JP2017043789A - Cu−Ni−Co−Si系高強度銅合金薄板材およびその製造方法並びに導電ばね部材 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献3には、集合組織を規定して耐力の異方性を軽減することが記載されている。板厚は0.03mmまで想定されているが、実施例の板厚は0.08mmであり、それらの0.2%耐力は710〜791MPaである。
特許文献4には、集合組織を規定してノッチ加工後の曲げ加工性と強度を改善することが記載されている。実施例では板厚0.15mm程度のものを主体に特性が調べられており、1例のみ板厚0.031mmの例が示されている(実施例25)。その0.2%耐力は741MPaである。
特許文献5には、金属組織を規定して高強度化と曲げたわみ係数の低減を図る技術が記載されている。実施例では板厚0.15mmで951〜970MPaの0.2%耐力が得られている。
特許文献6には、金属組織および母相中のSi濃度を規定して0.2%耐力が980MPa以上の高強度化を図る技術が記載されている。実施例では板厚0.15mmで983〜1031MPaの0.2%耐力が得られている。
(A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。ただし、W0=50mmであるときは上記切り板Pを正方形サンプルとする。n個の正方形サンプル毎に、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。
上記(A)の規定を要件とする銅合金板材は、圧延直角方向の板幅W0が50mm以上であるものが対象となる。W0が60mm以上であるものがより好適な対象となる。このような板材製品は、そのままプレス打抜き工程に供される場合もあるし、さらにスリットされて狭幅の条材としたのち部品加工に供される場合もある。
(B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面を長方形領域Xと定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(幅10mm)を設定する。各短冊状領域毎に、幅中央部の表面高さを圧延方向の全長にわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
e=(π/2×h/L)2 …(1)
ただし、Lは基準長さ400mmである。
鋳片加熱工程において、鋳片を1000〜1060℃で2h以上保持し、
時効処理前の熱処理工程において、950〜1020℃で固溶化処理したのち、600〜800℃で10〜300sec保持する熱履歴を付与し、
時効処理工程において、前記熱履歴が付与された材料を300〜400℃に保持することにより、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上である金属組織とし、
仕上冷間圧延工程において、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて板厚15μm以上100μm未満まで冷間圧延し、
低温焼鈍工程において、最大昇温速度100℃/sec以下で昇温し、100N/mm2を超え150N/mm2以下の張力を付与しながら250〜400℃で25〜720sec保持し、最大冷却速度100℃/sec以下で常温(5〜35℃)まで冷却する条件の熱処理を施す、
板形状の良好な高強度銅合金薄板材の製造方法が提供される。
本発明では、Cu−Ni−Co−Si系銅合金を採用する。以下、合金成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
〔板材の形状〕
Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材の形状、すなわち平坦性は、それを加工して得られる精密通電部品の形状(寸法精度)に大きく影響する。種々検討の結果、板材を実際に小片に切断したときに顕在化する圧延直角方向の湾曲(反り)が非常に小さいことが、部品の寸法精度を安定して向上させるために極めて重要である。具体的には、板厚100μm未満の薄板材の場合、前記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下であるCu−Ni−Co−Si系銅合金板材は、圧延直角方向の板幅(50mm以上)のどの部分に由来する部品においても、精密通電部品としての寸法精度を安定して高く保つことができる加工性を具備していると判断できることがわかった。最大クロスボウqMAXが230μm以下であることがより好ましい。更に前記(B)に定義するI−unitが5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが一層好ましい。
Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材をリードフレームやコネクター等の通電部品の素材に用いるためには、従来、圧延平行方向(LD)の0.2%耐力が800MPa程度以上の強度レベルを有していることが望ましいとされていた。しかし、カメラ部品などの小型の機械部品に組み込まれて使用される導電ばね部材の素材としては、板厚が15μm以上100μm未満、より好ましくは15μm以上60μm以下、さらには50μm未満といった薄肉材において、LDの0.2%耐力が1000MPa以上であることが望まれる。1030MPa以上1200MPa以下であることがより好ましい。
Cu−Ni−Co−Si系合金は、fcc結晶からなる母相(マトリックス)の中に第二相粒子が存在する金属組織を呈する。ここでいう第二相は鋳造工程の凝固時に生成する晶出相およびその後の工程で生成する析出相であり、当該合金の場合、主としてCo−Si系金属間化合物相とNi−Si系金属間化合物相で構成される。本明細書ではCu−Ni−Co−Si系合金に観察される第二相粒子として以下の粒子径範囲に属するものを取り上げている。
粒子径5nm以上10nm以下であり、時効処理で生成する。強度向上への寄与が極めて大きい。銅合金においては一般に粒径10nm以下の微細析出物は強度向上への寄与が大きいことが知られており、Cu−Ni−Co−Si系合金では例えば2〜10nm程度の析出物の存在密度を十分に確保することで高強度化が可能であるとされる。しかしながら、0.2%耐力が1000MPa以上という高レベルの強度を得るためには、2〜10nm程度の粒子のなかでも特に硬化への寄与が大きい粒子径5〜10nmの粒子の量を十分に確保することが重要である。発明者らの詳細な検討によれば、当該微細第二相粒子の存在量は1.0×109個/mm2個以上とすることが極めて有効である。1.5×109個/mm2個以上とすることがより効果的であり、2.0×109個/mm2個以上に管理してもよい。存在量の上限についてはNi、Co、Siの含有量を上述のように規定することによって制限を受けるので特に定める必要はないが、通常、5.0×109個/mm2個以下の範囲となる。微細第二相粒子の個数密度の測定は、測定対象である板材から採取した試料をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、粒子径5〜10nmの第二相粒子の個数をカウントすることにより行う。粒子径は粒子を取り囲む最小円の直径とする。
粒子径5μmを超えるものであり、主として鋳造工程の凝固時に生成した第二相が後工程で固溶化しきれずに残留した粒子からなる。強度向上には寄与しない。このような粗大第二相粒子の数が少ないほど、プレス打抜き性や曲げ加工性の向上に有利となる。種々検討の結果、通電部品においては、粗大第二相粒子の存在量が10個/mm2以下の個数密度に抑えられていることがより好ましい。粗大第二相粒子の個数密度の測定は、測定対象である板材の圧延面を電解研磨してCu素地のみを溶解させ、その表面に露出した第二相粒子の数をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察することによって行うことができる。粒子径は粒子を取り囲む最小円の直径とする。
以上説明した銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→鋳片加熱→熱間圧延→冷間圧延→時効処理前の熱処理→時効処理→仕上冷間圧延→低温焼鈍」
上記工程には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。また、必要に応じて工程中に熱処理および冷間圧延を加えることができる。例えば、溶体化処理前に行う冷間圧延は、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延工程にて実施しても構わない。以下、各工程について説明する。
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Siなどの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
鋳造後には、鋳片を加熱して1000〜1060℃で2h以上保持する。これにより鋳造時に生じた粗大な晶出相、析出相を均質化する。1020〜1060℃で2h以上保持することがより好ましい。保持時間が長くなりすぎると不経済であるので、通常、6h以内とすればよい。炉の設定温度が1060℃を超えると操業時の条件変動などにより材料が溶融する恐れがあるので好ましくない。この熱処理は次工程の熱間圧延における加熱工程を利用して行うことが好ましい。
上記の加熱保持を終えた鋳片に対して熱間圧延を施す。熱延条件は常法に従えばよい。鋳片を1000〜1060℃、より好ましくは1020〜1060℃に加熱した後、炉から出し、例えば圧延率70〜97%の熱間圧延を行い、その後、水冷する条件を例示することができる。最終パスの圧延温度は700℃以上とすることが好ましい。
なお、圧延率は下記(2)式により表される。
圧延率R(%)=(h0−h1)/h0×100 …(2)
ここで、h0は圧延前の板厚(mm)、h1は圧延後の板厚(mm)である。
溶体化処理前の冷間圧延により、板厚の減少および歪エネルギー(転位)の導入を図る。その歪エネルギーは、溶体化処理での第二相の固溶化に有効に作用する。必要に応じて、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を行うことができる。中間焼鈍を加える場合は第二相粒子の粗大化を防止する観点から350〜600℃で行うことが望ましく、550℃以下で行うことがより好ましい。溶体化処理前の冷間圧延率(中間焼鈍を挟んで冷間圧延を行う場合は最後の中間焼鈍後の冷間圧延率)は、例えば70%以上とすることが効果的である。ミルパワー等による設備的な許容範囲において、通常99%以下の圧延率範囲で行えばよい。
一般に時効処理前には、マトリックスの再結晶化および溶質原子の再固溶化を主目的とする加熱保持が行われる。その冷却過程では、不用意に析出が生じないように常温まで急冷されるのが従来一般的な製法である。この加熱保持とその後の急冷過程を合わせて溶体化処理と呼ぶことが多い。本明細書では、上記の加熱保持の過程を「固溶化処理」と呼んでいる。本発明に従う製造方法においても固溶化処理は必要であるが、その後、時効処理の前の段階で、600〜800℃の温度域に所定時間保持する熱履歴を付与する。この温度域での保持の過程を「前駆処理」と呼ぶ。
固溶化処理温度から800℃までの平均冷却速度は例えば5〜50℃/secとすればよい。前駆処理の後は、時効処理温度範囲を急冷して通過させることが好ましい。例えば、600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/sec以上となるように冷却することが好ましい。
上記の固溶化処理および前駆処理の熱履歴を付与した状態の板材に対して、時効処理を施す。一般にCu−Ni−Co−Si系合金の時効処理は520℃前後で行われるが、本発明に従う時効処理は300〜400℃という低温域で行う。310〜380℃で行うことがより好ましい。前工程の前駆処理でCo−Si系化合物粒子の核生成に関する自由エネルギーが大幅に低減してCo−Si系化合物が極めて析出しやすい組織状態となっているので、このような低温での時効が可能になるものと考えられる。この低温時効処理によれば、強度向上に最も効く粒径5〜10nmの微細第二相粒子が多量に形成されることがわかった。また、この低温時効処理によってNi−Si系化合物の析出も生じることが確認された。従って、従来は難しかった2種類の析出物による析出硬化現象を有効に享受できる。
0.60≦ECage/ECmax≦0.80 …(3)
ここで、ECmaxは400〜600℃の温度範囲において50℃間隔で10h熱処理を行った場合に得られる最大の導電率、ECageは時効処理後の導電率である。ECage/ECmaxを0.60以上とすることにより析出量が十分に確保され、強度、導電率の改善に有利となる。また、ECage/ECmaxを0.80以下とすることにより母相中のSi濃度が十分に確保され、加工硬化能の改善に有利となる。
時効処理を終えた板材に、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて仕上冷間圧延を施し、15μm以上100μm未満の板厚とする。仕上冷間圧延は強度レベル(特に0.2%耐力)の向上に有効である。仕上冷間圧延率(トータル圧延率)は50%以上とすることが効果的であり75%以上とすることがより効果的である。仕上冷間圧延率の上限は圧延機の能力によって制限を受けるが、通常、99.5%以下の範囲で設定すればよい。ワークロール直径が25mmを下回るとリードフレーム等の精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られるような、形状の良好な板材を安定して得ることが難しくなる。ワークロール直径が55mmを超えると上記の冷間圧延率によって板厚15μm以上100μm未満の薄板を得ることが難しくなる。
仕上冷間圧延後には、通常、板条材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性向上を目的として低温焼鈍が施される。本発明では、更に形状矯正効果を得る目的でもこの低温焼鈍を利用する。精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を具備した形状の良好な薄板材を得るために、最終的な熱処理である低温焼鈍の条件を厳しく制限する必要がある。基本的には、連続焼鈍設備を用いて、比較的高い張力を付与しながら、緩やかな温度変化にて、低温、長時間の熱処理を施す。
第2に、上記温度での加熱保持中に板材に付与される張力を100N/mm2を超え150N/mm2以下の範囲にコントロールする。連続焼鈍設備においては、通常、張力の方向は圧延方向となる。張力が100N/mm2以下であると形状矯正効果が不足し、精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を安定して付与することが難しくなる。張力が150N/mm2を上回る場合には、昇温時および降温時に張力に対して板面直角方向のひずみ量分布が不均一となりやすく、高い平坦性を得ることが難しい。
第3に、最大昇温速度100℃/sec以下、かつ最大冷却速度100℃/sec以下とする。すなわち、低温焼鈍の工程では100℃/secを超える速度での温度変化を避ける。強度レベルの高いCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材においては、最終的な熱処理である低温焼鈍にて、上記のように穏やかな温度変化のヒートパターンを採用することが、精密部品に加工したときに高い寸法精度が得られる性質を付与するうえで極めて有効である。
〔微細第二相粒子の個数密度〕
供試材から直径3mmの円板を打ち抜き、ツインジェット研磨法でTEM観察試料を作製し、TEM(日本電子株式会社製、EM−2010)にて加速電圧200kVで倍率10万倍の無作為に選択した10視野について写真を撮影し、その写真上で粒子径5〜10nmの微細第二相粒子の数をカウントし、その合計数を観察領域の総面積で除することにより微細第二相粒子の個数密度(個/mm2)を求めた。ここでは1視野の大きさを770nm×550nmとした。粒子径は当該粒子を取り囲む最小円の直径とした。
なお、供試材において測定された微細第二相粒子の個数密度は、時効処理後の段階から変わっていないとみなすことができる。
供試材から採取した試料の圧延面を電解研磨してCu母相(マトリックス)のみを溶解させることにより表面に第二相粒子が露出した観察試料を作製し、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番S−3000N)にて倍率3000倍の無作為に選択した20視野について写真を撮影し、その写真上で粒子径5μm以上の粗大第二相粒子の数をカウントし、その合計数を観察領域の総面積で除することにより粗大第二相粒子の個数密度(個/mm2)を求めた。ここでは1視野の大きさを41μm×28μmとした。粒子径は当該粒子を取り囲む最小円の直径とした。
なお、供試材において測定された粗大第二相粒子の個数密度は、時効処理後の段階から変わっていないとみなすことができる。
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、0.2%耐力を測定した。n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。
〔I−unit〕
各供試材から圧延方向長さが400mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、上述(B)に定義されるI−unitを求めた。
〔最大クロスボウqMAX〕
各供試材について上述(A)に定義される最大クロスボウqMAXを求めた。
これらの結果を表4に示す。
(はんだ濡れ性試験条件)
・試験片サイズ: 幅10mm×長さ60mm
・はんだ浴組成: 3.0質量%Ag−0.5質量%Cu−残部Sn
・フラックス : 25%ロジン、75%IPA
・浸漬スピード: 20mm/sec
・浸漬時間 : 5sec
・浸漬深さ : 40mm
Claims (6)
- 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、母相中に存在する第二相粒子のうち、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2以上である金属組織を有し、圧延直角方向の板幅W0が50mm以上、板厚が15μm以上100μm未満、かつ下記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下である銅合金薄板材。
(A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。ただし、W0=50mmであるときは上記切り板Pを正方形サンプルとする。n個の正方形サンプル毎に、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。 - さらに下記(B)に定義するI−unitが5.0以下である請求項1に記載の銅合金薄板材。
(B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面を長方形領域Xと定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(幅10mm)を設定する。各短冊状領域毎に、幅中央部の表面高さを圧延方向の全長にわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
e=(π/2×h/L)2 …(1)
ただし、Lは基準長さ400mm - 圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上である請求項1または2に記載の銅合金薄板材。
- 板厚が15μm以上60μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金薄板材。
- 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%であり、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計含有量が0〜0.05%であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する銅合金の鋳片に、少なくとも鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、時効処理前の熱処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順で施すことにより銅合金板材を製造するに際し、
鋳片加熱工程において、鋳片を1000〜1060℃で2h以上保持し、
時効処理前の熱処理工程において、950〜1020℃で固溶化処理したのち、600〜800℃で10〜300sec保持する熱履歴を付与し、
時効処理工程において、前記熱履歴が付与された材料を300〜400℃に保持することにより、粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上である金属組織とし、
仕上冷間圧延工程において、ロール直径25〜45mmのワークロールを用いて板厚15μm以上100μm未満まで冷間圧延し、
低温焼鈍工程において、最大昇温速度100℃/sec以下で昇温し、100N/mm2を超え150N/mm2以下の張力を付与しながら250〜400℃で25〜720sec保持し、最大冷却速度100℃/sec以下で常温まで冷却する条件の熱処理を施す、
高強度銅合金薄板材の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金薄板材を材料に用いた導電ばね部材。
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