JP2017033237A - 通信システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センサ装置50の複数のセンサ素子51、52は、ある物理量についてのセンサ値Trq1、Trq2を同一の検出対象から検出しデジタル値で出力する。データ量削減部53は、「複数のセンサ素子による複数のセンサ値同士の差分」、又は、「異なるタイミングで検出された複数のセンサ値同士の差分」を含む情報を、「センサ値そのもののデータ量に対しデータ量が削減されたリデューストデータ」として算出する。送信回路54は、リデューストデータを含むセンサ信号Sをデジタル信号として送信する。マイコン71は、センサ装置50から送信されたリデューストデータを含むセンサ信号Sを受信する受信回路72を有する。これにより、複数のセンサ値の生データを送信する場合に比べ通信データ量を削減することができる。
【選択図】図1
Description
また、特許文献1には、冗長的に設けられた二つのセンサから共通の信号線を経由して制御装置にセンサ信号が送信される構成が開示されている。
センサ装置は、複数のセンサ素子、データ量削減部、及び、送信回路を有する。
複数のセンサ素子は、ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象から検出しデジタル値で出力する。なお、アナログ信号を出力する素子と、回路上のA/D(アナログ/デジタル)変換部とを合わせて、「センサ素子」を構成すると解釈してもよい。
データ量削減部は、「複数のセンサ素子による複数のセンサ値同士の差分」、又は、「異なるタイミングで検出された複数のセンサ値同士の差分」を含む情報を、「センサ値そのもののデータ量に対しデータ量が削減されたリデューストデータ」として算出する。
送信回路は、リデューストデータを含むセンサ信号をデジタル信号として送信する。
マイコンは、センサ装置から送信されたリデューストデータを含むセンサ信号を受信する受信回路を有する。
なお、本発明におけるセンサ信号としては、例えば、米国自動車技術会規格SAE−J2716に準拠した信号を用いることができる。
ここで、付加情報は異常検出に使用可能であればよく、実際に異常検出に用いられることを要件としない。また、例えば複数のセンサ素子の出力特性がクロス特性の場合、平均値等の演算に用いられる「センサ値」には、所定の定数からセンサ値を差し引いた「センサ反転値」が含まれるものとして解釈する。
(a)特定のセンサ素子による異なるタイミングでの複数のセンサ値同士の時間差分
(b)複数のセンサ素子による異なるタイミングでの複数のセンサ値の平均値同士の時間差分
(c)複数のセンサ素子による複数のセンサ値同士の差分であるセンサ差分についての異なるタイミングでのセンサ差分同士の時間差分
[共通のシステム構成]
最初に、各実施形態の通信システムに共通の構成について、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態の通信システムは、車両の電動パワーステアリング装置に適用される。
図2に、電動パワーステアリング装置90を含むステアリングシステム100の全体構成を示す。なお、図2に示す電動パワーステアリング装置90はコラムアシスト式であるが、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置にも同様に適用可能である。
ハンドル91にはステアリングシャフト92が接続されている。ステアリングシャフト92の先端に設けられたピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が設けられる。運転者がハンドル91を回転させると、ハンドル91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によりラック軸97の直線運動に変換され、ラック軸97の変位量に応じた角度に一対の車輪98が操舵される。
トルクセンサAssy93は、ステアリングシャフト92の途中に設けられ、ハンドル91側の入力軸921と、ピニオンギア96側の出力軸922との捩じれ角に基づき、操舵トルクを検出する。ECU70は、トルクセンサAssy93から取得した操舵トルクに基づいて、モータ80が出力するアシストトルクについてのトルク指令を演算する。そして、モータ80が指令通りのトルクを出力するように通電を制御する。
モータ80が発生したアシストトルクは、減速ギア94を介してステアリングシャフト92に伝達される。
なお、現実には、センサ装置50には、動作電源や共通の基準電位部が必要であるが、それらの図示や説明を省略する。例えば、センサ装置50の動作電源をECU70に設けた電源供給回路から供給するようにしてもよい。その場合、センサ装置50とECU70とは、信号線Lsに加え、電源供給線及び基準電位線の3本の線で接続される。
二つのセンサ素子51、52は、ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象からそれぞれ検出する。例えば、センサ素子51、52として磁気検出素子であるホール素子を用いる場合、ホール素子を含むパッケージであるホールICがセンサ装置50に相当する。トルクセンサAssy93は、センサ装置50に加え、更にトーションバー、多極磁石、磁気ヨーク、集磁リング等を含んで構成される。トルクセンサAssy93の一般的な構成は周知であるため、図示を省略する。
ここで、センサ素子51、52には、元の検出信号がアナログ値の場合におけるサンプルホールド及びA/D(アナログ/デジタル)変換機能が含まれる。例えば、アナログ信号を出力する素子と回路上のA/D変換部とを合わせて、本実施形態の「センサ素子」を構成するとみなす。したがって、センサ素子51、52は、センサ値Trq1、Trq2をデジタル値として出力する。
以下、センサ素子51、52が出力するセンサ値Trq1、Trq2そのもののデータを「生データ」といい、データ量削減部53において、生データに対しデータ量が削減されたデータを「リデューストデータ」という。例えば、12ビットの生データから1ビットを削減して11ビットのデータを生成した場合、11ビットのデータを「リデューストデータ」という。なお、「リデューストデータ」は、削減した方の1ビットのデータを指すものではない。
また、本実施形態では、センサ信号として、米国自動車技術会規格SAE−J2716に準拠したニブル信号、いわゆるSENT(シングルエッジニブル伝送)方式の信号が用いられる。
図3に例示するセンサ信号は、一つのフレームFrにて、同期信号、ステータス信号、第1データ信号、第2データ信号、CRC信号及びエンド信号からなり、この順で一連の信号として出力される。
ステータス信号、第1データ信号、第2データ信号、サブデータ信号、CRC信号の大きさは、順に、例えば1ニブル(4ビット)、3ニブル(12ビット)、3ニブル(12ビット)、1ニブル(4ビット)である。
データ信号の大きさが3ニブルであるということは、最大で「000」〜「FFF」の212通り(4096通り)のデータ値が送信可能であることを意味する。
受信回路72は、送信回路54から信号線Lsを経由して送信されたセンサ信号Sを受信し、二つのデータdata1、data2を取得する。
受信データ処理部73は、必要に応じて、データdata1、data2のうちリデューストデータからセンサ値を復元したり、制御演算用のデータと異常検出用のデータとを判別したりする。ECU70の受信データ処理部73で演算されるトルク値を「ECU演算トルク値Etrq」という。ECU演算第1トルク値Etrq1及びECU演算第2トルク値Etrq2は、それぞれ、第1センサ値Trq1及び第2センサ値Trq2に相当する。
電動パワーステアリング装置90に適用される本実施形態では、例えばセンサ値Trq1、Trq2を時間微分することにより、運転者によるハンドル操作の緩急に関する情報が得られる。マイコン71の演算処理部74は、このような運転者の操舵特性に応じて、モータ80が出力するアシスト量を演算する。
そして、マイコン71は、アシスト量(トルク指令)に基づいて、周知の電流フィードバック制御等によりインバータのスイッチング動作を操作し、モータ80の巻線に通電される電力を制御する。その結果、モータ80は、所望のアシストトルクを出力する。
なお、他の実施形態では、クロス特性に限らず、例えば二つのセンサ素子が同一の出力特性を有するようにしてもよい。
また、図4に示す、実トルクが−10[Nm]〜+10[Nm]の範囲における第1センサ値Trq1及び第2センサ値Trq2を、10進数表記、及び、3ニブルに対応する16進数表記で表2に記す。
この範囲で、実トルクの増加につれて、第1センサ値Trq1は0から4095まで線形で増加し、第2センサ値Trq2は4095から0まで線形で減少する。第1センサ値Trq1の最大値(4095)に対応する実トルクは、+10[Nm]よりも1LSB分小さくなる。また、第2センサ値Trq2の最大値(4095)に対応する実トルクは、−10[Nm]よりも1LSB分大きくなる。
Trq1+Trq2=4096 ・・・(1.1)
式(1.1)を変形すると、式(1.2)が得られる。
Trq1=4096−Trq2 ・・・(1.2)
式(1.2)の右辺に記載された「所定の定数(4096)からセンサ値Trq2を差し引いた値」を「第2センサ反転値」という。クロス特性では、第1センサ値Trq1と第2センサ反転値(4096−Trq2)とは理想的に等しい。
ところで、電動パワーステアリング装置90のように、高周期での演算が必要とされる装置に適用される通信システムでは、センサ信号の送受信に必要な通信時間の短縮が課題となる。特に、複数のセンサ値を送受信する構成では、通信情報量が増大するため、通信時間を短縮する要求がより高くなる。
まず、基準技術において二つのセンサ値Trq1、Trq2を受信したマイコン71がセンサ値をどのように用いるかという点に着目して場合分けする。
ΔTrq=4096−Trq2−Trq1 ・・・(1.3)
センサ差分の絶対値|ΔTrq|が異常検出閾値X未満のとき、すなわち式(1.4)が成立するとき、マイコン71は、センサ素子51、52が正常であると判定する。
−X<(4096−Trq2−Trq1)<X ・・・(1.4)
一方、センサ差分の絶対値|ΔTrq|が異常検出閾値X以上のとき、すなわち式(1.4)が成立しないとき、マイコン71は、センサ素子51、52のいずれかが異常であると判定する。
ここで、正常なセンサ差分ΔTrqが取り得る整数値は、−X〜−1、0、1〜Xのいずれかであり、値の数Nvは、式(1.5)で表される。
Nv=2X−1 ・・・(1.5)
そこで、センサ差分ΔTrqを用いる異常検出に必要なデータ量が12ビットより小さい場合、先にセンサ装置50でセンサ差分ΔTrqを演算してからマイコン71に送信することにより、通信データ量を削減しつつ異常検出が実現可能である点に注目する。
いずれにせよ、二つのセンサ値Trq1、Trq2の情報は、基本的に対等に取得される。ただし、情報が対等に使用されるかどうかは問わない。
第4〜第6実施形態の方式は、第3実施形態による時間差分データと、「時間差分データに対応する一つ又は複数のセンサ素子について、ある時点でセンサ素子により検出された物理量(トルク)を表す独立時データ」とを随時切り替えつつ送信するものである。
(第1実施形態)
第1実施形態によるデータ量削減について、図5を参照して説明する。
図5以下では、センサ信号に含まれる二つの通信データについて、基準技術の通信方式と、各実施形態によりデータ量を削減した通信方式とを比較して示す。基準技術の通信方式では、二つのセンサ値Trq1、Trq2の計24ビットの生データが通信される。
また、二つの通信データのうちもう一つは、センサ素子51、52の異常を検出するための「付加情報」が送信される。第1、第2実施形態では、異常検出のための付加情報がマイコン71でなくセンサ装置50内で演算されることを特徴とする。
具体例として、式(1.4)の異常検出閾値Xを1023に設定する場合を想定する。この想定は、異常検出閾値Xを条件に応じて切り替えるにせよ、センサ値Trq1、Trq2を補正してから診断するにせよ、センサ差分の絶対値|ΔTrq|が1023未満のとき、センサ素子51、52が正常であると判定することを意味する。
すると、異常検出閾値Xが1023であるとは、センサ差分ΔTrqが「±1023未満」すなわち「±1022以下」のとき正常と判定されることを意味する。また、センサ差分ΔTrqが「±1023未満」の範囲は、実トルク差では「±約5[Nm]未満」の範囲に対応する。
例えば、ΔTrq≧1023のとき、異常表示値「1023」が送信される。また、ΔTrq≦(−1023)のとき、異常表示値「−1023」又は「−1024」が送信される。或いは、ΔTrq=(−1023)のとき、異常表示値「−1023」が送信され、ΔTrq≦(−1024)のとき、異常表示値「−1024」が送信されてもよい。
なお、同様の考え方で、異常検出閾値Xを511とすれば基準技術に比べ2ビット削減可能であり、異常検出閾値Xを255とすれば基準技術に比べ3ビット削減可能となる。ただし、異常検出閾値Xを低く設定し過ぎるとロバスト性が低下する点に注意を要する。
Etrq2=4096−(Trq1+ΔTrq) ・・・(1.6)
一方、センサ差分ΔTrqが異常である場合、異常であることを示す値が送信されるのみであり、実際のセンサ差分ΔTrqの値は送信されない。したがって、マイコン71の受信データ処理部73は、ECU演算第2トルク値Etrq2を演算することができないため、基準技術に対し1ビット分の情報落ちが発生する。
|ΔTrq|=|4096−Trq2−Trq1| ・・・(1.7)
式(1.4)と同様に異常検出閾値Xを1023とし、0≦|ΔTrq|<1023の範囲を正常とすると、正常値は1023通りとなる。また、|ΔTrq|≧1023のとき送信される異常表示値を1通り(例えば「1023」)に設定すれば、付加情報の値の数は、計1024通りとなる。したがって、付加情報の通信に必要なデータ量は10ビットとなり、図5(a)の11ビットからさらに1ビット削減することができる。つまり、基準技術からの削減可能データ量は2ビットとなる。
そこで、図5(c)に示す方式では、システムが許容することを前提として付加情報の分解能をセンサ値Trq1、Trq2の分解能よりも低下させる。すなわち、付加情報のLSBを(10/2048)[Nm]よりも粗く設定する。
表3に、付加情報のLSB、付加情報としてセンサ差分の絶対値|ΔTrq|を使用する場合の必要データ量、及び、基準技術からの削減可能データ量の関係を示す。
また、付加情報のLSBを(10/4)=2.5[Nm]としたとき、センサ差分ΔTrqの正常範囲に対して一つ、センサ差分ΔTrqの異常範囲に対して一つの計二つ(=1ビット)のデータを送信することになる。つまり、付加情報は、センサ素子51、52が正常であるか異常であるかを判別するフェール信号(異常フラグ)に実質的に等しいものとなる。この場合、データ量を最大11ビット削減することができる。
このように、システムが許容すれば、付加情報の分解能を低下させることにより、データ量を大幅に削減することが可能である。
次に、第2実施形態によるデータ量削減について、図6を参照して説明する。
第2実施形態は、マイコン71の演算処理部74での制御演算に第1センサ値Trq1及び第2センサ値Trq2の両方が使用されることを前提とする。
第2実施形態では、センサ信号に含まれる一方の通信データとして、二つのセンサ値の平均値TrqAve、又は加算値TrqAddを送信する。ここで、クロス特性を採用する本実施形態では、「二つのセンサ値」とは、「第1センサ値Trq1」及び「第2センサ反転値(4096−Trq2)」を意味する。なお、同特性の二つのセンサ素子を用いる他の実施形態では、単純に二つのセンサ値の平均値を算出すればよい。
また、もう一方の通信データとして、第1実施形態と同様のセンサ差分ΔTrq、又はセンサ差分の絶対値|ΔTrq|を付加情報として送信する。
TrqAve={Trq1+(4096−Trq2)}/2 ・・・(2.1)
平均値TrqAveには、各センサ値Trq1、Trq2の情報が2分の1の精度で反映される。平均値TrqAveのデータ量は、センサ値Trq1、Trq2のデータ量と同じく、12ビットとなる。したがって、付加情報によるデータ量削減分が、センサ信号全体のデータ量の削減分となる。
TrqAdd=Trq1+(4096−Trq2) ・・・(2.2)
加算値TrqAddには、各センサ値Trq1、Trq2の情報がそのままの精度で反映されるため、平均値TrqAveを使用する方式に比べ、精度落ちを防止することができる。ただし、加算値TrqAddのデータ量は、センサ値Trq1、Trq2のデータ量より1ビット多い13ビットとなる。しかし、付加情報のデータ量を2ビット以上削減することにより、センサ信号全体のデータ量を削減することができる。
平均値TrqAveを送信する場合、ECU演算トルク値Etrq1、Etrq2は、式(2.3)、(2.4)により演算される。
Etrq1=TrqAve−ΔTrq/2 ・・・(2.3)
Etrq2=4096−(TrqAve+ΔTrq/2) ・・・(2.4)
Etrq1=(TrqAdd−ΔTrq)/2 ・・・(2.5)
Etrq2=4096−(TrqAdd+ΔTrq)/2 ・・・(2.6)
ただし、センサ差分ΔTrqの分解能を低下させることによって付加情報のデータ量を削減する場合、センサ差分ΔTrqを用いて演算されるECU演算トルク値Etrq1、Etrq2の精度も低下することに注意を要する。
第3実施形態によるデータ量削減について、図7、図8を参照して説明する。
第3実施形態では、基準技術における二つのセンサ値Trq1、Trq2の生データに代えて、第1センサ素子51及び第2センサ素子52について、それぞれ「特定のセンサ素子による異なるタイミングでの複数のセンサ値同士の差分」である「時間差分Tdiff1、Tdiff2」をリデューストデータとして送信する。詳しくは、データ量削減部53が時間差分Tdiff1、Tdiff2を算出して送信回路54に出力し、送信回路54がマイコン71に送信する。よって、通信時間を短縮することができる。
なお、他の実施形態では、センサ値Trq1、Trq2のいずれか一方に代えて、対応する時間差分Tdiff1、Tdiff2のいずれか一方を送信するようにしてもよい。
Tdiff1=Trq1(n)−Trq1(n−1) ・・・(3.1)
また、第3実施形態では、マイコン71がセンサ値の初期値Trq1(0)、Trq2(0)を取得することを前提とする。
操舵トルクの変化量を「±1.25[Nm]未満」と仮定すると、時間差分Tdiff1、Tdiff2の範囲は「±256未満」となり、9ビットで表現される。よって、基準技術に比べ、通信データ量を計6ビット削減することができる。
また、操舵トルクの変化量を「±0.625[Nm]未満」と仮定すると、時間差分Tdiff1、Tdiff2の範囲は「±128未満」となり、8ビットで表現される。よって、基準技術に比べ、通信データ量を計8ビット削減することができる。
Trq(x):センサ値(センサ素子検出値)
TrqN(x):現在送信トルク値
Tdiff(x):送信用トルク時間差分値
Etrq(x):ECU演算トルク値
ECU演算トルク値を除くTrq(x)、TrqN(x)、Tdiff(x)は、センサ装置50にて検出又は算出される値であり、ECU演算トルク値Etrq(x)は、ECU70のマイコン71にて演算に使用される値である。
Trq(0)=センサ値
TrqN(0)=0
Tdiff(0)=0
Etrq(0)=0
Tdiff(x)=GUARD(Trq(x)−TrqN(x−1),
DiffLow,DiffHigh) ・・・(3.2)
ここで例えば、DiffLow=−1023、DiffHigh=1023とすると、式(3.2)の関係は、図8で表される。
TrqN(x)=TrqN(x−1)+Tdiff(x) ・・・(3.3)
送信回路54は、送信用トルク時間差分値Tdiff(x)をECU70のマイコン71に送信する。
Etrq(x)=Etrq(x−1)+Tdiff(x) ・・・(3.4)
初期値として、TrqN(0)=0、Etrq(0)=0 と設定されている場合、式(3.3)、(3.4)より、TrqN(x)=Etrq(x)となる。
図9では、極端な例として、i回目の通信タイミングから(i+1)回目の通信タイミングまでの間に、操舵トルクが負側の最小トルク(−10[Nm])から正側の最大トルク(10−(10/2048)[Nm])まで急変動した状況を想定する。すなわち、ハンドルを左方向一杯に切った状態から右方向一杯に切った状態に一瞬で移行した場合に相当する。この場合、サンプル周期の一周期におけるセンサ値Trq(x)の変化量は、時間差分値の設定範囲「±1023以下」をはるかに越えた「4095」となる。
また、(i+1)回目の通信タイミングの後、少なくとも(i+5)回目の通信タイミングまでは、操舵トルクが正側の最大トルクである状態が継続するものとする。
Trq(i) =0 TrqN(i) =0
Trq(i+1)=4095 TrqN(i+1)=1023
Trq(i+2)=4095 TrqN(i+2)=2046
Trq(i+3)=4095 TrqN(i+3)=3069
Trq(i+4)=4095 TrqN(i+4)=4092
Trq(i+5)=4095 TrqN(i+5)=4095
比較例では、(i+1)回目の通信タイミングにおいて、実際のセンサ値Trqの変化量が「4095」であるにもかかわらず、送信される時間差分値は、設定範囲上限である「1023」となり、情報落ちが発生する。また、(i+2)回目からの通信タイミングのデータ値には、この時点で落ちた情報が反映されない。その結果、(i+1)回目以降のECU演算トルク値Etrq(x)は、ずっと「1023」が維持され、いつまで経ってもセンサ値Trq(x)に一致することはない。よって、誤ったトルク値に基づいて、制御演算が行われることとなる。
第4〜第6実施形態によるセンサ信号のデータ切り替えについて、図11を参照して説明する。
リデューストデータとして時間差分Tdiff1、Tdiff2を送信する第3実施形態では、通信中に通信データ異常などによる通信抜けが一回でも発生すると、その後、マイコン71は実際のセンサ値を取得できなくなり、センサ値に基づく制御演算を実行不能になるという問題がある。
つまり、第4〜第6実施形態では、通信データとして時間差分データと独立時データとを随時切り替えつつ送信することを特徴とする。切り替えのタイミングは、所定時間又は所定周期毎に設定してもよく、何らかのトリガ信号に同期したタイミングとしてもよい。
第4実施形態のセンサ信号Iは、LSBが(10/2048)[Nm]である二つの12ビット(計24ビット)のセンサ値Trq1、Trq2の生データ、及び、1ビットの識別情報「1b」を含み、合計データ量が25ビットとなる。この場合、センサ信号Dからセンサ信号Iへ通信データを切り替えたとき、一時的に通信ビット数を増やす。
これにより、センサ信号Iのデータ量をセンサ信号Dと同じ17ビットに抑えることができる。よって、センサ信号D、Iの切り替えにかかわらず、データ量を削減した状態を常に維持することができる。
第6実施形態の通信方式は、一般に、複数のセンサ素子のうちから選定した一部のセンサ素子のセンサ値を独立時データとして送信する方式である。
以上のように、第4〜第6実施形態では、基本的に時間差分Tdiff1、Tdiff2のデータを送信しつつ、時々、トルク値を表す独立時データを送信する。これにより、仮に通信データ異常などによる通信抜けが発生した場合でも、次のセンサ信号の切り替えタイミングで独立時データを再取得し、トルク値に基づく制御演算を継続することができる。よって、システムの信頼性を向上させることができる。
(ア)本発明の実施形態としては、複数のセンサ素子を有する通信システムにおいて、基準技術によりセンサ値Trq1、Trq2を送信するときのデータ量に比べデータ量を削減したリデューストデータを送信するようにしたあらゆる構成が含まれる。
例えばセンサ信号に二つのデータを含む方式では、上記実施形態の他、図12(a)〜(i)に示すように、二種類のデータを組み合わせた各構成が挙げられる。
「平均値の時間差分」は、「複数のセンサ素子による異なるタイミングでの複数のセンサ値の平均値同士の時間差分」を意味する。また、「センサ差分の時間差分」は、「異なるタイミングでのセンサ差分同士の時間差分」を意味する。なお、(a)〜(e)については、第1センサ値Trq1と第2センサ値Trq2とを入れ替えてもよい。
(b):時間差分+センサ差分
(c):時間差分+|センサ差分|
(d):時間差分+センサ差分の時間差分
(e):時間差分+|センサ差分|の時間差分
(f):平均値の時間差分+センサ差分
(g):平均値の時間差分+|センサ差分|
(h):平均値の時間差分+センサ差分の時間差分
(i):平均値の時間差分+|センサ差分|の時間差分
例えばN個(Nは2以上の整数)のセンサ素子を有するセンサ装置において第1実施形態を一般化すると、次のように規定されるセンサ値及び付加情報を含むセンサ信号を送信する方式として表現することができる。センサ値は、「N個のセンサ素子のうち選定されたM個(Mは1以上N未満の整数)のセンサ素子が検出したM個のセンサ値」である。付加情報は、「M個のセンサ素子以外の(N−M)個のセンサ素子のセンサ値と、M個のセンサ素子のうちいずれかのセンサ素子のセンサ値との差分を表す付加情報」である。
なお、上記第1実施形態は、一般化表現におけるN=2、M=1の場合に相当する。
(エ)センサ素子は、上記実施形態で例示したホール素子以外に、他の磁気検出素子、又は、磁気以外の変化を検出する素子を用いてもよい。センサ素子が検出する物理量は、トルクに限らず、回転角、ストローク、荷重、圧力等、どのような物理量でもよい。
また、二つのセンサ素子の出力特性はクロス特性でなく、同一特性等でもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
50・・・センサ装置、
51、52・・・センサ素子、
53・・・データ縮減部、
54・・・送信回路、
71・・・マイコン、
72・・・受信回路、
73・・・受信データ処理部、
74・・・演算処理部。
Claims (15)
- ある物理量についてのセンサ値を同一の検出対象から検出しデジタル値で出力する複数のセンサ素子(51、52)、前記複数のセンサ素子による複数の前記センサ値同士の差分、又は、異なるタイミングで検出された複数の前記センサ値同士の差分を含む情報を、前記センサ値そのもののデータ量に対しデータ量が削減されたリデューストデータとして算出するデータ量削減部(53)、及び、前記リデューストデータを含むセンサ信号をデジタル信号として送信する送信回路(54)を有するセンサ装置(50)と、
前記センサ装置から送信された前記リデューストデータを含む前記センサ信号を受信する受信回路(72)を有するマイコン(71)と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、前記センサ信号に含まれる少なくとも一つの通信データについて、
前記複数のセンサ素子による複数の前記センサ値同士の差分であるセンサ差分に基づく値であって前記複数のセンサ素子の異常検出に使用可能な付加情報を、前記リデューストデータとして送信することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
N個(Nは2以上の整数)の前記センサ素子のうち選定されたM個(Mは1以上N未満の整数)のセンサ素子が検出したM個の前記センサ値、及び、前記M個のセンサ素子以外の(N−M)個のセンサ素子の前記センサ値と、前記M個のセンサ素子のうちいずれかのセンサ素子の前記センサ値との差分を表す前記付加情報を含む前記センサ信号を送信することを特徴とする請求項2に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
複数の前記センサ素子による複数の前記センサ値の平均値又は加算値、及び前記付加情報を含む前記センサ信号を送信することを特徴とする請求項2に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
前記センサ差分の絶対値を前記付加情報として送信することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
送信する前記付加情報の分解能を前記センサ値の分解能よりも低下させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、前記センサ信号に含まれる少なくとも一つの通信データについて、
特定の前記センサ素子による異なるタイミングでの複数の前記センサ値同士の時間差分、又は、複数の前記センサ素子による異なるタイミングでの複数の前記センサ値の平均値同士の時間差分、又は、複数の前記センサ素子による複数の前記センサ値同士の差分であるセンサ差分についての異なるタイミングでの前記センサ差分同士の時間差分、のいずれか一つ以上である時間差分データを前記リデューストデータとして送信することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
前記時間差分データと、前記時間差分データに対応する一つ又は複数の前記センサ素子について、ある時点で前記センサ素子により検出された物理量を表す独立時データと、を随時切り替えつつ送信することを特徴とする請求項7に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
送信する前記独立時データの分解能を前記センサ値の分解能よりも低下させることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
前記センサ信号の次回送信時に前記時間差分データを演算するとき、分解能を低下させた後の前記独立時データからの時間差分を前記時間差分データとして送信することを特徴とする請求項9に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
複数の前記センサ素子のうちから選定した一部の前記センサ素子についての前記独立時データを送信することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
前記独立時データを送信するとき、選定した前記センサ素子を特定する情報を付与して前記独立時データを送信することを特徴とする請求項11に記載の通信システム。 - 前記センサ装置は、
送信される通信データが前記時間差分データ又は前記独立時データのいずれであるかを識別する情報を付与して前記通信データを送信することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の通信システム。 - 前記センサ信号は、米国自動車技術会規格SAE−J2716に準拠した信号であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の通信システム。
- 車両の電動パワーステアリング装置(90)に用いられ、前記センサ装置は、運転者の操舵トルクを検出し、前記マイコンは、前記センサ装置が検出した操舵トルクに基づいてモータ(80)が出力するアシスト量を演算することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の通信システム。
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