JP2017039906A - 防曇性被膜、防曇性被膜形成物品及び防曇性被膜形成物品の製造方法 - Google Patents

防曇性被膜、防曇性被膜形成物品及び防曇性被膜形成物品の製造方法 Download PDF

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井上 雅史
Masafumi Inoue
雅史 井上
敏裕 平野
Toshihiro Hirano
敏裕 平野
教和 藤浦
Norikazu Fujiura
教和 藤浦
宏紀 深澤
Hiroki Fukasawa
宏紀 深澤
濱口 滋生
Shigeo Hamaguchi
滋生 濱口
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Abstract

【課題】本発明は、親水性と耐傷付き性の両立する防曇性被膜および防曇性被膜形成物品を提供することを課題とする。
【解決手段】オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂を含む防曇性被膜であって、該防曇性被膜は、含フッ素界面活性剤を含み、該防曇性被膜における該含フッ素系界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して0.001〜2%であり、前記防曇性被膜の元素分析により前記防曇性被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率が5〜30%であることを特徴とする防曇性被膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、防曇性被膜、防曇性被膜形成物品及び防曇性被膜形成物品の製造方法に関する。
浴室用・洗面化粧台用の鏡、自動車の窓ガラスやカメラのレンズ等の透明基材の視認性を確保するために、これらの基材の表面に曇り防止機能を付与することが強く求められている。
鏡やガラスなどの基材表面に生じる曇りは、無数の微小な水滴が基材表面上に生じる結露現象によって生じる。この曇りを防ぐために、基材表面上に生じた無数の微小な水滴を一様な水膜とする親水性被膜や、水滴を被膜中に取り込む吸水性被膜等が基材上に形成されてきた。
浴室用・洗面化粧台用の鏡や自動車の窓ガラス等においては、掃除のために頻繁に払拭されるため、良好な防曇性に加えて、耐傷付き性や鉛筆硬度などの被膜の硬度においても優れていることが求められている。
特許文献1には、防曇性、耐磨耗性に優れるウレタン樹脂系の防曇性被膜の形成方法として、イソシアネート成分を含む塗布剤Aと、ポリエチレングリコールや、オキシエチレン/オキシプロピレンの共重合ポリオール及び短鎖ポリオールを有するポリオール成分、イソシアネート反応性基を有する界面活性剤を含む塗布剤Bとからなる2液硬化型の防曇性被膜形成用塗布剤を基材に塗布して防曇性被膜を形成する方法が開示されている。
特許文献1の防曇性被膜は、ポリエチレングリコールや、オキシエチレン/オキシプロピレンの共重合ポリオールによる吸水性と、界面活性剤による親水性という2つの機能により防曇性を発現している。
特開2004−244612号(特許4535707号)公報
しかし、特許文献1に記載の防曇性被膜は、親水性を向上させるには、被膜に界面活性剤を大量に含む必要があり、その結果、耐傷付き性が低下してしまうことがあり、親水性と耐傷付き性の両立は困難であった(後述の比較例6、7参照)。そのため、親水性と耐傷付き性を両立する防曇性被膜が強く求められていた。
そこで、本発明は、親水性と耐傷付き性の両立する防曇性被膜および防曇性被膜形成物品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、種々検討した結果、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂を含む防曇性被膜において、該防曇性被膜に含フッ素界面活性剤を含有させ、さらに、該含フッ素界面活性剤を該防曇性被膜の表層に局在化させ、そして、該防曇性被膜の元素分析により前記防曇性被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率を特定の値とすることで、親水性と耐傷付き性を両立する防曇性被膜を形成出来ることを見出だし、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[発明1]
オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂を含む防曇性被膜であって、
該防曇性被膜は、含フッ素界面活性剤を含み、
該防曇性被膜における該含フッ素系界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して0.001〜2%であり、
前記防曇性被膜の元素分析により前記防曇性被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率が5〜30%であることを特徴とする防曇性被膜。
[発明2]
前記含フッ素界面活性剤が、下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤であることを特徴とする発明1に記載の防曇性被膜。
(式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜22の自然数である。)
[発明3]
基材と、該基材上に形成された発明1又は2に記載の防曇性被膜とからなることを特徴とする防曇性被膜形成物品。
[発明4]
前記防曇性被膜の膜厚が、5〜40μmであることを特徴とする、発明3に記載の防曇性被膜形成物品。
[発明5]
前記基材が、ガラスまたは鏡であることを特徴とする、発明4に記載の防曇性被膜形成物品。
[発明6]
基材と、該基材上に形成された発明1に記載の防曇性被膜とを有する防曇性被膜形成物品の製造方法であって、
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
オキシエチレン/オキシプロピレンのモル比が60:40〜90:10、かつ、数平均分
子量が2000〜15000であるオキシエチレン/オキシプロピレンの共重合ポリオール、
数平均分子量が5000〜25000のアクリルポリオール、
下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤、
を含み、
前記イソシアネート化合物の固形分が、ウレタン形成成分の固形分の総量100質量%に対して、50〜75質量%であり、
前記アクリルポリオールの固形分が、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、2〜50質量%であり、
前記含フッ素界面活性剤が、ウレタン形成成分の固形分の総量に対して、0.1〜5.0質量%であることを特徴とする防曇性被膜形成用塗布剤と、基材とを準備する、準備工程、
該塗布剤を該基材に塗布する、塗布工程、及び、
該基材に塗布した該塗布剤を硬化させる、硬化工程
を有することを特徴とする、防曇性被膜形成物品の製造方法。
(式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜22の自然数である。)
オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有する防曇性被膜に、含フッ素界面活性剤を含有させ、さらに、該含フッ素界面活性剤を該防曇性被膜の表層に局在化させ、元素分析により該防曇性被膜表面に観測されるフッ素原子の個数の比率を特定の値とすることにより、親水性と耐傷付き性を両立する防曇性被膜を形成出来る。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
<防曇性被膜>
本発明の防曇性被膜は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂を含む防曇性被膜であって、該防曇性被膜は、含フッ素界面活性剤を含み、該防曇性被膜における該含フッ素系界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して0.001〜2%であり、前記防曇性被膜の元素分析により前記防曇性被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率が5〜30%であることを特徴とする防曇性被膜である。
<ウレタン樹脂>
本発明の防曇性被膜が含むウレタン樹脂は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂である。該ウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート化合物と、オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオール、アクリルポリオール等のポリオール成分とを重縮合して形成することが出来る。
<イソシアネート化合物>
上記イソシアネート化合物は、ウレタン樹脂の原料として用いるものであり、ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを出発原料としたビウレット及び/又はイソシアネート構造を有する3官能のポリイソシアネート、ジイソフォロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(メチルシクロヘキシル)ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等が挙げられる。上記イソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネートを出発原料としたビウレット構造を有するイソシアネートが耐候性、耐薬品性の点から好ましい。
上記イソシアネート化合物は、ウレタン形成成分(本発明においては、イソシアネート化合物及びポリオール成分を指す)の固形分の総量100質量%に対して通常50〜75質量%であり、より好ましくは55〜75質量%、さらに好ましくは55〜65質量%である。イソシアネート化合物が75質量%よりも多くなると、ポリオール成分が不足し、架橋構造が十分には形成されにくくなるため、被膜の硬度が不十分になることがある。また、イソシアネート化合物が50質量%よりも少なくなる場合も、被膜の硬度が不十分になることがある。
上記イソシアネート化合物に存在するイソシアネート基の総数は、上記ウレタン樹脂を構成するポリオール中に存在する水酸基の総数に対して、通常1.0倍量以上15倍量以下、より好ましくは1.1倍量以上10倍量以下、さらに好ましくは1.1倍量以上3倍量以下とするように調整することが好ましい。1.0倍量未満の場合は、塗布剤の硬化性が悪化することがある。
<ポリオール成分>
上記ウレタン樹脂の原料として、オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオール、アクリルポリオール等のポリオール成分を用いることが出来る。
<オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオール>
上記オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオール(以下、EO/PO共重合ポリオール、とも記載する)は、市中より入手可能であり、開始剤にフォスファゼン化合物、ルイス酸化合物またはアルカリ金属化合物触媒を用い、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを開環重合させて、ブロック付加またはランダム付加して得られる、ポリエーテルポリオールである。
上記オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオールは、主として被膜に吸水性の機能を付与し、防曇性を発揮させる成分である。このポリオールは、オキシエチレン基(-CH2CH2-O-)及びオキシプロピレン基(-CH2CH2CH2-O-、-CH(CH3)CH2-O-)を有する。オキシエチレン基は、水を結合水として吸収する機能に優れるので、脱水時の脱水速度の速い可逆的な吸脱水を呈する防曇性被膜の形成に有利であり、雰囲気温度が5℃以下となるような冬季等の低温環境であっても、オキシエチレン鎖を有する共重合ポリオールを用いて形成した被膜は、防曇性を発現しやすい。
上記オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオールのオキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比(以下、EO/PO比率、とも記載する)は、通常60:40〜90:10であり、70:30〜90:10がより好ましく、75:25〜85:15がさらに好ましい。オキシエチレンの割合が90%超になると、疎水的なオキシプロピレン鎖の作用が小さくなり、膜表面近傍へ親水的なオキシエチレン鎖や含フッ素界面活性剤を誘導しにくくなると考えており、一方で、45%未満では、疎水的なオキシプロピレン鎖が多くなるため、親水化剤を添加しても十分な親水性が得られにくくなると考えている。
上記オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオールの数平均分子量は、通常500〜20000であり、数平均分子量が500未満の場合、水を結合水として吸収する能力が低く、数平均分子量が20000を超える場合は、塗布剤の硬化不良や膜強度の低下等の不具合が生じることがある。被膜の吸水性、親水性や膜強度等を考慮すると、2000〜15000であることが好ましく、3000〜12000であることがさらに好ましく、3000〜6000であることがより好ましい。
上記オキシエチレン/オキシプロピレン共重合ポリオールの固形分は、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、通常25〜75質量%であり、好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。
<アクリルポリオール>
上記アクリルポリオールは、ウレタン樹脂の原料として用いるものであり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体であり、被膜の耐摩耗性等の耐久性を向上させるためや、表面摩擦係数を下げるため、すなわち、膜表面にスリップ性を発揮させるために用いる成分である。
アクリルポリオールは、市中より入手可能であり、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド等の水酸基含有モノマーを、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸第3ブチル、アクリロにトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸第3ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等と共重合することにより得られたものを使用できる。
また、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリル酸第3ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミノ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸等の酸基含有モノマー、又は、フマル酸エステル、イタコン酸エステル等を上記水酸基含有モノマーと共重合させて得られるものでもよい。
上記アクリルポリオールの数平均分子量は通常5000〜25000であり、より好ましくは10000〜25000、さらに好ましくは15000〜20000である。アクリルポリオールの数平均分子量が5000よりも小さい場合、膜の緻密性が高くなり過ぎて、脆くなることがある。また25000よりも大きくなると、膜中に占めるアクリルポリオールの体積が大きくなり、親水性を低下させる傾向がある。
上記アクリルポリオールの固形分は、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、通常2〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%である。アクリルポリオールの固形分が50質量%よりも大きくなると、防曇性や親水性が低下しやすくなり、2質量%よりも小さくなると被膜の十分な硬度を得にくくなる。
<短鎖ポリオール>
上記ウレタン樹脂は、短鎖ポリオール(本発明においては、数平均分子量が60〜200のポリオールのことを短鎖ポリオールと呼ぶ)を原料として用いることが好ましい。該短鎖ポリオールは、防曇性被膜の硬度を向上させるための成分である。該短鎖ポリオールの水酸基数は、2又は3であることが好ましい。水酸基が1の場合は、該短鎖ポリオールが架橋成分として働かず被膜の骨格成分とならないため、被膜の硬度が十分には得られないことがある。4以上の場合は、反応性が高過ぎて、塗布剤が不安定になりうる。
短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,2‘−チオジエタノール等のアルキルポリオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがあげられ、それらを単独、又は混合物、若しくはそれらの数平均分子量が60〜200の範囲の共重合体等を使用することができる。上記短鎖ポリオールの中では、エチレングリコール、トリエチレングリコールが得られる防曇性被膜の硬度の点から好ましく、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3−ブタンジオールのような1級水酸基よりも活性の低い2級や3級水酸基を有する短鎖ポリオールは、塗布液の安定性(ポットライフの長期化)の点から好ましい。
通常、短鎖ポリオール等の被膜の耐久性を向上させる成分を導入すると、防曇性被膜の防曇性が低下する。しかしながら、界面活性剤を適切量含有させ、共重合ポリオールを適切量含有させることにより、優れた防曇性、耐磨耗性等を有する防曇性被膜を得ることができる。具体的には、上記短鎖ポリオールの固形分は、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、通常6〜40質量%、好ましくは6〜30質量%、より好ましくは6〜22質量%である。
<ポリエチレングリコール>
被膜の吸水性を向上させるために、短鎖ポリオールの代わりにポリエチレングリコール(PEG)をポリオール成分として用いても良い。
<含フッ素界面活性剤>
本発明の防曇性被膜は、含フッ素界面活性剤を含む。該含フッ素界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホニルサルコシンナトリウム、パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホンアルキルアンモニウムヨージド、パーフルオロアルケニルオキシベンズアミドアルキルアンモニウムヨージド、パーフルオロアルケニルオキシアラルキルベタイン、パーフルオロアルケニルオキシアラルキルホスホン酸等を用いることが出来る。含フッ素界面活性剤は、被膜に親水性を付与して防曇性を発現させる成分であると推測している。
オキシエチレン基、オキシプロピレン基やアシル基を有するウレタン樹脂を含む被膜に親水性を付与して防曇性を発現させる成分として、従来は、特許文献1のように、フッ素を含まないイオン性界面活性剤が用いられていたが、本願発明の系では、このような界面活性剤を用いると、被膜の表層への該界面活性剤の局在化が不十分で、親水性や耐傷付き性に優れなかった(後述の比較例6、7参照)。そこで、含フッ素界面活性剤を用いて、該含フッ素界面活性剤を被膜の表層に局在化させることにより、親水性と耐傷付き性を両立させることができた(後述の実施例参照)。
また、該含フッ素界面活性剤としては、下記一般式[1]や[2]で表される含フッ素界面活性剤を用いることが好ましい。これらの含フッ素界面活性剤は、水酸基、メルカプト基、アミノ基等のイソシアネート反応性基を有しない。上記含フッ素界面活性剤の中では、下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤が、親水性の高さや膜硬度の点から好ましい。また、下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤においては、式[1]中、X、Yは単結合であることが好ましく、nは8〜16の自然数であることが好ましく、9〜13の自然数であることがより好ましい。
(式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜20の自然数である。)
(式[2]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜15の自然数である。)
上記含フッ素界面活性剤の含有量は、ウレタン形成成分の固形分の総量に対して、0.1〜5.0質量%とすることが好ましく、0.5〜2.0質量%とすることがより好ましい。含フッ素界面活性剤の含有量を多くすると、得られる被膜の品質が含フッ素界面活性剤によって影響され、外観や膜強度にも支障をきたすことがある。他方、含フッ素界面活性剤の含有量が少ない場合、被膜表面の親水性が十分には得られにくくなる。また、上記含フッ素界面活性剤中のフッ素原子は、上記含フッ素界面活性剤の総量に対して10〜50質量%を占めることが好ましく、20〜40質量%を占めることがより好ましい。また、上記含フッ素界面活性剤中のフッ素原子の量が、ウレタン形成成分の固形分の総量に対して0.1〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.7質量%であることがより好ましい。
本発明の防曇性被膜における該含フッ素界面活性剤の表層厚さは、被膜の膜厚に対して0.001〜2%である。2%を超える場合は、被膜の外観に白濁が生じたり、鉛筆硬度の低下が生じたりする点で不適当であり、0.001%未満では、親水性が低下する点で不適当である。本発明において界面活性剤の表層厚さとは、X線光電子分光分析(XPS)を用いた元素分析により、被膜表面から深さ方向にエッチングしながら元素分析を行い、界面活性剤に含有されるフッ素や硫黄の濃度が検出限界以下となる、被膜表面からの深さを意味する。含フッ素界面活性剤の表層厚さが薄いほど、含フッ素界面活性剤は被膜の表面により局在化しており、被膜に親水性を付与する点と被膜の硬度の点で好ましいと考えられる。含フッ素界面活性剤の表層厚さを薄くした方が、被膜の硬度を高くしやすい。含フッ素界面活性剤の表層厚さは、より好ましくは被膜の膜厚に対して0.01〜1%であり、さらに好ましくは被膜の膜厚に対して0.01〜0.5%である。
本発明の防曇性被膜において、元素分析により被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率は、5〜30%である。本発明において、該フッ素原子の個数の比率は、X線光電子分光分析(XPS)を用いて被膜表面の元素分析を行い、存在するフッ素、硫黄、炭素、酸素、窒素に由来するピークの面積を求め、この面積に各元素の検出感度による係数をかけ、原子数に換算して原子組成百分率を算出した。該フッ素原子の個数の比率は、5%より少ないと、被膜の表面に含フッ素界面活性剤が十分には存在しなくなり、親水性が不十分となるため好ましくなく、30%より多いと被膜表面が白濁するため好ましくない。該フッ素原子の個数の比率は、より好ましくは10〜30%であり、さらに好ましくは17〜30%である。
<防曇性被膜形成物品の製造方法>
本発明の防曇性被膜形成物品を製造する方法について述べる。本発明の防曇性被膜形成物品を製造する方法は、基材と、該基材上に形成された上記に記載の防曇性被膜とを有する防曇性被膜形成物品の製造方法であって、
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
オキシエチレン/オキシプロピレンのモル比が60:40〜90:10、かつ、数平均分
子量が2000〜15000であるオキシエチレン/オキシプロピレンの共重合ポリオール、
数平均分子量が5000〜25000のアクリルポリオール、
下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤、
を含み、
前記イソシアネート化合物の固形分が、ウレタン形成成分の固形分の総量100質量%に対して、50〜75質量%であり、
前記アクリルポリオールの固形分が、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、2〜50質量%であり、
前記含フッ素界面活性剤が、ウレタン形成成分の固形分の総量に対して、0.1〜5.0質量%であることを特徴とする防曇性被膜形成用塗布剤と、基材とを準備する、準備工程、
該塗布剤を該基材に塗布する、塗布工程、及び、
該基材に塗布した該塗布剤を硬化させる、硬化工程
を有することを特徴とする、防曇性被膜形成物品の製造方法である。
(式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜22の自然数である。)
準備工程においては、基材と防曇性被膜形成用塗布剤を準備する。基材としては、代表的なものとしてはガラスが用いられる。そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラスであり、フロート法、デュープレックス法、ロールアウト法等による板ガラスであって、製法は特に問わない。
ガラス種としては、クリアをはじめグリーン、ブロンズ等の各種着色ガラスやUV、IRカットガラス、電磁遮蔽ガラス等の各種機能性ガラス、網入りガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス等防火ガラスに供し得るガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合わせガラスのほか複層ガラス等、銀引き法あるいは真空成膜法により作製された鏡、さらには平板、曲げ板等各種ガラス製品を使用できる。
板厚は特に制限されないが、1.0mm以上10mm以下が好ましく、特に1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。基材表面への防曇性被膜の形成は、基材の片面だけ、或いは用途によっては両面に行ってもよい。又、防曇性被膜の形成は基材表面の全面でも一部分であってもよい。
ガラス基材に塗布剤を塗布して被膜を形成する場合、基材と被膜との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を有する液を、防曇性被膜形成用塗布剤の塗布前に、ガラス基材表面に塗布しておくことが好ましい。適切なシランカップリング剤としてはアミノシラン、メルカプトシラン及びエポキシシランが挙げられる。好ましいのはγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシ、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等である。
上記ガラス以外に、基材として、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリカーボネート等の樹脂等も使用することができる。これら樹脂透明基材表面に上記防曇性被膜を形成して防曇性被膜形成物品とし、該物品をガラス基材に貼付してもよい。
防曇性被膜形成用塗布剤は、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含む薬液と、ポリオール成分及び含フッ素界面活性剤を含む薬液とを混合して得られる。イソシアネート基とポリオール成分の水酸基とが反応し、ウレタン結合が生じ、ウレタン樹脂が形成され始める。なお、防曇性被膜形成用塗布剤中のウレタン形成成分(ポリオール成分及びイソシアネート化合物)及び含フッ素界面活性剤の種類や割合は、これまで述べてきた、防曇性被膜に含まれるウレタン樹脂の原料や、防曇性被膜に含まれる含フッ素界面活性剤の種類や割合と同様である。
次いで、防曇性被膜形成用塗布剤を基材へ塗布する塗布工程を行う。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段を採用できる。塗布後、通常は室温で放置又は170℃以下の熱処理で、防曇性被膜形成用塗布剤を硬化させる硬化工程を行い、基材に防曇性被膜を形成する。熱処理の温度が170℃を超えると、ウレタン樹脂の炭化が起こり、膜強度が低下する等の不具合が生じることがある。塗布剤の硬化反応を促進させるためには、80℃〜170℃で熱処理を行うことが好ましい。
防曇性被膜の膜厚は、防曇性被膜形成用塗布剤の硬化反応後において5μm〜40μm程度にするのが望ましく、5〜20μmがより好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。5μm未満であると、耐久性が劣る傾向にあり、40μmを超えると外観品質において光学歪みが発生する等の不具合が生じることがある。
本発明の防曇性被膜形成物品の使用用途としては、建築用には、浴室用、洗面化粧台用等の鏡、窓ガラス等、車両、船舶、航空機等には、窓ガラスあるいは鏡、具体的にはルームミラー、ドアミラー等があげられ、その他に眼鏡やカメラ等のレンズ、ゴーグル、ヘルメットシールド、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、試験機、精密機器ケース等の開口部やのぞき窓、道路反射鏡、携帯電話等の移動通信体のディスプレー等があげられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はかかる実施例に限定されるものでない。
本実施例及び比較例では、防曇性被膜を形成するための防曇性被膜形成用塗布剤を調製し、基材上に塗布し乾燥させて、防曇性被膜形成物品を作製した。上記塗布剤の調製方法及び防曇性被膜形成物品の製造方法は後述の通りである。また、得られた防曇性被膜形成物品について、以下に示す方法により品質評価を行った。
〔被膜の膜厚〕:被膜の膜厚は、被膜表面をカッター等で切り込みを入れ、被膜表面と基材表面の段差を表面粗さ計(小坂研究所社製 Surfcorder ET−4000A)で測定し、5点平均値を被膜の膜厚とした。
〔界面活性剤の表層厚さ〕:X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製PHI 5000 VersaProbeII)を用いて、被膜表面から深さ方向にエッチングしながら元素分析を行い、界面活性剤に含有されるフッ素や硫黄の濃度が検出限界以下となる、被膜表面からの深さを界面活性剤の表層厚さとした。なお、表1中では、界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して何%であったかを表記している。測定はモノクロAIKα線 50W 15KVを防曇性被膜形成物品の表面の200μm角に照射し、光電子取り出し角度45°とし、エッチングはアルゴン−ガスクラスターイオンビームで行った。なお、エッチングレートは防曇性被膜で4nm/min程度であった。
〔被膜表面のフッ素原子比率、硫黄原子比率〕:X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製PHI 5000 VersaProbeII)を用いて被膜表面の元素分析を行い、存在するフッ素、硫黄、炭素、酸素、窒素に由来するピークの面積を求め、この面積に各元素の検出感度による係数をかけ、原子数に換算して原子組成百分率を算出した。測定はモノクロAIKα線 50W 15KVを防曇性被膜形成物品の表面の200μm角の範囲に照射し、光電子取り出し角度45°とした。
〔外観評価〕:防曇性被膜形成物品の外観、透過性、クラックの有無を目視で評価し、問題ないものを合格(○)、問題のあったものを不合格(×)とした。
〔防曇性評価〕:常温(温度24℃、湿度45%)の室内において、防曇性被膜形成物品の該被膜面に対し、被膜と試験者の口との間隔を20mmにして息を吐く。蛍光灯に反射像を照らしながら曇りを観察して、写像が認識できるものを○、曇りで写像を認識できないものを×とした。
〔親水性評価〕:防曇性被膜形成物品の被膜面にイオン交換水2μLを滴下し、着滴10秒後の液滴と被膜面とのなす角を、接触角計(CA−X200、協和界面科学社製)を用いて室温(約25℃)で測定した。該接触角が小さいほど、より親水性に優れているといえ、30°以下のものを合格とした。該接触角が30°以下になると、物品の表面に付着した水滴がぬれ広がりやすくなり、水滴による光の乱反射が抑制され、曇りにくくなる。
〔鉛筆硬度〕:”JIS K 5600 塗料一般試験方法”に準拠して、荷重750gが負荷された鉛筆で膜表面を2回引っ掻き、2回とも膜の破れが無かった鉛筆の硬度を膜の鉛筆硬度とした。鉛筆硬度2H以上のものを合格とした。
〔耐傷付き性〕:耐傷付き性の評価として、白ネル(番手:#100)で基材表面を約300g/cm2の強さで摺動しながら、キズが発生するまでの回数を測定した。200往復未満でキズが発生したものを×、200往復から1000往復までにキズが発生したものを○、1000往復後もキズが発生しなかったものを◎とした。
〔耐スチールウール性(耐SW性)〕:耐SW性の評価として、SW(番手:#0000)で、基材表面を約325g/cm2の強さで10往復摺動した後のキズの本数を測定した。試験後、キズが10本未満のものを◎(微キズ)、キズが10本から30本未満のものを○(軽キズ) キズ30本以上のものを×(重キズ)とした。
[実施例1]
(1)防曇性被膜形成用塗布剤の調製
イソシアネートプレポリマーとしてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットタイプのポリイソシアネート(商品名「N3200」住友バイエルウレタン製)18.11gを準備した。これを薬剤Aとする。
希釈溶媒である酢酸イソブチルとジアセトンアルコールの混合溶媒65.53gに、数平均分子量4000のオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体(商品名「トーホーポリオールPB−4000」;東邦化学工業製)を5.92g、及び数平均分子量62の短鎖ポリオール(エチレングリコール;キシダ化学製)2.37gを混合し、これに数平均分子量18000のアクリルポリオールを45.0質量%有する混合溶液(商品名「アクリディック 47−538−BA」;DIC株式会社製)7.89gを添加し、さらに親水化剤としてフッ素系界面活性剤(フタージェント212M;ネオス社製)を0.15g添加し、攪拌することで、81・86gのポリオール混合薬液を得た。これを薬剤Bとする。なお、上記薬剤B中のオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体とエチレングリコールとアクリルポリオールの固形分比(以降、「EOPO:EG:AP比」と記載する場合がある)は「EOPO:EG:AP=50:20:30」となるように調製されている。また、フタージェント212Mは、前記一般式[1]のX、Yが単結合、n=12で表される含フッ素界面活性剤である。
上記の薬剤Aと薬剤Bを混合し、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDL)0.03gを添加することで、防曇製被膜形成用塗布剤100gを調製した。
ここで調製した防曇性被膜形成用塗布剤100質量%中の前記ウレタン形成成分の固形分の総量は、30%である。また、含フッ素界面活性剤の含有量はウレタン形成成分の固形分の総量に対し0.5質量%であり、薬剤Aのイソシアネートプレポリマー成分に対するイソシアネート基の数は、薬剤B中のオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体とエチレングリコールとアクリルポリオール成分に存在する水酸基の数に対して1.2倍量である(表1では「NCO/OH比」として記載)。薬剤A(イソシアネート化合物)の固形分は、ウレタン形成成分(実施例1においては、イソシアネート化合物、共重合ポリオール、アクリルポリオール、及び短鎖ポリオール)の固形分の総量100質量%に対して60.5質量%含まれている。
(2)防曇性被膜形成物品の製造
希釈溶媒である88gのイオン交換水と10gのエタノールの混合溶液に3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(東京化成製)2gを添加し、2質量%の溶液を調製した。次に、該溶液を吸収したセルロース繊維からなるワイパー(商品名「ベンコット」、型式M−1、50mm×50mm、小津産業製)で、透明ガラス基板の裏面に鏡面加工を施したガラス(厚さ5mm)のガラス面側の表面を払拭することで該溶液を塗布し、室温状態にて乾燥後、水道水を用いてワイパーで塗布後の鏡表面を水洗することで、プライマー層が形成された基材を準備した。
該基材に上記で得られた防曇性被膜を形成するための塗布剤をスピンコートにより塗布し、塗布剤のガラス板を約150℃で約10分間熱処理することにより、膜厚10μmの防曇性被膜形成物品を得た。
[実施例2〜9]
表1に示すとおり、オキシエチレン/オキシプロピレン共重合体、アクリルポリオール、短鎖ポリオール、ポリエチレングリコール、イソシアネート化合物および界面活性剤の種類、比および添加量を変え、それ以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例1〜7]
表1に示すとおり、オキシエチレン/オキシプロピレン共重合体、短鎖ポリオール、アクリルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリイソシアネートおよび界面活性剤の種類、比および添加量を変え、それ以外は実施例1と同様に実施した。なお、比較例6及び7において界面活性剤として用いたLipoquat R(Lipochemicals社製)は、イソシアネート反応性基である水酸基を有する界面活性剤(リシノールアミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート)である。
各実施例及び各比較例について、防曇性被膜形成用塗布剤の各成分とその割合を表1に示す。また、各実施例及び各比較例で得られた防曇性被膜形成物品に関し、界面活性剤の表層厚さ/被膜の膜厚、被膜の膜厚、被膜表面のフッ素・硫黄原子比率、外観の観察結果、防曇性、初期水接触角、鉛筆硬度、耐傷付き性、耐SW性の測定結果を下記の表2に示す。
表1及び表2より明らかなように、実施例1〜9では、防曇性被膜は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂と、含フッ素界面活性剤とを含み、被膜における含フッ素系界面活性剤の表層厚さは被膜の膜厚に対して0.001〜2%であり、元素分析により被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率は5%〜30%であり、親水性と耐傷付き性を両立していた。また、外観、防曇性、鉛筆硬度も良好であった。
また、短鎖ポリオールとして2,3−ブタンジオールを用いた実施例6〜8の方が、エチレングリコールを用いた実施例1よりも、ポットライフが3倍程度長いことが分かった。
含フッ素界面活性剤をウレタン形成成分の固形分の総量に対して、それぞれ0.5質量%、1.0質量%添加した実施例6、7は、含フッ素界面活性剤をウレタン形成成分の固形分の総量に対して、3.0質量%添加した実施例8よりも、鉛筆硬度の点で好ましいことが分かった。含フッ素界面活性剤が、ウレタン樹脂に比べて柔らかいためと推測される。
比較例1では、含フッ素界面活性剤を含まず、防曇性、親水性等が実施例よりも劣っていた。
比較例2では、被膜表面のフッ素原子比率が小さく、防曇性、親水性等が実施例よりも劣っていた。
比較例3では、含フッ素界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して2.5%と厚く、また、被膜表面のフッ素原子比率が45%と多すぎ、被膜表面の外観が白濁して不良であった。また、鉛筆硬度も実施例より劣っていた。
比較例4では、実施例1で用いたオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体をポリエチレングリコール(PEG)に置き換えたところ、被膜表面のフッ素原子比率が2%と少なく、防曇性、親水性等が実施例よりも劣っていた。
比較例5では、アクリルポリオールを含まず、外観、防曇性、親水性等が実施例よりも劣っていた。
比較例6では、従来用いられていた、イソシアネート反応性基である水酸基を有する界面活性剤を用いたが、防曇性、親水性が実施例よりも劣っていた。
比較例7では、比較例6よりも、イソシアネート反応性基である水酸基を有する界面活性剤の添加量を増やしたところ、防曇性、親水性はやや向上したものの、親水性は実施例よりも劣っており、また、耐傷付き性や鉛筆硬度も不十分であった。
本発明の防曇性被膜形成物品は、耐傷付き性と親水性を両立するので、払拭が頻繁になされる環境でも長期間使用することができる。例えば、浴室や洗面化粧台用の鏡、自動車用のガラス、カメラのレンズなどで使用できる。

Claims (6)

  1. オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びアシル基を有するウレタン樹脂を含む防曇性被膜であって、
    該防曇性被膜は、含フッ素界面活性剤を含み、
    該防曇性被膜における該含フッ素系界面活性剤の表層厚さが被膜の膜厚に対して0.001〜2%であり、
    前記防曇性被膜の元素分析により前記防曇性被膜の表面に観測される全原子の個数に対するフッ素原子の個数の比率が5〜30%であることを特徴とする防曇性被膜。
  2. 前記含フッ素界面活性剤が、下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の防曇性被膜。

    (式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜22の自然数である。)
  3. 基材と、該基材上に形成された請求項1又は2に記載の防曇性被膜とからなることを特徴とする防曇性被膜形成物品。
  4. 前記防曇性被膜の膜厚が、5〜40μmであることを特徴とする、請求項3に記載の防曇性被膜形成物品。
  5. 前記基材が、ガラスまたは鏡であることを特徴とする、請求項4に記載の防曇性被膜形成物品。
  6. 基材と、該基材上に形成された請求項1に記載の防曇性被膜とを有する防曇性被膜形成物品の製造方法であって、
    イソシアネート基を有するイソシアネート化合物、
    オキシエチレン/オキシプロピレンのモル比が60:40〜90:10、かつ、数平均分
    子量が2000〜15000であるオキシエチレン/オキシプロピレンの共重合ポリオール、
    数平均分子量が5000〜25000のアクリルポリオール、
    下記一般式[1]で表される含フッ素界面活性剤、
    を含み、
    前記イソシアネート化合物の固形分が、ウレタン形成成分の固形分の総量100質量%に対して、50〜75質量%であり、
    前記アクリルポリオールの固形分が、ポリオール成分の固形分の総量100質量%に対して、2〜50質量%であり、
    前記含フッ素界面活性剤が、ウレタン形成成分の固形分の総量に対して、0.1〜5.0質量%であることを特徴とする防曇性被膜形成用塗布剤と、基材とを準備する、準備工程、
    該塗布剤を該基材に塗布する、塗布工程、及び、
    該基材に塗布した該塗布剤を硬化させる、硬化工程
    を有することを特徴とする、防曇性被膜形成物品の製造方法。
    (式[1]中、Xは単結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを示し、Yは単結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸アミド結合、エーテル結合のいずれかを示す。ただし、Xが単結合の場合は、YもXと一緒になって単結合となる。また、nは2〜22の自然数である。)


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