であり、モータインダクタンスLが増大する回転領域における駆動電流を電流指令値Irefから本来演算される駆動電流よりも抑制する。このデューティ制限部3は、このような駆動電流抑制手段の機能を実現するために、図3に示すようにインダクタンステーブル3a、乗算器3b、係数乗算部3c、減算器3d、乗算器3e及びリミッタ部3fを備えている。
インダクタンステーブル3aは、上述したインダクタンステーブル2cと全く同様なものであり、よって再度の説明を省略するが、ロータの回転角(回転角検出値θ)毎のモータインダクタンスLを乗算器3bに出力する。乗算器3bは、このモータインダクタンスLにPWM信号生成部4から入力されるスイッチング周波数fswを乗算し、その乗算値Zを乗算器3eに出力する。
上記スイッチング周波数fswは、PWM信号生成部4で生成されるPWM信号の繰り返し周波数(基本周波数)である。係数乗算部3cは、電流指令値Irefに所定の許容係数αを乗算し、その乗算値Irを減算器3dに出力する。減算器3dは、上記係数乗算部3cから入力された乗算値Irから電流センサ6から入力される電流検出値Iadを減算し、その減算値Isを乗算器3eに出力する。
乗算器3eは、上記乗算値Zに上記減算値Isを乗算することによって制限値Vlimitを調整し、当該制限値Vlimitをリミッタ部3fに出力する。すなわち、この制限値Vlimitは、インダクタンステーブル3aで検索されたモータインダクタンスLの値つまり電流検出値Iad及び回転角検出値θ、スイッチング周波数fsw、また乗算値Irと電流検出値Iadとの差分値に応じて可変調整されるものであり、以下の式(1)を満足するものである。
Vlimit=L・fsw・(α・Iref−Iad) (1)
リミッタ部3fは、電圧指令演算部2から入力される電圧指令値Vrefを制限値Vlimitと比較し、電圧指令値Vrefが制限値Vlimit以下の場合は、電圧指令値VrefをそのままPWM信号生成部4に出力し、電圧指令値Vrefが制限値Vlimitより大きい場合には、電圧指令値Vrefを制限値Vlimitに置き換えてPWM信号生成部4に出力する。すなわち、リミッタ部3fは、電圧指令値Vrefが制限値Vlimit以下の場合は、電圧指令値Vrefを出力するもの、電圧指令値Vrefが制限値Vlimitより大きい場合には、電圧指令値Vrefを当該電圧指令値Vrefよりも小さな制限値Vlimitに置き換えることにより制限電圧指令値Vref’を生成する。
PWM信号生成部4は、制限電圧指令値Vref’に基づいてデューティ比を演算し、当該デューティ比、かつ、三相(U相、V相、W相)に対応したPWM信号Pu,Pv,Pwを生成して駆動回路5に出力する。例えば、PWM信号生成部4は、制限電圧指令値Vref’を駆動回路5から入力された駆動電圧Vadで除算することによってデューティ比を決定する。上記U相、V相、W相のPWM信号Pu,Pv,Pwは、何れも同一のデューティ比を有するバースト状信号、つまりPWM波形部が一定周期で間欠的に現れる間欠信号であり、また上記PWM波形部の位相が互いに120°異なるものである。
駆動回路5は、このようなPWM信号Pu,Pv,Pwを用いてスイッチング素子をON/OFFさせることによりバースト状、かつ、三相(U相、V相、W相)に対応した駆動信号を生成する電力変換器である。このようなU相、V相、W相の駆動信号は、同一の駆動電圧Vadを有すると共に、各相のモータインダクタンスLに応じたバースト状の駆動電流Iu,Iv,Iwを有する。
このような駆動回路5は、上記駆動信号をモータMの各相に対応するステータ巻線に出力する。この結果、モータMは、各駆動電流Iu,Iv,Iwが各相のステータ巻線に通電されることによってリラクタンストルクが発生して回転する。電流センサ6は、上記駆動電流Iu,Iv,Iwを検出し、その検出値を電流検出値Iadとして電圧指令演算部2及びデューティ制限部3に出力する。速度演算部7は、位置センサSから入力された回転角検出値θに微分処理を施すことにより回転角速度ωを演算し、当該回転角速度ωを電圧指令演算部2に出力する。
次に、このように構成されたモータ制御装置Aの動作について、図4及び図5をも参照して詳しく説明する。
本実施形態に係るモータ制御装置Aの全体的な制御動作は、上述した制御構成の説明から容易に解るようにモータの制御方法として一般的なフィードバック制御動作である。すなわち、モータ制御装置Aは、電流指令値Iref(目標量)と電流検出値Iad(制御量)との差分ΔIに基づいて電気角として互いに120°の位相差を持った三相(U相、V相、W相)の駆動電流Iu,Iv,Iw(操作量)を生成する。このようなフィードバック制御によって、モータMには上記電流指令値Iref(目標量)に等しい三相の駆動電流Iu,Iv,Iw(操作量)が順次供給され、この結果としてモータMは所定トルクの回転を継続する。
ここで、このようなモータ制御装置AによるモータMのフィードバック制御は、図1に記載した各種構成要素のうち、目標電流設定部1、電圧指令演算部2、PWM信号生成部4、駆動回路5、電流センサ6及び速度演算部7並びに位置センサSによって主に実現される。すなわち、モータ制御装置Aの各種構成要素のうち、デューティ制限部3は、上記フィードバック制御において補助的な構成要素であるが、本実施形態における駆動電流抑制手段であり、モータ制御装置Aにおける特徴的な構成要素である。
図4の最上段の波形は、上記U相、V相、W相のPWM信号Pu,Pv,Pwのうち、1相分(例えばU相)のPWM信号Puの波形を示している。また、図4の中段の波形は、PWM信号Puに対応する駆動電流Iuの波形を示している。さらに、図4の最上段の波形は、上記駆動電流Iuに対応するモータインダクタンスLの変化を示している。なお、U相以外のV相及びW相についても、PWM信号Pv,Pw、駆動電流Iv,Iw及びモータインダクタンスLの関係はU相と同一であり、よって以下ではU相を例にとって説明する。
モータM(ロータ)が回転することにより、当該モータMにおけるステータのスロットとロータの極歯(突極)とは正対と離間とを交互に繰り返す。この結果、モータインダクタンスLは、図4に示すように、極歯(突極)がスロットに近づくに従って増大し、両者が正対したときに最大となり、さらに極歯(突極)がスロットから遠ざかるに従って減少して最小となる。
モータ制御装置AのPWM信号生成部4は、モータインダクタンスLが増大する回転領域、つまり極歯(突極)がスロットに近づく回転領域において、PWM信号Puをバースト状に出力し、この結果として駆動回路5からモータM(ロータ)のU相巻線に駆動電流Iuがバースト状に給電される。すなわち、PWM信号生成部4は、モータインダクタンスLが増大する度にPWM信号Puを駆動回路5に出力し、この結果として駆動回路5は、モータインダクタンスLが増大する度に駆動電流IuをU相巻線に出力する。
ここで、駆動電流IuはU相巻線のインピーダンスに依存して変化する。また、このインピーダンスは、モータインダクタンスLが支配的である。したがって、駆動電流Iuは、モータインダクタンスLが増大する回転領域、つまり駆動電流IuがU相巻線に給電される期間のうち、モータインダクタンスLが比較的小さい期間つまり駆動電流Iuの給電初期では過度に増大する虞がある。例えば、駆動電流IuがU相巻線の許容電流値を越えた場合には、U相巻線が破損する虞がある。また、駆動電流Iuが過大(過電流)となることによって駆動回路5を構成するパワー半導体素子が破損する虞がある。
このような事情に対して、モータ制御装置Aのデューティ制限部3は、上述した式(1)に示すようにモータインダクタンスLに応じて制限値Vlimitを可変設定する。すなわち、デューティ制限部3は、モータインダクタンスLが大きい程に制限値Vlimitを大きく、つまりモータインダクタンスLが小さい程に制限値Vlimitを小さく設定する。
また、デューティ制限部3におけるインダクタンステーブル3aは、位置センサSから入力される回転角検出値θ及び電流センサ6から入力される電流検出値Iadに基づいてモータインダクタンスLを検索するので、制限値Vlimitは、モータMの回転角及びモータMの駆動電流に応じて調整されたものである。また、デューティ制限部3は、式(1)に基づいて制限値Vlimitを演算するので、制限値Vlimitは、モータインダクタンスLに加えて、スイッチング周波数fsw、また乗算値Irと電流検出値Iadとの差分値に応じて可変調整されたものである。
したがって、デューティ制限部3では、モータインダクタンスLが比較的小さい期間では、モータインダクタンスLが比較的大きい期間よりも制限値Vlimitを小さく設定されるので、PWM信号生成部4で生成されるPWM信号Puは、モータインダクタンスLが比較的小さい期間におけるデューティ比がモータインダクタンスLが比較的大きい期間よりも小さく設定される。
この結果として、駆動回路5からモータMに供給される駆動信号の電圧(駆動電圧)は、図5の上段に実線で示されているように、デューティ比が電流指令値Irefから本来演算される駆動信号の電圧波形(破線)よりも小さく設定される。また、同じく駆動回路5からモータMに供給される駆動信号の駆動電流Iuは、図5の下段に実線で示されているように、電流指令値Irefから本来演算される駆動電流(破線)よりも抑制され、例えばU相巻線や駆動回路5を構成するパワー半導体素子の許容電流値よりも小さな値となる。
このような本実施形態によれば、モータインダクタンスLの低下に起因して過度の駆動電流がモータMに給電されることを回避することが可能であり、よって過度の駆動電流に起因するモータMの各種不具合、例えばモータMの制御性の低下、モータMの回転音の増大、モータMの振動の増大、またモータM(モータ巻線)の破損を防止することが可能である。また、本実施形態によれば、駆動電流Iuが過大(過電流)となることが回避されるので、駆動回路5を構成するパワー半導体素子が過電流に起因して破損することを効果的に防止することができる。すなわち、本実施形態によれば、モータM及び駆動回路5について過度の駆動電流に起因する不具合の発生を回避することができる。
また、本実施形態によれば、PWM信号Pu,Pv,Pwを駆動回路5に供給することにより駆動電流Iu、Iv、Iwを発生するモータ制御装置Aであって、デューティ制限部3は、モータインダクタンスLに基づいてPWM信号Pu,Pv,Pwのデューティ比の制限値Vlimitを調節するので、駆動電流Iu、Iv、Iwの増大を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、ロータの回転角と駆動電流Iu、Iv、Iwとに対応するモータインダクタンスLの数値データが登録されたインダクタンステーブル2cを用いて制限値Vlimitを計算するので、例えば所定の演算式に基づいてロータの回転角と駆動電流Iu、Iv、Iwとに対応するモータインダクタンスLを計算する場合に比較して、制限値Vlimitの計算速度を短縮することが可能である。
さらに、本実施形態によれば、電流指令値Irefに許容係数αを乗算した乗算値Irを演算し、当該乗算値Irと電流検出値Iadとの差分値Is、モータインダクタンスL及びPWM信号Pu,Pv,Pwのスイッチング周波数fswに基づいて制限値Vlimitを演算するので、デューティ比を精度良く制限することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、駆動電流抑制手段として電圧指令値Vrefを制限値Vlimitで制限することにより制限電圧指令値Vref’を生成するデューティ制限部3を設けたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、駆動電流抑制手段として、電圧指令値Vref以外の量を制限することにより駆動電流Iu,Iv,Iwの過大化を抑制してもよい。例えば電流指令値Iref、電圧値Vaあるいは誘起電圧VeをモータインダクタンスLに基づいてより小さい値に補正することにより駆動電流Iu,Iv,Iwの過大化を抑制してもよい。
(2)また、デューティ制限部3の構成は、図3に示した構成に限定されない。例えばインダクタンステーブル3aは、ロータの回転角と駆動電流Iu、Iv、Iwとに対応するモータインダクタンスLの数値データが登録された制御テーブル(2次元テーブル)であるが、このような2次元テーブルれに代えて、ロータの回転角に対応するモータインダクタンスLの数値データが登録された1次元テーブルを採用してもよい。例えば、駆動電流Iu、Iv、Iwに起因するステータの磁気飽和を考慮する必要がない場合には、インダクタンステーブル3aを1次元テーブルとすることが考えられる。
(3)また、デューティ制限部3では、乗算値Irと電流検出値Iadとの差分値をも考慮して制限値Vlimitを設定するが、必要に応じてモータインダクタンスLとスイッチング周波数fswとのみに基づいて制限値Vlimitを設定してもよい。なお、この場合には、乗算値Zに所定の許容計数βを乗算することにより制限値Vlimitを設定することが考えられる。
(4)さらに、上記実施形態では、誘起電圧Veを計算するためのインダクタンステーブル2cについても2次元テーブルとしたが、上述したインダクタンステーブル3aと同様に1次元テーブルとしてもよい。また、誘起電圧演算部2dでは速度演算部7から回転角速度ωを取り込んで誘起電圧Veを計算したが、誘起電圧演算部2dに回転角検出値θを取り込み、誘起電圧演算部2d内で回転角検出値θに微分処理を施して回転角速度ωを取得してもよい。
A モータ制御装置
M スイッチトリラクタンスモータ
S 位置センサ
1 目標電流設定部
2 電圧指令演算部
2a 減算器
2b PI演算部
2c インダクタンステーブル
2d 誘起電圧演算部
2e 加算器
3 デューティ制限部(駆動電流抑制手段)
3a インダクタンステーブル
3b 乗算器
3c 係数乗算部
3d 減算器
3e 乗算器
3f リミッタ部
4 PWM信号生成部
5 駆動回路
6 電流センサ
7 速度演算部

Claims (4)

  1. スイッチトリラクタンスモータを操作対象とするモータ制御装置であって、
    モータインダクタンスに起因する駆動電流の過大化を抑制する駆動電流抑制手段を備えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. PWM信号を駆動回路に供給することにより前記駆動電流を発生するものであって、
    前記駆動電流抑制手段は、前記モータインダクタンスに基づいて前記PWM信号のデューティ比の制限値を調節することにより前記駆動電流の増大を抑制する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記駆動電流を検出して電流検出値を出力する電流センサをさらに備え、
    前記駆動電流抑制手段は、前記スイッチトリラクタンスモータの回転角及び前記駆動電流とに対応する前記モータインダクタンスが数値データとして登録されたインダクタンステーブルを備え、前記電流検出値及び前記スイッチトリラクタンスモータから入力される回転角検出値に基づいて前記インダクタンステーブルから前記モータインダクタンスを検索することにより前記制限値を演算する
    ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記駆動電流抑制手段は、電流指令値に所定の許容係数を乗算した乗算値を演算し、当該乗算値と前記電流検出値との差分値、前記モータインダクタンス及び前記PWM信号のスイッチング周波数に基づいて前記制限値を演算する
    ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
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