JP2017032344A - 凝固時間の測定方法およびその装置、凝固時間測定用試薬ならびに試薬キット - Google Patents

凝固時間の測定方法およびその装置、凝固時間測定用試薬ならびに試薬キット Download PDF

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Abstract

【課題】ヘパリン含有検体を用いた場合であっても感度よく凝固時間を測定することができる新たな手段を提供すること。【解決手段】凝固時間の測定に際し、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合することによって試料を得、得られた試料とカルシウム塩とを混合して測定試料を調製し、測定試料の凝固時間を測定する。【選択図】なし

Description

本発明は、凝固時間の測定方法およびその装置、凝固時間測定用試薬ならびに試薬キットに関する。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、抗凝固薬剤であるヘパリンの濃度のモニタリングに用いられている(特許文献1)。特許文献1には、銅塩または亜鉛塩を含むAPTT測定用試薬によれば、APTT測定の際にヘパリンの活性が低減することが記載されている。
特開平8−68794号公報
しかしながら、ヘパリン含有検体を用いた場合であっても感度よく凝固時間を測定することが望まれている。
本発明の1つの側面は、(A)血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合して試料を得る工程、および
(B)工程(A)で得られた試料とカルシウム塩とを混合して測定試料を調製し、測定試料の凝固時間を測定する工程
を含む、凝固時間の測定方法を含む。
本発明の他の側面は、血液検体と、活性化剤と、リン脂質と、ニッケルイオン形成化合物と、カルシウム塩とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、試料調製部で得られた測定試料から凝固反応に伴う変化を示す凝固情報を取得する検出部と、検出部によって取得された光学的情報に基づいて、測定試料の凝固時間を算出する算出部と、活性化剤と、リン脂質と、ニッケルイオン形成化合物と、カルシウム塩とを収容する試薬収容部とを備え、試料調製部が、試薬収容部から活性化剤、リン脂質およびニッケルイオン形成化合物を取得し、活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物と血液検体とを混合して試料を調製し、試薬収容部からカルシウム塩を取得し、カルシウム塩と試料とを混合して測定試料を得る、凝固時間の測定装置を含む。
本発明のさらに他の側面は、ニッケルイオン形成化合物を含有する、前述した凝固時間の測定方法に用いるための凝固時間測定用試薬を含む。
本発明の別の側面は、第1試薬容器に収容された活性化剤とリン脂質とを含む第1試薬と、第2試薬容器に収容されたニッケルイオン形成化合物を含む第2試薬と、第3試薬容器に収容されたカルシウム塩を含む第3試薬とを含む試薬キットを含む。
本発明によれば、ヘパリン含有検体を用いた場合であっても感度よく凝固時間を測定することができる、凝固時間の測定方法およびその装置、凝固時間測定用試薬ならびに試薬キットを提供することができる。
凝固時間の測定装置の構成図である。 測定装置による凝固時間の測定の処理手順を示すフローチャートである。 試料の調製工程の処理手順を示すフローチャートである。 試料の調製工程の処理手順を示すフローチャートである。 試料へのカルシウム塩の添加工程および光学的情報の取得工程の処理手順を示すフローチャートである。 試薬キットの構成図である。 実施例1の測定方法による凝固時間と、比較例1の測定方法による凝固時間とを対比した結果を示すグラフである。 実施例2および比較例2〜5において、ヘパリン濃度とAPTT比との関係を調べた結果を示すグラフである。
1.凝固時間の測定方法
本実施形態に係る凝固時間の測定方法(以下、単に「測定方法」という)は、(A)血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合して試料を得る工程、および
(B)工程(A)で得られた試料とカルシウム塩とを混合して測定試料を調製し、測定試料の凝固時間を測定する工程
を含むことを特徴とする。本実施形態に係る測定方法は、工程(A)において、試料を得る際に、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合する。したがって、本実施形態に係る測定方法によれば、ヘパリン含有検体を用いた場合であっても感度よく凝固時間を測定することができる。
なお、本明細書において、「試料」とは、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物との混合物をいう。また、「測定試料」とは、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とカルシウム塩との混合物をいう。
血液検体としては、例えば、血漿などが挙げられるが、特に限定されない。本明細書において、「正常血漿」とは、健常者の血液から得られた血漿をいう。正常血漿は、市販の正常血漿であってもよい。被検血漿としては、例えば、被検者から得られた血漿、被検者から得られ、かつヘパリンを含む血漿などが挙げられるが、特に限定されない。
活性化剤は、内因系凝固経路に関与する接触因子を活性化する作用を有する物質であればよい。接触因子としては、例えば、プレカリクレイン、高分子キニノゲン、第XII因子、第XI因子などが挙げられるが、特に限定されない。活性化剤としては、例えば、エラグ酸化合物、シリカ、カオリン、珪藻土(例えば、セライトコーポレーション製、商品名:セライト(登録商標)など)などが挙げられるが、特に限定されない。これらの活性化剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。エラグ酸化合物とは、エラグ酸、エラグ酸の塩およびエラグ酸の金属錯体を含む概念をいう。
リン脂質は、血液の凝固反応を促進する。リン脂質は、分子構造中にリン酸エステル部位を有する脂質である。リン脂質は、天然由来リン脂質であってもよく、合成リン脂質であってもよい。天然由来リン脂質としては、例えば、ウサギ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒトなどの動物、大豆などの植物に由来するリン脂質などが挙げられるが、特に限定されない。動物に由来するリン脂質としては、例えば、ウサギ脳、ウシ脳、卵黄、ヒト胎盤などに由来するリン脂質などが挙げられるが、特に限定されない。リン脂質としては、具体的には、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなどのグリセロリン脂質などが挙げられるが、特に限定されない。これらのリン脂質のなかでは、血液の凝固反応が効率的に進むことから、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルセリンが好ましい。これらのリン脂質は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。リン脂質が有する脂肪酸側鎖としては、例えば、パルミトイル基、オレオイル基、ステアロイル基などが挙げられるが、特に限定されない。これらの脂肪酸側鎖は、血液の凝固反応を妨げない範囲で適宜選択することができる。
ニッケルイオン形成化合物は、血液検体中において、ニッケルイオンを形成する化合物であればよい。ニッケルイオン形成化合物は、2価カチオンを形成する化合物であることが好ましい。ニッケルイオン形成化合物としては、例えば、酢酸ニッケル、リン化ニッケル、硫化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルなどが挙げられるが、特に限定されない。これらのニッケルイオン形成化合物のなかでは、酢酸ニッケルが好ましい。これらのニッケルイオン形成化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
カルシウム塩は、測定試料中でカルシウムイオンを形成する塩であればよい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウムなどが挙げられるが、特に限定されない。これらのカルシウム塩は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
工程(A)では、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合して試料を得る。工程(A)に先立ち、血液検体を、凝固反応を行なうのに適した温度に加温してもよい。血液検体の加温温度は、通常、好ましくは30〜45℃、より好ましくは36〜38℃である。
工程(A)において、血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物との混合の順番は、特に限定されない。工程(A)は、例えば、以下の態様にわけられる。
(態様1)
血液検体と活性化剤とリン脂質とを混合した後、ニッケルイオン形成化合物を添加する工程
(態様2)
血液検体とニッケルイオン形成化合物とを混合した後、活性化剤およびリン脂質を添加する工程
(態様3)
血液検体に活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを同時に添加する工程
態様1では、工程(A)は、例えば、以下の工程(A1−1)および(A1−2)を含む。
(A1−1)血液検体と活性化剤とリン脂質とを混合する工程、および
(A1−2)工程(A1−1)で得られた混合物とニッケルイオン形成化合物とを混合する工程。
以下、態様1を例として挙げて説明するが、本実施形態に係る測定方法は、特に限定されない。工程(A1−1)において、血液検体と活性化剤とリン脂質とを混合して混合物を得る。血液検体と活性化剤とリン脂質との混合の順は、特に限定されない。活性化剤およびリン脂質を同時に血液検体と混合してもよい。また、活性化剤およびリン脂質を異なるタイミングで血液検体と混合してもよい。この場合、血液検体への活性化剤の添加後にリン脂質を添加してもよく、血液検体への活性化剤の添加後に、リン脂質を添加してもよい。
工程(A1−1)において、血液検体と混合される活性化剤の量は、測定試料における活性化剤の濃度が所定濃度となる量であればよい。測定試料における活性化剤の濃度は、活性化剤の種類に応じて適宜設定することができる。活性化剤がエラグ酸化合物である場合、測定試料における活性化剤の濃度は、通常、好ましくは3.5〜150μM、より好ましくは10〜50μMである。活性化剤がシリカである場合、測定試料における活性化剤の濃度は、通常、好ましくは0.04〜0.4mg/mL、より好ましくは0.07〜0.2mg/mLである。
工程(A1−1)において、血液検体と混合されるリン脂質の量は、測定試料におけるリン脂質の濃度が所定濃度となる量であればよい。測定試料におけるリン脂質の濃度は、リン脂質の種類に応じて適宜設定することができる。リン脂質がホスファチジルエタノールアミンである場合、測定試料におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは1〜150μg/mL、より好ましくは5〜50μg/mLである。リン脂質がホスファチジルコリンである場合、測定試料におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは1〜100μg/mL、より好ましくは5〜80μg/mLである。リン脂質がホスファチジルセリンである場合、測定試料におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは0.1〜50μg/mL、より好ましくは1〜10μg/mLである。リン脂質が2種類以上のリン脂質の混合物である場合、測定試料における各リン脂質の濃度の合計は、通常、好ましくは5〜400μg/mL、より好ましくは20〜100μg/mLである。
血液検体と活性化剤および/またはリン脂質との混合の際の加温温度は、血液の凝固反応を行なうのに適した温度であればよい。加温温度は、通常、好ましくは30〜45℃、より好ましくは36〜38℃である。また、加温時間は、通常、好ましくは10〜150秒間、より好ましくは30〜90秒間である。
工程(A1−2)において、工程(A1−1)で得られた混合物とニッケルイオン形成化合物とを混合して試料を得る。
工程(A1−2)において、工程(A1−1)で得られた混合物と混合されるニッケルイオン形成化合物の量は、測定試料におけるニッケルイオン形成化合物の終濃度が所定濃度となる量であればよい。測定試料におけるニッケルイオン形成化合物の終濃度は、好ましくは0.1μM以上、より好ましくは0.1mM以上であり、好ましく10mM未満、より好ましくは5mM以下である。
工程(A1−1)で得られた混合物とニッケルイオン形成化合物との混合の際の加温温度は、血液の凝固反応を行なうのに適した温度であればよい。温度は、通常、好ましくは30〜45℃、より好ましくは36〜38℃である。また、加温時間は、通常、好ましくは30〜420秒間、より好ましくは100〜350秒間である。
凝固時間の測定時に凝固時間が長くなりすぎるのを効果的に抑制する観点から、工程(A1−1)における血液検体と活性化剤とリン脂質との混合終了時から150秒間以内、好ましくは60秒間以内に、工程(A1−2)において、工程(A1−1)で得られた混合物とニッケルイオン形成化合物とを混合することが好ましい。
工程(B)において、工程(A)で得られた試料とカルシウム塩とを混合して測定試料を調製し、測定試料の凝固時間を測定する。
試料と混合されるカルシウム塩の量は、測定試料におけるカルシウム塩の濃度が所定濃度となる量であればよい。測定試料におけるカルシウム塩の濃度は、好ましくは2〜20mM、より好ましくは4〜10mMである。
工程(B)においては、試料にカルシウム塩を添加するのに先立ち、試料を、凝固反応を行なうのに適した温度に加温してもよい。試料の加温温度は、凝固反応の反応性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは36℃以上であり、タンパク質の安定性の観点から、好ましくは45℃以下、より好ましくは38℃以下である。この場合、加温時間は、凝固反応の反応性の観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上であり、タンパク質の安定性の観点から、好ましくは6分間以下、より好ましくは5分間以下である。
測定試料の凝固時間は、凝固情報に基づいて調べることができる。凝固情報としては、例えば、測定試料に光を照射したときの透過光または散乱光の変化、測定試料の粘度の変化などが挙げられるが、特に限定されない。この場合、測定試料の凝固時間は、測定試料に光を照射し、測定試料を透過した透過光または測定試料からの散乱光の変化をモニターすること、測定試料の粘度の変化をモニターすることなどによって調べることができる。ここで、本明細書において、「凝固時間」とは、活性化部分トロンボプラスチン時間を意味する。凝固時間は、試料へのカルシウム塩の添加開始時から血漿が凝固するまでの時間である。
血漿の凝固は、例えば、光が照射された測定試料からの光の変化がなくなったこと、測定試料の粘度の変化がなくなったことなどを指標として判断することができる。
2.凝固時間の測定装置
[測定装置の全体構成]
前述した測定方法に用いられる凝固時間の測定装置(以下、単に「測定装置」という)の一例を、添付の図面に基づき説明する。図1に示されるように、測定装置10は、測定ユニット20と、処理装置30とを含む。測定ユニット20と処理装置30とは、通信可能に接続されている。
[測定ユニットの構成]
図1に示されるように、測定ユニット20は、試料調製部100と、検出部200と、試薬収容部300と、血液検体が収容された検体収容部400と、制御部500とを含む。
試料調製部100は、試薬収容部300から試薬を取得するとともに、検体収容部400から血液検体を取得する。また、試料調製部100は、取得された試薬と血液検体とを所定の処理手順で混合することによって測定試料を調製する。試料調製部100は、検体搬送部111と、第1試薬搬送部112と、第2試薬搬送部113と、第3試薬搬送部114と、第4試薬搬送部115と、キュベット搬送部131とを含む。検体搬送部111は、第1ノズル101を有している。検体搬送部111は、検体収容部400に収容された血液検体を取得する。また、検体搬送部111は、取得された血液検体をキュベット90内に吐出する。第1試薬搬送部112は、第2ノズル102を有している。第1試薬搬送部112は、第2ノズル102により、試薬収容部300の第1容器301内に収容された試薬を取得する。また、第1試薬搬送部112は、取得された試薬をキュベット90内に吐出する。第2試薬搬送部113は、第3ノズル103を有している。第2試薬搬送部113は、第3ノズル103により、試薬収容部300の第2容器302内に収容された試薬を取得する。また、第2試薬搬送部113は、取得された試薬をキュベット90内に吐出する。第3試薬搬送部114は、第4ノズル104により、試薬収容部300の第3容器303内に収容された試薬を取得する。また、第3試薬搬送部114は、取得された試薬をキュベット90内に吐出する。第4試薬搬送部115は、第5ノズル105により、試薬収容部300の第4容器304内に収容された試薬を取得する。また、第4試薬搬送部115は、取得された試薬をキュベット90内に吐出する。キュベット搬送部131は、調製された測定試料が収容されたキュベット90を検出部200へ搬送する。
検出部200は、光照射部201と、受光部202と、第2キュベット載置部203とを含む。光照射部201は、測定試料に対する照射光の光源を有している。照射光の波長は、血液の凝固反応の進行に伴う変化をモニターするのに適した波長であればよい。受光部202は、測定試料からの光を受光する。また、測定試料からの光は、透過光であってもよく、散乱光であってもよい。受光部202は、受光した光の量に応じた電気信号を処理装置の算出部31に出力する。第2キュベット載置部203は、光照射部201と受光部202との間に設けられている。第2キュベット載置部203には、試料調製部100から搬送されたキュベット90が載置される。
試薬収容部300は、凝固時間の測定に用いられる試薬を収容する。本実施形態においては、試薬収容部300は、活性化剤を収容する第1容器301と、リン脂質を収容する第2容器302と、ニッケルイオン形成化合物を収容する第3容器303と、カルシウム塩を収容する第4容器304とを含む。第1〜第4容器のそれぞれには、各容器に収容された試薬の種類を識別するための識別子が設けられている。識別子としては、例えば、バーコードなどが挙げられるが、特に限定されない。なお、本実施形態では、第1容器301と第2容器302とが別々の容器として試薬収容部300に設けられている。しかし、活性化剤とリン脂質とは、同時に血液検体と混合してもよいことから、第1容器および第2容器の代わりに、共通の1つの容器に活性化剤およびリン脂質を収容されていてもよい。この場合、第1試薬搬送部112と第2試薬搬送部113とは、共通の搬送部である。
検体収容部400は、血液検体を収容する。本実施形態においては、検体収容部400は、複数の検体容器401を備えている。また、検体収容部400は、所望の血液検体を収容した検体容器401を所定の検体吸引位置へ搬送する。複数の検体容器401それぞれには、各容器に収容された血液検体の種類を識別するための識別子が設けられている。識別子としては、例えば、バーコードなどが挙げられるが、特に限定されない。
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)501と、記憶部502とを含む。制御部500は、コンピュータによって構成されている。CPU501は、記憶部502に記憶されたコンピュータプログラムを実行する。これにより、CPU501は、試料調製部100における試料調製の処理ならびに検出部200における測定試料に関する光学的情報の取得の処理を行なう。コンピュータプログラムとしては、例えば、測定試料の調製のためのコンピュータプログラム、測定試料に関する光学的情報の取得のためのコンピュータプログラムなどが挙げられるが、特に限定されない。また、記憶部502は、試薬収容部300に収容された試薬を識別するための試薬識別情報、測定試料を調製する際の処理手順に関する試料調製情報、および検体収容部400に収容された血液検体を識別するための検体識別情報をさらに記憶している。試料識別情報としては、例えば、試薬の種類と収容容器の位置と識別子との関連付けの情報などが挙げられるが、特に限定されない。また、検体識別情報としては、例えば、血液検体の種類と収容容器の位置と識別子との関連付けの情報などが挙げられるが、特に限定されない。CPU501は、記憶部502に記憶された試薬識別情報および試料調製情報を用い、測定試料の調製のためのコンピュータプログラムを実行する。これにより、CPU501は、測定ユニット20の試料調製部10に測定試料の調製を行なわせる。
[処理装置の構成]
処理装置30は、図1に示されるように、算出部31と、表示部32と、入力部33とを含む。本実施形態において、処理装置30は、コンピュータシステムによって構成されている。算出部31は、CPU601と、記憶部602とを含む。CPU601は、記憶部602に記憶されたコンピュータプログラムを実行する。これにより、CPU601は、凝固時間の算出の処理を行なう。表示部32としては、例えば、スクリーンディスプレイなどが挙げられるが、特に限定されない。表示部32は、例えば、算出された凝固時間の情報などを表示する。入力部33としては、例えば、キーボード、マウスなどが挙げられるが、特に限定されない。
記憶部602は、CPU601に実行させるためのオペレーティングシステム、アプリケーションプログラムなどのコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。アプリケーションプログラムとしては、例えば、凝固時間の測定のためのコンピュータプログラムなどが挙げられるが、特に限定されない。CPU601は、記憶部602に記憶された凝固時間の測定のためのコンピュータプログラムを実行する。これにより、CPU601は、測定装置10に、凝固時間の測定を行なわせる。
[測定装置の変形例]
検体搬送部111、第1試薬搬送部112、第2試薬搬送部113、第3試薬搬送部114および第4試薬搬送部115は、検体または試薬を流すための流路であってもよい。流路としては、チューブなどが挙げられるが、特に限定されない。
また、凝固時間は、血液の凝固による粘度の増加その他の凝固情報に基づいて測定されてもよい。凝固時間を血液の凝固による粘度の増加に基づいて測定する場合、検出部200は、高周波発信コイルと、高周波受信コイルと、高周波発信コイルと高周波受信コイルとの間にある、スチールボールを収容したキュベットを載置するキュベット載置部と、キュベット載置部の両端に設けられた電磁石とを備える。キュベット内のスチールボールは、電磁石が発生する磁力によって左右に振幅運動する。この振幅運動は、粘度が増加するほど減少する。測定試料の凝固が始まると、測定試料の粘度が増加するため、スチールボールの振幅が減少する。したがって、検出部200は、高周波発信コイルが発信する高周波を高周波受信コイルが受信することによって、振幅の変化を検知する。また、処理装置30の算出部31は、検知された振幅の変化に基づき、凝固時間を算出する。
[凝固時間の測定装置の処理手順]
つぎに、図2に基づき、測定装置10による凝固時間の測定の処理手順の概要を説明する。以下の処理手順においては、測定ユニット20の制御部500は、記憶部502から取得した試薬識別情報および試料調製情報を用い、記憶部502に記憶された測定試料の調製のためのコンピュータプログラムを実行する。また、制御部500は、記憶部502に記憶された測定試料に関する光学的情報の取得のためのコンピュータプログラムを実行する。処理装置30の算出部31は、取得された光学的情報を用い、記憶部602に記憶された凝固時間の測定のためのコンピュータプログラムを実行する。
まず、ステップS1において、測定ユニット20の制御部500は、試料調製部100に試料の調製を実行させる。ステップS1の試料の調製は、後述する図3および図4に示される処理手順にしたがって実行される。
その後、ステップS2において、制御部500は、試料調製部100に、試料へのカルシウム塩の添加を実行させる。また、ステップS3において、制御部500は、検出部200に、測定試料に関する光学的情報の取得を実行させる。ステップS2の試料へのカルシウム塩の添加と、ステップS3の光学的情報の取得とは、図5に示される処理手順に従って実行される。
その後、ステップS4において、処理装置30の算出部31は、凝固時間の算出のためのコンピュータプログラムを実行することにより、凝固時間を算出する。
[試料の調製の処理手順]
つぎに、図3および図4に基づき、測定装置10による試料の調製の処理手順の概要を説明する。
まず、ステップS101において、制御部500は、試料調製部100に、図1における試料調製位置62へのキュベット90の配置を実行させる。具体的には、制御部500は、試料調製部100に、キュベット90を図1における第1キュベット載置部61に位置するように載置させる。これにより、試料調製位置62へのキュベット90の配置が行われる。
つぎに、ステップS102において、制御部500は、検体収容部400に、図1における検体吸引位置81への検体容器401の搬送を実行させる。このとき、制御部500は、記憶部502に記憶された検体識別情報に基づき、検体収容部400に、所望の血液検体が収容された検体容器401を選択させる。そして、制御部は、検体収容部400に、選択された検体容器401を検体吸引位置81に位置するように搬送させる。
つぎに、ステップS103において、制御部500は、試料調製部100に、検体吸引位置81への第1ノズル101の移動を実行させる。その後、ステップS104において、制御部500は、試料調製部100に、検体容器401からの血液検体の吸引を実行させる。具体的には、制御部500は、試料調製部100に、第1ノズル101を介して検体容器401に収容された血液検体を吸引させる。
つぎに、ステップS105において、制御部500は、試料調製部100に、試料調製位置62への第1ノズル101の移動を実行させる。その後、ステップS106において、制御部500は、試料調製部100に、キュベット90への血液検体の吐出を実行させる。具体的には、制御部500は、試料調製部100に、第1ノズル101で吸引された血液検体をキュベット90に吐出させる。
つぎに、ステップS107において、制御部500は、試料調製部100に、活性化剤吸引位置71への第2ノズル102の移動を実行させる。その後、ステップS108において、制御部500は、試料調製部100に、第1容器301からの活性化剤の吸引を実行させる。具体的には、制御部500は、試料調製部100に、第2ノズル102を介して第1容器301に収容された活性化剤を吸引させる。
つぎに、ステップS109において、制御部500は、試料調製部100に、試料調製位置62への第2ノズル102の移動を実行させる。その後、ステップS110において、制御部500は、試料調製部100に、キュベット90への活性化剤の吐出を実行させる。具体的には、制御部500は、試料調製部100に、第2ノズル102で吸引された活性化剤をキュベット90に吐出させる。
つぎに、図4のステップS111からステップS114までの各ステップにおいて、制御部500は、試料調製部100に、リン脂質吸引位置72への第3ノズル103の移動、第2容器302からのリン脂質の吸引、試料調製位置62への第3ノズル103の移動およびキュベット90へのリン脂質の吐出を実行させる。ステップS111からステップS114までの各ステップは、第3ノズル103によってリン脂質の吸引および吐出の一連の処理を行なうことを除き、図3のステップS107からステップS110までの各ステップと同様である。
つぎに、ステップS115からステップS118の各ステップにおいて、制御部500は、試料調製部100に、ニッケルイオン形成化合物吸引位置73への第4ノズル104の移動、第3容器303からのニッケルイオン形成化合物の吸引、試料調製位置62への第4ノズル104の移動およびキュベット90へのニッケルイオン形成化合物の吐出を実行させる。ステップS115からステップS118の各ステップは、第4ノズル104によってニッケルイオン形成化合物の吸引および吐出の一連の動作を行なうことを除き、図3のステップS107からステップS110と同様である。これにより、試料が得られる。
なお、本実施形態においては、血液検体への活性化剤およびリン脂質の添加を、活性化剤の添加およびリン脂質の添加の順で行なっている。しかし、活性化剤およびリン脂質の添加は、同時に行なってもよい。
[試料へのカルシウム塩の添加および光学的情報の取得の処理手順]
つぎに、図5に基づき、測定装置10による試料へのカルシウム塩の添加および光学的情報の取得の処理手順の概要を説明する。
図5のステップS201からステップS204までの各ステップにおいて、制御部500は、試料調製部100に、カルシウム塩吸引位置74への第5ノズル105の移動、第2容器302からのカルシウム塩の吸引、試料調製位置62への第5ノズル105の移動およびキュベット90へのカルシウム塩の吐出を実行させる。これにより、測定試料が得られる。ステップS201からステップS204までの各ステップは、第5ノズル105によってカルシウム塩の吸引および吐出の一連の処理を行なうことを除き、図3のステップS107からステップS110までの各ステップと同様である。
ステップS204と同時に、ステップS301において、制御部500は、試料調製部100に、キュベット搬送部131を介してキュベット90を検出部200の第2キュベット載置部203へ搬送させる。また、ステップS301においては、制御部500は、検出部200に、測定試料への光照射を実行させる。具体的には、制御部500は、検出部200の光照射部201に、第2キュベット載置部203に載置されたキュベット90に対し、光を照射する。これにより、キュベット90内の測定試料に光が照射される。
つぎに、ステップ302において、制御部500は、検出部200に、測定試料からの光の測定を実行させる。具体的には、制御部500は、検出部200の受光部202に、受光された透過光の量に応じた電気信号を処理装置の算出部31に出力させる。
その後、図2のステップS4における凝固時間の算出に処理が進行する。
[処理手順の変形例]
ステップS107からステップS110までの一連のステップと、ステップS111からステップS114までの一連のステップは、並行して行なってもよい。また、ステップS115からステップS118までの一連のステップは、ステップS107からステップS110までの一連のステップおよびステップS111からステップS114までの一連のステップの両者よりも先に行なってもよい。
また、血液の凝固による粘度の増加に基づいて凝固時間を測定する場合、検出部200として、高周波発信コイルと、高周波受信コイルと、スチールボールを収容したキュベットを載置するキュベット載置部と、電磁石とを備える検出部を用いることができる。ここでは、制御部500は、検出部200の高周波発信コイルが発信する高周波を高周波受信コイルによって受信させることによって振幅の変化を検知させる。つぎに、制御部500は、検出部200に、振幅の変化に関する情報を処理装置30に出力させる。その後、処理装置30の算出部31は、取得された振幅の変化に関する情報を用い、記憶部602に記憶された凝固時間の測定のためのコンピュータプログラムを実行することにより、凝固時間を算出する。
3.凝固時間測定用試薬
本実施形態に係る凝固時間測定用試薬は、ニッケルイオン形成化合物を含有する、前述の凝固時間の測定方法に用いるための凝固時間測定用試薬である。ニッケルイオン形成化合物は、前述の測定方法におけるニッケルイオン形成化合物と同様である。
本実施形態に係る凝固時間測定用試薬は、実質的にニッケルイオン形成化合物からなる試薬であってもよく、ニッケルイオン形成化合物と適切な溶媒、助剤などとをさらに含有する試薬であってもよい。なお、本実施形態に係る凝固時間測定用試薬は、実質的にリン脂質と活性化剤とを含有していない。
凝固時間測定用試薬は、固体の状態で提供することができる。この場合、凝固時間測定用試薬の剤型としては、例えば、粒剤、粉剤などが挙げられるが、特に限定されない。
凝固時間測定用試薬は、ニッケルイオン形成化合物を適切な溶媒に溶解させた状態であってもよい。この場合、溶媒としては、例えば、脱塩精製水、生理食塩水などが挙げられるが、特に限定されない。
凝固時間測定用試薬が、ニッケルイオン形成化合物を適切な溶媒に溶解させた状態の試薬である場合、凝固時間測定用試薬におけるニッケルイオン形成化合物の含有量は、好ましくは1μM以上、より好ましくは0.1mM以上であり、好ましくは50mM以下、より好ましくは10mM以下である。
凝固時間測定用試薬がさらに助剤を含有する場合、助剤としては、例えば、ニッケルイオン形成化合物の安定化剤、保存剤などが挙げられるが、特に限定されない。
4.試薬キット
本実施形態に係る試薬キットは、第1試薬容器に収容された活性化剤とリン脂質とを含む第1試薬と、第2試薬容器に収容されたニッケルイオン形成化合物を含む第2試薬と、第3試薬容器に収容されたカルシウム塩を含む第3試薬とを含む試薬キットである。本実施形態に係る試薬キットの一例としては、図6に示される試薬キット800などが挙げられるが、特に限定されない。図6に示される試薬キット800は、第1試薬容器801と、第2試薬容器802と、第3試薬容器803とを含む。第1試薬容器801は、活性化剤とリン脂質とを含む第1試薬を収容する。第2試薬容器802は、ニッケルイオン形成化合物を含む第2試薬を収容する。第3試薬容器803は、カルシウム塩を含む第3試薬を収容する。試薬キットは、添付文書をさらに含んでもよい。添付文書は、本実施形態に係る試薬キットを用いて上述した凝固時間の測定方法を行なう操作手順などの記載を含んでもよい。
第1試薬における活性化剤の濃度は、測定試料における濃度を上述した測定方法における濃度の範囲に調整できる範囲であればよい。活性化剤がエラグ酸化合物である場合、第1試薬における活性化剤の濃度は、通常、好ましくは10〜400μM、より好ましくは50〜150μMである。活性化剤がシリカである場合、第1試薬における活性化剤の濃度は、通常、好ましくは0.1〜1mg/mL、より好ましくは0.2〜0.6mg/mLである。
第1試薬におけるリン脂質の濃度は、測定試料における濃度を上述した測定方法における濃度の範囲に調整できる範囲であればよい。第1試薬におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは30〜400μg/mL、より好ましくは10〜100μg/mLである。リン脂質がホスファチジルエタノールアミンである場合、第1試薬におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは10〜100μg/mL、より好ましくは20〜50μg/mLである。リン脂質がホスファチジルコリンである場合、測定試料におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは10〜300μg/mL、より好ましくは10〜100μg/mLである。リン脂質がホスファチジルセリンである場合、測定試料におけるリン脂質の濃度は、通常、好ましくは1〜75μg/mL、より好ましくは2〜15μg/mLである。
第2試薬は、固体の状態のニッケルイオン形成化合物であってもよく、ニッケルイオン形成化合物を適切な溶媒に溶解させた状態であってもよい。溶媒は、上述した凝固時間測定用試薬における溶媒と同様である。
第2試薬が、ニッケルイオン形成化合物を適切な溶媒に溶解させた状態の試薬である場合、第2試薬におけるニッケルイオン形成化合物の濃度は、第1試薬におけるリン脂質の濃度は、測定試料における濃度を上述した測定方法における濃度の範囲に調整できる範囲であればよい。この場合、第2試薬におけるニッケルイオン形成化合物の濃度は、好ましくは1μM以上、より好ましくは0.1mM以上であり、好ましくは50mM以下、より好ましくは10mM以下である。
第3試薬におけるカルシウム塩の濃度は、測定試料における濃度を上述した測定方法における濃度の範囲に調整できる範囲であればよい。第3試薬におけるカルシウム塩の濃度は、好ましくは2.5〜40mM、より好ましくは10〜30mMである。
本実施形態に係る試薬キットでは、第2試薬は、実質的にリン脂質と活性化剤とを含有していない。また、本実施形態に係る試薬キットでは、第1試薬は、実質的にニッケルイオン形成化合物を含有していない。
試薬キットに用いられる活性化剤、リン脂質、ニッケルイオン形成化合物およびカルシウム塩は、前述の測定方法に用いられるものと同様である。また、各試薬容器には、適宜、適切な溶媒、助剤などが収容されていてもよい。溶媒および助剤は、凝固時間測定用試薬に用いられる溶媒および試薬と同様である。なお、本実施形態に係る試薬キットでは、活性化剤およびリン脂質が、別々の容器に収容されていてもよい。
以下において、凝固時間の測定は、全自動凝固時間測定装置〔シスメックス(株)製、商品名:CS−2000i〕によって行なった。
(実施例1)
本実施例において、血液検体として、正常血漿または被検血漿を用いた。正常血漿として、表1に示される正常血漿を用いた。また、被検血漿として、表1に示されるヘパリン添加血漿を用いた。
血液検体50μLを37℃で60秒間加熱した。加熱後の血液検体にAPTT試薬〔ロシュ・ダイアゴノスティックス社製、商品名:PTT−LA(登録商標)〕50μLを添加し、混合した。得られた混合物を37℃で20秒間加熱した。加熱後の混合物に2.5mM塩化酢酸ニッケル水溶液20μLを添加し、混合した。得られた混合物を37℃で170秒間加熱した。加熱後の混合物に凝固反応促進剤である25mM塩化カルシウム水溶液を添加するとともに凝固時間を測定した。実施例1の測定方法による凝固時間を図7に示す。
(比較例1)
本比較例において、血液検体として、実施例1と同様の血液検体を用いた。血液検体50μLを37℃で60秒間加熱した。加熱後の血液検体にAPTT試薬〔ロシュ・ダイアゴノスティックス社製、商品名:PTT−LA(登録商標)〕50μLを添加し、混合した。得られた混合物を37℃で170秒間加熱した。加熱後の混合物に25mM塩化カルシウム水溶液を添加するとともに凝固時間を測定した。比較例1の測定方法による凝固時間を図7に示す。
(結果)
図7に示された結果から、実施例1の測定方法による凝固時間は、比較例1の測定方法による凝固時間と比べて、長いことがわかった。したがって、実施例1の測定方法によれば、ヘパリン含有検体血漿を用いた場合であっても、比較例1の測定方法と比べ、感度よく凝固時間を測定することができることがわかった。
(実施例2および比較例2〜5)
血液検体として表1に示される正常血漿、表1に示される被検血漿のうちのHE2、HE4、HE6、HE8およびHE10を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、凝固時間を測定した(実施例2)。実施例2の測定方法によって得られた凝固時間を用い、式(I):
[APTT比]=[被検血漿の凝固時間/正常血漿の凝固時間] (I)
にしたがって、APTT比を求めた。
2.5mM酢酸ニッケル水溶液を用いる代わりに、2.5mM塩化カルシウム水溶液(比較例2)、2.5mM塩化マグネシウム水溶液(比較例3)、2.5mM硫酸銅水溶液(比較例4)および2.5mM塩化亜鉛水溶液(比較例5)を用いたことならびに血液検体として表1に示される正常血漿、表1に示される被検血漿のうちのHE2、HE4、HE6、HE8およびHE10を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、凝固時間を測定した。なお、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸銅および塩化亜鉛は、2価ニッケルイオン以外の2価イオン(2価カチオン)を形成する化合物である。
比較例1〜5それぞれの測定方法によって得られた凝固時間を用い、式(I)にしたがって、APTT比を求めた。ヘパリン濃度とAPTT比との関係を調べた結果を図8に示す。図中、白丸は実施例2の測定方法(ニッケルイオン形成化合物あり)によるAPTT比、黒四角は比較例1の測定方法(2価カチオンを形成する化合物なし)によるAPTT比、白三角は比較例2の測定方法(カルシウムイオンを形成する化合物あり)によるAPTT比、黒三角は比較例3の測定方法(マグネシウムイオンを形成する化合物あり)によるAPTT比、白四角は比較例4の測定方法(銅イオンを形成する化合物あり)によるAPTT比、黒丸は比較例5の測定方法(亜鉛イオンを形成する化合物あり)によるAPTT比を示す。
図8に示された結果から、実施例2の測定方法によるAPTT比は、比較例1〜5の測定方法によるAPTT比よりも大きいことがわかった。したがって、実施例2のように、ニッケルイオン形成化合物を用いることにより、他の二価イオンを形成する化合物を用いた場合(比較例2〜5)や従来の方法(比較例1)と比べ、ヘパリン含有検体に対する感度が向上していることがわかった。一方、比較例2〜5の測定方法のように、他の二価イオンを形成する化合物を用いた場合、APTT比は、比較例1の測定方法によるAPTT比と同程度以下であることがわかった。
これらの結果から、APTT試薬を用いる凝固時間の測定において、凝固反応促進剤の添加前に、2価カチオンのなかでもニッケルイオンを形成する化合物を血液検体に添加することにより、感度よく凝固時間を測定することができることがわかった。
10 測定装置
20 測定ユニット
30 処理装置
31 算出部
32 表示部
33 入力部
61 第1キュベット載置部
62 試料調製位置
71 活性化剤吸引位置
72 リン脂質吸引位置
73 ニッケルイオン形成化合物吸引位置
74 カルシウム塩吸引位置
81 検体吸引位置
90 キュベット
100 試料調製部
101 第1ノズル
102 第2ノズル
103 第3ノズル
104 第4ノズル
105 第5ノズル
111 検体搬送部
112 第1試薬搬送部
113 第2試薬搬送部
114 第3試薬搬送部
115 第4試薬搬送部
131 キュベット搬送部
200 検出部
201 光照射部
202 受光部
203 第2キュベット載置部
300 試薬収容部
301 第1容器
302 第2容器
303 第3容器
304 第4容器
400 検体収容部
401 検体容器
500 制御部
501 CPU
502 記憶部
601 CPU
602 記憶部
800 試薬キット
801 第1試薬容器
802 第2試薬容器
803 第3試薬容器

Claims (10)

  1. (A)血液検体と活性化剤とリン脂質とニッケルイオン形成化合物とを混合して試料を得る工程、および
    (B)前記工程(A)で得られた試料とカルシウム塩とを混合して測定試料を調製し、測定試料の凝固時間を測定する工程
    を含む、凝固時間の測定方法。
  2. 前記工程(A)は、
    (A1−1)血液検体と活性化剤とリン脂質とを混合する工程、および
    (A1−2)前記工程(A1−1)で得られた混合物とニッケルイオン形成化合物とを混合する工程
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(A)で得られた混合物における前記ニッケルイオン形成化合物の終濃度が、0.1μM以上10mM未満である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記工程(B)において、前記工程(A)で得られた混合物を所定条件に加熱した後、前記混合物にカルシウム塩を混合する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記所定条件が、35℃以上40℃以下の温度で2分間以上5分間以下インキュベーションする条件である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記ニッケルイオン形成化合物が、酢酸ニッケル、リン化ニッケル、硫化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルおよび安息香酸ニッケルからなる群より選ばれた化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 血液検体と、活性化剤と、リン脂質と、ニッケルイオン形成化合物と、カルシウム塩とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、
    前記試料調製部で得られた測定試料から凝固反応に伴う変化を示す凝固情報を取得する検出部と、
    前記検出部によって取得された光学的情報に基づいて、前記測定試料の凝固時間を算出する算出部と、
    活性化剤と、リン脂質と、ニッケルイオン形成化合物と、カルシウム塩とを収容する試薬収容部と
    を備え、
    前記試料調製部が、
    前記試薬収容部から前記活性化剤、前記リン脂質および前記ニッケルイオン形成化合物を取得し、前記活性化剤と前記リン脂質と前記ニッケルイオン形成化合物と血液検体とを混合して試料を調製し、
    前記試薬収容部から前記カルシウム塩を取得し、前記カルシウム塩と前記試料とを混合して測定試料を得る、
    凝固時間の測定装置。
  8. ニッケルイオン形成化合物を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の凝固時間の測定方法に用いるための凝固時間測定用試薬。
  9. 前記ニッケルイオン形成化合物が、酢酸ニッケル、リン化ニッケル、硫化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルおよび安息香酸ニッケルからなる群より選ばれた化合物である、請求項8に記載の凝固時間測定用試薬。
  10. 第1試薬容器に収容された活性化剤とリン脂質とを含む第1試薬と、
    第2試薬容器に収容されたニッケルイオン形成化合物を含む第2試薬と、
    第3試薬容器に収容されたカルシウム塩を含む第3試薬と
    を含む試薬キット。
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