JP6533402B2 - Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム - Google Patents

Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム Download PDF

Info

Publication number
JP6533402B2
JP6533402B2 JP2015059909A JP2015059909A JP6533402B2 JP 6533402 B2 JP6533402 B2 JP 6533402B2 JP 2015059909 A JP2015059909 A JP 2015059909A JP 2015059909 A JP2015059909 A JP 2015059909A JP 6533402 B2 JP6533402 B2 JP 6533402B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
copper alloy
plate
heating
parallel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015059909A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016180131A (ja
Inventor
俊也 首藤
俊也 首藤
佐々木 史明
史明 佐々木
水島 孝
孝 水島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Metaltech Co Ltd
Original Assignee
Dowa Metaltech Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Metaltech Co Ltd filed Critical Dowa Metaltech Co Ltd
Priority to JP2015059909A priority Critical patent/JP6533402B2/ja
Publication of JP2016180131A publication Critical patent/JP2016180131A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6533402B2 publication Critical patent/JP6533402B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Conductive Materials (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)

Description

本発明は、高強度、高導電性、および低熱収縮性を有するCu−Ni−Si系銅合金板材、およびその製造方法に関する。また、その銅合金板材を用いたリードフレームに関する。
電気・電子部品を構成する通電部品に用いる素材(板材)には、基本的特性として「強度」および「導電性」に優れることが要求される。さらに、リードフレーム等の精密部品に加工する素材には、当該部品に加工したときに良好な形状(すなわち高い寸法精度)が得られる性質を具備していることが要求される。
ところが、一般に、銅合金板材において高強度化を図ろうとすると、精密部品に加工する際の寸法精度を良好に維持することが難しくなる。最近では半導体パッケージの小型・薄型化が進み、リードフレームの外周リード部分(アウターリード)を取り除いたQFN(Quad Flat Non−Leaded Package)と呼ばれるパッケージが多用されるようになり、しかも多ピン化のニーズが高まっている。QFNタイプの多ピン化に対応するためには、従来にも増して高強度化と寸法精度の向上を高レベルで実現しうる素材が要求される。
強度と導電性の特性バランスに優れた銅合金として、Cu−Ni−Si系銅合金(いわゆるコルソン合金)がある。この合金系では比較的高い導電率(35〜50%IACS)を維持しながら0.2%耐力800MPa以上の高強度に調整することができる。特許文献1には熱収縮を改善した高強度Cu−Ni−Si系銅合金が記載されている。特許文献2〜5には内部残留応力を低減した高強度Cu−Ni−Si系銅合金が記載されている。熱収縮の改善や内部残留応力を低減は部品の寸法精度向上に有効である。
しかしながら発明者らの検討によれば、これらの文献に開示の銅合金は、多ピン化が進むQFNパッケージのリードフレームをはじめとする精密形状の高強度通電部品に適用するには、熱収縮の面で満足できるレベルに達していない。部品の寸法精度向上のためには素材側での更なる改善が望まれている。
特開2008−115465号公報 特開2011−38126号公報 特開2010−7174号公報 特開2005−48262号公報 特開2004−131829号公報
従来の技術では、QFNパッケージの多ピン化リードフレームのように高い寸法精度が要求される部品に加工することを考慮すると、高強度Cu−Ni−Si系銅合金板材の熱収縮を満足できるレベルまで低減することができない。本発明は、高強度および良好な導電性を有するCu−Ni−Si系銅合金において、部品加工工程の熱処理で問題となる熱収縮を従来よりも低減した銅合金板材を提供しようというものである。
発明者らは研究の結果、高強度Cu−Ni−Si系銅合金板材の熱収縮を安定して顕著に低減するためには、(i)時効処理後に行う仕上冷間圧延のワークロールを太径のものとし、その最終パスでの圧下率を制限すること、(ii)最終的な低温焼鈍で板に付与される張力を一定範囲に厳しくコントロールするとともに、冷却速度が過大とならないように最大冷却速度を厳しく管理すること、が極めて有効であることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する板材であって、圧延平行方向の0.2%耐力が800MPa以上、導電率が35%IACS以上であり、当該板材から圧延平行方向180mm、圧延直角方向50mmの長方形試験片を採取して500℃で10min保持する加熱試験に供したとき、下記(1)式に定義される圧延平行方向の熱収縮率λが0.020%以下となる性質を有する銅合金板材が提供される。
λ(%)=(L0−L1)/L0×100 …(1)
ここで、L0は加熱試験前の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)、L1は加熱試験後の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)である。
上記合金元素のうち、Mg、Cr、Co、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Znは任意添加元素である。上記銅合金板材は、圧延直角方向の板幅が50mm以上であるものが対象となる。このような板材製品は、そのままプレス打抜き工程に供される場合もあるし、さらにスリットされて狭幅の条材としたのち部品加工に供される場合もある。圧延平行方向の0.2%耐力は、長手方向が圧延方向に平行な引張試験片を用いてJIS Z2241:2011に従って測定したオフセット方による0.2%耐力である。
板面(圧延面)について圧延方向に対し直角方向に測定した切断法による平均結晶粒径は例えば3〜50μmである。板厚は例えば0.03〜0.5mmの範囲とすることができるが、QFNタイプの多ピン化リードフレーム用途としては板厚0.08〜0.2mmのものが多用される傾向にある。本発明の銅合金板材はそのようなニーズに対応しうるものである。
また、上記銅合金板材の製造方法として、上記化学組成を有する時効処理後の中間製品板材に、ロール径(直径)70mm以上のワークロールにより、最終パスの圧下率を4〜15%として、トータル圧延率20〜80%の冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
前記仕上冷間圧延工程後の板材に、5N/mm2以上30N/mm2未満の張力を付与しながら250〜550℃好ましくは330〜530℃の温度範囲で加熱した後、最大冷却速度100℃/sec以下で常温まで冷却する工程(低温焼鈍工程)、
を有する銅合金板材の製造方法が提供される。
なお、ある板厚t0(mm)からある板厚t1(mm)までの圧延率は、下記(2)式により求まる。
圧延率(%)=(t0−t1)/t0×100 …(2)
ある圧延パスにおける1パスでの圧延率を本明細書では特に「圧下率」と呼んでいる。
また本発明では、上記の銅合金板材を材料に用いたリードフレームが提供される。
本発明に従うCu−Ni−Si系銅合金板材は、高強度および良好な導電性を具備し、かつ、部品加工段階で熱処理を施したときの「熱収縮」が極めて小さい。この板材は、QFNパッケージ用の多ピン化されたリードフレームなど、高い寸法精度が要求される通電部品に好適である。
《合金組成》
本発明では、Cu−Ni−Si系銅合金を採用する。以下、合金成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
Niは、Ni−Si系析出物を形成する。添加元素としてCoを含有する場合はNi−Co−Si系析出物を形成する。これらの析出物は銅合金板材の強度と導電性を向上させる。Ni−Si系析出物はNi2Siを主体とする化合物、Ni−Co−Si系析出物は(Ni,Co)2Siを主体とする化合物であると考えられる。これらの化合物を本明細書では「第二相」と言うことがある。強度向上に有効な微細な析出物粒子を十分に分散させるためには、Ni含有量を1.0%以上とする必要があり、1.3%以上とすることがより好ましい。2.0%を超える量に管理してもよい。一方、Niが過剰であると粗大な析出物が生成しやすく、熱間圧延時に割れやすい。Ni含有量は4.5%以下に制限される。4.0%未満とすることがより好ましく、3.5%以下に管理してもよい。
Siは、Ni−Si系析出物を生成する。添加元素としてCoを含有する場合はNi−Co−Si系析出物を形成する。強度向上に有効な微細な析出物粒子を十分に分散させるためには、Si含有量を0.1%以上とする必要があり、0.4%以上とすることがより好ましい。一方、Siが過剰であると粗大な析出物が生成しやすく、熱間圧延時に割れやすい。Si含有量は1.2%以下に制限される。1.0%未満に管理してもよい。
Coは、Ni−Co−Si系の析出物を形成して、銅合金板材の強度と導電性を向上させるので、必要に応じて添加することができる。強度向上に有効な微細な析出物を十分に分散させるためには、Co含有量を0.1%以上とすることがより効果的である。ただし、Co含有量が多くなると粗大な析出物が生成しやすいので、Coを添加する場合は2.0%以下の範囲で行う。1.5%未満に管理してもよい。
その他の元素として、必要に応じてMg、Cr、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn等を含有させることができる。これらの元素の含有量範囲は、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%とすることが好ましい。
Cr、P、B、Mn、Ti、Zr、Alは合金強度を更に高め、かつ応力緩和を小さくする作用を有する。Sn、Mgは耐応力緩和性の向上に有効である。Znは銅合金板材のはんだ付け性および鋳造性を改善する。Fe、Cr、Zr、Ti、Mnは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、B、P、Zr、Tiは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
Mg、Cr、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Znの1種または2種以上を含有させる場合は、それらの合計含有量を0.01%以上とすることがより効果的である。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与え、かつコスト的にも不利となる。これら任意添加元素の総量は1.2%以下とすることが望ましく、1.0%以下とすることがより望ましい。
《特性》
〔熱収縮〕
高強度化されたCu−Ni−Si系銅合金板材の金属マトリックスには多くの転位が導入されている。転位のような格子欠陥が導入されると結晶格子の体積が若干膨張する。加工素材である板材製品を成形加工したリードフレーム部材は、その成形加工後に歪取り焼鈍が施されたり、パッケージング化の際に加熱を受けたりして、半導体部品が完成するまでの段階で可動転位が動きうる温度域に加熱される場合が多い。加熱により可動転位が動いて金属マトリックスの内部歪が開放されると、格子欠陥の密度が低減することにより結晶格子の体積が収縮する。この種の収縮現象を本明細書では「熱収縮」と呼んでいる。熱収縮は部品の寸法精度を低下させる要因となる。従って、QFNタイプの多ピン化リードフレームをはじめ、特に高い寸法精度が要求される用途では、従来にも増して熱収縮の小さい板状素材が要求される。
本発明に従う高強度Cu−Ni−Si系銅合金板材はそのような要求に応えるべく、熱収縮の低減を図ったものである。具体的には、当該板材から圧延平行方向180mm、圧延直角方向50mmの長方形試験片を採取して500℃で10min保持する加熱試験に供したとき、下記(1)式に定義される圧延平行方向の熱収縮率λが0.020%以下となる性質を有している。
λ(%)=(L0−L1)/L0×100 …(1)
ここで、L0は加熱試験前の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)、L1は加熱試験後の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)である。
圧延平行方向の0.2%耐力800MPa以上に調整された高強度Cu−Ni−Si系銅合金板材(板厚が例えば0.03〜0.5mm)において、上記の熱収縮率λが0.020%以下に抑えられているものは、同等強度レベルの従来材と比較して顕著な熱収縮低減性能を有している。この熱収縮率λが0.010%以下であることが一層効果的である。熱収縮の顕著な低減は、後述のように、仕上冷間圧延の条件および低温焼鈍の条件を厳しく管理することにより実現できる。
なお、発明者らの検討によれば、単に金属マトリックスの内部残留応力を低減するだけでは、熱収縮を安定して顕著に低減することは困難である。「残留応力の低減」と「熱収縮の低減」がストレートに対応しない理由については必ずしも明確ではないが、熱収縮が実際に小さい材料は、残留応力を増大させている種々の要因の中でも特に「可動転位の残存量」が少なくなっているものと推察される。
〔平均結晶粒径〕
平均結晶粒径は基本的に小さいほど強度の向上に有利であるが、平均結晶粒径が小さすぎると析出物が分散せず強度が低下しやすい。種々検討の結果、最終的な板材製品において、板面(圧延面)について圧延方向に対し直角方向に測定した切断法による平均結晶粒径が3〜50μmであることがより望ましく、5〜30μmであることが一層好ましい。
〔強度・導電性〕
Cu−Ni−Si系銅合金板材をリードフレーム等の通電部品の素材に用いるためには、圧延平行方向(LD)の0.2%耐力800MPa以上の強度レベルが望まれる。一方、通電部品の薄肉化のためには、導電性が良好であるも重要な要件となる。具体的には、導電率35%IACS以上であることが望ましく、40%IACS以上であることがより好ましい。
《製造方法》
以上説明した銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理→時効処理→仕上冷間圧延→(形状矯正)→低温焼鈍」
これに限らず、必要に応じて工程中に熱処理および冷間圧延を加えることができる。
本発明では熱収縮の小さい板材製品を得るために、特に「仕上冷間圧延」、「低温焼鈍」の最終2工程における作り込みが重要である。時効処理までの工程には特にこだわる必要はなく、一般的なCu−Ni−Si系銅合金の製造条件を採用すればよい。
なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。また、仕上冷間圧延後には必要に応じてテンションレベラーによる形状矯正が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Siなどの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
〔熱間圧延〕
熱間圧延は通常の手法に従えばよい。熱間圧延前の鋳片加熱は例えば900〜1020℃で1〜5hとすることができる。トータルの熱間圧延率は例えば70〜97%とすればよい。最終パスの圧延温度は700℃以上とすることが好ましい。熱間圧延終了後には、水冷などにより急冷することが好ましい。
〔冷間圧延〕
溶体化処理前の冷間圧延により、板厚の減少および歪エネルギー(転位)の導入を図る。その歪エネルギーは、溶体化処理での第二相の溶体化に有効に作用する。必要に応じて、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を行うことができる。溶体化処理前の冷間圧延率(中間焼鈍を挟んで冷間圧延を行う場合は最後の中間焼鈍後の冷間圧延率)は、例えば70%以上とすることが効果的である。ミルパワー等による設備的な許容範囲において、通常99%以下の圧延率範囲で行えばよい。
〔溶体化処理〕
溶体化処理を行い、第二相を十分に固溶させる。溶体化処理条件は、加熱保持温度を850〜1020℃の範囲に設定すればよい。850〜980℃の範囲がより好ましい。上記温度範囲に保持する時間は10sec〜10minの範囲で設定すればよい。溶体化処理後の板材において、上述の方法により求まる平均結晶粒径が3〜25μm、より好ましくは5〜20μm、更に好ましくは5〜17μmとなるように、加熱温度および加熱時間を調整することが望ましい。再固溶、再結晶化を確実に行い、かつ平均結晶粒径を上記範囲に調整するための最適な溶体化条件は組成や溶体化処理前の製造条件によって変動するが、予め予備実験により組成や冷間圧延率に応じた最適な溶体化処理ヒートパターン条件を把握しておくことにより、適正条件範囲に設定することが容易となる。なお、530℃から300℃までの平均冷却速度は100℃/sec以上とすることが望ましい。
〔時効処理〕
次いで時効処理を行い、強度に寄与する微細な析出物粒子を析出させる。合金組成に応じて時効で硬さがピークになる温度、時間を予め調整して条件を決めるのが好ましい。具体的には、時効温度は400〜550℃とすることが好ましく、425〜525℃とすることがより好ましい。時効処理時間は、3〜12hの範囲で良好な結果が得られる。時効処理中の表面酸化を極力抑制する場合には、水素、窒素またはアルゴン雰囲気を使うことができる。
〔仕上冷間圧延〕
仕上冷間圧延は強度レベル(特に0.2%耐力)の向上に有効である。仕上冷間圧延率(トータル圧延率)は20%以上とすることが効果的であり25%以上とすることがより効果的である。仕上冷間圧延率が高くなると低温焼鈍時に強度が低下しやすいので80%以下の圧延率とすることが好ましく、70%以下とすることがより好ましい。65%以下の範囲に管理してもよい。最終的な板厚としては、例えば0.03〜0.50mm程度の範囲で設定することができ、0.08〜0.20mmに管理してもよい。
通常、冷間圧延での圧下率を増大させるためには径の小さいワークロールを使用することが有利である。しかし、発明者らの検討によれば、熱収縮の小さい板材製品を製造するためには仕上冷間圧延で径の大きいワークロールを使用することが極めて有効であることがわかった。大径ワークロールを使用することによって、同じ圧延率を従来の小径ワークロールで行った場合に比べ、可動転位の導入量が少なくなるのではないかと推察される。種々検討の結果、直径70mm以上の大径ワークロールを使用することによって熱収縮率λが0.020%以下の板材を得ることが可能となる。特に直径80mm以上のワークロールを用いた場合において、後述の低温焼鈍条件の制限を厳しく管理すれば、熱収縮率λが0.010%以下の板材を作り分けることができる。一方、ワークロール径が過大であると板厚が薄くなるに従って圧下率を十分に確保するために必要なミルパワーが増大し、所定の板厚に仕上げるうえで不利となる。冷間圧延機のミルパワーおよび目標板厚に応じて使用する大径ワークロール設定上限を定めることができる。例えば、トータル圧延率を20%以上として上記板厚範囲の板材を得る場合、直径100mm以下のワークロールを使用することが好ましい。
また、熱収縮を低減させるためには、仕上冷間圧延の最終パスにおける圧下率を15%以下とすることが極めて有効である。12%以下、あるいは10%未満とすることがより好ましい。ただし、最終パスでの圧下率が低すぎると生産性の低下に繋がるので、4%以上の圧下率を確保する。
〔形状矯正〕
仕上冷間圧延を終えた板材に対して、最終的な低温焼鈍を施す前に、テンションレベラーによる形状矯正を施しても構わない。テンションレベラーは圧延方向に張力を付与しながら板材を複数の形状矯正ロールによって曲げ伸ばす装置である。テンションレベラーを通板する場合には伸び率が1.5%以下となる条件とすることが望ましい。
〔低温焼鈍〕
仕上冷間圧延後には、通常、板条材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性向上を目的として低温焼鈍が施される。ただし、本発明では熱収縮の小さい板材製品を得るために、最終的な熱処理である低温焼鈍の条件を厳しく制限する必要がある。
第1に、低温焼鈍の加熱温度を250〜550℃とする。250℃より低温では可動転位の残存量を十分に低減すること難しく、熱収縮の低減効果が不十分となる。550℃より高温になると材料が軟化し所定の高強度を十分に確保することが難しくなる。330〜530℃の範囲とすることがより好ましい。上記温度での保持時間は5〜600secの範囲で設定すればよい。
第2に、上記温度での加熱中に板材に付与される張力を5N/mm2以上30N/mm2未満の範囲にコントロールする。連続ラインにおいては、張力の方向は圧延平行方向となる。張力が5N/mm2を下回ると特に高強度材では可動転位の低減効果が不足し、熱収縮の顕著な低減を安定して実現することが難しくなる。30N/mm2以上になると特に高強度材では残留応力が大きくなりやすく、熱収縮の低減にはマイナス要因となる。25N/mm2以下とすることがより好ましい。なお、上述の仕上冷間圧延にて直径80mm以上のワークロールを用い、かつ当該低温焼鈍での張力を5N/mm2以上25N/mm2以下の範囲に厳しくコントロールすることによって、熱収縮率λが0.010%という、極めて熱収縮の小さい板材製品を作り分けることができる。
第3に、最大冷却速度100℃/sec以下で常温まで冷却する。すなわち、上記加熱後に100℃/secを超える冷却速度とならないように常温(5〜35℃)まで降温させる。最大冷却速度が100℃/secを超えると、急激な冷却により可動転位が多く残存し、熱収縮の低減が不十分となる。冷却時の通板方向に対して板面直角方向(圧延直角方向)の温度分布が不均一になり、十分な平坦性が得られない。加熱後の冷却は例えば冷却ガスを用いた強制冷却とすることができる。その場合、冷却ファン回転数、冷却ゾーンの雰囲気温度、冷却ガスの種類をコントロールすることにより最大冷却速度を100℃/sec以下の範囲に収めることができる。冷却ガスとしては水素、窒素、空気などが使用できる。
表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を1000℃で3h加熱したのち抽出して、厚さ10mmまで熱間圧延した後、水冷した。トータルの熱間圧延率は90〜95%、熱間圧延終了温度は700〜750℃である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで、圧延率90〜99%で冷間圧延を行った。その後、表2に示す条件で溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、および低温焼鈍を行い、板厚0.15mm、圧延直角方向の板幅W0が510mmの板材製品(供試材)を得た。
なお、低温焼鈍はカテナリー炉を連続通板したのち、空冷する方法で行った。加熱時間は10〜90secである。加熱中の張力は炉内を通板中の材料のカテナリー曲線(炉内通板方向両端部および中央部の板の高さ位置、並びに炉内長)から算出した。冷却中の板表面の温度を通板方向の種々の位置で測定することにより、横軸に時間、縦軸に温度をとった冷却温度曲線を求めた。1つの供試材においては通板中の板の全長にわたって同じ条件で冷却しているので、この冷却曲線の最大勾配を当該供試材の最大冷却速度として採用した。供試材毎の冷却速度は、冷却雰囲気、ファン回転数をコントロールすること、また冷却温度を多段階で下げることによって変化させた。
〔導電率〕
JIS H0505に従って各供試材の導電率を測定した。
〔圧延方向の0.2%耐力〕
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、0.2%耐力を測定した。n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。
〔熱収縮〕
各供試材から圧延平行方向長さ180mm、圧延直角方向長さ50mmの長方形試験片を切り出し、窒素雰囲気500℃で10min保持する加熱試験に供した。常温から500℃までの昇温時間は約30secである。加熱後の冷却は、試験片を常温の炉外に出して、水平な台の上に静置して放冷した。加熱試験前の試験片の20℃における圧延平行方向長さL0、および加熱試験後の試験片の20℃における圧延平行方向長さL1から、前記(1)式により熱収縮率λを求めた。L0およびL1は、試験片を水平盤上に置き、試験片の幅中央位置(すなわち圧延直角方向の中央位置)における試験片の圧延平行方向長さをレーザー変位計により測定する方法で求めた。試験数n=3の測定値のうち、最も大きいλ値を当該供試材の成績値として採用した。
〔残留応力〕
各供試材から幅10mm×長さ200mmの試験片(ただし、長手方向が圧延方向に一致)を切り出し、Treuting−Read法(参考文献:米谷茂、「残留応力の発生と対策」、株式会社養賢堂、p.54−56、1975年)により残留応力を求めた。具体的には、特許文献2の段落0029、0030に開示される方法に従った。試験数n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。
〔平均結晶粒径〕
各供試材の板面(圧延面)を研磨しエッチングした表面の光学顕微鏡観察によりJIS H0501の切断法で圧延面に対し平行方向、かつ圧延方向に対し直角方向の既知長さの線分によって完全に切られる結晶粒数を数えることにより平均結晶粒径を求めた。ただし、測定対象の結晶粒の総数を100個以上とする。双晶境界は結晶粒界とみなさない。平均結晶粒径を測定するための光学顕微鏡観察においては、観察領域を300μm×300μmの矩形領域とした。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0006533402
Figure 0006533402
表2からわかるように、本発明例の銅合金板材はいずれもLDの0.2%耐力が800MPa以上の高強度を有するとともに、熱収縮率が0.020%以下に低減されている。残留応力は100MPa以下であり、LDの0.2%耐力800MPa以上の強度レベルを有するCu−Ni−Si系銅合金板材としては低い値である。導電性も良好である。これらの板材は、QFNタイプの多ピン化リードフレームをはじめとする高い寸法精度が要求される精密通電部品の素材として極めて有用である。なお、仕上冷間圧延でのワークロール径を80mm以上とし、かつ低温焼鈍での張力を25N/mm2以下とすることにより、熱収縮率0.010%以下を安定して実現できることがわかる。
これに対し、比較例No.31は仕上冷間圧延でのトータル圧延率が低すぎたので強度レベルが低かった。No.32は低温焼鈍の加熱温度が高すぎたので強度が低下した。No.33、34は仕上冷間圧延の最終パスでの圧下率が過大であったので板材の熱収縮が大きかった。No.35、36は仕上冷間圧延に使用したワークロールの径が過小であったので熱収縮が大きかった。No.37はNi含有量が過大であり、またNo.39はSi含有量が過大であるため、これらは導電性に劣った。No.38はNi含有量が過小であり、またNo.40はSi含有量が過小であるため、これらは強度が低かった。No.41は低温焼鈍での加熱時の張力が過大であるため熱収縮が大きかった。No.42、43は低温焼鈍での最大冷却速度が過大であったので板材の熱収縮が大きかった。No.44は低温焼鈍の加熱温度が低すぎたので熱収縮が大きかった。No.45は仕上冷間圧延率が高すぎたので低温焼鈍時に強度が低下した。No.46は低温焼鈍時の張力が低すぎたので熱収縮が大きかった。

Claims (5)

  1. 質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する板材であって、圧延平行方向の0.2%耐力が800MPa以上、導電率が35%IACS以上であり、当該板材から圧延平行方向180mm、圧延直角方向50mmの長方形試験片を採取して500℃で10min保持する加熱試験に供したとき、下記(1)式に定義される圧延平行方向の熱収縮率λが0.020%以下となる性質を有する銅合金板材。
    λ(%)=(L0−L1)/L0×100 …(1)
    ここで、L0は加熱試験前の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)、L1は加熱試験後の試験片の20℃における圧延平行方向長さ(mm)である。
  2. 板面(圧延面)について圧延方向に対し直角方向に測定した切断法による平均結晶粒径が3〜50μmである請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 質量%で、Ni:1.0〜4.5%、Si:0.1〜1.2%、Mg:0〜0.3%、Cr:0〜0.2%、Co:0〜2.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Mn:0〜0.2%、Sn:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.2%、Fe:0〜0.3%、Zn:0〜1.0%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する時効処理後の中間製品板材に、ロール径70mm以上のワークロールにより、最終パスの圧下率を4〜15%として、トータル圧延率20〜80%の冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
    前記仕上冷間圧延工程後の板材に、5N/mm2以上30N/mm2未満の張力を付与しながら250〜550℃の温度範囲で加熱した後、最大冷却速度100℃/sec以下で常温まで冷却する工程(低温焼鈍工程)、
    を有する請求項1または2に記載の銅合金板材の製造方法。
  4. 前記低温焼鈍工程において、加熱の温度範囲を330〜530℃とする請求項3に記載の銅合金板材の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の銅合金板材を材料に用いたリードフレーム。
JP2015059909A 2015-03-23 2015-03-23 Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム Active JP6533402B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015059909A JP6533402B2 (ja) 2015-03-23 2015-03-23 Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015059909A JP6533402B2 (ja) 2015-03-23 2015-03-23 Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016180131A JP2016180131A (ja) 2016-10-13
JP6533402B2 true JP6533402B2 (ja) 2019-06-19

Family

ID=57132365

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015059909A Active JP6533402B2 (ja) 2015-03-23 2015-03-23 Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6533402B2 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6788471B2 (ja) * 2016-10-14 2020-11-25 Dowaメタルテック株式会社 Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材および製造方法並びに導電部材
JP6472477B2 (ja) 2017-03-30 2019-02-20 Jx金属株式会社 Cu−Ni−Si系銅合金条
JP6762333B2 (ja) * 2018-03-26 2020-09-30 Jx金属株式会社 Cu−Ni−Si系銅合金条
WO2020004034A1 (ja) * 2018-06-28 2020-01-02 古河電気工業株式会社 銅合金板材及び銅合金板材の製造方法並びに銅合金板材を用いたコネクタ
CN109909314B (zh) * 2019-01-31 2021-01-29 武汉船用机械有限责任公司 合金板的加工方法
CN111705238A (zh) * 2020-07-20 2020-09-25 华东交通大学 一种高强高导耐热铜合金材料
CN113249666A (zh) * 2021-05-14 2021-08-13 太原晋西春雷铜业有限公司 一种降低Cu-Ni-Si合金热收缩率的制备方法
CN113774250B (zh) * 2021-09-24 2024-05-10 佛山市顺德区精艺万希铜业有限公司 一种高强度高导热高耐蚀铜合金及其制备方法
CN114277280B (zh) * 2021-12-07 2023-01-06 宁波博威合金材料股份有限公司 一种析出强化型锡黄铜合金及其制备方法
WO2023106262A1 (ja) * 2021-12-08 2023-06-15 古河電気工業株式会社 銅合金板材およびその製造方法、ならびに電子部品および絞り加工品
CN117051285B (zh) * 2023-10-12 2023-12-15 中铝科学技术研究院有限公司 铜镍硅合金、其制备方法及应用

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6696720B2 (ja) * 2013-07-11 2020-05-20 古河電気工業株式会社 銅合金板材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016180131A (ja) 2016-10-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6533402B2 (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム
JP6154565B1 (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板材および製造法
JP5158910B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
JP4934759B2 (ja) 銅合金板材及びこれを用いたコネクタ並びに銅合金板材の製造方法
JP5156317B2 (ja) 銅合金板材およびその製造法
JP5140045B2 (ja) 電子材料用Cu−Ni−Si系合金板又は条
KR20170113410A (ko) 구리합금 판재 및 구리합금 판재의 제조 방법
TWI582249B (zh) Copper alloy sheet and method of manufacturing the same
WO2017168890A1 (ja) Al-Mg―Si系合金材、Al-Mg―Si系合金板及びAl-Mg―Si系合金板の製造方法
JP2017179553A (ja) プレス打抜き性の良好なCu−Zr系銅合金板材および製造方法
JP4834781B1 (ja) 電子材料用Cu−Co−Si系合金
JP2017179457A (ja) Al−Mg―Si系合金材
JP2017179442A (ja) Al−Mg―Si系合金材
JP2017179445A (ja) Al−Mg―Si系合金板
JP6533401B2 (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム
JP6573503B2 (ja) Cu−Ni−Co−Si系高強度銅合金薄板材およびその製造方法並びに導電ばね部材
JP2013104068A (ja) 電子材料用Cu−Ni−Si−Co系銅合金
JP6730784B2 (ja) 電子部品用Cu−Ni−Co−Si合金
JP2017179456A (ja) Al−Mg―Si系合金材
JP6246173B2 (ja) 電子部品用Cu−Co−Ni−Si合金
WO2017168891A1 (ja) Al-Mg―Si系合金板の製造方法
JP2017179443A (ja) Al−Mg―Si系合金材
JP2017179444A (ja) Al−Mg―Si系合金板
JP6246454B2 (ja) Cu−Ni−Si系合金及びその製造方法
JP2017179446A (ja) Al−Mg―Si系合金板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180123

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181212

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190312

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190514

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190524

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6533402

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250