そこで、本発明は、浴槽の側壁を洗い場側及び浴槽側からクランプすることによって着脱自在に取り付けられる浴槽用手摺りにおいて、取り付け前後において、浴槽側壁に対する本体フレームに取り付けられた手摺りの位置及びハンドルノブの位置が変化することがなく、さらにクランプ力が過大となることによる浴槽側壁の破損が防止された浴槽用手摺りを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の目的を達成するため、浴槽の側壁を洗い場側及び浴槽側からクランプすることによって着脱自在に取り付けられる浴槽用手摺りにおいて、浴槽側壁のクランプ方式、ボルト軸又はナット部の回動支持手段及びその取付け方法、トルク遮断伝達手段及びその構成などについて鋭意検討を重ねた結果、浴槽側壁に載置される本体フレームに取り付けられた可動フレームを螺進退させて、該可動フレームの先端に支承された引き圧部を浴槽側壁へ向けて引き込むことによって浴槽側壁へ取り付けるタイプを基本形とした浴槽用手摺りへ、トルク遮断伝達機能を付加することが最も有益であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、浴槽側壁の上部に配置される水平部と、浴槽側壁の一方の側面へ当接される当接部とを含んでいる本体フレームと、ナット部を有しており、前記本体フレームにスライド可能に取り付けられている可動フレームと、前記可動フレームに取り付けられており、浴槽側壁の他方の側面を引き圧する引き圧部と、前記本体フレームへ回動自在に支持されており、前記可動フレームのナット部と螺合されるボルト軸と、前記ボルト軸を回動させて前記可動フレームを螺進退させるハンドルノブと、そして所定の力未満では、前記ハンドルノブから前記ボルト軸へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、前記ハンドルノブから前記ボルト軸への回動力の伝達を遮断するトルク伝達手段とを備えていることを特徴とする浴槽用手摺りが提供される。
なお、当接部は、本体フレームの一部を構成する一体品であってもよく、また本体フレームによって支持されたボルト軸などを介して支承されている別部品であってもよい。本体フレームが当接部を含んでいるとは、その両者の構成を含んでいることを意味している。また、当接部は、引き圧部と略同じ大きさ又は引き圧部と略同じ高さで対向して配置されている必要はなく、例えば当接部の高さ方向の幅が引き圧部の高さ方向の幅よりも狭く、且つ引き圧部よりも相対的に高い位置に配置されていてもよい。
当接部の高さ方向の幅が引き圧部の高さ方向の幅よりも狭く、そして当接部が引き圧部よりも相対的に高い位置に配置されていると、強度を有するリム部と強度を有さないエプロン部とを備えた外壁を有する浴槽側壁であっても、当接部の押圧力を洗い場側の浴槽側壁の強度部位(リム部)へ的確に誘導することができるので、エプロン部などの脆弱な浴槽側壁部分を破損させることなく、浴槽用手摺りを浴槽側壁へ確実かつ強固に取り付けることができる。
また、当接部が引き圧部よりも相対的に高い位置に配置されている場合、洗い場側の当接部による荷重の中心と、浴槽側の引き圧部による荷重の中心との位置のズレにより、浴槽用手摺りには、本体フレームを洗い場側に倒そうとする回転モーメントが生じる。このため、浴槽用手摺りの本体フレームには、洗い場側および浴槽側のクランプ位置のズレにより生じる回転モーメントを洗い場側の床面で支えるため、洗い場の床面に設置される脚部が取り付けられていてもよい。
本発明の浴槽用手摺りでは、可動フレームの内部にはナット部が設けられており、本体フレームには、該ナット部と螺合するボルト軸が回動自在に取り付けられている。このため、本発明では、ハンドルノブでボルト軸を回動することにより、ナット部が装着された可動フレームを螺進退させ、そして該可動フレームの先端部付近に取り付けられた引き圧部を浴槽側壁へ向けて引き込むことができるので、本体フレームを浴槽側壁へ寄せて載置した後は、引き圧部を浴槽側壁へ引き込んでも、本体フレーム及び該本体フレームに取り付けられた手摺りが浴槽側壁から移動して離れてしまうという問題がない。また、浴槽用手摺りを固定するために、洗い場側より押圧板などを用いて幅調節する必要もなくなる。
本発明の浴槽用手摺りでは、本体フレームには、貫通口を有する垂直壁が設けられており、ボルト軸には、前記貫通口より大きな外径を有する第1のフランジ部が設けられている。そして、本体フレームの貫通口へボルト軸を挿通し、第1のフランジ部の反対側から本体フレームの垂直壁を挟むようにして、前記貫通口より大きな外径を有する第2のフランジ部をボルト軸へ取り付けることにより、ボルト軸は、ボルト軸自体の位置が軸方向に移動しないように本体フレームへ回動自在に固定される。また、第1のフランジ部及び/又は第2のフランジ部と、垂直壁との間に樹脂製のワッシャーなどを配設すると、ボルト軸のガタ付きが減少し、本体フレームの垂直壁に対するボルト軸の回転をより一層円滑にすることができる。
本発明の浴槽用手摺りでは、上述のようにボルト軸を本体フレームへ固定すると、浴槽用手摺りを浴槽側壁へ取り付けた際、ボルト軸には、可動フレームとの接続部分から前記回動支持部分までの間にのみ引っ張り応力が発生し、前記回動支持部分よりも端部側(可動フレームとの接続部分よりも遠い側)は自由端となるので、引っ張り応力が発生することがない。
そのため、本発明の浴槽用手摺りでは、トルク伝達手段を、ボルト軸の回動支持部分よりも端部側(可動フレームとの接続部分よりも遠い側)に設けることにより、ボルト軸に生じる引っ張り応力によって、トルク伝達手段のトルク伝達面とトルク伝受面との間の隙間や当接力(摩擦力)に変化が生じたり、或いは一定のトルクに対してトルクの伝達を遮断できなくなるという不都合が防止されている。また同時に、トルク伝達手段がボルト軸の第1のフランジ部及び第2のフランジ部と干渉するという不都合も解消されている。
本発明の浴槽用手摺りでは、上述のように、トルク伝達手段はボルト軸の回動支持部分よりも端部側(可動フレームとの接続部分よりも遠い側)に設けられるので、所定の力未満では、ハンドルノブからボルト軸へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、ハンドルノブからボルト軸への回動力の伝達を遮断することができる。このため、使用者がハンドルノブを回して引き圧部を強力に引き込んでも浴槽の側壁を破損することなく、必要にして十分な引き込み力をもって浴槽用手摺りを浴槽側壁へ強固に取り付けることができる。
本発明の浴槽用手摺りでは、ボルト軸はハンドルノブで支持し、ハンドルノブはその回転位置が軸方向に移動しないように本体フレームへ回動自在に固定することもできる。例えば、本体フレームには貫通口を有する垂直壁を設け、ハンドルノブの端部には前記貫通口より大きな外径を有する端部を設け、そして本体フレームの貫通口へハンドルノブの胴部を挿通し、ハンドルノブの端部の反対側から本体フレームの垂直壁を挟むようにして、前記貫通口より大きな外径を有する第2のフランジ部をハンドルノブへ取り付けることにより、ハンドルノブをその回転位置が軸方向に移動しないように本体フレームへ回動自在に固定することができる。
この場合、ボルト軸を本体フレームへ回動自在に固定する必要がなくなるので、ボルト軸周りの構造が単純化され、浴槽用手摺りのメンテナンス性が向上する。また、ボルト軸をハンドルノブに対してボルト軸の位置が軸方向に移動しないように回動自在に固定すれば、前記回動支持部分よりも端部側(可動フレームとの接続部分よりも遠い側)を自由端とすることで引っ張り応力が発生するのを防止できるので、引っ張り応力の影響を受けることなく、トルク伝達手段をボルト軸へ組む込みことができる。
本発明で使用されるトルク伝達手段は、ハンドルノブの回転と同調し、且つハンドルノブの回転軸に対して直交するトルク伝達面を備えた伝達部と、ボルト軸の回転と同調し、且つトルク伝達面に当接されるトルク伝受面を備えた伝受部とを有しており、そしてトルク伝達面及びトルク伝受面はそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達面とトルク伝受面とを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達面とトルク伝受面との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
また、トルク伝達手段は、伝達部又は伝受部がハンドルノブの回転軸方向に移動可能に取り付けられており、そして移動可能に取り付けられた伝達部を、伝達部と対向する伝受部へ向けて付勢する伝達部付勢手段、または移動可能に取り付けられた伝受部を、伝受部と対向する伝達部へ向けて付勢する伝受部付勢手段を備えている。
トルク伝達手段のトルク伝達面の中心及びトルク伝受面の中心は、ハンドルノブ及びボルト軸の回転軸と同軸上に配置されている。またトルク伝達面上及びトルク伝受面上には、それぞれにトルク伝達面又はトルク伝受面から傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。トルク伝達面の傾斜面及びトルク伝受面の傾斜面は、可動フレームの引き圧部を浴槽側壁へ向けて引き込むようにハンドルノブを回す時、互いに対向する相手側の傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
一方の例では、トルク伝達面を有する環状の伝達部はボルト軸に沿ってスライド可能に装着されており、且つ弾性体(伝達部付勢手段)によってトルク伝受面に向けて付勢されている。弾性体は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達面の傾斜面とトルク伝受面の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そしてハンドルノブからボルト軸へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、トルク伝達面の傾斜面はトルク伝受面の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そしてこの係合により、ハンドルノブのトルクがボルト軸へ伝達され、該ボルト軸と螺合するナット部が取り付けられた可動フレームが螺進退される。
一方、ハンドルノブからボルト軸へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、トルク伝達面の傾斜面はトルク伝受面の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、トルク伝達面を備えた環状の伝達部は弾性体に抗して後退し、トルク伝達面の傾斜面がトルク伝受面の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。このため、この状態でハンドルノブを回してもハンドルノブはボルト軸に対して空回りするのみであり、ハンドルノブからボルト軸へトルクが伝達されることはない。
また、トルク伝達面の傾斜面の後端にはトルク伝達面に略直交する垂直面が形成されており、トルク伝受面の傾斜面の後端にはトルク伝受面に略直交する垂直面が形成されている。トルク伝達面の垂直面とトルク伝受面の垂直面は、可動フレームの引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時、互いに当接し係合する。そのため、ハンドルノブを、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるように回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブとボルト軸は同調して回転する。
なお、トルク伝達手段は、トルク伝受面を有する伝受部をボルト軸に沿ってスライド可能な環状部品とし、そして該伝受部をボルト軸へ装着し且つ弾性体(伝受部付勢手段)によってトルク伝達面に向けて付勢することによっても、上述したように、伝達部をトルク伝受面に向けて付勢可能な環状部品とした場合と同様の効果を得ることができる。
トルク伝達手段において、ボルト軸の回転と同調して回動するトルク伝受面は、ボルト軸の後端部よりもボルト軸の先端部側のボルト軸外周面に取り付けてもよい。この場合、トルク伝達手段は、ボルト軸の後端部付近と一部重複して配置することができるので、トルク伝達手段及び該トルク伝達手段を備えたハンドルノブの本体フレームからの突出長さを抑えることができる。
一方、トルク伝達手段において、ボルト軸の回転と同調して回動するトルク伝受面は、ボルト軸の後端部に取り付けることもできる。この場合、トルク伝達手段はフリースペースを利用して、ボルト軸の後端部からボルト軸の延長線上で離間するように直列的に配置できるので、構造を単純化することができ、浴槽用手摺りのメンテナンス性を向上させることができる。
本発明の浴槽用手摺りでは、トルク伝達面とトルク伝受面とがハンドルノブ及びボルト軸の回転軸に対して直交するように配置された上述のトルク伝達手段とは異なり、第2の態様として、トルク伝達面をハンドルノブの内周面上に設け(以下、「トルク伝達円周面」という)、トルク伝受面をボルト軸の外周面上に設けたタイプのトルク伝達手段を使用することもできる。
より具体的には、上記のトルク伝達手段は、ハンドルノブの回転と同調し、且つハンドルノブの回転軸に対して平行な略円筒形のトルク伝達円周面を備えた円周伝達部と、ボルト軸の回転の回転と同調し、且つトルク伝達円周面に摺接される摺動面を備えた摺動部とを有しており、そして摺動部は、ボルト軸の回転軸に対して平行であって摺動面上に配設されたキー溝と、トルク伝達円周面に当接されるトルク伝受面を備えており且つキー溝の中で、ボルト軸の回転軸に対して放射方向に移動可能に配置されているキーと、そしてキーのトルク伝受面を、ハンドルノブのトルク伝達円周面へ向けて付勢する付勢手段とを含んでおり、そしてトルク伝達円周面及びトルク伝受面はそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達円周面とトルク伝受面とを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達円周面とトルク伝受面との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
なお、円周伝達部はハンドルノブと別体であっても一体的に形成されていてもよく、また摺動部もボルト軸と別体であっても一体的に形成されていてもよい。ただし、トルク伝達円周面や摺動面は長期間使用した場合に磨耗することがあるので、ハンドルノブ本体やボルト軸本体とは別体の着脱可能な部品として形成しておくと容易に交換することができ、便利である。また、円周伝達部を別部品として形成しておくと、耐摩耗性などが求められないハンドルノブ本体をプラスチック材料などから作ることができので、ハンドルノブ周りの加工や軽量化が容易になるという利益がある。
このタイプのトルク伝達手段では、トルク伝達円周面の回転軸、摺動面の回転軸及びトルク伝受面の回転軸は、ハンドルノブ及びボルト軸の回転軸と同軸上に配置されている。また、ハンドルノブ(円周伝達部)のトルク伝達円周面上には、円筒状のトルク伝達円周面からさらに内側に傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。一方、ボルト軸(摺動部)の摺動面上には、ボルト軸の回転軸に対して平行に配設されたキー溝が形成されており、そしてキー溝の中には、ボルト軸の回転軸に対して放射方向に移動可能なキーが配置されている。キーのトルク伝受面上には傾斜面を含む凹部/凸部が形成されており、キーは弾性体(付勢手段)によってトルク伝達円周面に向けて付勢されている。なお、弾性体は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
また、トルク伝達手段の円周伝達部及び摺動部(ボルト軸)の端部にはストッパーが配置され、ストッパーは摺動部の端面にネジ止めされている。このため、円周伝達部及び円周伝達部に固定されたハンドルノブは、摺動部から抜け落ちることがない。また、円周伝達部及び摺動部の端面とストッパーとの間に樹脂製のワッシャーを挿入すると、円周伝達部及び摺動部のガタ付きが抑えられ、伝達される回動力が所定の値以上の時、円周伝達部はストッパー及び摺動部に対して円滑に回転することができる。
このため、トルク伝達円周面の傾斜面と、キーのトルク伝受面の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そして、ハンドルノブからボルト軸へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、キーのトルク伝受面の傾斜面はハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そして、この係合によりハンドルノブのトルクがボルト軸へ伝達され、該ボルト軸と螺合するナット部を備えた可動フレームが螺進退される。
一方、ハンドルノブからボルト軸へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、ボルト軸のトルク伝受面の傾斜面はハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、傾斜面を有するキーは弾性体に抗して後退し、キーのトルク伝受面の傾斜面がハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。そのため、この状態でハンドルノブを回してもハンドルノブはボルト軸の周りで空回りするのみであり、ハンドルノブからボルト軸へトルクが伝達されることはない。
また、ハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面の後端にはトルク伝達円周面に略直交する垂直面が形成されている。また、キーの幅方向の断面は略台形の形状を呈しているので、キーのトルク伝受面の傾斜面の後端にはキーの傾斜面に略直交する垂直面が形成されている。ハンドルノブのトルク伝達円周面の垂直面とキーのトルク伝受面の垂直面は、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時、互いに当接し係合する。そのため、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブとボルト軸は同調して回転する。
このように、上記のトルク伝達手段は、ボルト軸の端面ではなく、ボルト軸の回転軸に対して平行に配設される略円筒形の外周面を利用したものであるが、ボルト軸(摺動部)の外周面(摺動面)上にキー溝を設け、該キー溝の中へ、ボルト軸の回転軸に対し放射方向に移動して係合/解除可能な傾斜面を有するキーを配置したので、ハンドルノブの内周面とボルト軸の外周面と隙間が小さい場合においても、ハンドルノブからボルト軸へ確実にトルクを伝達又は遮断することができる。
本発明は、ボルト軸を回動することにより、ナット部が装着された可動フレームを螺進退させる上述の浴槽用手摺りに対して、第3の態様として、トルク伝達手段が異なり、そして可動フレームに対して回動不能に固着されたボルト軸を螺進退させることにより、可動フレームの先端に取り付けられた引き圧部を浴槽側壁へ向けて引き込むタイプの浴槽用手摺りを構成することもできる。
具体的には、本発明によれば第3の態様として、浴槽側壁の上部に配置される水平部と、浴槽側壁の一方の側面へ当接される当接部とを含んでいる本体フレームと、回動不能に固着されたボルト軸を有しており、前記本体フレームにスライド可能に取り付けられている可動フレームと、前記可動フレームに取り付けられており、浴槽側壁の他方の側面を引き圧する引き圧部と、前記本体フレームへ回動自在に固定されており、前記可動フレームのボルト軸と螺合されるナット部と、前記ナット部を回動させて前記ボルト軸を螺進退させるハンドルノブと、そして所定の力未満では、前記ハンドルノブから前記ナット部へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、前記ハンドルノブから前記ナット部への回動力の伝達を遮断するトルク伝達手段とを備えていることを特徴とする浴槽用手摺りが提供される。
なお、当接部は、本体フレームの一部を構成する一体品であってもよく、また本体フレームによって支持されたボルト軸などを介して支承されている別部品であってもよい。本体フレームが当接部を含んでいるとは、その両者の構成を含んでいることを意味している。
本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、可動フレームにはボルト軸が回動不能に固着されており、本体フレームには、該ボルト軸と螺合するナット部が回動自在に取り付けられている。このため、ハンドルノブで本体フレームに取り付けられたナット部を回動すると、該ナット部と螺合するボルト軸が固着された可動フレームを螺進退させ、そして該可動フレームの先端に取り付けられた引き圧部が浴槽側壁へ向けて引き込まれるので、本体フレームを浴槽側壁へ寄せて載置した後は、引き圧部を浴槽側壁へ引き込んでも、本体フレーム及び該本体フレームに取り付けられた手摺りが浴槽側壁から移動して離れてしまうという問題がない。また、浴槽用手摺りを固定するために、洗い場側より押圧板などを用いて幅調節する必要もなくなる。
ハンドルノブは、ナット部に対して同軸上に回動自在に外装されており、後退させたボルト軸をハンドルノブの内部に収容するための収納室を有していることが好ましい。また、ハンドルノブは、ナット部と同様に本体フレームに回転自在に取り付けられていることが好ましい。
ハンドルノブの内部に収納室を設けると、可動フレームを最も本体フレーム側へ引き込んだ時でも、ボルト軸の端部を収納室の中へ収容することができるので、ボルト軸の端部が本体フレームから外方へ突出して露出することがなく安全である。また、ナット部を本体フレームに回転自在に固定すると、ナット部をハンドルノブで回動させてボルト軸及び可動フレームを螺進退させても、ナット部自体が本体フレームの取付け位置から軸方向へ移動することがないため、ハンドルノブが本体フレームから突出する長さを抑制することができる。
本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、水平部は、水平部の上部に垂直壁を有しており、ナット部は、垂直壁に設けられた貫通口へ挿通される胴部と、胴部に固着されており且つ一方の側から垂直部へ当接させるために貫通口より大きな外径を有する第1のフランジ部と、そして他方の側から垂直部へ当接させるために貫通口より大きな外径を有し且つ胴部へ着脱自在に取り付けられる第2のフランジ部とを備えることにより、本体フレームへ回転自在に取り付けられる。また、第1のフランジ部及び/又は第2のフランジ部と、垂直壁との間に樹脂製のワッシャーなどを配設すると、ナット部のガタ付きが減少し、本体フレームの垂直壁に対するナット部の回転をより一層円滑にすることができる。
本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、浴槽用手摺りを浴槽側壁へ取り付けた際、ボルト軸には引っ張り応力が発生するが、ナット部には引っ張り応力が発生することがない。このため、本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、トルク伝達手段を、ナット部とハンドルノブの間に設けることにより、ボルト軸に生じる引っ張り応力によって、トルク伝達手段のトルク伝達面とトルク伝受面との間の隙間や当接力(摩擦力)に変化が生じたり、或いは一定のトルクに対してトルクの伝達を遮断できなくなるという不都合が防止されている。
本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、上述のように、トルク伝達手段はナット部とハンドルノブの間に設けられるので、所定の力未満では、ハンドルノブからナット部へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、ハンドルノブからナット部への回動力の伝達を遮断することができる。このため、使用者がハンドルノブを回して引き圧部を強力に引き込んでも浴槽の側壁を破損することなく、必要にして十分な引き込み力をもって浴槽用手摺りを浴槽側壁へ強固に取り付けることができる。
本発明の第3の態様の浴槽用手摺りでは、ハンドルノブもナット部と同様に、本体フレームの垂直壁を利用して回転自在に取り付けることができる。例えば、本体フレームには貫通口を有する垂直壁を設け、ハンドルノブの端部には前記貫通口より大きな外径を有する第1のフランジ部を設け、そして本体フレームの貫通口へハンドルノブの胴部を挿通し、ハンドルノブの端部の反対側から本体フレームの垂直壁を挟むようにして、前記貫通口より大きな外径を有する第2のフランジ部をハンドルノブへ取り付けることにより、ハンドルノブをその回転位置が軸方向に移動しないように本体フレームへ回動自在に固定することができる。
この場合、ナット部を本体フレームへ回動自在に固定する必要がなくなるので、ナット部及びボルト軸周りの構造が単純化され、浴槽用手摺りのメンテナンス性が向上する。
本発明の第3の態様で使用されるトルク伝達手段は、ハンドルノブの回転と同調し、且つハンドルノブの回転軸に対して直交するトルク伝達面を備えた伝達部と、ナット部の回転と同調し、且つトルク伝達面に当接されるトルク伝受面を備えた伝受部とを有しており、そしてトルク伝達面及びトルク伝受面はそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達面とトルク伝受面とを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達面とトルク伝受面との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
また、トルク伝達手段は、伝達部又は伝受部がハンドルノブの回転軸方向に移動可能に取り付けられており、そして移動可能に取り付けられた伝達部を、伝達部と対向する伝受部へ向けて付勢する伝達部付勢手段、または移動可能に取り付けられた伝受部を、伝受部と対向する伝達部へ向けて付勢する伝受部付勢手段を備えている。
トルク伝達手段のトルク伝達面の中心及びトルク伝受面の中心は、ハンドルノブ及びナット部の回転軸と同軸上に配置されている。またトルク伝達面上及びトルク伝受面上には、それぞれにトルク伝達面又はトルク伝受面から傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。トルク伝達面の傾斜面及びトルク伝受面の傾斜面は、可動フレームの引き圧部を浴槽側壁へ向けて引き込むようにハンドルノブを回す時、互いに対向する相手側の傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
一方の例では、トルク伝達面を有する環状の伝達部はハンドルノブ及びナット部の回転軸に沿ってスライド可能に装着されており、且つ弾性体(伝達部付勢手段)によってトルク伝受面に向けて付勢されている。弾性体は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達面の傾斜面とトルク伝受面の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そしてハンドルノブからナット部へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、トルク伝達面の傾斜面はトルク伝受面の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そしてこの係合により、ハンドルノブのトルクがナット部へ伝達され、該ナット部と螺合するボルト軸と連結された可動フレームが螺進退される。
一方、ハンドルノブからナット部へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、トルク伝達面の傾斜面はトルク伝受面の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、トルク伝達面を備えた環状の伝達部は弾性体に抗して後退し、トルク伝達面の傾斜面がトルク伝受面の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。このため、この状態でハンドルノブを回してもハンドルノブはナット部に対して空回りするのみであり、ハンドルノブからナット部へトルクが伝達されることはない。
また、トルク伝達面の傾斜面の後端にはトルク伝達面に略直交する垂直面が形成されており、トルク伝受面の傾斜面の後端にはトルク伝受面に略直交する垂直面が形成されている。トルク伝達面の垂直面とトルク伝受面の垂直面は、可動フレームの引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時、互いに当接し係合する。そのため、ハンドルノブを、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるように回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブとナット部は同調して回転する。
なお、トルク伝達手段は、トルク伝受面を有する伝受部をハンドルノブ及びナット部の回転軸に沿ってスライド可能な環状部品とし、そして該伝受部をナット部へ装着し且つ弾性体(伝受部付勢手段)によってトルク伝達面に向けて付勢することによっても、上述したように、伝達部をトルク伝受面に向けて付勢可能な環状部品とした場合と同様の効果を得ることができる。
トルク伝達手段において、ナット部の回転と同調して回動するトルク伝受面は、ナット部の外周面に取り付けてもよい。この場合、トルク伝達手段は、ナット部本体と一部重複して配置することができるので、トルク伝達手段及び該トルク伝達手段を備えたハンドルノブの本体フレームからの突出長さを抑えることができる。
本発明の第4の態様の浴槽用手摺りでは、トルク伝達面とトルク伝受面とがハンドルノブ及びナット部の回転軸に対して直交するように配置された上述のトルク伝達手段とは異なり、トルク伝達面をハンドルノブの内周面上に設け(以下、「トルク伝達円周面」という)、トルク伝受面をナット部の外周面上に設けたタイプのトルク伝達手段を使用することもできる。
より具体的には、トルク伝達手段は、ハンドルノブの回転と同調し、且つハンドルノブの回転軸に対して平行な略円筒形のトルク伝達円周面を備えた円周伝達部と、ナット部の回転と同調し、且つトルク伝達円周面に摺接される摺動面を備えた摺動部とを有しており、そして摺動部は、ナット部の回転軸に対して平行であって摺動面上に配設されたキー溝と、トルク伝達円周面に当接されるトルク伝受面を備えており且つキー溝の中で、ナット部の回転軸に対して放射方向に移動可能に配置されているキーと、そしてキーのトルク伝受面を、ハンドルノブのトルク伝達円周面へ向けて付勢する付勢手段とを含んでおり、そしてトルク伝達円周面及びトルク伝受面はそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達円周面とトルク伝受面とを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達円周面とトルク伝受面との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
なお、円周伝達部はハンドルノブと別体であっても一体的に形成されていてもよく、また摺動部もナット部と別体であっても一体的に形成されていてもよい。ただし、トルク伝達円周面や摺動面は長期間使用した場合に磨耗することがあるので、ハンドルノブ本体やナット部本体とは別体の着脱可能な部品として形成しておくと容易に交換することができ、便利である。また、円周伝達部を別部品として形成しておくと、耐摩耗性などが求められないハンドルノブ本体をプラスチック材料などから作ることができので、ハンドルノブ周りの加工や軽量化が容易になるという利益がある。
このタイプのトルク伝達手段では、トルク伝達円周面の回転軸、摺動面の回転軸及びトルク伝受面の回転軸は、ハンドルノブ及びナット部の回転軸と同軸上に配置されている。また、ハンドルノブ(円周伝達部)のトルク伝達円周面上には、円筒状のトルク伝達円周面からさらに内側に傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。一方、ナット部(摺動部)の摺動面上には、ナット部の回転軸に対して平行に配設されたキー溝が形成されており、そしてキー溝の中には、ナット部の回転軸に対して放射方向に移動可能なキーが配置されている。キーのトルク伝受面上には傾斜面を含む凹部/凸部が形成されており、キーは弾性体(付勢手段)によってトルク伝達円周面に向けて付勢されている。なお、弾性体は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達円周面の傾斜面と、キーのトルク伝受面の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そして、ハンドルノブからナット部へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、キーのトルク伝受面の傾斜面はハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そして、この係合によりハンドルノブのトルクがナット部へ伝達され、該ナット部と螺合するボルト軸と連結された可動フレームが螺進退される。
一方、ハンドルノブからナット部へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、ナット部のトルク伝受面の傾斜面はハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、傾斜面を有するキーは弾性体に抗して後退し、キーのトルク伝受面の傾斜面がハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。そのため、この状態でハンドルノブを回してもハンドルノブはナット部の周りで空回りするのみであり、ハンドルノブからナット部へトルクが伝達されることはない。
また、ハンドルノブのトルク伝達円周面の傾斜面の後端にはトルク伝達円周面に略直交する垂直面が形成されている。また、キーの幅方向の断面は略台形の形状を呈しているので、キーのトルク伝受面の傾斜面の後端にはキーの傾斜面に略直交する垂直面が形成されている。ハンドルノブのトルク伝達円周面の垂直面とキーのトルク伝受面の垂直面は、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時、互いに当接し係合する。そのため、引き圧部を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブを回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブとナット部は同調して回転する。
このように、上記のトルク伝達手段は、ナット部の端面ではなく、ナット部の回転軸に対して平行に配設される略円筒形の外周面を利用したものであるが、ナット部(摺動部)の外周面(摺動面)上にキー溝を設け、該キー溝の中へ、ナット部の回転軸に対し放射方向に移動して係合/解除可能な傾斜面を有するキーを配置したので、ハンドルノブの内周面とナット部の外周面と隙間が小さい場合においても、ハンドルノブからナット部へ確実にトルクを伝達又は遮断することができる。
本発明の浴槽用手摺りによれば、浴槽の側壁を洗い場側及び浴槽側からクランプすることによって着脱自在に取り付けられる浴槽用手摺りにおいて、取り付け前後において、浴槽側壁に対する本体フレームに取り付けられた手摺りの位置及びハンドルノブの位置が変化するということがない。また、本発明では、浴槽用手摺りの本体フレーム又は本体フレームの当接部を洗い場側より浴槽側壁へ当接させれば、浴槽用手摺りの固定は浴槽側に配置される引き圧部のみを幅調節すればよいので、洗い場側より押圧板などを用いて幅調節する必要がなくなる。
また、本発明の浴槽用手摺りによれば、使用者がハンドルノブを回して引き圧部を強力に引き込んでも浴槽の側壁を破損することなく、必要にして十分な引き込み力をもって浴槽用手摺りを浴槽側壁へ強固に取り付けることができる。特に本発明の浴槽用手摺りでは、浴槽用手摺りを浴槽側壁へ取り付けた際、ボルト軸に引っ張り応力が生じない部分へトルク伝達手段を配置することができるので、引っ張り応力によってトルク伝達面とトルク伝受面との間の隙間や当接力(摩擦力)に変化が生じたり、或いは一定のトルクに対してトルクの伝達を遮断できなくなるという問題がない。
本発明の浴槽用手摺りは、可動フレームを本体フレーム側へ引き込むことによって浴槽側壁をクランプするタイプであり、またトルク伝達手段を、ボルト軸の後端部付近又はナット部の外周面と一部重複して配置することもできるので、可動フレームを螺進退させるためのハンドルノブの本体フレームからの突出長さを大幅に抑えることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺りについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
第1の実施形態
図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1の主な構成を説明する。図1には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の全体概要が示されており、図2には、図1に示された浴槽用手摺り1の化粧カバー20,21及び上部グリップ24を取り外した状態の全体概要が示されている。
図1,2に示されているように、浴槽用手摺り1は、主として略L字型の本体フレーム2と、本体フレーム2へスライド可能に取り付けられた略L字型の可動フレーム3と、可動フレーム3を螺進退させるためのハンドルノブ7と、そして使用者の身体を支えるための上部グリップ24及び側部グリップ25とから構成されている。特に図1に示されている本実施形態の浴槽用手摺り1の概要は、基本的に後述する第2の実施形態に係る浴槽用手摺り1aの概要、第3の実施形態に係る浴槽用手摺り1bの概要および第4の実施形態に係る浴槽用手摺り1cの概要と略同じである。
図3には、本実施形態の浴槽用手摺り1の側面図が示されており、図4には、本実施例の浴槽用手摺り1を、ボルト軸6の軸芯に沿って切り取った断面図が示されている。また、図14には、図3に示される浴槽用手摺り1と当接部230の形状のみが異なる変形型の浴槽用手摺り1側面図が示されている。
図3,4に示されているように、本体フレーム2は、浴槽側壁(図示せず)の上部に配置される水平部22と、浴槽側壁の一方の側面へ配置される垂直部23とを有しており、さらに垂直部23の内側には、浴槽側壁の一方の側面へ当接されるための当接部230(図3)が形成されている。なお、図示しないが、当接部230は、ボルト軸などを介して本体フレーム2に支持されている別部品であってもよい。また、当接部230は、図3に示されるように、引き圧部5と略同じ大きさ又は引き圧部5と略同じ高さで対向して配置されている必要はなく、例えば図14に示されるように、当接部230の高さ方向の幅が引き圧部5の高さ方向の幅よりも狭く、且つ引き圧部5よりも相対的に高い位置に配置されていてもよい。
当接部230の高さ方向の幅が引き圧部5の高さ方向の幅よりも狭く、そして当接部230が引き圧部5よりも相対的に高い位置に配置されていると、強度を有するリム部と強度を有さないエプロン部とを備えた外壁を有する浴槽側壁であっても、当接部230の押圧力を洗い場側の浴槽側壁の強度部位(リム部)へ的確に誘導することができるので、エプロン部などの脆弱な浴槽側壁部分を破損させることなく、浴槽用手摺り1を浴槽側壁へ確実かつ強固に取り付けることができる。
また、当接部230が引き圧部5よりも相対的に高い位置に配置されている場合、洗い場側の当接部230による荷重の中心と、浴槽側の引き圧部5による荷重の中心との位置のズレにより、浴槽用手摺り1には、本体フレーム2を洗い場側に倒そうとする回転モーメントが生じる。このため、浴槽用手摺り1の本体フレーム2には、洗い場側および浴槽側のクランプ位置のズレにより生じる回転モーメントを洗い場側の床面で支えるため、洗い場の床面に設置される脚部(図示せず)が取り付けられていてもよい。
また、浴槽用手摺り1は、主に浴槽への出入りを補助するために浴槽側壁の上方に配置される上部グリップ24と、浴槽からの出浴を補助するために浴槽側(浴槽内)に配置される側部グリップ25とを備えている。上部グリップ24は本体フレーム2へ2本の脚部26を利用して昇降可能に取り付けられており、脚部26は、本体フレーム2の垂直部23の外面に設けられた2つの筒部27の中でスライド可能に支持されている。また、側部グリップ25は可動フレーム3へ着脱可能に取り付けられている。
可動フレーム3は、内部にナット部4が形成若しくは設けられており、且つ本体フレーム2の水平部22へスライド可能に取り付けられる水平部30と、垂直部31とを有している。垂直部31には、本体フレーム2の当接部230の反対側から浴槽側壁の他方の側面を引き圧する(浴槽側壁をクランプする)ための引き圧部5が首振り自在に取り付けられている。
可動フレーム3のナット部4と螺合するボルト軸6は、本体フレーム2の水平部22の上面に設けられた垂直壁28の貫通口280へ挿通されて、垂直壁28に回動自在に支持されている。また、ボルト軸6の後端部付近には、ボルト軸6を回動するためのハンドルノブ7が外装されている。また、ボルト軸6とハンドルノブ7との間には、所定の力未満ではハンドルノブ7からボルト軸6へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上ではハンドルノブ7からボルト軸6への回動力の伝達を遮断するトルク伝達手段8が組み込まれている。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、ハンドルノブ7でボルト軸6を回動することにより、ナット部7を有する可動フレーム3を螺進退させ、そして該可動フレーム3の垂直部31に取り付けられた引き圧部5を浴槽側壁へ向けて引き込むことができるので、本体フレーム2を浴槽側壁へ寄せて載置した後は、引き圧部5を浴槽側壁へ引き込んでも、本体フレーム2及び該本体フレーム2に取り付けられた上部グリップ24が浴槽側壁から移動して離れてしまうという問題がない。また、浴槽用手摺り1を固定するために、洗い場側より押圧板などを用いて幅調節する必要もなくなる。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、本体フレーム2の水平部22には、貫通口280を有する垂直壁28が設けられており、ボルト軸6には、貫通口280へ挿通される胴部60と、貫通口280より大きな外径を有する第1のフランジ部61が設けられている。そして、本体フレーム2の貫通口280へボルト軸6の胴部60を挿通し、第1のフランジ部61の反対側から本体フレーム2の垂直壁28を挟むようにして、貫通口280より大きな外径を有する第2のフランジ部62をボルト軸6へネジ63止めすることにより、ボルト軸6は、ボルト軸6自体の位置が軸方向に移動しないように本体フレーム2へ回動自在に固定される。また、第1のフランジ部61と垂直壁28との間および第2のフランジ部62と垂直壁28との間には樹脂製のワッシャー64が挿入されており、ボルト軸6のガタ付きを抑え、本体フレーム2の垂直壁28に対するボルト軸6の回転が円滑になるようにされている。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、上述のようにボルト軸6を本体フレーム2へ固定すると、浴槽用手摺り1を浴槽側壁へ取り付けた際、ボルト軸6には、可動フレーム3との接続部分から回動支持部分までの間にのみ引っ張り応力が発生し、前記回動支持部分よりも端部側(可動フレーム3との接続部分よりも遠い側)は自由端となるので、引っ張り応力が発生することがない。
そのため、本実施形態の浴槽用手摺り1では、トルク伝達手段8を、ボルト軸6の回動支持部分よりも端部側(可動フレーム3との接続部分よりも遠い側)に設けることにより、ボルト軸6に生じる引っ張り応力によって、トルク伝達手段8のトルク伝達面82とトルク伝受面83(図5参照)との間の隙間や当接力(摩擦力)に変化が生じたり、或いは一定のトルクに対してトルクの伝達を遮断できなくなるという不都合が防止されている。また同時に、トルク伝達手段8がボルト軸6の第1のフランジ部61及び第2のフランジ部62と干渉するという不都合も解消されている。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、上述のように、トルク伝達手段8はボルト軸6の回動支持部分よりも端部側(可動フレームとの接続部分よりも遠い側)に設けられるので、所定の力未満では、ハンドルノブ7からボルト軸6へ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、ハンドルノブ7からボルト軸6への回動力の伝達を遮断することができる。このため、使用者がハンドルノブ7を回して引き圧部5(図3)を強力に引き込んでも浴槽の側壁を破損することなく、必要にして十分な引き込み力をもって浴槽用手摺り1を浴槽側壁へ強固に取り付けることができる。
図4には、ボルト軸6、ハンドルノブ7、トルク伝達手段8を回動軸に沿って分解した状態の概要が示されている。図4に示されるように、本実施形態で使用されるトルク伝達手段8は、ハンドルノブ7の回転と同調し、且つハンドルノブ7の回転軸に対して直交するトルク伝達面82を備えた伝達部80と、ボルト軸6の回転と同調し、且つトルク伝達面82に当接されるトルク伝受面83を備えた伝受部81とを有しており、そしてトルク伝達面82及びトルク伝受面83はそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達面82とトルク伝受面83とを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達面82とトルク伝受面83との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
また、トルク伝達手段8は、伝達部80がハンドルノブ7の回転軸方向に移動可能に取り付けられており、そして移動可能に取り付けられた伝達部80を、伝達部80と対向する伝受部81へ向けて付勢する伝達部付勢手段84を備えている。また、伝達部付勢手段84の端部は、ネジ85によってボルト軸6の端部に装着されるストッパー86によって固定されている。
トルク伝達手段8のトルク伝達面82の中心及びトルク伝受面83の中心は、ハンドルノブ7及びボルト軸6の回転軸と同軸上に配置されている。またトルク伝達面82上及びトルク伝受面83上には、それぞれにトルク伝達面82又はトルク伝受面83から傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。トルク伝達面82の傾斜面及びトルク伝受面83の傾斜面は、可動フレーム3の引き圧部5を浴槽側壁へ向けて引き込むようにハンドルノブ7を回す時、互いに対向する相手側の傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
そして、トルク伝達面82を有する環状の伝達部80はボルト軸6に沿ってスライド可能に装着されており、且つ弾性体(伝達部付勢手段)84によってトルク伝受面83に向けて付勢されている。弾性体84は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達面82の傾斜面とトルク伝受面83の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そしてハンドルノブ7からボルト軸6へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、トルク伝達面82の傾斜面はトルク伝受面83の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そしてこの係合により、ハンドルノブ7のトルクがボルト軸6へ伝達され、該ボルト軸6と螺合するナット部4が取り付けられた可動フレーム3が螺進退される。
一方、ハンドルノブ7からボルト軸6へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、トルク伝達面82の傾斜面はトルク伝受面83の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、トルク伝達面82を備えた環状の伝達部80は弾性体84に抗して後退し、トルク伝達面82の傾斜面がトルク伝受面83の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。このため、この状態でハンドルノブ7を回してもハンドルノブ7はボルト軸6に対して空回りするのみであり、ハンドルノブ7からボルト軸6へトルクが伝達されることはない。
また、トルク伝達面82の傾斜面の後端にはトルク伝達面82に略直交する垂直面が形成されており、トルク伝受面83の傾斜面の後端にはトルク伝受面83に略直交する垂直面が形成されている。トルク伝達面82の垂直面とトルク伝受面83の垂直面は、可動フレーム3の引き圧部5を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7を回す時、互いに当接し係合する。そのため、ハンドルノブ7を、引き圧部5を浴槽の側壁から離間させるように回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブ7とボルト軸6は同調して回転する。
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1では、トルク伝達手段8において、ボルト軸6の回転と同調して回動するトルク伝受面83が、ボルト軸6の後端部よりもボルト軸6の先端部側のボルト軸6外周面に取り付けられている。このため、トルク伝達手段8は、ボルト軸6の後端部付近と一部重複して配置することができるので、トルク伝達手段8及び該トルク伝達手段8を備えたハンドルノブ7の本体フレーム2からの突出長さを抑えることができる。
なお、図示しないが、トルク伝達手段は、トルク伝受面を有する伝受部をボルト軸6に沿ってスライド可能な環状部品とし、そして該伝受部をボルト軸6へ装着し且つ弾性体(伝受部付勢手段)84によってトルク伝達面に向けて付勢することによっても、上述したように、伝達部80をトルク伝受面83に向けて付勢可能な環状部品とした場合と同様の効果を得ることができる。
第2の実施形態
次に図6〜8を用いて、本発明の第2の実施形態に係る浴槽用手摺り1aを説明する。本実施形態の浴槽用手摺り1aは、トルク伝達面82とトルク伝受面83とがハンドルノブ7及びボルト軸6の回転軸に対して直交するように配置された第1の実施形態のトルク伝達手段8とは異なり、第2の態様として、トルク伝達面をハンドルノブ7の内周面上に設け(以下、「トルク伝達円周面82a」という)、トルク伝受面83aをボルト軸6aの外周面上に設けたタイプのトルク伝達手段8aを使用していること以外は、基本的に第1の実施形態の浴槽用手摺り1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1aは、基本的に第1の実施形態の浴槽用手摺り1と同じ効果を奏することができるので、第1の実施形態の浴槽用手摺り1と重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
図6には、第2の態様のトルク伝達手段8aを備えた浴槽用手摺り1aをボルト軸6aの軸に沿って切り取った断面図が示されており、図7には、図6に示される浴槽用手摺り1aをX−X断面で切り取った断面図が示されている。また、図8には、ボルト軸6a、ハンドルノブ7a、トルク伝達手段8aを回動軸に沿って分解した状態の概要が示されている。
より具体的には、第2の態様のトルク伝達手段8aは、ハンドルノブ7aの回転と同調し、且つハンドルノブ7aの回転軸に対して平行な略円筒形のトルク伝達円周面82aを備えた円周伝達部80aと、ボルト軸6aの回転の回転と同調し、且つトルク伝達円周面82aに摺接される摺動面830aを備えた摺動部81aとを有しており、そして摺動部81aは、ボルト軸6aの回転軸に対して平行であって摺動面830a上に配設されたキー溝831aと、トルク伝達円周面82aに当接されるトルク伝受面83aを備えており且つキー溝831aの中で、ボルト軸6aの回転軸に対して放射方向に移動可能に配置されているキー87aと、そしてキー87aのトルク伝受面83aを、ハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aへ向けて付勢する付勢手段84aとを含んでおり、そしてトルク伝達円周面82a及びトルク伝受面83aはそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達円周面82aとトルク伝受面83aとを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達円周面82aとトルク伝受面83aとの間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
なお、第2の態様の円周伝達部80aは、トルク伝達円周面82aを長期間使用した場合に磨耗することがあるのを考慮して、ハンドルノブ7a本体とは別体の着脱可能な部品として形成されているので、容易に交換することができ、便利である。また、耐摩耗性などが求められないハンドルノブ7a本体をプラスチック材料などから作ることができるので、ハンドルノブ7a周りの加工や軽量化が容易になるという利益がある。
第2の態様のトルク伝達手段8aでは、トルク伝達円周面82aの回転軸、摺動面830aの回転軸及びトルク伝受面83aの回転軸は、ハンドルノブ7a及びボルト軸6aの回転軸と同軸上に配置されている。また、ハンドルノブ7a(円周伝達部80a)のトルク伝達円周面82a上には、円筒状のトルク伝達円周面82aからさらに内側に傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。一方、ボルト軸6a(摺動部81a)の摺動面830a上には、ボルト軸6aの回転軸に対して平行に配設されたキー溝831aが形成されており、そしてキー溝831aの中には、ボルト軸6aの回転軸に対して放射方向に移動可能なキー87aが配置されている。キー87aのトルク伝受面83a上には傾斜面を含む凹部/凸部が形成されており、キー87aは弾性体(付勢手段)84aによってトルク伝達円周面82aに向けて付勢されている。なお、弾性体84aは、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
また、トルク伝達手段8aの円周伝達部80a及び摺動部81a(ボルト軸6a)の端部にはストッパー86aが配置され、ストッパー86aは摺動部81aの端面にネジ85a止めされている。このため、円周伝達部80a及び円周伝達部80aに固定されたハンドルノブ7aは、摺動部81aから抜け落ちることがない。また、図示しないが、円周伝達部80a及び摺動部81aの端面とストッパー86aとの間に樹脂製のワッシャーを挿入すると、円周伝達部80a及び摺動部81aのガタ付きが抑えられ、伝達される回動力が所定の値以上の時、円周伝達部80aはストッパー86a及び摺動部81aに対して円滑に回転することができる。
このため、トルク伝達円周面82aの傾斜面と、キー87aのトルク伝受面83aの傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そして、ハンドルノブ7aからボルト軸6aへ伝達されるトルクが所定の値未満である時、キー87aのトルク伝受面83aの傾斜面はハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aの傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そして、この係合によりハンドルノブ7aのトルクがボルト軸6aへ伝達され、該ボルト軸6aと螺合するナット部4aを備えた可動フレーム3aが螺進退される。
一方、ハンドルノブ7aからボルト軸6aへ伝達されるトルクが所定の値以上になると、ボルト軸6aのトルク伝受面83aの傾斜面はハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aの傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、傾斜面を有するキー87aは弾性体84aに抗して後退し、キー87aのトルク伝受面83aの傾斜面がハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aの傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。そのため、この状態でハンドルノブ7aを回してもハンドルノブ7aはボルト軸6aの周りで空回りするのみであり、ハンドルノブ7aからボルト軸6aへトルクが伝達されることはない。
また、ハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aの傾斜面の後端にはトルク伝達円周面82aに略直交する垂直面が形成されている。また、キー87aの幅方向の断面は略台形の形状を呈しているので、キー87aのトルク伝受面83aの傾斜面の後端にはキー87aの傾斜面に略直交する垂直面が形成されている。ハンドルノブ7aのトルク伝達円周面82aの垂直面とキー87aのトルク伝受面83aの垂直面は、引き圧部5a(図示せず)を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7aを回す時、互いに当接し係合する。そのため、引き圧部5aを浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7aを回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブ7aとボルト軸6aは同調して回転する。
このように、第2の態様のトルク伝達手段8aは、ボルト軸6aの端面ではなく、ボルト軸6aの回転軸に対して平行に配設される略円筒形の外周面を利用したものであるが、ボルト軸6a(摺動部81a)の外周面(摺動面830a)上にキー溝831aを設け、該キー溝831aの中へ、ボルト軸6aの回転軸に対し放射方向に移動して係合/解除可能な傾斜面を有するキー87aを配置したので、ハンドルノブ7aの内周面とボルト軸6aの外周面と隙間が小さい場合においても、ハンドルノブ7aからボルト軸6aへ確実にトルクを伝達又は遮断することができる。
第3の実施形態
次に図9,10を用いて、本発明の第3の実施形態に係る浴槽用手摺り1bを説明する。本実施形態の浴槽用手摺り1bは、ボルト軸6を回動することにより、ナット部4が装着された可動フレーム3を螺進退させる第1の実施形態の浴槽用手摺り1に対して、第3の態様として、トルク伝達手段8bが異なり、そして可動フレーム3bに対して回動不能に固着されたボルト軸6bを螺進退させることにより、可動フレーム3bの先端に取り付けられた引き圧部5b(図示せず)を浴槽側壁へ向けて引き込むタイプの浴槽用手摺り1bであること以外は、基本的に第1の実施形態の浴槽用手摺り1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1bは、基本的に第1の実施形態の浴槽用手摺り1と同じ効果を奏することができるので、第1の実施形態の浴槽用手摺り1と重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
図9には、第3の態様のトルク伝達手段8bを備えた浴槽用手摺り1bをボルト軸6bの軸に沿って切り取った断面図が示されており、図10には、ナット部4b,ボルト軸6b、ハンドルノブ7b、トルク伝達手段8bを回動軸に沿って分解した状態の概要が示されている。
図9に示されるように、第3の実施形態の浴槽用手摺り1bは、本体フレーム2bは、浴槽側壁(図示せず)の上部に配置される水平部22bと、浴槽側壁の一方の側面へ配置される垂直部23bとを有しており、さらに垂直部23bの内側には、浴槽側壁の一方の側面へ当接されるための当接部230bが形成されている。なお、図示しないが、当接部230bは、ボルト軸などを介して本体フレーム2に支持されている別部品であってもよい。
可動フレーム3bには、ボルト軸6bがピン65bによって回動不能に固着されており、
且つ本体フレーム2bの水平部22bへスライド可能に取り付けられる水平部30bと、垂直部31bとを有している。垂直部31bには、本体フレーム2bの当接部230bの反対側から浴槽側壁の他方の側面を引き圧する(浴槽側壁をクランプする)ための引き圧部5b(図示せず)が首振り自在に取り付けられている。
可動フレーム3bのボルト軸6bと螺合するナット部4bは、本体フレーム2bの水平部22bの上面に設けられた垂直壁28bに回動自在に支持されている。また、ナット部4bには、ナット部4bを回動するためのハンドルノブ7bが外装されている。また、ナット部4bとハンドルノブ7bとの間には、所定の力未満ではハンドルノブ7bからナット部4bへ回動力を伝達し、且つ所定の力以上ではハンドルノブ7bからナット部4bへの回動力の伝達を遮断するトルク伝達手段8bが組み込まれている。
本発明の第3の実施形態の浴槽用手摺り1bでは、可動フレーム3bにはボルト軸6bが回動不能に固着されており、本体フレーム2bには、該ボルト軸6bと螺合するナット部4bが回動自在に取り付けられている。このため、ハンドルノブ7bで本体フレーム2bに取り付けられたナット部4bを回動すると、該ナット部4bと螺合するボルト軸6bが固着された可動フレーム3bを螺進退させ、そして該可動フレーム3bの先端に取り付けられた引き圧部5bが浴槽側壁へ向けて引き込まれるので、本体フレーム2bを浴槽側壁へ寄せて載置した後は、引き圧部5bを浴槽側壁へ引き込んでも、本体フレーム2b及び該本体フレーム2bに取り付けられた上部グリップ24(図1参照)が浴槽側壁から移動して離れてしまうという問題がない。また、浴槽用手摺り1bを固定するために、洗い場側より押圧板などを用いて幅調節する必要もなくなる。
ハンドルノブ7bは、ナット部4bに対して同軸上に回動自在に外装されており、後退させたボルト軸6bをハンドルノブ7bの内部に収容するための収納室70bを有している。
本実施形態の浴槽用手摺り1bでは、可動フレーム3bを最も本体フレーム2b側へ引き込んだ時でも、ボルト軸6bの端部を収納室70bの中へ収容することができるので、ボルト軸6bの端部が本体フレーム2bから外方へ突出して露出することがなく安全である。また、ナット部4bを本体フレーム2bへ回転自在に固定しているので、ナット部4bをハンドルノブ7bで回動させてボルト軸6b及び可動フレーム3bを螺進退させても、ナット部4b自体が本体フレーム2bの取付け位置から軸方向へ移動することがないため、ハンドルノブ7bが本体フレーム2bから突出する長さを抑制することができる。
本実施形態の浴槽用手摺り1bでは、本体フレーム2bの水平部22bには、貫通口280bを有する垂直壁28bが設けられており、ナット部4bには、貫通口280bへ挿通される胴部40bと、胴部40bに固着されており且つ一方の側から垂直部280bへ当接させるために貫通口280bより大きな外径を有する第1のフランジ部41bと、そして他方の側から垂直部280bへ当接させるために貫通口280bより大きな外径を有し且つ胴部40bへ着脱自在に取り付けられる第2のフランジ部42bとを備えることにより、本体フレーム2bへ回転自在に取り付けられる。また、第1のフランジ部41b及び第2のフランジ部42bと、垂直壁28bとの間に樹脂製のワッシャー44bが挿入されており、ナット部4bのガタ付きを抑え、本体フレーム2bの垂直壁28bに対するナット部4bの回転が円滑になるようにされている。
本実施形態の浴槽用手摺り1bでは、浴槽用手摺り1bを浴槽側壁へ取り付けた際、ボルト軸6bには引っ張り応力が発生するが、ナット部4bには引っ張り応力が発生することがない。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1bでは、トルク伝達手段8bを、ナット部4bとハンドルノブ7bの間に設けることにより、ボルト軸6bに生じる引っ張り応力によって、トルク伝達手段8bのトルク伝達面82bとトルク伝受面83bとの間の隙間や当接力(摩擦力)に変化が生じたり、或いは一定のトルクに対してトルクの伝達を遮断できなくなるという不都合が防止されている。
本実施形態の浴槽用手摺り1bでは、上述のように、トルク伝達手段8bはナット部4bとハンドルノブ7bの間に設けられるので、所定の力未満では、ハンドルノブ7bからナット部4bへ回動力を伝達し、且つ所定の力以上では、ハンドルノブ7bからナット部4bへの回動力の伝達を遮断することができる。このため、使用者がハンドルノブ7bを回して引き圧部5b(図示せず)を強力に引き込んでも浴槽の側壁を破損することなく、必要にして十分な引き込み力をもって浴槽用手摺り1bを浴槽側壁へ強固に取り付けることができる。
図9に示されるように、本実施形態で使用されるトルク伝達手段8bは、ハンドルノブ7bの回転と同調し、且つハンドルノブ7bの回転軸に対して直交するトルク伝達面82bを備えた伝達部80bと、ナット部4bの回転と同調し、且つトルク伝達面82bに当接されるトルク伝受面83bを備えた伝受部81bとを有しており、そしてトルク伝達面82b及びトルク伝受面83bはそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達面82bとトルク伝受面83bとを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達面82bとトルク伝受面83bとの間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
また、トルク伝達手段8bは、伝達部80bがハンドルノブ7bの回転軸方向に移動可能に取り付けられており、そして移動可能に取り付けられた伝達部80bを、伝達部80bと対向する伝受部81bへ向けて付勢する伝達部付勢手段84bを備えている。また、伝達部付勢手段84bの端部は、ネジ85bによってナット部4bの端部に装着されるストッパー86bによって固定されている。
トルク伝達手段8bのトルク伝達面82bの中心及びトルク伝受面83bの中心は、ハンドルノブ7b及びナット部4bの回転軸と同軸上に配置されている。またトルク伝達面82b上及びトルク伝受面83b上には、それぞれにトルク伝達面82b又はトルク伝受面83bから傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。トルク伝達面82bの傾斜面及びトルク伝受面83bの傾斜面は、可動フレーム3bの引き圧部5b(図示せず)を浴槽側壁へ向けて引き込むようにハンドルノブ7bを回す時、互いに対向する相手側の傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
そして、トルク伝達面82bを有する環状の伝達部80bはハンドルノブ7b及びナット部4bの回転軸に沿ってスライド可能に装着されており、且つ弾性体(伝達部付勢手段)84bによってトルク伝受面83bに向けて付勢されている。弾性体84bは、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達面82bの傾斜面とトルク伝受面83bの傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そしてハンドルノブ7bからナット部4bへ伝達されるトルクが所定の値未満である時、トルク伝達面82bの傾斜面はトルク伝受面83bの傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そしてこの係合により、ハンドルノブ7bのトルクがナット部4bへ伝達され、該ナット部4bと螺合するボルト軸6bと連結された可動フレーム3bが螺進退される。
一方、ハンドルノブ7bからナット部4bへ伝達されるトルクが所定の値以上になると、トルク伝達面82bの傾斜面はトルク伝受面83bの傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、トルク伝達面82bを備えた環状の伝達部80bは弾性体84bに抗して後退し、トルク伝達面82bの傾斜面がトルク伝受面83bの傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。このため、この状態でハンドルノブ7bを回してもハンドルノブ7bはナット部4bに対して空回りするのみであり、ハンドルノブ7bからナット部4bへトルクが伝達されることはない。
また、トルク伝達面82bの傾斜面の後端にはトルク伝達面82bに略直交する垂直面が形成されており、トルク伝受面83bの傾斜面の後端にはトルク伝受面83bに略直交する垂直面が形成されている。トルク伝達面82bの垂直面とトルク伝受面83bの垂直面は、可動フレーム3bの引き圧部5b(図示せず)を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7bを回す時、互いに当接し係合する。そのため、ハンドルノブ7bを、引き圧部5bを浴槽の側壁から離間させるように回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブ7bとナット部4bは同調して回転する。
このように、トルク伝達手段8bにおいて、ナット部4bの回転と同調して回動するトルク伝受面83bは、ナット部4bの外周面に取り付けられている。このため、トルク伝達手段8bは、ナット部4b本体と一部重複して配置することができるので、トルク伝達手段8b及び該トルク伝達手段8bを備えたハンドルノブ7bの本体フレーム2bからの突出長さを抑えることができる。
なお、図示しないが、トルク伝達手段は、トルク伝受面を有する伝受部をナット部4bに沿ってスライド可能な環状部品とし、そして該伝受部をナット部4bへ装着し且つ弾性体(伝受部付勢手段)84bによってトルク伝達面に向けて付勢することによっても、上述したように、伝達部80bをトルク伝受面83bに向けて付勢可能な環状部品とした場合と同様の効果を得ることができる。
第4の実施形態
次に図11〜13を用いて、本発明の第4の実施形態に係る浴槽用手摺り1cを説明する。本実施形態の浴槽用手摺り1cは、ボルト軸6aを回動することにより、ナット部4aが装着された可動フレーム3aを螺進退させる第2の実施形態の浴槽用手摺り1aに対して、第4の態様として、トルク伝達手段8cが異なり、そして可動フレーム3cに対して回動不能に固着されたボルト軸6cを螺進退させることにより、可動フレーム3cの先端に取り付けられた引き圧部5c(図示せず)を浴槽側壁へ向けて引き込むタイプの浴槽用手摺り1cであること以外は、基本的に第2の実施形態の浴槽用手摺り1aと同じ構成を備えている。
別言すれば、本実施形態の浴槽用手摺り1cは、トルク伝達面82bとトルク伝受面83bとがハンドルノブ7b及びボルト軸6bの回転軸に対して直交するように配置された第3の態様のトルク伝達手段8bとは異なり、第4の態様として、トルク伝達面をハンドルノブ7cの内周面上に設け(以下、「トルク伝達円周面82c」という)、トルク伝受面83cをボルト軸6cの外周面上に設けたタイプのトルク伝達手段8cを使用していること以外は、基本的に第3の実施形態の浴槽用手摺り1bと同じ構成を備えている。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1cは、基本的に第2及び第3の実施形態の浴槽用手摺り1a,1bと同じ効果を奏することができるので、第2又は第3の実施形態の浴槽用手摺り1bと重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
図11には、第4の態様のトルク伝達手段8cを備えた浴槽用手摺り1cをボルト軸6cの軸に沿って切り取った断面図が示されており、図12には、図11に示される浴槽用手摺り1cをY−Y断面で切り取った断面図が示されている。また、図13には、ナット部4c,ボルト軸6c、ハンドルノブ7c、トルク伝達手段8cを回動軸に沿って分解した状態の概要が示されている。
より具体的には、トルク伝達手段8cは、ハンドルノブ7cの回転と同調し、且つハンドルノブ7cの回転軸に対して平行な略円筒形のトルク伝達円周面82cを備えた円周伝達部80cと、ナット部4cの回転と同調し、且つトルク伝達円周面82cに摺接される摺動面830cを備えた摺動部81cとを有しており、そして摺動部81cは、ナット部4cの回転軸に対して平行であって摺動面830c上に配設されたキー溝831cと、トルク伝達円周面82cに当接されるトルク伝受面83cを備えており且つキー溝831cの中で、ナット部4cの回転軸に対して放射方向に移動可能に配置されているキー87cと、そしてキー87cのトルク伝受面83cを、ハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cへ向けて付勢する付勢手段84cとを含んでおり、そしてトルク伝達円周面82c及びトルク伝受面83cはそれぞれに、伝達される回動力が所定の値未満では、トルク伝達円周面82cとトルク伝受面83cとを相互に係止し、そして伝達される回動力が所定の値以上では、トルク伝達円周面82cとトルク伝受面83cとの間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含んでいるという特徴を有している。
なお、第4の態様の円周伝達部80cは、トルク伝達円周面82cを長期間使用した場合に磨耗することがあるのを考慮して、ハンドルノブ7c本体とは別体の着脱可能な部品として形成されているので、容易に交換することができ、便利である。また、耐摩耗性などが求められないハンドルノブ7c本体をプラスチック材料などから作ることができるので、ハンドルノブ7c周りの加工や軽量化が容易になるという利益がある。
第4の態様のトルク伝達手段8cでは、トルク伝達円周面82cの回転軸、摺動面830cの回転軸及びトルク伝受面83cの回転軸は、ハンドルノブ7c及びナット部4cの回転軸と同軸上に配置されている。また、ハンドルノブ7c(円周伝達部80c)のトルク伝達円周面82c上には、円筒状のトルク伝達円周面82cからさらに内側に傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。一方、ナット部4c(摺動部81c)の摺動面830c上には、ナット部4cの回転軸に対して平行に配設されたキー溝831cが形成されており、そしてキー溝831cの中には、ナット部4cの回転軸に対して放射方向に移動可能なキー87cが配置されている。キー87cのトルク伝受面83c上には傾斜面を含む凹部/凸部が形成されており、キー87cは弾性体(付勢手段)84cによってトルク伝達円周面82cに向けて付勢されている。なお、弾性体84cは、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達円周面82cの傾斜面と、キー87cのトルク伝受面83cの傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そして、ハンドルノブ7cからナット部4cへ伝達されるトルクが所定の値未満である時、キー87cのトルク伝受面83cの傾斜面はハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cの傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そして、この係合によりハンドルノブ7cのトルクがナット部4cへ伝達され、該ナット部4cと螺合するボルト軸6cと連結された可動フレーム3cが螺進退される。
一方、ハンドルノブ7cからナット部4cへ伝達されるトルクが所定の値以上になると、ナット部4cのトルク伝受面83cの傾斜面はハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cの傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、傾斜面を有するキー87cは弾性体84cに抗して後退し、キー87cのトルク伝受面83cの傾斜面がハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cの傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。そのため、この状態でハンドルノブ7cを回してもハンドルノブ7cはナット部4cの周りで空回りするのみであり、ハンドルノブ7cからナット部4cへトルクが伝達されることはない。
また、ハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cの傾斜面の後端にはトルク伝達円周面82cに略直交する垂直面が形成されている。また、キー87cの幅方向の断面は略台形の形状を呈しているので、キー87cのトルク伝受面83cの傾斜面の後端にはキー87cの傾斜面に略直交する垂直面が形成されている。ハンドルノブ7cのトルク伝達円周面82cの垂直面とキー87cのトルク伝受面83cの垂直面は、引き圧部5c(図示せず)を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7cを回す時、互いに当接し係合する。そのため、引き圧部5cを浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ7cを回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブ7cとナット部4cは同調して回転する。
このように、第4の態様のトルク伝達手段8cは、ナット部4cの端面ではなく、ナット部4cの回転軸に対して平行に配設される略円筒形の外周面を利用したものであるが、ナット部4c(摺動部81c)の外周面(摺動面830c)上にキー溝831cを設け、該キー溝831cの中へ、ナット部4cの回転軸に対し放射方向に移動して係合/解除可能な傾斜面を有するキー87cを配置したので、ハンドルノブ7cの内周面とナット部4cの外周面と隙間が小さい場合においても、ハンドルノブ7cからナット部4cへ確実にトルクを伝達又は遮断することができる。