JP2017031284A - ポリシラン製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のハロゲンが化合したハロシランをモノマーとして、アルカリ金属と反応させる反応を用いながら分子量の大きいポリシランの製造が可能な方法を得る。【解決手段】複数のハロゲンが化合したハロシランをモノマーとして溶媒に溶解した反応液Mとして蓄えておき、アルカリ金属の粒子を不活性溶媒に分散させた分散体SDを、蓄えられている反応液Mに添加する。【選択図】図1
Description
本発明は、複数のハロゲンが化合したハロシランをモノマーとし、このモノマーとアルカリ金属とを反応させることによりポリシランを製造する方法に関する。
ポリシランを製造する技術として特許文献1には、金属ナトリウムをキシレンに分散し、フェニルトリクロロシランとメチルトリクロロシランとフェニルメチルジクロロシランとを混合したモノマーの混合液を製造し、この混合液を、キシレン溶液中に滴下することによりポリシランを製造する方法が示されている。
この製造方法では、混合液を撹拌する状態において、所定の時間を掛けて滴下を行うことにより、所謂ウルツ反応を行わせ、カップリングにより高分子化を実現している。また、金属ナトリウムにハロシランを反応させてポリシランを生成する反応温度として、好ましくは20〜150℃の温度範囲内にあり、より好ましくは110〜140℃の温度範囲内であることが記載されている。
これと同様に特許文献2には、実施例1において、フェニルメチルジクロロシランとメチルトリクロロシランとフェニルトリクロロシランとを混合して、モノマー混合液を調製しておき、金属ナトリウムのキシレン分散液に対して、モノマー混合液を滴下することによりポリシランを製造する方法が示されている。
特許文献1,2に示されるように金属ナトリウムの分散液に対してモノマーを滴下する方法では、生成されるポリシランの分子量の増大が抑制されることがある。
例えば、ジクロロメチルフェニルシランのように2つのハロゲン基が結合するものをモノマーとして、金属ナトリウムを含む溶液に滴下した場合には、モノマーのハロゲン基が金属ナトリウムとの反応によりケイ素から分離した後に複数のケイ素の結合(重合)が開始される。
この結合は、鎖状であることが理想であるが、モノマーの量に比較して金属ナトリウムの量が圧倒的に多く、この溶液に対してモノマーを滴下した場合には、滴下したモノマーの全量が金属ナトリウムに接触して即座にハロゲンが分離する反応が起こることもある。このように短時間の反応では、モノマーから全てのハロゲンが分離した状態にあることから、長い鎖状に結合に成長する以前に、端部のケイ素同士が結合して環状構造となり、分子量の増大が抑制されると考えられる。
例えば、ポリシラン用いた素材では、分子量が大きいほど高強度であるため、工業材料では、ある程度の分子量を超えるポリシランを必要とするものである。
このように、複数のハロゲンが化合したハロシランを有するモノマーと、アルカリ金属とを反応させることで分子量の大きいポリシランの製造が可能な方法が求められる。
本発明の製造方法の特徴は、複数のハロゲンが化合したハロシランをモノマーとして溶媒に溶解して蓄えておき、アルカリ金属の粒子を不活性溶媒に分散させた分散体を、蓄えられている前記モノマーに対して添加する点にある。
従来のように滴下したモノマーが、多数のアルカリ金属の粒子に接触して反応する方法では、僅かな数のモノマーに対して複数のアルカリ金属の粒子が接触して全てのモノマーの反応が短時間のうちに完了する。これに対し、本構成の方法のように蓄えられたモノマーの分子数を、添加されるアルカリ金属の粒子数より圧倒的に多く設定できる方法では、急激な反応を抑え、アルカリ金属の添加後に反応に要する時間を長くできる。また、本構成の方法では、反応を緩やかに行わせるだけでなく、複数のモノマーが鎖状に結合した分子の一方の端部のハロゲンだけをアルカリ金属が分離させる反応を行わせることも可能となり、分子が環状構造に結合する反応を抑制しつつ、鎖状に結合する反応を促進して高分子化を図ることができる。
その結果、複数のハロゲンが化合したハロシランを有するモノマーとアルカリ金属とを反応させながら、分子量の大きいポリシランの製造が可能な方法が得られた。
その結果、複数のハロゲンが化合したハロシランを有するモノマーとアルカリ金属とを反応させながら、分子量の大きいポリシランの製造が可能な方法が得られた。
本構成の方法では、前記モノマーの温度を、前記アルカリ金属の融点未満に維持しても良い。
特許文献1では、より好ましい反応温度として110〜140℃の温度範囲が記載され、この温度範囲は金属ナトリウムの融点を超える値である。これに対して、モノマーの温度を、アルカリ金属の融点未満に維持するものであれば、アルカリ金属が不活性溶媒に分散することで、アルカリ金属の表面積は増大しており、アルカリ金属とモノマーとの反応が促進される。また、この温度では、反応温度を高くする必要がなく加熱のためにエネルギー消費も抑制できる。
本構成の方法では、前記分散体に分散したアルカリ金属の粒子が、金属ナトリウムであっても良い。
金属ナトリウムは、アルカリ金属として入手が容易で安価であり製造コストの低下が可能となる。
本構成の方法では、前記モノマーの温度の下限値が30℃に設定されても良い。
反応温度は、生成されるポリシランの分子量に影響するものである。従って、この下限値からアルカリ金属の融点までの間で反応温度を設定することにより、生成されるポリシランの分子量の調節も可能となる。
本構成の方法では、前記モノマーを溶解する前記溶媒として、前記アルカリ金属を分散させる前記不活性溶媒を用いても良い。
このように、モノマーを溶解する溶媒として、アルカリ金属を分散させる不活性溶媒と同じ溶媒とすることで製造が簡素化し、ポリシランが生成された後に溶媒を取り除く処理も簡素化して処理ステップを少なくすることができる。
本構成の方法では、前記モノマーの温度と、その温度で生成されるポリシランの分子量との関係が予めデータとして取得され、目標とする分子量の前記ポリシランの生成時には、前記データに基づいて反応温度を設定しても良い。
これによると、必要とする分子量のポリシランを生成する場合には、予め取得されているデータに基づいて反応温度を設定することで、必要とする分子量のポリシランを得ることが可能となる。
以下に、本発明に係るポリシラン製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、ポリシラン製造方法の一例としてポリシラン製造装置X(以下、「製造装置X」と言う。)を用いた方法を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
〔基本構成〕
図1に示すように、製造装置Xは、反応槽1と、分散体導入部2と、撹拌機3と、ガス導入部4と、加熱部6と、冷却部7と、温度計測部8と、反応槽1での反応を制御する制御ユニット20とを備えている。
図1に示すように、製造装置Xは、反応槽1と、分散体導入部2と、撹拌機3と、ガス導入部4と、加熱部6と、冷却部7と、温度計測部8と、反応槽1での反応を制御する制御ユニット20とを備えている。
反応槽1は、有底筒状に形成され、上部の開口を閉じる蓋体1aを備えることにより密封可能に構成されている。反応槽1にはハロシランをモノマーとして不活性溶媒に溶解して希釈された反応液Mが蓄えられる。
反応槽1は、内部に蓄えられた反応液Mに対して分散体導入部2から分散体SDを間歇的に滴下することによりポリシランの反応を実現する。この反応時には撹拌機3が反応液Mと分散体SDを混合し、加熱部6と冷却部7とが反応液Mを最適な温度に維持する。尚、分散体SDとして付した符号のSDは、 Sodium Dispersionの略号であり、実施形態ではアルカリ金属としてナトリウムを用いるため分散体にSDの符号を付しているが、SDの符号がナトリウム以外のアルカリ金属を除外するものではない。
また、制御ユニット20は、撹拌機3を制御すると共に、温度計測部8で計測される反応槽1の内部温度に基づいて加熱部6と冷却部7を制御する。
〔モノマー・分散体〕
モノマーとしてのハロシランは2つ以上のハロゲン原子が結合するシラン化合物が用いられ、例えば、ジクロロメチルフェニルシラン(沸点約205℃)、フェニルトリクロロシラン(沸点約200℃)、ジフェニルジクロロシラン(沸点約305℃)、ジメチルジクロロシラン(沸点約70℃)、などのモノマーを用いることが可能である。
モノマーとしてのハロシランは2つ以上のハロゲン原子が結合するシラン化合物が用いられ、例えば、ジクロロメチルフェニルシラン(沸点約205℃)、フェニルトリクロロシラン(沸点約200℃)、ジフェニルジクロロシラン(沸点約305℃)、ジメチルジクロロシラン(沸点約70℃)、などのモノマーを用いることが可能である。
また、不活性溶媒としては、キシレン(沸点約140℃)、トルエン(沸点約111℃)等の芳香族系溶媒や、デカン(沸点約174℃)等の脂肪族系溶媒などを用いることが可能である。
不活性溶媒に分散されるアルカリ金属としては、ナトリウムの他にカリウム、リチウムやこれらの合金などが挙げられる。不活性溶媒としては、キシレンの他にトルエン等の芳香族系溶媒や、デカン等の脂肪族系溶媒、又はそれらの混合溶媒などが挙げられる。
〔製造装置の各部の構成〕
分散体導入部2は、アルカリ金属としての金属ナトリウム(融点約98℃)の微粒子を、不活性溶媒としてのキシレン(沸点約140℃)に分散させた分散体SDを反応液Mに間歇的に滴下(添加の具体形態)するノズルであり、蓋体1aに支持されている。
分散体導入部2は、アルカリ金属としての金属ナトリウム(融点約98℃)の微粒子を、不活性溶媒としてのキシレン(沸点約140℃)に分散させた分散体SDを反応液Mに間歇的に滴下(添加の具体形態)するノズルであり、蓋体1aに支持されている。
分散体導入部2は、分散体タンク10に貯留された分散体SDが供給路11を介して供給されるものである。供給路11には、分散体導入部2から反応槽1に対する分散体SDの送り出しを制御するために電気制御により開閉作動する電磁弁12を備えている。尚、分散体SDの反応槽1への供給として、供給路11にポンプを設置し、ポンプによる圧送方式としても良い。ポンプによる圧送においては、分散体SDを連続運転で定量供給としても良く、一定量供給及び一定時間経過毎に運転停止・開始を繰り返す間欠運転で供給しても良い。また、分散体導入部2としては、定量滴下機能の付いたディスペンサを用いても良い。
撹拌機3は、蓋体1aに支持される撹拌モータの駆動力によりシャフト3aを回転させ、このシャフト3aの下端の撹拌羽根3bを回転させて撹拌を行う。ガス導入部4は、不活性ガスとしての窒素ガス(アルゴンガスでも良い)を反応槽1の内部に供給する供給口であり、蓋体1aに支持されている。このガス導入部4は、貯留する窒素タンク14からの窒素ガスがガス供給路15を介して供給されるように構成され、ガス供給路には、手動により開閉する開閉弁16を備えている。尚、より確実に不活性ガス雰囲気下を維持することを目的として、蓋体1aに酸素濃度計を取り付けて反応槽内気相部の酸素濃度を測定し、測定値が一定値以上となったら不活性ガスの供給量を増加させる等の措置を行っても良い。また、ガス供給路15にガス供給量を測定する流量計を取り付けても良い。
加熱部6は、通電により発熱する電気ヒータで構成されている。冷却部7は、冷媒供給ユニット18から供給される冷媒により反応槽1の内部の冷却を行うように構成されている。尚、加熱部6は、熱交換器を有し熱媒体の循環により加熱を行うものでも良い。また、冷媒供給ユニット18は、反応槽1の外部で放熱した冷媒を冷却部7に循環させる単純な構成や、熱交換器を有し熱媒体の循環により冷却を行うものでも良い。
温度計測部8は、反応槽1の内部温度を電気的に計測する温度センサーとして機能するものであり、サーミスタ等が用いられている。
制御ユニット20は、温度計測部8の計測信号を取得する入力信号系を備えると共に、分散体導入部2と、撹拌機3と、加熱部6と、冷却部7とに制御信号を出力する出力信号系を備えている。
制御ユニット20は、所定のプログラムに従って制御を行うマイクロプロセッサやDSP(digital signal processor)等を有し、反応槽1の内部温度(反応液Mの温度)を制御する温度制御部21と、分散体SDの滴下のインターバル(添加間隔)を設定する滴下制御部22(投入制御部の一例)と、撹拌機3を制御する撹拌制御部23とを備えている。
温度制御部21と、滴下制御部22(投入制御部)と、撹拌制御部23とはソフトウエアで構成されるものを想定しているが、例えば、ロジック回路のようにハードウエアで構成されるものでも良く、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより構成されるものでも良い。
温度制御部21は、温度計測部8の計測結果に基づいて反応槽1の内部温度を目標温度範囲内に維持するため加熱部6による加熱と冷却部7による冷却とを制御する。尚、目標温度範囲とは、設定温度±5℃以内であり、図4の例では45〜55℃の領域である。
滴下制御部22は、分散体SDを反応槽1の内部に対して所定のインターバルで滴下するように分散体導入部2の電磁弁12を制御する。また、撹拌制御部23は、撹拌を行う際に撹拌機3の撹拌モータで駆動される。
〔製造方法・制御形態〕
製造装置Xでポリシランを製造する際の制御ユニット20の制御形態を図2のフローチャートに示している。つまり、ポリシランを製造する場合には、モノマーとしてジクロロメチルフェニルシランと、不活性溶媒としてのキシレンとを反応槽1に投入し、反応槽1の蓋体1aを閉塞し、ガス導入部4により反応槽1の内部に窒素ガスを封入する。
製造装置Xでポリシランを製造する際の制御ユニット20の制御形態を図2のフローチャートに示している。つまり、ポリシランを製造する場合には、モノマーとしてジクロロメチルフェニルシランと、不活性溶媒としてのキシレンとを反応槽1に投入し、反応槽1の蓋体1aを閉塞し、ガス導入部4により反応槽1の内部に窒素ガスを封入する。
そして、温度制御部21により反応槽1の内部温度を目標温度に維持する制御を実行すると共に、撹拌制御部23により撹拌機3の撹拌羽根3bを毎分200回転程度の回転速度で回転させる撹拌により反応槽1に対して、モノマーが不活性溶媒に溶解した反応液Mを調製して蓄える(貯留する)反応液の調製工程が実行される(#101ステップ)。
尚、モノマーとしては、ジクロロメチルフェニルシラン以外に、前述したフェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどを用いて良く、これらを混合して用いても良い。また、不活性溶媒としては、キシレン以外に、前述したトルエン等の芳香族系溶媒や、デカン等の脂肪族系溶媒を用いること、あるいは、それらの混合溶媒などが挙げられる。
#101ステップに示す反応液の調製工程では、温度制御部21が、反応槽1の内部温度を目標温度50℃に設定すると共に、低温側と高温側とに5℃の幅を設定することで45〜55℃の目標温度領域が設定される。このように目標温度領域が設定された後には、温度計測部8の計測結果をフィードバックする状態で加熱部6と冷却部7とを制御することによりモノマーを含む反応液Mの温度が目標温度領域に維持される。尚、この調製工程では、不活性溶媒にモノマーを予め溶解した反応液Mを投入するものでも良い。
特に、目標温度領域として設定される45〜55℃の領域は、金属ナトリウムの融点未満であるため、ナトリウムが融解しない状態で安定した反応が可能となる。
ガス導入部4で反応槽1の内部に窒素ガスを封入する処理としては、制御ユニット20の制御により実現するように構成することも考えられるが、開閉弁16を手動で開放して窒素ガスを封入する処理形態が簡便であり、処理系を低廉に構成できる。
次に、温度計測部8で計測される温度が、目標温度領域にあることが判定された場合には、滴下制御部22が分散体SDを滴下する滴下工程が実行される(#102、#103ステップ)。尚、この滴下工程では撹拌機3の撹拌羽根3bの回転速度が毎分300回転程度まで増速される。
#103ステップの滴下工程は、図4に示す如く、予め設定された滴下インターバルTで分散体SDの滴下を行うことにより、モノマーと金属ナトリウムとを重合してポリシランが生成される。この重合反応は発熱反応であるが、滴下直後には、すぐには温度が上昇せず、滴下タイミングPを基点にして少し遅れて反応槽1の反応液Mの温度(内部温度)が上昇する。
反応槽1の内部温度を目標温度領域に維持するため、温度計測部8で計測し、温度制御ルーチンが実行される(#104、#200ステップ)。このように温度制御を行いつつ、分散体SDの滴下を設定時間継続した後に滴下を停止し、反応処理を終了する(#105ステップ)。
#200ステップの温度制御ルーチンを、図3のフローチャートのようにサブルーチンとして示している。このルーチンの制御は、温度制御の一例であり、反応槽1の内部温度を目標温度領域に維持する制御であれば、この制御に限るものではない。
図3に示すサブルーチンでは、温度計測部8で計測される温度が55℃以上である場合には、冷却部7により冷却を実行すると共に、滴下インターバルTを延長する制御を実行する(#201、#202ステップ)。
つまり、滴下により反応が比較的過敏に行われる状況では、滴下直後に温度が上昇しない場合でも、温度上昇が開始された場合に温度計測部8で計測される温度の上昇が急激である。このように温度が急激に上昇する場合には、反応槽1の内部温度が目標温度領域を超えて上昇することもある。このような場合には、温度制御部21が冷却部7を作動させて反応槽1の内部温度の低下を図ると同時に、電磁弁12の制御により滴下インターバルTを延長して反応を抑制するのである。
また、温度計測部8で計測される温度が55℃未満であるが、50℃以上である場合には、滴下直後での温度上昇の勾配を取得し、勾配が設定勾配を超える場合には、勾配に対応する設定時間だけ冷却部7による冷却を実行し、滴下インターバルTを延長する制御を実行する。また、勾配が設定勾配を超えない場合には設定時間だけ冷却部7による冷却が行われる(#203〜#206ステップ)。
この制御では、温度計測部8で計測される温度上昇が急激であり、温度の上昇の勾配が設定勾配を超える場合には、計測される温度が目標温度領域を超えない場合でも、温度制御部21が冷却部7を設定時間だけ作動させて反応槽1の内部温度の上昇を抑制すると同時に、この設定時間だけ電磁弁12の制御により滴下インターバルTを延長して反応を抑制している。
尚、急激な温度上昇に伴い冷却部7を作動させる制御としては、温度上昇の勾配(角度)に対応して冷却部7を作動させる時間が設定される。この作動時間の設定は、温度上昇の勾配(角度)に対応した係数を、所定の作動時間に乗ずる演算を行う処理形態や、温度上昇の勾配(角度)と作動時間とを対応させたテーブルを参照する等の制御により設定される。また、演算の根拠となる数値や、テーブルに数値を設定する場合には、反応に伴う入熱量と温度上昇(温度上昇の勾配)の関係を予め測定しておき、温度上昇(温度上昇の勾配)から推定される入熱量を取り除く冷却が行われる。
また、滴下インターバルTを延長する制御は、温度上昇の勾配が緩傾斜となる角度に戻ることにより、予め設定された滴下インターバルTに戻される。前述したように反応槽1の内部では発熱反応が行われるため、制御の初期には加熱部6による加熱は殆ど必要とせず、反応時に発生する熱により反応槽1の内部温度が維持されることになる。
次に、温度計測部8で計測される温度が45℃未満である場合には、加熱部6の作動による加熱を行う(#207、#208ステップ)。
複数回金属ナトリウムを滴下した場合のように、滴下した際に反応液Mに含まれるモノマーの量が低下している状況ではすぐには反応が開始されず、温度上昇が殆どない状況に陥る。従って、反応槽1の内部温度が45℃未満である場合には、積極的に加熱部6を作動させて加熱を行うことで反応槽1の温度上昇を図ることになる。このように温度上昇を図ることにより、本来なら反応が殆ど起こらない状況であっても良好な反応を維持することが可能となる。特に、加熱により反応を積極的に行わせるため、滴下した金属ナトリウムが反応槽1の内部に残留する不都合を解消する。
また、温度計測部8で計測される温度が45℃以上であるが、50℃未満である場合には、滴下後の温度の上昇幅を求め、この上昇幅が設定値未満である場合には、上昇幅に対応した時間(上昇幅に反比例した時間)だけ加熱部6を作動させ、上昇幅が設定値以上である場合には、設定時間だけ加熱部6を作動させる(#209〜#211ステップ)。
前述したように、滴下の開始から所定の時間が経過した場合には、滴下した際に反応液Mに含まれるモノマーの分子数が低下している状況では温度上昇が殆どない状況に陥る。このような状況下では温度上昇を助ける必要がある。従って、温度の上昇幅が設定値を超えない場合には、上昇幅が小さいほど加熱時間を長くして加熱部6を作動させ、上昇幅が設定値を超える場合には、予め設定された時間だけ加熱部6を作動させるのである。
#210ステップで設定される設定時間は、温度の上昇幅に対応した係数を、所定の作動時間に乗ずる演算を行う処理形態や、温度の上昇幅と作動時間とを対応させたテーブルを参照する等の制御により設定される。尚、#210ステップで設定される時間は、#211で設定される時間より長く設定される。
このように、温度制御ルーチンでは、温度制御部21が加熱部6を駆動して反応槽1の内部温度の上昇を図る場合でも、例えば、図4に示すように、分散体SDが滴下(添加)された後に、温度計測部8で計測される温度が50℃を超えた場合には、加熱を停止する制御が行われる。
この制御では、滴下の後にも所定時間だけ撹拌を継続しており、反応を終了した場合には撹拌を停止する。そして、アルコールを満たした失活槽(図示せず)に反応槽1の内容物を移し替えて金属ナトリウムを失活させる。用いられるアルコールとしては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
次いで、アルカリ金属が失活した反応液に水を添加して、液液分離する。次いで、減圧蒸留を行い、蒸留残留物にテトラヒドロフラン、またはクロロホルムを加えて蒸留残留物を溶解し、溶解液にヘキサン、またはアセトンを加えてポリマーの結晶を析出させ、析出物を濾取する。このようにしてポリシランが得られる。
〔実施形態の作用・効果〕
この製造方法では反応槽1に蓄えられたモノマーの分子の数が滴下した溶液に含まれる金属ナトリウムの粒子数より圧倒的に多いため、滴下された分散体のアルカリ金属の粒子が所定数のモノマーの分子に接触して反応を行うための時間が長くなる。
この製造方法では反応槽1に蓄えられたモノマーの分子の数が滴下した溶液に含まれる金属ナトリウムの粒子数より圧倒的に多いため、滴下された分散体のアルカリ金属の粒子が所定数のモノマーの分子に接触して反応を行うための時間が長くなる。
また、本構成の方法では、反応を緩やかに行わせるだけでなく、複数のモノマーが鎖状に結合した分子の一方の端部のハロゲンだけをアルカリ金属が分離させる反応を行わせることにより、分子が環状構造に結合する反応を抑制しつつ、鎖状に結合する反応を促進して高分子化を促進できる。
分散体SDが滴下された後の温度上昇の勾配に基づいて反応槽1を冷却する制御を行うことにより、内部温度が目標温度領域を超える以前に適切な冷却を行い、内部温度を適正に維持することも可能となる。更に、反応槽1の内部温度が上昇した場合に、分散体SDを滴下のインターバルを延長することにより、内部温度の過剰な上昇を良好に抑制できる。このような温度制御により、反応槽1の内部温度が反応に適した温度に維持されるため、分子量の大きいポリシランの製造を促進し製造効率を高く維持することが可能となる。
特に、内部温度の上昇が殆どない場合には、最適な加熱を行うことで、積極的に反応を行わせ反応槽1の内部に金属ナトリウムの粒子を残留させる不都合を招くことがなく、適正な反応状態を維持することが可能となる。
更に、分散体SDを分散させる不活性溶媒と、モノマーを溶解する溶液とにキシレンが用いられているため、複数種の溶媒を必要とせず製造のコストを低減することも可能となる。
〔実施例1〕
この構成の方法を以下の1.〜5.のように実施した。
この構成の方法を以下の1.〜5.のように実施した。
1.反応槽1にモノマー(9.939グラム)と、キシレン(40.953グラム)とを加えて50℃に維持し、撹拌機3を200rpmで回転して溶解を行うことでモノマーとキシレンとが混合する反応液Mを調製した。
2.モノマーにはジクロロメチルフェニルシランを用いた。
3.撹拌機3による300rpmの撹拌下で、反応液M(モノマーの混合液)の温度を50℃±5℃の範囲で管理しながら、分散体SDを40分に亘って滴下(添加)した。滴下した分散体SDの総量は18.06グラムである。滴下終了後、更に4時間撹拌した。
4.撹拌終了後、イソプロピルアルコールを投入した失活槽へ反応液を添加し、反応を停止させた。
5.失活後の反応液を、水を用いて液液抽出し、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン、を加えて蒸留残留物を溶解し、溶解液にヘキサンを加えてポリマーの結晶を析出させ濾取した。
〔実施例2〕
この構成の方法を以下の1.〜5.のように実施した。
この構成の方法を以下の1.〜5.のように実施した。
1.反応槽1にモノマー(10.006グラム)と、キシレン(40.163グラム)とを加えて90℃に維持し、撹拌機3を200rpmで回転して溶解を行うことでモノマーとキシレンとが混合する反応液Mを調製した。
2.モノマーにはジクロロメチルフェニルシランを用いた。
3.撹拌機3による300rpmの撹拌下で、反応液M(モノマーの混合液)の温度を90℃±5℃の範囲で管理しながら、分散体SDを43分に亘って滴下(添加)した。滴下した分散体SDの総量は18.921グラムである。滴下終了後、更に4時間撹拌した。
4.撹拌終了後、イソプロピルアルコールを投入した失活槽へ反応液を添加し、反応を停止させた。
5.失活後の反応液を、水を用いて液液抽出し、減圧蒸留を行い、蒸留残留物にテトラヒドロフランを加えて溶解し、溶解液にヘキサンを加えてポリマーの結晶を析出させ濾取した。
図5には、〔実施例1〕〔実施例2〕で得られたポリシランの分子量と、特許文献1と特許文献2と実験データとで得られたポリシランの分子量を対比して実験データとして示している。尚、図5には、〔実施例1〕を本発明(1)とし、〔実施例2〕を本発明(2)として示し、特許文献1を従来例(1)とし、特許文献2を従来例(2)として示している。
図5に示す実験データから明らかなように、本発明(1)、本発明(2)で生成されるポリシランの分子量は、加重平均分子量の値と算術平均分子量の値との何れもが従来例(1)、従来例(2)の何れにも勝ることが理解できる。
〔別実施形態〕
上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
(a)反応槽1の内部の目標温度を、実施形態の50℃や、〔実施例2〕の90℃以外の値に設定する。この別実施形態では、反応槽1と、この反応槽1を制御する制御系とに実施形態に説明したものと共通するものの使用が可能である。また、このように目標温度を設定し、前述した実施形態と同様に反応槽1に窒素ガスを封入した状態でモノマーを含む反応液を調製した後に、分散体SDの滴下(添加)により反応を開始する。
この後には、実施形態で説明したものと同様に、失活槽で失活を行い、液液抽出を行い、減圧蒸留を行い、結晶を析出させ、濾取することでポリシランを得ることが可能となる。本構成のポリシラン製造方法では、反応時の温度が高温であるほど、ポリシランの分子量が大きくなることが確認されており、目標温度を高くすることで、より高分子となるポリシランを得ることが可能となる。
(b)分散体SDを加熱できるように、例えば、分散体導入部2や供給路11に電気ヒータ等を備え、分散体SDが反応槽1に滴下された後に、温度計測部8で計測される温度が設定値未満である場合に、電気ヒータによる加熱で分散体SDを加熱するように処理形態を設定する。このように処理形態を設定した製造方法でも反応槽1の内部温度の上昇を図り良好な反応を継続できる。しかも、このような加熱形態でも、反応槽1の内部に金属ナトリウムの粒子を残留させる不都合を招くこともない。
(c)モノマーの温度と、その温度で生成されるポリシランの分子量との関係を予めデータとして取得しておき、目標とする分子量の前記ポリシランの生成時には、データに基づいて反応温度を設定する。この方法では、目標とする分子量のポリシランを製造する場合にはモノマーの温度を制御するだけで済む。
(d)モノマーが溶解される溶媒と、アルカリ金属の粒子が分散される不活性溶媒とに異なるものを用いる。つまり、モノマーが溶解するに適した溶媒を用いることが可能になると共に、アルカリ金属が分散されるに適した不活性溶媒を用いることが可能となる。
本構成は、モノマーとアルカリ金属との反応を利用して分子量の大きいポリシランを製造する方法に利用することができる。
SD 分散体
Claims (6)
- 複数のハロゲンが化合したハロシランをモノマーとして溶媒に溶解して蓄えておき、
アルカリ金属の粒子を不活性溶媒に分散させた分散体を、蓄えられている前記モノマーに対して添加するポリシラン製造方法。 - 前記モノマーの温度を、前記アルカリ金属の融点未満に維持する請求項1に記載のポリシラン製造方法。
- 前記分散体に分散したアルカリ金属の粒子が、金属ナトリウムである請求項1又は2に記載のポリシラン製造方法。
- 前記モノマーの温度の下限値を、30℃に設定している請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリシラン製造方法。
- 前記モノマーを溶解する前記溶媒として、前記アルカリ金属を分散させる前記不活性溶媒を用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリシラン製造方法。
- 前記モノマーの温度と、その温度で生成されるポリシランの分子量との関係が予めデータとして取得され、目標とする分子量の前記ポリシランの生成時には、前記データに基づいて反応温度が設定される請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリシラン製造方法。
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