JP2017033946A - リチウムイオン電池用電極材料用黒鉛材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
負極活物質に使用される黒鉛としては、天然黒鉛と人造黒鉛とがある。
(1)炭素原料粉体を黒鉛製ルツボに充填してアチソン炉で黒鉛化する(特許第3838618号公報(米国特許第6783747号明細書);特許文献4)。
(2)炭素原料粉体をピッチやポリマーなどのバインダーを用いて一定の形に成形し、アチソン炉で黒鉛化し、その後、成形体を解砕する(特許文献3)。
(3)炭素原料粉体を黒鉛材の容器に入れて、熱源としてのヒーターにより加熱して黒鉛化する。
(4)炭素原料粉体またはその成形体をヒーターによって加熱した空間の中を移動させる。
しかし、前記の(1)〜(4)で示した従来のリチウムイオン電池用負極のための人造黒鉛の黒鉛化方法には、以下のような問題が存在する。
(a)黒鉛材料からなるルツボ等の容器の消耗、るつぼからの不純物の混入。
(b)アチソン炉の詰め粉コークスからのコンタミによる汚染。
(c)アチソン方式の場合は、詰め粉コークスなど製品以外の材料をあわせて熱処理するので生産性が落ちる。
(d)成形体の場合は、黒鉛化後の解砕時の不純物の混入、粉体表面の劣化。
(e)ヒーターを用いる場合は、ヒーター部材が消耗する上に、3000℃以上の高温にすることは難しいこと。
(f)ヒーターを用いる場合は、不活性ガスの使用によるコストアップ。
従って、本発明の課題は、不純物の混入が少なく、安定性に優れた高品質のリチウムイオン二次電池用負極のための黒鉛材料を生産性よく低コストで製造できる方法を提供することにある。
[1]リチウムイオン電池用電極材料の製造方法であって、炭素材料に直接電流を流すことにより発熱させて黒鉛化する工程を含み、黒鉛化前の炭素材料1が密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗値が0.4Ωcm以下で、安息角が20°以上50°以下、レーザー回折法により測定した体積基準の粒子径分布におけるD90が120μm以下であり、黒鉛化後の炭素材料2がX線回折法による(002)面の平均面間隔d002が0.3354nm以上0.3450nm以下であるリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[2](前記黒鉛化後の炭素材料2を密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗)/(前記黒鉛化前の炭素材料1を密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗)≦0.5である前記1に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[3]前記黒鉛化前の炭素材料1のレーザー回折法により測定した体積基準の粒子径分布におけるD50が30μm以下である前記1または2に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[4]前記黒鉛化前の炭素材料1の安息角が30°以上50°以下、緩め嵩密度と固め嵩密度から算出される圧縮率((固め嵩密度−緩め嵩密度)×100/緩め嵩密度)が20%以上50%以下である前記1乃至3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[5]前記黒鉛化前の炭素材料1が、有機系炭素原料を800℃以上1500℃以下で熱処理してなるものである前記1乃至4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[6]前記熱処理の前に前記有機系炭素原料の粉砕処理を行う前記5に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[7]前記有機系炭素材料が、不活性雰囲気下で300℃から1200℃まで加熱した際、この温度領域における加熱減量分が5質量%以上20質量%以下である前記5または6に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[8]前記有機系炭素原料中の硫黄分が2質量%以下である前記5乃至7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[9]前記有機系炭素原料が、石油ピッチ、石炭ピッチ、石炭コークス、石油コークスおよびこれらの混合物から選ばれる1種以上である前記5乃至8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[10]前記黒鉛化前の炭素材料1が、ホウ素系化合物および/または珪素系化合物を10〜100000質量ppm含む前記1乃至9のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[11]黒鉛化の工程において、セラミックスレンガ製であって、上方が開口した直方体状の炉体を用いる前記1に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[12]前記炉体が、開口部方向から見て長手方向の長さが短手方向の長さの2倍以上である前記11に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[13]前記炉体の長手方向の両端面内側に通電用の電極を配置させる前記11または12に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
[14]空気と接する面に酸素をバリヤする層を設ける前記11乃至13のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
1.リチウムイオン電池用電極材料のための黒鉛材料の製造方法
(1)黒鉛化前の炭素材料1の物性、製法
本発明では炭素材料1(炭素粉体)を黒鉛化して黒鉛材料を製造する。
炭素材料の原料としては、特に制限はないが、不活性雰囲気下で300℃から1200℃まで加熱した際、この温度領域における加熱減量分が5質量%以上20質量%以下である有機系炭素原料が好ましく使用できる。加熱減量分が5質量%未満になると黒鉛化後の粒子形状が板状になりやすい。また、粉砕面(エッジ部分)が露出しやすく比表面積が大きくなるため、負極として用いた場合に電解液との副反応が多くなる。逆に20質量%を超えると黒鉛化後の粒子同士の結着が多くなり、収率に影響する。有機系炭素原料の加熱減量分が上記範囲にあることによって、得られる黒鉛材料の表面が安定化し、負極として用いた場合に電解液との副反応が減少する。この理由は300〜1200℃の加熱で揮発する成分のために、露出したエッジ部分の結晶が、炭化後黒鉛化することにより再構成し安定化され、また粒子表面もなめらかになることによると考えられる。
硫黄の量は試料数十mgを専用容器に秤量し、高周波加熱(助燃剤としてW1.5g、及びSn0.2g)により分解した後、鉄鋼用炭素標準試料を用い、炭素硫黄同時測定装置(堀場製作所製EMIA−920V)により測定する。
有機系炭素原料を粉砕する方法に特に制限はないが、例えば、公知のジェットミル、ハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、振動ミル等を用いて粉砕する。粉砕はできるだけ熱履歴が低い状態で行うことが好ましい。粉砕によって熱が加わると前記の300℃〜1200℃で揮発する成分が揮発し、黒鉛材料の表面が安定化し、負極として用いた場合に電解液との副反応が減少するとの効果が得られなくなるおそれがある。
低温熱処理により炭素材料の硬さも増す。そのため粉砕を先に行うことが、粉砕方式の自由度や生産性の観点から好ましい。
D50(平均粒度)は30μm以下になるように分級することが好ましく、さらに好ましくは4μm以上25μm以下になるように分級する。平均粒度が大きいと、電解液との安定性が増す、塗工しやすいなどのメリットを有するが、逆に、高電流特性は悪い方向に進み、電極密度が上がりにくくなる。逆に小さいと充放電時に副反応が起きやすくなる。
粉体の粒度はレーザー散乱・回折式粒度分布測定装置(CILAS)にて測定することができる。
安息角はタップデンサーを用いて測定することができる。具体的には、セイシン企業製KYT−4000を用い、50gの測定用サンプルを装置上部の専用投入口より自由落下させて、付属のテーブル上に三角錐型に堆積させ、次いで前記テーブルと三角錐の立ち上がり角度を分度器により測定し、それを安息角とすることができる。
緩め嵩密度は、高さ20cmから試料100gをメスシリンダーに落下させ、振動を加えずに体積と質量を測定して得られる密度である。また、固め嵩密度(タップ密度)は、カンタクローム製オートタップを使用して400回タッピングした100gの粉の体積と質量を測定して得られる密度である。
これらはASTM B527およびJIS K5101−12−2に準拠した測定方法であるが、タップ密度測定におけるオートタップの落下高さは5mmとした。
黒鉛化は、上記の炭素材料1に直接電流を流して発熱させることにより行う。
炭素材料に直接電流を流す方法としては、例えば、セラミックスレンガ製であって、上方が開口した直方体状の炉体を用いて行うことができる。この炉体は、開口部方向から見て長手方向の長さを短手方向の長さの2倍程度あるいはそれ以上とし、前記の長手方向の両端面内側に通電用の電極を配置させる。この炉に炭素材料を入れ、通電による発熱によって黒鉛化する。
このような炉体構造を採用することにより、炭素材料に熱が均一に加わるため、黒鉛化の際に凝集が生じないとの利点を有する。また、温度分布が均一で、不純物揮発のトラップ部分がないという理由から不純物の少ない黒鉛材料が得られる。
黒鉛化処理温度の下限は、通常2000℃、好ましくは2500℃、さらに好ましくは2900℃、もっとも好ましくは3000℃である。黒鉛化処理温度の上限は特に限定されないが、高い放電容量が得られやすいという観点から、好ましくは3200℃である。
前記炭素材料を黒鉛化してなる黒鉛材料(黒鉛化後の炭素材料)は、ラマン分光スペクトルで測定される1360cm-1の付近にあるピーク強度(ID)と1580cm-1の付近にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IG(R値)が0.01以上0.2以下であることが好ましい。R値が0.2より大きいと表面に活性の高いエッジ部分が多く露出して充放電時に副反応が多く発生しやすくなる。一方0.01未満ではリチウムの出入りの障壁が高くなり、電流負荷特性が低下しやすくなる。レーザーラマンR値は、日本分光製NRS3100を用いて、励起波長532nm、入射スリット幅200μm、露光時間15秒、積算2回、回折格子600本/mmの条件で測定する。
これらは前記と同様の方法により測定する。
鉄含量(残鉄量)は、試料50〜100mgを秤量して硫酸を加えて加熱することにより分解し、放冷後に硝酸を加えて加熱分解を行い、これを溶液が透明になるまで繰り返し、得られた液体を50mlに定容し、さらに10倍に希釈後ICP質量分析を行うことにより測定する。
スラリーは、前記黒鉛材料とバインダーとを含む。
スラリーは、黒鉛材料とバインダーとを混練することによって得られる。混錬には、リボンミキサー、スクリュー型ニーダー、スパルタンリューザー、レディゲミキサー、プラネタリーミキサー、万能ミキサー等の公知の装置が使用できる。電極用ペーストは、シート状、ペレット状等の形状に成形することができる。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、SBR(スチレンブタジエンラバー)等のゴム系など公知のものが挙げられる。バインダーの使用量は黒鉛材料100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜20質量部がさらに好ましい。
スラリーは、導電助剤としてアセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック、気相法炭素繊維などのカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、黒鉛微粉などの導電性カーボンを含んでいてもよい。前記導電助剤の配合量は特に限定されないが、黒鉛材料100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましい。
混練する際に溶媒を用いることができる。溶媒としては、各々のバインダーに適した公知のもの、例えばフッ素系ポリマーならトルエン、N−メチルピロリドン等;SBRなら水等;その他にジメチルホルムアミド、イソプロパノール等が挙げられる。溶媒として水を使用するバインダーの場合は、増粘剤を併用することが好ましい。溶媒の量は集電体に塗布しやすいような粘度となるように調整される。
リチウムイオン電池用電極は前記スラリーを成形してなる。電極は、例えば前記スラリーを集電体上に塗布し、乾燥し、加圧成形することによって得られる。
集電体としては、例えばアルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス等の箔、メッシュなどが挙げられる。スラリーの塗布厚は、通常20〜150μmである。塗布厚が大きくなりすぎると、規格化された電池容器に電極を収容できなくなることがある。スラリーの塗布方法は特に制限されず、例えばドクターブレードやバーコーターなどで塗布後、ロールプレス等で成形する方法等が挙げられる。
加圧成形法としては、ロール加圧、プレス加圧等の成形法を挙げることができる。加圧成形するときの圧力は1〜3t/cm2程度が好ましい。電極の電極密度が高くなるほど体積あたりの電池容量が通常大きくなるが、電極密度を高くしすぎるとサイクル特性が通常低下する傾向にある。前記スラリーを用いると電極密度を高くしてもサイクル特性の低下が小さいので、高い電極密度の電極を得ることができる。前記スラリーを用いて得られる電極の電極密度は、1.2〜1.9g/cm3である。
リチウムイオン二次電池は、正極と負極とが電解液または電解質の中に浸漬された構造を有する。上記の電極はリチウムイオン二次電池の負極に使用される。
リチウムイオン二次電池の正極には、正極活物質として、通常、リチウム含有遷移金属酸化物が用いられ、好ましくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物であって、リチウムと遷移金属元素のモル比が0.3乃至2.2の化合物が用いられ、より好ましくはV、Cr、Mn、Fe、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物であって、リチウムと遷移金属のモル比が0.3乃至2.2の化合物が用いられる。なお、主として存在する遷移金属に対し30モルパーセント未満の範囲でAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを含有していても良い。上記の正極活物質の中で、一般式LixMO2(MはCo、Ni、Fe、Mnの少なくとも1種、x=0〜1.2。)、またはLiyN2O4(Nは少なくともMnを含む。y=0〜2。)で表されるスピネル構造を有する材料の少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、上記以外の電池構成上必要な部材の選択についてはなんら制約を受けるものではない。
実施例及び比較例において、d002等は、「発明を実施するための形態」に詳述した方法により測定する。また、その他の物性の測定方法は以下の通りである。
示差熱−熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメント社製TGDTAw6300)を用い、測定サンプル約15mgを正確に測りとり、プラチナ製パンにのせて装置にセットし、アルゴンガスを200ml/分で流し、昇温速度10℃/分で昇温して、300℃〜1200℃の範囲における質量変化を測定した。リファレンスとして和光純薬製αアルミナを1500℃で3hrあらかじめ処理し、揮発分を除去したものを用いた。
試料500gを振動ミルで28メッシュ以下に粉砕した。この試料を篩い分けて、28〜60メッシュ60g、60〜200メッシュ32g、200メッシュ以下8gの割合で混合し、全量を100gにした。この配合試料100gをステンレス容器に入れ、バインダーピッチ25gを加え、125℃のオイルバスで20分間加熱し均一に混合した。混合物を冷却し、振動ミルで粉砕し、全量を28メッシュ以下にした。該試料30gを125℃の加圧成形機に入れ、ゲージ圧450kg/cm2で5分間加圧し、成形した。成形品を磁性ルツボに入れ、焼成炉で室温から1000℃まで5時間で昇温し、1000℃で1時間保持して冷却した。この焼成品を精密切断機で4.3×4.3×20.0mmに切断し、テストピースを得た。本テストピースをTMA(熱機械分析装置)で30〜100℃の熱膨張測定を行い、CTEを算出した。TMAとしては、セイコー電子製TMA/SS350を用いた。
レーザー散乱・回折式 粒度分布測定装置としてCILASを用いて、体積基準の平均粒子径(D50)および粒子径(D90)を求めた。
電流電圧端子が側面に設置された樹脂製容器に試料10gを充填し、縦方向に下に向かって荷重をかけ、試料を圧縮しながら100mAの電流を流して試料に流れる電流の抵抗値を測定した。試料の密度が1.4g/cm3となった時点で読み取った抵抗を圧密粉体抵抗とした。
圧縮率は(固め嵩密度−緩め嵩密度)×100/緩め嵩密度(%)であり、緩め嵩密度は、高さ20cmから試料100gをメスシリンダーに落下させ、振動を加えずに体積と質量を測定して得られる密度であり、固め嵩密度(タップ密度)は、カンタクローム製オートタップを使用して400回タッピングした100gの粉の体積と質量を測定して得られる密度である。
これらはASTM B527およびJIS K5101−12−2に準拠した測定方法であるが、タップ密度測定におけるオートタップの落下高さは5mmとした。
試料数十mgを専用容器に精秤し、高周波加熱(助燃剤としてW1.5gおよびSn0.2g)により分解した後、鉄鋼用炭素標準試料を用い、炭素硫黄同時測定装置(堀場製作所製EMIA―920V)により測定した。
タップデンサー(セイシン企業製KYT−4000)を用い、50gの測定用サンプルを装置上部の専用投入口より自由落下させて、付属のテーブル上に三角錐型に堆積させ、次いで前記テーブルと三角錐の立ち上がり角度を分度器により測定し、それを安息角とした。
比表面積測定装置NOVA−1200(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて、一般的な比表面積の測定方法であるBET法により測定した。
粒子のアスペクト比は、シスメックス製のFPIA3000を用い、画像解析で測定した。測定点数は3000点以上、好ましくは30000点以上、さらに好ましくは50000点以上測定し、算出した平均値を使用した。
日本分光製NRS3100を用いて、励起波長532nm、入射スリット幅200μm、露光時間15秒、積算2回、回折格子600本/mmの条件でラマン分光スペクトルを測定し、1360cm-1の付近にあるピーク強度(ID)と1580cm-1の付近にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGをR値とした。
試料50〜100mgを秤量して硫酸を加えて加熱することにより分解し、放冷後に硝酸を加えて加熱分解を行い、溶液が透明になるまで繰り返した。この操作によって得た液体を50mlに定容し、さらに10倍に希釈後ICP質量分析により残鉄量を測定した。
a)スラリー作製:
黒鉛材料1質量部に呉羽化学社製KFポリマーL1320(ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を12質量%含有したN−メチルピロリドン(NMP)溶液品)0.1質量部を加え、プラネタリーミキサーにて混練し、主剤原液とした。
主剤原液にNMPを加え、粘度を調整した後、高純度銅箔上でドクターブレードを用いて250μm厚に塗布した。これを120℃で1時間真空乾燥し、18mmφに打ち抜いた。打ち抜いた電極を超鋼製プレス板で挟み、プレス圧が電極に対して約1×102〜3×102N/mm2(1×103〜3×103kg/cm2)となるようにプレスした。その後、真空乾燥器で120℃、12時間乾燥して、評価用電極とした。
下記のようにして3極セルを作製した。なお以下の操作は露点−80℃以下の乾燥アルゴン雰囲気下で実施した。
ポリプロピレン製のねじ込み式フタ付きのセル(内径約18mm)内において、上記(2)で作製した銅箔付き炭素電極と金属リチウム箔をセパレーター(ポリプロピレン製マイクロポ−ラスフィルム(セルガ−ド2400))で挟み込んで積層した。さらにリファレンス用の金属リチウムを同様に積層した。これに電解液を加えて試験用セルとした。
EC(エチレンカーボネート)8質量部及びDEC(ジエチルカーボネート)12質量部の混合液に、電解質としてLiPF6を1モル/リットル溶解した。
電流密度1.0mA/cm2(0.5C相当)で定電流低電圧充放電試験を行った。
充電(炭素へのリチウムの挿入)はレストポテンシャルから0.002Vまで1.0mA/cm2でCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行った。次に0.002VでCV(コンスタントボルト:定電圧)充電に切り替え、電流値が25.4μAに低下した時点で停止させた。
放電(炭素からの放出)は1.0mA/cm2(0.5C相当)でCC放電を行い、電圧1.5Vでカットオフした。
300℃〜1200℃のTG測定による加熱減量分が12.5質量%の石油系生コークス(非針状コークス)をホソカワミクロン製バンタムミルで粉砕した。日清エンジニアリング製ターボクラシファイアーで気流分級し、D50が16.0μmの有機系炭素原料を得た。ついで、この粉砕された有機系炭素原料を、日本碍子製ローラーハースキルンで窒素ガスを流しながら、1000℃で処理し、炭素材料1を得た。この炭素材料1を密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗は0.30Ωcm、安息角は36°であった。
セラミックレンガで縦500mm、横1000mm、深さ200mmの炉を作り、内側の両端面に450×180mm、厚み20mmの電極板を設置した。その炉の中に、上記炭素材料1を詰め込み、窒素ガス投入口と排気口が設けられた蓋をした。トランスを設置し、窒素ガスを流しながら、電極板間に約5時間電流を流すことで加熱し、炭素材料1を黒鉛化した。最高温度は3200℃であった。
得られた黒鉛材料(炭素材料2)の各種物性および電池評価結果を、有機系炭素原料および炭素材料1の物性と共に表1にまとめた。また、図1にSEM写真を示す。
d002および放電容量から、炉内の広範囲に渡って黒鉛結晶化が進んでいることがわかる。すなわち、本黒鉛化方法では、黒鉛ルツボ容器を用いるものであって製品とならない詰め粉が炉内に存在する従来法と同様以上に、3000℃以上に短時間で熱処理され全粉体が効率的に黒鉛化されていることが確認された。また、放電容量、初期効率ともに良好な電池を得ることができた。
実施例1と同様の石油系生コークス(非針状コークス)と300℃〜1200℃のTG測定による加熱減量分が11.5質量%の石油系生ニードルコークスを1:1で混合し、ホソカワミクロン製バンタムミルで粉砕した。日清エンジニアリング製ターボクラシファイアーで気流分級し、D50が15.5μmの有機系炭素原料を得た。ついで、この粉砕された有機系炭素原料を、日本碍子製ローラーハースキルンで、窒素ガスを流しながら、1300℃で処理し、炭素材料1を得た。この炭素材料1を密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗は0.20Ωcm、安息角は42°であった。
この炭素材料1を実施例1と同様の方法で黒鉛化し、得られた黒鉛材料(炭素材料2)の各種物性および電池評価結果を、有機系炭素原料および炭素材料1の物性と共に表1にまとめた。実施例1に比較し、d002が小さく、高容量であるが、初期効率がやや低かった。
黒鉛化時にB4Cを1000質量ppm加えた以外は、実施例1と同様に操作をし、黒鉛材料(炭素材料2)を得た。得られた黒鉛材料(炭素材料2)の各種物性および電池評価結果を、有機系炭素原料および炭素材料1の物性と共に表1にまとめた。実施例1に比較し、黒鉛化助触媒を添加したことによりd002が小さく高容量であるが、初期効率がやや低かった。
実施例1と同様の方法で得られた炭素材料1を蓋つき黒鉛ルツボに充填し、アチソン炉にて3000℃で黒鉛化処理した。得られた黒鉛材料(炭素材料2)の各種物性および電池評価結果を、有機系炭素原料および炭素材料1の物性と共に表1にまとめた。
実施例1と比較して、ほぼ同等の物性であるが、鉄残量が多かった。
実施例1と同様の石油系生コークス(非針状コークス)をホソカワミクロン製バンタムミルで粉砕した。日清エンジニアリング製ターボクラシファイアーで気流分級し、D50が16.0μmの有機系炭素原料を得た。ついで、この粉砕された有機系炭素原料を、日本碍子製ローラーハースキルンで、窒素ガスを流しながら、700℃で処理し、炭素材料1を得た。この炭素材料1を密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗は0.60Ωcm、安息角は34°であった。
この炭素材料1を実施例1と同様の方法で黒鉛化し、得られた黒鉛材料(炭素材料2)の各種物性および電池評価結果を、有機系炭素原料および炭素材料1の物性と共に表1にまとめた。実施例1に比較し、比表面積が高く、d002が大きく、容量が低いことから、黒鉛化が十分に行われてないことが理解できる。
Claims (14)
- リチウムイオン電池用電極材料のための黒鉛材料の製造方法であって、炭素材料に直接電流を流すことにより発熱させて黒鉛化する工程を含み、黒鉛化前の炭素材料1が密度1.4g/cm3に圧縮したときの圧密粉体抵抗値が0.4Ωcm以下で、安息角が20°以上50°以下、レーザー回折法により測定した体積基準の粒子径分布におけるD90が120μm以下であり、黒鉛化後の炭素材料2がX線回折法による(002)面の平均面間隔d002が0.3354nm以上0.3450nm以下であり、
ラマン分光スペクトルで測定される1360cm -1 の付近にあるピーク強度(I D )と1580cm -1 の付近にあるピーク強度(I G )との強度比I D /I G (R値)が0.01以上0.2以下である黒鉛材料の製造方法。 - (前記黒鉛化後の炭素材料2を密度1.4g/cm 3 に圧縮したときの圧密粉体抵抗)/(前記黒鉛化前の炭素材料1を密度1.4g/cm 3 に圧縮したときの圧密粉体抵抗)≦0.5である請求項1に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記黒鉛化前の炭素材料1のレーザー回折法により測定した体積基準の粒子径分布におけるD50が30μm以下である請求項1または2に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記黒鉛化前の炭素材料1の安息角が30°以上50°以下、緩め嵩密度と固め嵩密度から算出される圧縮率((固め嵩密度−緩め嵩密度)/緩め嵩密度)が20%以上50%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記黒鉛化前の炭素材料1が、有機系炭素原料を800℃以上1500℃以下で熱処理してなるものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記熱処理の前に前記有機系炭素原料の粉砕処理を行う請求項5に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記有機系炭素材料が、不活性雰囲気下で300℃から1200℃まで加熱した際、この温度領域における加熱減量分が5質量%以上20質量%以下である請求項5または6に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記有機系炭素原料中の硫黄分が2質量%以下である請求項5乃至7のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記有機系炭素原料が、石油ピッチ、石炭ピッチ、石炭コークス、石油コークスおよびこれらの混合物から選ばれる1種以上である請求項5乃至8のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記黒鉛化前の炭素材料1が、ホウ素系化合物および/または珪素系化合物を10〜100000質量ppm含む請求項1乃至9のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 黒鉛化の工程において、セラミックスレンガ製であって、上方が開口した直方体状の炉体を用いる請求項1に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記炉体が、開口部方向から見て長手方向の長さが短手方向の長さの2倍以上である請求項11に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 前記炉体の長手方向の両端面内側に通電用の電極を配置させる請求項11または12に記載の黒鉛材料の製造方法。
- 空気と接する面に酸素をバリヤする層を設ける請求項11乃至13のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
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