しかしながら、特許文献2に係るパイプとホースの接続構造のリング状凸部では、フラット部の前方側に、リング状凸部の先端から遠い後方位置になるほど一定の割合で外径が長くなった部分が位置し、フラット部の後方側に、軸方向に略直交する平面が位置している。このため、フラット部の前後両端には角部が位置している。また、フラット部の軸方向の長さは短く設定されている。このように構成された従来のパイプとホースの接続構造によると、ホースにおけるフラット部に対向する部分に集中的に応力がかかるようになる。
このため、ホースに負荷される応力をリング状凸部の外周面全体に対向する部分に万遍なく分散させることが難しいとともに、ホースの内面をリング状凸部の外周面全体に略均一なシール圧力を確保しながら密着させることも難しい。それに加えて、このパイプとホースの接続構造では、ホースが2か所の角部に圧接するため、ホースに亀裂が生じることを確実に防止することは難しい。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、リング状凸部に圧接することによってホースに負荷される応力を十分に分散させることにより、ホースに亀裂が生じることをより確実に防止できるパイプとホースの接続構造を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するために、本発明に係るパイプとホースの接続構造の構成上の特徴は、パイプ(10)の先端に形成された圧入接続部(12)を、弾性を備えたホース(20)の開口部(22)に圧入してパイプとホースを接続することによって、パイプに形成された流路(18)とホースに形成された流路(21)との間で流体を移動させるパイプとホースの接続構造(A)であって、圧入接続部が、円筒部(12a)と、円筒部の外周部に軸方向に間隔を保って軸周り方向に沿って形成された複数のリング状凸部(13a,13b,13c)とで構成され、複数のリング状凸部の外周面(14)に、それぞれリング状凸部の先端から遠い後方位置になるほど外部側に盛り上がりながら外径が長くなった大径凸曲面(14a)が含まれていることにある。
本発明に係るパイプとホースの接続構造では、リング状凸部の外周面に、先端から遠い後方位置になるほど外部側に盛り上がりながら外径が長くなった大径凸曲面が形成されている。このため、リング状凸部との圧接によってホースにかかる応力が大径凸曲面に対向する部分全体にわたって分散されるようになる。これによって、ホースに圧入接続部を圧入するときに、ホースに亀裂が生じることが防止される。また、パイプとホースの接続後に、パイプに対してホースが繰り返し搖動してもホースの内面が当接している部分が曲面であるため、ホースに亀裂が生じることが防止される。
さらに、ホースの内面とリング状凸部の大径凸曲面全体がムラのない状態で密着するため、パイプとホースのシール圧力も十分に確保できる。このため、パイプとホースの接続部に漏れが生じることもより確実に防止される。なお、本発明に係る大径凸曲面は、リング状凸部の先端からリング状凸部の最大径部分またはその近傍にかけての部分に形成されているものとする。また、本発明における大径凸曲面の大径とは、断面形状における曲率半径が大きいことで、大径凸曲面は緩やかな角度で先端から遠い後方位置になるほど外部側に膨らんだ形状に形成される。また、本発明において、圧入接続部における後方位置は、圧入接続部の先端から遠い位置のことで、パイプの両端にそれぞれ圧入接続部が形成されている場合は、パイプの中央側が後方位置となる。
本発明に係るパイプとホースの接続構造の他の構成上の特徴は、複数のリング状凸部の外周面の後部が、それぞれ円筒部の軸方向に略直交する後部平面(14c)で構成され、大径凸曲面と後部平面との間に小径凸曲面(14b)が形成されていることにある。
本発明によると、リング状凸部の外周面の後部を構成する後部平面と大径凸曲面との間に小径凸曲面が形成されているため、リング状凸部の外周面全体に角部がなくなる。このため、リング状凸部に圧接することによってホースに亀裂が生じることをさらに確実に防止できる。
本発明に係るパイプとホースの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、ホースが、内径がDのゴムホースで構成されているときに、各リング状凸部の外径が1.25D〜1.45Dに設定されるとともに、リング状凸部の半径と円筒部の半径との差Hに対する各リング状凸部の軸方向の長さLの比であるL/Hの値が1〜4.5に設定されていることにある。
本発明によると、リング状凸部の半径と円筒部の半径との差と、リング状凸部の軸方向の長さとに一定の関係を持たせることにより、円筒部の表面からリング状凸部が突出した高さ(突出長さ)を、リング状凸部の軸方向の長さに対応した好適なものにすることができる。本発明に係る各部分の寸法関係は試験結果から得られたものであり、これによって、ホースに負荷される応力を十分に分散させることができるリング状凸部を備えたパイプとホースの接続構造を得ることができる。
なお、本発明においては、大径凸曲面の曲率半径も、リング状凸部の半径と円筒部の半径との差およびリング状凸部の軸方向の長さに応じて変更される。この場合、パイプの断面における大径凸曲面の後端部に対する仮想接線が円筒部の表面に平行していることが好ましい。これによると、リング状凸部の大径凸曲面が外部側に盛り上がるときの角度を、より好ましい値に設定できる。また、リング状凸部の半径と円筒部の半径との差Hは、ホースの厚みに対応させて設定され、前述した差Hは、ホースの厚みの1/8〜1/3程度に設定することが好ましい。
本発明に係るパイプとホースの接続構造のさらに他の構成上の特徴は、リング状凸部の半径と円筒部の半径との差Hが0.5〜1.5mmに設定されていることにある。
本発明における値は、自動車のラジエータに接続されるパイプとホースの接続構造で用いられるパイプの寸法として好適な値であり、この値も、試験結果から得られたものである。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係るパイプとホースの接続構造Aを示している。このパイプとホースの接続構造Aは、種々の装置に接続して用いることができ、例えば、自動車のエンジンルームに設置されたラジエータに接続され冷却水をエンジンに供給するために用いられる。このパイプとホースの接続構造Aは、パイプ10の両端にそれぞれホース20(図1,2では一方のホース20のみを図示している。)を接続して構成されている。
パイプ10は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの樹脂材料を一体成形して構成されており、正面視が図2に示したように略L字状に形成されている。パイプ10は、パイプ本体11の両端にそれぞれ圧入接続部12を形成するとともに、パイプ本体11の外周部における一方の圧入接続部12(ホース20で隠れている。)の近傍部分とパイプ本体11の中央外周部に固定部16を形成し、パイプ本体11の外周部における他方の圧入接続部12の近傍部分に固定部17を形成して構成されている。パイプ本体11および圧入接続部12の内部には連続した流路18(図4参照)が形成されている。
圧入接続部12は、図3および図4に示したように、パイプ本体11の端部に形成された円筒部12aの外周に、円筒部12aの先端側(図3および図4の左端側)から後方(図3および図4の右側)に向かって順に、リング状凸部13a,13b,13cおよびフランジ部13dを間隔を保って形成して構成されている。そして、リング状凸部13a,13b,13cおよびフランジ部13dのそれぞれの間には、円筒部12aの外周面で構成されるリング状フラット部15a,15b,15cが位置している。
リング状凸部13a,13b,13cは、それぞれ円筒部12aの先端側から後方に行くほど外径が大きくなっており、その断面形状は、図4に示したように(上下対称の部分)、略三角形に形成されている。また、各リング状凸部13a,13b,13cの外周面14(図3および図6参照)は、それぞれ前方から後方に向かって配置された大径凸曲面14a、小径凸曲面14bおよび後部平面14cで構成されている。大径凸曲面14aは、各リング状凸部13a,13b,13cの前端から後端近傍の部分に位置しており、前方から後方に向かうほど外部側に膨らむようにして外径が長くなっている。
小径凸曲面14bは、大径凸曲面14aの後端から小さな半円形を描くようにして後方から円筒部12aの軸心に直交する方向に向かうリング状の凸曲面に形成されている。また、後部平面14cは、小径凸曲面14bの後端から円筒部12aの軸心に直交する方向に向かって円筒部12aの外周面に連なるリング状の平面に形成されている。そして、このように構成された外周面14を備えたリング状凸部13a,13b,13cは、略同形に形成され、それぞれの最大外径(小径凸曲面14bの外径)は同じに設定されている。
リング状フラット部15aは、リング状凸部13a,13b間に位置し、リング状フラット部15bは、リング状凸部13b,13c間に位置し、リング状フラット部15cは、リング状凸部13cとフランジ部13dの間に位置している。そして、リング状フラット部15a,15bの外径は同じで、リング状フラット部15cの外径は、リング状フラット部15a,15bの外径よりも大きく設定されている。また、リング状フラット部15b,15cの軸方向の長さは同じで、リング状フラット部15aの軸方向の長さは、リング状フラット部15b,15cの軸方向の長さよりも長く設定されている。
パイプ本体11および円筒部12aの内径(流路18の直径)は全体に亘って同じ長さに設定されており、このため、円筒部12aにおけるリング状フラット部15cが位置する部分は、リング状フラット部15a,15bが位置する部分よりも肉厚になっている。また、フランジ部13dは、圧入接続部12に接続されるホース20の先端部が当接することで圧入接続部12のホース20に対する挿入長さを規制する部分で、リング状凸部13a,13b,13cよりも外径が大きくなっている。
固定部16,17は、パイプとホースの接続構造Aを所定の装置または躯体などに固定するためのもので、2つの固定部16の中央にはそれぞれネジを通すための挿通穴16aが形成され、固定部17の中央にはネジを螺合させるためのネジ穴17aが形成されている。なお、各挿通穴16aは、パイプ10の成形時に、リング状の金具をインサートすることによって形成され、ネジ穴17aは、パイプ10の成形時に、ナットをインサートすることによって形成されている。
ホース20は、例えば、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴムなどのゴム材料を管状に成形して構成されており、内部には流路21が形成されている。ホース20の内径(流路21の直径)は、ホース20内に圧入接続部12を圧入したときの拡管率(内径が延びる割合)が35%になるように設定されている。ホース20は、開口部22に圧入接続部12が圧入されることにより、パイプ10に接続され、開口部22の内周面に、圧入接続部12のリング状凸部13a,13b,13cが食い込むことで、パイプ10から外れることを防止される。
このリング状凸部13a,13b,13cの外径は、それぞれ円筒部12aの先端側から後方に行くほど大きくなっているとともに、外周面には、前方から後方に向かうほど外部側に膨らんだ大径凸曲面14aが備わっているため、圧入接続部12をホース20内に挿入する際には、挿入しやすく、挿入後は、圧入接続部12はホース20から抜けにくくなる。このため、パイプ10とホース20の接続に、締結具は不要になる。なお、圧入接続部12とホース20の接続部は、パイプとホースの接続構造A内を移動する液体または気体によって内部に生じる圧力が1.5Mpaまでのときには、ホース20が圧入接続部12から外れないように形成される。
このように構成されたパイプとホースの接続構造Aの実施例として、図5および図6に示した圧入接続部12の各部分の寸法を下記に記載した値のように設定した。この圧入接続部12では、円筒部12aの先端からフランジ部13dの後部までの長さaを28mm、円筒部12aの先端からフランジ部13dの前部までの長さbを25mm、フランジ部13dの外径cを27.6mm、リング状凸部13a,13b,13cの外径dを21.6mm、リング状フラット部15cの外径eを20mm、リング状フラット部15a,15bの外径fを19.2mm、パイプ本体11および円筒部12aの内径gを15.4mmとした。
また、リング状凸部13a,13b,13cの軸方向の幅hをそれぞれ3mm、リング状フラット部15aの軸方向の幅iを5mm、リング状フラット部15b,15cの軸方向の幅jを4.5mm、円筒部12aの先端からリング状凸部13aの前部までの幅kを2mmとした。そして、リング状凸部13a,13b,13cの半径と円筒部12aの半径の差lを1.2mm、大径凸曲面14aの曲率半径Rを4.5mm、小径凸曲面14bの曲率半径rを0.5mmとした。また、ホース20の外径を24mm、内径を16mmとした。
このように構成したパイプとホースの接続構造Aをテストしたところ、圧入接続部12とホース20の接続部の内部圧力が1.6Mpaまでのときには、圧入接続部12のリング状凸部13a,13b,13cおよびリング状フラット部15a,15b,15cと、ホース20の内面との間に殆ど隙間がなく密着性に優れたものとなり液漏れまたは気体漏れが生じなかった。また、圧入接続部12とホース20は強固に接続され、前述した内部圧力が1.6Mpaまでのときには、ホース20が圧入接続部12から外れることはなかった。
以上のように、本実施形態に係るパイプとホースの接続構造Aでは、リング状凸部13a,13b,13cの外周面14が、大径凸曲面14a、小径凸曲面14bおよび後部平面14cで構成されている。そして、大径凸曲面14aは、先端から遠い後方位置になるほど外部側に盛り上がりながら外径が長くなっており、小径凸曲面14bは、大径凸曲面14aと円筒部12aの軸心に直交する後部平面14cとの間に位置する凸曲面で構成されている。このため、リング状凸部13a,13b,13cの外周面14の全体に角部は形成されていない。
このように構成した結果、リング状凸部13a,13b,13cとの圧接によってホース20にかかる応力が大径凸曲面14aに対向する部分の全体にわたって分散されるようになるとともに、小径凸曲面14bがホース20に鋭く食い込むことがなくなる。これによって、ホース20に圧入接続部12を圧入するとき、およびホース20に圧入された圧入接続部12にホース20から引き抜かれる力が加わったときの双方の場合にホース20に亀裂が生じることがより確実に防止される。また、ホース20の内面とリング状凸部13a,13b,13cが全体にわたってムラなく密着するため、パイプ10とホース20のシール圧力も十分に確保できる。このため、パイプ10とホース20の接続部に漏れが生じることもより確実に防止される。
また、大径凸曲面14aの曲率半径を、リング状凸部13a,13b,13cおよび円筒部12aの大きさに応じて変更できるため、圧入接続部12の大きさが変更されてもその圧入接続部12に備わったリング状凸部13a,13b,13cおよび円筒部12aに対応した大径凸曲面14aを形成できる。この場合、リング状凸部13a,13b,13cの大きさ、特に軸方向の長さが長い場合、およびリング状凸部13a,13b,13cの外径と円筒部12aの外径との差が大きい場合は、大径凸曲面14aの曲率半径を大きくする。
そして、リング状凸部13a,13b,13cの大きさおよびリング状凸部13a,13b,13cの外径と円筒部12aの外径との差が小さい場合は、大径凸曲面14aの曲率半径を小さくする。これによって、ホース20に亀裂が生じることを防止できるとともに、パイプ10とホース20の間で流体が漏れることのないパイプとホースの接続構造Aが得られる。なお、リング状凸部13a,13b,13cの外径と円筒部12aの外径との差の値は、1.0〜3.0mmに設定しておくことが好ましい。
また、本実施形態では、圧入接続部12の内径を均一にするとともに、圧入接続部12における先端側から中央に位置するリング状フラット部15a,15bの外径よりもパイプ本体11側に位置するリング状フラット部15cの外径を大きくしている。このため、圧入接続部12におけるホース20からの負荷が大きく加わるリング状フラット部15cが形成された部分の肉厚を大きくして圧入接続部12の強度を高めることができる。また、パイプ10内を移動する液体または気体に圧力損失が生じることを防止することができる。
さらに、リング状凸部13a,13b,13cの外径をすべて同じにしている。このため、ホース20における圧入接続部12に接続される部分のうちのリング状凸部13a,13b,13cに対向する部分の拡管率がすべて同じになる。この結果、圧入接続部12に対するホース20の締結力が各部分で略等しくなり、パイプ10とホース20の接続が安定したものになる。すなわち、本実施形態では、リング状凸部13a,13b,13cの外径をホース20の拡管率に合わせて設定することでパイプ10とホース20の間に良好な締結力が生じるようにしている。
また、リング状フラット部15aの外径をリング状凸部13aの外径に対して所定値以上の差が生じるように設定するとともに、リング状フラット部15aの軸方向の長さを所定値以上に設定することで、ホース20の内面へのリング状凸部13aの食い込みが大きくなるようにしている。これによって、ホース20から圧入接続部12が抜けにくくなる。このように、本実施形態では、円筒部12aにおけるリング状フラット部15cが形成された部分の肉厚をリング状フラット部15a,15bが形成された部分の肉厚よりも厚くすることで、パイプ10を樹脂材料で構成しながら十分な強度を備えたものにすることができる。
つぎに、図7に示した試験用パイプの圧入接続部31,32を試験用のゴムホース30に圧入したときに、ゴムホース30の内周面に発生する応力を比較する試験を行った。圧入接続部31は、従来品のパイプに備わった圧入接続部に相当するものでリング状凸部31aの断面形状が、図8(a)に示したように、直角三角形になっている。また、圧入接続部32は、実施例品のパイプに備わった圧入接続部に相当するものでリング状凸部32a(図7に破線で示した部分)の断面形状が、図8(b)に示したように、外周縁部が凸状に湾曲した略三角形になっている。試験用パイプとしては、それぞれナイロンパイプを用いた。
圧入接続部31,32とゴムホース30は、各部分の寸法を変えた複数のものからそれぞれ一個ずつを一組として組み合わせて用いた。そして、圧入接続部32と試験用ホース30の各部分の寸法は、ゴムホース30の内径がDmmで、厚みがTmmのときに、圧入接続部31,32のリング状凸部31a,32aの直径が、1.35Dmmで、リング状凸部31a,32aの半径と円筒部31b,32bの半径との差Hmmが(1/3.3)×Tmmになっている。
また、リング状凸部32aの外周面は、大径凸曲面だけで構成されたおり、その曲率半径Rは、リング状凸部32aの軸方向の長さLmmとリング状凸部32aの半径と円筒部32bの半径との差Hmmに基づいて設定される。この試験においては、曲率半径Rは、すべて、図8(b)に示したリング状凸部32aの上端部の仮想接線mが、図8(b)に示したリング状凸部32aの下縁部と平行するように設定されている。
このように構成された圧入接続部31,32とゴムホース30を用いた試験の一例を示すと、試験で用いたすべてのゴムホース30の内径Dmmが14.2mm、厚みTが3.96mmのときに、試験で用いたリング状凸部31a,32aの高さHmmをすべて1.2mmとし、軸方向の長さLmmを、L/Hの値が1〜7になるようにしてリング状凸部31a,32aを形成したときに、従来品に対する実施例品の応力比は、図9に示したようになった。これは、圧入接続部31におけるL/Hの値が1のときの応力を1としたときに、各圧入接続部31,32から各ゴムホース30が受ける応力を1に対する比で示したものである。この場合の各リング状凸部31a,32aの軸方向の長さLmmは、それぞれ、1.2mm、2.4mm、3.6mm、4.8mm、6mm、7,2mm、8.4mmである。
この結果、圧入接続部31では、図9に破線で示したように、Lmmが長くなるにしたがって、応力比は、0.9、0.76、0.72、0.7と小さくなり、その後も僅かながら小さくなっていった。また、圧入接続部32では、図9に一点鎖線で示したように、L/Hの値が1のときには、応力比は0.83程度で、その後は、Lmmが長くなるにしたがって、応力比は、0.7、0.67、0.65と小さくなり、その後は殆ど応力比に変化はなかった。このように、圧入接続部32を用いたときには、圧入接続部31を用いたときよりも、圧力比が小さくなった。このことから、圧入接続部32を用いたときには、圧入接続部31を用いたときよりもゴムホース30に亀裂が生じ難いことが分かる。
また、図10に、L/Hの値が同じ圧入接続部31の応力比の値から圧入接続部32の応力比の値を引いた差の値を圧入接続部31の応力比の値で割った商の値を応力低減効果として数値で表わした。これによると、L/Hの値が1〜4.5のときに、圧入接続部31を用いた場合と比べて圧入接続部32を用いた場合に有効な応力低減効果が表れることがわかる。また、圧入接続部31,32とゴムホース30の各部分の寸法を他の値に変えて試験を行った場合にも、図9,10に示したグラフの線に沿った結果が得られた。
本発明に係るパイプとホースの接続構造は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、リング状凸部13a,13b,13cの大径凸曲面14aの曲率半径を同じにしているが、この曲率半径は、リング状フラット部15a,15b,15cの外径、前後方向の長さ等に応じて変えてもよい。例えば、リング状凸部13a,13bの大径凸曲面14aの曲率半径よりもリング状凸部13cの大径凸曲面14aの曲率半径を短くしたり、リング状凸部13aの大径凸曲面14aの曲率半径よりもリング状凸部13b,13cの大径凸曲面14aの曲率半径を短くしたりすることができる。この場合の大径凸曲面14aの曲率半径は、3.75mm〜13.0mm程度の範囲にすることが好ましい。
同様に、リング状凸部13a,13b,13cの小径凸曲面14bの曲率半径も、リング状フラット部15a,15b,15cの外径、リング状フラット部15a,15b,15cの前後方向の長さ、リング状凸部13a,13b,13cの大径凸曲面14aの曲率半径等に応じて変えてもよい。この場合の小径凸曲面14bの曲率半径は、0.3mm〜1.0mm程度の範囲にすることが好ましい。また、外周面14の後部は、円筒部12aの軸心に直交する後部平面14cに限らず、円筒部12aの軸心に直交する方向に対して多少傾斜した平面であっても、曲面であってもよい。
また、パイプ10を構成する樹脂材料としては、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂に限らず他の樹脂材料を用いてもよいし、鉄、銅、真鍮、アルミニウム等の金属材料を用いてもよい。さらに、ホース20は、ゴム製に限らず弾性を備えて伸縮するものであれば他の材料で構成されたものを用いてもよい。例えば、フッ素樹脂、ビニール、ポリエチレンなどを用いることができる。また、本発明に係るパイプとホースの接続構造のそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。