JP7153519B2 - 凝固時間測定用試薬及びその製造方法、試薬キット及び凝固時間の測定方法 - Google Patents

凝固時間測定用試薬及びその製造方法、試薬キット及び凝固時間の測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定用試薬及びその製造方法に関する。また、本発明は、APTT測定用試薬キットに関する。さらに、本発明は、APTTの測定方法に関する。
APTTとは、内因系凝固因子の機能を反映する凝固時間である。APTTの測定は、内因系凝固因子のスクリーニング検査、ヘパリン療法のモニタリングなどに用いられている。近年、APTTの測定は、ループスアンチコアグラント(LA)のスクリーニング検査にも応用されている。LAは、抗リン脂質抗体症候群の責任抗体の一種である。LAは血液凝固に必要なリン脂質を阻害するので、LAが存在する血液検体ではAPTTが延長する。スクリーニング検査でAPTTの延長が認められた場合、内因系凝固因子の異常又はLAなどの自己抗体の存在が疑われる。
APTTの測定では、内因系凝固因子の活性化及び凝固の促進のため、活性化剤及びリン脂質が用いられる。活性化剤及びリン脂質の種類及び組成は多様であり、APTT測定用試薬(以下、「APTT試薬」ともいう)も種々市販されている。市販のAPTT試薬を用いた測定では、正常な血液検体の凝固時間は約30秒と概ね一様である。しかし、LAに対する感度は、それぞれの試薬で大きく異なることが知られている。例えば、非特許文献1には、合成リン脂質としてホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)、活性化剤としてエラグ酸を含むAPTT試薬を用いて、LAに対する感度を検討したことが記載されている。この文献には、APTT試薬におけるPS濃度が低いほど、LAに対する感度の指標であるRosner Indexが大きくなることが記載されている。
奥田昌宏ら、日本検査血液学会雑誌、第3巻第1号第124-131頁、2002年
市販のAPTT試薬の中には、LAに対する感度が高いと評される試薬がある。しかし、LA陽性検体の中にはLA濃度が低い検体があるので、それらの試薬もLAに対する感度の点で改善の余地がある。LAの検出に特化したAPTT試薬として、リン脂質を低濃度で含む試薬がある。この試薬ではリン脂質の濃度が低いので、LAによるリン脂質の阻害反応が表れやすくなり、LAに対する感度が向上している。しかし、そのような試薬を用いた測定では、正常な血液検体の凝固時間も通常より長くなる。LAの検出に特化したAPTT試薬は、内因系凝固因子のスクリーニング検査に適さない場合がある。また、上述のとおり、APTT試薬は、ヘパリン療法のモニタリングにも用いられる。ヘパリン療法では、APTTに基づいてヘパリンの抗凝固効果をモニタリングして、ヘパリンの投与量を調整する。それゆえ、APTT試薬のヘパリンに対する感度は、高すぎても低すぎても好ましくない。よって、正常な血液検体の凝固時間を変動せず、LAに対する感度が向上し、且つヘパリンに対して適切な感度を有するAPTT試薬の開発が求められている。
上記のとおり、非特許文献1には、APTT試薬におけるPS濃度が、LAに対する感度に影響することが記載されている。しかし、本発明者らは、APTT試薬のリン脂質の組成について検討を行った結果、PS濃度だけでなく、PCの濃度に対するPSの濃度の比もLAに対する感度に影響することを見出した。また、本発明者らが見出したリン脂質の組成を有するAPTT試薬は、正常血漿の凝固時間を変動せず、ヘパリンに対して適切な感度を有していた。これらの知見より、本発明者らは、本発明を完成した。
本発明は、PC、PS及びPEを含み、PCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下である、APTT測定用試薬を提供する。
本発明は、PC、PS及びPEを含む第1試薬と、カルシウムイオンを含む第2試薬とを含み、第1試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下である、APTT測定用試薬キットを提供する。
本発明は、血液検体と、PC、PS及びPEを含む第1試薬と、カルシウムイオンを含む第2試薬とを混合して、凝固時間を測定することを含み、第1試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下である、APTTの測定方法を提供する。
本発明は、PC、PS及びPEを混合することを含む、APTT測定用試薬の製造方法であって、該試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下である、試薬の製造方法を提供する。
本発明によれば、正常な血液検体の凝固時間を変動せず、LAに対する感度が向上し、且つヘパリンに対して適切な感度を有するAPTT試薬及び試薬キットが提供される。また、本発明によれば、該APTT試薬の製造方法及び該APTT試薬を用いたAPTTの測定方法が提供される。
本実施形態のAPTT試薬の一例を示す模式図である。 本実施形態のAPTT試薬キットの一例を示す模式図である。 PE濃度を変動したAPTT試薬のPS/PEの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットしたグラフである。 PC濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットしたグラフである。 PS濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットしたグラフである。 PC濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値に対してLA比をプロットしたグラフである。 PC濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値に対してヘパリン比をプロットしたグラフである。 PS/PCの値を一定にしたAPTT試薬のPS濃度に対してLA比をプロットしたグラフである。 PS/PCの値を一定にしたAPTT試薬のPS濃度に対してヘパリン比をプロットしたグラフである。 リン脂質の組成を一定にしたAPTT試薬のエラグ酸濃度に対してLA比をプロットしたグラフである。
[1.活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬]
本実施形態のAPTT試薬は、リン脂質としてPC、PS及びPEを含む。APTT試薬に含まれるリン脂質は、天然由来リン脂質であってもよく、合成リン脂質であってもよい。天然由来のリン脂質としては、例えばウサギ脳、ウシ脳、ヒト胎盤、大豆、卵黄などに由来するリン脂質が挙げられる。本実施形態では、LAに対する感度を向上させる観点から、合成リン脂質又は純度99%以上に精製された天然由来リン脂質が好ましい。リン脂質は、固形でもよいし、クロロホルムなどの有機溶媒に溶解された溶液でもよい。
PC、PS及びPEの脂肪酸側鎖(アシル基)は特に限定されないが、例えば炭素数8以上20以下、好ましくは炭素数14以上18以下のアシル基が挙げられる。そのようなアシル基としては、例えばラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基などが挙げられる。PC、PS及びPEはいずれも分子内に2つの脂肪酸側鎖を有する。PC、PS及びPEの各分子における2つの脂肪酸側鎖は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
具体的なPCとしては、例えばジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンなどが挙げられる。具体的なPSとしては、例えばジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアロイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリンなどが挙げられる。具体的なPEとしては、例えばジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。
本実施形態では、APTT試薬中のリン脂質は、リポソームの形態にあることが好ましい。リポソームの平均粒子径は特に限定されないが、例えば1000 nm以下であり、好ましくは100 nm以上800 nm以下である。本明細書において「リポソームの平均粒子径」とは、動的光散乱法を測定原理とする粒子径測定装置「ゼータサイザーナノZSP」(スペクトリス株式会社)を粒子径測定モードで用いて、リポソームの分散液を25℃で測定することにより取得される、キュムラント法に基づくZ平均粒子径である。リポソームの分散液の分散媒には、TAPS緩衝液を用いる。上記の測定装置はデータ解析ソフトを搭載しており、測定データを自動的に解析してZ平均粒子径を算出する。
本実施形態のAPTT試薬は、PCの濃度に対するPSの濃度の比(以下、「PS/PC」ともいう)が0.16以上0.25以下であることを特徴とする。PS/PCは、試薬中のPS濃度の値を、試薬中のPC濃度の値で除算することにより算出される。PS/PCの下限は、例えば0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23及び0.24から選択してもよい。PS/PCの上限は、LA及びヘパリンに対する感度の観点から0.25が好ましい。PS/PCの上限は、例えば0.25、0.24、0.23、0.22、0.21、0.20、0.19、0.18及び0.17から選択してもよい。PS/PCの数値範囲は、上記の上限及び下限の数値を組み合わせて適宜決定できる。そのようなPS/PCの数値範囲としては、0.16以上0.25以下の他、例えば0.16以上0.24以下、0.17以上0.25以下、0.17以上0.24以下などが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されない。
APTT試薬中のPC、PS及びPEの各濃度は、APTT試薬の調製に用いたPC、PS及びPEのそれぞれの重量を、APTT試薬の調製のために添加した液体の体積で除算することにより、PC、PS及びPEのそれぞれの濃度を算出できる。PC、PS及びPEの純度は99%以上であることが好ましい。具体例を挙げると、次のとおりである。固形のPC、PS及びPEをそれぞれ50 mg、10 mg及び15 mg秤量して、これらをクロロホルムに溶解する。得られたリン脂質/クロロホルム溶液から、エバポレーターによりクロロホルムを蒸発させてリン脂質の薄膜を得る。このリン脂質の薄膜に緩衝液(100 mL)を添加してリン脂質を膨潤し、リポソーム含有緩衝液を得る。このリポソーム含有緩衝液の全量と、活性化剤の溶液(900 mL)とを混合して、APTT試薬を得る。このとき、得られたAPTT試薬中のPC、PS及びPEの濃度は、それぞれ50μg/mL(50 mg/1000 mL)、10μg/mL(10 mg/1000 mL)及び15μg/mL(15 mg/1000 mL)となる。なお、本発明は、この例に限定されない。
本実施形態のAPTT試薬は、LA及びヘパリンに対する感度の観点から、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であることを特徴とする。PSの濃度の下限は、例えば7、8、9、10、11及び12μg/mLから選択してもよい。PSの濃度の上限は、例えば13、12、11、10、9及び8μg/mLから選択してもよい。PSの濃度の数値範囲は、上記の上限及び下限の数値を組み合わせて適宜決定できる。そのようなPSの濃度の数値範囲としては、7μg/mL以上13μg/mL以下の他、例えば7μg/mL以上12μg/mL以下、8μg/mL以上13μg/mL以下などが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されない。
PS/PC及びPS濃度が上記の数値範囲内であれば、APTT試薬におけるPCの濃度は、特に限定されない。すなわち、APTT試薬におけるPCの濃度は、PS/PCの値及びPS濃度から決定できる。例えば、PS/PCの値が0.25であり、PSの濃度が7μg/mLであるとき、PCの濃度は28μg/mLとなる。本実施形態では、APTT試薬におけるPCの濃度の上限を、例えば50μg/mL未満としてもよい。この場合、APTT試薬におけるPCの濃度の上限は、例えば49、48、47、46及び45μg/mLから選択してもよい。また、APTT試薬におけるPCの濃度の下限は、例えば28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43及び44μg/mLから選択してもよい。PCの濃度の数値範囲は、上記の上限及び下限の数値を組み合わせて適宜決定できる。APTT試薬におけるPCの濃度の数値範囲としては、例えば28μg/mL以上50μg/mL未満、28μg/mL以上49μg/mL以下、30μg/mL以上50μg/mL未満、30μg/mL以上49μg/mL以下などが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されない。
あるいは、APTT試薬におけるPCの濃度の上限を60μg/mLとしてもよい。この場合、APTT試薬におけるPCの濃度の下限は50μg/mLより高い値が好ましく、例えば51、52、53、54、55μg/mLから選択してもよい。PCの濃度の数値範囲は、これらの上限及び下限の数値を組み合わせて適宜決定できる。APTT試薬におけるPCの濃度の数値範囲は、例えば50μg/mLより高く且つ60μg/mL以下、51μg/mL以上60μg/mL以下などが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されない。
APTT試薬におけるPEの濃度は、特に限定されない。APTT試薬におけるPEの濃度の下限は、9μg/mLより高い値が好ましく、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18及び19μg/mLから選択してもよい。APTT試薬におけるPEの濃度の上限は、25μg/mL未満が好ましく、例えば24、23、22、21及び20μg/mLから選択してもよい。PEの濃度の数値範囲は、これらの上限及び下限の数値を組み合わせて適宜決定できる。APTT試薬におけるPEの濃度の数値範囲は、例えば9μg/mLより高く且つ25μg/mL未満、10μg/mL以上25μg/mL未満、10μg/mL以上20μg/mL以下などが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されない。
本実施形態のAPTT試薬に用いられる溶媒は、血液検査の分野で通常用いられる水性溶媒から適宜選択できる。そのような水性溶媒としては、例えば水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。緩衝液のpHは6以上8以下が好ましく、7以上7.6以下がより好ましい。緩衝液としては、例えばHEPES、TAPS、MOPS、BES、TESなどのグッド緩衝液、トリス塩酸緩衝液(Tris-HCl)、オーレンベロナール緩衝液、イミダゾール塩酸緩衝液などが挙げられる。必要に応じて、緩衝液にグリシンを添加してもよい。
本実施形態のAPTT試薬のpHは、通常6以上8以下であり、好ましくは7以上7.6以下である。APTT試薬のpHは、上記の緩衝液を添加することにより調整できる。
本実施形態のAPTT試薬は、活性化剤を含むことが好ましい。活性化剤は、内因系凝固経路における接触因子を活性化する物質であればよい。そのような物質としては、例えば、エラグ酸化合物、シリカ、カオリン、セライトなどが挙げられる。エラグ酸化合物は、エラグ酸、エラグ酸塩、及びエラグ酸の金属錯体のいずれであってもよい。活性化剤は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態では、活性化剤としてエラグ酸化合物を用いることが特に好ましい。エラグ酸化合物は、亜鉛イオン、マンガンイオン、アルミニウムイオンなどの金属イオンを含むエラグ酸の金属錯体であることが特に好ましい。
APTT試薬における活性化剤の濃度は、例えば活性化剤がエラグ酸化合物であれば、通常10μM以上400μM以下、好ましくは30μM以上150μM以下である。活性化剤がシリカであれば、通常0.1 mg/mL以上1.0 mg/mL以下、好ましくは0.2 mg/mL以上0.6 mg/mL以下である。
本実施形態のAPTT試薬は、接触因子を活性化し、沈殿物の発生を抑制する目的で、金属イオン形成化合物を含むことが好ましい。金属イオン形成化合物は、APTT試薬中で金属イオンを生じ、且つ該化合物から生じるアニオンが血液凝固反応を阻害しないかぎり、特に限定されない。金属イオン形成化合物としては、例えば、金属と有機酸又は無機酸との塩が挙げられる。それらの中でも金属と無機酸との塩が好ましく、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの酸と金属との塩が挙げられる。より好ましい金属塩は、亜鉛、マンガン、アルミニウム及びニッケルから選択される少なくとも1つの金属の塩であり、例えば塩化亜鉛、塩化マンガン、塩化アルミニウム、塩化ニッケルなどが挙げられる。金属イオン形成化合物は、無水物でもよいし、水和物でもよい。金属イオン形成化合物は1種でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。APTT試薬における金属イオン形成化合物の濃度は、例えば1μM以上1mM以下、好ましくは10μM以上500μM以下である。
APTT試薬がエラグ酸化合物を含む場合、エラグ酸化合物の沈殿を防止する目的で、APTT試薬は、芳香環を有するアミノ酸を含むことが好ましい。「芳香環を有するアミノ酸」とは、芳香族に属する環を側鎖に有するアミノ酸をいう。そのような芳香環としては、例えばベンゼン環、縮合ベンゼン環、非ベンゼン芳香環及び複素芳香環が挙げられる。アミノ酸中の芳香環の数は1つでもよいし、複数でもよい。アミノ酸が複数の芳香環を有する場合、それらの芳香環は同一でもよいし、互いに異なってもよい。
芳香環を有するアミノ酸は、好ましくはα-アミノ酸であり、より好ましくは、タンパク質中に見出される種類のアミノ酸及びその誘導体である。そのようなアミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、及びそれらの誘導体が挙げられる。誘導体とは、上記のアミノ酸に含まれる芳香環における水素原子又は水酸基が、適切な置換基により任意に置換された化合物である。そのような置換基は、血液凝固反応と、エラグ酸の可溶化又は分散化を妨げない置換基であれば、特に限定されない。好ましい実施形態では、芳香環を有するアミノ酸は、フェニルアラニン及びチロシンである。それらの中でもフェニルアラニンが特に好ましい。芳香環を有するアミノ酸は、L体、D体及びそれらの混合物のいずれでもよい。芳香環を有するアミノ酸は、天然由来のアミノ酸でもよいし、合成アミノ酸でもよい。
本実施形態のAPTT試薬は、保存性及び安定性を向上させるための添加物をさらに含んでいてもよい。そのような添加物としては、例えば防腐剤、抗酸化剤、安定化剤などが挙げられる。防腐剤としては、例えばアミノグリコシド系抗生物質などの抗生物質、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。安定化剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
本実施形態のAPTT試薬は、従来のAPTT試薬と同様に、一般的なAPTTの測定条件下で使用できる。また、本実施形態のAPTT試薬は、従来のAPTT試薬と同様に、内因系凝固因子のスクリーニング検査、ヘパリン療法のモニタリング、LAのスクリーニング検査に用いることができる。本実施形態のAPTT試薬と血液検体との混合比は、体積比で表して8:2~2:8程度であればよく、好ましくは5:5である。換言すると、本実施形態のAPTT試薬の添加量は、血液検体の量(体積)の0.25倍以上4倍以下の量(体積)であればよい。好ましくは、本実施形態のAPTT試薬の添加量は、血液検体の量(体積)と等量である。
本実施形態のAPTT試薬は、従来のAPTT試薬に比べて、LAに対する感度が向上している。LAに対する感度は、例えば、正常検体の凝固時間に対するLA含有検体の凝固時間の比(以下、「LA比」ともいう)を指標として評価できる。正常検体としては、複数の健常者の血漿から調製したプール血漿、又は市販の正常血漿が好ましい。LA含有検体としては、LA陽性患者から得た血漿、又は市販のLA含有血漿が好ましい。本実施形態のAPTT試薬をカルシウムイオン含有水溶液と共に適切に用いて、LA含有検体及び正常検体のAPTTを測定した場合、LA比は例えば1.77以上であることが望ましい。
本実施形態のAPTT試薬を用いて、正常検体の凝固時間を測定した場合、従来のAPTT試薬と同程度の測定結果を得ることができる。例えば、本実施形態のAPTT試薬をカルシウムイオン含有水溶液と共に適切に用いて、所定の正常血漿(例えばシスメックス株式会社製のコアグトロールIX)のAPTTを測定した場合、APTTが30秒付近(例えば25秒以上35秒以下)となることが望ましい。また、所定の異常血漿(例えばシスメックス株式会社製のコアグトロールIIX)のAPTT測定した場合、APTTが60~100秒の範囲内となることが望ましい。
ヘパリン療法では、APTTに基づいてヘパリンの抗凝固効果をモニタリングして、ヘパリンの投与量を調整する。それゆえ、APTT試薬のヘパリンに対する感度は、高すぎても低すぎても好ましくない。本実施形態のAPTT試薬は、ヘパリンに対して適切な感度を有する。ヘパリンに対する感度は、例えば、正常検体の凝固時間に対するヘパリン含有検体の凝固時間の比(以下、「ヘパリン比」ともいう)を指標として評価できる。ヘパリン含有検体としては、ヘパリンを投与された患者から得た血漿、又は市販のヘパリン含有血漿が好ましい。本実施形態のAPTT試薬をカルシウムイオン含有水溶液と共に適切に用いて、ヘパリン含有検体及び正常検体のAPTTを測定した場合、ヘパリン比は例えば2.19以上2.86以下であることが望ましい。
本実施形態では、APTT試薬を収容した容器を箱に梱包して、ユーザに提供してもよい。箱には、APTT試薬の使用方法などを記載した添付文書を同梱していてもよい。図1に、本実施形態のAPTT試薬の例を示す。図1を参照して、10は、APTT試薬を示し、11は、APTT試薬を収容した第1容器を示し、12は、梱包箱を示し、13は、添付文書を示す。
[2.活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬の製造方法]
本実施形態のAPTT測定用試薬の製造方法(以下、「製造方法」ともいう)は、製造されるAPTT試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下となり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下となるように、PC、PS及びPEを混合することを含む。本実施形態の製造方法により、上記の本実施形態のAPTT試薬を得ることができる。PC、PS及びPEの詳細については、上記のとおりである。
本実施形態では、PC、PS及びPEの混合により、リン脂質のリポソームを形成することが好ましい。PC、PS及びPEの混合とリポソームの形成は、例えば次のようにして行う。固形のPC、PS及びPEをそれぞれ所定の量を秤量して、これらを有機溶媒に溶解する。有機溶媒としては、リン脂質を溶解でき且つ沸点が低い溶媒が好ましい。そのような有機溶媒としては、例えばクロロホルム、メタノール及びそれらの混合液などが挙げられる。PC、PS及びPEはそれぞれ、あらかじめ有機溶媒に溶解された溶液の状態でも市販されている。本実施形態では、PC、PS及びPEの各溶液を混合してもよい。得られたリン脂質溶液から、エバポレーターなどにより有機溶媒を蒸発させて、リン脂質の薄膜を得る。このリン脂質の薄膜に適切な水性溶媒(好ましくは緩衝液)を添加する。水性溶媒によりリン脂質が膨潤されて、リポソーム含有液を得ることができる。これにより、リン脂質としてPC、PS及びPEを含む本実施形態のAPTT試薬を製造できる。水性溶媒及び緩衝液の詳細は、上記のとおりである。
本実施形態では、製造されるAPTT試薬におけるPS/PSが0.16以上0.25以下となり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下となるように、用いるPC及びPSの重量、及び水性溶媒の量を適宜決定する。後述の活性化剤を含む溶液を添加する場合は、該溶液の添加量を考慮して、用いるPC及びPSの重量、及び水性溶媒の量を決定する。APTT試薬中のPC、PS及びPEの各濃度の算出手順の詳細は、上記のとおりである。
本実施形態では、上記のリン脂質の膨潤を十分に行うため、リン脂質の薄膜に水性溶媒を添加した後、得られた液を撹拌することが好ましい。撹拌は、例えばスターラーなどを用いて行う。撹拌速度は、リポソームを破砕しない限り特に限定されず、例えば400 rpm以上650 rpm以下であればよい。撹拌時間は、通常45分以上120分以下、好ましくは60分以上90分以下である。
本実施形態では、リポソームを分散させるため、上記のリポソーム含有液に超音波を照射することが好ましい。超音波の周波数は、例えば35 kHz以上40 kHz以下であればよい。超音波の照射時間は、5分以上20分以下であればよい。
本実施形態では、リポソームの粒子径を均一化するため、超音波処理後のリポソーム含有液に、所望の孔径を有するメンブレンフィルター及びエクストルーダーを用いたエクストルーダー処理を行ってもよい。本明細書において「リポソームの粒子径」とは、ゼータサイザーナノZSP(スペクトリス株式会社)を粒子径測定モードで用いて、リポソームの分散液を25℃で測定することにより取得される値である。リポソームの分散液の分散媒には、TAPS緩衝液を用いる。エクストルーダー処理によってリポソームの平均粒子径を小さくすることにより、正常凝固時間が30秒以上に延長することを抑制する効果が期待される。
本実施形態のAPTT試薬の製造方法は、PC、PS及びPEの混合物(又は上記のリポソーム含有液)と、活性化剤を含む溶液とを混合することを含むことが好ましい。この場合、リン脂質としてPC、PS及びPEと、活性化剤とを含む本実施形態のAPTT試薬を製造できる。活性化剤の詳細については、上記のとおりである。活性化剤を含む溶液は、活性化剤を適切な水性溶媒に溶解又は分散することにより調製できる。活性化剤としてエラグ酸又はエラグ酸塩を用いる場合、エラグ酸又はエラグ酸塩を含む溶液に、金属イオン形成化合物を添加してもよい。これにより、エラグ酸の金属錯体を含む溶液を得ることができる。金属イオン形成化合物の詳細は、上記のとおりである。
必要に応じて、APTT試薬に、金属イオン形成化合物、芳香環を有するアミノ酸及び添加剤の少なくとも1種をさらに混合してもよい。芳香環を有するアミノ酸及び添加剤の詳細は、上記のとおりである。
[3.活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬キット]
本実施形態のAPTT測定用試薬キット(以下、「試薬キット」ともいう)は、リン脂質としてPC、PS及びPEを含む第1試薬と、カルシウムイオンを含む第2試薬とを含む。この試薬キットは、第1試薬におけるPS/PCが0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であることを特徴とする。第1試薬として、上記の本実施形態のAPTT試薬を用いることができる。第1試薬の詳細は、本実施形態のAPTT試薬について述べたことと同じである。
第2試薬は、血液検体と第1試薬との混合物に添加されて、血液凝固を開始する試薬である。本実施形態では、第2試薬は、カルシウムイオン含有水溶液であることが好ましい。カルシウムイオン含有水溶液としては、カルシウム塩の水溶液が好ましい。カルシウム塩としては、例えば塩化カルシウムなどが挙げられる。第2試薬中のカルシウムイオン濃度は、通常2.5 mM以上40 mM以下、好ましくは10 mM以上30 mM以下である。塩化カルシウムなどの水に容易に溶けるカルシウム塩を用いる場合、第2試薬中のカルシウムイオン濃度は、該カルシウム塩の濃度で表してもよい。
本実施形態では、第1試薬を収容した容器及び第2試薬を収容した容器を箱に梱包して、ユーザに提供してもよい。箱には、APTT試薬キットの使用方法などを記載した添付文書を同梱していてもよい。図2に、本実施形態のAPTT試薬キットの例を示す。図2を参照して、20は、APTT試薬キットを示し、21は、第1試薬を収容した第1容器を示し、22は、第2試薬を収容した第2容器を示し、23は、梱包箱を示し、24は、添付文書を示す。
本実施形態のAPTT試薬キットは、例えば希釈用水性媒体、参照用血漿などが挙げられる。希釈用水性媒体は、第1試薬を希釈するための水性媒体である。例えば、本実施形態のAPTT試薬キットを用いてLAを検出する場合、希釈用水性媒体で第1試薬を希釈して、第1試薬のリン脂質の濃度を低くする。これにより、LAによるリン脂質の阻害反応がより表れやすくなる。希釈した第1試薬及び第2試薬により測定されるAPTTは、血液検査の分野では「希釈APTT」(dAPTT)と呼ばれる。参照用血漿としては、例えば正常血漿、精度管理用血漿、各種の凝固因子が欠乏した血漿、LA含有血漿、ヘパリン含有血漿などが挙げられる。
[4.活性化部分トロンボプラスチン時間の測定方法]
本実施形態のAPTTの測定方法(以下、「測定方法」ともいう)は、血液検体と、リン脂質としてPC、PS及びPEを含む第1試薬と、カルシウムイオンを含む第2試薬とを混合して、凝固時間を測定することを含む。この測定方法は、第1試薬におけるPS/PCが0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であることを特徴とする。第1試薬として、上記の本実施形態のAPTT試薬を用いることができる。あるいは、第1試薬及び第2試薬として、上記の本実施形態の試薬キットを用いることができる。
血液検体としては、被検者から採取した血液又は該血液から調製した血漿が用いられる。好ましい血液検体は血漿である。血液検体には、血液検査に通常用いられる公知の抗凝固剤が添加されていてもよい。そのような抗凝固剤としては、例えばクエン酸3ナトリウムが挙げられる。本実施形態の測定方法によりヘパリン療法のモニタリングをする場合、ヘパリンを投与された被検者の血液又は血漿を用いる。血液検体は、第1試薬の添加前に、例えば35℃以上40℃以下の温度にて、30秒以上2分以下の時間でインキュベートしてもよい。
本実施形態では、まず、血液検体と第1試薬とを混合する。第1試薬と血液検体との混合比は、体積比で表して8:2~2:8程度であればよく、好ましくは5:5である。換言すると、第1試薬の添加量は、血液検体の量(体積)の0.25倍以上4倍以下の量(体積)であればよい。好ましくは、第1試薬の添加量は、血液検体の量(体積)と等量である。血液検体と第1試薬とを混合した後、混合物を所定の条件下でインキュベートすることが好ましい。所定の条件としては、例えば35℃以上40℃以下の温度にて、2分以上5分以下の時間でインキュベートする条件が挙げられる。
次いで、血液検体と第1試薬との混合物と、第2試薬とを混合する。以下では、血液検体、第1試薬及び第2試薬の混合物を「測定試料」ともいう。第2試薬の添加量は、測定試料におけるカルシウムイオン濃度が通常2mM以上20 mM以下、好ましくは4mM以上10 mM以下となる量(体積)であればよい。測定試料の調製は、用手法で行ってもよいし、全自動測定装置により行ってもよい。そのような装置としては、例えば、全自動血液凝固測定装置のCSシリーズ(シスメックス株式会社)などが挙げられる。
本実施形態では、第2試薬を添加した時を測定開始点として、凝固時間を測定する。凝固時間は、用手法により測定してもよいし、全自動測定装置により測定してもよい。用手法では、ストップウォッチなどを用いて、目視によりフィブリンが析出するまでの時間を測定する。全自動測定装置を用いる場合、凝固時間は、光学的測定法により測定してもよいし、物理的測定法により測定してもよい。光学的測定法では、例えば、測定試料に光を照射して、透過度、吸光度、散乱光強度などに関する光学的情報を取得し、取得した情報に基づいて凝固時間を取得する。物理的測定法では、例えば、スチールボールを用いて測定試料の粘度などに関する物理的情報を取得し、取得した情報に基づいて凝固時間を取得する。全自動測定装置は、特に限定されない。例えば、全自動血液凝固測定装置のCSシリーズ(シスメックス株式会社)は、透過度、吸光度、散乱光強度などの光学的情報に基づく凝固時間を測定できる。全自動血液凝固線溶測定装置のSTA Compact(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)は、粘度などの物理的情報に基づく凝固時間を測定できる。
本実施形態の測定方法では、血液検体の凝固時間に延長が認められる場合、LAの存否を判定してもよい。血液検体の凝固時間が延長しているか否かは、該血液検体の凝固時間と、正常検体の凝固時間との比較結果に基づいて判定することが好ましい。判定の一例を挙げると、次のとおりである。正常検体として、複数の健常者の血漿から調製したプール血漿、又はコアグトロールN(シスメックス株式会社)などの市販の正常血漿を用いる。正常検体の凝固時間を、血液検体と同様に、第1試薬及び第2試薬を用いて測定する。そして、血液検体の凝固時間が正常検体の凝固時間より長いとき、血液検体の凝固時間が延長していると判定する。
好ましい実施形態では、血液検体の凝固時間を正常検体の凝固時間で除算することにより、正常検体の凝固時間に対する血液検体の凝固時間の比(以下、「APTT比」ともいう)を取得する。そして、APTT比が所定の閾値以上であるとき、血液検体の凝固時間が延長していると判定する。APTT比の所定の閾値は、健常者及びAPTTの延長を認める種々の疾患の患者のAPTTデータの蓄積により定めることができる。APTT比の所定の閾値は、例えば1.2以上1.5以下の範囲から決定してもよい。
本実施形態では、血液検体にLAが含まれるか否かは、混合試験により判定することが好ましい。混合試験自体は、当該技術分野において公知である。判定の一例を挙げると、次のとおりである。血液検体と上記の正常検体との混合検体を調製する。血液検体と正常検体との混合比は、血液検体の量、後述の定量化指標の種類などに応じて適宜決定できる。混合検体における血液検体の比率は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90及び95%(v/v)から選択する。これらの中でも、血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体を調製することが好ましい。混合検体の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
上記の混合検体の凝固時間を、血液検体及び正常検体と同様に、第1試薬及び第2試薬を用いて測定する。そして、混合検体の凝固時間、血液検体の凝固時間及び正常検体の凝固時間に基づいて、血液検体にLAが含まれるか否かを判定する。例えば、混合検体の凝固時間が、血液検体の凝固時間と同程度であるとき、血液検体はLAを含む疑いがあると判定できる。一方、混合検体の凝固時間が、正常検体の凝固時間と同程度であるとき、血液検体はLAを含まないと判定できる。この場合、血液検体は凝固因子欠損が疑われる。
好ましい実施形態では、血液検体、正常検体及び混合検体の凝固時間を用いて定量化指標を取得し、取得した定量化指標の値に基づいて、血液検体がLAを含むか否かを判定する。例えば、定量化指標の値と所定の閾値とを比較して、定量化指標の値が所定の閾値より大きいとき、血液検体はLAを含む疑いがあると判定できる。一方、定量化指標の値が所定の閾値以下であるとき、血液検体はLAを含まないと判定できる。
定量化指標は、血液検体、正常検体及び混合検体の凝固時間に基づいて、交差混合試験の結果を定量的に評価するための指標であれば、特に限定されない。また、公知の定量化指標を用いてもよい。公知の定量化指標としては、例えば、Index of Circulating Anticoagulant (ICA)、Percent Correction (PC)及びResponse Curve-Score (RC-S)などが挙げられる。それらの中でもICAが特に好ましい。ICAは、Pengo V.ら、Update of the guidelines for lupus anticoagulant detection. Journal of Thrombosis and Haemostasis 2009; 7: 1737-1740に開示され、PCは、Chang S-H.ら、"Percent Correction" Formula for Evaluation of Mixing Studies., Am J Clin Pathol 2002;117:62-73に開示され、RC-Sは、内藤澄悦ら、交差混合試験の新たな判定方法によるLA検出の評価と有用性.臨床病理、第60巻補冊、第166頁、2012に開示されている。
ICAは、ロスナー・インデックス(Rosner Index)とも呼ばれ、LA陽性検体の判定に用いられる指標である。ICAは、下記の式により算出される。
ICA = [(D-A)/G]×100
(式中、A:正常検体の凝固時間、D:血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体の凝固時間、G:血液検体の凝固時間)
PCは、下記のとおり、混合検体における血液検体の比率に応じて算出式が異なる。
PC(9:1) = [(G-B)/(G-A)]×100
PC(8:2) = [(G-C)/(G-A)]×100
PC(5:5) = [(G-D)/(G-A)]×100
PC(2:8) = [(G-E)/(G-A)]×100
PC(1:9) = [(G-F)/(G-A)]×100
(式中、A:正常検体の凝固時間、B:血液検体の比率が10%(v/v)の混合検体の凝固時間、C:血液検体の比率が20%(v/v)の混合検体の凝固時間、D:血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体の凝固時間、E:血液検体の比率が80%(v/v)の混合検体の凝固時間、F:血液検体の比率が90%(v/v)の混合検体の凝固時間、G:血液検体の凝固時間)
RC-Sは、ロスナー・インデックスを応用した指標であり、次のようにして算出される。まず、血液検体の比率が20及び50%(v/v)の混合検体についてのスコアを、下記の式により算出する。
RC-S(20) = [(C-B)/D]×100
RC-S(50) = [(D-C)/E]×100
(式中、B:血液検体の比率が10%(v/v)の混合検体の凝固時間、C:血液検体の比率が20%(v/v)の混合検体の凝固時間、D:血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体の凝固時間、E:血液検体の比率が80%(v/v)の混合検体の凝固時間)
次いで、血液検体の比率が20及び50%(v/v)の混合検体について、交差混合試験の反応曲線が直線であった仮定した場合のコントロールスコアを、下記の式により算出する。
RC-Sc(20) = [[(3×B+D)/4-B]/D]×100
RC-Sc(50) = [[(C+E)/2-B]/E]×100
(式中、B:血液検体の比率が10%(v/v)の混合検体の凝固時間、C:血液検体の比率が20%(v/v)の混合検体の凝固時間、D:血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体の凝固時間、E:血液検体の比率が80%(v/v)の混合検体の凝固時間)
そして、血液検体の比率が20及び50%(v/v)の各混合検体について、コントロールスコア(Sc)に対するスコア(S)の比率を算出し、算出した2つの比率の和を定量化指標とする(下記の式を参照)。
S/Sc(20+50) = (RC-S(20)/RC-Sc(20))×100+(RC-S(50)/RC-Sc(50))×100
本実施形態では、定量化指標の所定の閾値は、特に限定されない。所定の閾値は、健常者及びAPTTの延長を認める種々の疾患の患者のAPTTデータの蓄積により定めることができる。あるいは、正常検体群及びLA陽性検体群のそれぞれについて凝固時間を測定して、定量化指標の値を取得し、取得した値に基づいて、両群を明確に区別可能な値を、所定の閾値として設定できる。所定の閾値の算出には、ROC解析などの統計学的手法を用いてもよい。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
APTT試薬に含まれる3種のリン脂質(PE、PC及びPS)のうち1種の濃度を変動したときの、LA及びヘパリンに対する感度への影響を検討した。
(1) 試薬
(1.1) リポソームの調製
ジオレオイル(DO)PE(Avanti Polar Lipids, Inc.)、DOPC(Avanti Polar Lipids, Inc.)及びDOPS(Avanti Polar Lipids, Inc.)をそれぞれ所定の量で含むリン脂質/クロロホルム溶液を調製して、ナスフラスコに添加した。ナスフラスコをロータリエバポレーターで回転してクロロホルムを蒸発させ、ナスフラスコの内壁面にリン脂質の薄膜を形成した。1000 mLの緩衝液(TAPS、HEPES及びグリシン含有、pH 7.4)をナスフラスコに添加し、リン脂質の薄膜を膨潤して、リポソーム含有緩衝液を得た。リポソーム含有緩衝液をスターラーにより500 rpmで60分間撹拌した。その後、水浴型超音波装置UT-306H(シャープ株式会社)を用いてリポソーム含有緩衝液に37 kHzの超音波を15分間照射して、リポソームを分散した。リポソーム含有緩衝液に、0.2μmポリカーボネートメンブレン(Millipore社)及びEmulsiFlex-C50 (Avestin社)を用いたエクストルーダー処理を行って、リポソームの粒子径を均一化した。
(1.2) 活性化剤を含む溶液の調製
500 mgのエラグ酸(東京化成工業株式会社)を0.1 N水酸化ナトリウム水溶液に溶解してエラグ酸溶液を得た。得られたエラグ酸溶液と、10 mM TAPS緩衝液(pH 8.6)と、塩化亜鉛(キシダ化学株式会社)と、塩化アルミニウム(キシダ化学株式会社)とを混合して、活性化剤を含む溶液を得た。
(1.3) APTT試薬の調製
リポソーム含有緩衝液と、活性化剤を含む溶液とを混合して、リン脂質の組成が異なるAPTT試薬を得た。各APTT試薬中のリン脂質の組成は、表1~3に示すとおりであった。実施例1では、試薬中のPE、PC及びPSの標準濃度をそれぞれ15μg/mL、45μg/mL及び10μg/mLとした。APTT試薬中のリン脂質以外の成分の濃度は、次のとおりであった:10 mM TAPS、50 mM HEPES、1%(w/w)グリシン、0.1 mMエラグ酸、60μM塩化亜鉛及び50μM塩化アルミニウム。得られたAPTT試薬を、以下では「第1試薬」とも呼ぶ。
Figure 0007153519000001
Figure 0007153519000002
Figure 0007153519000003
(1.4) カルシウムイオン含有水溶液の調製
塩化カルシウム(キシダ化学株式会社)を純水に溶解して、25 mM塩化カルシウム水溶液を調製した。得られた塩化カルシウム水溶液を、以下では「第2試薬」とも呼ぶ。
(2) 血液検体
正常検体として、コアグトロールIX(シスメックス株式会社)を用いた。LA含有検体として、LA Positive Control(Precision Bio Logic社)を用いた。ヘパリン含有検体として、Heparin Control(Precision Bio Logic社)を用いた。
(3) 凝固時間の測定
凝固時間の測定は、全自動凝固時間測定装置CS-2000i(シスメックス株式会社)により行った。血液検体(50μl)を37℃で1分間加温した後、第1試薬(50μl)を添加し、37℃で3分間加温した。そして、血液検体と第1試薬との混合物に第2試薬(50μl)を添加し、波長660 nmにおける透過光量の変化を測定して、凝固時間を取得した。LAに対する感度の指標として、LA比を下記の式(I)より算出した。また、ヘパリンに対する感度の指標として、ヘパリン比を下記の式(II)より算出した。
(LA比)=(LA含有検体の凝固時間)/(正常検体の凝固時間) ・・・(I)
(ヘパリン比)=(ヘパリン含有検体の凝固時間)/(正常検体の凝固時間) ・・・(II)
(4) 結果
各血液検体の凝固時間、LA比及びヘパリン比を表4~6に示す。また、PE濃度を変動したAPTT試薬のPS/PEの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットした。同様に、PC濃度を変動したAPTT試薬及びPS濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットした。結果を図3~5に示す。
Figure 0007153519000004
Figure 0007153519000005
Figure 0007153519000006
血液検査の分野では一般に、APTT試薬は、正常検体の凝固時間が30秒付近となることが求められる。表4~6から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いても、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。また、図3~5から分かるように、PC濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値と、LA比とが相関することが示唆された。すなわち、PC濃度を変動したAPTT試薬のPS/PCの値が大きくなるに従って、LAに対する感度が向上することが明らかになった。
実施例2
APTT試薬においてPS濃度を一定にして、PC濃度を変動したときの、LA及びヘパリンに対する感度への影響をさらに検討した。比較のため、市販のAPTT試薬も用いた。
(1) 試薬
(1.1) 第1試薬及び第2試薬
リン脂質として、DOPE、DOPC及びDOPSを用いた。PCの濃度を変動したAPTT試薬を、実施例1と同様にして調製した。実施例2では、試薬中のPE、PC及びPSの標準濃度をそれぞれ15μg/mL、45μg/mL及び10μg/mLとした。各APTT試薬中のリン脂質の組成は、表7に示すとおりであった。カルシウムイオン含有水溶液として、実施例1と同じ第2試薬を用いた。
Figure 0007153519000007
(1.2) 市販のAPTT試薬
本実施形態のAPTT試薬と比較するため、4種の市販のAPTT試薬を用いた。以下、これらの市販の試薬をそれぞれ製品A~Dとも呼ぶ。製品AはトロンボチェックAPTT-SLA(シスメックス株式会社)であり、製品Bはコアグピア(登録商標)APTT-S(積水メディカル株式会社)であり、製品CはアクチンFS(シスメックス株式会社)であり、製品Dはヒーモスアイエル・シンサシルAPTT(アイ・エル・ジャパン株式会社)である。製品Aは、LA及びヘパリンに対する感度が中程度のAPTT試薬として知られる。製品Bは、LAに対する感度が高いAPTT試薬として知られる。製品Cは、ヘパリンに対する感度が中程度のAPTT試薬として知られる。製品Dは、ヘパリンに対する感度が高いAPTT試薬として知られる。なお、製品Cは、LAに対して感度がほとんどないことが知られている。
(2) 血液検体
LA含有検体として、Weak LA Positive Control(Precision Bio Logic社)を用いた。この検体は、実施例1で用いたLA含有検体よりもLAの含有量が低い。正常検体及びヘパリン含有検体は、実施例1と同じであった。
(3) 凝固時間の測定
実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬を用いて各血液検体の凝固時間を測定した。取得した凝固時間に基づいて、LA比及びヘパリン比を算出した。また、上記の市販の試薬を用いて凝固時間を測定し、LA比及びヘパリン比を算出した。いずれのAPTT試薬を用いた場合も、凝固時間の測定は、全自動凝固時間測定装置CS-2000i(シスメックス株式会社)により行った。
(4) 結果
各APTT試薬のリン脂質の組成、PS/PCの値、正常検体の凝固時間、LA比及びヘパリン比を表8に示す。表中、A~Dは、それぞれ製品A~Dを示す。また、実施例2で調製したAPTT試薬のPS/PCの値に対してLA比及びヘパリン比をプロットした。結果を図6及び7に示す。表8から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いた場合も、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。
Figure 0007153519000008
表8に示されるように、本実施形態のAPTT試薬のいずれを用いた場合も、LA比及びヘパリン比は、製品Aを用いた場合よりも高かった。また、本実施形態のAPTT試薬のいずれを用いた場合も、LA比は、LAに対する感度が高い製品Bを用いた場合よりも高かった。よって、APTT試薬のPS/PCの値が0.17以上であるとき、LAに対する感度を向上できることが示唆された。
実施例2では、ヘパリンに対する感度が異なる製品C及びDを用いた場合のヘパリン比を指標として、適切なヘパリン比が得られるリン脂質の組成を検討した。具体的には、ヘパリン比が2.19以上2.86以下となるPS/PCを検討した。表8より、APTT試薬のPS/PCの値が0.17以上0.25以下であるとき、ヘパリンに対する感度がより適切となることが示唆された。
実施例3
APTT試薬において濃度比PS/PCを一定にして、各リン脂質の濃度を変動したときの、LA及びヘパリンに対する感度への影響を検討した。
(1) 試薬及び血液検体
リン脂質として、DOPE、DOPC及びDOPSを用いた。PS/PCの値が0.22で一定となるように各リン脂質の濃度を変動したAPTT試薬を、実施例1と同様にして調製した。各APTT試薬中のリン脂質の組成は、表9に示すとおりであった。カルシウムイオン含有水溶液として、実施例1と同じ第2試薬を用いた。正常検体、LA含有検体及びヘパリン含有検体は、実施例2と同じであった。
Figure 0007153519000009
(2) 凝固時間の測定
実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬を用いて各血液検体の凝固時間を測定した。取得した凝固時間に基づいて、LA比及びヘパリン比を算出した。
(3) 結果
各APTT試薬のリン脂質の組成、PS/PCの値、正常検体の凝固時間、LA比及びヘパリン比を表10に示す。また、実施例3で調製したAPTT試薬のPS濃度に対してLA比及びヘパリン比をプロットした。結果を図8及び9に示す。表10から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いた場合も、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。
Figure 0007153519000010
実施例2で用いた製品BのLA比をLAに対する感度の指標として、APTT試薬中のPS濃度を検討した。すなわち、LA比が1.77以上となるPS濃度を検討した。表10、図8及び図9より、APTT試薬中のPS濃度が4μg/mL以上13μg/mL以下であるとき、LAに対する感度が向上することが示唆された。また、製品C及びDのヘパリン比をヘパリンに対する感度の指標として、適切なPS濃度を検討した。すなわち、ヘパリン比が2.19以上2.86以下となるPS濃度を検討した。表10、図8及び図9より、APTT試薬中のPS濃度が7μg/mL以上であるとき、ヘパリンに対する感度が適切であることが示唆された。これらの検討結果より、APTT試薬中のPS濃度を7μg/mL以上13μg/mL以下とすることで、LAに対する感度が向上し、且つヘパリンに対する感度が適切となることが示唆された。
参考例1
APTT試薬においてリン脂質の組成を一定にして、エラグ酸の濃度を変動したときの、LAに対する感度への影響を検討した。
(1) 試薬及び血液検体
リン脂質として、DOPE、DOPC及びDOPSを用いた。エラグ酸の濃度の異なるAPTT試薬を、実施例1と同様にして調製した。各APTT試薬中のエラグ酸の濃度は、32、48、64、80、96、112又は128μMであった。いずれのAPTT試薬においても、PE、PC及びPSの濃度はそれぞれ15μg/mL、45μg/mL及び10μg/mLであり、PS/PCは0.22であった。カルシウムイオン含有水溶液として、実施例1と同じ第2試薬を用いた。正常検体及びLA含有検体は、実施例1と同じであった。
(2) 凝固時間の測定
実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬を用いて各血液検体の凝固時間を測定した。取得した凝固時間に基づいて、LA比を算出した。
(3) 結果
各APTT試薬のエラグ酸の濃度、正常検体の凝固時間及びLA比を表11に示す。また、参考例1で調製したAPTT試薬のエラグ酸の濃度に対してLA比をプロットした。結果を図10に示す。表11から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いた場合も、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。
Figure 0007153519000011
表11及び図10から分かるように、APTT試薬中のエラグ酸の濃度は、LAに対する感度にほとんど影響しないことが分かった。
実施例4
APTT試薬における濃度比PS/PCを、標準濃度のAPTT試薬よりも低くしたときの、LA及びヘパリンに対する感度への影響を検討した。
(1) 試薬及び血液検体
リン脂質として、DOPE、DOPC及びDOPSを用いた。PS/PCの値が標準濃度のAPTT試薬より低いAPTT試薬を、実施例1と同様にして調製した。実施例4では、試薬中のPE、PC及びPSの標準濃度をそれぞれ15μg/mL、45μg/mL及び10μg/mLとした。各APTT試薬中のリン脂質の組成は、表12に示すとおりであった。表中、APTT試薬1は、標準濃度のAPTT試薬であった。APTT試薬2及び3では、PS濃度を下げることにより、PS/PCの値をAPTT試薬1より低くした。APTT試薬4及び5では、PC濃度を上げることにより、PS/PCの値をAPTT試薬1より低くした。比較のため、実施例2で用いた製品A及びDを実施例4でも用いた。カルシウムイオン含有水溶液として、実施例1と同じ第2試薬を用いた。正常検体、LA含有検体及びヘパリン含有検体は、実施例2と同じであった。
Figure 0007153519000012
(2) 凝固時間の測定
実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬を用いて各血液検体の凝固時間を測定した。取得した凝固時間に基づいて、LA比及びヘパリン比を算出した。
(3) 結果
各APTT試薬のリン脂質の組成、PS/PCの値、各検体の凝固時間、LA比及びヘパリン比を表13に示す。表13から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いた場合も、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。
Figure 0007153519000013
実施例4では、実施例2で用いた製品BのLA比(1.77)を、APTT試薬のLAに対する感度の指標とした。表13に示されるように、APTT試薬1~5のいずれを用いた場合もLA比は1.77以上であった。また、実施例4では、実施例2で用いた製品C及びDのヘパリン比を、APTT試薬のヘパリンに対する感度の指標とした。すなわち、ヘパリン比が2.19以上2.86以下となるPS/PCの値を検討した。表13に示されるように、APTT試薬1及び2を用いた場合、ヘパリン比が2.19以上2.86以下であった。よって、APTT試薬のPS/PCの値を0.16以上とすることで、LAに対する感度が向上し、且つヘパリンに対する感度が適切となることが示唆された。
表13に示されるように、PS/PCが0.16よりも低いAPTT試薬では、ヘパリンに対する感度が過度に高くなる傾向があった。ヘパリンはマイナス電荷を有する物質であり、PSもマイナス電荷を有するリン脂質である。よって、リポソーム表面におけるPSの割合が減ると、リポソーム表面のマイナス電荷が減少して、ヘパリンはリポソームと相互作用しやすくなる。そのため、PS/PCが低いAPTT試薬では、ヘパリンに対する感度が高くなったと考えられる。しかし、ヘパリンに対する感度が過度に高いAPTT試薬は、ヘパリン療法のモニタリングには適さない。実施例2及び4の結果より、PS/PCの値を0.16以上0.25以下とすることにより、APTT試薬のLAに対する感度を向上し、且つヘパリンに対する感度を適切になることが示唆された。
参考例2
APTT試薬において濃度比PS/PCを一定にして、各リン脂質の濃度を標準濃度より下げたときの、LA及びヘパリンに対する感度への影響を検討した。
(1) 試薬及び血液検体
リン脂質として、DOPE、DOPC及びDOPSを用いた。PS/PCの値が0.22で一定となるように各リン脂質の濃度を標準濃度より下げたAPTT試薬を、実施例1と同様にして調製した。参考例2では、試薬中のPE、PC及びPSの標準濃度をそれぞれ15μg/mL、45μg/mL及び10μg/mLとした。各APTT試薬中のリン脂質の組成は、表14に示すとおりであった。表中、APTT試薬1は、標準濃度のAPTT試薬であった。APTT試薬2では、各リン脂質の濃度がAPTT試薬1の1/2であり、APTT試薬3では、各リン脂質の濃度がAPTT試薬1の1/4であった。カルシウムイオン含有水溶液として、実施例1と同じ第2試薬を用いた。正常検体、LA含有検体及びヘパリン含有検体は、実施例2と同じであった。
Figure 0007153519000014
(2) 凝固時間の測定
実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬を用いて各血液検体の凝固時間を測定した。取得した凝固時間に基づいて、LA比及びヘパリン比を算出した。
(3) 結果
各APTT試薬のリン脂質の組成、PS/PCの値、各検体の凝固時間、LA比及びヘパリン比を表15に示す。表15から分かるように、いずれのAPTT試薬を用いた場合も、正常検体の凝固時間は30秒付近であった。
Figure 0007153519000015
参考例2では、実施例2で用いた製品C及びDのヘパリン比を、APTT試薬のヘパリンに対する感度の指標とした。すなわち、ヘパリン比が2.19以上2.86以下となるPS濃度を検討した。表15に示されるように、APTT試薬1を用いた場合、ヘパリン比が2.19であったが、APTT試薬2及び3を用いた場合、ヘパリン比が2.19より低かった。よって、APTT試薬中のPS濃度が低いとき、ヘパリンに対する感度が低下することが示された。参考例2の結果は、実施例3の結果とも整合する。
10: 試薬
11、21: 第1容器
12、23: 梱包箱
13、24: 添付文書
20: 試薬キット
22: 第2容器

Claims (18)

  1. ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)を含み、PCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であり、PEの濃度が9μg/mLより高く且つ25μg/mL未満である、活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬。
  2. 試薬におけるPCの濃度が、28μg/mL以上50μg/mL未満である請求項1に記載の試薬。
  3. 試薬におけるPCの濃度が、50μg/mLより高く且つ60μg/mL以下である請求項1に記載の試薬。
  4. 活性化剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載の試薬。
  5. 前記活性化剤が、エラグ酸化合物、シリカ、カオリン及びセライトからなる群より選択される少なくとも1種である請求項に記載の試薬。
  6. 前記活性化剤が、エラグ酸化合物であり、試薬におけるエラグ酸化合物の濃度が、10μM以上400μM以下である請求項又はに記載の試薬。
  7. 金属イオン形成化合物を含む請求項1~のいずれか1項に記載の試薬。
  8. 前記金属イオン形成化合物が、亜鉛、マンガン、アルミニウム及びニッケルから選択される少なくとも1つの金属の塩である請求項に記載の試薬。
  9. リン脂質がリポソームの形態にある請求項1~のいずれか1項に記載の試薬。
  10. 前記リポソームの平均粒子径が1000 nm以下である請求項に記載の試薬。
  11. ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む第1試薬と、
    カルシウムイオンを含む第2試薬と
    を含み、前記第1試薬におけるPCに対するPSの濃度比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であり、PEの濃度が9μg/mLより高く且つ25μg/mL未満である、
    活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬キット。
  12. 血液検体と、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む第1試薬と、カルシウムイオンを含む第2試薬とを混合して、凝固時間を測定することを含み、前記第1試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であり、PEの濃度が9μg/mLより高く且つ25μg/mL未満である、活性化部分トロンボプラスチン時間の測定方法。
  13. 前記第1試薬と前記血液検体との混合比が、体積比で表して8:2~2:8である請求項12に記載の方法。
  14. 前記血液検体の凝固時間に延長が認められる場合、前記血液検体におけるループスアンチコアグラントの存否を判定することをさらに含む請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記血液検体の凝固時間の延長が、前記第1試薬及び前記第2試薬を用いて正常検体の凝固時間を測定し、前記血液検体の凝固時間と前記正常検体の凝固時間との比較結果に基づいて判定される請求項14に記載の方法。
  16. ループスアンチコアグラントの存否が、前記第1試薬及び前記第2試薬を用いて、前記血液検体と前記正常検体との混合検体の凝固時間を測定し、前記混合検体の凝固時間、前記血液検体の凝固時間及び前記正常検体の凝固時間に基づいて判定される請求項15に記載の方法。
  17. 前記血液検体と前記第1試薬と前記第2試薬との混合物に光を照射して、透過度に関する光学的情報を取得し、前記光学的情報に基づいて凝固時間を取得する請求項1216のいずれか1項に記載の方法。
  18. ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)を混合することを含む、活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬の製造方法であって、前記試薬におけるPCの濃度に対するPSの濃度の比が0.16以上0.25以下であり、PSの濃度が7μg/mL以上13μg/mL以下であり、PEの濃度が9μg/mLより高く且つ25μg/mL未満である、前記試薬の製造方法。
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