JP2017031483A - 高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材およびその製造方法、ならびにその鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手 - Google Patents

高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材およびその製造方法、ならびにその鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手 Download PDF

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【課題】高圧水素ガス環境下での機械的特性に優れ、良好な耐水素ガス脆化特性を備える高Mn鋼鋼材の提供。【解決手段】化学組成が、質量%で、C≦1.2%、N≦0.6%、Si:0.05〜1.0%、Mn:10〜60%、Cr:0〜20%、V、Ni、Cu及びCo:各々0〜5%、Al:0〜1%、Mo:0〜3%、W:0〜6%、Nb、Ti、Zr、Hf、Ta:各々0〜1.0%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.50%、残部:Fe及び不純物、不純物としてのP、S、Oが、P≦0.050%、S≦0.050%、O≦0.020%、0.05≦C+2N、2≦Cr+2Vであり、マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:90〜100%、bcc構造相:0〜10%及びhcp構造相:0〜10%であり、Cr系炭窒化物及びV系炭窒化物の少なくとも一方を析出させるMn鉄鋼材。【選択図】なし

Description

本発明は、高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材およびその製造方法、ならびにその鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手に関する。より詳しくは、本発明は、高圧水素ガス環境において優れた機械的特性を有する高強度の高Mn鋼鋼材およびその製造方法に関し、さらに、上記の鋼材からなり、水素を燃料として走行する燃料電池自動車(以下、「燃料電池自動車」という。)ならびに上記燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションで使用される高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手にも関する。
近年、燃料電池自動車の開発および水素ステーションの実用化研究が進められており、オーステナイト系ステンレス鋼はこれらに用いられる主要金属材料である。
これは、結晶構造として、面心立方(fcc)構造のオーステナイト系ステンレス鋼が、一般的に体心立方(bcc)構造または体心正方(bct)構造(以下、本明細書においてはこれらをまとめて「bcc構造」という。)の炭素鋼および低合金鋼に比べて、水素ガスによる脆化(以下、「水素ガス脆化」という。)に対して優れた耐性を有するためである。
しかし、高圧の水素ガス環境ではオーステナイト系ステンレス鋼も水素ガス脆化を起こす場合がある。
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼のうちで、SUS304等の準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、塑性変形に伴って水素脆化感受性の高いbcc構造のひずみ誘起マルテンサイト(α’マルテンサイト)を生成するため、水素ガス脆化を起こし易い。
一方、SUS316、SUS316L等の安定オーステナイト系ステンレス鋼は、常温では相変態を起こしにくいため、優れた耐水素ガス脆化特性を有する。
しかし、上記のSUS316およびSUS316Lでも、温度が低くなって常温を下回ると、それらの成分規格内でもCr、Ni等の含有量が低い場合にひずみ誘起マルテンサイトを生成し、水素ガス脆化を起こす。
さらに、燃料電池自動車の航続距離向上のため、燃料電池自動車に搭載される水素タンクの圧力は、近年では従来の45MPaよりも高い70MPaとなっている。
このため、非特許文献1に、高圧の水素ガス環境用のオーステナイト系ステンレス鋼として、その使用温度に応じて、下記の〔1〕式で表されるNi当量と呼ばれるパラメータ式に基づき、化学組成を厳格に管理したものを使用するべきことが提案されている。
Ni当量=12.6C+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65Cr+0.98Mo・・・〔1〕。
但し、〔1〕式中のC、Si、Mn、Ni、CrおよびMoは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
高圧ガス保安法に定められる自動車用圧縮水素容器例示基準では、水素ガス脆化を起こしにくいオーステナイト系ステンレス鋼として、上記Ni当量の下限値が規定され、該条件を満たすSUS316およびSUS316Lの使用が認められている。そして、実態として、所定のNi当量値を満足するように、高価なNiを成分規格の上限に近い量まで多量に含有させたSUS316およびSUS316Lが用いられている。
一方、現在、燃料電池自動車および水素ステーションでは、製造コストの低減が最大の課題となっている。したがって、高価なNiを多量に含有する材料を使用することは、燃料電池自動車および水素ステーションの低コスト化に対して大きな抵抗となる。このため、水素ガス脆化を起こしにくく、かつSUS316およびSUS316Lよりも安価なオーステナイト系ステンレス鋼の開発要望が極めて高い。
さらに、燃料電池自動車の航続距離向上のための高い水素タンク圧力に耐えられるように、上記オーステナイト系ステンレス鋼には、従来以上の高強度も要求される。このため、特に、1000MPa以上の引張強さを有する安価な高強度オーステナイト系ステンレス鋼の開発要望が大きい。
オーステナイト安定化作用を有し、かつNiよりも安価な元素として、Mnが挙げられる。オーステナイト系の高Mn鋼としては、例えば、Cr−Mn−Ni系の高N鋼であるAISI type 205ステンレス鋼およびC−Mn系のハッドフィールド鋼(Hadfield’s Steel)がよく知られている。
また、特許文献1〜5に、オーステナイト系の各種高Mn鋼が開示されている。
特開昭53−096912号公報 国際公開第2015/012357号 特開2007−126688号公報 特開平9−249940号公報 特開平10−121202号公報
山田敏弘、小林英男:高圧ガス、Vol.49(2012)No.10、pp.885−893 矢澤武男ら:鉄と鋼、Vol.83(1997)No.1、pp.60−65
前述のとおり、SUS304のようにオーステナイトの安定度が低く、塑性変形によりひずみ誘起マルテンサイトを生成するオーステナイト系ステンレス鋼は、水素ガス脆化を起こし易いので高圧の水素ガス環境で用いることはできない。
また、前記〔1〕式で表されるNi当量の規定値を満足させるために高価なNiを成分規格の上限に近い量まで多量に含有させたSUS316およびSUS316Lは、水素ガス脆化を起こしにくいものの高価である。
一方、既存のAISI type 205ステンレス鋼およびハッドフィールド鋼は、オーステナイトの安定度が高く塑性変形してもひずみ誘起マルテンサイトを生じない。さらに、これらの鋼は、上述のSUS316およびSUS316Lよりも安価である。しかし、本発明者らが70MPa以上という高圧水素ガス環境での水素ガス脆化特性を評価したところ、いずれも水素ガス脆化を起こし易く、上記高圧水素ガス環境ではこれらの鋼を使用できないことが判明した。
特許文献1で開示された鉄合金は、「水素脆化に対する抵抗性を持つ」とされている。しかしながら、本発明者らが水素ガス脆化特性を70MPa以上という高圧水素ガス環境で評価したところ、特許文献1の鉄合金は、その規定範囲内の化学組成を有していても、引張強さが800MPa以上になると水素ガス脆化を起こし易くなり、特に、引張強さが1000MPa以上になると耐水素ガス脆化特性が著しく劣化して、上記のような高圧の水素ガス環境では使用できないことが判明した。
特許文献2で開示された鋼材は、硫化物応力割れ(以下、「SSC」という。)に対して優れた耐性を有しているため、高強度油井用鋼材として適している。なお、上記のSSCは、腐食環境中で鋼材表面に発生した水素の鋼中への拡散と鋼材に負荷された応力との相乗作用によって破断に至る水素脆化の1種である。しかし、本発明者らが70MPa以上という高圧水素ガス環境で上記鋼材の水素ガス脆化特性を評価したところ、特許文献2の鋼材は、その規定範囲内の化学組成を有していても、水素ガス脆化を起こす場合のあることが判明した。このため、特許文献2で提案された鋼材は、70MPa以上という高圧の水素ガス環境での使用に対しては、改善すべき余地がある。
特許文献3で開示された鋼は、確かに、SUS316系鋼を上回る耐水素脆化感受性を有するため、高圧水素環境で使用するのに適している。しかし、特許文献3の鋼は、Cr含有量が10〜20%と高いため、鋼材コストの低減という観点から、改善すべき余地がある。
特許文献4で開示された鋼材は、SSCに対して優れた耐性を有しているため、高強度油井用鋼材として適している。しかし、本発明者らが70MPa以上という高圧水素ガス環境で上記鋼材の水素ガス脆化特性を評価したところ、特許文献4の鋼材は、その規定範囲内の化学組成を有していても、水素ガス脆化を起こす場合のあることが判明した。このため、特許文献4で提案された鋼材は、70MPa以上という高圧の水素ガス環境での使用に対しては、改善すべき余地がある。
特許文献5で開示された鋼材も、SSCに対して優れた耐性を有しているため、高強度油井用鋼材として適している。しかし、本発明者らが70MPa以上という高圧水素ガス環境で上記鋼材の水素ガス脆化特性を評価したところ、特許文献5の鋼材もまた、その規定範囲内の化学組成を有していても、水素ガス脆化を起こす場合のあることが判明した。このため、特許文献5で提案された鋼材は、70MPa以上という高圧の水素ガス環境での使用に対しては、改善すべき余地がある。
上記のように、これまでは1000MPa以上の引張強さおよび70MPa以上という高圧水素ガス環境での良好な耐水素ガス脆化特性を有し、さらに経済性にも優れる金属材料は存在しなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、Ni当量を管理したSUS316およびSUS316Lよりも安価で1000MPa以上の引張強さを有し、かつ高圧水素ガス環境(中でも70MPa以上の高圧水素ガス環境)下での機械的特性に優れて良好な耐水素ガス脆化特性を備える高Mn鋼鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、上記の鋼材からなる、高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手を提供することもまた、本発明の目的である。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、高圧水素ガス環境で十分な耐水素ガス脆化特性を確保するための調査を実施した。この調査には、既存のAISI type 205ステンレス鋼およびハッドフィールド鋼をベースにして化学組成を種々調整した鋼、ならびに従来提案されているオーステナイト系の高Mn鋼をベースにして化学組成を種々調整した高Mn鋼を用いた。その結果、下記(a)〜(h)の知見を得た。
(a)引張強さが1000MPa以上であり、かつオーステナイトの安定度が低く金属組織中にbcc構造のフェライトまたは/およびα’マルテンサイトの体積率が高いオーステナイト系の高Mn鋼は、70MPa以上という高圧水素ガス環境で極めて水素ガス脆化を起こし易い。
(b)同様に、引張強さが1000MPa以上であり、かつオーステナイトの安定度が低く金属組織中にhcp構造のεマルテンサイトの体積率が高いオーステナイト系の高Mn鋼は、70MPa以上という高圧水素ガス環境で極めて水素ガス脆化を起こし易い。
(c)Mnを多量に含有させることにより、高価なNiを含有させることなく、オーステナイトを安定化させることができる。しかし、高Mn鋼は、固溶化熱処理のままでは、安定して1000MPa以上の引張強さを得られない。
(d)AISI type 205ステンレス鋼およびハッドフィールド系鋼は、塑性変形でひずみ誘起マルテンサイトが生成しないにも拘わらず、70MPa以上という高圧水素ガス環境で水素ガス脆化を起こし易い。その理由は、積層欠陥エネルギーを低下させる元素である固溶型元素のN(窒素)および/またはC(炭素)を多く含有するためと考えられる。すなわち、AISI type 205ステンレス鋼は、一般に、質量%で、0.32〜0.40%のNおよび0.12〜0.25%のCを含有し、ハッドフィールド系鋼は、一般に、質量%で、0.9〜1.2%のCを含有する。このため、Nまたは/およびCを多量に含有する上記の鋼種では、積層欠陥が生じ易くなり、積層欠陥の生成によって変形の局所化が起こり、変形が局所化した部位で水素ガス脆化感受性が高まると考えられる。
(e)耐水素ガス脆化特性に及ぼすCとNの悪影響を排除するためには、固溶化熱処理後に時効処理を行えばよい。すなわち、時効処理によってCとNを、炭窒化物、炭化物および窒化物(以下、まとめて「炭窒化物」という。)として析出させれば、固溶Cおよび固溶Nの量が低減するので、十分な耐水素ガス脆化特性が得られる。
(f)上記時効処理を施して、Cr系または/およびV系の微細な炭窒化物を析出させれば、顕著な強度向上作用が得られる。
(g)上記微細な炭窒化物形成による、鋼中に含有されるCとNの強度向上への寄与は下記の[1]式で規定されるFn1で表すことができる。同様に、鋼中に含有されるVとCrの強度向上への寄与は下記の[2]式で規定されるFn2で表すことができる。
Fn1=C+2N・・・[1]、
Fn2=Cr+2V・・・[2]。
但し、[1]式中のCおよびN、ならびに[2]式中のCrおよびVは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
(h)Cr系または/およびV系の微細な炭窒化物によって十分な析出強化能を得て、1000MPa以上の引張強さを具備する高Mn鋼材の場合、下記の[3]式で表されるFn3が1.0以上である。
Fn3=Cr[p]+2V[p]・・・[3]。
但し、[3]式中のCr[p]およびV[p]は、それぞれ炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(質量%)を意味する。
本発明は、上記の内容に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示す高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材およびその製造方法、ならびにその鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手にある。
(1)化学組成が、質量%で、C:1.2%以下、N:0.6%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:10〜60%、Cr:0〜20%、V:0〜5%、Ni:0〜5%、Cu:0〜5%、Co:0〜5%、Al:0〜1%、Mo:0〜3%、W:0〜6%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Hf:0〜1.0%、Ta:0〜1.0%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.50%、残部がFeおよび不純物であり、不純物としてのP、SおよびOが、P:0.050%以下、S:0.050%以下およびO:0.020%以下で、さらに、下記[1]式で表されるFn1が0.5以上、下記[2]式で表されるFn2が2以上であり、
マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:90〜100%、bcc構造相:0〜10%およびhcp構造相:0〜10%からなり、マトリックス中にCr系炭窒化物およびV系炭窒化物の少なくとも一方が析出して、下記[3]式で表されるFn3が1.0以上であり、
引張強さが1000MPa以上である、
高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
Fn1=C+2N・・・[1]、
Fn2=Cr+2V・・・[2]
Fn3=Cr[p]+2V[p]・・・[3]
但し、[1]式中のCおよびN、ならびに[2]式中のCrおよびVは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。また、[3]式中のCr[p]およびV[p]は、それぞれ炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(質量%)を意味する。
(2)前記化学組成が、質量%で、Ni:0.1〜5%、Cu:0.1〜5%およびCo:0.1〜5%から選択される1種以上を含有する、上記(1)に記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
(3)前記化学組成が、質量%で、Al:0.005〜1%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜6%、Nb:0.01〜1.0%、Ti:0.001〜1.0%、Zr:0.001〜1.0%、Hf:0.001〜1.0%、Ta:0.001〜1.0%およびB:0.0001〜0.020%から選択される1種以上を含有する、上記(1)または(2)に記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
(4)前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.0050%およびREM:0.0001〜0.50%から選択される1種以上を含有する、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
(5)マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:100%である、上記(1)から(4)までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
(6)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の化学組成である鋼材に、下記の固溶化熱処理および時効処理を順に含むように処理する、上記(1)から(5)までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材の製造方法。
固溶化熱処理:1000〜1200℃の温度で10分以上保持した後冷却する、
時効処理:600〜800℃の温度で0.5時間以上保持する。
(7)上記(1)から(5)までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材からなる、高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手。
本発明によれば、Ni当量を管理したSUS316およびSUS316Lよりも安価で1000MPa以上の引張強さを有し、かつ高圧水素ガス環境(中でも70MPa以上の高圧水素ガス環境)下での機械的特性に優れて良好な耐水素ガス脆化特性を備える高Mn鋼鋼材を得ることができる。また、本発明の製造方法によって、上記高Mn鋼鋼材を得ることができる。さらに、上記の高Mn鋼鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手は、上記高圧水素ガス環境での耐久性に優れる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成:
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材の化学組成の限定理由は次のとおりである。以下の説明において各元素の含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:1.2%以下、N:0.6%以下
CおよびNは、本発明における重要な元素である。すなわち、CおよびNは、フェライトの生成を抑制し、オーステナイトを安定化する効果を有する。また、いずれも時効処理時に、Crまたは/およびVと結び付くことにより微細な炭窒化物を形成し、高強度化に寄与する。しかし、CおよびNを過剰に含有させてもこれらの効果は飽和する。さらに、過剰なC含有量は、固溶C量の増加を招いて高Mn鋼鋼材中に積層欠陥の生成を促進するので、耐水素ガス脆化特性を大きく低下させる。同様に、過剰なN含有量は、固溶N量の増加を招いて高Mn鋼鋼材中に積層欠陥の生成を促進するので、耐水素ガス脆化特性を大きく低下させる。したがって、Cの含有量を1.2%以下とし、Nの含有量を0.6%以下とする。C含有量の好ましい上限は1.0%であり、より好ましい上限は0.7%である。一方、N含有量の好ましい上限は0.4%であり、より好ましい上限は0.3%である。但し、上述の効果を得るためには、CおよびNの鋼中含有量は、前記のFn1(=C+2N)が0.5以上を満たす必要がある。なお、C含有量の好ましい下限は0.2%であり、より好ましい下限は0.4%である。また、N含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましい下限は0.1%である。
Si:0.05〜1.0%
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、この効果を得るには、0.05%以上含有させる必要がある。一方、1.0%を超えてSiを含有させても上記の効果は飽和する。このため、Siの含有量は0.05〜1.0%とする。Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、また、好ましい上限は0.5%である。
Mn:10〜60%
Mnは、本発明において重要な元素である。Mnは、安価でかつオーステナイトを安定化させる作用を有する。この効果を十分に得るには、Mnを10%以上含有させる必要がある。一方、Mnを60%を超えて過剰に含有させても上記の効果は飽和し、かつ熱間加工性等の製造性が低下する。このため、Mnの含有量は10〜60%とする。Mn含有量の好ましい下限は15%であり、より好ましい下限は18%である。Mn含有量の好ましい上限は45%であり、より好ましい上限は30%である。
Cr:0〜20%、V:0〜5%
CrおよびVは、本発明における重要な元素である。すなわち、CrおよびVは、時効処理時に、CおよびNと結び付いて微細な炭窒化物を形成し、高強度化に寄与する。しかし、CrおよびVを過剰に含有させてもこれらの効果は飽和して、材料コストの上昇を招く。したがって、Cr含有量の上限を20%とし、V含有量の上限を5%とする。Cr含有量の好ましい上限は15%であり、より好ましい上限は10%である。一方、V含有量の好ましい上限は3%であり、より好ましい上限は2%である。但し、上述の効果を得るためには、CrおよびVの鋼中含有量は、前記のFn2(=Cr+2V)が2以上を満たす必要がある。Fn2が2以上を満たせば、CrとVは複合して含有させなくてもよい。なお、Cr含有量の好ましい下限は3%であり、より好ましい下限は4%である。また、V含有量の好ましい下限は1%であり、より好ましい下限は1.2%である。
Ni:0〜5%
Niは、オーステナイトを安定化させて水素ガス脆化を防止するのに有効な元素である。また、Niは、靱性の改善にも有効な元素である。このため、必要に応じてNiを含有させてもよい。しかしながら、Niを多量に含有させると、材料コストの上昇を招く。したがって、含有させる場合のNi含有量の上限を5%とする。Ni含有量の上限は3%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Ni含有量の下限は、0.1%であることが好ましく、0.5%であることがより好ましい。
Cu:0〜5%
Cuは、オーステナイトを安定化させて水素ガス脆化を防止するのに有効な元素である。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。しかしながら、Cuを多量に含有させると、材料コストの上昇を招き、さらに熱間加工性等製造性の低下も招く。したがって、含有させる場合のCu含有量の上限を5%とする。Cu含有量の上限は3%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Cu含有量の下限は、0.1%であることが好ましく、0.5%であることがより好ましい。
Co:0〜5%
Coは、オーステナイトを安定化させて水素ガス脆化を防止するのに有効な元素である。また、Coは、靱性の改善にも有効な元素である。このため、必要に応じてCoを含有させてもよい。しかしながら、Coを多量に含有させると、材料コストの上昇を招く。したがって、含有させる場合のCo含有量の上限を5%とする。Co含有量の上限は3%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Co含有量の下限は、0.1%であることが好ましく、0.5%であることがより好ましい。
上記したNi、CuおよびCoから選択される2種以上を複合して含有させる場合の合計量は、5%以下であることが好ましい。
Al:0〜1%
Alは、フェライト安定化元素である。一方、Alは、鋼の脱酸に有効な元素である。このため、必要に応じてAlを含有させてもよい。しかしながら、Alを1%を超えて含有させてもその効果は飽和する。しかも、Alの含有量が1%を超えると、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性の低下を招き、さらに、酸化物が形成されやすくなって、靱性等にも悪影響を与えることがある。このため、含有させる場合のAl含有量の上限を1%とする。Al含有量の上限は、0.5%であることが好ましい。一方、前記したAlの効果を安定して発現させるためには、Al含有量の下限は、0.005%であることが好ましく、0.02%であることがさらに好ましい。なお、本発明のAl含有量とは、酸可溶Al(所謂「Sol.Al」)での含有量を指す。
Mo:0〜3%
Moは、フェライト安定化元素である。一方、Moは、耐候性、耐酸性等、ステンレス鋼としての一般的な耐食性を確保するのに有効な元素である。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、Moを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のMo含有量の上限を3%とする。Mo含有量の上限は2%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Mo含有量の下限は、0.1%であることが好ましく、0.5%であることがより好ましい。
W:0〜6%
Wは、フェライト安定化元素である。一方、Wは、耐候性、耐酸性等、ステンレス鋼としての一般的な耐食性を確保するのに有効な元素である。このため、必要に応じてWを含有させてもよい。しかしながら、Wを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のW含有量の上限を6%とする。W含有量の上限は3%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、W含有量の下限は、0.1%であることが好ましく、0.5%であることがより好ましい。
Nb:0〜1.0%
Nbは、フェライト安定化元素である。一方、Nbは、合金炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、Nbを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のNb含有量の上限を1.0%とする。Nb含有量の上限は0.5%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Nb含有量の下限は、0.01%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましい。
Ti:0〜1.0%
Tiは、フェライト安定化元素である。一方、Tiは、合金炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のTi含有量の上限を1.0%とする。Ti含有量の上限は0.5%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Ti含有量の下限は、0.001%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましい。
Zr:0〜1.0%
Zrは、フェライト安定化元素である。一方、Zrは、合金炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてZrを含有させてもよい。しかしながら、Zrを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のZr含有量の上限を1.0%とする。Zr含有量の上限は0.5%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Zr含有量の下限は、0.001%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましい。
Hf:0〜1.0%
Hfは、フェライト安定化元素である。一方、Hfは、合金炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてHfを含有させてもよい。しかしながら、Hfを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のHf含有量の上限を1.0%とする。Hf含有量の上限は0.5%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Hf含有量の下限は、0.001%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましい。
Ta:0〜1.0%
Taは、フェライト安定化元素である。一方、Taは、合金炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてTaを含有させてもよい。しかしながら、Taを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、さらに、フェライトの生成を促進して耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。したがって、含有させる場合のTa含有量の上限を1.0%とする。Ta含有量の上限は0.5%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Ta含有量の下限は、0.001%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましい。
B:0〜0.020%
Bは、フェライト安定化元素である。一方、Bは、オーステナイト結晶粒径を微細化し、靱性改善に寄与する元素である。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bを多量に含有させても上記の効果が飽和して材料コストの上昇を招き、また、フェライトの生成を促進して、耐水素ガス脆化特性を低下させることがある。このため、含有させる場合のB含有量の上限を0.020%とする。B含有量の上限は、0.01%であることが好ましい。一方、前記したBの効果を安定して発現させるためには、B含有量の下限は、0.0001%であることが好ましく、0.0005%であることがさらに好ましい。
上記したAl、Mo、W、Nb、Ti、Zr、Hf、TaおよびBから選択される2種以上を複合して含有させる場合の合計量は、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。
Ca:0〜0.0050%
Caは、鋳造時の凝固割れを防止する作用を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caを多量に含有させると、熱間加工性の低下を招くことがある。このため、含有させる場合のCa含有量の上限を0.0050%とする。Ca含有量の上限は0.0030%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Ca含有量の下限は、0.0001%であることが好ましく、0.0005%であることがより好ましい。
Mg:0〜0.0050%
Mgは、鋳造時の凝固割れを防止する作用を有する。このため、必要に応じてMgを含有させてもよい。しかしながら、Mgを多量に含有させると、熱間加工性の低下を招くことがある。このため、含有させる場合のMg含有量の上限を0.0050%とする。Mg含有量の上限は0.0030%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、Mg含有量の下限は、0.0001%であることが好ましく、0.0005%であることがより好ましい。
REM:0〜0.50%
REMは、鋳造時の凝固割れを防止する作用を有する。このため、必要に応じてREMを含有させてもよい。しかしながら、REMを多量に含有させると、熱間加工性の低下を招くことがある。このため、含有させる場合のREM含有量の上限を0.50%とする。REM含有量の上限は0.30%であることが好ましい。なお、上述の効果を得るためには、REM含有量の下限は、0.0001%であることが好ましく、0.0005%であることがより好ましい。
本発明において「REM」とは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、「REMの含有量」とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加してREMの量が上記の範囲となるように含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
上記したCa、MgおよびREMから選択される2種以上を複合して含有させる場合の合計量は、REMを含む場合は0.50%以下であることが好ましく、また、REMを含まない場合には0.0050%以下であることが好ましい。
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、上述の各元素と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物としてのP、SおよびOが、P:0.050%以下、S:0.050%以下およびO:0.020%以下で、さらに、前記[1]式で表されるFn1が0.5以上、前記[2]式で表されるFn2が2以上である化学組成を有する。
ここで「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
P:0.050%以下
Pは、粒界に偏析し、靱性等の機械的特性に悪影響を及ぼす元素である。このため、P含有量は0.050%以下に制限する必要がある。P含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
S:0.050%以下
SもPと同様に、鋼の靱性等の機械的特性に悪影響を及ぼす元素である。このため、S含有量は0.050%以下に制限する必要がある。S含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
O:0.020%以下
O(酸素)も、SおよびPと同様に、鋼の靱性等の機械的特性に悪影響を及ぼす元素である。このため、O含有量は0.020%以下に制限する必要がある。O含有量はできるだけ少ないことが望ましい。
Fn1:0.5以上
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、下記[1]式で表されるFn1が0.5以上である。
Fn1=C+2N・・・[1]
但し、[1]式中のCおよびNは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
Fn1は、本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材における時効処理後の微細な炭窒化物形成による高強度化の指標であると同時に、オーステナイトの安定化および耐水素ガス脆化特性確保の指標でもある。Fn1が0.5以上の場合に、オーステナイトの安定化と時効処理後の高強度化が達成され易く、しかも良好な耐水素ガス脆化特性が確保され易い。Fn1の好ましい下限は0.6であり、より好ましい下限は0.8である。Fn1の好ましい上限は2.0であり、より好ましい上限は1.5である。
Fn2:2以上
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、下記[2]式で表されるFn2が2以上である。
Fn2=Cr+2V・・・[2]
但し、[2]式中のCrおよびVは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
Fn2は、本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材における時効処理後の微細な炭窒化物形成による高強度化のもう1つの指標である。Fn2が2以上の場合に、時効処理後の高強度化が達成され易い。Fn2の好ましい下限は5であり、より好ましい下限は6である。Fn2の好ましい上限は21であり、より好ましい上限は14である。
例えば、後述の「4.製造方法」の項で述べる方法によって得られる上記の化学組成を有する高Mn鋼鋼材は、1000MPa以上の引張強さを有するとともに、概ね高圧水素ガス環境での機械的特性に優れて良好な耐水素ガス脆化特性を備える。しかし、化学組成の規定だけでは、70MPa以上という高圧水素ガス環境での良好な耐水素ガス脆化特性を安定して確保できない場合もある。したがって、本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材においては、次に述べるマトリックスの金属組織も併せて規定する。
2.マトリックスの金属組織:
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:90〜100%、bcc構造相:0〜10%およびhcp構造相:0〜10%からなり、マトリックス中にCr系炭窒化物およびV系炭窒化物の少なくとも一方が析出して、下記[3]式で表されるFn3が1.0以上である。
Fn3=Cr[p]+2V[p]・・・[3]
但し、[3]式中のCr[p]およびV[p]は、それぞれ炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(質量%)を意味する。
先の化学組成規定およびマトリックスの金属組織が上記規定を満たす本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、1000MPa以上の引張強さを有するとともに、70MPa以上という高圧水素ガス環境において、機械的特性に優れて良好な耐水素ガス脆化特性を安定して確保することができる。
上記金属組織におけるfcc構造相の体積率は、95%以上であることが好ましく、100%であることが最も好ましい。上記金属組織におけるbcc構造相の体積率は、5%以下であることが好ましく、0%であれば最も好ましい。同様に、上記金属組織におけるhcp構造相の体積率は、5%以下であることが好ましく、0%であれば最も好ましい。
既に述べたように、本明細書における「bcc構造」とは、bcc構造とbct構造をまとめたものを指す。
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材のマトリックスの金属組織における上記各構造相の体積率は、例えば、次の(1)〜(4)の順に処理して求めることができる。
(1)厚さが2mm、幅が10mmで長さが10mmの寸法の試験片を採取する。
(2)上記の試験片を、1200番エメリー紙まで研磨する。
(3)上記の研磨した試験片を常温の過酸化水素とシュウ酸の混合溶液に浸漬して表面の加工層を除去する。
(4)加工層を除去した試験片にX線回折測定を実施する。
上記のFn3は、本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材において、時効処理後にCr系または/およびV系の微細な炭窒化物によって十分な析出強化能を得て、1000MPa以上の引張強さを具備するための指標である。Fn3が1.0以上の場合に、時効処理後の1000MPa以上という高強度化が達成され易い。Fn3の好ましい下限は2.0であり、より好ましい下限は4.0である。
なお、Cr[p]およびV[p]、つまり、本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材のマトリックス中に炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(質量%)は、例えば、次の<1>〜<4>の順に処理して求めることができる。
<1>直径が10mmで長さが50mmの寸法の炭窒化物抽出分析用丸棒試験片を採取する。
<2>上記試験片を陽極電解(定電流電解)してマトリックスを溶解させ、炭窒化物のみを電解抽出する。電解抽出用の電解液には10%AA系電解液(10体積%アセチルアセトン、1質量%塩化テトラメチルアンモニウム、残部メタノール)を用いる。
<3>抽出された残渣を用いてICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析を行い、残渣中のCrおよびVの含有量を測定する。
<4>上記のCrおよびVの含有量を、陽極電解によるマトリックス溶解前後での試験片の質量差(つまり、試験片の溶解量)で除して、マトリックス中に炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量を算出する。
3.引張強さ:
本発明に係る高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材ならびにその鋼材からなる、高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手の強度は、引張強さ(TS)が1000MPa以上である。引張強さが1000MPa以上であれば、例えば、燃料電池自動車の航続距離向上のための高い水素タンク圧力にも十分安定して耐えることができる。なお、本発明における「引張強さ」とは「大気中での引張強さ」を指す。
4.製造方法:
本発明の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材は、以下の方法によって比較的安定して製造することができる。
上記で説明した化学組成を有する高Mn鋼を、溶製した後、鋳造によりインゴットまたは鋳片とする。鋳造されたインゴットまたは鋳片は、熱間圧延、熱間押出、熱間鍛造等の熱間加工によって、厚板、薄板、丸棒、継目無鋼管等所要の形状を有する鋼材に仕上げる。その後、該鋼材に、下記の固溶化熱処理および時効処理を順に含むように処理する。
固溶化熱処理:1000〜1200℃の温度で10分以上保持した後冷却する、
時効処理:600〜800℃の温度で0.5時間以上保持する。
なお、上記の固溶化熱処理および時効処理における温度は、鋼材の表面における温度を指す。
4.1.固溶化熱処理
固溶化熱処理は、析出物等を十分固溶させることができる温度、時間条件とするために、1000〜1200℃の温度で、10分以上の保持とする。上記保持温度の好ましい下限は1050℃程度、好ましい上限は1100℃程度である。また、保持時間の好ましい上限は60分程度である。上記条件で保持した鋼材は、その後、油冷以上の冷却速度で冷却することが望ましい。
4.2.時効処理
時効処理は、Cr系または/およびV系の微細な炭窒化物によって十分な析出強化能を得て、1000MPa以上の引張強さを確保するために、600〜800℃の温度で0.5時間以上保持する。時効処理の温度が600℃未満の場合および800℃超えの場合には、時効処理後に十分な量の炭窒化物が析出せず、1000MPa以上の引張強さを確保し難くなる。同様に、時効処理の時間が0.5時間未満の場合には、時効処理後に十分な量の炭窒化物が析出せず、1000MPa以上の引張強さを確保し難くなる。なお、時効処理の時間については、時効処理の温度および鋼材のサイズにもよるが、生産性、コスト等の面から10時間以下とすることが望ましい。
本発明に係る高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手も、上記高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材の場合と同様の方法によって、比較的安定して製造することができる。
例えば、先に説明した化学組成を有する高Mn鋼を、溶製した後、鋳造によりインゴットまたは鋳片とする。鋳造されたインゴットまたは鋳片は、熱間圧延、熱間押出、熱間鍛造等の熱間加工、機械加工、各種の冷間加工等によって、配管、容器等所定形状の部材に仕上げる。その後、該部材に、下記の固溶化熱処理および時効処理を順に含むように処理する。
固溶化熱処理:1000〜1200℃の温度で10分以上保持した後冷却する、
時効処理:600〜800℃の温度で0.5時間以上保持する。
なお、上記の固溶化熱処理および時効処理における温度は、部材の表面における温度を指す。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する高Mn鋼A〜Zを50kg真空溶解炉を用いて溶製し、インゴットに鋳造した。
表1における鋼A〜Tは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼U〜Zは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
Figure 2017031483
上記の各インゴットを熱間鍛造して、厚さ40〜60mmのブロックとし、このブロックをさらに熱間圧延して、厚さ15mmの板材に仕上げた。
上記の各15mmの板材は、1100℃で60分保持した後水冷して固溶化熱処理を施した。
次いで、表2に示す条件で各鋼の上記固溶化熱処理した板材に時効処理を施した。
各鋼について、上記時効処理した板材の厚さ方向中心部から、圧延方向(以下、「長手方向」という。)に平行部直径が6.0mmの丸棒引張試験片を採取し、常温の大気中で、降伏強さまではひずみ速度4.2×10-4/sで、降伏強さ以降はひずみ速度4.2×10-3/sで引張試験を行い、降伏強さ(0.2%耐力、以下、「YS」という。)および引張強さ(以下、「TS」という。)を測定した。
各鋼の時効処理した板材について、マトリックスの金属組織における各構造相の体積率を求めた。すなわち、各板材の厚さ方向中心部から、長手方向に厚さが2mm、幅が10mmで長さが10mmの寸法の試験片を採取し、1200番エメリー紙まで研磨後、常温の過酸化水素とシュウ酸の混合溶液に浸漬して表面の加工層を除去した。次いで、上記の加工層を除去した試験片に非特許文献2に準拠した方法でX線回折測定(Cu対陰極、管電圧30kV、管電流100mA)を実施し、マトリックスの金属組織における各構造相の体積率を求めた。
具体的には、fcc構造相に関しては(111)、(200)および(220)のピーク強度、bcc構造相に関しては(110)、(200)および(211)のピーク強度、hcp構造相に関しては(100)、(101)および(102)のピーク強度に基づいて各構造相の体積率を同定した。
また、時効処理した各板材の厚さ方向中心部から、長手方向に直径が10mmで長さが50mmの寸法の炭窒化物抽出分析用丸棒試験片を採取して、マトリックス中に炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量を調査した。
具体的には、先ず、上記の試験片を陽極電解(定電流電解)してマトリックスを溶解させ、炭窒化物のみを電解抽出した。電解抽出用の電解液には10%AA系電解液(10体積%アセチルアセトン、1質量%塩化テトラメチルアンモニウム、残部メタノール)を用いた。次いで、抽出された残渣を用いてICP発光分析を行い、残渣中のCrおよびVの含有量を測定した。最後に、上記のCrおよびVの含有量を、陽極電解によるマトリックス溶解前後での試験片の質量差(つまり、試験片の溶解量)で除して、マトリックス中に炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(Cr[p]およびV[p])を求め、これらからFn3の値を算出した。
さらに、各鋼について、時効処理した板材の厚さ方向中心部から、長手方向に平行部直径が2.5mmの丸棒引張試験片を採取した。
上記の丸棒引張試験片を用いて、常温の大気中で、ひずみ速度3×10-6/sで引張試験を行い、破断伸び(EL1)を測定した。また、上記の丸棒引張試験片を用いて、常温の85MPaの高圧水素ガス中で、上記と同じ3×10-6/sのひずみ速度で引張試験を行い、破断伸び(EL2)を測定した。
水素の影響は延性の低下に顕著に現れる。このため、大気中での破断伸び(EL1)と高圧水素ガス中での破断伸び(EL2)から、下記[4]式を用いて相対破断伸びを算出した。このようにして求めた相対破断伸びの値が50%以上であれば、水素による脆化が抑制されて良好な耐水素ガス脆化特性を有し、さらに、70%以上であれば、極めて良好な耐水素ガス脆化特性を有すると判断できる。
(EL2/EL1)×100・・・[4]。
表2に、上記の各調査結果をまとめて示す。
Figure 2017031483
表2における試験番号1〜20は本発明例である。大気中でのTSが1000MPaを超える高強度の上記試験番号は、いずれも相対破断伸びが60%を超えており、良好な耐水素ガス脆化特性を有していることが明らかである。なお、上記の本発明例では、いずれもマトリックスの金属組織は、体積率で、fcc構造相が100%であった。
これに対して、試験番号21〜29は比較例である。
試験番号21は、用いた鋼UのMn含有量が7.51%と低く本発明で規定する化学組成条件から外れ、マトリックスの金属組織における体積率が、fcc構造相が65%およびbcc構造相が35%で規定を満たさない。このため、試験番号21は、TSが885MPaと1000MPa未満であるにも拘わらず耐水素ガス脆化特性に劣っていた。
試験番号22は、相対破断伸びは86%と大きく良好な耐水素ガス脆化特性を有している。しかし、この試験番号22は、用いた鋼VのFn1(=C+2N)が本発明で規定する化学組成条件から外れる0.42と低く、本発明で規定する化学組成条件から外れている。このため、時効後に十分な量の炭窒化物が析出せず、Fn3(=Cr[p]+2V[p])が0.84と低く本発明で規定する条件から外れるので、TSが1000MPa未満であった。
試験番号23および試験番号24は、相対破断伸びは88%および85%と大きく良好な耐水素ガス脆化特性を有している。しかし、それぞれで用いた鋼Wおよび鋼XのFn2(=Cr+2V)が0.74および0.52と低く、いずれも本発明で規定する化学組成条件から外れている。このため、時効後に十分な量の炭窒化物が析出せず、Fn3(=Cr[p]+2V[p])がそれぞれ、0.39および0.27と低く本発明で規定する条件から外れるので、いずれの試験番号もTSが1000MPa未満であった。
試験番号25および試験番号26は、相対破断伸びは91%および87%と大きく良好な耐水素ガス脆化特性を有している。しかし、それぞれで用いた鋼Yおよび鋼Zの双方ともがCrおよびVを含まないためFn2(=Cr+2V)がともに0で、いずれも本発明で規定する化学組成条件から外れている。このため、時効後にCr系または/およびV系の炭窒化物が析出せず、Fn3(=Cr[p]+2V[p])はいずれの試験番号も0で本発明で規定する条件から外れるので、TSが1000MPa未満であった。
試験番号27〜29は、相対破断伸びは88〜90%と大きく良好な耐水素ガス脆化特性を有している。上記各試験番号で用いた鋼Aの化学組成は本発明で規定する範囲内にあるものの、時効処理条件に関して、試験番号27は700℃での保持時間が0.25時間と短く、試験番号28は保持温度が550℃と低く、試験番号29は保持温度が850℃と高く、いずれも本発明の製造方法で規定する条件から外れる。このため、時効後に十分な量の炭窒化物が析出せず、Fn3(=Cr[p]+2V[p])が0.53〜0.87と低く本発明で規定する条件から外れるので、いずれの試験番号もTSが1000MPa未満であった。
本発明によれば、Ni当量を管理したSUS316およびSUS316Lよりも安価で1000MPa以上の引張強さを有し、かつ高圧水素ガス環境(中でも70MPa以上の高圧水素ガス環境)下での機械的特性に優れて良好な耐水素ガス脆化特性を備える高Mn鋼鋼材を得ることができる。また、本発明の製造方法によって、上記高Mn鋼鋼材を得ることができる。さらに、上記の高Mn鋼鋼材からなる、配管、容器、バルブおよび継手は、上記高圧水素ガス環境での耐久性に優れる。

Claims (7)

  1. 化学組成が、質量%で、C:1.2%以下、N:0.6%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:10〜60%、Cr:0〜20%、V:0〜5%、Ni:0〜5%、Cu:0〜5%、Co:0〜5%、Al:0〜1%、Mo:0〜3%、W:0〜6%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Hf:0〜1.0%、Ta:0〜1.0%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.50%、残部がFeおよび不純物であり、不純物としてのP、SおよびOが、P:0.050%以下、S:0.050%以下およびO:0.020%以下で、さらに、下記[1]式で表されるFn1が0.5以上、下記[2]式で表されるFn2が2以上であり、
    マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:90〜100%、bcc構造相:0〜10%およびhcp構造相:0〜10%からなり、マトリックス中にCr系炭窒化物およびV系炭窒化物の少なくとも一方が析出して、下記[3]式で表されるFn3が1.0以上であり、
    引張強さが1000MPa以上である、
    高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
    Fn1=C+2N・・・[1]、
    Fn2=Cr+2V・・・[2]
    Fn3=Cr[p]+2V[p]・・・[3]
    但し、[1]式中のCおよびN、ならびに[2]式中のCrおよびVは、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。また、[3]式中のCr[p]およびV[p]は、それぞれ炭窒化物として析出しているCrおよびVの鋼中含有量(質量%)を意味する。
  2. 前記化学組成が、質量%で、Ni:0.1〜5%、Cu:0.1〜5%およびCo:0.1〜5%から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、Al:0.005〜1%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜6%、Nb:0.01〜1.0%、Ti:0.001〜1.0%、Zr:0.001〜1.0%、Hf:0.001〜1.0%、Ta:0.001〜1.0%およびB:0.0001〜0.020%から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
  4. 前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.0050%およびREM:0.0001〜0.50%から選択される1種以上を含有する、請求項1から3までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
  5. マトリックスの金属組織が、体積率で、fcc構造相:100%である、請求項1から4までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材。
  6. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成である鋼材に、下記の固溶化熱処理および時効処理を順に含むように処理する、請求項1から5までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材の製造方法。
    固溶化熱処理:1000〜1200℃の温度で10分以上保持した後冷却する、
    時効処理:600〜800℃の温度で0.5時間以上保持する。
  7. 請求項1から5までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高Mn鋼鋼材からなる、高圧水素ガス用の、配管、容器、バルブおよび継手。
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