JP2017040320A - 車両用クラッチ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要に応じてクラッチ装置の冷却を高効率で実行できる車両用クラッチ装置を提供する。【解決手段】車両用クラッチ装置3において、駆動源2に回転可能に連結される入力軸14と、入力軸と相対回転可能に設けられた出力軸9と、入力軸または出力軸の周りに設けられ、入力軸と出力軸との間のトルクの伝達を断接するクラッチ機構31,32と、クラッチ機構に対して径方向に重複する環状に形成され、入力軸または出力軸の回転軸線CL方向に沿って移動可能に設けられ、クラッチ機構の回転軸線方向の一端部91aを覆ってクラッチ機構との間で油保持部4を形成する閉位置SPとクラッチ機構の一端部から離れる開位置OPとに移動可能である板状の蓋部材41と、蓋部材を回転軸線方向に沿って移動させる蓋部材駆動機構43と、蓋部材が閉位置にあるときに、油保持部に冷却のための油を供給する冷却油供給装置24と、を備えた。【選択図】図4

Description

本発明は、エンジンおよび電動モータなどの複数の駆動源を有する車両において、エンジンの駆動力を車軸に伝達する車両用クラッチ装置に関する。
従来、車両用駆動装置には駆動源に連結される入力軸と、車軸へ連結される出力軸との断続を行なうためのクラッチ装置が設けられている。例えば、特許文献1に記載されているハイブリッド車両用駆動装置においては、モータケースの内周面にステータが取り付けられ、ステータに対向してモータケースにロータが回転可能に取り付けられている。特許文献1におけるコーストクラッチ30(クラッチ装置)は、ロータの内径側に設けられており、エンジン側に連結するハブ32(入力軸)側に設けられたハブ側ブレード32a(摩擦プレート)と、変速機10側のドラム部31(出力軸)に設けられたドラム側ブレード31a(セパレートプレート)とを有する。ハブ側ブレード32aとドラム側ブレード31aとは、対面しつつ交互に配置されており、互いに圧着させて圧着状態である接続状態とすることができる。
複数のドラム側ブレード31aは、ドラム部31を構成する外筒部の先端部に相対回転不能かつ軸線方向に移動可能に嵌合されている。ドラム部31には、作動油が流入されてクラッチを遮断状態にさせる受圧室35と、締結スプリング34(ばね部材)が収容されてばねによる付勢力で接続状態にさせる遠心バランス室37(ばね室)と、を仕切るピストン部33が軸線方向に移動可能に設けられている。通常は、ばね室に設けられた締結スプリング34の付勢力によってピストン部33をドラム側ブレード31aとハブ側ブレード32aとが互いに圧着する方向に移動させ接続状態となっている。受圧室35に作動油が流入されることで受圧室35の作動油の圧力がばね部材の付勢力に抗してピストン部33をドラム側ブレード31aとハブ側ブレード32aとが離間して遮断状態とする方向に移動させるように記載されている。
特開2008−126703号公報
しかしながら、モータとエンジンとのように駆動源が複数ある構成においては、駆動源の切替を走行状態に応じて行う必要がある。その際、特許文献1の駆動装置では、各駆動源の回転差をクラッチ装置(コーストクラッチ30)で調整しながら駆動源の切替を実施する。
しかし、切替時に切り替える駆動源間に回転差が生じていることで、ドラム側ブレード31aとハブ側ブレード32aと間で接触の際に大きな摩擦熱が発生する。そのため、ドラム側ブレード31aとハブ側ブレード32aが構成するクラッチ装置が吸収すべき熱量が大幅に増加し、クラッチ装置の寿命が著しく低下するという問題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、必要に応じてクラッチ装置の冷却を効率よく行うことができる車両用クラッチ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両用クラッチ装置において、駆動源に回転可能に連結される入力軸と、前記入力軸に対し相対回転可能に設けられた出力軸と、前記入力軸または前記出力軸の周りに環状に設けられ、前記入力軸と前記出力軸との間のトルクの伝達を断接するクラッチ機構と、前記クラッチ機構に対して径方向に重複する環状に形成され、前記入力軸または前記出力軸の回転軸線方向に沿って移動可能に設けられ、前記クラッチ機構の前記回転軸線方向の一端部を覆って前記クラッチ機構との間で油保持部を形成する閉位置と前記クラッチ機構の前記一端部から離れる開位置とに移動可能である板状の蓋部材と、前記蓋部材を前記回転軸線方向に沿って移動させる蓋部材駆動機構と、前記蓋部材が前記閉位置にあるときに、前記油保持部に冷却のための油を供給する冷却油供給装置と、を備えた。
これによると、クラッチ機構に熱が発生する場合に、蓋部材を閉位置に移動させて、蓋部材とクラッチ機構との間で形成される油保持部に、冷却油供給装置から油を供給することができる。このように、冷却が必要なときに油保持部に油を供給することで、クラッチ機構を高効率で冷却することができる。
本実施形態における車両用駆動装置を示す概略図である。 本発明に係る実施形態の車両用クラッチ装置の断面図である。 図2に示す油保持部の部分拡大図である。 図2に示す車両用クラッチ装置が接続され、蓋部材が閉位置に位置決めされた状態を示す部分拡大図である。 図2に示す車両用クラッチ装置が遮断され、蓋部材が開位置に位置決めされた状態を示す部分拡大図である。
(実施形態)
本発明に係る車両用クラッチ装置の実施形態を、ハイブリッド車両に具体化し図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明に係る車両用クラッチ装置を適用したハイブリッド車両用駆動装置1の概略を示している。
ハイブリッド車両用駆動装置は、第1駆動源としてのエンジン2、車両用クラッチ装置3、油保持部4、電磁切替弁11、流体ポンプとしての電動オイルポンプ12、リザーバ13、第2駆動源としての電動モータ5、自動変速機6および制御装置7を有している。図1において、実線による矢印は、各装置間をつなぐ油路(油圧配管)を示しており、破線による矢印は、制御用の信号線を示している。また、図1において車両用クラッチ装置3の接続・遮断を行う電磁切替弁(制御弁)11、電動オイルポンプ12およびリザーバ13は電動モータ5と別体に記載されている。しかし、実際には電磁切替弁11および電動オイルポンプ12は車両用クラッチ装置3とともに電動モータ5に一体化され、リザーバ13は車両用クラッチ装置3を囲むケース8内に形成されている。
図1に示すように、車両の第1駆動源としてのエンジン(EG)2と第2駆動源としての電動モータ5とは、車両用クラッチ装置3を介して直列に接続されている。車両用クラッチ装置3は、エンジン2と電動モータ5との間の接続を接離してトルク伝達を断続している。
また、電動モータ5には、車両の自動変速機6が直列に接続されており、自動変速機6には、いずれも図示しない車両の駆動輪が、ディファレンシャル装置を介して接続されている。
制御装置(ECU)7は、エンジン2または電動モータ5の回転を制御し、車両を走行させる。また、制御装置7は、自動変速機6のシフトバルブを作動させる電磁ソレノイド(図示せず)と接続されており、エンジン2の回転速度、車両速度、シフト位置等に基づき、自動変速機6の作動を制御する。さらに、制御装置7は、電磁切替弁11および電動オイルポンプ12の作動を制御することで、後述する蓋部材駆動機構43および車両用クラッチ装置3の作動を制御する。
エンジン2は、炭化水素系の燃料により出力を発生させる通常の内燃機関であり、エンジンのトルクを出力するエンジン出力軸(図略)を有している。なお、駆動源は、エンジン2に限定されるものではなく、後述する入力軸14を回転させるものであればどのようなものでもよい。
(車両用クラッチ装置)
車両用クラッチ装置3について、図2、図3および図4に基づいて以下に説明する。車両用クラッチ装置3は、例えば、湿式多板クラッチである。車両用クラッチ装置3は、エンジン2に回転可能に連結される入力軸14と、電動モータ5のロータ51と同一軸線上に回転軸が配置されてロータ51と一体的に連結された出力軸(クラッチドラム)9とを有している。
また、車両用クラッチ装置3は、入力軸14および出力軸9のうち一方の軸である出力軸9の係合部に係合された複数のセパレートプレート31と、他方の軸である入力軸14の係合部14dに係合された複数の摩擦プレート32と、を有している。
また、車両用クラッチ装置3は、電動モータ5、セパレートプレート31および摩擦プレート32等を囲繞するケース8と、出力軸9に一体的に形成されたシリンダ部36に回転軸線方向に摺動可能に嵌合され、複数のセパレートプレート31および摩擦プレート32を押圧する押圧部33cを備えたピストン部33とを有している。
また、車両用クラッチ装置3は、ピストン部33の自動変速機6側の面とシリンダ部36との間に縮設され、ピストン部33をエンジン2側に向かって付勢するコイルバネ34を有している。さらに、車両用クラッチ装置3は、シリンダ部36に設けられ、ピストン部33とコイルバネ34の反対側で対向する固定プレート35と、ピストン部33と固定プレート35との間に区画形成される加圧室37と、を有している。車両用クラッチ装置3は、コイルバネ34により付勢されたピストン部33によって、セパレートプレート31および摩擦プレート32が、通常は圧接された状態にあるノーマルクローズタイプのものである。
入力軸14は、いずれも図示しないフライホイールおよび回転振動を吸収するためのダンパを介してエンジン出力軸に回転連結されている。図2に示すように、入力軸14は、ダンパとの固定部14aと、ケース8の後述するフロントケース8bの貫通孔8b1に回転支持される連結部14bと、大径の係合部である支持部14cと、を有している。
以後、入力軸14が支持されるフロントケース8b側を入力軸側と称す。
支持部14cの外周側は、回転軸線CL方向に拡幅されている。支持部14cの外周側には、前述した複数の円環上の摩擦プレート32が、外周面の係合部14dに相対回転を規制され、かつ回転軸線CL方向に相対移動可能に係合されている。
出力軸9は、トルクコンバータ10の入力軸であるセンタピース16に回転連結されている。センタピース16は、ケース8の後述する支持壁部8cに形成された貫通孔8c1に回転可能に軸承されている。
以後、出力軸9と連結されるセンタピース16が軸承される支持壁部8cの側を出力軸側と称す。
出力軸9は、車両用クラッチ装置3が遮断状態の場合に、入力軸14に対して相対回転可能であり、車両用クラッチ装置3が接続状態の場合に、入力軸14に対して一体回転可能となる。
出力軸9は、図2に示すように、大径の外筒部91a、中径の中筒部91bおよび小径の内筒部91cという回転軸線CLの周りに重なり合う3つの円筒部を有している。大径の外筒部91aおよび中径の中筒部91bと、外筒部91aおよび中筒部91bの出力軸側の端部に径方向に連続する段付の各底壁部92a,92bとにより前述のシリンダ部36が形成され、シリンダ部36は、入力軸側の一端部が開口している。中筒部91bおよび小径の内筒部91cと、中筒部91bおよび内筒部91cの入力軸側の端部が径方向に連続する連続壁93とにより軸受支承部94が形成され、軸受支承部94は出力軸側の他端部が開口している。外筒部91aの入力軸側の先端部内周面の係合部には、前述した複数の円環状のセパレートプレート31が相対回転を規制され回転軸線CL方向に相対移動可能に嵌合されている。
そして、外筒部91aと支持部14cとの間には、複数のセパレートプレート31と、入力軸14の大径の係合部14dである支持部14cの外周面に支持された複数の摩擦プレート32とが、交互に接離可能に配置されている。外筒部91aの先端内周には、外筒部91aの内径方向に沿って突出する円環状の押付部39が固定されている。押付部39の入力軸側には、入力軸側に所定幅で突出する円環状の当接部39aが設けられている。ピストン部33によって、セパレートプレート31は、回転軸線CL方向の入力軸側に押付けられる。そして、セパレートプレート31は、軸方向に移動(スライド)する。これによって、摩擦プレート32とセパレートプレート31とは、押付部39に押し付けられるとともに、互いに当接し(車両用クラッチ装置3の接続状態)、入力軸14と出力軸9とが回転連結されて、一体回転する。
出力軸9の内筒部91cの内側には、図2に示すように、センタピース16と一体回転可能にスプライン結合される係合穴91c1が形成されている。軸受支承部94には、ケース8の外周壁部8aから径方向内側に突出するとともに、入力軸方向に屈曲形成された円筒壁を有する支持壁部8cが嵌入されている。支持壁部8cの先端部には、内筒部91cの外周面に対向する内周面が形成されている。そして内筒部91cの外周面と支持壁部8cの内周面との間には、ボール軸受86が配設され、支持壁部8cに対して出力軸9がセンタピース16とともにスムーズに相対回転するようになっている。
ピストン部33は、前述したシリンダ部36内に収容されている。ピストン部33は、図4に示すように、略円板状に形成され中心部には貫通孔33aが形成されている。ピストン部33は、ピストン部33の外周に設けられ外筒部91aの内周面との間をシールするOリング62と、ピストン部33の内周に設けられ中筒部91bの外周面との間をシールするOリング63とを有し、シリンダ部36内を回転軸線CL方向に摺動して移動可能に構成される。
ピストン部33の背面側である出力軸側では、軸方向断面において内径部である貫通孔33a側の肉厚が厚く、該肉厚はピストン部33の外径側に向かって漸減している。またピストン部33の入力軸側においては、入力軸14の回転軸線CLと直交する平面である受圧面33bを有している。なお、ここでいう受圧面33bとは油圧が作用したときにピストン部33を回転軸線CL方向に付勢する効果を有する面のことをいう。
ピストン部33は受圧面33bの大径側位置(回転軸線CLから離れた側の位置)に回転軸線CLに沿った方向の入力軸側に向かって突設される押圧部33cを有している。押圧部33cは受圧面33bの外周部に円環状に設けられ、押圧部33cの円環内周面には、ピストン部33が回転軸線CL方向に摺動可能なように後に詳述する固定プレート35の外周面35aと嵌合するための摺動面33dが形成されている。
固定プレート35は、図3に示すように、略円環状に形成されている。中筒部91bの外周面の入力軸側には、溝が形成され、溝には例えばCリング等の固定リング95が嵌入される。固定プレート35は、固定リング95によって固定プレート35の入力軸側方向への移動が規制されている。
固定プレート35の内周面35bには、Oリング64が配設されている。固定プレート35の外周面は、ピストン部33の押圧部33cの内周面である摺動面33dにOリング65を介して嵌合している。これらのOリング64およびOリング65により加圧室37を液密に封止している。
ピストン部33と、固定プレート35との間には、加圧室37が区画形成されている。具体的には加圧室37は、図4に示すように、固定プレート35の出力軸側平面35cと、ピストン部33の受圧面33bと、押圧部33cの摺動面33dと、中筒部91bの外周面とによって囲まれて形成されている。
加圧室37は、図4に示すように、電磁切替弁11を介して電動オイルポンプ12とリザーバ13とに連通する第1通油口36aを有している。第1通油口36aは、中筒部91bの円周上に、例えば3カ所等配に設けられている。ただし、第1通油口36aの個数は、3カ所に限らず、加圧室37に供給する油圧の大きさや、加圧室37から油を排出するときの排出能力を考慮して適宜決定できる。加圧室37に油を供給する側である電磁切替弁11の第2位置P2と、加圧室37から油を排出するための第1位置P1とは、電磁切替弁11を操作することによって切替えられ、第1位置P1に切替えられることによって加圧室37は第1通油口36aを介してリザーバ13と連通される。
コイルバネ34は、図2、図4に示すように、ピストン部33の背面である出力軸側の面と、シリンダ部36の底壁部92bとの間に縮設されている。コイルバネ34は、本実施形態においてはピストン部33の回転軸における同一半径上に、例えば、10個、均等な間隔で配置されピストン部33の押圧部33cを入力軸側に付勢し、摩擦プレート32と、セパレートプレート31とを所定の荷重で押圧し圧接する。これらのコイルバネ34の付勢力は、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを圧接させるのに必要な圧接力となるよう設定されている。
コイルバネ34が配置されるピストン部33の出力軸側の面には、10個の各コイルバネ34が配置されるように、コイルバネ34のコイル外径より若干大きな径の円筒穴33eが穿設され、各コイルバネ34が該円筒穴33eに係入されている。これらの円筒穴33e、ピストン部33の前記背面、外筒部91aの内周面、中筒部91bの外周面および底壁部92a,92bの間に形成される空間により、ばね室(キャンセラ室)38が構成される。
ばね室38は、図4に示すように、ピストン部33と外筒部91aとの間に設けられたOリング62,63によってシールされ、油が貯留可能になっている。ばね室38の内径方向には第2通油口36bおよび第2油路22が連通している。ばね室38を構成する底壁部92bには、排出孔38aが穿設され、排出孔38aによってばね室38の内外が連通される。この排出孔38aは流量絞りとして機能するもので、ばね室38内に油を貯留させた状態に維持する。ばね室38が、入力軸14等の回転に伴って回転軸線CL回りに回転すると、排出孔38aは油をばね室38の外に排出させつつ、ばね室38に油を残留させる。これによって、ピストン部33を挟んでばね室38の反対側に位置する加圧室37に残留する油の遠心力に起因する圧力に対して、ばね室38に残留する油の遠心力に起因する圧力を対向させる。
これらのセパレートプレート31、摩擦プレート32、ピストン部33およびシリンダ部36を含んでクラッチ機構が構成される。本実施形態におけるクラッチ機構は、主に入力軸14の周りに環状に設けられている。
クラッチ機構は、図4に示すように、駆動機構として電動オイルポンプ12、電動オイルポンプ12により供給される油を加圧室37に供給する第1油路21、油をばね室38に供給する第2油路22、および電磁切替弁11を備えている。クラッチ機構は、第1油路21および第2油路22の流れを切り替える電磁切替弁11により駆動する。なお、第2油路22からは、後述する第3油路23および第4油路24が分岐している。
電磁切替弁11は、図4および図5に示すように、ソレノイド11dおよびコイルバネ11eにより第1位置P1と第2位置P2とに切替えられる。第1位置P1は、図4に示すように、クラッチ機構のセパレートプレート31と摩擦プレート32とを接続させる位置であり、第2油路22と電動オイルポンプ12の吐出ポート12aとを連通させる第2通路11bと、第1油路21とリザーバ13とを連通させる第1通路11aとを有する。第2位置P2は、図5に示すように、クラッチ機構のセパレートプレート31と摩擦プレート32とを遮断させる位置であり、第1油路21と電動オイルポンプ12の吐出ポート12aとを連通させる第3通路11cと、閉鎖ポートとを有する。
なお、電動オイルポンプ12と電磁切替弁11の間には、リリーフ弁15が設けられ、いずれも後述する加圧室37やばね室38を増圧させる場合において、過度の負荷が電動オイルポンプ12にかからぬよう圧力調整がなされる。電動オイルポンプ12が作動しているとき、制御装置7により電磁切替弁11が、第1位置P1に切替えられると、電動オイルポンプ12の吐出ポート12aから油が第2通路11b、いずれも後述する第2油路22、第2環状溝22a、第2通油口36bを介してばね室38に供給され、ばね室38を増圧させ、後述するピストン部33を、クラッチ機構のセパレートプレート31と摩擦プレート32とを接続させる力を後述するコイルバネ34に付加する。この場合、加圧室37の油は、第1通油口36a、第1油路21、第1通路11aを介してリザーバ13に排出される。
これに対して、制御装置7により電磁切替弁11が第2位置P2に切替えられると、図5に示すように、加圧室37は、第1通油口36a、第1環状溝21a、第1油路21および第3通路11cを介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通する。そのため、電動オイルポンプ12の油は、吐出ポート12aから加圧室37に供給され、加圧室37を増圧させ、ピストン部33を出力軸側に移動させ、車両用クラッチ装置3を遮断する。この場合、ばね室38に繋がる第2油路22は、閉鎖ポートで閉鎖されているため、ばね室38の油は、電磁切替弁11側には流れず、排出孔38aからばね室38の外に排出され、ケース8内のリザーバ13に溜まる。なお、電動オイルポンプ12は、電動式であるため、エンジン2の駆動に拘わらず油を供給することができる。また、電磁切替弁11は、ケース8に内臓されている方式でも、ケース8に外付けされている方式でもよい。
電磁切替弁11および電動オイルポンプ12には、制御装置(ECU)7が電気的に接続されている。制御装置7は、電動オイルポンプ12および電磁切替弁11を作動させて、車両用クラッチ装置3に適正な油圧を供給し、車両用クラッチ装置3を目標とする接続・遮断状態に制御している。
(油保持部)
油保持部4は、図3に示すように、蓋部材41が閉位置SPに移動した場合に、クラッチ機構のシリンダ部36を構成する外筒部91aの入力軸側の一端部と蓋部材41との間で形成される。また、蓋部材41には、蓋部材41を回転軸線CL方向に沿って移動させる蓋部材駆動機構43が設けられている。
蓋部材41は、例えば、回転軸線CL方向に直角な径方向に延在する鉄製の円環状の板材で、外周部には、入力軸側に屈曲して段部41aを形成するとともに、外径方向に所定幅で延在する外周縁41bと、段部41aより回転軸線CL方向に沿って出力軸側へ突出した環状凸部41cとが設けられている。外周縁41bは、外筒部91aの入力軸側先端部に当接し、環状凸部41cは、クラッチ機構の押付部39に設けられた当接部39aに入力軸側から当接するように設けられている。本実施形態では、蓋部材41が外筒部91aの入力軸側先端部に当接する位置を閉位置SPとし、蓋部材41が外筒部91aの入力軸側先端部から離れた位置を開位置OPとしている。この様に、外周縁41bと環状凸部41cとで二重にクラッチ機構に当接することで、油保持部4における油の保持力を高める。蓋部材41の環状凸部41cよりも回転軸線CL側には、蓋部材41を厚み方向(回転軸線CL方向に沿った方向)に貫通する複数の排出穴41dが設けられている。排出穴41dは、油保持部4にセパレートプレート31および摩擦プレート65を冷却するのに必要な油が保持された後、排出穴41dから余分な量の油を排出する。蓋部材41の内周側には、蓋部材駆動ピストン44が蓋部材41に連続して形成されている。
蓋部材駆動ピストン44と後述する蓋部材駆動シリンダ45と後述する付勢装置とを含んで蓋部材駆動機構43が構成される。
蓋部材駆動ピストン44は、図3に示すように、例えば、鉄製で回転軸線CL方向に直角な径方向に所定の厚みを有して円環状に形成され、後述する蓋部材駆動シリンダ45の環状シリンダ部451に嵌合される。蓋部材駆動ピストン44は、回転軸線CL周りに沿って夫々平行に形成された外周曲面44aと内周曲面44bとが設けられている。内周曲面44bの入力軸側の端部には、面取り面44cが周設されている。外周曲面44aには、外側取付溝が周設され、後述する大径筒状部45eの内周面と外周曲面44aとの間をシールする外側Oリング66が設けられるようになっている。内周曲面44bには、内側取付溝が周設され、後述する中径筒状部45cの外周面と内周曲面44bとの間をシールする内側Oリング67が設けられるようになっている。
蓋部材駆動シリンダ45は、図3に示すように、軸受(二−ドルベアリング)87を介して入力軸14の周りに配された筒状の小径筒状部45aと、小径筒状部45aの出力軸側の端部より径外方向に延設され軸受(スラストころ軸受)88を介して入力軸14に対して相対回転可能に接触する第1延設部45bと、第1延設部45bの外端部より回転軸線CL方向に沿って入力軸側に向かって延設された円筒状の中径筒状部45cと、中径筒状部45cの入力軸側の端部より径外方向に延在された第2延設部45dと、第2延設部45dの外端部より回転軸線CL方向に沿って出力軸側に向かって延設された大径筒状部45eと、を備えている。
中径筒状部45cの外周面、第2延設部45dの内側面、大径筒状部45eの内周面により環状シリンダ部451が構成される。蓋部材駆動ピストン44は、環状シリンダ部451内に嵌合されて、回転軸線CL方向に沿って移動可能に設けられる。
中径筒状部45cには、図3に示すように、環状シリンダ部451の内側の入力軸側に開口する第3通油口451aが設けられている。フロントケース8bの貫通孔8b1の外径側に位置し、中径筒状部45cの内周面に対向するフロントケース8bの外周面には、第3環状溝23aが周設されている。第3通油口451aは、周設された第3環状溝23aに連通している。第3環状溝23aは、フロントケース8b内に配設された第3油路23に接続し電動オイルポンプ12とリザーバ13とに連通している。第3環状溝23aを挟んだ入力軸側と出力軸側の両側には、取付溝が夫々周設され、取付溝にはOリング68,69が設けられるようになっている。
これらのOリング68,69によりフロントケース8bの第3環状溝23aと中径筒状部45cの内周面との間をシールし、環状シリンダ部451を液密に封止可能としている。また、フロントケース8bの第3環状溝23aと中径筒状部45cの内周面との間は、前述のようにシールされるとともに、相対回転可能に設けられている。油は、第3油路23を介して第3環状溝23aより環状シリンダ部451に供給される。蓋部材駆動ピストン44は、この環状シリンダ部451に供給された油の圧力により出力軸側に移動する。蓋部材駆動ピストン44の出力軸側への移動によって、蓋部材41の外周縁41bは、外筒部91aの入力軸側先端部に当接する。
なお、油保持部4を形成するのは、蓋部材41が外筒部91aに当接する場合に限定されず、油を保持可能な位置まで蓋部材41を外筒部91aに接近させ、外筒部91aを蓋部材41で覆うことで油保持部4を形成してもよい。保持される油は、油の粘度によって保持状態が変化し、油の粘度は、温度、油質に影響されるため、必ずしも蓋部材41が外筒部91aに当接することに限定するものではない。
中径筒状部45cの出力軸側の外周には、図3に示すように、固定溝が周設され、固定溝には取付リング46が設けられている。蓋部材駆動ピストン44は、取付リング46によって、環状シリンダ部451からの脱落と環状シリンダ部451における出力軸側への所定距離以上の移動とが規制されている。取付リング46には、外径方向に突出する取付環板46aが組付けられている。蓋部材41の取付環板46aに対向する面には、複数の嵌着孔44fが配設され、各嵌着孔44fには小コイルバネ46bの一端部が嵌着される。取付環板46aには、小コイルバネ46bの他端部が係止されている。各小コイルバネ46bは、圧縮された状態で嵌着孔44fと取付環板46aとの間に設けられ、蓋部材41を入力軸側(環状シリンダ部451に正圧が生じた場合に蓋部材駆動ピストン44を移動させる方向とは、逆の方向)に付勢する。小コイルバネ46b、嵌着孔44f、取付環板46aおよび取付リング46により付勢装置が構成される。
支持壁部8cには、図4に示すように、出力軸9の連続壁93に貫設された通油口93a、入力軸14の支持部14cに貫設された通油口14eに連通する第4油路24が設けられている。冷却のための油は、この第4油路24により供給されて油保持部4に保持される。第4油路24、通油口93a、通油口14e、電動オイルポンプ12、および電磁切替弁11を含んで、冷却油供給装置が構成される。
蓋部材駆動機構43は、電動オイルポンプ12により供給される油を環状シリンダ部451に供給する第3油路23を有している。第3油路23は、前述の第1油路21より分岐し、止め弁23bにより第1油路21との接続を遮断可能に構成されている。第3油路23は、さらに第4油路24が分岐している。
第3油路23は、前述の第1油路21と同様に電磁切替弁11によって、図4および図5に示すように、ソレノイドおよびコイルバネにより第1位置P1と第2位置P2とに切替えられる。第1位置P1は、図4に示すように、クラッチ機構のセパレートプレート31と摩擦プレート32とを接続させる位置であり、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを接続するときに合わせて、油を第3油路23に供給する(止め弁23bは、開放されている。)。第3油路23に供給された油は、第3環状溝23aおよび第3通油口451aを介して環状シリンダ部451に供給され、環状シリンダ部451の内部の圧力を高めて蓋部材41を閉位置SPに移動する。
電磁切替弁11によって第2位置P2に切り替えられたときは、図5に示すように、第3油路23は、閉鎖され、第3油路23の止め弁23bは閉止される。環状シリンダ部451の内部圧力が減少し、小コイルバネ46bの付勢力により蓋部材駆動ピストン44を入力軸側に移動させる。蓋部材41は、開位置OPへと移動し、油保持部4に貯まっていた油は、クラッチ機構が入力軸周りに回転する遠心力によりケース8内に放出される。第3油路23に残った油は、第4油路24に流れ込み、通油口93aより排出される。
(電動モータ)
電動モータ5は、図2に示すように、3相交流モータ等からなる。電動モータ5は、出力軸9の外筒部91aの外周側に配置されている。電動モータ5は、円筒状のロータ51と、ロータ51の外周に配置され、珪素鋼板(図示せず)を積層してなるステータ52と、ステータ52の突出部に巻回されるコイル53とを備えている。なお、電動モータ5は、車輪駆動用の同期モータであるがこれに限定されるものではない。
ステータ52は、外周側がケース8の外周壁部8aの内周面に固定されている。またロータ51は、出力軸側端面から板部材51aが径方向内方に延在されて出力軸9の底壁部92aの出力軸側側面にボルトによって固定されている。これにより電動モータ5はロータ51のみが出力軸9と一体回転される。またコイル53は制御装置7と電気的に接続されており、制御装置7は、各種状態を検出するいずれも図示しない各センサ(車速センサ、スロットル開度センサ、シフト位置センサ等)からの信号に基づいてコイル53への通電量、或いはコイル53の非通電を制御している。
(ケース)
ケース8は、図2に示すように、外周を形成する外周壁部8aと、電動モータ5および車両用クラッチ装置3とトルクコンバータ10との間に形成された支持壁部8cと、エンジン側の外周壁部8aの開口を覆うフロントケース8bとを有している。また、ケース8では、外周壁部8aが支持壁部8cの基端部から自動変速機6側に向って所定量延在され、トルクコンバータ10の一部を覆っている。そして延在された外周壁部8aは、トルクコンバータ10の残りの部分を覆う図略のケースとボルトによって固定され、自動変速機6のハウジング(図示せず)を形成している。
フロントケース8bは、外周壁部8aに対してボルトによって固定されるようになっている。フロントケース8bの前側中心部には、入力軸14が支承されるよう貫通孔8b1が設けられている。そして貫通孔8b1と入力軸14との間には、ボール軸受89および蓋部材駆動シリンダ45の小径筒状部45a、軸受87とが介在され、入力軸14を回転自在に支承している。フロントケース8bの内部には、電磁切替弁11と環状シリンダ部451とを接続する第3油路23が形成されている。
支持壁部8cの内部には、図4および図5に示すように、前述した電磁切替弁11と加圧室37とを接続をする第1油路21、電磁切替弁11とばね室38との接続をする第2油路22および電磁切替弁11とクラッチ機構とを接続する第4油路24が形成されている。支持壁部8cには、レゾルバ55が設けられ、出力軸9(クラッチドラム)の回転数を検出する。
第2油路22の一端は、電磁切替弁11に接続し、第2油路22の他端は支持壁部8cの外周面全周に刻設された第2環状溝22aと接続している。回転軸線CL方向における第2環状溝22aの両側には、溝が刻設され、該溝内には例えば樹脂製のOリング71が設けられ第2環状溝22aからの油の漏洩を抑制している。第2環状溝22aは、シリンダ部の中筒部91bに貫設される第2通油口36bを介してばね室38に連通している。
また、第1油路21の一端は、電磁切替弁11に接続し、第1油路21の他端は支持壁部8cの外周面全周に刻設された第1環状溝21aと接続している。回転軸線CL方向における第1環状溝21aの両側には、溝が刻設され、該溝内には同様に樹脂製のOリング71が設けられ第1環状溝21aからの油の漏洩を抑制している。第1環状溝21aは、シリンダ部36の中筒部91bに貫設される第1通油口36aを介して加圧室37に連通している。
(自動変速機・トルクコンバータ)
自動変速機6は、図1に示すように、変速機(図略)およびトルクコンバータ10からなり、トルクコンバータ10の出力が、変速機の入力軸に入力されている。自動変速機6は、通常の遊星歯車式自動変速機であり、これに限定されるものではない。
図1に示される電動モータ5とトルクコンバータ10とは、出力軸12およびトルクコンバータ10の入力軸であるセンタピース16(図2参照)を介して回転連結されている。
トルクコンバータ10の入力軸であるセンタピース16は、図2に示すように、エンジン2からの入力軸14と同一回転軸上に並んで配置されている。センタピース16はトルクコンバータ10のフロントカバー(図示せず)に連結され、フロントカバーとともに一体に回転される。そして、センタピース16とともにフロントカバーが回転することにより、フロントカバーと連結されるトルクコンバータ10内のポンプインペラ(図示せず)が回転される。これによりポンプインペラによって油流が発生し、発生した油流によって変速機の入力軸(図示せず)に連結されたタービンランナ(図示せず)が回転して変速機の入力軸に回転力が伝達される。出力軸9、センタピース16およびフロントカバーの回転軸は、変速機の入力軸と同一回転軸に配置されている。
(作動)
次に、上述した車両用駆動装置の車両用クラッチ装置3の作動について以下に説明する。
車両が電動モータ5で走行しているときは、図5に示すように、制御装置7は、電磁切替弁11を第2位置P2に位置決めして、加圧室37を第2油路22を介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通させている。ピストン部33は、コイルバネ34の付勢力に抗して出力軸側に移動し、セパレートプレート31と摩擦プレート32とが互いに離間した状態、すなわちクラッチ機構が遮断された状態としている。
このように電磁切替弁11が第2位置P2に位置決めされることで、第3油路23は、閉鎖され、環状シリンダ部451には、油が供給されない。また、止め弁23bは、制御装置7により閉止されている。そのため、蓋部材41は、付勢装置の小コイルバネ46aにより入力軸側に付勢され、入力軸側の移動端(開位置OP)に位置決めされている。そして、油保持部4は、蓋部材41と外筒部91aとによって形成されず、冷却のための油も、第4油路24からは供給されていない。
次に、車両の走行をエンジン2による走行に切り替える場合、制御装置7は、電磁切替弁11を第1位置P1に切り替える。図4に示すように、ばね室38は、第2油路22を介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通し、加圧室37は、第1油路21を介してリザーバ13に連通する。ばね室38に供給された油の圧力とコイルバネ34の付勢力とによって、ピストン部33は、セパレートプレート31と摩擦プレート32とが圧接する方向に移動する。
止め弁23bは、制御装置7により開放され、環状シリンダ部451の内部は、第3油路23を介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通する。環状シリンダ部451は、供給された油によって内部に正圧力を生じ、蓋部材駆動ピストン44を、小コイルバネ46aの付勢力に抗しながら出力軸側に移動させる。蓋部材41は、閉位置SPに移動し、外周縁41bを外筒部91aに当接させ、環状凸部41cを当接部39aに当接させる。油保持部4は、この様にして蓋部材41と、外周縁41bおよび環状凸部41cとによって形成される。
油保持部4は、第4油路24を介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通する。冷却のための油は、油保持部4に供給される。
このように、セパレートプレート31と摩擦プレート32とが圧接されて摩擦熱を生じるときに、油保持部4を形成して冷却油を供給するので、極めて効率的にクラッチ機構の冷却を行なうことができる。
次に、車両の走行を、再び電動モータ5による走行に切り替える場合は、図5に示すように、制御装置7は、電磁切替弁11を第2位置P2に位置決めして、加圧室37を第2油路22を介して電動オイルポンプ12の吐出ポート12aに連通させる。ピストン部33は、コイルバネ34の付勢力に抗して出力軸側に移動し、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを離間させ、クラッチ機構を遮断させる。ばね室38に供給されている油は、排出孔38aより排出され、ケース8内のリザーバ13に貯留される。
このように電磁切替弁11が第2位置P2に位置決めされることで、第3油路23は、閉鎖され、環状シリンダ部451には、油が供給されない。また、止め弁23bは、制御装置7により閉止される。そのため、蓋部材41は、付勢装置の小コイルバネ46aにより入力軸側に付勢され、入力軸側の移動端(開位置OP)に位置決めされる。油保持部4に保持されていた油は、蓋部材41と外筒部91aとの間に生じた開口から、クラッチ機構の回転により生じる遠心力によって、ケース8内に放出されてリザーバ13に溜まる。
上述の説明から明らかなように、車両用クラッチ装置3において、エンジン2に回転可能に連結される入力軸14と、入力軸14に対し相対回転可能に設けられた出力軸9と、入力軸14または出力軸9の周りに環状に設けられ、入力軸14と出力軸9との間のトルクの伝達を断接するクラッチ機構(セパレートプレート31、摩擦プレート32、ピストン部33およびシリンダ部36)と、クラッチ機構31,32,33,36に対して径方向に重複する環状に形成され、入力軸14または出力軸9の回転軸線CL方向に沿って移動可能に設けられ、クラッチ機構31,32,33,36の回転軸線CL方向の一端部(外筒部91aの入力軸側先端部)を覆ってクラッチ機構31,32,33,36との間で油保持部4を形成する閉位置SPとクラッチ機構31,32,33,36の一端部(外筒部91aの入力軸側先端部)から離れる開位置OPとに移動可能である板状の蓋部材41と、蓋部材41を回転軸線CL方向に沿って移動させる蓋部材駆動機構43と、蓋部材41が閉位置SPにあるときに、油保持部4に冷却のための油を供給する冷却油供給装置(第4油路24、通油口93a、通油口14e、電動オイルポンプ12および電磁切替弁11)と、を備えた。
これによると、クラッチ機構31,32,33,36に熱が発生する場合に、蓋部材41を閉位置SPに移動させて、蓋部材41とクラッチ機構31,32,33,36との間で形成される油保持部4に、冷却油供給装置11,12,14e,24,91aから油を供給することができる。このように、冷却が必要なときに油保持部4に油を供給することで、クラッチ機構31,32,33,36を高効率で冷却することができる。
そのため、エンジン2に連結された入力軸14と電動モータ5に連結された出力軸9の回転差が大きく、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを、ピストン部33によって接続すると、大きな摩擦熱を生じる場合においても、油保持部4に冷却油を供給することで、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを高効率で冷却することができる。セパレートプレート31と摩擦プレート32との冷却は、必要なときに任意に実施することができるので、二つの駆動源(エンジン、電動モータ)間の回転差の小さい領域での駆動源の切替に制約されることがなく、燃費向上を図ることができる。
また、クラッチ機構31,32,33,36は、入力軸14と一体回転可能な複数のセパレートプレート31と、複数のセパレートプレート31と交互に接離可能に配置され出力軸9に一体回転可能な複数の摩擦プレート32と、回転軸線CL方向に沿って移動することでセパレートプレート31と摩擦プレート32とを接離させるピストン部33と、ピストン部33が回転軸線CL方向に沿って摺動するとともに、セパレートプレート31と摩擦プレート32とを外側から囲むように回転軸線CL方向に沿って設けられた筒状の外筒部91aを有するシリンダ部36と、を備え、蓋部材41は、外筒部91aの一端部を覆う閉位置SPと外筒部91aの一端部から離れる開位置OPとに移動可能である。
これによると、外筒部91aと外筒部91aの一端部を覆う蓋部材41とにより油保持部4を形成する。そして、油保持部4に油を供給することで、セパレートプレート31と摩擦プレート32とが冷却されるように油を貯留することができる。そのため、セパレートプレート31と摩擦プレート32との接続で発生する摩擦熱を高い効率で冷却することが可能となる。
また、入力軸14は、エンジン2に回転可能に連結され、出力軸9は、電動モータ5に回転可能に連結される。
これによると、一方の駆動源(例えばエンジン2)から他方の駆動源(例えば電動モータ5)へ駆動源を切り替える際に、二つの駆動源間で回転差が生じていたとしても、クラッチ機構31,32,33,36に発生する熱を効率よく冷却することができる。
また、蓋部材駆動機構43は、ピストン部33によりセパレートプレート31と摩擦プレート32とが接続される際に、蓋部材41を閉位置SPに移動させる。
これによると、セパレートプレート31と摩擦プレート32とが接続される際に、大きな摩擦熱が発生する可能性があるが、この様な大きな熱が発生する場合に閉位置SPに移動した蓋部材41が形成する油保持部4に油を供給することで、クラッチ機構31,32,33,36を極めて効率的に冷却することができる。
また、蓋部材駆動機構43は、供給される流体によって内部に圧力を生じさせる蓋部材駆動シリンダ45(環状シリンダ部451)と、蓋部材駆動シリンダ45内で生じた圧力で蓋部材41を回転軸線CL方向に沿って移動させる蓋部材駆動ピストン44と、蓋部材駆動シリンダ45が圧力を生じさせて蓋部材駆動ピストン44を移動させる方向とは逆方向に蓋部材41を付勢する付勢装置(小コイルバネ)46bとを備える。
これによると、蓋部材駆動機構43は、蓋部材駆動シリンダ45と蓋部材駆動ピストン44とにより蓋部材41を移動させる簡素な機構とすることができる。また、蓋部材駆動ピストン44を蓋部材駆動シリンダ45の圧力とは逆方向に付勢する付勢装置46bによって、蓋部材41を閉位置SPおよび開位置OPのうちの一方の位置に保持した状態とすることができる。
また、蓋部材駆動シリンダ45は、入力軸14の周りに入力軸14に対して相対回転可能に設けられている。
これによると、蓋部材41が閉位置SPに移動してクラッチ機構31,32,33,36を覆った場合、入力軸14の回転に制約されることなく、クラッチ機構31,32,33,36と共に一体回転することで油保持部4に油を確実に保持することができる。
また、クラッチ機構31,32,33,36は、シリンダ部36に流体としての油を供給してピストン部33を移動させる流体ポンプとしての電動オイルポンプ12を備え、蓋部材駆動機構43は、電動オイルポンプ12により蓋部材駆動シリンダ45に油を供給する。
これによると、蓋部材駆動機構43において、蓋部材駆動シリンダ45に油を供給する電動オイルポンプ12は、クラッチ機構31,32,33,36において、ピストン部33を移動させるためシリンダ部36に油を供給するポンプと同じものが兼用される。そのため、簡素で低コストの蓋部材駆動機構43とすることができる。
なお、本実施形態における入力軸14と出力軸9とを反転させる構成としてもよい。本実施形態における出力軸9にエンジンを連結して新入力軸とし、入力軸14を電動モータのロータと一体的に回転する構成とし新出力軸としてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
また、蓋部材駆動シリンダ45に油が供給されていないときには、蓋部材を付勢装置によって開位置OPに保持するものとしたが、これに限定されず、例えば、蓋部材駆動シリンダ45に油が供給されていないときに、蓋部材を付勢装置によって閉位置SPに保持するものであってもよい。
また、付勢装置の付勢部材として小コイルバネ46bを適用したが、これに限らず板バネ等によって構成してもよい。さらに、ゴムや気体を付勢部材として利用してもよい。
また、流体ポンプを電動オイルポンプとしたが、これに限定されず、例えばエンジン等で作動する機械式でもよい。
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
11・・・電磁切替弁(冷却油供給装置)、12・・・電動オイルポンプ(冷却油供給装置・流体ポンプ)、14・・・入力軸、14e・・・通油口(冷却油供給装置)、2・・・エンジン(第1駆動源)、24・・・第4油路(冷却油供給装置)、3・・・クラッチ装置、31・・・セパレートプレート(クラッチ機構)、32・・・摩擦プレート(クラッチ機構)、33・・・ピストン部(クラッチ機構)、36・・・シリンダ部(クラッチ機構)、4・・油保持部、41・・・蓋部材、43・・蓋部材駆動機構、44・・・蓋部材駆動ピストン、45・・・蓋部材駆動シリンダ、44f・・・嵌着孔(付勢装置)、46・・・取付リング(付勢装置)、46a・・・取付環板(付勢装置)、46b・・・小コイルバネ(付勢装置)、9・・・出力軸、91a・・・外筒部(クラッチ機構の一端部)、93a・・・通油口(冷却油供給装置)、OP・・・開位置、SP・・・閉位置。

Claims (7)

  1. 駆動源に回転可能に連結される入力軸と、
    前記入力軸に対し相対回転可能に設けられた出力軸と、
    前記入力軸または前記出力軸の周りに環状に設けられ、前記入力軸と前記出力軸との間のトルクの伝達を断接するクラッチ機構と、
    前記クラッチ機構に対して径方向に重複する環状に形成され、前記入力軸または前記出力軸の回転軸線方向に沿って移動可能に設けられ、前記クラッチ機構の前記回転軸線方向の一端部を覆って前記クラッチ機構との間で油保持部を形成する閉位置と前記クラッチ機構の前記一端部から離れる開位置とに移動可能である板状の蓋部材と、
    前記蓋部材を前記回転軸線方向に沿って移動させる蓋部材駆動機構と、
    前記蓋部材が前記閉位置にあるときに、前記油保持部に冷却のための油を供給する冷却油供給装置と、を備えた車両用クラッチ装置。
  2. 前記クラッチ機構は、
    前記入力軸と一体回転可能な複数のセパレートプレートと、
    前記複数のセパレートプレートと交互に接離可能に配置され前記出力軸に一体回転可能な複数の摩擦プレートと、
    前記回転軸線方向に沿って移動することで前記セパレートプレートと前記摩擦プレートとを接離させるピストン部と、
    前記ピストン部が前記回転軸線方向に沿って摺動するとともに、前記セパレートプレートと前記摩擦プレートとを外側から囲むように前記回転軸線方向に沿って設けられた筒状の外筒部を有するシリンダ部と、を備え、
    前記蓋部材は、前記外筒部の一端部を覆う閉位置と前記外筒部の一端部から離れる開位置とに移動可能である請求項1に記載の車両用クラッチ装置。
  3. 前記入力軸は、第1駆動源に回転可能に連結され、
    前記出力軸は、第2駆動源に回転可能に連結される請求項1または2に記載の車両用クラッチ装置。
  4. 前記蓋部材駆動機構は、前記ピストン部により前記セパレートプレートと前記摩擦プレートとが接続される際に、前記蓋部材を前記閉位置に移動させる請求項2または3に記載の車両用クラッチ装置。
  5. 前記蓋部材駆動機構は、
    供給される流体によって内部に圧力を生じさせる蓋部材駆動シリンダと、
    前記蓋部材駆動シリンダ内で生じた圧力で前記蓋部材を前記回転軸線方向に沿って移動させる蓋部材駆動ピストンと、
    前記蓋部材駆動シリンダが圧力を生じさせて前記蓋部材駆動ピストンを移動させる方向とは逆方向に前記蓋部材を付勢する付勢装置と、を備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用クラッチ装置。
  6. 前記蓋部材駆動シリンダは、前記入力軸の周りに前記入力軸に対して相対回転可能に設けられている請求項5に記載の車両用クラッチ装置。
  7. 前記クラッチ機構は、前記シリンダ部に流体を供給して前記ピストン部を移動させる流体ポンプを備え、
    前記蓋部材駆動機構は、前記流体ポンプにより前記蓋部材駆動シリンダに流体を供給する請求項5または6に記載の車両用クラッチ装置。
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WO2020145283A1 (ja) * 2019-01-09 2020-07-16 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 車両用駆動装置

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