以下、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺りについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺り1の主な構成を説明する。図1には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の全体概要が示されており、図2には、図1に示された浴槽用手摺り1を主な部品に分解した態様が示されている。
図1,2に示されているように、浴槽用手摺り1の基本的骨格は、浴槽側壁へ直接載置される本体フレーム2と、連結フレーム32を介して本体フレーム2へ着脱可能に取り付けられる補助フレーム3とからなる。また、本体フレーム2には、使用者の身体を支えるための手摺り本体4と、浴槽用手摺り1の傾転を防止するための脚部5が取り付けられている。一方、補助フレーム3には、押圧部6を前進及び後退させるための移動装置8と、浴槽内の使用者の動きを補助するための側部グリップ40が取り付けられている。また、移動装置8はナット82を回転させるためのハンドルノブ80及びそのキャップ800を含んでおり、ナット82の回転により螺進退されるボルト89の先端には、連結プレート61を介して矩形平面を有する1対の板状の押圧部6が首振り自在に取り付けられている。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1では、着脱自在に装着可能な保護カバー33,24を用いて連結フレーム32及び本体フレームを覆うことにより、凹凸部などの危険箇所を減らしたり、通常は操作不要な部位の誤操作を防止したりすると共に、視覚的に見栄えを良くして清潔にしている(図2参照)。
手摺り本体4は、平面視が略矩形のリング状の上部グリップ41と、上部グリップ41と連結されており、複数の固定孔420が設けられている1対のグリップ支持部42とを含んでおり、手摺り本体4は、グリップ支持部42の固定孔420へ、後述する本体フレーム2の挿入ピン280を挿入することより任意の高さに調節可能に固定することができる。
また、脚部5は、ネジ53により本体フレーム2へネジ止めされる主脚部50と、主脚部50の内部に設けられた雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が外周面に設けられた補助脚部51とから構成されている。脚部5は、主脚部50に対し補助脚部51を回転させることによりその長さを調節することができる。
図3には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の側面図が示されており、図4には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1をボルト89に沿って切り取った断面図が示されている。
図3,4に示されているように、浴槽用手摺り1の本体フレーム2は、浴槽側壁の上面へ載置される載置部20と、載置部20に連結されており浴槽側壁の一方の側面へ当接される当接部7が設けられている当接基部21とを含んでおり、全体として下向きの略L字形の断面形状を有している。また、本体フレーム2へ着脱可能に取り付けられる補助フレーム3は、本体フレーム2の載置部20にスライド及び着脱自在に連結される連結フレーム32と、連結フレーム32にスライド及び着脱自在に連結される水平部30と、そして水平部30に連結された垂直部31とを含んでおり、全体として下向きの略L字形の断面形状を有している。さらに、本体フレーム2の載置部20の内面及び当接基部21の内面には弾性を有する樹脂ラバー26、27が装着されており、補助フレーム3の水平部30の内面にも弾性を有する樹脂ラバー34が装着されているので、浴槽側壁への傷付け防止及び滑り止めが施されている(図4参照)。
補助フレーム3の垂直部31には、移動装置8のナット82が回動自在に取り付けられており、ナット82の回転により螺進退されるボルト89の先端には、当接部7が当接する浴槽側壁の側面とは反対側の他方の側面を押圧する1対の押圧部6が連結プレート61を介して首振り自在に取り付けられている。また、ナット82は、後述するトルク伝達・遮断手段83を介してハンドルノブ80によって回転させられると共に、いわゆる“ハンドルノブの空回り現象”を解消するために、常にハンドルノブ80からナット82へ回動力を伝達できるようにするトルク伝達ロック機構830が設けられている(図13参照)。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、連結フレーム32には、3つのE字形及び2つのコの字形のスリット320が形成されており、本体フレーム2の載置部20及び補助フレーム3の水平部30には、連結フレーム32のスリット320と整列するネジ孔200及び300がそれぞれに設けられている(図2参照)。このため、補助フレーム3は、垂直部31が本体フレーム2の当接部7及び当接基部21へ向けて近接離反できるように、連結フレーム32を介して載置部20に対する水平部30の取付位置を任意に選択し、ネジ321により本体フレーム2へビス止めすることができる。
また、図示しないが、補助フレームの水平部に複数の貫通孔又はスリットを設け、本体フレームの載置部に1又は複数のネジ孔を設けることにより、連結フレーム32を介さず、補助フレームの水平部を本体フレームの載置部へ取付位置可変に直接ビス止めできるようにしてもよい。
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1は、連結フレーム32を介して補助フレーム3の水平部30を本体フレーム2の載置部20へ取付位置が変更できるように装着することができるので、浴槽側壁の厚みに合わせて、予め本体フレーム2の当接基部21及び当接部7と、補助フレーム3の垂直部31及び押圧部6との間の距離をできるだけ近接させておくことができるので、浴槽側壁をクランプするために必要となる押圧部6の移動距離を必要最小限に抑えることができるようになる。その結果、押圧部6を当接部7へ向けて前進及び後退させるためのボルト長など移動装置8をコンパクトにすることができる。
図16には、本実施形態の浴槽用手摺り1を浴槽側壁9へ仮装着した状態(a)および本装着した状態(b)が示されている。また、図17には、図16に示された本実施形態の浴槽用手摺り1の比較例として、浴槽側壁9を洗い場側から押圧するタイプの従来型の浴槽用手摺り1xを浴槽側壁へ仮装着した状態(a)および本装着した状態(b)が示されている。
上述したように、本実施形態の浴槽用手摺り1では、手摺り本体4は、浴槽側壁の上面及び外壁面と当接させてその位置において固定することができる本体フレーム2に取り付けられており、押圧部6は、連結フレーム32を介して本体フレーム2に連結された補助フレーム3によって浴槽側に配置されているので、本体フレーム2は、押圧部6を前進及び後退させても浴層側壁に対して不動である。そのため、本実施形態の浴槽用手摺り1は、図16(a)(b)に示されているように、押圧部6を浴槽側壁9へ押し付けても本体フレーム2と浴槽側壁9の上面との間に位置ズレや応力(摩擦力)を生じることがなく(例えば、手摺り4の中心と浴槽側壁9の中心との距離L0は不変で一定)、極めて安定した状態で取り付けることができる。
図5には、図1に示される本実施形態の浴槽用手摺り1の本体フレーム2の分解図が示されている。図6には、図1に示される浴槽用手摺り1の本体フレーム2への手摺り本体4の取り付け態様を表した概要図が示されている。
本実施形態の本体フレーム2は、浴槽側壁の上面へ載置される載置部20と、載置部20に連結されており浴槽側壁の一方の側面へ当接される当接部7が設けられている当接基部21から構成されており、当接基部21の背面には手摺り本体4の1対のグリップ支持部42をスライド可能に収容するためのグリップ支持部収容部22が設けられている。また、載置部20には、載置部20の幅方向において、グリップ支持部42よりも外側へ向けて延びた延出部25と、補助フレーム3と連結された連結フレーム32を取付位置可変にビス止めするためのネジ孔200が設けられている。
本体フレーム2の載置部20の内面及び当接基部21の内面には、浴槽側壁への傷付け防止及び滑り止めを兼ねた弾性を有する樹脂ラバー26、27が装着されており、さらに当接基部21の内面には、浴槽側壁を洗い場側からクランプするための当接部7と、取付け時、当接部7が浴槽側壁の上面に乗り上げるのを防止するための案内部70がネジ712によって取り付けられている。
本実施形態では、当接部7と案内部70は樹脂製であり、正面視において略T字型を呈するように一体成形されている。また、当接部7は当接部本体71と、当接部本体71を当接基部21へビス止めするためのネジ712と、そして浴槽側壁への傷付け防止及び滑り止めを兼ねた弾性を有する樹脂ラバー72を含んでいる。また、当接部本体71には、当接部本体71をビス止めするための貫通孔710と、樹脂ラバー72の裏面に設けられた凸部(図示せず)を挿入することにより樹脂ラバー72を着脱自在に固定するラバー固定穴711が設けられている。
図6に示されているように、本実施形態の本体フレーム2の当接基部21には、複数の固定孔420が形成された1対のグリップ支持部42をスライド可能に支持するための円筒形のグリップ支持部収容部22が設けられている。また、1対のグリップ支持部収容部22の間には、1対の挿入ピン280と、挿入ピン280の後端部に取り付けられた1対のつまみ282と、挿入ピン280をグリップ支持部42へ向けて付勢する付勢手段281とからなる挿入・解除機構28が配設されている。
挿入ピン280は、グリップ支持部収容部22の貫通孔(図示せず)を通してグリップ支持部42の複数の固定孔420の少なくとも1つに抜き差し可能に挿入される。また、つる巻きバネの付勢手段281は、挿入ピン280をグリップ支持部収容部22の貫通孔の外側からグリップ支持部42の固定孔420へ向けて付勢する。つまみ282は、使用者が操作して付勢手段281による挿入ピン280の付勢の方向と逆の向きに沿って付勢手段281に力を加えるためのものである。
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1では、手摺り本体4のグリップ支持部42は、グリップ支持部収容部22と挿入・解除機構28によって本体フレーム2の背面に高さ調節自在に固定される。すなわち、挿入・解除機構28の挿入ピン280がグリップ支持部42の複数の固定孔420の少なくとも1つに挿入された状態では、グリップ支持部42は、挿入・解除機構28の挿入ピン280を介して本体フレーム2に連結及び固定される。一方、挿入ピン280がグリップ支持部42の固定孔420に挿入されていない状態では、グリップ支持部42は、本体フレーム2に連結及び固定されない。
挿入ピン280は、付勢手段281によってグリップ支持部収容部22の貫通孔の外側からグリップ支持部42の固定孔420へ向けて付勢されている。そのため、使用者が手摺り本体4の高さを調節し、手摺り本体4の高さを固定するために挿入ピン280をグリップ支持部42の固定孔420に挿入するとき、グリップ支持部42を支えながら挿入ピン280に力を加えたり、挿入ピン280をねじ込むなどの操作をする必要がない。また、使用者は、つまみ282を操作して付勢手段281による挿入ピン280の付勢の方向と逆の向きに沿って付勢手段281へ力を加えることができるので、挿入ピン280をグリップ支持部42の固定孔420から容易に抜くこともできる。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、グリップ支持部42の固定手段において上述の構成を採用したことにより、手摺り本体4の高さを容易且つ安全に調節することができる。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1は、グリップ支持部42をグリップ支持部収容部22の中へガタ付くことなく固定するための縮径部23及び縮径部23の外周面に螺合されるナット230を備えている。
縮径部23は、グリップ支持部収容部22の最上部に設けられたスリットである。また、縮径部23の外周面にはネジ山(ネジ溝)が設けられており、外周面は上方から下方へ向けて外径が徐々に大きくなるようにテーパーが付けられている。このため、縮径部23のネジ山(ネジ溝)へナット230を取り付け、ナット230を下方へ螺進するように回転させると、縮径部23はナット230によって縮径されるので、グリップ支持部42をグリップ支持部収容部22の中へガタ付かないように締め付けることができる
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1は、グリップ支持部収容部22の最上部において上述の構成を採用したことにより、グリップ支持部収容部22内に収容されたグリップ支持部42を強固に固定し、グリップ支持部42のガタツキをより効果的に防止することができる。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、浴槽側壁の上面へ載置される載置部20が、載置部20の幅方向において、グリップ支持部42よりも外側へ向けて延びた延出部25を有しているので、特に手摺り本体4の上部グリップ41へ浴槽側壁の長手方向に沿って水平方向に力が加えられても、延出部25が浴槽側壁上面と当接することにより手摺り本体4に働く回転モーメントを支えるため、浴槽用手摺り1が浴槽側壁上面上で浴槽側壁の長手方向へ回転したり転倒したりするのを強力に防止することができる。なお、本実施形態の浴槽用手摺り1では、上部グリップ41へ浴槽側壁の厚み方向に沿って水平方向に力が加えられても、当接部7及び押圧部6からなるクランプ機構が、浴槽用手摺り1が浴槽側壁の厚み方向へ回転ないし転倒するのを強力に阻止する役目を果たす。
より詳細には、手摺り本体4の上部グリップ41へ加えられた浴槽側壁の長手方向に沿った水平方向の力は、上部グリップ41と連結されたグリップ支持部42を介して載置部20へ伝達されるので、手摺り本体4には、グリップ支持部42と載置部20との取付け部を中心にして浴槽側壁の長手方向へ回転ないし転倒させる力が働くことになる。ところが、本体フレーム2の載置部20には、グリップ支持部42と載置部20との取付け部から更に外側へ向けて延びた延出部25が設けられているので、手摺り本体4へ、グリップ支持部42と載置部20との取付け部を中心にして浴槽側壁の長手方向に回転ないし転倒させようとする力が働いても、延出部25が浴槽側壁上面に支持された腕となって手摺り本体4の回転を強力に阻止することができる。
別言すれば、本実施形態の浴槽用手摺り1は、本体フレーム2の載置部20の幅方向において、グリップ支持部42と載置部20との取付け部から更に外側へ向けて延びた延出部25を設けているので、浴槽側壁の長手方向に沿って水平方向に力が加えられた時の手摺り本体4の回転の中心は、実質的にグリップ支持部42と載置部20との取付け部から載置部20に設けられた延出部25の縁部へ移動することになる。そのため、手摺り本体4を回転させるためには、上部グリップ41へ水平方向の力のみを加えるだけでは足りず、グリップ支持部42と載置部20との取付け部を持ち上げるように水平方向よりも上向きの力を加える必要が生じる。このため、グリップ支持部42よりも外側へ向けて延びた延出部25を有している本実施形態の浴槽用手摺り1は、グリップ支持部42が載置部20の端部に取り付けられており延出部25を有していない浴槽用手摺り1に比べて、浴槽側壁上面上で回転ないし転倒し難い構造となっている。
図7には、図1に示される浴槽用手摺り1の本体フレーム2の背面を表した斜視図(a)および正面を表した斜視図(b)が示されている。図8には、図7に示される本体フレーム2とは異なる態様の本体フレーム2aの背面を表した斜視図(a)および正面を表した斜視図(b)が示されている。また、図9には、図7に表された本体フレーム2の側面図が示されており、図10には、図8に表された本体フレーム2aの側面図が示されている。
上述したように、延出部25は、載置部20の幅方向においてグリップ支持部42よりも外側へ向けて延びていればよいので、延出部25が形成された載置部20の幅寸法は、当接部7の幅寸法や本体フレーム2の当接基部21の幅寸法に対する長短等の関係を要求されない。
このため、本実施形態では、延出部25が設けられた載置部20の幅寸法は、例えば図7(a)(b)に示されるように、当接部7の幅寸法及び当接基部21の一部の幅寸法と同一でもよい。また、後述する図11に示されるように、延出部25bが設けられた載置部20bの幅寸法は、当接部7aの幅寸法及び当接基部21bの幅寸法と同一でもよい。さらに、延出部25aが設けられた載置部20aの幅寸法は、例えば図8(a)(b)に示されるように、当接部7の幅寸法とは同一であるが、当接基部21aの幅寸法よりは長くてもよい。図8(a)(b)に示される本体フレーム2aでは、延出部25aが設けられた載置部20aの幅寸法のみが当接基部21の幅寸法よりも長くなっている。
このように、延出部を有する載置部の幅寸法が当接部の幅寸法や当接基部の幅寸法と同一であるとは、必ずしも当接部の幅寸法や当接基部の幅寸法の全部の幅寸法と同一である必要がなく、当接部や当接基部の全部(図11)又は一部(図7)の幅寸法と同一であればよい。特に、延出部を有する載置部の幅寸法が当接部の全部又は一部の幅寸法と同一であると、当接部は、その幅寸法に拠らず、載置部によって当接部の全幅を支持ないし接触させることができるので、当接部と載置部との間にガタ付き等を生じさせることなく、当接部を本体フレームへ固定することができる(図7、11参照)。
延出部25、25a、25bは、当接部7、7aの当接面からの距離が10cm以内の載置部20、20a、20bの端部領域に設けられることが好ましく、本実施形態では、当接部7、7aの当接面からの距離が5cm以内の載置部20、20a、20bの端部領域に設けられている。
本実施形態では、本体フレーム2は、載置部20、20a、20bを浴槽側壁の上面に載置し、当接部7、7aを浴槽側壁の側面に当接させることによりその位置において固定されるので、載置部20、20a、20bに設けられる延出部25、25a、25bは、当接部7、7aの当接面から一定の距離内に配置されることになる。このため、本実施形態において、延出部25、25a、25bを浴槽側壁の上面に的確且つ必要最小限の大きさで配置しようとすれば、延出部25、25a、25bを当接部7、7aの当接面からの距離が10cm以内の載置部20、20a、20bの端部領域に設けることが好ましく、さらに当接部7、7aの当接面からの距離が5cm以内の載置部20、20a、20bの端部領域に設けることがより好ましい。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、本体フレーム2、2a、2bに設けられており浴槽の外壁と当接する当接部7、7aの一部領域の厚みを残部領域の厚みよりも厚肉化又は薄肉化するように変化させることも(図11)、厚肉化又は薄肉化させておくこともできるので(図7〜9)、原則として浴槽の形状や形式を選ばず、浴槽の内壁も外壁も強度を有する部材から製作されている浴槽であっても、浴槽の内壁は強度を有するがリム部以外の外壁は強度を有さない浴槽であっても取り付けることができる。
さらに、本実施形態の浴槽用手摺り1では、本体フレーム2、2aの当接基部21、21aに取り付けられた当接部7は、該当接部7の下部に、当接部7の当接面から当接基部21、21aへ向けて該当接部7の厚みを漸減させるように形成された傾斜面700、複数の段差701a又は傾斜面700と段差701との組み合わせを有する案内部70、70aが設けられている。
本実施形態の浴槽用手摺り1は、基本的に下向きに略コの字型形状を有しているため、取付け時は、浴槽側壁の上方から下方へ向けて覆い被せるように仮置きされる。このため、浴槽用手摺り1が、浴槽の外壁の段差等に適合させるために本体フレーム2、2aの当接基部から突出した当接部7を備えていると、取付け時、該当接部7が浴槽側壁の上面に乗り上げてしまい、不完全な位置、状態において取り付けられてしまうという危険が生じる。
しかしながら、本実施形態では、当接部7の下部に、当接部7の当接面から当接基部21、21aへ向けて該当接部7の厚みを漸減させるように形成された傾斜面700、複数の段差701a又は傾斜面700と段差701との組み合わせを有する案内部70、70aが設けられているので、取付け時、当接部7が浴槽側壁の上面に乗り上げてしまうという問題が解消され、浴槽用手摺り1の不完全な位置、状態における取り付けを確実に防止することができる。
上述のように、案内部70、70aは当接部7の下部に設けることにより、取付け時、当接部7が浴槽側壁の上面に乗り上げるのを防止するものであるので、案内部70、70aの横幅寸法は必ずしも当接部7の横幅寸法と同じである必要がなく、当接部7の横幅寸法よりも短くても長くてもよい。ただし、図7(b)、図8(b)に示されているように、案内部70、70aの横幅寸法を当接部7の横幅寸法よりも短くすると、案内部70、70aをより一層コンパクトにすることができ、さらに視覚的にも機能的にも案内部70、70aを当接部7と間違えて使用されることを防止することもできる。
案内部70に設けられる傾斜面700は、当接基部21から離間している当接部7の当接面から当接基部21へ向けて該当接部7の厚みを漸減させるように勾配を有していれば、当接部7の当接面や当接基部21の表面と連続して形成されている必要はなく、図9に示されているように、当接部7の当接面や当接基部21の表面から段差701を介して接続されていてもよい。
また、案内部70、70aに段差701、701aを設ける場合は、一般に浴槽側壁上面の縁部には所定の半径を有するR(アール)が付けられている場合が多いので、段差701、701aの水平方向の奥行が浴槽側壁上面の縁部のR(アール)より小さければ、取付け時、当接部7が浴槽側壁の上面に乗り上げてしまうことがない。このため、案内部70、70aの段差701、701aは、段差701、701aの水平方向の奥行きを1mm以上12mm以下とすることが好ましく、本実施形態では1mm以上6mm以下に設定されている。また、段差701、701aは、図8に示されるように複数個の段差を組み合わせてもよく、或いは図7に示されるように、上述した傾斜面700と組み合わせてもよい。
図11には、本体フレーム2の当接部7aを、当接基部21b、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75c及び弾性ラバー72a〜72cへ分解した状態が示されている。
本実施形態の当接部7aは、滑り止めによるグリップ力の向上や浴槽側壁の損傷防止を目的として、当接基部21bの表面及びブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの表面に弾性ラバー72a〜72cを着脱可能に取り付けられるようになっている。また、弾性ラバー72a〜72cは、弾性ラバー72a〜72cの裏面に設けられた円形の凸部720をブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75c及び当接基部21bの表面に設けられた円形の凹部740、750及び210へ嵌め込むことにより着脱自在に取り付けられる。
例えば、当接部7aの一部領域の厚みの厚肉化又は薄肉化は、当接部7aを、本体フレーム2bの当接基部21bと、当接基部21bへ着脱可能でありそして所定の厚みを有し且つ当接基部21bの当接面より小さな面積を有するサブブロック74a〜74c、75a〜75cとから構成することにより達成される。すなわち、本実施形態では、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cを当接基部21bの上部領域又は下部領域へ装着することにより、当接部7aの一部領域の厚みを残部領域の厚みよりも厚肉化又は薄肉化することができる。
また、本実施形態では、ブロック74a〜74c、75a〜75cを、当接基部21bの当接面全体を上下方向に分割するように複数のサブブロック74a〜74c、75a〜75cから構成しているので、当接基部21bの当接面より小さな面積を有する複数のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cのうち、全部のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cを一様に装着する(又は取り外す)ことにより当接部7aの全部領域の厚みを変更することができれば、下部のブロック(サブブロック)74a、74b、75a及び/又は75bを取り外すことにより当接部7aの上部領域の厚み(ブロック74c及び75cの部分)を下部領域の厚み(ブロック74a、74b、75a及び/又は75bの部分)よりも厚肉化することもできる。また、上部のブロックブロック74c及び/又は75cを取り外すことにより当接部7aの下部領域の厚みを上部領域の厚みよりも厚肉化することもできる。
図11を参照してよく理解されているように、本実施形態の当接部7aは上下方向において異なる幅を有している3つのブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cへ分割されている。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1は、図14及び図15に示されているように浴槽側壁9a及び9bが上下方向に幅(高さ)の異なる様々な形状の段差を有している場合においても、当接部7を、該段差形状に追従させて当接させることもできれば(図15(a)〜(c)参照)、該段差形状に合わせて局部的に当接させることもできる(図14(a)〜(c)参照)。
このように、本実施形態の浴槽用手摺り1では、当接部7aのブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cを、同一又は異なる大きさ、厚みを有する他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと入れ換えたり、或いは既に装着済みのブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの上へ、さらに同一又は異なる大きさ、厚みを有する他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cを取り付けることで、当接部7aの全部領域の厚みを変更したり、又は当接部7aの一部領域の厚みを残部領域の厚みよりも厚肉化又は薄肉化することができる。また、本実施形態では、例えば図7〜10に示されるように、予めブロック(サブブロック)を当接基部21、21aの上部領域又は下部領域へ固定又は一体成形することにより、当接部21、21aの一部領域の厚みが残部領域の厚みよりも予め厚肉化又は薄肉化されている浴槽用手摺りを準備してもよい。
本実施形態では、ブロック74a〜74c、75a〜75cは、それぞれが着脱可能に積層された同一又は異なる大きさ、厚みを有するサブブロック74a〜74c、75a〜75cから構成されている。このため、本実施形態では、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの積層数や積層するブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの組み合わせを変えることにより、当接部7aの全部領域又は一部領域を様々な厚みに変更することができる。その結果、本実施形態の浴槽用手摺り1は、図14及び図15に示されているように浴槽側壁9a及び9bが様々な凹凸の段差を有している場合においても、当接部7aを該段差の凹凸に追従させて当接させることもできれば、該段差の凹凸に合わせて局部的に当接させることもできる。また、当接部7aを段差の凹凸に追従させて外壁全体に当接させることもできる。なお、ブロック(サブブロック)をサブブロック74a〜74cのような薄い板状の部品として構成すると、当接部7aの厚みをより細かく調節することができる。
本実施形態では、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと本体フレーム2bの当接基部21bとの連結、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cとの連結は、当接基部21b及び/又はブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの表面に円形の凸部73を設け、図示しないが、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの裏面には凸部73と嵌合する凹部を設け、そしてブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの凹部を当接基部21b又は他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの凸部73へ嵌め込むことにより達成される。なお、凹部は、凸部73を略完全に収容する開口部だけでなく、例えば複数の短い突起物により凸部73を周囲から部分的に囲むような構造を有するものであってもよい。
本実施形態では、当接基部21b及び/又はブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの表面に設けられる凸部73及びブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの裏面に設けられる凹部は複数個配置されている。また、図示しないが、凸部73及び凹部は、前述の構成とは逆に凹部を当接基部21b及び/又はブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの表面に設け、凸部73をブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cの裏面に設けてもよい。なお、本実施形態では、各ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cにはビス止めするための孔又は長穴741、751が形成されており、各ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cは、位置ズレや脱落を完全に防止する目的で、ネジ76を用いて当接基部21bのネジ孔211へビス止めされる。このため、各ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cに設けられた孔又は長穴741、751は、ネジ76の胴部の通過を許容するが頭部は通過させないように、下向き凸形の断面を有する2段幅の開口部を形成している。
このように、本実施形態では、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと当接基部21bとの連結およびブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cとの連結は、嵌合方向と直交する方向には物理的に移動できない円形の凸部73と凹部による嵌合構造を利用しているので、例えば手摺り本体4へ傾転させるような横方向の力が加えられても、ブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと当接基部21bとの間でおよびブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cと他のブロック(サブブロック)74a〜74c、75a〜75cとの間では位置ズレを生じることがない。
図14には、本実施形態の浴槽用手摺り1を、内壁は強度を有するが、リム部90a以外のエプロン91aは強度を有さない3つの異なる形状の浴槽側壁9aへ取り付けた状態が示されている。図14(a)の浴槽側壁9aは、リム部90aがエプロン91aよりも奥まっており、図14(b)の浴槽側壁9aはリム部90aがエプロン91aと略面一であり、そして、図14(c)の浴槽側壁9aはリム部90aがエプロン91aよりも出張っている形状を有している。また、図15には、本実施形態の浴槽用手摺り1を、内壁も外壁も強度を有する3つの異なる形状の浴槽側壁9bへ取り付けた状態が示されている。図15(a)の浴槽側壁9bは、リム部90bがリム部90b以外の外壁91bよりも奥まっており、図15(b)の浴槽側壁9bはリム部90bがリム部90b以外の外壁91bと略面一であり、そして、図15(c)の浴槽側壁9bはリム部90bがリム部90b以外の外壁91bよりも出張っている形状を有している。
図14、15に示されているように、本実施形態の浴槽用手摺り1は、浴槽の外壁と当接する本体フレーム2の当接部7がその一部領域の厚みを残部領域の厚みよりも厚肉化又は薄肉化できるので、原則として浴槽の形状や形式を選ばず、浴槽の内壁も外壁も強度を有する部材から製作されている浴槽(図15)であっても、浴槽の内壁は強度を有するがリム部90a以外の外壁は強度を有さない浴槽(図14)であっても取り付けることができる。
具体的には、図15(a)〜(c)に示されているように、浴槽の外壁が、リム部90b付近に段差がある場合を含み且つ強度を有する外壁の場合、本実施形態の浴槽用手摺り1は、壁面形状に追従するように当接部7の一部の厚みを調整することにより当接部7の押付け力(反力)を、押圧部6の押付け力と略鏡面対称の位置で対向するように当接面全体へ分散させることができる。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1は、浴槽用手摺り1に回転モーメントを生じさせることなく浴槽側壁9bの内外において釣り合いのとれたクランプ状態を形成することができる。また、当接部7の押付け力(反力)が分散されると単位面積当たり押付け力(反力)も低減されるので、浴槽側壁9bを損傷するリスクが低減されると共に、浴槽用手摺り1の取り付けが許容される浴槽側壁9bの強度範囲(適用範囲)も拡大される。
なお、図15(a)〜(c)に示されているように、浴槽の内壁及び外壁が一体的に製作されていても、その内部が空洞である場合は外壁が十分に強度を有していないことがあるので、その場合は図1、2に示される脚部5を本体フレーム2へ取り付ければ、浴槽用手摺り1の転倒や浴槽側壁からの脱落を効果的に防止することができ、浴槽用手摺り1のより高い安全性が確保される。
また、浴槽の外壁が、図14(a)〜(c)に示されているように、リム部90a付近に段差がある場合を含み且つリム部90a以外で強度を有さない外壁の場合、本実施形態の浴槽用手摺り1は、当接部7の一部の厚みを調整することにより当接部7の押付け力(反力)を浴槽外壁のリム部90aのみへ加えられるように集中させることができる。このため、本実施形態の浴槽用手摺り1は、リム部90a以外の外壁が強度を有さない浴槽についても強固に取り付けることが可能となり、また、リム部90a以外の強度を有さないエプロン91aの損傷を防止することもできる。
また、本実施形態の浴槽用手摺り1では、上述のような浴槽内壁は強度を有するがリム部90a以外の外壁(エプロン91a)は強度を有さない浴槽へ取り付ける場合は、浴槽用手摺り1の転倒や浴槽側壁9aからの脱落を防止するために、図14(a)〜(c)に示されているような端部のゴム脚52が床面と当接する脚部5を本体フレーム2に取り付けることが好ましい。この場合、使用者により横方向へ荷重が加えられても或いは浴槽内外のクランプ力の中心位置に偏心が生じていても、浴槽用手摺り1が傾転又は転倒するのを極めて効果的に防止することができる。
近年のユニットバスはデザイン性やメンテナンス性を考慮して、浴槽外壁の上部が内壁と連続する強度を有するリム部として構成され、リム部の下部が強度を有さない取り外し可能なエプロンとして構成されていることが多い。このため、本体フレーム2の当接部7の上部領域の厚みをその下部領域の厚みよりも厚肉化又は薄肉化させると、多くの場合、浴槽外壁の上部(リム部とエプロンの接続部分)に生じる段差を容易に吸収することができるので、本発明の浴槽用手摺り1を殆どタイプのユニットバスに適用させることができるようになる。
図12には、図1に示される浴槽用手摺り1の補助フレーム3を、フレーム本体3、移動装置8(トルク伝達・遮断機構83、トルク伝達ロック機構830を含む)及び押圧部6へ分解した状態の概要が示されている。
図12に示されているように、本実施形態の浴槽用手摺り1では、押圧部6は1対の押圧本体60と1対の樹脂ラバー63を含んでおり、樹脂ラバー63は、樹脂ラバー63の裏面に設けられた円形の凸部630を押圧本体60の円形の凹部600へ嵌め込むことにより装着される。また、1対の押圧本体60は、取付ブロック62を押圧本体60の挿通孔601及び連結プレート61の取付孔611へ挿通し、その反対側からネジ620によりネジ止めすることにより連結プレート61へ取り付けられる。
さらに、連結プレート61にはボルト89の先端部分と嵌合する固定穴610が設けられており、ボルト89の先端部分を連結プレート61の固定穴610に挿通し、先端部分が露出した側からネジ890によりネジ止めすることにより、押圧部6の連結プレート61がボルト89の先端部分へ取り付けられる。なお、本実施形態では、押圧本体60の連結プレート61への取付け部分及び連結プレート61のボルト89の先端部分への取付け部分には遊びを設けているので、押圧本体60は連結プレート61に対して首を振ることができ、そして連結プレート61はボルト89の先端部分に対して首を振ることができる。このため、本実施形態の押圧部6は、曲面を有する浴槽側壁に対しても確実に当接させることができる。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、押圧部6を当接部7へ向けて前進及び後退させるための移動装置8は、補助フレーム3の垂直部31へ回動可能に取り付けられたナット82と、ナット82を回動するためのハンドルノブ80と、そして先端部が押圧部6に連結されており且つナット82に螺合するボルト89とから構成されており、さらに所定の力未満ではハンドルノブ80からナット82へ回動力を伝達し、そして、所定の力以上ではハンドルノブ80からナット82への回動力の伝達を遮断するトルク伝達・遮断機構83を含まれている。
本実施形態では、移動装置8はナット82及びボルト89によって構成されているので、ボルト89の螺進退により押圧部6を当接部7に対して容易に近接又は離間させることができ、さらにその状態も確実に保持することができる。さらに、本実施形態では、ナット82は補助フレーム3の垂直部31へ回動可能に取り付けられており、ハンドルノブ80によってナット82を回転させることによりボルト89及びその先端に取り付けられた押圧部6が螺進退するので、ハンドルノブ80の位置は垂直部31に対して変わることがない。その結果、本実施形態では、浴槽用手摺り1からハンドルノブ80が突出するのを抑制できるので使用者にとって安全である。
また、本実施形態の移動装置8はトルク伝達・遮断機構83を備えているので、使用者がハンドルノブ80を回して押圧部6を当接部7へ向けて強力に押し込んでも浴槽側壁を破損することなく、本実施形態の浴槽用手摺り1を必要にして十分な押圧力(クランプ力)をもって浴槽側壁へ取り付けることができる。また、押圧部6の移動装置8へ上述のトルク伝達・遮断手段83を設けても、ハンドルノブ80の位置は補助フレーム3の垂直部31に対して変わることがない。
図13には、一部分解することにより、図12に示された本実施形態の移動装置8の中のトルク伝達ロック機構830の概要が示されている。
本実施形態の浴槽用手摺り1では、移動装置8が上述したようなナット及びボルト構造を有しているので、トルク伝達・遮断機構83へ、ハンドルノブ80の内部に設けられた第1の係止手段801とナット82の端部に設けられた第2の係止手段821とを係合手段831によって連結することにより、所定の力以上でも、常にハンドルノブ80からナット82へ回動力を伝達できるようにするトルク伝達ロック機構830が設けられている。
移動装置8において上記のトルク伝達・遮断機構830を備えていると、押圧部6を過剰に後退させた時などにナット82の回転がロックされることにより、押圧部6が前進するようにハンドルノブ80を正転させてもナット82へ回動力が伝達されず、いわゆる“ハンドルノブ80の空回り現象”を生じる場合がある。このため、本実施形態のようにトルク伝達・遮断機構83が上述したようなトルク伝達ロック機構830を備えていると、ハンドルノブ80の内部に設けられた第1の係止手段801とナット82の端部に設けられた第2の係止手段821とを係合手段831によって容易に連結することができるので、所定の力以上でも、常にハンドルノブ80からナット82へ回動力を伝達できるようになり、その結果、上述の“ハンドルノブ80の空回り現象”を容易に解消することができる。
図13によく示されているように、本実施形態では、第1の係止手段801をハンドルノブ80の内部に設けており、第2の係止手段821はナット82の端部に設けているので、第1の係止手段801及び第2の係止手段821へは、キャップ800を取り外すことによりハンドルノブ80の端部に設けた開口部から容易にアクセスできるので、ハンドルノブ80の外周部に係合手段をセットするスペースを確保する必要がなくなり、ハンドルノブ80もコンパクトに設計できる。
本実施形態では、第1の係止手段801を突起と突起の間に形成された凹部から構成し、第2の係止手段821はナット82の端部に設けた切り欠きからなる凹部から構成し、さらに第1の係止手段801と第2の係止手段821とを係合するための係合手段831をロックピンから構成すると、簡単な構造でトルク伝達ロック機構830を構成することができるので、トルク伝達ロック機構830の信頼性が向上する。
特にトルク伝達ロック機構830を上記のように構成すると、ロックピン831をハンドルノブ80の端部に設けた開口部からナット82の端部に向けて容易に挿入することができるようになるので、ロックピン831により、ハンドルノブ80の外周スペースを使うことなく、第1の係止手段の凹部801と第2の係止手段の凹部821とをナット82の回転軸方向から容易に係合することができる。
さらに、本実施形態のトルク伝達ロック機構830は、第2の係止手段821を設けるために、ナット82の外周方向からアクセスできるようにナット82に余分な軸長を設ける必要がないので、トルク伝達ロック機構830を備えたトルク伝達・遮断機構83においても、該トルク伝達・遮断機構83を備えた移動装置8においても、その軸長を抑えたコンパクトな構造とすることができる。
具体的には、トルク伝達・遮断機構83は、ハンドルノブ80の回転軸に対して直交する略円形のトルク伝達面840を備えており、そしてハンドルノブ80の回転と同調し且つハンドルノブ80の回転軸に沿ってスライド可能に内装される環状部材84と、トルク伝達面840に当接し且つナット82の回転軸に対して直交する略円形のトルク伝受面850および第2の係止手段821を有するフランジ820とを備えたナット82と、環状部材84のトルク伝達面840をナット82のトルク伝受面850へ向けて付勢する付勢手段86とから構成し、そしてトルク伝達面840およびトルク伝受面850は、それぞれに伝達される回動力が所定の力未満ではトルク伝達面840とトルク伝受面850とを相互に係止し、且つ伝達される回動力が所定の力以上ではトルク伝達面840とトルク伝受面850との間で滑りを生じさせる傾斜面を備えた凹部または凸部を含ませることにより構成されている。
トルク伝達・遮断機構83のトルク伝達面840の中心及びトルク伝受面850の中心は、ハンドルノブ80及びナット82の回転軸と同軸上に配置されている。またトルク伝達面840上及びトルク伝受面850上には、それぞれにトルク伝達面840又はトルク伝受面850から傾斜した斜面を含む凹部/凸部が形成されている。トルク伝達面840の傾斜面及びトルク伝受面850の傾斜面は、押圧部6を浴槽側壁へ押し込むようにハンドルノブ80を回す時、互いに対向する相手側の傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
そして、トルク伝達面840を有する環状部材84はハンドルノブ80及びナット82の回転軸に沿ってスライド可能に装着されており、且つ弾性体の付勢手段86によってトルク伝受面850に向けて付勢されている。付勢手段86は、コイルバネ、皿バネ、弾性樹脂材料など弾性変形可能なものであれば特に限定されることなく公知のものを使用することができる。
このため、トルク伝達面840の傾斜面とトルク伝受面850の傾斜面との間には常に一定の摩擦力が生じている。そしてハンドルノブ80からナット82へ伝達されるトルクが所定の値未満である時、トルク伝達面840の傾斜面はトルク伝受面850の傾斜面を乗り越えることができず、互いに噛み合った状態で係合している。そしてこの係合により、ハンドルノブ80のトルクがナット82へ伝達され、該ナット82と螺合するボルト89が補助フレーム3に取り付けられた押圧部6を浴槽側壁へ向けて押し付ける。
一方、ハンドルノブ80からナット82へ伝達されるトルクが所定の値以上になると、トルク伝達面840の傾斜面はトルク伝受面850の傾斜面との間に滑りが生じる。その結果、トルク伝達面840を備えた環状部材84は付勢手段86に抗して後退し、トルク伝達面840の傾斜面がトルク伝受面850の傾斜面を乗り越えることによって両者の係合が解除される。このため、この状態でハンドルノブ80を回してもハンドルノブ80はナット82に対して空回りするのみであり、ハンドルノブ80からナット82へトルクが伝達されることはない。
また、トルク伝達面840の傾斜面の後端にはトルク伝達面840に略直交する垂直面が形成されており、トルク伝受面850の傾斜面の後端にはトルク伝受面850に略直交する垂直面が形成されている。トルク伝達面840の垂直面とトルク伝受面850の垂直面は、補助フレーム3の押圧部6を浴槽の側壁から離間させるようにハンドルノブ80を回す時、互いに当接し係合する。そのため、ハンドルノブ80を、押圧部6を浴槽の側壁から離間させるように回す時は、伝達されるトルクの大きさに拠らず、常にハンドルノブ80とナット82は同調して回転する。
このように、トルク伝達・遮断機構83において、ナット82の回転と同調して回動するトルク伝受面850は、ナット82の外周面に取り付けられている。このため、トルク伝達・遮断機構83は、ナット82本体と一部重複して配置することができるので、トルク伝達・遮断機構83及び該トルク伝達・遮断機構83を備えたハンドルノブ80の補助フレーム3からの突出長さを抑えることができる。
また、本実施形態では、消耗部品の交換を容易にすることでトルク伝達・遮断機構83のメンテナンス性を向上させるために、トルク伝受面850は、ナット82の回転と同調するようにナット82へ着脱自在に装着された第2の環状部材85上に形成されている。
また、補助フレーム3の垂直部31へのナット82の着脱を容易にすることでトルク伝達・遮断機構83のメンテナンス性を向上させるため、ナット82には補助フレーム3の垂直部31に設けられた開口310へ挿通される胴部822を設け、第2の環状部材85の外径は開口310より大きな外径とすることにより、装着時は、ナット82の胴部822を開口310へ挿通し、第2の環状部材85が当接する垂直部31の側面とは反対側の側面から、ネジ881により、開口310より大きな外径を有するフランジ部材88とカバー880を第2の環状部材85と連結することで、ナット82を垂直部31へ回転自在に取り付けられるようにしている。
また、第2の環状部材85やフランジ部材88の消耗を防ぎ、ナット82の回転を円滑にするため、補助フレーム3の垂直部31は、樹脂製のワッシャー87を介して第2の環状部材85及びフランジ部材88によって挟み込まれている。
さらに、本実施形態では、ハンドルノブ80の胴部の端部には、胴部よりも拡径された拡径部802が設けられている。そして、ハンドルノブ80は、トルク伝達面840を有する環状部材84と同調して回転させられると共に、ナット82から離脱しないように、拡径部802よりも小さな内径を有する内部ハンドル固定カバー810及びハンドル固定カバー81によって補助フレーム3の垂直部31へ回転自在に取り付けられている。