JP2017043789A - Cu−Ni−Co−Si系高強度銅合金薄板材およびその製造方法並びに導電ばね部材 - Google Patents

Cu−Ni−Co−Si系高強度銅合金薄板材およびその製造方法並びに導電ばね部材 Download PDF

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Abstract

【課題】板厚が非常に薄いCu−Ni−Co−Si系銅合金の板材において、0.2%耐力が高く、かつリードフレーム等の精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる、形状の良好なものを提供する。【解決手段】質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、板厚が15μm以上100μm未満、圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上、かつ幅反りが極めて小さい銅合金薄板材。【選択図】なし

Description

本発明は、板厚が100μmより薄く、平坦性の高い板形状を有する、電気・電子部品の導電ばね部材に適したCu−Ni−Co−Si系高強度銅合金薄板材、およびその製造方法に関する。また、その銅合金薄板材を用いた導電ばね部材に関する。
電気・電子部品を構成する導電部材に用いる素材には、基本的特性として「強度」および「導電性」に優れることが要求される。なかでも小型の機械部品に組み込まれて通電と板ばね機能を担う「導電ばね部材」には、例えば0.2%耐力が1000MPa以上といった高い強度を有し、かつ当該部材に加工したときに良好な形状(すなわち高い寸法精度)が得られる性質を具備していることが要求される。特に最近では電子機器部品の小型化が進み、例えば板厚100μm未満、より好ましくは60μm以下、さらには50μm未満の銅合金薄板材において、0.2%耐力が1000MPa以上といった高い強度を有しながら、加工後の寸法精度を高く維持できる性質を具備した経済的な材料のニーズが高まると考えられる。
強度と導電性の特性バランスに優れた銅合金として、Cu−Ni−Si系銅合金(いわゆるコルソン合金)や、それにCoを添加したCu−Ni−Co−Si系銅合金がある。これらの合金系を用いて、これまでに薄板材の製造技術や、高強度化の技術が種々検討されてきた。
例えば特許文献1、2には、時効処理条件等を工夫することにより板材の垂下カール(圧延方向の反り)を軽減する技術が開示されている。両文献とも板厚は0.005mmまで想定されているが、実施例の板厚は0.2mmであり、それらの0.2%耐力は670〜952MPaである。
特許文献3には、集合組織を規定して耐力の異方性を軽減することが記載されている。板厚は0.03mmまで想定されているが、実施例の板厚は0.08mmであり、それらの0.2%耐力は710〜791MPaである。
特許文献4には、集合組織を規定してノッチ加工後の曲げ加工性と強度を改善することが記載されている。実施例では板厚0.15mm程度のものを主体に特性が調べられており、1例のみ板厚0.031mmの例が示されている(実施例25)。その0.2%耐力は741MPaである。
特許文献5には、金属組織を規定して高強度化と曲げたわみ係数の低減を図る技術が記載されている。実施例では板厚0.15mmで951〜970MPaの0.2%耐力が得られている。
特許文献6には、金属組織および母相中のSi濃度を規定して0.2%耐力が980MPa以上の高強度化を図る技術が記載されている。実施例では板厚0.15mmで983〜1031MPaの0.2%耐力が得られている。
一方、特許文献7、8には、Cu−Ti系銅合金を用いて厚さ100μm以下の高強度材をオートフォーカスカメラモジュールの導電性ばね材に適用する技術が開示されている。Cu−Ti系銅合金によれば0.2%耐力1200MPa以上の非常に高い強度を得ることも可能となっている(特許文献7)。
特開2012−126934号公報 特開2012−211355号公報 特開2013−163853号公報 特開2013−204079号公報 特開2014−88604号公報 特開2014−156623号公報 特開2014−102294号公報 特開2014−80670号公報
上記の先行技術からわかるように、Cu−Ni−(Co)−Si系銅合金において、板厚を100μm未満と薄くし、かつ極めて高い強度レベルを呈する板材を工業的に安定して製造する技術は確立されていない。その要因として、製品に加工したときに高い寸法精度が得られる薄肉の高強度板材を製造することは、非常に難しいことが挙げられる。一方、Cu−Ti系銅合金を用いると非常に高い強度レベルを得やすい(特許文献7)。しかし反面、Cu−Ti系銅合金はCu−Ni−(Co)−Si系銅合金に比べ、はんだ濡れ性が悪いという問題がある。導電ばね部材として電子機器部品に組み込むことを考慮すると、非常に高い強度レベルに特化した材料よりも、はんだ濡れ性が良好な銅合金系において0.2%耐力1000MPa以上の強度レベルを具備する薄板材を適用するほうがコスト面および部品性能面で有利となる場合も多い。
本発明は、板厚が100μm未満、あるいは更に60μm以下といったCu−Ni−Co−Si系銅合金の薄板材において、0.2%耐力が高く、かつ小型機械部品等に組み込まれる導電ばね部材に加工したときに高い寸法精度が得られる、形状の良好な板材を提供しようというものである。
発明者らの研究によれば、Cu−Ni−Co−Si系銅合金において高い強度レベルを得るためには、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」が個数密度1.0×109個/mm2個以上で分散している金属組織とすることが極めて有効である。また、部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を付与するためには、仕上冷間圧延後に行う低温焼鈍において、適度な張力を付与しながら、比較的低温で長時間の加熱を行い、かつ緩昇温、緩冷却とすることが極めて有効であることがわかった。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、母相中に存在する第二相粒子のうち、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2以上である金属組織を有し、圧延直角方向の板幅W0が50mm以上、板厚が15μm以上100μm未満、より好ましくは15μm以上60μm以下、かつ下記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下である銅合金薄板材が提供される。
(A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。ただし、W0=50mmであるときは上記切り板Pを正方形サンプルとする。n個の正方形サンプル毎に、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。
上記合金元素のうち、Fe、Mg、Sn、Zn、B、P、REM(希土類元素)、Cr、Zr、Hf、Nb、Sは任意添加元素である。REM(希土類元素)はランタノイド系の各元素、YおよびScである。
上記(A)の規定を要件とする銅合金板材は、圧延直角方向の板幅W0が50mm以上であるものが対象となる。W0が60mm以上であるものがより好適な対象となる。このような板材製品は、そのままプレス打抜き工程に供される場合もあるし、さらにスリットされて狭幅の条材としたのち部品加工に供される場合もある。
上記銅合金薄板材において、さらに下記(B)に定義するI−unitが5.0以下であることがより好ましい。
(B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面を長方形領域Xと定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(幅10mm)を設定する。各短冊状領域毎に、幅中央部の表面高さを圧延方向の全長にわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
e=(π/2×h/L)2 …(1)
ただし、Lは基準長さ400mmである。
上記銅合金薄板材について、圧延方向の0.2%耐力を測定すると1000MPa以上となる。0.2%耐力は長手方向が圧延方向に平行な引張試験片を用いてJIS Z2241:2011に従って測定したオフセット法による0.2%耐力である。
また、上記銅合金薄板材の製造方法として、上記化学組成を有する銅合金の鋳片に、少なくとも鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、時効処理前の熱処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順で施すことにより銅合金板材を製造するに際し、
鋳片加熱工程において、鋳片を1000〜1060℃で2h以上保持し、
時効処理前の熱処理工程において、950〜1020℃で固溶化処理したのち、600〜800℃で10〜300sec保持する熱履歴を付与し、
時効処理工程において、前記熱履歴が付与された材料を300〜400℃に保持することにより、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上である金属組織とし、
仕上冷間圧延工程において、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて板厚15μm以上100μm未満まで冷間圧延し、
低温焼鈍工程において、最大昇温速度100℃/sec以下で昇温し、100N/mm2を超え150N/mm2以下の張力を付与しながら250〜400℃で25〜720sec保持し、最大冷却速度100℃/sec以下で常温(5〜35℃)まで冷却する条件の熱処理を施す、
板形状の良好な高強度銅合金薄板材の製造方法が提供される。
また本発明では、上記の銅合金薄板材を材料に用いた導電ばね部材が提供される。
本発明によれば、Cu−Ni−Co−Si系銅合金の板材において、板厚が100μm未満、あるいは特に60μm以下と薄く、0.2%耐力が1000MPa以上と高く、かつ精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を具備した板形状の良いものが実現できた。その製造においては、テンションレベラー等の形状矯正を施す必要もない。この板材は、はんだ濡れ性も良好であり、オートフォーカスカメラモジュールのばね部材をはじめ、各種小型機械部品に組み込まれる導電ばね材として有用である。
《合金組成》
本発明では、Cu−Ni−Co−Si系銅合金を採用する。以下、合金成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
NiおよびCoは、それぞれNi−Si系析出物およびCo−Si系析出物を形成して銅合金板材の強度と導電性を向上させる元素である。これら二種類の析出物の共存による相乗効果によって強度が一層向上する。NiとCoの合計量は2.50%以上とする必要がある。これより少ないと十分な析出硬化能が得られない。3.00%以上とすることがより効果的である。ただしNiやCoの含有量増大はSi化合物としての晶出・析出開始温度を高め、鋳造時などに粗大な第二相の形成を助長する要因となる。NiとCoの合計含有量は4.00%以下に制限される。
本発明では、特にCo−Si系析出物の微細分散を活用して高強度化を図る。CoはNiに比べてCu中への固溶限が小さいため、同量のNiを添加した場合より析出物の形成量を増大させることができる。種々検討の結果、Coは0.50%以上の含有量を確保する必要があり、0.70%以上とすることがより好ましい。ただし、CoはNiより高融点の金属であることから、Co含有量が高すぎると後述の固溶化熱処理での固溶が不十分となり、未固溶のCoは強度向上に有効なCo−Si系析出物の形成に使われず無駄となる。また、多量にCoを添加するとNi含有量の許容範囲が狭くなり、Ni−Si系析出物による硬化作用を十分に享受できないおそれがある。これらのことからCo含有量は2.00%以下とするのが好ましく、1.80%以下とすることが更に好ましい。なお、Ni含有量に関しては上述のNiとCoの合計量によって制限を受けるので特に規定する必要はないが、通常、1.00〜3.00%の範囲で設定すればよい。
Siは、Ni−Si系析出物およびCo−Si系析出物の形成に必要な元素である。Ni−Si系析出物はNi2Siを主体とする化合物であると考えられ、Co−Si系析出物はCo2Siを主体とする化合物であると考えられる。また、高い強度を意図する本発明において、Siは母相(マトリックス)の加工硬化能を向上させる作用を担う。Cu母相中に固溶したSiは積層欠陥エネルギーを低下させ、交差すべりの発生を抑制することで、加工硬化能を高める作用を発揮するものと考えられる。固溶Siは耐応力緩和特性の改善にも有効である。これらのSiの作用を十分に発揮させるためには0.50%以上のSi含有量を確保することが望まれ、0.70%以上とすることがさらに好ましい。一方、過剰のSi添加は、溶体化温度の上昇による製造コストの増大、粗大析出物の形成によるプレス打抜き性の低下などの弊害を招く。Si含有量は1.50%以下とすることが望まれ、1.20%以下に管理してもよい。
その他の有意義な元素として、Fe、Mg、Sn、Zn、B、P、REM(希土類元素)の1種以上を必要に応じて含有させてもよい。FeはFe−Si系化合物の形成による強度向上作用を有し、Mgは耐応力緩和特性の向上に有効であり、Snは固溶強化による強度向上作用を有し、Znは銅合金板材のはんだ付け性、鋳造性を改善する作用を有し、Bは鋳造組織の微細化作用を有し、Pは脱酸作用により熱間加工性を向上させる効果を呈する。また、Ce、La、Dy、Nd、YをはじめとするREM(希土類元素)は結晶粒の微細化や析出物の分散化に有効である。これらの作用を十分に発揮させるためには、それぞれ0.01%以上(REMは合計0.01%以上)の含有量を確保することがより効果的である。ただし、これらの元素の含有量が過剰になると導電率の低下、熱間加工性または冷間加工性の低下を招くことがある。これらの元素を含有させる場合、Feは0.50%以下、Mgは0.10%以下、Snは0.50%以下、Znは0.15%以下、Bは0.10%以下、Pは0.10%以下、REMは0.10%以下の含有量とすることが望ましい。またこれらの元素の含有量の合計は0.50%以下、あるいは0.40%以下とすることがより好ましい。
Cr、Zr、Hf、Nb、Sの各元素については、できるだけ含有量を低減することが望ましい。これらの元素の含有量が多くなると、Si系化合物の形成や液相二相分離の発生により、粗大な晶出物、析出物が形成されやすくなり、固溶Si量の低下を招く。その場合にはSiによる加工硬化能の改善効果が十分に発揮されず、高強度化を図るうえで不利となる。種々検討の結果、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量は0.05%以下に管理することが望まれ、0.01%以下とすることがより好ましい。
《特性》
〔板材の形状〕
Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材の形状、すなわち平坦性は、それを加工して得られる精密通電部品の形状(寸法精度)に大きく影響する。種々検討の結果、板材を実際に小片に切断したときに顕在化する圧延直角方向の湾曲(反り)が非常に小さいことが、部品の寸法精度を安定して向上させるために極めて重要である。具体的には、板厚100μm未満の薄板材の場合、前記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下であるCu−Ni−Co−Si系銅合金板材は、圧延直角方向の板幅(50mm以上)のどの部分に由来する部品においても、精密通電部品としての寸法精度を安定して高く保つことができる加工性を具備していると判断できることがわかった。最大クロスボウqMAXが230μm以下であることがより好ましい。更に前記(B)に定義するI−unitが5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが一層好ましい。
〔強度〕
Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材をリードフレームやコネクター等の通電部品の素材に用いるためには、従来、圧延平行方向(LD)の0.2%耐力が800MPa程度以上の強度レベルを有していることが望ましいとされていた。しかし、カメラ部品などの小型の機械部品に組み込まれて使用される導電ばね部材の素材としては、板厚が15μm以上100μm未満、より好ましくは15μm以上60μm以下、さらには50μm未満といった薄肉材において、LDの0.2%耐力が1000MPa以上であることが望まれる。1030MPa以上1200MPa以下であることがより好ましい。
《金属組織》
Cu−Ni−Co−Si系合金は、fcc結晶からなる母相(マトリックス)の中に第二相粒子が存在する金属組織を呈する。ここでいう第二相は鋳造工程の凝固時に生成する晶出相およびその後の工程で生成する析出相であり、当該合金の場合、主としてCo−Si系金属間化合物相とNi−Si系金属間化合物相で構成される。本明細書ではCu−Ni−Co−Si系合金に観察される第二相粒子として以下の粒子径範囲に属するものを取り上げている。
〔微細第二相粒子〕
粒子径5nm以上10nm以下であり、時効処理で生成する。強度向上への寄与が極めて大きい。銅合金においては一般に粒径10nm以下の微細析出物は強度向上への寄与が大きいことが知られており、Cu−Ni−Co−Si系合金では例えば2〜10nm程度の析出物の存在密度を十分に確保することで高強度化が可能であるとされる。しかしながら、0.2%耐力が1000MPa以上という高レベルの強度を得るためには、2〜10nm程度の粒子のなかでも特に硬化への寄与が大きい粒子径5〜10nmの粒子の量を十分に確保することが重要である。発明者らの詳細な検討によれば、当該微細第二相粒子の存在量は1.0×109個/mm2個以上とすることが極めて有効である。1.5×109個/mm2個以上とすることがより効果的であり、2.0×109個/mm2個以上に管理してもよい。存在量の上限についてはNi、Co、Siの含有量を上述のように規定することによって制限を受けるので特に定める必要はないが、通常、5.0×109個/mm2個以下の範囲となる。微細第二相粒子の個数密度の測定は、測定対象である板材から採取した試料をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、粒子径5〜10nmの第二相粒子の個数をカウントすることにより行う。粒子径は粒子を取り囲む最小円の直径とする。
〔粗大第二相粒子〕
粒子径5μmを超えるものであり、主として鋳造工程の凝固時に生成した第二相が後工程で固溶化しきれずに残留した粒子からなる。強度向上には寄与しない。このような粗大第二相粒子の数が少ないほど、プレス打抜き性や曲げ加工性の向上に有利となる。種々検討の結果、通電部品においては、粗大第二相粒子の存在量が10個/mm2以下の個数密度に抑えられていることがより好ましい。粗大第二相粒子の個数密度の測定は、測定対象である板材の圧延面を電解研磨してCu素地のみを溶解させ、その表面に露出した第二相粒子の数をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察することによって行うことができる。粒子径は粒子を取り囲む最小円の直径とする。
《製造方法》
以上説明した銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→鋳片加熱→熱間圧延→冷間圧延→時効処理前の熱処理→時効処理→仕上冷間圧延→低温焼鈍」
上記工程には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。また、必要に応じて工程中に熱処理および冷間圧延を加えることができる。例えば、溶体化処理前に行う冷間圧延は、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延工程にて実施しても構わない。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Siなどの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
〔鋳片加熱〕
鋳造後には、鋳片を加熱して1000〜1060℃で2h以上保持する。これにより鋳造時に生じた粗大な晶出相、析出相を均質化する。1020〜1060℃で2h以上保持することがより好ましい。保持時間が長くなりすぎると不経済であるので、通常、6h以内とすればよい。炉の設定温度が1060℃を超えると操業時の条件変動などにより材料が溶融する恐れがあるので好ましくない。この熱処理は次工程の熱間圧延における加熱工程を利用して行うことが好ましい。
〔熱間圧延〕
上記の加熱保持を終えた鋳片に対して熱間圧延を施す。熱延条件は常法に従えばよい。鋳片を1000〜1060℃、より好ましくは1020〜1060℃に加熱した後、炉から出し、例えば圧延率70〜97%の熱間圧延を行い、その後、水冷する条件を例示することができる。最終パスの圧延温度は700℃以上とすることが好ましい。
なお、圧延率は下記(2)式により表される。
圧延率R(%)=(h0−h1)/h0×100 …(2)
ここで、h0は圧延前の板厚(mm)、h1は圧延後の板厚(mm)である。
〔冷間圧延〕
溶体化処理前の冷間圧延により、板厚の減少および歪エネルギー(転位)の導入を図る。その歪エネルギーは、溶体化処理での第二相の固溶化に有効に作用する。必要に応じて、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を行うことができる。中間焼鈍を加える場合は第二相粒子の粗大化を防止する観点から350〜600℃で行うことが望ましく、550℃以下で行うことがより好ましい。溶体化処理前の冷間圧延率(中間焼鈍を挟んで冷間圧延を行う場合は最後の中間焼鈍後の冷間圧延率)は、例えば70%以上とすることが効果的である。ミルパワー等による設備的な許容範囲において、通常99%以下の圧延率範囲で行えばよい。
〔時効処理前の熱処理〕
一般に時効処理前には、マトリックスの再結晶化および溶質原子の再固溶化を主目的とする加熱保持が行われる。その冷却過程では、不用意に析出が生じないように常温まで急冷されるのが従来一般的な製法である。この加熱保持とその後の急冷過程を合わせて溶体化処理と呼ぶことが多い。本明細書では、上記の加熱保持の過程を「固溶化処理」と呼んでいる。本発明に従う製造方法においても固溶化処理は必要であるが、その後、時効処理の前の段階で、600〜800℃の温度域に所定時間保持する熱履歴を付与する。この温度域での保持の過程を「前駆処理」と呼ぶ。
本発明に従う製造方法では、固溶化処理の保持温度を950〜1020℃の範囲とする。保持時間(材料がその温度域にある時間)は例えば0.5〜10minの範囲で設定することができる。保持温度が低すぎると再結晶化や溶質原子の再固溶化が十分に進行しないか、あるいは長時間の保持を要するので好ましくない。保持温度が高すぎると結晶粒の粗大化を招きやすい。
固溶化処理に引き続き、前駆処理を施す。前駆処理は600〜800℃の範囲に保持する熱処理であり、固溶化処理の冷却過程を利用して行うことが効率的である。上記温度範囲での保持時間、すなわち材料温度が600〜800℃の範囲にある時間は10〜300secの範囲とする。固溶化処理の冷却過程を利用して前駆処理の熱履歴を付与する場合、600〜800℃の範囲内に設定した一定の温度に保持してもよいし、800℃から600℃までの温度域を徐冷しながら通過させてもよい。いずれの場合も、材料温度が600〜800℃の範囲にある時間を10〜300secにコントロールする。
固溶化処理温度から800℃までの平均冷却速度は例えば5〜50℃/secとすればよい。前駆処理の後は、時効処理温度範囲を急冷して通過させることが好ましい。例えば、600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/sec以上となるように冷却することが好ましい。
なお、前駆処理を、固溶化処理の冷却過程を利用せずに、別の熱処理設備で行うことも可能である。その場合のヒートパターンとしては、上記固溶化処理の後、少なくとも600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/sec以上となるように冷却し、その後、300℃から600℃までの昇温速度が50℃/sec以上となるように昇温して上述の前駆処理を施すヒートパターンを採用することが好ましい。
Cu−Ni−Co−Si系合金ではNi−Si系およびCo−Si系の2種類の析出物がそれぞれ高強度化に寄与するが、両者の間で、最適な析出条件(温度や時間)は一致しない(ずれている)。最適な析出温度はNi−Si系では450℃前後、Co−Si系では520℃前後である。そのため、通常、これら2種類の析出物による時効硬化を同時に最大限利用することは難しい。ところが発明者らの研究によれば、上記の固溶化熱処理を終えた状態の材料を600〜800℃の温度域で10〜300sec保持したのちに、後述の低温域で行う時効処理を組み合わせると、Co−Si系化合物が析出しやすいことがわかった。この600〜800℃の温度域はNi−Si系化合物はほとんど析出せず、またCo−Si系化合物にとっては、析出は生じるが最適な析出温度を超えて高い温度域である。溶質原子が十分に固溶した母相を当該温度域に所定時間保持すると、Co、Siを主とするエンブリオが形成され、これが後述の時効処理でCo−Si系化合物の析出の駆動力となるのではないかと推察される。このエンブリオの生成はCo−Si系化合物析出の前駆現象と考えることができる。
〔時効処理〕
上記の固溶化処理および前駆処理の熱履歴を付与した状態の板材に対して、時効処理を施す。一般にCu−Ni−Co−Si系合金の時効処理は520℃前後で行われるが、本発明に従う時効処理は300〜400℃という低温域で行う。310〜380℃で行うことがより好ましい。前工程の前駆処理でCo−Si系化合物粒子の核生成に関する自由エネルギーが大幅に低減してCo−Si系化合物が極めて析出しやすい組織状態となっているので、このような低温での時効が可能になるものと考えられる。この低温時効処理によれば、強度向上に最も効く粒径5〜10nmの微細第二相粒子が多量に形成されることがわかった。また、この低温時効処理によってNi−Si系化合物の析出も生じることが確認された。従って、従来は難しかった2種類の析出物による析出硬化現象を有効に享受できる。
時効処理条件を設定するに際しては、時効処理後に粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上となる条件を採用する。時効処理温度が300〜400℃と低いので通常の時効処理よりも原子の拡散速度が遅い。そのため強化に寄与する固溶Siを残存させるためにも有利となる。最適な時効時間は3〜10hの範囲に見出すことができる。
最適な時効条件を決定する指標として、下記(3)式を挙げることができる。
0.60≦ECage/ECmax≦0.80 …(3)
ここで、ECmaxは400〜600℃の温度範囲において50℃間隔で10h熱処理を行った場合に得られる最大の導電率、ECageは時効処理後の導電率である。ECage/ECmaxを0.60以上とすることにより析出量が十分に確保され、強度、導電率の改善に有利となる。また、ECage/ECmaxを0.80以下とすることにより母相中のSi濃度が十分に確保され、加工硬化能の改善に有利となる。
〔仕上冷間圧延〕
時効処理を終えた板材に、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて仕上冷間圧延を施し、15μm以上100μm未満の板厚とする。仕上冷間圧延は強度レベル(特に0.2%耐力)の向上に有効である。仕上冷間圧延率(トータル圧延率)は50%以上とすることが効果的であり75%以上とすることがより効果的である。仕上冷間圧延率の上限は圧延機の能力によって制限を受けるが、通常、99.5%以下の範囲で設定すればよい。ワークロール直径が25mmを下回るとリードフレーム等の精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られるような、形状の良好な板材を安定して得ることが難しくなる。ワークロール直径が55mmを超えると上記の冷間圧延率によって板厚15μm以上100μm未満の薄板を得ることが難しくなる。
〔低温焼鈍〕
仕上冷間圧延後には、通常、板条材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性向上を目的として低温焼鈍が施される。本発明では、更に形状矯正効果を得る目的でもこの低温焼鈍を利用する。精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を具備した形状の良好な薄板材を得るために、最終的な熱処理である低温焼鈍の条件を厳しく制限する必要がある。基本的には、連続焼鈍設備を用いて、比較的高い張力を付与しながら、緩やかな温度変化にて、低温、長時間の熱処理を施す。
第1に、低温焼鈍の最高到達材料温度を250〜400℃とし、250℃以上での保持時間、すなわち材料温度が250℃以上最高到達材料温度以下である時間を25〜720secとする。最高到達材料温度が250℃より低温あるいは250℃以上での保持時間25secより短時間では形状矯正効果が十分に得られない。最高到達材料温度が400℃より高温あるいは250℃以上での保持時間が720secより長時間では材料が軟化し所定の高強度を安定して得ることが難しくなる。最高到達材料温度を300〜400℃とし、250℃以上での保持時間を35〜720secとすることがより好ましい。
第2に、上記温度での加熱保持中に板材に付与される張力を100N/mm2を超え150N/mm2以下の範囲にコントロールする。連続焼鈍設備においては、通常、張力の方向は圧延方向となる。張力が100N/mm2以下であると形状矯正効果が不足し、精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を安定して付与することが難しくなる。張力が150N/mm2を上回る場合には、昇温時および降温時に張力に対して板面直角方向のひずみ量分布が不均一となりやすく、高い平坦性を得ることが難しい。
第3に、最大昇温速度100℃/sec以下、かつ最大冷却速度100℃/sec以下とする。すなわち、低温焼鈍の工程では100℃/secを超える速度での温度変化を避ける。強度レベルの高いCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材においては、最終的な熱処理である低温焼鈍にて、上記のように穏やかな温度変化のヒートパターンを採用することが、精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を付与するうえで極めて有効である。
表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を表2に示す条件で加熱したのち炉から出し、厚さ14mmまで熱間圧延し、水冷した。なお、熱間圧延で割れが生じた一部の比較例では、その時点で製造を中止した。トータルの熱間圧延率は90〜95%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで圧延率90〜99%で冷間圧延を行った。その後、表2に示す条件で時効処理前の熱処理(固溶化処理および前駆処理)を行った。前駆処理は固溶化処理後の冷却過程を利用して行った。固溶化処理温度から前駆処理温度まで平均冷却速度5〜50℃/secで冷却し、前駆処理温度で表2に示す時間の保持を行い、その後、600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/sec以上となるように常温まで冷却した。前駆処理を省略した一部の比較例では、固溶化処理温度から300℃より低温の温度域まで急冷した。時効処理前の熱処理を終えた材料に、表2に示す条件で時効処理を施した。表2中に前記(3)式により定まるECage/ECmax値を併記する。時効処理後の材料に、表3に示す条件で仕上冷間圧延を施した。表3のロール径は、使用したワークロールの直径を意味する。仕上冷間圧延後の板厚は表4に示してある。板厚50μm未満まで圧延できなかった一部の比較例では、以降の工程を中止した。
次いで表3に記載の条件で低温焼鈍を施した。表3に示した低温焼鈍の温度は最高到達材料温度、低温焼鈍の時間は250℃以上の保持時間、すなわち材料温度が250℃以上最高到達材料温度以下である時間を意味する。低温焼鈍はカテナリー炉を連続通板する方法で行った。炉内雰囲気は窒素+水素混合雰囲気とした。昇温開始から冷却終了までの板表面の温度を通板方向の種々の位置で測定し、各測定位置の平均温度の値を用いて、横軸に時間、縦軸に温度をとった温度曲線を求めた。1つの供試材においては通板中の板の全長にわたって同じ条件で熱処理を施しており、各測定位置での温度は経時的にほぼ一定値に安定しているので、この温度曲線の昇温時における最大勾配を当該供試材の最大昇温速度、冷却時における最大勾配を当該供試材の最大冷却速度として採用した。供試材毎の昇温速度および冷却速度は、それぞれ昇温ゾーンおよび冷却ゾーンにおける加熱出力、雰囲気温度、ファン回転数などを通板方向位置に応じて適切にコントロールすることにより調整した。また、低温焼鈍中の張力は、炉内を通板中の材料のカテナリー曲線(炉内通板方向両端部および中央部の板の高さ位置、並びに炉内長)から算出した。
低温焼鈍後にスリッターでスリット加工して、圧延直角方向の板幅W0が510mmの薄板材製品(供試材)を得た。
Figure 2017043789
Figure 2017043789
Figure 2017043789
各供試材について、以下の調査を行った。
〔微細第二相粒子の個数密度〕
供試材から直径3mmの円板を打ち抜き、ツインジェット研磨法でTEM観察試料を作製し、TEM(日本電子株式会社製、EM−2010)にて加速電圧200kVで倍率10万倍の無作為に選択した10視野について写真を撮影し、その写真上で粒子径5〜10nmの微細第二相粒子の数をカウントし、その合計数を観察領域の総面積で除することにより微細第二相粒子の個数密度(個/mm2)を求めた。ここでは1視野の大きさを770nm×550nmとした。粒子径は当該粒子を取り囲む最小円の直径とした。
なお、供試材において測定された微細第二相粒子の個数密度は、時効処理後の段階から変わっていないとみなすことができる。
〔粗大第二相粒子の個数密度〕
供試材から採取した試料の圧延面を電解研磨してCu母相(マトリックス)のみを溶解させることにより表面に第二相粒子が露出した観察試料を作製し、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番S−3000N)にて倍率3000倍の無作為に選択した20視野について写真を撮影し、その写真上で粒子径5μm以上の粗大第二相粒子の数をカウントし、その合計数を観察領域の総面積で除することにより粗大第二相粒子の個数密度(個/mm2)を求めた。ここでは1視野の大きさを41μm×28μmとした。粒子径は当該粒子を取り囲む最小円の直径とした。
なお、供試材において測定された粗大第二相粒子の個数密度は、時効処理後の段階から変わっていないとみなすことができる。
〔圧延方向の0.2%耐力〕
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、0.2%耐力を測定した。n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。
〔I−unit〕
各供試材から圧延方向長さが400mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、上述(B)に定義されるI−unitを求めた。
〔最大クロスボウqMAX
各供試材について上述(A)に定義される最大クロスボウqMAXを求めた。
これらの結果を表4に示す。
Figure 2017043789
表4からわかるように、本発明例の銅合金薄板材はいずれもLDの0.2%耐力が1000MPa以上という高い強度レベルを有するとともに、最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下の極めて平坦性の高い板形状を呈していた。これらの薄板材は、カメラモジュールをはじめとする各種小型機械部品に使用される精密導電ばね部材の素材として極めて有用である。
これに対し、比較例No.31は鋳片加熱温度が低かったので粗大な第二相が熱間圧延前に多量に残存し、固溶化処理で十分に固溶しきれなかったために微細第二相粒子の析出量が不足して強度が低かった。No.32は時効処理前に前駆処理を行わなかったので微細第二相粒子の析出が不十分となり、強度が低かった。No.33は時効処理温度が低すぎたので微細第二相粒子の析出が不十分となり、強度が低かった。No.34は時効処理温度が高すぎたので微細第二相粒子の析出が不十分となり、強度が低かった。No.35は鋳片加熱時間が短かったので粗大な第二相が熱間圧延前に多量に残存し、固溶化処理で十分に固溶しきれなかったために微細第二相粒子の析出量が不足して強度が低かった。No.36は鋳片加熱温度が高すぎたので熱間圧延地に割れが発生し、その後の工程に進めることができなかった。No.37は固溶化処理温度が低かったので溶質原子の溶体化が不十分となり、微細第二相粒子の析出量が不足して強度が低かった。No.38はNi+Co合計含有量が高すぎたので粗大第二相粒子が多くなり、その分、微細第二相粒子の量が不足して強度が低かった。No.39はNi+Co合計含有量が低いので微細第二相粒子の析出量が不十分となり、強度が低かった。No.40はSi含有量が高すぎたので粗大第二相粒子が多くなり、その分、微細第二相粒子の量が不足して強度が低かった。No.41は仕上冷間圧延で使用したワークロールの直径が大きすぎたので50μm未満の薄板材を得ることができず、その後の工程を中止した。No.42は仕上冷間圧延で使用したワークロールの直径が小さすぎたので最大クロスボウおよびI−unitが大きくなった。No.43は低温焼鈍での張力が大きすぎたので最大クロスボウが大きくなった。No.44は低温焼鈍での張力が小さかったので最大クロスボウおよびI−unitが大きくなった。No.45は低温焼鈍の温度が高すぎたので強度が低下した。No.46は低温焼鈍の温度が低かったので最大クロスボウおよびI−unitが大かった。No.47は低温焼鈍の時間が長すぎたので強度が低下した。No.48は低温焼鈍の時間が短かったので最大クロスボウおよびI−unitが大かった。No.49は低温焼鈍での最大昇温速度が大きすぎたので最大クロスボウおよびI−unitが大きくなった。No.50は低温焼鈍での最大冷却速度が大きすぎたので最大クロスボウおよびI−unitが大きくなった。
次に、上記の本発明例No.1の供試材と市販のチタン銅板材(DOWAメタニクス株式会社製、C1990)について、はんだ濡れ性を調査した。試験は材料をはんだ槽に浸漬したのち引き上げ、はんだ濡れ面積率を測定する方法で行った。試験条件は以下の通りである。
(はんだ濡れ性試験条件)
・試験片サイズ: 幅10mm×長さ60mm
・はんだ浴組成: 3.0質量%Ag−0.5質量%Cu−残部Sn
・フラックス : 25%ロジン、75%IPA
・浸漬スピード: 20mm/sec
・浸漬時間 : 5sec
・浸漬深さ : 40mm
その結果、はんだ濡れ面積率は、本発明例No.1の板材が99%以上、市販チタン銅の板材が95%未満であり、本発明の板材はチタン銅板材よりもはんだ濡れ性に優れることが確認された。

Claims (6)

  1. 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、母相中に存在する第二相粒子のうち、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2以上である金属組織を有し、圧延直角方向の板幅W0が50mm以上、板厚が15μm以上100μm未満、かつ下記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下である銅合金薄板材。
    (A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。ただし、W0=50mmであるときは上記切り板Pを正方形サンプルとする。n個の正方形サンプル毎に、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。
  2. さらに下記(B)に定義するI−unitが5.0以下である請求項1に記載の銅合金薄板材。
    (B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面を長方形領域Xと定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(幅10mm)を設定する。各短冊状領域毎に、幅中央部の表面高さを圧延方向の全長にわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
    e=(π/2×h/L)2 …(1)
    ただし、Lは基準長さ400mm
  3. 圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上である請求項1または2に記載の銅合金薄板材。
  4. 板厚が15μm以上60μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金薄板材。
  5. 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する銅合金の鋳片に、少なくとも鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、時効処理前の熱処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順で施すことにより銅合金板材を製造するに際し、
    鋳片加熱工程において、鋳片を1000〜1060℃で2h以上保持し、
    時効処理前の熱処理工程において、950〜1020℃で固溶化処理したのち、600〜800℃で10〜300sec保持する熱履歴を付与し、
    時効処理工程において、前記熱履歴が付与された材料を300〜400℃に保持することにより、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上である金属組織とし、
    仕上冷間圧延工程において、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて板厚15μm以上100μm未満まで冷間圧延し、
    低温焼鈍工程において、最大昇温速度100℃/sec以下で昇温し、100N/mm2を超え150N/mm2以下の張力を付与しながら250〜400℃で25〜720sec保持し、最大冷却速度100℃/sec以下で常温まで冷却する条件の熱処理を施す、
    高強度銅合金薄板材の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金薄板材を材料に用いた導電ばね部材。
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