JP2017045759A - 色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法 - Google Patents

色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】一対の電極層12,15と、一対の電極層12,15に挟まれた半導体層13および電解質層14とを備える色素増感太陽電池10であって、半導体層13は、電解質層14に向けた表面であって、ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む表面を有する酸性酸化物である半導体と、半導体の表面にて、酸素原子を介して酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法に関する。
光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池の一種として、色素増感太陽電池が知られている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1〜7参照)。色素増感太陽電池は、互いに対向する2つの電極層の間に、半導体層と電解質層とを備えている。半導体層は、増感色素が半導体表面に吸着することによって形成された層である。増感色素が光子を吸収すると、増感色素に含まれる電子は励起される。励起された電子は、半導体内部に注入されて半導体層に接続された電極層から外部に取り出される。一方、電子を失った増感色素は、電解質層中の還元剤から電子を受け取り、これによって生じた電解質層中の酸化剤は、電解質層に接続された電極層から電子を受け取ることによって還元される。こうした反応が繰り返されることによって、電力が生成される。
かつては、色素増感太陽電池において高い光電変換効率を実現するために、増感色素として、純度の高い単一種類の色素を用いることが推奨されていた(例えば、非特許文献1参照)。その理由は、複数種類の色素を1つの半導体層に混在させると、色素同士の間で電子の授受もしくは電子とホールとの再結合が生じたり、色素から半導体に受け渡された電子が別種の色素によって捕獲されたりすることがあり得るからである。こうした現象は、増感色素から電極層に到達する電子を減少させ、その結果、吸収された光子から電流が得られる比率、すなわち、量子収率が低下して、光電変換効率の低下を招く。
これに対し、互いに色素骨格が大きく異なる二種類の色素、具体的には、Ru色素であるBlack dyeと有機色素であるD131とを、増感色素として用いることによって、上述の色素同士の電子授受等が抑えられて、色素増感太陽電池の電池性能を改善することが可能であることが報告されている(例えば、特許文献2,非特許文献2参照)。下記化学式(1)として、Black dyeの構造式を示し、下記化学式(2)として、D131の構造式を示す。
例えば、非特許文献2では、Black dyeとD131、もしくは、Black dyeと有機色素であるNKX−2553のように、互いに色素骨格が大きく異なる二種類の色素を増感色素として用いることによって、色素の会合が抑えられるとともに、二種類の色素の半導体表面への総吸着量を増加させることができることが報告されている。下記化学式(3)として、NKX−2553の構造式を示す。
色素の会合は、色素同士の電子授受が生じる一因であるため、色素の会合を抑えることによって、色素同士の電子授受を抑えることができる。また、半導体表面に対して電解質層中の電解質が接触しやすい場合には、半導体層から電解質層へ電子が移動する逆電子移動が生じやすい。これに対し、半導体表面に吸着している色素の量を増加させることによって、電解質が半導体表面に接近し難くなるため、逆電子移動を抑えることができる。
さらに、非特許文献2においては、増感色素の組み合わせとして、Ru色素と、Ru色素の光吸収領域を補完する有機色素とが用いられているため、電流の増大による光電変換効率の改善も認められる。
しかしながら、特許文献2や非特許文献2にて挙げられている増感色素の組み合わせは、二種類の色素の双方が、半導体表面に結合する官能基である固定基としてカルボキシル基を有する組み合わせである。これらの色素は、カルボキシル基が、半導体層を構成する酸化チタン表面のブレンステッド酸サイト、すなわち、酸化チタンの有するヒドロキシル基と脱水縮合することによって半導体表面に吸着している。そのため、Ru色素と有機色素との間で吸着競合が生じるという問題がある。
吸着競合の結果、一種類の色素を用いる場合と比較して、半導体表面への二種類の色素の総吸着量は増加するものの、各色素の吸着量は、各色素を単独で増感色素として用いた場合よりも減少する。例えば、非特許文献2では、Black dyeを単独で用いた場合の吸着量は、3.5×10−7mol/cmであることに対して、Black dyeとD131とを一緒に用いた場合、Black dyeの吸着量は2.8×10−7mol/cmに減少している。また、Black dyeとNKX−2553とを一緒に用いた場合にも、Black dyeの吸着量は2.8×10−7mol/cmに減少している。
こうした吸着競合を抑えるために、増感色素として、半導体表面における互いに異なる結合サイトに結合する二種類の色素を用いることが提案されている。具体的には、増感色素として、固定基としてカルボキシル基またはホスホノ基を有する第1色素と、固定基として含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素とを用いることが提案されている。こうした構成では、第1色素は、半導体表面のブレンステッド酸サイトに結合し、第2色素は、半導体表面のルイス酸サイト、すなわち、酸化チタンの有するカチオンサイトに配位結合によって結合する。このように、二種類の色素が互いに異なる結合サイトに結合することによって吸着競合が抑えられ、かつ、従来は色素の結合していなかったルイス酸サイトが色素の結合のためのサイトとして利用されることによって、色素の吸着量のさらなる向上が可能である(例えば、特許文献3,非特許文献3,4参照)。
特許第2664194号明細書 特許第4380779号明細書 特許第5263458号明細書
K.Sayama et al., Sol. Energy Mater. Sol. Cells, 2003, 80, 47. H.Ozawa et al, RSC. Adv., 2012, 2, 3198. N.Shibayama et al., Chem. Commun., 2014, 50, 6398. N.Shibayama et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 2015, 88, 366. Y.Ooyama et al., J. Mater. Chem. A, 2014, 2, 8500. Y.Ooyama et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 7429. Y.Ooyama et al., Chem. Commun., 2013, 49, 2548.
上述のように、半導体表面の互いに異なる結合サイトを利用して複数種類の色素を吸着させることは、色素の吸着量の向上のための有効な手段である。一方で、色素間に働く相互作用については未解明な部分も多く、色素増感太陽電池としての特性を向上し得る色素の組み合わせには、依然として数多くの可能性が残されている。したがって、色素増感太陽電池としての特性の向上を図るうえでは、半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する色素の新規な組み合わせが求められている。
本発明は、半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための色素増感太陽電池は、一対の電極層と、前記一対の電極層に挟まれた半導体層および電解質層とを備える色素増感太陽電池である。前記半導体層は、前記電解質層に向けた表面であって、ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む前記表面を有する酸性酸化物である半導体と、前記半導体の前記表面にて、酸素原子を介して前記酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、前記ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素と、を備える。
上記構成によれば、半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池が実現できる。
上記色素増感太陽電池において、前記酸性酸化物の前記非酸素原子は、遷移金属原子であってもよい。
上記色素増感太陽電池において、前記含窒素芳香族複素環式化合物基は、ピリジン基、ベンゾチエノピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、1,3,5−トリアジン基、イミダゾール基、ピラゾール基、1,8−ナフチリジン基、および、プリン基のいずれか1つであってもよい。
上記色素増感太陽電池において、前記2つの炭素原子に結合した前記酸素原子の中で、一方の前記酸素原子に対し他方の前記酸素原子は、前記芳香環におけるオルト位に位置してもよい。
上記構成によれば、第1色素が光を吸収すると、第1色素の有する電子の遷移過程には、当該電子の基底状態から励起されて半導体の伝導帯に直接注入される直接的な注入過程が含まれる。一方、第2色素が光を吸収すると、第2色素の有する電子の遷移過程には、当該電子の基底状態から当該電子の励起状態まで一度励起された後に半導体の伝導帯に注入される間接的な注入過程が含まれる。したがって、互いに異なる電子注入過程によって電子が半導体に注入される組み合わせを、色素の組み合わせとして採用できる。
上記色素増感太陽電池において、前記第1色素の吸収波長領域と前記第2色素の吸収波長領域とは、互いに異なってもよい。
上記構成によれば、第1色素と第2色素とを含む色素増感太陽電池の増感色素が、より広い波長領域の光を吸収することができるため、より広い波長領域の光が電力の生成に利用される結果、光吸収率が向上して発電の効率が高められる。
上記色素増感太陽電池において、前記酸性酸化物は酸化チタンであって、前記非酸素原子はチタン原子であってもよい。
上記色素増感太陽電池において、前記第1色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、前記半導体の伝導帯におけるエネルギー準位とほぼ等しく、前記第2色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、前記半導体の伝導帯におけるエネルギー準位よりも高くてもよい。
上記構成によれば、互いに異なる電子注入過程によって電子が半導体に注入される組み合わせを、色素の組み合わせとして採用できる。
上記課題を解決するための色素増感太陽電池用電極は、半導体層を備える色素増感太陽電池用電極であって、前記半導体層は、ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む表面を有する酸性酸化物である半導体と、前記半導体の前記表面にて、酸素原子を介して前記酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、前記ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素と、を備える。
上記構成によれば、半導体表面の互いに異なる結合サイトに結合する別々の色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池用電極が実現できる。
上記課題を解決するための色素増感太陽電池用電極の製造方法は、半導体層を備える色素増感太陽電池用電極の製造方法であって、第1色素と第2色素とを溶解した溶液に半導体を浸漬することにより前記第1色素と前記第2色素とを前記半導体の表面に吸着させて前記半導体層を形成する工程を含み、前記第1色素は、前記半導体の表面に含まれるブレンステッド酸サイトに脱水縮合する芳香族置換基としてヒドロキシル基を有し、前記第2色素は、前記半導体の表面に含まれるルイス酸サイトに配位結合する含窒素芳香族複素環式化合物基を有する。
上記方法によれば、半導体表面の互いに異なる結合サイトに結合する別々の色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池用電極が製造できる。また、第1色素と第2色素の双方が溶解した溶液を用いてこれらの色素を半導体の表面に吸着させるため、色素ごとの溶液を用いて第1色素と第2色素とを順に吸着させる製造方法と比較して、効率よく半導体層を形成することができる。
半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する色素の新規な組み合わせを用いる色素増感太陽電池が実現できる。
色素増感太陽電池の一実施形態について、色素増感太陽電池の断面構造を示す部分断面図である。 色素増感太陽電池の一実施形態について、半導体表面に対する第1色素および第2色素の吸着の形態を構造式によって示す図である。 色素増感太陽電池の一実施形態について、半導体表面に対する第1色素および第2色素の吸着の形態を構造式によって示す図である。 一実施形態の色素増感太陽電池における動作原理を説明するためのエネルギー準位図である。 実施例1、比較例1、および、比較例2のIR吸収を示すスペクトルである。 実施例2、比較例1、および、比較例3のIR吸収を示すスペクトルである。
図1〜図4を参照して、色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法の一実施形態について説明する。
[色素増感太陽電池の全体構成]
図1を参照して、色素増感太陽電池の全体構成について説明する。
図1に示されるように、色素増感太陽電池10は、第1基板11に支持された第1電極層12と、第2基板16に支持されて第1電極層12と対向する第2電極層15との一対の電極層の間に、複数種類の増感色素を有する半導体層13と、電解質層14とを備えている。半導体層13は第1電極層12と接し、電解質層14は第2電極層15と接し、第1電極層12と第2電極層15との間で半導体層13と電解質層14とが互いに接している。第1電極層12は、半導体層13から受け取った電子を外部回路に供給する電極層であり、色素増感太陽電池10から電子を取り出すための電極層である。第2電極層15は、外部回路から受け取った電子を電解質層14に受け渡す電極層である。第1基板11と第1電極層12と半導体層13とから、色素増感太陽電池用電極が構成される。
上記構成では、第1基板11と第1電極層12とが透明な材料から形成され、第1基板11に対して第1電極層12側とは反対側から光Lが入射されることが好ましい。なお、第2基板16と第2電極層15とが透明な材料から形成されて、第2基板16に対して第2電極層15側とは反対側から光が入射されてもよい。あるいは、第1基板11および第1電極層12と、第2基板16および第2電極層15とが透明な材料から形成されて、第1基板11と第2基板16の両方からこれらの間へ光が入射されてもよい。
[増感色素の構成]
半導体層13が有する増感色素の詳細な構成について説明する。半導体層13が有する増感色素には、第1色素と第2色素とが含まれる。
第1色素と第2色素とは、半導体層13を構成する半導体の互いに異なる結合サイトに結合することによって、電解質層14に向けた半導体表面に吸着している。こうした構成の実現のために、第1色素と第2色素とは、半導体表面に結合する官能基である固定基として、互いに異なる固定基を有している。第1色素は、固定基と、固定基以外の部分である基本構造とから構成され、第1色素の基本構造は、固定基を通じて半導体に光感応性を付与する。第2色素は、固定基と、固定基以外の部分である基本構造とから構成され、第2色素の基本構造もまた、固定基を通じて半導体に光感応性を付与する。
詳細には、第1色素は、固定基として芳香族置換基であるヒドロキシル基を有する。ヒドロキシル基は、半導体層13における半導体表面のブレンステッド酸サイトと脱水縮合する。なかでも、第1色素は、固定基としてカテコール基を有することが好ましい。
励起状態における第1色素での電子のエネルギー準位は、半導体の伝導帯とほぼ等しいことが好ましい。こうした構成においては、例えばカテコール基とブレンステッド酸サイトとの反応によって半導体表面に吸着した第1色素が光を吸収すると、第1色素の有する電子は、基底状態(HOMO)から励起されて半導体の伝導帯に直接注入される。このことは、上記非特許文献5に記載されている。
第2色素は、固定基として、含窒素芳香族複素環式化合物基を有する。含窒素芳香族複素環式化合物基は、窒素を含む2種類以上の元素により構成された芳香族性を有する環式化合物基である。含窒素芳香族複素環式化合物基は、環内にイミン窒素(−C=N−)を有しているため、電子受容性を有する。含窒素芳香族複素環式化合物基は、半導体層13における半導体表面のルイス酸サイトに配位結合によって結合する。
励起状態における第2色素での電子のエネルギー準位は、半導体の伝導帯よりも高いことが好ましく、こうした構成においては、第2色素が光を吸収すると、第2色素の有する電子は、基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起された後、半導体の伝導帯に注入される。
第1色素が吸収する光の波長領域と第2色素が吸収する光の波長領域とは、互いに異なることが好ましい。こうした構成によれば、色素増感太陽電池10は、より広い波長領域の光を吸収して電力の生成に利用することができるため、より効率の良い発電が可能である。
以下、第1色素として用いられる具体的な化合物、および、第2色素として用いられる具体的な化合物について説明する。なお、半導体層13が有する増感色素には、第1色素が2種類以上含まれてもよいし、第2色素が2種類以上含まれてもよい。
第1色素は、電子受容性の基としてカテコール基を有することが好ましい。下記化学式(4)として、カテコール基の構造式を示す。
また、第1色素は、電子供与性の基として、ピロール基、イソチアナフテン基、ジフェニルアミン基、および、ジ(4−アルコキシフェニル)アミン基のいずれかを有することが好ましい。下記化学式(5)は、ピロール基の構造式を示し、下記化学式(6)は、イソチアナフテン基の構造式を示し、下記化学式(7)は、ジフェニルアミン基の構造式を示し、下記化学式(8)は、ジ(4−アルコキシフェニル)アミン基の構造式を示す。構造式中におけるRは水素またはC2n+1(nは1以上16以下の整数を示す)を示す。
第1色素の好適な例として、例えば、下記化学式(9)として示す構造式の化合物(通称:YM−2)が挙げられる。
第2色素は、電子受容性の基として含窒素芳香族複素環式化合物基を有し、具体的には、ピリジン基、ベンゾチエノピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、1,3,5−トリアジン基、イミダゾール基、ピラゾール基、1,8−ナフチリジン基、および、プリン基のいずれかを有する芳香族多環共役系分子であることが好ましい。また、第2色素は、電子供与性の基として、ピロール基、イソチアナフテン基、ジフェニルアミン基、および、ジ(4−アルコキシフェニル)アミン基のいずれかを有することが好ましい。こうした構成を有する第2色素は、可視光領域において強い吸収を示すため、色素増感太陽電池における電池性能が高められる。
第2色素の好適な例として、例えば、下記化学式(10)として示す構造式の化合物(通称:NI−6)や、下記化学式(11)として示す構造式の化合物(通称:YNI−2)が挙げられる。
第1色素および第2色素の各々は、電子受容性の基と電子供与性の基との間に、連結基として、N−アルキルカルバゾール基、9,9−ジアルキルフルオレン基、チオフェン基、オリゴチオフェン(ポリチオフェン)基等の共役系の連結基を有していてもよい。下記化学式(12)は、N−アルキルカルバゾール基の構造式を示し、下記化学式(13)は、9,9−ジアルキルフルオレン基の構造式を示し、下記化学式(14)は、チオフェン基の構造式を示し、下記化学式(15)は、オリゴチオフェン(ポリチオフェン)基の構造式を示す。構造式中におけるRは水素またはC2n+1(nは1以上16以下の整数を示す)を示す。共役系を有する連結基が導入されることによって、これらの色素が吸収可能な光の波長領域を調整することができる。
第1色素は、半導体表面のブレンステッド酸サイトに選択的に吸着し、第2色素は、半導体表面のルイス酸サイトに選択的に吸着する。
ここで、「対象色素が対象サイトに選択的に吸着する」とは、対象色素以外の色素を含まない対象色素の飽和溶液に、25℃で1時間、色素が吸着されていない半導体層を浸漬したときに、対象色素が対象サイトにのみ吸着することを示す。
色素がいずれの結合サイトに吸着しているかは、ATR(減衰全反射)法を用いたIR(赤外分光法)測定によって確認することができる。具体的には、半導体に吸着していない色素のIRスペクトルと、半導体に吸着している色素のIRスペクトルとを比較し、色素の固定基内のC=CまたはC=Nに起因するピーク、すなわち、半導体に吸着していない色素のIRスペクトルにて1590cm−1付近に観察されるピークの変動に基づいて判断する。
例えば、ブレンステッド酸サイトに吸着するYM−2の半導体への吸着後のIRスペクトルでは、上記ピークは、4cm−1〜10cm−1程度、波長が大きくなる方へシフトする。このことは、上記非特許文献5に記載されている。具体的には、半導体への吸着後のYM−2のIRスペクトルでは、上記ピークは、1600cm−1付近に観察される。一方、ルイス酸サイトに吸着するNI−6やYNI−2の半導体への吸着後のIRスペクトルでは、上記ピークは15cm−1〜20cm−1程度、波長が大きくなる方へシフトする。このことは、例えば、上記非特許文献3,6,7に記載されている。具体的には、半導体への吸着後のNI−6やYNI−2のIRスペクトルでは、上記ピークは1615cm−1〜1625cm−1付近に観察される。
図2および図3を参照して、第1色素および第2色素の半導体表面への吸着の形態について説明する。
図2は、第1色素としてYM−2、第2色素としてNI−6、半導体として酸化チタンを用いた場合における、第1色素および第2色素が吸着した半導体表面を構造式を用いて示す図である。
第1色素であるYM−2は固定基としてカテコール基を有し、カテコール基が有する2つのヒドロキシル基の各々は、半導体表面のブレンステッド酸サイトと脱水縮合する。その結果、図2に示すように、半導体層13において、YM−2は、酸性酸化物である半導体表面における非酸素原子、すなわち、チタン原子と、酸素原子を介して結合した芳香環を有する。詳細には、YM−2の有する芳香環に含まれる2つの炭素原子が、炭素原子ごとに、酸素原子を介してチタン原子と結合している。そして、この2つの炭素原子に結合した酸素原子の中で、一方の酸素原子に対し他方の酸素原子は芳香環におけるオルト位に位置する。
第2色素であるNI−6は、固定基としてピリジン基を有し、ピリジン基は、半導体表面のルイス酸サイトに配位結合によって結合する。すなわち、図2に示されるように、半導体層13において、NI−6は、ピリジン基に含まれる窒素原子が有する非共有電子対を供出してチタン原子と配位結合している。
図3は、第1色素としてYM−2、第2色素としてYNI−2、半導体として酸化チタンを用いた場合における、第1色素および第2色素が吸着した半導体表面を構造式を用いて示す図である。
図3に示すように、第1色素であるYM−2は、上述の場合と同様に、半導体層13において、酸素原子を介してチタン原子と結合した芳香環を有し、この芳香環におけるオルト位で、2つの炭素原子が、炭素原子ごとに、チタン原子と酸素原子を介して結合している。
第2色素であるYNI−2は、固定基として2つのピリジン基を有し、半導体層13において、YNI−2の有する2つのピリジン基の各々は、チタン原子と配位結合している。
このように、第1色素がカテコール基を有する構成では、カテコール基が半導体表面のブレンステッド酸サイトと反応することによって、半導体層13においては、第1色素の有する芳香環におけるオルト位で、2つの炭素原子がチタン原子と酸素原子を介して結合している。こうした構造では、これら結合に関与する原子団が混成軌道を形成することに起因して、第1色素が光を吸収すると、色素中の電子は、基底状態(HOMO)から励起されて半導体の伝導帯に直接注入される。
一方、第2色素が光を吸収すると、色素中の電子は、基底状態(HOMO)から励起されて、励起状態(LUMO)を経由して半導体の伝導帯に注入される。
[色素増感太陽電池の動作原理]
図4を参照して、増感色素から半導体層13への電子注入過程を中心に、色素増感太陽電池10の動作原理を説明する。なお、図4は、第1色素の固定基がカテコール基であり、第1電極層12としてフッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO(FTO)を用い、半導体層13の材料として酸化チタン(TiO)を用い、電解質層14に含まれるレドックス対としてI/I の酸化還元種を用いることを想定したエネルギー準位図である。図4における破線の矢印は、電子の遷移過程を示す。
第1基板11、第1電極層12、および、半導体層13を透過してきた光子を増感色素が吸収すると、増感色素中の電子が励起され、励起された電子は、半導体層13を構成する半導体の伝導帯に注入される。
ここで、第1色素においては、励起状態の第1色素における電子のエネルギー準位(LUMOのエネルギー準位)は、半導体における伝導帯のエネルギー準位とほぼ同等であり、色素中の電子は、基底状態(HOMO)から励起されて半導体の伝導帯に直接注入される。
一方、第2色素においては、励起状態の第2色素における電子のエネルギー準位(LUMOのエネルギー準位)は、半導体における伝導帯のエネルギー準位よりも高く、色素中の電子は、基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起された後、半導体の伝導帯に注入される。
このように、第1色素と第2色素とからは、互いに異なる電子注入過程を経て、半導体層13を構成する半導体に電子が注入される。半導体に注入された電子は、半導体層13を通って第1電極層12に到達する。
一方、電子を失った増感色素は、電解質層14中の還元剤から電子を受け取り、電解質層14中に酸化剤を生成させる。その結果生じた酸化剤は、拡散によって第2電極層15に到達し、第2電極層15から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。第1電極層12から外部回路へ供給された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、第2電極層15に送られる。このようにして、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
こうした構成において、第1色素と第2色素とは、半導体表面の互いに異なる結合サイトに結合するため、これらの色素が単独で用いられる場合と比較して、色素ごとの吸着量が低下することを抑えつつ、半導体表面への色素の総吸着量を向上させることができる。したがって、色素ごとの量子収率の低下を抑えながら、光電変換効率を向上させることが可能である。また、半導体表面にて、色素に覆われる領域の比率が高められるため、半導体層13から電解質層14への逆電子移動が抑えられる。
ここで、第1色素と第2色素とから半導体への電子の注入は、互いに異なる過程を経る。従来は、複数種類の色素が用いられる場合であっても、これら複数種類の色素から半導体へは、同じ電子注入過程によって電子が注入されていた。具体的には、従来は、第2色素のように、電子が、一旦、励起状態まで励起された後に、半導体の伝導帯に注入される電子注入過程、すなわち間接型の電子注入過程に従う色素が用いられていた。
これに対し、本実施形態では、増感色素として用いられる複数種類の色素に、電子が半導体の伝導帯に直接注入される電子注入過程、すなわち直接型の電子注入過程に従う色素が含まれる。
直接型の電子注入過程に従う色素が用いられることによって、間接型の電子注入過程に従う色素のみが用いられる構成と比較して、色素増感太陽電池10が光を受けたときに、光子の吸収から電子注入に至る応答速度が高められる。その結果、弱い光であっても、効率の良い発電が可能となる。
なお、電子がエネルギーを放出して半導体の伝導帯から第1色素の基底状態へ移動することも起こり得るが、こうした電子移動を抑えて電子注入の効率を高めるためには、電解質層14を構成する電解質は固体であることが好ましい。
また、色素が吸収できる光の波長領域は、電子を基底状態から励起状態に遷移させるために必要なエネルギーである最小励起エネルギーによって決まる。直接型の電子注入過程に従う色素は、間接型の電子注入過程に従う色素と比較して、電子の励起状態のエネルギー準位が低いため、最小励起エネルギーを小さくすることができる。したがって、直接型の電子注入過程に従う色素は、間接型の電子注入過程に従う色素と比較して、長波長領域の光、具体的には900nm以上の波長を有する光を吸収し得る。それゆえ、こうした長波長領域の光を吸収する色素を第1色素として用いることによって、色素増感太陽電池10において増感色素が吸収できる光の波長領域を拡大することができる。その結果、光吸収率が高められるため、発電の効率が向上する。
さらに、増感色素として、直接型の電子注入過程に従う第1色素と間接型の電子注入過程に従う第2色素とが組み合わされて用いられることによって、以下の利点が生じ得る。
すなわち、上述のように、直接型の電子注入過程に従う色素における電子の励起状態のエネルギー準位と、間接型の電子注入過程に従う色素における電子の励起状態のエネルギー準位とには差があるため、いずれかの電子注入過程に従う色素のみを用いる構成と比較して、これらの色素間で最小励起エネルギーの大きさを異ならせることが容易である。したがって、増感色素として用いる複数種類の色素の最小励起エネルギーを多様な値とすることが可能であり、その結果、最小励起エネルギーに起因する色素の特性が多様化する。
具体的には、増感色素として、吸収波長領域の大きく異なる複数種類の色素を用いることが可能となるため、色素増感太陽電池10において増感色素が吸収できる光の波長領域の調整が容易である。また、増感色素として用いられる色素の色が多様化するため、外観上、色彩豊かな色素増感太陽電池10の製造が可能である。したがって、装飾性の高い色素増感太陽電池10が実現できる。
また、複数種類の色素から半導体へ同じ電子注入過程によって電子が注入される構成と比較して、互いに異なる種類の色素間での電子移動が生じ難いため、電子注入の効率が高められる。
[色素増感太陽電池の詳細構成]
色素増感太陽電池10における上述の増感色素以外の構成、および、色素増感太陽電池10の製造方法について、詳しく説明する。なお、以下では、第1基板11側から光が入射されることを前提として、第1基板11と第1電極層12とが透明な材料から形成される構成について説明するが、上述のように、光の入射方向と基板および電極の構成とはこれに限られない。
第1基板11は、光が透過しやすい材料から形成され、光が透過しやすい形状を有していれば、その構成は特に限定されず、第1基板11の材料としては種々の基板材料を用いることができるが、特に可視光の透過率が高い材料を用いることが好ましい。また、外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、耐溶剤性や耐候性に優れている材料がさらに好ましい。具体的には、第1基板11の材料としては、石英やガラス等の透明無機基板、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、または、ポリオレフィン類等の透明プラスチック基板が挙げられる。第1基板11の厚さは特に制限されず、光の透過率や、色素増感太陽電池10の内外を遮断する性能を考慮して、適宜選択されればよい。
第1電極層12の形成材料は、公知の透明導電性材料が使用可能であり、具体的には、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO(FTO)、酸化スズ(IV)SnO、酸化亜鉛(II)ZnO、または、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)等が挙げられる。なお、第1電極層12の形成材料は上記材料に限定されず、2種類以上の材料が組み合わされて用いられてもよい。第1電極層12は、第1基板11の上面に、スパッタリング法等によって形成される。
第1電極層12の表面抵抗率は小さいほど好ましく、具体的には、表面抵抗率は、500Ω/cm以下であることが好ましく、100Ω/cmであることがさらに好ましい。
なお、第1電極層12は、電子取り出し路の抵抗を低減し、集電効率を向上させることを目的として、導電性の高い金属配線のパターニングによって形成されてもよい。金属配線の材料には特に制限はないが、耐食性や耐酸化性が高く、金属材料自体の漏れ電流の低い材料が用いられることが好ましい。また、耐食性が低い材料であっても、別途保護層を設けることによって、金属配線の材料として使用可能である。また、第1基板11からの暗電流の低減を目的として、第1電極層12を構成する金属配線に各種の酸化物薄膜のバリア層を設けてもよい。
半導体層13は、半導体からなるベース層に増感色素が吸着された層である。ベース層としては、半導体微粒子を焼結させた多孔質膜が用いられることが好ましい。ベース層は、少なくとも電解質層14に向けられる表面が酸性酸化物から構成されていればよい。ベース層を構成する材料である半導体材料としては、シリコンに代表される単体半導体材料の他に、化合物半導体材料やペロブスカイト構造を有する材料等を用いることができる。ベース層が単体半導体材料から形成される場合であっても、その表面には、少なからず酸化層が形成されているため、ベース層の表面は酸性酸化物から構成される。
ベース層を構成する半導体材料は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体材料であることが好ましい。具体的には、半導体材料としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、または、酸化スズ(SnO)が用いられることが好ましく、特に、アナターゼ型の酸化チタンが用いられることが好ましい。
なお、半導体材料は上記の材料に限定されず、この他にも、単独の半導体材料、もしくは、2種類以上を混合または複合化した半導体材料を用いることができる。また、半導体微粒子は粒状、チューブ状、棒状など必要に応じて様々な形態をとることが可能である。
ベース層の製膜方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮すると、湿式による製膜方法が好ましい。具体的には、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水等の溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を第1基板11に積層された第1電極層12の上面に塗布または印刷する方法によってベース層が形成されることが好ましい。塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法が用いられればよい。例えば、塗布方法としては、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、または、グラビアコート法等を用いることが可能であり、湿式印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、または、スクリーン印刷法等を用いることができる。
分散液の調整に際して、半導体材料としてアナターゼ型の酸化チタンを用いる場合、酸化チタンとしては、粉末状、ゾル状、または、スラリー状の市販品を用いてもよいし、あるいは、酸化チタンアルコキシドを加水分解する等の公知の方法によって、所定の粒径の半導体微粒子を生成してもよい。市販の粉末を使用する際には、粒子の二次凝集を解消することが好ましく、分散液の調製時に、乳鉢やボールミル等を使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集することを抑えるために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、または、キレート剤等を分散液に添加してもよい。また、分散液の粘性を高めるために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいは、セルロース系の増粘剤等の各種増粘剤を分散液に添加してもよい。
半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、粒径は、一次粒子の平均粒径で1nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることが特に好ましい。また、ベース層に半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合することによって、入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均粒径は20nm以上500nm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像にて粒径を測定することによって算出される。
ベース層は、多くの増感色素を吸着することができるように、多孔質膜内部の空孔に面する微粒子表面も含めた表面積である実表面積が大きいほど好ましい。ベース層を第1電極層12の上に形成した状態での実表面積は、ベース層の外側表面の面積である投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この比には特に上限はないが、上述の材料および製法によって形成されたベース層では、投影面積に対して1000倍程度の実表面積を確保することが可能である。
一般に、ベース層の厚みが増して、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持できる色素量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、ベース層の厚みが増加すると、増感色素から半導体層13内部に移行した電子が第1電極層12に達するまでに拡散する距離が増加するため、半導体層13内部での電荷再結合による電子のロスも大きくなる。したがって、ベース層の厚さは、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。なお、増感色素の吸着による半導体層13の厚さの増加は微小であるため、ベース層の厚さは半導体層13の厚さとみなすことができる。
ベース層は、半導体微粒子同士を電気的に接続し、半導体層13の機械的強度を向上させ、半導体層13と第1電極層12との密着性を向上させるために、半導体微粒子を含む分散液が第1電極層12の上面に塗布または印刷された後に焼成されて形成されることが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、第1電極層12の電気抵抗、すなわち、表面抵抗率の増加と、第1電極層12の溶融の虞とを低減するために、焼成温度は高すぎないことが好ましい。具体的には、焼成温度は、40℃以上700℃以下であることが好ましく、40℃以上650℃以下であることがより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、10分〜10時間程度であることが好ましい。
焼成後、ベース層の実表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば、四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理を行ってもよい。
第1基板11としてプラスチック基板が用いられる場合には、結着剤を含むペースト状分散液を用いて第1電極層12の上面にベース層を成膜した後、加圧プレスによってベース層を第1電極層12に圧着してもよい。
増感色素をベース層に吸着させる方法には、特に制限はないが、増感色素を溶媒に溶解させ、この色素溶液にベース層を浸漬するか、もしくは、ベース層に色素溶液を塗布して、ベース層に増感色素を吸着させることが好ましい。溶媒としては、例えば、アルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、THF(テトラヒドロフラン)、または、水等が挙げられる。
また、色素同士の会合を減少させるために、上記色素溶液に共吸着剤が添加されてもよい。共吸着剤としては、例えば、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸塩、または、1−デクリルホスホン酸等を用いることが可能であり、ケノデオキシコール酸を用いることが好ましい。色素溶液中における共吸着剤の濃度は、一般的には10μM(M:mol/L)以上0.5M以下とされるが、0.3μM以上0.2M以下であることが好ましい。
第1色素と第2色素との二種類の色素をベース層に吸着させる際には、第1色素を溶解させた色素溶液と第2色素を溶解させた色素溶液とを用いて、第1色素と第2色素とを一方ずつベース層に吸着させてもよいし、第1色素と第2色素との双方を溶解させた色素溶液を用いて、第1色素と第2色素とを同時にベース層に吸着させてもよい。
複数種類の色素をベース層に吸着させることは従来から行われているが、その際、以下のような問題があった。すなわち、二種類の色素の吸着速度の差が大きい場合、二種類の色素の双方が溶解した色素溶液を用いて色素を吸着させると、吸着速度の速い方の色素が先に半導体表面に吸着する、つまり、結合サイトに結合する。その結果、先に半導体表面に吸着した色素が、他方の色素が半導体表面に吸着する際の物理的障害となること、いわゆる立体障害が生じる可能性が高くなる。結果として、二種類の色素が互いに異なる結合サイトに結合することによって色素の総吸着量は増加したとしても、各色素の吸着量は、各色素が単独で用いられる場合よりも減少する可能性がある。したがって、こうした場合には、色素ごとの色素溶液を用いて二種類の色素を一方ずつ吸着させることが好ましい。また、二種類の色素の固定基同士が反応する可能性がある場合にも、二種類の色素を一方ずつ吸着させることが好ましい。
これに対し、本実施形態において、第1色素としてYM−2を用い、第2色素としてNI−6またはYNI−2を用いる場合、第1色素の分子量と第2色素の分子量との差は小さく、第1色素の吸着速度と第2色素の吸着速度との差は小さくなる。したがって、上述のような立体障害は起きにくく、また第1色素と第2色素とで固定基同士の反応は生じ難いため、二種類の色素の双方が溶解した色素溶液を用いて色素を吸着させても、各色素が単独で用いられる場合よりも各色素の吸着量が減少することは抑えられる。したがって、色素ごとに異なる結合サイトを利用しながらも、1つの色素溶液によってこれらの色素をまとめてベース層に吸着させることが可能であるため、効率よく半導体層13を形成することができる。
本発明者らは、第1色素としてYM−2を用い、第2色素としてNI−6またはYNI−2を用いた場合、第1色素と第2色素との二種類の色素の双方が溶解した色素溶液を用いて色素を吸着させても、各色素について、各色素が単独で用いられる場合と概ね同等の吸着量が得られることを初めて確認した。
電解質層14としては、電解液、または、ゲル状あるいは固体状の電解質を用いることができる。電解液としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられ、具体的には、ヨウ素(I)と金属または有機物のヨウ化物塩との組み合わせを含む溶液や、臭素(Br)と金属または有機物の臭化物塩との組み合わせを含む溶液が用いられる。金属塩を構成するカチオンは、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、セシウムイオン(Cs)、マグネシウムイオン(Mg2+)、または、カルシウムイオン(Ca2+)等であり、有機物塩を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、または、イミダゾリウムイオン類等の第4級アンモニウムイオンが好適であるが、カチオンの種類はこれらに限定されず、この他にも、単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
上記の物質以外に、電解質として、フェロシアン酸塩とフェリシアン酸塩との組み合わせや、フェロセンとフェリシニウムイオンとの組み合わせ等の金属錯体、コバルト錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオールとアルキルジスルフィドとの組み合わせ等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノンとキノンとの組み合わせ等を用いることができる。
電解質としては、特に、ヨウ素(I)と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、または、イミダゾリウムヨーダイド等の第4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が用いられることが好ましい。
電解質塩の濃度は、溶媒に対して、0.05M以上10M以下であることが好ましく、0.2M以上3M以下であることがさらに好ましい。ヨウ素(I)または臭素(Br)の濃度は、溶媒に対して、0.0005M以上1M以下であることが好ましく、0.001M以上0.5M以下であることがさらに好ましい。
電解液を構成する溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、または、炭化水素等が挙げられるが、溶媒はこれらに限定されない。溶媒としては、1種類の溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。また、溶媒として、テトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系第4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
また、色素増感太陽電池10の開放電圧や短絡電流を向上させる目的で、電解質層14には、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類等の各種添加剤が添加されてもよい。
色素増感太陽電池10からの電解液の漏液や、電解液を構成する溶媒の揮発を減少させる目的で、電解質構成物にゲル化剤、ポリマー、または、架橋モノマー等を溶解または分散させて混合し、ゲル状電解質として用いてもよい。ゲル化材料と電解質構成物の比率は、電解質構成物が多いほど、イオン導電率は高くなるが、機械的強度は低下する。逆に、電解質構成物が少なすぎると、機械的強度は大きくなるが、イオン導電率は低下する。このため、電解質構成物はゲル状電解質の50wt%以上99wt%以下であることが好ましく、80wt%以上97wt%以下であることがより好ましい。
また、電解質と可塑剤とをポリマーと混合した後、可塑剤を揮発させて除去することによって、電解質層14を固体とし、全固体型の色素増感太陽電池10を実現することも可能である。
第2電極層15の材料としては、導電性材料であれば任意の材料を用いることができる。また、絶縁性材料が有する面のうち電解質層14に接する面に導電層が形成されている構成であれば、こうした材料を第2電極層15として用いることもできる。ただし、第2電極層15の材料としては、電気化学的に安定である材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、および、導電性ポリマー等を用いることが好ましい。
第2電極層15での還元反応に対する触媒作用を向上させるために、第2電極層15における電解質層14に接している面には、微細構造が形成され、第2電極層15の実表面積が増大するように構成されていることが好ましい。例えば、第2電極層15は、白金であれば白金黒の状態に、カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理等によって形成することが可能であり、また、多孔質カーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成等の方法によって形成することができる。
第2基板16は、光を透過させなくてもよいため、材料として、不透明なガラス板、プラスチック板、セラミック板、または、金属板を使用してもよい。
なお、透明な基板を第2基板16として用い、第2基板16の上面に第2電極層15として透明導電層を形成し、その上に酸化還元触媒作用の高い白金などの金属による配線を形成するか、あるいは、表面を塩化白金酸処理することによって、第2基板16および第2電極層15を透明な電極として用いることもできる。
上述の各部材を組み付けて色素増感太陽電池10を形成する方法は特に限定されない。電解質層14が液状である場合、または、液状の電解質を導入し、色素増感太陽電池10の内部で電解質層14をゲル化させる場合には、電解質層14以外の部材が組み付けられた状態でその周囲が封止され、設けられた注入口から電解液が注入される方法によって、色素増感太陽電池10が形成されることが好ましい。
例えば、第1基板11と第1電極層12と半導体層13とから構成される電極と、第2基板16と第2電極層15とから構成される電極とを、半導体層13と第2電極層15とが互いに接しないように適当な間隙をあけて対向させ、半導体層13の外側の領域で第1基板11と第2基板16とを貼り合わせて封止する。半導体層13と第2電極層15との間の間隙の大きさに特に制限はないが、各部材の積層方向における上記間隙の大きさは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることが好ましい。この間隙の大きさが大きすぎると、導電率が低下し、生成される電流が減少する。
封止材の材料は特に制限されないが、耐光性、絶縁性、防湿性を備えた材料が好ましく、種々の溶接法や接着法によって封止が行われればよい。封止材の材料としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)、アイオノマー樹脂、セラミック、または、各種熱融着樹脂等を用いることができる。また、注入口を設ける位置は、半導体層13上と半導体層13に対向する第2電極層15上でなければ、特に限定されない。
電解液の注入方法に特に制限はないが、注入口に電解液を数滴垂らし、毛細管現象によって電解液を注入する方法が簡便である。また、必要に応じて、減圧もしくは加熱下で注入操作を行ってもよい。完全に電解液が注入された後、注入口に残った電解液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であれば、ガラス板やプラスチック基板を封止材で貼り付けることにより封止することもできる。
また、電解質層14が、ポリマーなどを用いてゲル化された電解質や、全固体型の電解質である場合、電解質と可塑剤とを含むポリマー溶液を、半導体層13の上面にキャスト法等によって塗布する。その後、可塑剤を揮発させて完全に除去した後、上述の方法と同様に、第2基板16および第2電極と15と貼り合わせ、封止材によって封止する。この封止は、真空シーラーなどを用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは、減圧下で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質層14の電解液が半導体層13に十分に浸透するように、必要に応じて加熱や加圧の操作を行ってもよい。
なお、色素増感太陽電池10の外形は、その用途に応じて様々な形状に作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。
[実施例]
上述した色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、色素増感太陽電池用電極の製造方法について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1)
酸化チタン(TiO)のペースト(PST−18NR:日揮触媒化成社製)を、ドクターブレード法を用いて、第1電極層の積層された第1基板であるFTOガラス上に塗布し、450℃で50分焼結した。これにより、膜厚9μm、面積5mm×5mmの酸化チタンからなるベース層がFTOガラス上に形成された電極部材を得た。
次に、第1色素としてのYM−2および第2色素としてのNI−6を、テトラヒドロフラン(THF)に対して、各0.1mMずつ溶解させた色素溶液を用意した。上述の電極部材をこの色素溶液に15時間浸漬して第1色素および第2色素をベース層に吸着させて半導体層を形成し、実施例1の色素増感太陽電池用電極を得た。
電解質層を構成する電解液としては、ヨウ素を0.05M、ヨウ化リチウムを0.1M、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを0.6M、をアセトニトリルに溶解した溶液を用いた。
第2電極層の積層された第2基板である白金(Pt)をコートしたガラスと上記色素増感太陽電池用電極との間に上述の電解液を挟みこんで封止し、実施例1の色素増感太陽電池を作製した。
(実施例2)
色素溶液として、第1色素としてのYM−2および第2色素としてのYNI−2を、THFに対して、各0.1mMずつ溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって実施例2の色素増感太陽電池を作製した。
(比較例1)
色素溶液として、0.1mMのYM−2のみを溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって比較例1の色素増感太陽電池を作製した。
(比較例2)
色素溶液として、0.1mMのNI−6のみを溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって比較例2の色素増感太陽電池を作製した。
(比較例3)
色素溶液として、0.1mMのYNI−2のみを溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって比較例3の色素増感太陽電池を作製した。
(評価方法)
各実施例および各比較例の色素増感太陽電池の備える半導体層について、色素が吸着している結合サイトを、ATR法を用いたIR測定によって確認した。IR測定は、各実施例および各比較例の色素増感太陽電池から半導体層を剥離し、粉末状にした試料を用いて行った。
(評価結果)
図5に、実施例1、比較例1、および、比較例2のIR測定結果を示し、図6に、実施例2、比較例1、および、比較例3のIR測定結果を示す。
図5および図6が示すように、IRスペクトルにて観察されるピークの位置から、実施例1および実施例2のいずれについても、ブレンステッド酸サイトおよびルイス酸サイトの双方に色素が吸着していることが示された。すなわち、実施例1および実施例2の色素の組み合わせは、半導体表面の互いに異なる結合サイトに結合する色素の組み合わせであることが示された。
以上実施例を示して説明したように、上記実施形態の色素増感太陽電池、色素増感太陽電池用電極、および、色素増感太陽電池用電極の製造方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)半導体層13は、電解質層14に向けた表面であって、ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む表面を有する酸性酸化物である半導体と、酸素原子を介して酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素とを備える。
こうした半導体層13は、第1色素と第2色素とを溶解した溶液に半導体を浸漬することにより第1色素と第2色素とを半導体表面に吸着させることによって形成される。
これによれば、半導体表面の互いに異なる結合サイトに別々に結合する複数の色素として、新規な組み合わせの色素を用いる色素増感太陽電池10が実現できる。また、上記製造方法では、第1色素と第2色素の双方が溶解した溶液を用いてこれらの色素を半導体表面に吸着させるため、色素ごとの溶液を用いて第1色素と第2色素とを順に吸着させる製造方法と比較して、効率よく半導体層13を形成することができる。
(2)第2色素の有する含窒素芳香族複素環式化合物基が、ピリジン基、ベンゾチエノピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、1,3,5−トリアジン基、イミダゾール基、ピラゾール基、1,8−ナフチリジン基、および、プリン基のいずれか1つである構成では、色素増感太陽電池の増感色素としてより好ましい第2色素が実現できる。
(3)第1色素の有する芳香環に含まれる2つの炭素原子が、炭素原子ごとに、上記非酸素原子と酸素原子を介して結合している構成では、色素増感太陽電池の増感色素としてより好ましい第1色素が実現できる。
さらに、第1色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、半導体の伝導帯におけるエネルギー準位とほぼ等しく、上記2つの炭素原子に結合する酸素原子が、芳香環におけるオルト位に位置する構成では、第1色素が光を吸収すると、第1色素の有する電子は当該電子の基底状態から励起されて半導体の伝導帯に直接注入される。一方、第2色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、半導体の伝導帯におけるエネルギー準位よりも高く、第2色素が光を吸収すると、第2色素の有する電子は当該電子の基底状態から当該電子の励起状態まで一度励起された後に半導体の伝導帯に注入される。したがって、互いに異なる電子注入過程によって電子が半導体に注入される色素が組み合わされて用いられる色素増感太陽電池が実現できる。
(4)上記酸性酸化物の非酸素原子が遷移金属である構成では、色素増感太陽電池としてより好ましい半導体層13が実現される。さらに、酸性酸化物が酸化チタンであって、非酸素原子がチタン原子である構成では、色素増感太陽電池としてより好ましい半導体層13が実現される。
(5)第1色素の吸収波長領域と第2色素の吸収波長領域とが互いに異なる構成では、第1色素と第2色素とを含む色素増感太陽電池の増感色素が、より広い波長領域の光を吸収することができるため、より広い波長領域の光が電力の生成に利用される。その結果、光吸収率が向上して発電の効率が高められる。
10…色素増感太陽電池、11…第1基板、12…第1電極、13…半導体層、14…電解質層、15…第2電極、16…第2基板。

Claims (10)

  1. 一対の電極層と、前記一対の電極層に挟まれた半導体層および電解質層とを備える色素増感太陽電池であって、
    前記半導体層は、
    前記電解質層に向けた表面であって、ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む前記表面を有する酸性酸化物である半導体と、
    前記半導体の前記表面にて、酸素原子を介して前記酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、
    前記ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素と、を備える
    色素増感太陽電池。
  2. 前記酸性酸化物の前記非酸素原子は、遷移金属原子である
    請求項1に記載の色素増感太陽電池。
  3. 前記含窒素芳香族複素環式化合物基は、ピリジン基、ベンゾチエノピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、1,3,5−トリアジン基、イミダゾール基、ピラゾール基、1,8−ナフチリジン基、および、プリン基のいずれか1つである
    請求項1または2に記載の色素増感太陽電池。
  4. 前記芳香環に含まれる2つの炭素原子が、前記炭素原子ごとに、前記酸素原子を介して前記非酸素原子と結合している
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  5. 前記2つの炭素原子に結合した前記酸素原子の中で、一方の前記酸素原子に対し他方の前記酸素原子は、前記芳香環におけるオルト位に位置する
    請求項4に記載の色素増感太陽電池。
  6. 前記第1色素の吸収波長領域と前記第2色素の吸収波長領域とは、互いに異なる
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  7. 前記酸性酸化物は酸化チタンであって、前記非酸素原子はチタン原子である
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  8. 前記第1色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、前記半導体の伝導帯におけるエネルギー準位とほぼ等しく、
    前記第2色素の有する電子の励起状態におけるエネルギー準位は、前記半導体の伝導帯におけるエネルギー準位よりも高い、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  9. 半導体層を備える色素増感太陽電池用電極であって、
    前記半導体層は、
    ブレンステッド酸サイトとルイス酸サイトとを含む表面を有する酸性酸化物である半導体と、
    前記半導体の前記表面にて、酸素原子を介して前記酸性酸化物の非酸素原子と結合した芳香環を有する第1色素と、
    前記ルイス酸サイトに配位結合した含窒素芳香族複素環式化合物基を有する第2色素と、を備える
    色素増感太陽電池用電極。
  10. 半導体層を備える色素増感太陽電池用電極の製造方法であって、
    第1色素と第2色素とを溶解した溶液に半導体を浸漬することにより前記第1色素と前記第2色素とを前記半導体の表面に吸着させて前記半導体層を形成する工程を含み、
    前記第1色素は、前記半導体の表面に含まれるブレンステッド酸サイトに脱水縮合する芳香族置換基としてヒドロキシル基を有し、
    前記第2色素は、前記半導体の表面に含まれるルイス酸サイトに配位結合する含窒素芳香族複素環式化合物基を有する
    色素増感太陽電池用電極の製造方法。
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