以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における鉄道車両用制振装置1は、図1に示すように、鉄道車両の車体Bと前後の台車Tf,Trの間に介装される第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2と、これら第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2を制御するコントローラCとを備えている。第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2は、対をなして、車体Bの前後に設けた台車Tf,Trに対してそれぞれ一本ずつ設けられて、車体Bと台車Tf,Trの間に並列に介装されている。
そして、これら第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2は、通常制御時にはコントローラCによるスカイフックセミアクティブ制御が行われ、車体Bの車両進行方向に対する水平横方向の振動を抑制するようになっている。
つづいて、第一セミアクティブダンパD1の具体的な構成について説明する。第一セミアクティブダンパD1は、図2に示すように、鉄道車両の台車Tf(Tr)と車体Bの一方に連結されるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3と台車Tf(Tr)と車体Bの他方に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、タンク7と、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8の途中に設けた第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けた第二開閉弁11と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路18と、タンク7からピストン側室6へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路19と、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路21と、この排出通路21の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22とを備えており、片ロッド型のセミアクティブダンパとして構成されている。また、前記ロッド側室5とピストン側室6には液体が充填されるとともに、タンク7には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体の圧縮充填によって加圧状態とする必要は無い。
そして、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とするとともに第二開閉弁11で第二通路10を閉じた状態では、第一セミアクティブダンパD1は、収縮作動では減衰力を発揮するが伸長作動では減衰力を発揮しない片効きのセミアクティブダンパとして機能する。他方、第一開閉弁9で第一通路8を閉じて第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とすると、第一セミアクティブダンパD1は、伸長作動では減衰力を発揮するが収縮作動では減衰力を発揮しない片効きのセミアクティブダンパとして機能する。また、第一開閉弁9で第一通路8を閉じ、第二開閉弁11で第二通路10を閉じた状態では、第一セミアクティブダンパD1は、伸縮両方の作動で減衰力を発揮するパッシブダンパとして機能する。さらに、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とし、第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とした状態では、第一セミアクティブダンパD1は、伸長作動しても収縮作動しても減衰力を発揮しないアンロード状態となる。
以下、第一セミアクティブダンパD1の各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その図2中右端は蓋13によって閉塞され、図2中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端を同じくシリンダ2内に摺動自在に挿入されているピストン3に連結してある。
なお、ロッド4の外周とロッドガイド14の内周との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内にピストン3によって区画されるロッド側室5とピストン側室6には、前述のように液体が充填されている。シリンダ2内に充填される液体は、作動油の他、第一セミアクティブダンパD1に適する液体を使用することができる。
また、この第一セミアクティブダンパD1の場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようにしてある。このようにすると、第一セミアクティブダンパD1がパッシブダンパとして機能する際に、第一セミアクティブダンパD1の変位量に対してシリンダ2から排出される液体量が伸縮両側で同じとなる。したがって、第一セミアクティブダンパD1がパッシブダンパとして機能する際に、伸長作動時と収縮作動時とでピストン速度が等しければ発揮される減衰力が等しくなる。なお、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、第一セミアクティブダンパD1がダンパとして機能可能である。
戻って、ロッド4の図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13には、図示しない取付部を備えており、この第一セミアクティブダンパD1を鉄道車両における車体Bと台車Tf,Trとの間に介装できるようになっている。
そして、ロッド側室5とピストン側室6とは、第一通路8によって連通されており、この第一通路8の途中には、第一開閉弁9が設けられている。この第一通路8は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
第一開閉弁9は、本例では電磁開閉弁とされており、第一通路8を開閉するバルブ9aと、第一通路8を開くようにバルブ9aを附勢するバネ9dと、通電時に第一通路8を閉じるようにバルブ9aを切換えるソレノイド9eとを備えて構成されている。よって、第一開閉弁9は、非通電時に第一通路8を開くノーマルオープンの電磁開閉弁とされている。バルブ9aは、第一通路8を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジション9bとロッド側室5とピストン側室6との連通を遮断する遮断ポジション9cとを備えている。バネ9dは、連通ポジション9bを採るようにバルブ9aを附勢しており、ソレノイド9eは、通電時にバルブ9aをバネ9dに対抗させて遮断ポジション9cに切換えるようになっている。
つづいて、ピストン側室6とタンク7とは、第二通路10によって連通されており、この第二通路10の途中には、第二開閉弁11が設けられている。第二開閉弁11は、本例では電磁開閉弁とされ、第二通路10を開閉するバルブ11aと、第二通路10を開くようにバルブ11aを附勢するバネ11dと、通電時に第二通路10を閉じるようにバルブ11aを切換えるソレノイド11eとを備えて構成されている。よって、第二開閉弁11は、非通電時に第二通路10を開くノーマルオープンの電磁開閉弁とされている。バルブ11aは、第二通路10を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジション11bとピストン側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジション11cとを備えている。バネ11dは、連通ポジション11bを採るようにバルブ11aを附勢しており、ソレノイド11eは、通電時にバルブ11aをバネ11dに対抗させて遮断ポジション11cに切換えるようになっている。
また、第一セミアクティブダンパD1は、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路21と、この排出通路21の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22とを備えている。
可変リリーフ弁22は、比例電磁リリーフ弁とされており、排出通路21の途中に設けた弁体22aと、排出通路21を遮断するように弁体22aを附勢するバネ22bと、通電時にバネ22bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド22cとを備えている。そして、可変リリーフ弁22は、比例ソレノイド22cに流れる電流量の調節により、開弁圧を調節できるようになっている。
可変リリーフ弁22は、排出通路21の上流となるロッド側室5の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、ロッド側室5の圧力と比例ソレノイド22cが弁体22aを推す推力がバネ22bの附勢力に打ち勝って弁体22aが後退し排出通路21を開放する。
また、この可変リリーフ弁22にあっては、比例ソレノイド22cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド22cが発生する推力が増大するようになっている。よって、この可変リリーフ弁22では、比例ソレノイド22cに供給する電流量を最大とすると開弁圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド22cに全く電流を供給しないと開弁圧が最大となる。
さらに、この実施の形態の第一セミアクティブダンパD1は、整流通路18と吸込通路19とを備えており、第一開閉弁9および第二開閉弁11が閉弁している場合にパッシブダンパとして機能する。整流通路18は、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう液体の流れのみを許容し、吸込通路19は、タンク7からピストン側室6へ向かう液体の流れのみを許容する。
より詳細には、整流通路18は、ピストン側室6とロッド側室5とを連通しており、途中に逆止弁18aが設けられ、この整流通路18は、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、吸込通路19は、タンク7とピストン側室6とを連通しており、途中に逆止弁19aが設けられ、この吸込通路19は、タンク7からピストン側室6へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路18は、第一開閉弁9の遮断ポジション9cを逆止弁とすると、第一通路8に集約することができ、吸込通路19についても、第二開閉弁11の遮断ポジション11cを逆止弁とすると第二通路10に集約できる。
このように構成された第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9と第二開閉弁11がともに遮断ポジション9c,11cを採ると、整流通路18および吸込通路19と排出通路21で、ロッド側室5、ピストン側室6およびタンク7を数珠繋ぎに連通させる。そして、整流通路18、吸込通路19および排出通路21は、一方通行の通路に設定されているので、第一セミアクティブダンパD1が外力によって伸縮させられると、必ずシリンダ2から液体が排出される。シリンダ2から排出された液体は、排出通路21を介してタンク7へ戻され、シリンダ2で足りなくなる液体は、吸込通路19を介してタンク7からシリンダ2内へ供給される。この液体の流れに対して前記可変リリーフ弁22が抵抗となってシリンダ2内の圧力を開弁圧に調節する圧力制御弁として機能するので、第一セミアクティブダンパD1は、パッシブなユニフロー型のダンパとして機能できる。
また、第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が閉じて第二開閉弁11が開弁する状態で伸長すると、拡大するピストン側室6にタンク7から液体が供給され、圧縮されるロッド側室5から液体が排出通路21を介してタンク7へ排出される。この排出通路21を通過する液体の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与えるため、ロッド側室5の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧に調節され、第一セミアクティブダンパD1は伸長作動を抑制する減衰力を発揮する。第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が閉じて第二開閉弁11が開弁する状態で収縮すると、拡大するロッド側室5に整流通路18を介してピストン側室6から液体が供給され、圧縮されるピストン側室6から液体がタンク7へ排出される。この場合、液体は、可変リリーフ弁22を通過せず、シリンダ2内の圧力はタンク圧となるので、第一セミアクティブダンパD1は減衰力を発揮しない。よって、第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が閉じて第二開閉弁11が開弁する状態では、伸長時でのみ減衰力を発揮するセミアクティブダンパとして機能する。
さらに、第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が開弁して第二開閉弁11が閉じる状態で伸長すると、圧縮されるロッド側室5からピストン側室6へ液体が移動するとともに、ロッド退出体積分の液体が吸込通路19を介してタンク7から供給される。この場合、液体は、可変リリーフ弁22を通過せず、シリンダ2内の圧力はタンク圧となるので、第一セミアクティブダンパD1は減衰力を発揮しない。第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が開弁して第二開閉弁11が閉じる状態で収縮すると、圧縮されるピストン側室6からロッド側室5へ液体が移動し、シリンダ2内へ侵入するロッド4が押しのける体積分の液体がロッド側室5から排出される。ロッド側室5から排出された液体は、排出通路21を介してタンク7へ移動し、排出通路21を通過する液体の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与える。そのため、ロッド側室5の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧に調節され、第一セミアクティブダンパD1は収縮作動を抑制する減衰力を発揮する。よって、第一セミアクティブダンパD1は、第一開閉弁9が開弁して第二開閉弁11が閉じる状態では、収縮時でのみ減衰力を発揮するセミアクティブダンパとして機能する。
さらに、第一開閉弁9および第二開閉弁11がともに開弁する状態では、ロッド側室5およびピストン側室6が第一開閉弁9および第二開閉弁11を介してタンク7に連通される。そのため、第一セミアクティブダンパD1は、シリンダ2内が常にタンク圧となり伸縮しても減衰力を発揮しないアンロード状態となる。第一開閉弁9および第二開閉弁11は、ともに非通電時に連通ポジション9b,11bをとるので、第一セミアクティブダンパD1は、非通電時にアンロード状態となる。
そして、第一セミアクティブダンパD1をパッシブなダンパとして機能させる際に、ロッド側室5内の圧力は可変リリーフ弁22の開弁圧に調節され、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節により減衰力を可変にできる。また、第一セミアクティブダンパD1をセミアクティブダンパとして機能させる際、減衰力の発揮が可能な方向へ伸縮する場合にロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧に調節され、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節により減衰力を可変にできる。
なお、可変リリーフ弁22は、与える電流量で開弁圧を比例的に変化させる比例電磁リリーフ弁とすると開弁圧の制御が簡単となるが、開弁圧を調節できるリリーフ弁であれば比例電磁リリーフ弁に限定されるものではない。また、可変リリーフ弁22は、第一セミアクティブダンパD1に伸縮方向の過大な入力があって、ロッド側室5の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路21を開放してロッド側室5をタンク7へ連通し、ロッド側室5内の圧力をタンク7へ逃がす。これにより、第一セミアクティブダンパD1のシリンダ2内が過剰圧力から保護される。
次に、第二セミアクティブダンパD2の具体的な構成について説明する。第二セミアクティブダンパD2は、図3に示すように、鉄道車両の台車Tf(Tr)と車体Bの一方に連結されるシリンダ32と、シリンダ32内に摺動自在に挿入されるピストン33と、シリンダ32内に挿入されてピストン33と台車Tf(Tr)と車体Bの他方に連結されるロッド34と、シリンダ32内にピストン33で区画したロッド側室35とピストン側室36と、タンク37と、ロッド側室35とピストン側室36とを連通する第一通路38の途中に設けた第一開閉弁39と、ピストン側室36とタンク37とを連通する第二通路40の途中に設けた第二開閉弁41と、ピストン側室36からロッド側室35へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路48と、タンク37からピストン側室36へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路49と、ロッド側室35とタンク37とを接続する排出通路51と、この排出通路51の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁52とを備えており、片ロッド型のセミアクティブダンパとして構成されている。また、前記ロッド側室35とピストン側室36には液体が充填されるとともに、タンク37には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク37内は、特に、気体の圧縮充填によって加圧状態とする必要は無い。
そして、第一開閉弁39で第一通路38を連通状態とするとともに第二開閉弁41で第二通路40を閉じた状態では、第二セミアクティブダンパD2は、収縮作動では減衰力を発揮するが伸長作動では減衰力を発揮しない片効きのセミアクティブダンパとして機能する。他方、第一開閉弁39で第一通路38を閉じて第二開閉弁41で第二通路40を連通状態とすると、第二セミアクティブダンパD2は、伸長作動では減衰力を発揮するが収縮作動では減衰力を発揮しない片効きのセミアクティブダンパとして機能する。また、第一開閉弁39で第一通路38を閉じ、第二開閉弁41で第二通路40を閉じた状態では、第二セミアクティブダンパD2は、伸縮両方の作動では減衰力を発揮するパッシブダンパとして機能する。さらに、第一開閉弁39で第一通路38を連通状態とし、第二開閉弁41で第二通路40を連通状態とした状態では、第二セミアクティブダンパD2は、伸長作動しても収縮作動しても減衰力を発揮しないアンロード状態となる。
以下、第二セミアクティブダンパD2の各部について詳細に説明する。シリンダ32は筒状であって、その図3中右端は蓋43によって閉塞され、図3中左端には環状のロッドガイド44が取り付けられている。また、前記ロッドガイド44内には、シリンダ32内に移動自在に挿入されるロッド34が摺動自在に挿入されている。このロッド34は、一端をシリンダ32外へ突出させており、シリンダ32内の他端を同じくシリンダ32内に摺動自在に挿入されているピストン33に連結してある。
なお、ロッド34の外周とロッドガイド44の内周との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ32内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ32内にピストン33によって区画されるロッド側室35とピストン側室36には、前述のように液体が充填されている。シリンダ32内に充填される液体は、作動油の他、第二セミアクティブダンパD2に適する液体を使用することができる。
また、この第二セミアクティブダンパD2の場合、ロッド34の断面積をピストン33の断面積の二分の一にして、ピストン33のロッド側室35側の受圧面積がピストン側室36側の受圧面積の二分の一となるようにしてある。このようにすると、第二セミアクティブダンパD2がパッシブダンパとして機能する際に、第二セミアクティブダンパD2の変位量に対してシリンダ32から排出される液体量が伸縮両側で同じとなる。したがって、第二セミアクティブダンパD2がパッシブダンパとして機能する際に、伸長作動時と収縮作動時とでピストン速度が等しければ発揮される減衰力が等しくなる。なお、ピストン33のロッド側室35側の受圧面積をピストン側室36側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、第二セミアクティブダンパD2がダンパとして機能可能である。
戻って、ロッド34の図3中左端とシリンダ32の右端を閉塞する蓋43には、図示しない取付部を備えており、この第二セミアクティブダンパD2を鉄道車両における車体Bと前側台車Tf,Trとの間に介装できるようになっている。
そして、ロッド側室35とピストン側室36とは、第一通路38によって連通されており、この第一通路38の途中には、第一開閉弁39が設けられている。この第一通路38は、シリンダ32外でロッド側室35とピストン側室36とを連通しているが、ピストン33に設けられてもよい。
第一開閉弁39は、本例では電磁開閉弁とされており、第一通路38を開閉するバルブ39aと、第一通路38を閉じるようにバルブ39aを附勢するバネ39dと、通電時に第一通路38を開くようにバルブ39aを切換えるソレノイド39eとを備えて構成されている。よって、第一開閉弁39は、非通電時に第一通路38を閉じるノーマルクローズの電磁開閉弁とされている。バルブ39aは、第一通路38を開放してロッド側室35とピストン側室36とを連通する連通ポジション39bとロッド側室35とピストン側室36との連通を遮断する遮断ポジション39cとを備えている。バネ39dは、遮断ポジション39cを採るようにバルブ39aを附勢しており、ソレノイド39eは、通電時にバルブ39aをバネ39dに対抗させて連通ポジション39bに切換えるようになっている。
つづいて、ピストン側室36とタンク37とは、第二通路40によって連通されており、この第二通路40の途中には、第二開閉弁41が設けられている。第二開閉弁41は、本例では電磁開閉弁とされ、第二通路40を開閉するバルブ41aと、第二通路40を閉じるようにバルブ41aを附勢するバネ41dと、通電時に第二通路40を開くようにバルブ41aを切換えるソレノイド41eとを備えて構成されている。よって、第二開閉弁41は、非通電時に第二通路40を閉じるノーマルクローズの電磁開閉弁とされている。バルブ41aは、第二通路40を開放してピストン側室36とタンク37とを連通する連通ポジション41bとピストン側室36とタンク37との連通を遮断する遮断ポジション41cとを備えている。バネ41dは、遮断ポジション41cを採るようにバルブ41aを附勢しており、ソレノイド41eは、通電時にバルブ41aをバネ41dに対抗させて連通ポジション41bに切換えるようになっている。
また、第二セミアクティブダンパD2は、ロッド側室35とタンク37とを接続する排出通路51と、この排出通路51の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁52とを備えている。
可変リリーフ弁52は、比例電磁リリーフ弁とされており、排出通路51の途中に設けた弁体52aと、排出通路51を遮断するように弁体52aを附勢するバネ52bと、通電時にバネ52bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド52cとを備えている。そして、可変リリーフ弁52は、比例ソレノイド52cに流れる電流量の調節により、開弁圧を調節できるようになっている。
可変リリーフ弁52は、排出通路51の上流となるロッド側室35の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、ロッド側室35の圧力と比例ソレノイド52cが弁体52aを推す推力がバネ52bの附勢力に打ち勝って弁体52aが後退し排出通路51を開放する。
また、この可変リリーフ弁52にあっては、比例ソレノイド52cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド52cが発生する推力が増大するようになっている。よって、この可変リリーフ弁52では、比例ソレノイド52cに供給する電流量を最大とすると開弁圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド52cに全く電流を供給しないと開弁圧が最大となる。
さらに、この実施の形態の第二セミアクティブダンパD2は、整流通路48と吸込通路49とを備えており、第一開閉弁39および第二開閉弁41が閉弁している場合にパッシブダンパとして機能する。整流通路48は、ピストン側室36からロッド側室35へ向かう液体の流れのみを許容し、吸込通路49は、タンク37からピストン側室36へ向かう液体の流れのみを許容する。
より詳細には、整流通路48は、ピストン側室36とロッド側室35とを連通しており、途中に逆止弁48aが設けられ、この整流通路48は、ピストン側室36からロッド側室35へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、吸込通路49は、タンク37とピストン側室36とを連通しており、途中に逆止弁49aが設けられ、この吸込通路49は、タンク37からピストン側室36へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路48は、第一開閉弁39の遮断ポジション39cを逆止弁とすると、第一通路38に集約することができ、吸込通路49についても、第二開閉弁41の遮断ポジション41cを逆止弁とすると第二通路40に集約できる。
このように構成された第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39と第二開閉弁41がともに遮断ポジション39c,41cを採ると、整流通路48および吸込通路49と排出通路51で、ロッド側室35、ピストン側室36およびタンク37を数珠繋ぎに連通させる。そして、整流通路48、吸込通路49および排出通路51は、一方通行の通路に設定されているので、第二セミアクティブダンパD2が外力によって伸縮させられると、必ずシリンダ32から液体が排出される。シリンダ32から排出された液体は、排出通路51を介してタンク37へ戻され、シリンダ32で足りなくなる液体は、吸込通路49を介してタンク37からシリンダ32内へ供給される。この液体の流れに対して前記可変リリーフ弁52が抵抗となってシリンダ32内の圧力を開弁圧に調節する圧力制御弁として機能するので、第二セミアクティブダンパD2は、パッシブなユニフロー型のダンパとして機能できる。
また、第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が閉じて第二開閉弁41が開弁する状態で伸長すると、拡大するピストン側室36にタンク37から液体が供給され、圧縮されるロッド側室35から液体が排出通路51を介してタンク37へ排出される。この排出通路51を通過する液体の流れに対して可変リリーフ弁52が抵抗を与えるため、ロッド側室35の圧力が可変リリーフ弁52の開弁圧に調節され、第二セミアクティブダンパD2は伸長作動を抑制する減衰力を発揮する。第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が閉じて第二開閉弁41が開弁する状態で収縮すると、拡大するロッド側室35に整流通路48を介してピストン側室36から液体が供給され、圧縮されるピストン側室36から液体がタンク37へ排出される。この場合、液体は、可変リリーフ弁52を通過せず、シリンダ32内の圧力はタンク圧となるので、第二セミアクティブダンパD2は減衰力を発揮しない。よって、第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が閉じて第二開閉弁41が開弁する状態では、伸長時でのみ減衰力を発揮するセミアクティブダンパとして機能する。
さらに、第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が開弁して第二開閉弁41が閉じる状態で伸長すると、圧縮されるロッド側室35からピストン側室36へ液体が移動するとともに、ロッド退出体積分の液体が吸込通路49を介してタンク37から供給される。この場合、液体は、可変リリーフ弁52を通過せず、シリンダ32内の圧力はタンク圧となるので、第二セミアクティブダンパD2は減衰力を発揮しない。第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が開弁して第二開閉弁41が閉じる状態で収縮すると、圧縮されるピストン側室36からロッド側室35へ液体が移動し、シリンダ32内へ侵入するロッド34が押しのける体積分の液体がロッド側室35から排出される。ロッド側室35から排出された液体は、排出通路51を介してタンク37へ移動し、排出通路51を通過する液体の流れに対して可変リリーフ弁52が抵抗を与える。そのため、ロッド側室35の圧力が可変リリーフ弁52の開弁圧に調節され、第二セミアクティブダンパD2は収縮作動を抑制する減衰力を発揮する。よって、第二セミアクティブダンパD2は、第一開閉弁39が開弁して第二開閉弁41が閉じる状態では、収縮時でのみ減衰力を発揮するセミアクティブダンパとして機能する。
さらに、第一開閉弁39および第二開閉弁41がともに開弁する状態では、ロッド側室35およびピストン側室36が第一開閉弁39および第二開閉弁41を介してタンク37に連通される。そのため、第二セミアクティブダンパD2は、シリンダ32内が常にタンク圧となり伸縮しても減衰力を発揮しないアンロード状態となる。第一開閉弁39および第二開閉弁41は、ともに非通電時に遮断ポジション39c,41cをとるので、第二セミアクティブダンパD2は、パッシブダンパとして機能する。
そして、第二セミアクティブダンパD2をパッシブなダンパとして機能させる際に、ロッド側室35内の圧力は可変リリーフ弁52の開弁圧に調節され、可変リリーフ弁52の比例ソレノイド52cへ通電して開弁圧を調節すれば、減衰力を可変にできる。第二セミアクティブダンパD2をパッシブなダンパとして機能させる際に、可変リリーフ弁52にも通電しなければ、第二セミアクティブダンパD2は、減衰力を最大にするパッシブダンパとなる。また、第二セミアクティブダンパD2をセミアクティブダンパとして機能させる際、減衰力の発揮が可能な方向へ伸縮する場合にロッド側室35内の圧力が可変リリーフ弁52の開弁圧に調節され、可変リリーフ弁52の開弁圧の調節により減衰力を可変にできる。
なお、可変リリーフ弁52は、与える電流量で開弁圧を比例的に変化させる比例電磁リリーフ弁とすると開弁圧の制御が簡単となるが、開弁圧を調節できるリリーフ弁であれば比例電磁リリーフ弁に限定されるものではない。また、可変リリーフ弁52は、第二セミアクティブダンパD2に伸縮方向の過大な入力があって、ロッド側室35の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路51を開放してロッド側室35をタンク37へ連通し、ロッド側室35内の圧力をタンク37へ逃がす。これにより、第二セミアクティブダンパD2のシリンダ32内が過剰圧力から保護される。
コントローラCは、本例では、車体Bの振動を抑制する制御を行う際に、車体Bの車体前部Bfの車両進行方向に対して水平横方向の横方向加速度αfと、車体Bの車体後部Brの車両進行方向に対して水平横方向の横方向加速度αrとを検知する。そして、コントローラCは、横方向加速度αfと横方向加速度αrに基づいて前後の台車Tf,Trの直上における車体中心G周りの角加速度であるヨー加速度ωと、車体Bの中心Gの水平横方向の加速度であるスエー加速度Sを求める。さらに、コントローラCは、ヨー加速度ωに基づいて車体B全体のヨー振動抑制に必要な目標ヨー抑制力Fωrefを求め、スエー加速度Sに基づいて車体B全体のスエー振動抑制に必要な目標スエー抑制力FSrefを求める。また、コントローラCは、鉄道車両の走行中である区間が明り区間、曲線区間、トンネル区間であるかを認識できるようになっている。なお、本例では、コントローラCは、明り区間と曲線区間が複合されている区間については曲線区間とし、トンネル区間と曲線区間が複合されている区間についてはトンネル区間とする。
そして、コントローラCは、鉄道車両が明り区間を走行時には、各台車Tf,Trに設けられた第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態として推力を発揮しない状態とする。また、コントローラCは、各台車Tf,Trに設けられた第二セミアクティブダンパD2についてはスカイフック制御則に則って通常制御を行い、第二セミアクティブダンパD2をセミアクティブダンパとして機能させる。
また、コントローラCは、鉄道車両が曲線区間を走行時には、各台車Tf,Trに設けられた第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとして機能させる。さらに、コントローラCは、各台車Tf,Trに設けられた第二セミアクティブダンパD2をスカイフック制御則に則って通常制御し、第二セミアクティブダンパD2をセミアクティブダンパとして機能させる。
さらに、コントローラCは、鉄道車両がトンネル区間を走行時には、各台車Tf,Trに設けられた第一セミアクティブダンパD1および第二セミアクティブダンパD2をスカイフック制御則に則って通常制御し、これらをセミアクティブダンパとして機能させる。
また、コントローラCは、鉄道車両がどの区間を走行しているかに関わらず、鉄道車両の速度が設定速度以下である場合、第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とし、第二セミアクティブダンパD2をパッシブダンパとして機能させる。前記設定速度は、鉄道車両の速度が低速であって、第二セミアクティブダンパD2をパッシブダンパとしても充分な制振効果が得られるような速度に設定され、たとえば、路線にもよるが、鉄道車両の最高速度の半分程度の速度等とされる。
コントローラCは、第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とする場合には、第一セミアクティブダンパD1の第一開弁9および第二開閉弁11への通電を停止し開弁させる。また、コントローラCは、第二セミアクティブダンパD2をアンロード状態とする場合には、第二セミアクティブダンパD2の第一開閉弁39および第二開閉弁41へ通電して開弁させる。
コントローラCは、第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとする場合には、第一開弁9および第二開閉弁11へ通電して閉弁させ、可変リリーフ弁22については電流量の調整を行って所望する減衰力を得られるようにする。すると、第一セミアクティブダンパD1は、可変リリーフ弁22が抵抗となって、ユニフロー型のパッシブダンパとして減衰力を発揮する。コントローラCは、第二セミアクティブダンパD2をパッシブダンパとする場合には、第一開弁39および第二開閉弁41への通電を停止して閉弁させるとともに、可変リリーフ弁52については電流量の調整を行って所望する減衰力を得られるようにする。すると、第二セミアクティブダンパD2は、可変リリーフ弁52が抵抗となって、ユニフロー型のパッシブダンパとして減衰力を発揮する。
そして、コントローラCは、鉄道車両が明り区間を走行中で、第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とし、第二セミアクティブダンパD2にのみ減衰力を発揮させるべく通常制御するには以下のようにする。第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とする場合、コントローラCは前述のように動作する。また、コントローラCは、前側の台車Tfに設けた第二セミアクティブダンパD2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/2を乗じて得た値と目標スエー抑制力FSrefに1/2を乗じて得た値を加算した前側制御力Ftfを出力させる。コントローラCは、後側の台車Trに設けた第二セミアクティブダンパD2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/2を乗じて得た値から目標スエー抑制力FSrefに1/2を乗じて得た値を差し引きして得る後側制御力Ftrを出力させる。各制御力Ftf,Ftrが第二セミアクティブダンパD2の伸長側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁39を閉じて第二開閉弁41を開く。反対に各制御力Ftf,Ftrが第二セミアクティブダンパD2の収縮側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁39を開き第二開閉弁41を閉じる。そのうえで、コントローラCは、可変リリーフ弁52の開弁圧を調節して第二セミアクティブダンパD2が発生する減衰力が各制御力Ftf,Ftrとなるように制御する。
コントローラCは、鉄道車両が曲線区間を走行中で、第二セミアクティブダンパD2にのみ減衰力を発揮させるべく通常制御するには以下のようにする。コントローラCは、前側の台車Tfに設けた各セミアクティブダンパD1,D2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/2を乗じて得た値と目標スエー抑制力FSrefに1/2を乗じて得た値を加算した前側制御力Ftfを出力させる。さらに、コントローラCは、後側の台車Trに設けた各セミアクティブダンパD1,D2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/2を乗じて得た値から目標スエー抑制力FSrefに1/2を乗じて得た値を差し引きして得る後側制御力Ftrを出力させる。コントローラCは、第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとして機能させて出力する減衰力が曲線区間に適するように、第一開弁9および第二開閉弁11へ通電して閉弁させ、可変リリーフ弁22の開弁圧を制御する。また、第二セミアクティブダンパD2にあっては、各制御力Ftf,Ftrが第二セミアクティブダンパD2の伸長側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁39を閉じて第二開閉弁41を開く。反対に各制御力Ftf,Ftrが第二セミアクティブダンパD2の収縮側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁39を開き第二開閉弁41を閉じる。そのうえで、コントローラCは、可変リリーフ弁52の開弁圧を調節して第二セミアクティブダンパD2が発生する減衰力が各制御力Ftf,Ftrとなるように制御する。
コントローラCは、鉄道車両がトンネル区間を走行中で、第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2をともに通常制御するには以下のようにする。コントローラCは、前側台車Tfに設けた第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/4を乗じて得た値と目標スエー抑制力FSrefに1/4を乗じて得た値を加算した前側制御力Ftfを出力させる。コントローラCは、後側台車Trに設けた第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2に、目標ヨー抑制力Fωrefに1/4を乗じて得た値から目標スエー抑制力FSrefに1/4を乗じて得た値を差し引きして得る後側制御力Ftrを出力させる。各制御力Ftf,Ftrが第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2の伸長側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁9,39を閉じて第二開閉弁11,41を開く。反対に各制御力Ftf,Ftrが第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2の収縮側で減衰力を発揮させる力であれば、コントローラCは、第一開閉弁9,39を開き第二開閉弁11,41を閉じる。そのうえで、コントローラCは、可変リリーフ弁22,52の開弁圧を調節して第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2が発生する減衰力が各制御力Ftf,Ftrとなるように制御する。
つづいて、コントローラCは、図4に示すように、車体前側としての車体前部Bfの車両進行方向に対して水平横方向の前側の横方向加速度αfを検出する前側加速度センサ60と、車体後側としての車体後部Brの車両進行方向に対して水平横方向の後側の横方向加速度αrを検出する後側加速度センサ61と、横方向加速度αfと横方向加速度αrに含まれるノイズを除去するバンドパスフィルタ62,63と、鉄道車両の走行中である地点情報を取得する地点情報取得部64と、バンドパスフィルタ62,63で濾波した横方向加速度αfと横方向加速度αrを処理するとともに、地点情報取得部64で得た鉄道車両の地点情報から走行区間が明り区間、曲線区間或いはトンネル区間のどの区間であるかと速度取得部65から入力される鉄道車両の速度Vとに基づいて第一セミアクティブダンパD1および第二セミアクティブダンパD2の第一開閉弁9,39のソレノイド9e,39e、第二開閉弁11,41のソレノイド11e,41e、可変リリーフ弁22,52の比例ソレノイド22c,52cへ制御指令を出力する制御部66を備えて構成されている。
なお、本実施の形態では、制御部66は、H∞制御を行って周波数に重みづけして目標ヨー抑制力Fωrefおよび目標スエー抑制力FSrefを求めるようにしているので、バンドパスフィルタ62,63を省略することも可能である。
地点情報取得部64および速度取得部65は、この場合、編成列車中のある車両に設置される中央車両モニタ或いはこれに接続される車両モニタ端末とされており、リアルタイムに鉄道車両の走行地点と速度Vを得られるようになっている。なお、地点情報取得部64は、車両モニタによらず、GPS(Global Positioning System)等といった鉄道車両の走行地点を検出することができるものであってもよい。速度取得部65は、車両モニタによらず、鉄道車両の速度Vを検出する速度センサとされてもよい。
制御部66は、前側加速度センサ60で検知した前側の横方向加速度αfと後側加速度センサ61で検知した後側の横方向加速度αrに基づいて前側台車Tfと後側台車Trの直上における車体中心G周りのヨー加速度ωを求めるヨー加速度演算部66aと、横方向加速度αfと横方向加速度αrに基づいて車体Bの車体中心Gのスエー加速度Sを求めるスエー加速度演算部66bと、ヨー加速度ωに基づいて車体Bの全体のヨーを抑制するのに必要な目標ヨー抑制力Fωrefを求める目標ヨー抑制力演算部66cと、スエー加速度Sに基づいて車体Bの全体のスエーを抑制するのに必要な目標スエー抑制力FSrefを求める目標スエー抑制力演算部66dと、目標ヨー抑制力演算部66cで得た目標ヨー抑制力Fωrefからヨー抑制力Fωを演算するヨー抑制力演算部66eと、目標スエー抑制力演算部66dで得た目標スエー抑制力FSrefからスエー抑制力FSを演算するスエー抑制力演算部66fと、地点情報取得部64から得た地点情報から走行区間が曲線区間であるか否かを判断する走行区間認識部66gと、走行区間認識部66gの認識結果と鉄道車両の速度Vに基づいて第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2をアンロード状態とするか、パッシブダンパおよびセミアクティブダンパのいずれとして機能させるかを決定し、この決定とヨー抑制力Fωおよびスエー抑制力FSから第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2の個々に与える制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2を求める指令生成部66hと、制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2に基づいて第一開閉弁9,39のソレノイド9e,39e、第二開閉弁11,41のソレノイド11e,41e、可変リリーフ弁22,52の比例ソレノイド22c,52cを駆動する駆動部66iを備えて構成されている。
なお、コントローラCは、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、前側加速度センサ60と後側加速度センサ61が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、バンドパスフィルタ62,63と、バンドパスフィルタ62,63で濾波した横方向加速度αfと横方向加速度αrを取り込んで第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2を制御するのに必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、コントローラCの制御部66における各部は、CPUが前記処理を行うためのプログラムを実行することで実現できる。また、バンドパスフィルタ62,63は、前記CPUがプログラムを実行して実現してもよい。
つづいて、横方向加速度αf,αrは、本例では、図1中車体Bの中央を左右に通る軸を基準として上向きの方向で正の符号を採り、反対に、図1中車体Bの中央を左右に通る軸を基準として下向きの方向で負の符号を採るよう設定されている。ヨー加速度演算部66aは、前側の横方向加速度αfと後側の横方向加速度αrの差を2で割ることで前側台車Tfと後側台車Trのそれぞれの直上における車体中心G周りのヨー加速度ωを求める。スエー加速度演算部66bは、横方向加速度αfと横方向加速度αrの和を2で割って車体Bの車体中心Gのスエー加速度Sを求める。前側加速度センサ60と後側加速度センサ61の設置箇所は、ヨー加速度ωを求める都合上、前側加速度センサ60にあっては車体Bの車体中心Gを含む前後方向または対角方向に沿う線上であって前側の各セミアクティブダンパD1,D2の近傍に配置されるとよい。また、後側加速度センサ61にあっても車体Bの車体中心Gと前側加速度センサ60の設置位置とを含む線上であって後側の各セミアクティブダンパD1,D2の近傍に配置されるとよい。なお、車体中心Gと前側加速度センサ60と後側加速度センサ61との距離および位置関係と横方向加速度αf,αrとからヨー加速度ωを求めることができるため、前側加速度センサ60と後側加速度センサ61の設置個所は任意に設定可能である。その場合、ヨー加速度ωは、横方向加速度αfと横方向加速度αrの差を2で割って求めるのではなく、前記横方向加速度αfと横方向速度αrの差と、車体Bの車体中心Gと各加速度センサ60,61との距離および位置関係からヨー加速度ωを得るようにすればよい。
次に、目標ヨー抑制力演算部66cは、本例では、H∞制御を行うため、ヨー加速度演算部66aが演算したヨー加速度ωから車体B全体のヨーを抑制するために必要な抑制力である目標ヨー抑制力Fωrefを求める。具体的には、目標ヨー抑制力演算部66cは、ヨー加速度ωの入力を受けると重み関数によって周波数整形し、車体B全体のヨー振動のうち特に抑制したい周波数帯のヨー振動を抑制するのに最適な目標ヨー抑制力Fωrefを求める。重み関数は、鉄道車両に適するように設計される。
また、目標スエー抑制力演算部66dは、本例では、H∞制御を行うため、スエー加速度演算部66bが演算したスエー加速度Sから車体B全体のスエーを抑制するために必要な抑制力である目標スエー抑制力FSrefを求める。具体的には、目標スエー抑制力演算部66dは、スエー加速度Sの入力を受けると重み関数によって周波数整形し、車体B全体のスエー振動のうち特に抑制したい周波数帯のスエー振動を抑制するのに最適な目標ヨー抑制力Fωrefを求める。重み関数は、鉄道車両に適するように設計される。
ヨー抑制力演算部66eは、目標ヨー抑制力演算部66cで得た目標ヨー抑制力Fωrefから、ヨーを抑制するために前側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力と、後側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力としてのヨー抑制力Fωを求める。目標ヨー抑制力Fωrefは、車体Bの全体のヨー方向の振動を抑制する抑制力であり、車体Bのヨーを前側の全セミアクティブダンパD1,D2と後側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力で抑制するため、目標ヨー抑制力Fωrefに1/2を乗じてヨー抑制力Fωを求める。
スエー抑制力演算部66fは、目標スエー抑制力演算部66dで得た目標スエー抑制力FSrefから、スエーを抑制するために前側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力と、後側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力としてのスエー抑制力FSを求める。目標ヨー抑制力FSrefは、車体Bの全体のスエー方向の振動を抑制する抑制力で、車体Bのスエーを前側の全セミアクティブダンパD1,D2と後側の全セミアクティブダンパD1,D2が出力する合力で抑制するため、目標スエー抑制力FSrefに1/2を乗じてスエー抑制力FSを求める。
走行区間認識部66gは、地点情報取得部64から得た地点情報から鉄道車両が走行中である区間が曲線区間かそれ以外の区間かを判断し、判断結果を指令生成部66hへ出力する。具体的には、たとえば、走行区間認識部66gは、走行地点に走行区間情報を関連付けたマップを有しており、鉄道車両の走行地点からマップを参照し、明り区間、曲線区間およびトンネル区間のいずれの区間であるか判断するようにすればよい。また、これに限らず、たとえば、明り区間、曲線区間とトンネル区間の境に信号を発信する発信機を設けるとともに、鉄道車両側に発信機の信号を受信する受信機を地点情報取得部として設けてもよい。この場合、走行区間認識部は、各区間の種別を発信機の信号の受信をもって認識可能となる。要するに、走行区間認識部66gは、現在走行中の区間が明り区間、曲線区間およびトンネル区間のいずれの区間であるかを認識できればよい。なお、曲線区間、トンネル区間での乗り心地を良好に保つため、コントローラCは、鉄道車両が路線を走行中に明り区間から曲線区間、明り区間からトンネル区間、曲線区間からトンネル区間へ侵入する場合、進入する前に制御の切換を行えるとよい。また、曲線区間において第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとして機能させる際の減衰力や減衰係数を曲線区間に最適となるように設定できるように、地点情報に曲線区間がどのような曲線であるか特定可能な情報を関連付けてもよい。具体的には、曲線区間のカント量、曲率、緩和曲線か定常曲線区間の判別、緩和曲線である場合の緩和曲線のパターン、スラック等といった曲線区間がどのような曲線であるかを特定できる情報を関連付けしておき、減衰力や減衰係数の設定に役立てればよい。
指令生成部66hは、走行区間認識部66gの認識結果と鉄道車両の速度Vに基づいて、各セミアクティブダンパD1,D2をアンロード状態とするか、或いは、パッシブダンパおよびセミアクティブダンパのいずれのとして機能させるかを決定する。そのうえで、指令生成部66hは、ヨー抑制力Fωおよびスエー抑制力FSに基づいて、制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2を求める。
走行区間認識部66gの認識結果が鉄道車両の走行地点が明り区間であり、速度Vが設定速度を超える場合、指令生成部66hは、第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とし、第二セミアクティブダンパD2のみ減衰力を発揮させる通常制御すると決定する。そして、指令生成部66hは、各台車Tf,Trに設けた第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とする制御指令Ff1,Fr1を生成する。また、指令生成部66hは、各台車Tf,Trに設けた第二セミアクティブダンパD2を通常制御する制御指令Ff2,Fr2を生成する。具体的には、指令生成部66hは、スエー抑制力FSとヨー抑制力Fωを加算して前側制御力Ftfを求めて前側台車Tfに設けた第二セミアクティブダンパD2を通常制御する制御指令Ff2を生成する。さらに、指令生成部66hは、スエー抑制力FSからヨー抑制力Fωを差し引いて後側制御力Ftrを求めて後側台車Trに設けた第二セミアクティブダンパD2を通常制御する制御指令Fr2を生成する。前後のセミアクティブダンパD1,D2で車体Bのヨー振動を抑制する遇力の発揮が必要のため、前側台車Tfでスエー抑制力FSにヨー抑制力Fωを加算して前側制御力Ftfを求め、後側台車Trでスエー抑制力FSからヨー抑制力Fωを減算して後側制御力Ftrを求める。
走行区間認識部66gの認識結果が鉄道車両の走行地点が曲線区間であり、速度Vが設定速度を超える場合、指令生成部66hは、第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとし、第二セミアクティブダンパD2を通常制御すると決定する。指令生成部66hは、各台車Tf,Trに設けた第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとする制御指令Ff1,Fr1を生成する。なお、可変リリーフ弁22に与える電流量について、第一セミアクティブダンパD1の減衰力が曲線区間走行に適するものとなるように制御指令Ff1,Fr1が生成される。また、指令生成部66hは、各台車Tf,Trに設けた第二セミアクティブダンパD2を通常制御するので、明り区間で述べたように、前側制御力Ftfと後側制御力Ftrを求めて制御指令Ff2,Fr2を生成する。
走行区間認識部66gの認識結果が鉄道車両の走行地点がトンネル区間であり、速度Vが設定速度を超える場合、指令生成部66hは、第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2を通常制御すると決定する。指令生成部66hは、各台車Tf,Trに設けた第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2を通常制御するべく制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2を生成する。この場合、各セミアクティブダンパD1,D2が全てセミアクティブダンパとして機能し、四つのセミアクティブダンパD1,D2の全合力でスエー抑制力FSとヨー抑制力Fωを発揮すればよい。よって、指令生成部66hは、スエー抑制力FSに1/2を乗じた値とヨー抑制力Fωに1/2を乗じた値を加算して前側制御力Ftfを求めて前側台車Tfに設けた各セミアクティブダンパD1,D2を通常制御する制御指令Ff1,Ff2を生成する。さらに、指令生成部66hは、スエー抑制力FSに1/2を乗じた値からヨー抑制力Fωに1/2を乗じた値を差し引いて後側制御力Ftrを求めて後側台車Trに設けた各セミアクティブダンパD1,D2を通常制御する制御指令Fr1,Fr2を生成する。よって、前側の各セミアクティブダンパD1,D2は、トンネル区間では、目標ヨー抑制力Fωrefに1/4を乗じて得た値と目標スエー抑制力FSrefに1/4を乗じて得た値を加算した前側制御力Ftfを出力するようになる。また、後側の各セミアクティブダンパD1,D2は、トンネル区間では、目標ヨー抑制力Fωrefに1/4を乗じて得た値から目標スエー抑制力FSrefに1/4を乗じて得た値を差し引いた後側制御力Ftrを出力するようになる。
駆動部66iは、制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2通りに各セミアクティブダンパD1,D2をアンロード状態とするか、或いは、パッシブダンパおよびセミアクティブダンパとして機能させるとともに、ダンパとして機能させる場合に指令通りに減衰力を発揮させるべく、第一開閉弁9,39のソレノイド9e,39e、第二開閉弁11,41のソレノイド11e,41eおよび可変リリーフ弁22,52の比例ソレノイド22c,52cへ与えるべき電流指令を求めて当該電流指令を出力する。
より詳細には、制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2が各セミアクティブダンパD1,D2をセミアクティブダンパとして機能させる場合、駆動部66iは、制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2から各セミアクティブダンパD1,D2の減衰力の発揮方向、減衰力の大きさに応じて、電流指令を生成して出力する。制御指令Ff1,Fr1が第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とする場合、駆動部66iは、第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22への通電を停止する電流指令を生成して出力する。制御指令Ff1,Ff2,Fr1,Fr2が各セミアクティブダンパD1,D2をパッシブダンパとする場合、駆動部66iは、第一開閉弁9,39と第二開閉弁11,41を閉弁させ、可変リリーフ弁22,52への指定される電流量となるように通電する電流指令を生成して出力する。
鉄道車両用制振装置1は、通常制御時にセミアクティブダンパとなり非通電時にアンロード状態となる第一セミアクティブダンパD1と、通常制御時にセミアクティブダンパとなり非通電時にパッシブダンパとなる第二セミアクティブダンパD2を備えている。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、大きな力が必要な場合には、第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2がともに力を発揮し、小さな力で済む場合には、第二セミアクティブダンパD2のみが力を発揮すればよい。そして、第一セミアクティブダンパD1は、非通電時にアンロード状態となるので、小さな力の発揮で済む場合、第一セミアクティブダンパD1へ電流供給が全く不要となり、第二セミアクティブダンパD2の制振効果に全く影響しない。よって、鉄道車両用制振装置1によれば、制振効果を損なわずに消費電力を低減できる。なお、第二セミアクティブダンパD2に代えて、通常制御時にアクチュエータとして機能するとともに非通電時にパッシブダンパとして機能するアクチュエータA(図5を参照)を用いるようにしてもよい。
この場合、アクチュエータAは、ダンパとは異なり伸縮両方で伸縮を助長する方向へも力を発揮できる。よって、駆動部66iは、第二セミアクティブダンパD2のように方向によらず、前側制御力Ftfおよび後側制御力Ftrが指令する推力をアクチュエータAに発揮させるよう制御指令Ff2,Fr2を求めればよい。
アクチュエータAは、具体的には、図5に示すように、第二セミアクティブダンパD2の構成に加えて、タンク37とロッド側室35とを連通する供給通路53と、供給通路53に設けられてタンク37から液体を吸込んでロッド側室35側へ向けて液体を吐出可能なポンプ54と、ポンプ54を駆動するモータ55と、供給通路53のポンプ54よりロッド側室35側に設けられてロッド側室35からポンプ54への液体の逆流を阻止する逆止弁56を設けてある。
ポンプ54は、モータ55によって駆動され一方向のみに液体を吐出するポンプとされており、その吐出口は供給通路53によってロッド側室35へ連通され、吸込口はタンク37に通じて、タンク37から液体を吸込んでロッド側室35へ液体を供給する。
ポンプ54は、一方向のみに液体を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプ54の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ54を駆動する駆動源であるモータ55にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ55も安価なものを使用できる。
このアクチュエータAにあっては、ポンプ54から所定の吐出流量をロッド側室35へ供給するようにして、伸長方向の推力を発揮させるには、第一開閉弁39を開くとともに第二開閉弁41を閉じ、可変リリーフ弁52の開弁圧を調整する。すると、アクチュエータAは、可変リリーフ弁52の開弁圧にロッド34の断面積を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
反対に、ポンプ54から所定の吐出流量をロッド側室35へ供給するようにして、アクチュエータAに収縮方向の推力を発揮させるには、第一開閉弁39を閉じるとともに第二開閉弁41を開き、可変リリーフ弁52の開弁圧を調整する。すると、アクチュエータAは、可変リリーフ弁52の開弁圧にピストン33の断面積からロッド34の断面積を引いた値を乗じた値の収縮方向の推力を発揮する。
他方、アクチュエータAは、ポンプ54を停止すれば、逆止弁56によって供給通路53が機能しなくなるため、第二セミアクティブダンパD2と同様の作動を実現する。よって、アクチュエータAは、通電時には、アクチュエータとして機能するほか、セミアクティブダンパとしても機能でき、アンロード状態となるのも可能であり、非通電時には、パッシブダンパとして機能する。
このような通常制御時にアクチュエータとなり非通電時にパッシブダンパとなるアクチュエータAを第二セミアクティブダンパD2の代わりに利用する態様も可能である。このように鉄道車両用制振装置1を構成しても、大きな力が必要な場合には、第一セミアクティブダンパD1とアクチュエータAがともに力を発揮し、小さな力で済む場合には、アクチュエータAのみが力を発揮すればよい。そして、第一セミアクティブダンパD1は、非通電時にアンロード状態となるので、小さな力の発揮で済む場合、第一セミアクティブダンパD1へ電流供給が全く不要となり、アクチュエータAの制振効果に全く影響しない。よって、鉄道車両用制振装置1によれば、制振効果を損なわずに消費電力を低減できる。
さらに、鉄道車両の明り区間の走行時に第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とし、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAを通常制御するようにしてもよい。このように鉄道車両用制振装置1を構成すると、路線の大半を占めて、車体Bの制振に必要な力が小さくて済む明り区間の走行時において、電力消費を低減できるので、電力消費低減効果が高くなる。
また、鉄道車両の曲線区間の走行時に第一セミアクティブダンパD1をパッシブダンパとして機能させ、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAを通常制御するようにしてもよい。このように鉄道車両用制振装置1を構成すると、直線区間に対して比較的車体Bの振動が大きくなる曲線区間にあっては、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAだけでなく、第一セミアクティブダンパD1がパッシブダンパとして減衰力を発揮する。そのため、曲線区間走行時における車体Bの振動を抑制するために大きな力が要求される場面でも十分な力を発揮して、効果的に車体Bの振動を抑制でき、鉄道車両における乗り心地を向上できる。
また、鉄道車両のトンネル区間の走行時に第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAを通常制御するようにしてもよい。この鉄道車両用制振装置1は、直線区間および曲線区間に対し比較的車体Bの振動が大きくなるトンネル区間では、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAの通常制御に加えて、第一セミアクティブダンパD1もセミアクティブダンパとして機能する。そのため、第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2を備えている場合、両者がトンネル区間走行時に制振効果の高いセミアクティブダンパとして機能し、鉄道車両用制振装置1は、効果的に車体Bの振動を抑制できる。また、第一セミアクティブダンパD1とアクチュエータAを備えている場合、トンネル区間走行時に第一セミアクティブダンパD1が制振効果の高いセミアクティブダンパとして機能し、アクチュエータAがアクティブサスペンションとして機能する。よって、いずれの構成によっても、鉄道車両用制振装置1は、トンネル区間走行時に高い制振効果を発揮して車両における乗り心地を向上できる。
さらに、鉄道車両の速度Vが設定速度以下である場合、第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態とし、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAをパッシブダンパとして機能させるようにしてもよい。鉄道車両が停止しているか、低速で走行中の場合には、車両Bの振動もおだやかで第二セミアクティブダンパD2をパッシブダンパとすれば第一セミアクティブダンパD1をアンロード状態としても十分な制振効果を得られる。このように鉄道車両用制振装置1を構成すれば、速度Vが設定速度以下である場合、走行区間がどのような区間であっても、第一セミアクティブダンパD1と第二セミアクティブダンパD2へ電流供給が全く不要となり、制振効果を損なわず消費電力を低減できる。
また、本例の鉄道車両用制振装置1は、鉄道車両の一つの台車Tf,Trにつき、第一セミアクティブダンパD1と、第二セミアクティブダンパD2或いはアクチュエータAとを対として設置するようにしている。このように鉄道車両用制振装置1を構成すると、車体Bの前後においてスエー方向およびヨー方向の振動を効果的に抑制できる。
さらに、本例の第一セミアクティブダンパD1は、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、タンク7と、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8の途中に設けたノーマルオープンの第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けたノーマルオープンの第二開閉弁11と、ロッド側室5をタンク7へ接続する排出通路21と、排出通路21の途中に設けられた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22と、タンク7からピストン側室5へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路19と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路18とを備えている。このように第一セミアクティブダンパD1を構成すると、非通電時にアンロード状態となり、通電時にセミアクティブダンパとして機能できるだけでなく、通電時にパッシブダンパとしても機能でき、鉄道車両用制振装置1に最適となる。
さらに、本例の第二セミアクティブダンパD2は、シリンダ32と、シリンダ32内に摺動自在に挿入されるピストン33と、シリンダ32内に挿入されてピストン33に連結されるロッド34と、シリンダ32内にピストン33で区画したロッド側室35とピストン側室36と、タンク37と、ロッド側室35とピストン側室36とを連通する第一通路38の途中に設けたノーマルクローズの第一開閉弁39と、ピストン側室36とタンク37とを連通する第二通路40の途中に設けたノーマルクローズの第二開閉弁41と、ロッド側室35をタンク37へ接続する排出通路51と、排出通路51の途中に設けられた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁52と、タンク37からピストン側室35へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路49と、ピストン側室36からロッド側室35へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路48とを備えている。このように第二セミアクティブダンパD2を構成すると、非通電時にパッシブダンパとして機能し、通電時にセミアクティブダンパとして機能でき、鉄道車両用制振装置1に最適となる。
また、本例のアクチュエータAは、シリンダ32と、シリンダ32内に摺動自在に挿入されるピストン33と、シリンダ32内に挿入されてピストン33に連結されるロッド34と、シリンダ32内にピストン33で区画したロッド側室35とピストン側室36と、タンク37と、ロッド側室35とピストン側室36とを連通する第一通路38の途中に設けたノーマルクローズの第一開閉弁39と、ピストン側室36とタンク37とを連通する第二通路40の途中に設けたノーマルクローズの第二開閉弁41と、タンク37からロッド側室35へ液体を供給するポンプ54と、ロッド側室35をタンク37へ接続する排出通路51と、排出通路51の途中に設けられた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁52と、タンク37からピストン側室35へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路49と、ピストン側室36からロッド側室35へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路48とを備えている。このようにアクチュエータAを構成すると、非通電時にパッシブダンパとして機能し、通電時にアクティブサスペンションとして機能でき、鉄道車両用制振装置1に最適となる。また、第二セミアクティブダンパD2の構成に、ポンプ54を追加するとアクチュエータAを実現できるので、第二セミアクティブダンパD2とアクチュエータAの部品の共通化が図れ、両者の互換性から鉄道車両への交換も容易となる。よって、第二セミアクティブダンパD2を搭載する鉄道車両に対してアクチュエータAへの換装も第二セミアクティブダンパD2へのポンプ54を保持するポンプユニットの追加で実施可能となる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。