JP2017042225A - 医療用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】腹水濾過濃縮治療法(CART)等の癌細胞を含む体液の濾過方法において、タンパク質溶液(処理前の体液)中の有用なタンパク質を残しつつ、癌細胞を選択的に除去し、濾過用フィルタの目詰まりを有効に防ぐ医療用部材を提供する。【解決手段】ポリ塩化ビニルを含む本体と、その表面の少なくとも一部に設けられた一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜とを有する医療用部材。式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。【選択図】なし

Description

本発明は、医療用部材に関し、特に、腹水、胸水、心嚢液等の体腔液やその他の体液の濾過システム及び体液濾過方法等で使用するのに適した医療用部材に関する。
例えば難治性腹水症の治療法として、患者から腹水を採取し、当該腹水を濾過して癌細胞や細菌などの病因物質を除去し、次に、そのアルブミンなどのタンパク質の有用物質を含む濾過液を濃縮し、その後、当該濃縮液を体内に再注入する腹水濾過濃縮再静注法(Cell−free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy 略してCART)がある。
かかる治療法には、通常腹水処理システムが用いられ、当該腹水処理システムは、代表的な例としては、腹水バッグと、濾過器と、濃縮器と、濃縮腹水バッグとをこの順番で直列的に接続した液体回路を備えている。
ところで、腹水処理システムの濾過器は、筒状容器の内部に濾過膜としての中空糸膜束が配置されており、中空糸膜束の両端部は、筒状容器の両端部にポッティング材によりポッティング加工され、開口端面を形成している。この濾過器は、従来は、腹水を中空糸膜の内側から外側に流して濾過を行う内圧方式で用いるのが一般的であったが、近年、その逆の方式、すなわち腹水を中空糸膜の外側から内側に流して濾過を行う外圧方式で用いることが提案されている(特許文献1、2参照)。
腹水は、癌細胞等の比較的大きな物質を含み極めて粘度が高く、濾過器の短時間の使用でも、中空糸膜に目詰まりが生じやすい。そのため、前記外圧方式を用いて、腹水を相対的に表面積の大きい中空糸膜の外側から内側に流して濾過を行うと、中空糸膜の目詰まりを緩和させて、濾過器のライフタイムを延すことができると報告されている。
しかしながら、外圧方式で濾過した場合、中空糸膜束の中心部側(束中)に位置する中空糸膜は、互いに密集し、束の外周部側(束外)に位置する中空糸膜に覆われているため、腹水のように粘度が高いと、束の中心部の中空糸膜まで腹水が届かず、結果として濾過能力が低下してしまう。
さらに、濾過膜に対する目詰まりの原因を取り去らないことには、腹水を中空糸の内側から入れても外側から入れても途中目詰まりを起こして最後まで治療を行うことが出来ないことに変わりがない。
目詰まりの原因は腹水中に含まれる癌細胞がその一つと考えられるところ、癌細胞吸着材料として特定のポリマーの水和物が知られている。(特許文献3)
特開2009−297242号公報 特開2011−172797号公報 特開2012−105579号公報
このように、腹水濾過濃縮治療法(CART)等の癌細胞を含む体液の濾過方法においては、タンパク質溶液(処理前の体液)中の有用なタンパク質を残しつつ、癌細胞を選択的に除去し、濾過用フィルタの目詰まりを有効に防ぐことが課題となっている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特定の癌細胞選択付着性ポリマーをコートした医療部材を用いて、具体的には体液を貯留しておくためのバッグや体液を濾過用フィルタに導入する流路としてその表面(内側表面、体液と接する表面)に特定の癌細胞選択付着性ポリマーをコートしたものを用いるなどして、濾過前に癌細胞の少なくとも一部を予め排除しておけば、濾過フィルタを目詰まりさせることなく、体液濾過を最後まで行うことが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の態様は以下を含む。
[1]ポリ塩化ビニルを含む本体と、
その表面の少なくとも一部に設けられた一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜と
を有する医療用部材。
式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
[2]癌細胞成分を含む体液を貯留する貯留容器、又は、癌細胞成分を含む体液を流す流路である、[1]に記載の医療用部材。
[3]前記貯留容器がバッグであり、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を内側表面に有している、[2]に記載の医療用部材。
[4]前記流路がチューブであり、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を内側表面に有している、[2]に記載の医療用部材。
[5]体液濾過装置に用いられ、濾過用フィルタの入口側に設置される[1]〜[4]の何れかに記載の医療用部材。
[6]全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線において、1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P1)が、ポリ塩化ビニルについて同条件で全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線における1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P2)に対して(P1/P2)、1.15以上である、
[1]〜[5]の何れかに記載の医療用部材。
[7]前記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料の数平均分子量が8,000〜300,000である、[1]〜[6]の何れかに記載の医療用部材。
[8]一般式(1)中R1が、水素原子であり、R2が、メチル基であり、mが1である、[1]〜[7]の何れかに記載の医療用部材。
[9]一般式(1)中R1が、水素原子であり、R2が、エチル基であり、mが2である、[1]〜[8]の何れかに記載の医療用部材。
[10]一般式(1)中R1が、メチル基であり、R2が、メチル基であり、mが2である、[1]〜[9]の何れかに記載の医療用部材。
[11]一般式(1)中R1が、メチル基であり、R2が、エチル基であり、mが2である、[1]〜[9]の何れか一項に記載の医療用部材。
[12]ポリ塩化ビニルを含む本体と、その表面の少なくとも一部に設けられた一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を有する医療用部材の製造方法であって、
前記ポリ塩化ビニルを含む本体の表面の少なくとも一部に、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含有するコート液を接触させる工程
を有する、医療用部材の製造方法。
式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
[13]前記コート液が、水及び有機溶媒を含有し、前記有機溶媒が、エタノール、メタノール又はその混合物である、[12]に記載の医療用部材の製造方法。
[14]体液を貯留する貯留容器と、
前記体液中に存在する癌細胞を分離可能な濾過用フィルタと、
一端が前記貯留容器に接続され、他端が前記濾過用フィルタの入り口に接続された第1の流路と、
前記濾過用フィルタで濾過された溶液を回収する回収容器と
を備える体液濾過装置であって、
前記貯留容器及び/または前記第1の流路が、内側表面の少なくとも一部に、下記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を有している、体液濾過装置。
式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
本発明によれば、腹水濾過濃縮治療法(CART)等の体液濾過方法において、タンパク質溶液(処理前の体液)中の有用なタンパク質を残しつつ、癌細胞を選択的に除去し、濾過用フィルタの目詰まりを有効に防ぐことができる。
腹水処理システムの構成の概略を示す説明図である。 濾過用フィルタの縦断面の説明図である。 筒状容器の横断面を示す説明図である。 中空糸膜間の距離を示す説明図である。 中空糸膜の径を示す説明図である。 中空糸膜のクリンプ形状を説明するための説明図である。 実施例の腹水処理システムを示す説明図である。 ポリ塩化ビニル表面とポリ塩化ビニルにPMEAを塗布した物のATR解析図 癌細胞の付着状態を示す写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。
なお、図面については、その上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
さらに、以下の実施の形態は本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
本実施形態の医療用部材は、ポリ塩化ビニルを含む本体と、その表面の少なくとも一部に、以下の一般式(1)で表される構造を有する高分子材料(以下、単に「一般式(1)の高分子材料」ということがある。)を含む被膜を有する。
式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。R2が、メチル基である場合、mが1又は2であることが好ましい。R2が、エチル基である場合、mが2であることが好ましい。
一般式(1)の高分子材料は血液適合性材料として知られるが、本発明者らの研究によれば、癌細胞を吸着する性質も有していることが分かった。しかも、一般式(1)の高分子材料は、ポリ塩化ビニルを含む基材上に強固に固定され得ることも判明した。そのため、一般式(1)の高分子材料を含む被膜は、ポリ塩化ビニルを含む各種の医療用部材上に安定して設けることができる。
なお、一般式(1)の高分子材料がポリ塩化ビニルを含む基材上に強固に固定される理由は明らかではないが、両者の間に何等かの相互作用(例えば、分子同士の絡み合いやポリ塩化ビニル表面とのアンカー効果など)が生じているためと推定される。
さらに、本発明者らの研究によれば、一般式(1)の高分子材料は、癌細胞を選択的に吸着し、他のタンパク質(例えば、アルブミンなどの有用タンパク質)やその他の成分はほとんど吸着しないことも判明した。
そのため、本実施形態の医療用部材を用いれば、有用なタンパク質に影響を及ぼすことなく、不要な癌細胞だけを選択的に吸着除去することができる。
一般的な医療用部材の材料であるポリ塩化ビニルもまた、若干の癌細胞吸着性能を有してはいる。しかしながら、吸着対象について選択性がないため、癌細胞に限らず、体液に含まれる有用タンパク質およびその他の成分も吸着する。そのため、癌細胞に対して吸着することができても多くの癌細胞を吸着させることは出来ないと考えられる。
本実施形態において、一般式(1)の高分子材料の数平均分子量は8,000〜300,000であることが好ましい。数平均分子量が8,000未満であると、ポリ塩化ビニル表面との間の相互作用が十分でなく、基材表面から一般式(1)の高分子材料が溶出する傾向があり、また、数平均分子量が300,000より大きいと、取り扱いやすさ(粘着性や硬さ等)とコート液を調製する際の溶媒への溶解性が悪くなる傾向が見られる。数平均分子量は、より好ましくは、10,000〜250,000である。一般式(1)の高分子材料の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などにより測定することができる。
本実施形態において、医療用部材としては、腹水等の癌細胞を含む体液を濾過するための濾過装置内で用いられる各種部材が挙げられ、特に、濾過用フィルタの入口側(入口より上流)で使用される医療用部材に適している。具体的には、処理前の体液を貯留するための貯留容器(バッグ)や、濾過用フィルタまで体液を流すための流路(チューブ)等が挙げられる。
医療用部材の本体は、ポリ塩化ビニルを含む。これにより、一般式(1)の高分子材料を含む被膜を強固に固定すると共に、軟質な性状を実現している。
ここで、ポリ塩化ビニルとは、塩化ビニルに由来する単位を含む重合体をいい、塩化ビニルの単独重合体であってもよいし、塩化ビニルと他の単量体成分との共重合体であってもよい。塩化ビニルに由来する単位は、50質量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
医療用部材の表面に存在させる一般式(1)の高分子材料の量に限定はないが、その量が多いほど、医療用部材の癌細胞吸着能は高くなる。 そのため、全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線において、1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P1)が、ポリ塩化ビニルについて同条件で全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線における1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P2)に対して(P1/P2)、1.15以上であることが好ましい。
一般式(1)の高分子材料を含む被膜は、医療用部材の表面(具体的には、体液と接することになる表面)の少なくとも一部に設けられていればよい。一般式(1)の高分子材料を含む被膜は、医療用部材の体液と接する表面全面に設けられていることが好ましいが、一方で連続膜として形成することが困難な場合もある。したがって、一般式(1)の高分子材料を含む被膜は、少なくとも医療用部材の体液と接する表面(貯留容器や流路の場合、内側表面)の全面に亘って設けることが好ましい。
本実施形態において、医療用部材本体の表面に一般式(1)の高分子材料を含む被膜を設ける方法に限定はないが、例えば、一般式(1)の高分子材料を含有するコート液を医療用部材本体にコーティングする方法が好適に用いられる。
コート液の溶媒は、ポリ塩化ビニルを溶解しない溶媒であって、一般式(1)の高分子材料を溶解する又は分散させることのできるものであれば特に限定されるものではない。工程の安全性や、続く乾燥工程での取り扱いの良さから、水やアルコール水溶液が好ましい。沸点、毒性の観点から、水、エタノール水溶液、メタノール水溶液、及び、イソプロピルアルコール水溶液などが好適に用いることができ、特に、エタノール水溶液、メタノール水溶液、及び、エタノール/メタノール混合水溶液が好ましい。
コート液の溶媒が、水と有機溶媒の混合溶媒である場合の有機溶媒の混合比率は、一般式(1)の高分子材料の種類にもよるが、一般式(1)の高分子材料を溶解する限度で、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが好ましい。
コート液の一般式(1)の高分子材料の濃度に限定はないが、例えば、コート液の0.001質量%〜1質量%とすることができ、0.005質量%〜0.3質量%であることがより好ましい。
一般式(1)の高分子材料を含有するコート液を医療用部材本体にコーティングする方法に限定はないが、例えば、本体(貯留容器(バッグ)、流路(チューブ)等)にコート液を通液(必要に応じて保持)して、その表面(内側表面)にコート液を接触させることにより、被覆させることができる。
コーティング後、乾燥を行うことが好ましく、乾燥方法に制限はないが、恒量となるまで減圧乾燥してもよいし、加熱乾燥してもよい。加熱乾燥の温度は、モジュールの部材が劣化しない温度であれば、工程の時間との兼ね合いで適宜設定すればよい。
次に、本実施形態の医療用部材を備えた体液濾過装置について、その一例である図1に示す腹水処理システム1を用いて説明する。
図1に示すように腹水処理システム1は、腹水処理回路10を備えている。腹水処理回路10は、体液貯留部としての腹水バッグ20と、濾過用フィルタ21と、濃縮器22と、濃縮液貯留部としての濃縮腹水バッグ23と、腹水バッグ20と濾過用フィルタ21を接続する第1の流路24と、濾過用フィルタ21と濃縮器22を接続する第2の流路25と、濃縮器22と濃縮腹水バッグ23を接続する第3の流路26とを有している。
腹水バッグ20は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質性の樹脂からなる容器であり、患者から採取された腹水を収容できる。
第1の流路24は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質性のチューブであり、腹水バッグ20の出口から濾過用フィルタ21の後述の側面部のポート45に接続されている。第1の流路24には、例えばチューブポンプ30が設けられ、腹水バッグ20の腹水を濾過用フィルタ21に送ることができる。なお、チューブポンプ30を設けずに、腹水バッグ20の腹水を重力落下により濾過用フィルタ21に供給するようにしてもよい。
濾過用フィルタ21は、筒状容器40を有し、筒状容器40の内部には、その長手方向に沿って中空糸膜束(中空糸膜41の束)42が配置されている。中空糸膜41は、腹水から癌細胞、細菌などの所定の病因物質を除去し、それ以外のアルブミンなどのタンパク質の有用物質を含む成分を通過させることができる。筒状容器40の上部及び下部には、中空糸膜41の内側(空間)に通じるポート43、44が設けられ、筒状容器40の側面部には、中空糸膜41の外側(空間)に通じる2つのポート45、46が設けられている。濾過用フィルタ21の側面部のポート45は、腹水バッグ20に通じている。濾過用フィルタ21の側面部のポート46は、中空糸膜41を通過しない成分が排液される図示しない排液部に連通している。濾過用フィルタ21の上部のポート43は、後述の濃縮器22に連通し、濾過用フィルタ21の下部のポート44は、例えば閉鎖されている。濾過用フィルタ21の筒状容器40の内容構成の詳細は後述する。
第2の流路25は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質性チューブであり、濾過用フィルタ21の上部のポート43から濃縮器22のポート63に接続されている。第2の流路25には、例えばチューブポンプ50が設けられ、濾過用フィルタ21で濾過された濾過液を濃縮器22に送ることができる。
濃縮器22は、上記濾過用フィルタ21と同様に、筒状容器60を有し、筒状容器60の内部には、その長手方向に沿って濃縮膜としての中空糸膜束(中空糸膜61の束)62が配置されている。中空糸膜61は、濾過液中の水分を通過させて水分を除去し、濾過液を濃縮することができる。筒状容器60の上部及び下部には、中空糸膜61の内側空間に通じるポート63、64が設けられ、筒状容器60の側面部には、中空糸膜61の外側空間に通じる2つのポート65、66が設けられている。濃縮器22の上部のポート63は、濾過用フィルタ21のポート43に連通し、濃縮器22の下部のポート64は、濃縮腹水バッグ23に連通している。濃縮器22の側面部の一つのポート65は、濾過液から排出された水分が排液される排液部に連通し、ポート66は閉鎖されている。なお、かかる濃縮器22は、図1のシステムにおいては内圧方式を用いているが、外圧方式を用いてもよい。
第3の流路26は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質性チューブであり、濃縮器22の下部のポート64から濃縮腹水バッグ23に接続されている。
濃縮腹水バッグ23は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質性の樹脂からなる容器であり、濃縮器22で濃縮された有用物質を含む濃縮液を収容できる。
次に、濾過用フィルタ21の筒状容器40の内部構成について説明する。図2は、濾過用フィルタ21の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
濾過用フィルタ21は、上述のように筒状容器40を有し、筒状容器40の内部にその長手方向に沿って中空糸膜束42が配置されている。筒状容器40は、円筒状の容器胴部40aと、容器胴部40aの両端開口を閉鎖するヘッダー40bにより構成されている。ポート43、44は、ヘッダー40bに形成され、ポート45、46は、容器胴部40aに形成されている。
中空糸膜束42の両端部は、筒状容器40の両端部において硬化性樹脂のポッティング材70によりポッティング加工されている。これにより、中空糸膜束42の両端部は、筒状容器40に固定され、筒状容器40の両端部には、中空糸膜束42の各中空糸膜41の内側が開口する開口端面71が形成される。筒状容器40の内部の中空糸膜41の外側空間は、筒状容器40の側面部のポート45に連通している。中空糸膜41の内側空間は、開口端面71を通じて、ポート43に連通している。かかる構成により、腹水がポート45から中空糸膜41の外側空間に流入し、中空糸膜41を介して中空糸膜41の内側空間
に流入して、腹水から病因物質を濾過して除去できる。中空糸膜41の内側空間に流入した濾過液は、開口端面71を通じてポート43から排出できる。
中空糸膜41は、筒状容器40の内部横断面において中空糸膜束42の充填率Jは好ましくは10%以上68%以下になるように分散されて配置されていることが望ましい。中空糸膜束42の充填率Jは、図3に示すように容器胴部40aの内部の横断面面積をS(容器胴部40aの内径Kとした場合、S=(K/2)2×π)、1本の中空糸膜41の断面積s、中空糸膜束42の総本数をNとした場合、次式(1)で表せられる。
中空糸膜束42の充填率J=s×N/S×100(%)・・・・(式1)
なお、容器胴部40aの断面積Sは、容器胴部40aの長手方向に沿って変化する場合には最小部分の面積とする。
中空糸膜41は、互いに密集しないように分散されて配置されている。ここで「分散されて配置」とは、中空糸膜同士が密着しないように、例えばエアーを吹き付けるなどして、一定の範囲中に略均一に中空糸膜が配置されるよう処理された状態のことをいう。具体的には、中空糸膜束42において、任意の中空糸膜41に対して、最も近い4つの中空糸膜との距離をD1、D2、D3、D4(図4に示す)とし、これらを5つの中空糸膜について測定した際の最大値を、最大中空糸膜間距離と定義し、本実施形態本発明においては、最大中空糸膜間距が300μm以上になるように分散されていることが好ましい。同様に、任意の5つ中空糸膜のD1〜D4を全て平均したものを平均中空糸膜間距離と定義した際、本実施形態本発明においては、平均中空糸膜間距離は150μm以上になるように中空糸膜41が分散されていることが好ましい。尚、ここで述べている「最大中空糸膜間距離」および「平均中空糸膜間距離」の好ましい値については、少なくとも容器の内部横断面の中心点を中心とする半径5mmの円が示す領域内に存在する中空糸膜について成立することが好ましく、容器の内部横断面の半径が5mm以下であった場合は、すべての中空糸膜について成立することが好ましい。
さらに、図2に示す中空糸膜束42の両開口端面71間の距離Lは、好ましくは50mm以上240mm以下、より好ましくは100mm以上240mm以下、さらに好ましくは150mm以上240mm以下に設定されている。なお、距離Lが50mmよりも小さいと、膜面積が等しくなるように設計した場合に、中空糸膜41の本数Nが大きくなり、かえって束中まで腹水が到達しなくなるので好ましくない。距離Lが240mmよりも大きいと、モジュール全体としての流路が狭くなるため、ポート45から入った腹水がポート43から出ていくまでのどこかで目詰まりを起こした際に圧力上昇しやすくなるため好ましくない。
中空糸膜束42の有効膜面積(中空糸膜41の内周(中空糸膜41の内径d(図4に示す)×π)×開口端面間距離L×中空糸膜の本数N)は、好ましくは0.7m2以上3.0m2以下、より好ましくは1.0m2以上2.5m2に設定されている。なお、中空糸膜束42の有効膜面積が0.7m2よりも小さいと、濾過器全体としての濾過能力が低下するので好ましくない。中空糸膜束42の有効膜面積が3.0m2よりも大きいと、少量の腹水を処理する際にロスが大きくなるので好ましくない。
中空糸膜41の内径dは、例えば50μm以上500μm以下、好ましくは100μm以上450μm以下に設定されている。なお、内径dが50μmよりも小さいと、中空糸膜内部でタンパク質等が堆積した際に目詰まりしやすくなるので好ましくない。また、内径dが500μmよりも大きいと、中空糸製造時の収率が著しく低下するので好ましくない。
なお、中空糸膜41の本数Nは、例えば2000本以上10000本以下、好ましくは3000本以上9000本以下である。また、中空糸膜41の孔の直径は、例えば0.010μm以上10μm以下、好ましくは、0.05μm以上5μm以下である。中空糸膜41の外径は、例えば200μm以上600μm以下、好ましくは300μm以上500μm以下である。なお、中空糸膜41の本数Nが2000本よりも少ないと、モジュール全体としての濾過能力が低下するため好ましくない。本数Nが10000本よりも大きいと充填率が増加し目詰まりしやすくなるので好ましくない。また、中空糸膜41の孔の直径が0.010μmよりも小さいと、目詰まりしやすくなるので好ましくない。中空糸膜41の孔の直径が10μmよりも大きいと、癌細胞や細菌などのほとんどを濾過できなくなるので好ましくない。
次に、腹水処理システム1で行われる腹水処理について説明する。
先ず、患者から採取した腹水を収容した腹水バッグ20が第1の流路24に接続される。次に、チューブポンプ30、50が駆動し、腹水バッグ20の腹水が、第1の流路24を通って濾過用フィルタ21のポート45から筒状容器40の中空糸膜41の外側空間に供給される。腹水は、中空糸膜41の外側空間から中空糸膜41の孔を通って内側空間に流入し、この際に、癌細胞や細菌などの所定の病因物質が除去され濾過される。中空糸膜41を通過した濾過液は、ポート43から第2の流路25に流出し、第2の流路25を通って濃縮器22のポート63から中空糸膜61の内側空間に流入する。濃縮器22では、濾過液が中空糸膜61の内側空間を通過し、濾過液中の水分が濃縮膜の中空糸膜61を通じて中空糸膜61の外側空間に排出され、濾過液が濃縮される。濃縮器22で濃縮されたアルブミンなどの有用物質を含む濃縮液は、ポート64から第3の流路26に排出され、第3の流路26を通じて濃縮腹水バッグ23に送られ収容される。こうして、腹水バッグ20内の全ての腹水が、濾過濃縮されると、腹水処理が終了する。その後、濃縮腹水バッグ23の濃縮液は、患者に再注入される。
本実施形態においては、濾過用フィルタ21の中空糸膜41が筒状容器40の内部横断面において中空糸膜束42の充填率Jが10%以上68%以下になるように分散されて配置されている。
本実施形態において、濾過用フィルタ21の中空糸膜41が、クリンプ形状を有していてもよい。すなわち、中空糸膜41が、図6に示すように波状に湾曲していてもよい。クリンプの振幅は、0.2mm以上〜1.2mm以下、波長が3.0mm以上〜16mm以下が好ましい。かかる場合、中空糸膜41間に隙間ができやすく、腹水が中空糸膜束42の中心部側に侵入しやすくなる。なお、クリンプの振幅及び波長は、濾過用フィルタ21内で不規則になっている方が、中空糸膜束42の中心部側に腹水が侵入しやすいので好ましい。
以上、添付図面を参照しながら本実施形態の体液濾過装置の一例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、筒状容器40の構成は、これに限られず他の構成を有するものであってもよい。また、腹水処理システム1や腹水処理回路10の構成は、これに限られず他の構成を有するものであってもよい。また、腹水以外の他の体腔液、例えば胸水を処理する胸水処理システムにも本発明の濾過装置は適用できる。なお、この胸水処理システムは、以上の腹水処理システムと同じ構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
以下の実施例において、本実施形態の医療用部材を用いた濾過装置について目詰まりの緩和、濾過能力の維持について検証した実験結果を示す。
[一般式(1)の高分子材料の作製]
(1)PMEA(ポリメトキシエチルアクリレート)の作製
2−メトキシエチルアクリレート15gを1,4−ジオキサン60g中でアゾビスイソブチロニトリル(0.1重量%)を開始剤として、窒素バブリングしながら75℃で10時間重合を行った。重合反応終了後、得られた重合溶液をn−ヘキサンに滴下し、生成物を沈殿させ、単離した。得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解し、さらに2回n−ヘキサンを用いて精製を行った。精製物を一昼夜減圧乾燥した。無色透明で水飴状のポリマーが得られた。収量(収率)は12.3g(82.0%)であった。
得られたポリマー構造がPMEAであることは、1H−NMRによって確認した。
また、GPCの分子量分析の結果から、その数平均分子量(Mn)は20,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
(2)PEt2A(ポリ[2−(2−エトキシエトキシ)エチル アクリレート])の作製
2−(2−エトキシエトキシ)エチル アクリレート15gを1,4−ジオキサン60g中でアゾビスイソブチロニトリル(0.1重量%)を開始剤として、窒素バブリングしながら75℃で10時間重合を行った。重合反応終了後、得られた重合溶液をn−ヘキサンに滴下し、生成物を沈殿させ、単離した。得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解し、さらに2回n−ヘキサンを用いて精製を行った。精製物を一昼夜減圧乾燥した。無色透明で水飴状のポリマーが得られた。収量(収率)は12.0g(80.0%)であった。
得られたポリマー構造がPEt2Aであることは、1H−NMRによって確認した。
また、GPCの分子量分析の結果から、その数平均分子量(Mn)は11,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.9であった。
(3)PMe2MA(ポリ[2−(2−メトキシエトキシ)エチル メタクリレート])の作製
2−(2−メトキシエトキシ)エチル メタクリレート10gを1,4−ジオキサン50g中でアゾビスイソブチロニトリル(0.1重量%)を開始剤として、窒素バブリングしながら80℃で8時間重合を行った。重合反応終了後、得られた重合溶液をn−ヘキサンに滴下し、生成物を沈殿させ、単離した。得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解し、さらに2回n−ヘキサンを用いて精製を行った。精製物を一昼夜減圧乾燥した。無色透明で水飴状のポリマーが得られた。収量(収率)は8.2g(82.0%)であった。
得られたポリマー構造がPMe2MAであることは、1H−NMRによって確認した。
また、GPCの分子量分析の結果から、その数平均分子量(Mn)は104,300であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.6であった。
(4)PEt2MA(ポリ[2−(2−エトキシエトキシ)エチル メタクリレート])の作製
2−(2−エトキシエトキシ)エチル メタクリレート15gを1,4−ジオキサン60g中でアゾビスイソブチロニトリル(0.1重量%)を開始剤として、窒素バブリングしながら75℃で2時間重合を行った。重合反応終了後、得られた重合溶液をn−ヘキサンに滴下し、生成物を沈殿させ、単離した。得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解し、さらに2回n−ヘキサンを用いて精製を行った。精製物を一昼夜減圧乾燥した。無色透明で水飴状のポリマーが得られた。収量(収率)は5.2g(34.7%)であった。
得られたポリマー構造がPEt2MAであることは、1H−NMRによって確認した。
また、GPCの分子量分析の結果から、その数平均分子量(Mn)は142,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は6.1であった。
[赤外ATR(全反射法)による一般式(1)の高分子材料の表面存在比測定]
サンプルの測定手順は以下のようにした。
ポリ塩化ビニル基材(腹水濾過濃縮再静注用回路 型式AF−CART 発売元 旭化成メディカル)単体と、ポリ塩化ビニル基材に一般式(1)の高分子材料を塗布した試料を用意し、その表面を蒸留水で洗浄し、37℃で2時間真空乾燥後、室温で放置したものについて測定表面を上向きにしてその部分の任意の5か所についてプリズムを圧しあて赤外ATR測定を行った(1690cm-1〜1770cm-1)。プリズムは日本分光株式会社製のATR−30−Z(ZnSe、屈折率2.4)を用い、入射角は60度とした。
一般式(1)で表される構造を有する高分子材料のエステル基−O−C=Oも、基材であるポリ塩化ビニルも共に1735cm-1付近に赤外吸収ピークを有するので、ポリ塩化ビニル基材に一般式(1)の高分子材料を塗布した試料及びポリ塩化ビニル基材単体の1735cm-1の赤外吸収ピークのピーク強度面積(いずれも1690cm-1と1770cm-1をベースラインとしたピーク面積)を、各々、P1及びP2とし、P1/P2の比の平均値から分離膜表面の一般式(1)の高分子材料の存在量を測定した。
[濾過用フィルタの作製]
高密度ポリエチレン(商品名サンテックHDJ240 旭化成ケミカルズ(株)社製)のペレットを147℃で加熱し、ポンプで押出したものに対して、22mL/minの流量で窒素を通気させ、冷却することにより中空状の原糸を得た。続いて、温度70℃〜120℃、ロール速度5〜30m/minで延伸後巻き取り、330mmに切断することで微多孔を有する中空糸膜束中間品を得た。さらに、この中空糸膜束中間品を、58%の1−プロパノール水溶液に溶解させたEVALコート液(商品名ソアレジン 日本合成化学(株)社製)に1時間浸漬後、60℃で乾燥させることで、中空糸膜束を得た。中空糸膜
の内径は280μm、膜厚は50μm、外径は380μmであり、孔の直径は0.2μmであった。得られた中空糸膜束を、ポリカーボネート製(容器胴部の内径50.5mm)の筒状容器に装填し、両端をポリウレタン樹脂でポッティング加工後、25kGyの線量でγ滅菌することで、濾過用フィルタを得た。
[癌細胞付着試験]
(1)癌細胞の培養細胞:財団法人ヒューマンサイエンス振興団ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手した資源番号JCRB9113 HT1080細胞。
培地:DMEM/F12(1:1)(GIBCO)+10%ウシ胎仔血清(Fetal bovine serum:FBS)(Equitech−Bio,Inc.)+1%ペニシリン(Penicillin−Streptomycin)(GIBCO)インキュベーター(SANYO,MCO−19AIC(UV))[37℃・CO2濃度5%・湿度100%]
の条件下で培養を行い、培地交換は2日おきに実施した。
(2)試料の作成
・ポリ塩化ビニル基材:ポリ塩化ビニル基材(腹水濾過濃縮再静注用回路 型式AF−CART 発売元 旭化成メディカル)を蒸留水で洗浄し、37℃で2時間真空乾燥後、室温で放置したものを用意した。
・ポリ塩化ビニル基材に一般式(1)の高分子材料を塗布した試料:エタノール/水 40/60(Wt%)溶液中にPMEA2000ppmを溶解させた溶解液中に、上記基材を1分間浸漬し、引き上げて直ぐに蒸留水で洗浄し、37℃で2時間真空乾燥後、室温で放置したものを用意した。
それぞれの基材について赤外ATR(全反射法)解析を実施し、面積比P1/P2を得た。
(3)癌細胞付着試験
サブコンフルエントになったHT1080細胞を上記各試料表面に播種した。播種密度は1×104/cm2にて行い、培養1時間にて1%グルタールアルデヒド(PBS)にて固定を行い37℃2時間にて固定後、PBS10分、DW:PBS=1:1 8分、DW 8分×2回にて置換を行った。乾燥後、白金パラジウムによるスパッタリングを行いSEM(走査型電子顕微鏡Scanning Electron Microscope)観察し、表面の癌細胞付着数を目視で数えた(各n=3)。
結果を以下の表に示す。
ポリ塩化ビニル基材に一般式(1)の高分子材料を塗布した試料の方が、基材単体と比べて癌細胞付着数が多いことを確認した。これにより、一般式(1)の高分子材料は癌細胞付着能を有することが確認できた。
[目詰まりまでの所要時間]
(疑似癌性腹水の調製)
アルブミン濃度を3g/dLに調整した牛血漿(擬似腹水)3.0Lに、上記と同様に培養した癌細胞を加えて擬似癌性腹水を調製した。具体的には、以下の手順で調製した。
1、HT1080細胞を培養しているディッシュを37℃インキュベーターから取り出し、アスピレーターで培地を吸い取る。
2、PBSをディッシュに加え、その後、アスピレーターで吸い取る。
3、トリプシン/EDTA溶液を加え、ディッシュに蓋をして横から叩いて細胞を剥がす。
4、顕微鏡で見て、細胞が剥がれた事を確認して、トリプシンの働きを止めるために培地を加えて、塊で剥がれた細胞を1個1個の細胞にするようにピペッティングする。
5、液を遠沈管にいれて、遠心する。
6、遠心後、遠沈管の上清を廃棄し、細胞の塊をほぐすように遠沈管の外側からはじいてバラバラにする。
7、疑似腹水を5mL加え、ピペットでピペッティングして均一な細胞浮遊液にする。
8、7、で調製した細胞浮遊液中の細胞数を測定し、細胞数を調整するため、その全量あるいは必要量をある適量の疑似腹水へ懸濁しながら約200万個の細胞の存在する疑似癌性腹水3Lを作成する。
(評価基準)
濾過濃縮処理中に圧力計Cの圧力が500mmHgに達したことをもって「目詰まりした」と判断して、処理開始から目詰まりまでの時間を以下の様に判定した。
目詰まりまでの時間が15分以上 :〇
目詰まりまでの時間が15分未満 :×
(最大中空糸膜間距離、平均中空糸膜間距離の測定)
ポッティング加工面を光学顕微鏡(商品名IX70 オリンパス(株)社製)で目視観察し、視野が10mm×10mmとなるように撮影された画像をもって、任意の5つの中空糸膜の最大中空糸膜間距離および平均中空糸膜間距離を計測した。
(目詰まり試験)
(実施例1)
腹水バッグと流路(チューブ)からなる腹水濾過濃縮再静注用回路(型式AF−CART 発売元 旭化成メディカル)を用い、前処理として、その中(腹水バッグと流路)に2000ppmのPMEAを溶解させたエタノール35Wt%,蒸留水65Wt%の溶液(コート液)を3L入れた。回路がコート液に浸漬した状態で1時間放置した。その後、コート液を排出し、蒸留水を加えて回路を蒸留水で洗浄した。洗浄を3度繰り返した後、37℃で24時間真空乾燥後、室温で放置した。該前処理の後の腹水バッグのP1(サンプル)/P2(Blank)は1.605であった。 その後、腹水バッグの中に3Lの疑似癌性腹水を入れて1時間保管した。なお、保管中は、バッグ内側に癌細胞が付着するようバッグを横にして保管し、30分経過後に表裏が逆になるようにバッグを裏返して配置した。その後、図7に示すように、上記腹水バッグ20、濾過用フィルタ21、濃縮器22、濃縮腹水バッグ23の順で、外圧濾過方式となるように腹水処理回路に接続し、ポンプAは毎分50mLの流量、ポンプBは毎分5mLの流量となるように設定し、
濾過用フィルタの充填率は65%、中空糸膜間距離は250mm、クリンプは無し、有効面積は2.3m2という条件で濾過濃縮処理(目詰まり試験)を行ったところ、目詰りまでの所要時間は41分であった。また、前述の癌細胞付着試験と同様にして、腹水バッグへの癌細胞付着数を測定した。結果を表−1に示す。
(実施例2〜11)
ポリマー(一般式(1)の高分子材料)の種類、ポリマー濃度、ポリマー溶解時の溶剤比、濾過用フィルタの充填率、クリンプの有無、有効面積を表−1に示すように変化させた以外は実施例1と同様にして目詰まり試験を行った。
結果を表−1に示す。目詰りに要する時間は全て15分以上であった。
(比較例1〜2)
前処理を行わない以外は実施例1又は4と同様にして目詰まり試験を行った。
目詰りまでに要した時間はそれぞれ6分および10分であり、いずれも不合格な結果であった。
本発明の医療用部材は、腹水濾過濃縮治療法(CART)等で用いられる体液濾過装置において好適に使用することができ、処理前体液中の有用なタンパク質を残しつつ、癌細胞を選択的に除去し、濾過用フィルタの目詰まりを有効に防ぐことができ、濾過用フィルタの濾過能力の低下を抑制する際に有用である。
1 腹水処理システム
10 腹水処理回路
20 腹水バッグ
21 濾過用フィルタ
22 濃縮器
23 濃縮腹水バッグ
40 筒状容器
41 中空糸膜
42 中空糸膜束

Claims (14)

  1. ポリ塩化ビニルを含む本体と、
    その表面の少なくとも一部に設けられた一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜と
    を有する医療用部材。
    式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
  2. 癌細胞成分を含む体液を貯留する貯留容器、又は、癌細胞成分を含む体液を流す流路である、請求項1に記載の医療用部材。
  3. 前記貯留容器がバッグであり、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を内側表面に有している、請求項2に記載の医療用部材。
  4. 前記流路がチューブであり、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を内側表面に有している、請求項2に記載の医療用部材。
  5. 体液濾過装置に用いられ、濾過用フィルタの入口側に設置される請求項1〜4の何れか一項に記載の医療用部材。
  6. 全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線において、1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P1)が、ポリ塩化ビニルについて同条件で全反射赤外吸収測定(ATR−IR)を実施したときの赤外吸収曲線における1735cm-1付近の赤外吸収ピークのピーク強度(P2)に対して(P1/P2)、1.15以上である、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の医療用部材。
  7. 前記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料の数平均分子量が8,000〜300,000である、請求項1〜6の何れか一項に記載の医療用部材。
  8. 一般式(1)中R1が、水素原子であり、R2が、メチル基であり、mが1である、請求項1〜7の何れか一項に記載の医療用部材。
  9. 一般式(1)中R1が、水素原子であり、R2が、エチル基であり、mが2である、請求項1〜8の何れか一項に記載の医療用部材。
  10. 一般式(1)中R1が、メチル基であり、R2が、メチル基であり、mが2である、請求項1〜9の何れか一項に記載の医療用部材。
  11. 一般式(1)中R1が、メチル基であり、R2が、エチル基であり、mが2である、請求項1〜9の何れか一項に記載の医療用部材。
  12. ポリ塩化ビニルを含む本体と、その表面の少なくとも一部に設けられた一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を有する医療用部材の製造方法であって、
    前記ポリ塩化ビニルを含む本体の表面の少なくとも一部に、一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含有するコート液を接触させる工程
    を有する、医療用部材の製造方法。
    式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
  13. 前記コート液が、水及び有機溶媒を含有し、前記有機溶媒が、エタノール、メタノール又はその混合物である、請求項12に記載の医療用部材の製造方法。
  14. 体液を貯留する貯留容器と、
    前記体液中に存在する癌細胞を分離可能な濾過用フィルタと、
    一端が前記貯留容器に接続され、他端が前記濾過用フィルタの入り口に接続された第1の流路と、
    前記濾過用フィルタで濾過された溶液を回収する回収容器と
    を備える体液濾過装置であって、
    前記貯留容器及び/または前記第1の流路が、内側表面の少なくとも一部に、下記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料を含む被膜を有している、体液濾過装置。
    式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、メチル基又はエチル基であり、mは1〜3であり、nは繰り返し数を示す。
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