JP2017030209A - 巻回体及びその製造方法、並びに、巻回体収納物及びその製造方法 - Google Patents

巻回体及びその製造方法、並びに、巻回体収納物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】座屈の抑制が可能な樹脂フィルムの巻回体の提供。
【解決手段】長尺の樹脂フィルム120の巻回体100であって、巻回体100が、巻回体100の外周部分に、高弾性積層部130を含み、高弾性積層部130の積層体断面弾性率が、高弾性積層部130よりも径方向内側にある巻回体100のフィルム積層部の積層体断面弾性率の1.05倍以上である、巻回体100。
【選択図】図4

Description

本発明は、巻回体及びその製造方法、並びに、巻回体収納物及びその製造方法に関する。
工業用の樹脂フィルムは、一般に、長尺のフィルムとして製造され、ロール状に巻き取られた巻回体の状態で保管及び運搬される。このような巻回体には、ブロッキング、巻きずれ及び巻き緩み等の現象が生じて、樹脂フィルムに欠陥が生じたり、樹脂フィルムが傷ついたりすることがある。ここで、ブロッキングとは、樹脂フィルムを含む巻回体において、重なった樹脂フィルムの面が付着する現象をいう。そこで、前記のような欠陥及び傷付きの発生を抑制するために、従来から様々な技術が開発されてきた(特許文献1及び2参照)。
特開2014−108849号公報 特開2012−66922号公報
樹脂フィルムを巻き取って製造される巻回体は、通常、その軸方向が水平となる状態で保管される。この状態の巻回体には、当該巻回体の自重により、軸方向に圧縮しようとする応力が生じる。そして、このような応力が大きくなると、巻回体に座屈を生じることがある。ここで、巻回体の座屈とは、巻回体が部分的に径方向に凹むことで形成される窪みである。このような座屈は、通常、ひし形等の多角形状に形成される。
前記のような座屈が生じると、当該座屈が生じた部分において樹脂フィルムが変形する。座屈が大きくなることによって樹脂フィルムが弾性限界を超えて大きく変形すると、その変形部分にはシワ又は折れ目が形成され、欠陥が生じることがある。このような欠陥は、歩留まりの低下の原因となりうる。しかし、特許文献1及び2に記載されたような従来の技術では、巻回体の座屈を十分に抑制することは難しかった。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、座屈の抑制が可能な巻回体及びその製造方法;並びに、巻回体の座屈の抑制が可能な巻回体収納物及びその製造方法;を提供することを目的とする。
本発明者らは前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、巻回体の外周部分に、積層体断面弾性率が高いフィルム積層部又はカバーを設けることにより、座屈の抑制が可能であることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
〔1〕 長尺の樹脂フィルムの巻回体であって、
前記巻回体が、前記巻回体の外周部分に、高弾性積層部を含み、
前記高弾性積層部の積層体断面弾性率が、前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率の1.05倍以上である、巻回体。
〔2〕 前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルム上に硬化型粘着剤の層が設けられている、〔1〕記載の巻回体。
〔3〕 前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部において、前記樹脂フィルムが、第一層及び第二層を備え、
前記巻回体の前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルムが、第一層を備え且つ第二層を備えない、〔1〕又は〔2〕記載の巻回体。
〔4〕 前記高弾性積層部における前記樹脂フィルムの厚みが、前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部における前記樹脂フィルムの厚みよりも、厚い、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の巻回体。
〔5〕 前記樹脂フィルムが、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを含み、
前記高弾性積層部が、前記第二樹脂フィルムを含み、
前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部が、前記第一樹脂フィルムを含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の巻回体。
〔6〕 前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部において、前記樹脂フィルムが、ナール部を有し、
前記巻回体の前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルムが、前記ナール部を有さない、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の巻回体。
〔7〕 長尺の樹脂フィルムの巻回体と、
前記巻回体の周面に当接するカバーとを備える、巻回体収納物。
〔8〕 前記カバーの弾性率が、前記巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率の1.05倍以上である、〔7〕記載の巻回体収納物。
本発明によれば、座屈の抑制が可能な巻回体及びその製造方法;並びに、巻回体の座屈の抑制が可能な巻回体収納物及びその製造方法;を提供できる。
図1は、巻回体の例を模式的に示す斜視図である。 図2は、フィルム積層部の一部分の例を模式的に示す斜視図である。 図3は、フィルム積層部の一部分の別の例を模式的に示す斜視図である。 図4は、第一発明の一例に係る巻回体を模式的に示す斜視図である。 図5は、第一発明の一例に係る巻回体を、その軸方向から見た様子を模式的に示す側面図である。 図6は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体を模式的に示す斜視図である。 図7は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体の内周部分の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図8は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体の高弾性積層部の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図9は、ナール部に含まれる凸部の例を模式的に示す斜視図である。 図10は、ナール部に含まれる凸部の例を模式的に示す平面図である。 図11は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図12は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図13は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体を模式的に示す斜視図である。 図14は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の内周部分の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図15は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の高弾性積層部の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図16は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図17は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図18は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図19は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図20は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体を模式的に示す斜視図である。 図21は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体の内周部分の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図22は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体の高弾性積層部の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図23は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図24は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図25は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体を模式的に示す斜視図である。 図26は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体の内周部分の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図27は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体の高弾性積層部の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図28は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体の製造方法において、第一樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体の内周部分を得る様子を模式的に示す側面図である。 図29は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体の製造方法において、第二樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体の内周部分を得る様子を模式的に示す側面図である。 図30は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体を模式的に示す斜視図である。 図31は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体の内周部分の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図32は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体の高弾性積層部の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。 図33は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図34は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体の製造方法において、樹脂フィルムを巻き芯に巻き取って巻回体を得る様子を模式的に示す側面図である。 図35は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体収納物を模式的に示す斜視図である。 図36は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体収納物を、その軸方向から見た様子を模式的に示す側面図である。 図37は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体梱包物を製造する様子を模式的に示す斜視図である。
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、長尺のフィルムとは、別に断らない限り、当該フィルムの幅に対して、通常5倍以上、好ましくは10倍以上の長さを有するフィルムであり、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、巻回体とは、長尺のフィルムを巻き取って得られるロールであり、通常は円柱形状を有する。
以下の説明において、巻回体のフィルム積層部とは、別に断らない限り、巻き重ねられたフィルムを含む部分を指し、巻き芯を含まない。
以下の説明において、別に断らない限り、「径方向」とは巻回体の径方向を表し、「軸方向」とは巻回体の軸方向を表し、「周方向」とは巻回体の周方向を表す。
以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、[{(nx+ny)/2}−nz]×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。これらのレターデーションは、測定波長550nmにおいて、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製、「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
また、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
また、製造ラインにおいて、フィルムの流れ方向は、通常は長尺のフィルムの長手方向と平行である。さらに、通常は長尺のフィルムの幅方向とは、フィルム面に平行な方向であって、前記の長手方向に垂直な方向をいう。
[1.積層体断面弾性率の説明]
図1は、巻回体の例を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、通常、巻回体10は、巻き芯11に樹脂フィルム12を巻き取ったものである。よって、この巻回体10に含まれる樹脂フィルム12は、巻き取ったことによって複数層に重ねられた状態となっている。このような巻回体10では、樹脂フィルム12同士の間には、空気層が形成されうる。また、巻き取りの際に樹脂フィルム12上に粘着層等の任意の層(図1では図示せず。)を設けた場合には、樹脂フィルム12同士の間に、任意の層がありうる。そのため、巻回体10のあるフィルム積層部13を見た場合、そのフィルム積層部13は、樹脂フィルム12に加えて空気層及び任意の層等の層を含む積層構造を有しうる。「積層体断面弾性率」とは、このような巻回体10のフィルム積層部13の物性値であって、当該フィルム積層部13に含まれる空気層以外の層の面内方向における弾性率の、各層の厚みに基づく加重平均を表す。よって、k種類の層(kは、1以上の整数を示す。)を含むフィルム積層部の積層体断面弾性率は、通常、下記式(1)で表される。
Figure 2017030209
式(1)において、Eは、フィルム積層部13に含まれる各層の弾性率を表し、mは、フィルム積層部13に含まれる各層の積層数を表し、dは、フィルム積層部13に含まれる各層の1層あたりの厚みを表し、Dは、空気層を含めたフィルム積層部13の全体の径方向長さを表す。したがって、積層体断面弾性率Eは、「[{(層の弾性率)、(層の積層数)及び(層の厚み)の積}を{フィルム積層部の径方向長さD}で割った商]の、全ての層についての合計」で表される、層の弾性率の加重平均となる。
以下、例を示して、積層体断面弾性率Eについて更に具体的に説明する。
図2は、前記のフィルム積層部の一部分の例を模式的に示す斜視図である。図2に示す例に係るフィルム積層部20は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム12と、樹脂フィルム12の間にある空気層14とを含む。フィルム積層部20は、これらの樹脂フィルム12及び空気層14を、径方向において交互に含んでいる。このようなフィルム積層部20は、樹脂フィルム12という1種類の層を含むフィルム積層部であるので、その積層体断面弾性率Eは、下記式(2)で表される。
Figure 2017030209
式(2)において、Eは、フィルム積層部20に含まれる樹脂フィルム12の弾性率を表し、mは、フィルム積層部20に含まれる樹脂フィルム12の積層数を表し、dは、フィルム積層部20に含まれる樹脂フィルム12の1層あたりの厚みを表し、Dは、空気層14を含めたフィルム積層部20の径方向長さを表す。樹脂フィルム12の弾性率E、樹脂フィルム12の積層数m、樹脂フィルム12の厚みd、及び、フィルム積層部20の径方向長さDは、いずれも実測が可能であるので、積層体断面弾性率Eは、それらの実測値から計算によって求めうる。
また、図3は、フィルム積層部の一部分の別の例を模式的に示す斜視図である。図3に示す例に係るフィルム積層部30は、樹脂フィルム12上に任意の層として粘着剤層15が設けられたこと以外は、図2に示したフィルム積層部20と同様の構造を有している。よって、このフィルム積層部30は、樹脂フィルム12、粘着剤層15及び空気層14を、この順で径方向に繰り返し複数層含む。また、このフィルム積層部30においては、樹脂フィルム12の積層数と粘着剤層15の積層数とは、同じである。このようなフィルム積層部30は、樹脂フィルム12及び粘着剤層15という2種類の層を含むフィルム積層部であるので、その積層体断面弾性率Eは、下記式(3)で表される。
Figure 2017030209
式(3)において、Eは、フィルム積層部30に含まれる樹脂フィルム12の弾性率を表し、dは、フィルム積層部30に含まれる樹脂フィルム12の1層あたりの厚みを表し、Eは、フィルム積層部30に含まれる粘着剤層15の弾性率を表し、dは、フィルム積層部30に含まれる粘着剤層15の1層あたりの厚みを表し、Dは、空気層14を含めたフィルム積層部30の径方向長さを表す。また、mは、フィルム積層部30に含まれる樹脂フィルム12の積層数を表す(図3でいえば、m=4)。このmは、フィルム積層部30に含まれる粘着剤層15の積層数に一致する。樹脂フィルム12の弾性率E、樹脂フィルム12の厚みd、粘着剤層15の弾性率E、粘着剤層の厚みd、フィルム積層部30の径方向長さD、並びに、樹脂フィルム12及び粘着剤層15の積層数mは、いずれも実測が可能であるので、積層体断面弾性率Eは、それらの実測値から計算によって求めうる。
また、前記の積層体断面弾性率Eは、フィルム積層部に含まれる樹脂フィルムが1層のみであっても、求めうる。この場合、例えば式(2)及び式(3)においては、m=1として計算することにより、フィルム積層部に含まれる樹脂フィルムが1層のみである場合のフィルム積層部の積層体断面弾性率Eを求めうる。
[2.第一発明の概要]
図4は、第一発明の一例に係る巻回体100を模式的に示す斜視図である。また、図5は、第一発明の一例に係る巻回体100を、その軸方向から見た様子を模式的に示す側面図である。
図4及び図5に示す例のように、第一発明に係る長尺の樹脂フィルムの巻回体100は、巻き芯110と、当該巻き芯110に巻き取られた樹脂フィルム120とを含む。
この巻回体100は、当該巻回体100の外周部分に、高弾性積層部130を含む。ここで、巻回体100の外周部分とは、径方向で最も外側にある巻回体100のフィルム積層部を示す。また、以下の説明において、高弾性積層部130よりも径方向内側にある巻回体100のフィルム積層部を、適宜「内周部分」140ということがある。よって、第一発明に係る巻回体100は、巻き芯110と、内周部分140と、高弾性積層部130とを、径方向の中心に近い方からこの順に有していて、これらの高弾性積層部130及び内周部分140に樹脂フィルム120を含んでいる。通常、高弾性積層部130及び内周部分140は、それぞれ、円筒形状の部分となっていて、外周部分にある高弾性積層部130は、巻回体100の周面100Sにおいて露出している。
高弾性積層部130は、巻回体100の内周部分140よりも高い積層体断面弾性率を有する。高弾性積層部130の具体的な積層体断面弾性率は、巻回体100の内周部分140の積層体断面弾性率の、通常1.05倍以上、好ましくは1.08倍以上、より好ましくは1.1倍以上である。高弾性積層部130がこのように高い積層体断面弾性率を有することは、高弾性積層部130が高い曲げ剛性を有することを示す。そのため、巻回体100における座屈の原因となりうる応力が巻回体100に生じた場合でも、高い曲げ剛性を有する高弾性積層部130が当該応力による巻回体100の変形を抑制するように働く。そのため、巻回体100における座屈を抑制できるので、座屈を原因とした樹脂フィルム120のシワ、折れ及び欠陥を抑制できる。
高弾性積層部130の積層体断面弾性率の上限には、特段の制限は無い。工業生産上で現実的な範囲を挙げると、高弾性積層部130の積層体断面弾性率は、巻回体100の内周部分140の積層体断面弾性率の、好ましくは1000倍以下、より好ましくは800倍以下、特に好ましくは500倍以下である。
ここで、前記の積層体断面弾性率に係る要件は、巻回体100が含む樹脂フィルム120の面内方向の少なくとも一の方向において満たされる。中でも、前記の積層体断面弾性率に係る要件は、巻回体100の周方向及び軸方向の少なくとも一方において満たされることが好ましく、周方向及び軸方向の両方において満たされることがより好ましい。したがって、高弾性積層部130の積層体断面弾性率は、通常、巻回体100が含む樹脂フィルム120の面内方向の少なくとも一の方向において上述した範囲に収まることで、巻回体100における座屈を抑制できる。中でも、より効果的な座屈の抑制を実現する観点では、高弾性積層部130の積層体断面弾性率は、巻回体100の周方向及び軸方向の少なくとも一方において上述した範囲に収まることが好ましく、周方向及び軸方向の両方において上述した範囲に収まることがより好ましい。
また、巻回体100が含む樹脂フィルム120の構造によっては、巻回体100のフィルム積層部の積層体断面弾性率が軸方向において一定でないことがありうる。例えば、樹脂フィルム120がフィルム幅方向の両端部にナール部を有する場合、その樹脂フィルム120を含む巻回体100の積層体断面弾性率は、巻回体100の軸方向で一定でない場合がありうる。このような場合には、巻回体100の軸方向の中心位置において測定される積層体断面弾性率が、上述した範囲に収まることが好ましい。
高弾性積層部130の径方向長さL130と、巻回体100の半径Rとの比L130/Rは、好ましくは1/5000以上、より好ましくは1/3000以上、特に好ましくは1/2000以上であり、好ましくは1/50以下、より好ましくは1/100以下、特に好ましくは1/200以下である。前記の比L130/Rが、前記範囲の下限値以上であることにより巻回体100における座屈を効果的に抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより巻回体100に含まれる内周部分140の割合を大きくできる。通常、巻回体100の内周部分140に含まれる樹脂フィルム120が最終的な製品において使用されることから、この内周部分140の割合を大きくすることにより、最終的な製品として使用可能な樹脂フィルム120の面積を増やせるので、生産性を高められる。
高弾性積層部130に含まれる樹脂フィルム120の層数は、前記の積層体断面弾性率に係る前記の要件を満たす範囲において、任意である。高弾性積層部130に含まれる樹脂フィルム120の層数は、通常は2層以上であるが、1層であってもよい。
[3.第一発明に係る第一実施形態]
長尺の樹脂フィルムの巻回体において、上述した高弾性積層部を実現するための態様に特段の制限は無く、様々な態様によって実現しうる。例えば、巻回体の高弾性積層部において樹脂フィルム上に硬化型粘着剤の層を設け、且つ、巻回体の内周部分において樹脂フィルム上に硬化型粘着剤の層を設けないことにより、内周部分よりも前述のように高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部を実現しうる。この態様では、通常、硬化型粘着剤の層によって樹脂フィルム間の空隙が充填されるので、空気層の厚みが小さくなり、その結果、高弾性積層部において積層体断面弾性率を高くできる。以下、この態様について、実施形態を示して説明する。
(3.1.巻回体の説明)
図6は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体200を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、第一発明に係る第一実施形態の長尺の樹脂フィルムの巻回体200は、巻き芯210と、当該巻き芯210に巻き取られた樹脂フィルム220とを含む。また、巻回体200は、フィルム積層部として、当該巻回体200の外周部分に設けられた高弾性積層部230と、この高弾性積層部230よりも径方向内側に設けられた内周部分240とを含む。
図7は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体200の内周部分240の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、巻回体200の内周部分240は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム220と、樹脂フィルム220の間にある空気層250とを含む。巻回体200の内周部分240は、通常、これらの樹脂フィルム220及び空気層250を、径方向において交互に含んでいる。このような内周部分240の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
図8は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体200の高弾性積層部230の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図8に示すように、巻回体200の高弾性積層部230においては、樹脂フィルム220上に硬化型粘着剤の層260が設けられている。そのため、この高弾性積層部230は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム220と、その樹脂フィルム220上に設けられた硬化型粘着剤の層260とを含む。通常、硬化型粘着剤の層260が設けられた側220Dでは、樹脂フィルム220と硬化型粘着剤の層260との間に空気層250は形成されない。他方、硬化型粘着剤の層260が設けられたのとは反対側220Uでは、樹脂フィルム220と、当該樹脂フィルム220に重ねられた別の樹脂フィルム220上の硬化型粘着剤の層260とが密着して、空気層250が形成されないこともありえるが、巻き取りの際に進入した空気によって空気層250が形成されることもありえる。よって、高弾性積層部230は、樹脂フィルム220、硬化型粘着剤の層260及び空気層250をこの順で径方向に繰り返し複数層含むか、又は、樹脂フィルム220及び硬化型粘着剤の層260を径方向において交互に含む。このような高弾性積層部230の積層体断面弾性率は、上述した式(3)によって計算しうる。
空気の弾性率は無視できる程度に小さいことから、一般に、フィルム積層部における空気層の厚みが薄いほど、そのフィルム積層部の積層体断面弾性率は高くなる傾向がある。ここで、前記のように、高弾性積層部230では、硬化型粘着剤の層260の作用により、空気層250が形成されないか、空気層250の厚みが薄い。その結果、高弾性積層部230の積層体断面弾性率は、巻回体200の内周部分240の積層体断面弾性率よりも相対的に高くなる。したがって、本実施形態に係る巻回体200においては、高弾性積層部230の積層体断面弾性率を巻回体200の内周部分240の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる。よって、この巻回体200においては、座屈を抑制することが可能である。
(3.2.樹脂フィルムの説明)
樹脂フィルム220としては、樹脂からなる基材フィルム層を備えるフィルムを用いうる。基材フィルム層に含まれる樹脂としては、任意の重合体を含む樹脂を用いうる。樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。中でも、基材フィルム層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、脂環式ポリオレフィン樹脂が特に好ましい。脂環式ポリオレフィン樹脂は、脂環式オレフィン重合体を含む樹脂であり、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れる。
脂環式オレフィン重合体は、重合体の構造単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。また、脂環式オレフィン重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数が前記の範囲に収まる場合に、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされる。
脂環式オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、樹脂フィルム220の透明性および耐熱性を良好にできる。
脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素添加物を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性及び成形性が良好である。
ノルボルネン重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
ノルボルネン重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、特性の安定性に優れる樹脂フィルム220が得られる。
基材フィルム層に含まれる樹脂が含む重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂フィルム220の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料である重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。
基材フィルム層に含まれる樹脂が含む重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.5以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、コストを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、低分子量成分を減らすことができるので、緩和時間を長くできる。そのため、高温曝露時の配向緩和を抑制できるので、樹脂フィルム220の光学特性の安定性を高めることができる。
基材フィルム層に含まれる樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%である。特に、基材フィルム層に含まれる樹脂として脂環式ポリオレフィン樹脂を用いる場合、脂環式ポリオレフィン樹脂に含まれる脂環式オレフィン重合体の割合は、好ましくは80重量%〜100重量%、より好ましくは90重量%〜100重量%である。
基材フィルム層に含まれる樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、重合体以外に任意の成分を含んでいてもよい。その任意の成分の例を挙げると、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
基材フィルム層に含まれる樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されうるものであり、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、好ましくは250℃以下である。ガラス転移温度がこのような範囲にある樹脂を用いることにより、樹脂フィルム220の高温下での変形及び応力の発生を抑制できるので、耐久性を向上させることができる。
基材フィルム層に含まれる樹脂の光弾性係数Cの絶対値は、10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。樹脂の光弾性係数を前記範囲に納めることにより、樹脂フィルム220のレターデーションのバラツキを小さくできる。
樹脂フィルム220は、1層のみ備える単層構造のフィルムであってもよく、2層を以上備える複層構造のフィルムであってもよい。樹脂フィルム220が複層構造を有する場合、樹脂フィルム220は、前記の基材フィルム層に組み合わせて、任意の層を備えうる。
樹脂フィルムが含みうる任意の層としては、例えば、傷付防止性、反射防止性、帯電防止性、防眩性、防汚性、易滑性、易接着性等の特性の付与しうる機能層が挙げられる。これらの機能層は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂及びこれらの混合物等によって形成しうる。
中でも、任意の層としては、易接着層が好ましい。易接着層を備える樹脂フィルム220は、別の部材に貼り付ける際の接着性が良好である。また、このような易接着層を備える樹脂フィルムを巻き取った巻回体は一般に欠陥を生じやすい傾向があるが、上述した実施形態に係る巻回体200においては欠陥を抑制できるので、発明の効果を有効に活用できる。
易接着層は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等によって形成でき、中でもポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂が含むポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタン;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタン;などが挙げられる。これらのポリウレタン中には酸構造(酸残基)を含有させてもよい。また、ポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
また、前記のポリウレタン樹脂は、ポリウレタンに組み合わせて、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、粒子等の任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、任意の成分としては粒子が好ましい。易接着層が粒子を含むことにより、易接着層の表面の表面粗さを調整できる。
易接着層の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が特に好ましく、また、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。前記範囲内にあると、基材フィルム層と易接着層との十分な接着強度が得られ、かつ、樹脂フィルム220の反りを抑制できる。
樹脂フィルム220は、必要に応じて、ナール部を有していてもよい。ナール部とは、複数の凸部を有する樹脂フィルム220の部分であり、通常、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の両端部に設けられる。また、ナール部は、通常、樹脂フィルム220の長手方向に延在する帯状の部分となっている。このようなナール部を有することにより、巻回体200の巻きズレ及び経時による変形を抑制することができる。また、ナール部は、ナール部以外の部分よりも樹脂フィルム220の見かけ上の厚みが厚くなるので、樹脂フィルム220の取り扱い性を改善することができる。
ナール部は、樹脂フィルム100の幅方向の縁から所定の距離以内の部分に形成されていることが好ましい。前記の所定の距離は、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
ナール部の幅は、樹脂フィルム220の幅に対して、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上であり、好ましくは1.0%以下である。ナール部の幅が、前記範囲の下限値以上であることにより、巻回体200の巻きずれを安定して抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂フィルム220の製品として使用しうる有効部分を広くできる。
図9は、ナール部に含まれる凸部40の例を模式的に示す斜視図であり、図10は、ナール部に含まれる凸部40の例を模式的に示す平面図である。ナール部に形成されている凸部の形状は、任意であり、例えば、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状、球の一部を切り欠いた形状、などが挙げられる。また、各凸部の形状は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、図9及び図10に示す例のように、凸部40は、周囲よりも突出して形成された周部41と、この周部41に囲まれて周部41よりも窪んだ央部42とを有する形状が好ましい。このように周部41及び央部42を有する凸部40によれば、周部41において応力の集中を抑制できるので、凸部40の破損及びその破損による巻回体200の外観の悪化を抑制できる。
凸部の高さHは、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、特に好ましくは16μm以下である(図9参照)。凸部の高さHが、前記範囲の下限値以上であることにより、巻回体200における巻きズレを効果的に抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、巻回体200の外観を良好なものとできる。
凸部の径Wは、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である(図9及び図10参照)。凸部の径Wが、前記範囲の下限値以上であることにより、ナール部の効果を安定して発揮させることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、凸部への局所的な応力集中を回避することができる。
ナール部における凸部の密度は、好ましくは5個/cm以上、より好ましくは10個/cm以上、特に好ましくは30個/cm以上であり、好ましくは100個/cm以下、より好ましくは80個/cm以下、特に好ましくは60個/cm以下である。凸部の密度が、前記範囲の下限値以上であることにより、巻き取り時に重なった樹脂フィルム220間に空間をつくることが容易になり、また、前記範囲の上限値以下であることにより、凸部への応力集中によるクラックを抑制することができる。
樹脂フィルム220の製造方法に制限は無い。例えば、樹脂フィルム220が基材フィルム層のみを備える単層構造のフィルムである場合、樹脂を任意のフィルム成形法で成形して基材フィルム層を得ることにより、樹脂フィルム220を製造しうる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法は、揮発性成分の量を効率よく低減させることができ、地球環境の観点、作業環境の観点、及び、製造効率の観点から好ましい。溶融押出法としては、例えばダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、生産性及び厚み精度に優れる点で、Tダイを用いる方法が好ましい。
また、樹脂フィルム220が基材フィルム層及び任意の層を備える複層構造のフィルムである場合、例えば、共押出法及び共流延法等の樹脂成型方法によって、基材フィルム層及び任意の層を同時に形成して、樹脂フィルム220を製造してもよい。中でも、共押出法が好ましい。共押出法は、溶融状態にした複数の樹脂を押し出して成形することによりフィルムを得る方法である。共押出法は、製造効率の点、並びに、製造される樹脂フィルム220に溶媒などの揮発性成分を残留させないという点で、優れている。共押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。これらの中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式がある。その中でも層の厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
また、例えば、基材フィルム層上に、塗布法によって任意の層を形成する製造方法によって、複層構造の樹脂フィルム220を製造してもよい。塗布法では、任意の層に含まれうる成分、又は、任意の層に含まれうる成分を生成しうる成分(例えば、重合体を生成しうる単量体等)を含む塗布液を用意する。そして、この塗布液を基材フィルム層に塗布して塗布液の層を形成し、必要に応じてこの層を硬化させることにより、任意の層を製造しうる。
例えば、任意の層としてポリウレタン樹脂によって易接着層を形成する場合には、この易接着層は、ポリウレタンと、溶媒と、必要に応じて任意の成分とを含む塗布液を用いて製造しうる。前記のようにポリウレタンを含む塗布液としては、溶媒として水を含む塗布液を用いることが好ましい。このように溶媒として水を含む塗布液では、通常、ポリウレタンは水中に分散している。前記のポリウレタン及び水を含む塗布液は、「水系ウレタン樹脂」と呼ばれることがある。
水系ウレタン樹脂として、市販されている水系ウレタン樹脂を使用してもよい。水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
易接着層の機械強度を向上させる目的で、塗布液は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物、水系オキサゾリン化合物等を使用しうる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。架橋剤の量は、ポリウレタン100重量部に対して、固形分で、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは70重量部以下、より好ましくは65重量部以下である。
塗布液の塗布方法は、特に限定されず、例えば、グラビアコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、スプレーコーター等のコーターを用いて塗布しうる。
基材フィルム層に塗布液を塗布することにより、基材フィルム層の表面に易接着層が形成される。この易接着層には、必要に応じて乾燥及び架橋等の硬化処理を施してもよい。乾燥方法としては、例えば、オーブンを用いた加熱乾燥が挙げられる。また、架橋方法としては、例えば、加熱処理、紫外線等の活性エネルギー線の照射処理、などの方法が挙げられる。
また、塗布法によって任意の層を形成する場合、塗布液を塗布される基材フィルム層の面には、塗布液を塗布する前に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
樹脂フィルム220は、延伸処理を施されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。延伸処理を行う時期は任意である。例えば、樹脂フィルム220が基材フィルム層に組み合わせて任意の層を備える場合、延伸処理は、基材フィルム層上に任意の層を形成する前に行ってもよく、基材フィルム層上に任意の層を形成した後で行ってもよい。
延伸方法は特に限定はされず、例えば、一軸延伸法及び二軸延伸法が挙げられる。一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長手方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法;等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、フィルムを把持するクリップの間隔を開いて長手方向の延伸を行うと同時に、クリップを案内するガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長手方向に延伸した後、その両端部をクリップで把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法;などが挙げられる。さらに、例えば、長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して平行でなく垂直でもない斜め方向に連続的に延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸温度は、例えば、基材フィルム層に含まれる樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、Tg〜Tg+20℃としうる。
延伸倍率は、長手方向の延伸では1.1倍〜3.0倍の範囲に設定してもよく、また、幅方向の延伸では1.3倍〜3.0倍の範囲に設定してもよい。
樹脂フィルム220の製造方法は、樹脂フィルム220にナール部を形成するナーリング処理工程を含んでいてもよい。ナーリング処理工程の時期は、任意である。よって、ナーリング処理工程は、例えば、塗布法によって基材フィルム層上に任意の層を形成する工程の前に行ってもよく、後に行ってもよく、また、ナーリング処理工程は、例えば、樹脂フィルム220を延伸する工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。ナール部は、樹脂フィルム220に凸部を形成することによって、形成しうる。
凸部は、例えば、エンボス加工処理によって形成してもよい。エンボス加工処理により凸部を形成する場合、例えば、ナール部の形状に対応した凹凸パターンを側面に有するロール状又はリング状の型(例えば、ローレット等)を用意し、必要に応じて樹脂フィルム220又は前記の型を加熱しながら、樹脂フィルム220を前記の型で押圧する。この際、単一の型により押圧を行うようにしてもよいが、対向する2個の型の間に樹脂フィルム220を挟みこんで押圧を行うようにしてもよい。これにより、型の凹凸パターンが樹脂フィルム220に転写され、凸部が形成される。
また、例えば、レーザー光の照射により凸部を形成してもよい。樹脂フィルム220にレーザー光を照射すると、レーザー光が照射された地点において樹脂フィルムが局所的に熱溶融又はアブレーションを生じる。このため、レーザー光が照射された地点では窪みが形成され、この窪みは凸部の央部となる。また、レーザー光の照射により熱溶融した樹脂フィルムの材料の一部又は全部が流動化することにより、レーザー光を照射した地点の周囲には突出部が形成され、この突出部は凸部の周部となる。このようにレーザー光により凸部を形成すれば、厚みの薄い樹脂フィルム220において、凸部の形成時の樹脂フィルム220の破断を抑制できる。また、樹脂フィルム220を屈曲させても、凸部で破断が生じ難い。
樹脂フィルムが任意の層として易接着層を備える場合、レーザー光の照射は、樹脂フィルム220の易接着層側の面へ行うことが好ましい。これにより、樹脂フィルム220をロール状に巻き取る際に、樹脂フィルム220同士の密着を抑制できる。
樹脂フィルム220の1mm厚換算での全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。また、樹脂フィルム220の1mm厚換算でのヘイズは、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。このように高い透明性を有する樹脂フィルム220は、光学フィルムとして好適に用いることができる。樹脂フィルム220がナール部を有する場合、樹脂フィルム220のナール部以外の部分が、前記の全光線透過率及びヘイズを有することが好ましい。
樹脂フィルム220のレターデーションの値は、樹脂フィルム220の用途に応じて設定しうる。それらの具体的な値は、例えば、面内レターデーションReで10nm〜500nm、厚さ方向のレターデーションRthで−500nm〜500nmの範囲から、用途に応じて選択されうる。樹脂フィルム220がナール部を有する場合、樹脂フィルム220のナール部以外の部分が、前記のレターデーションを有することが好ましい。
樹脂フィルム220の表面の中心面平均粗さSRaは、好ましくは3nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下である。中心面平均粗さSRaが、前記範囲の下限値以上であることにより、ブロッキングによる欠陥の発生を抑制することができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂フィルム220の透明性を高くしたり、巻きズレを抑制したりできる。ここで、中心面平均粗さSRaは、JIS B0601−1982に規定されたものである。樹脂フィルム220がナール部を有する場合、樹脂フィルム220のナール部以外の部分が、前記の中心面平均粗さSRaを有することが好ましい。
樹脂フィルム220の表面の十点平均粗さSRzは、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。十点平均粗さSRzが、前記範囲の下限値以上であることにより、ブロッキングによる欠陥の発生を抑制することができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂フィルム220の透明性を高くしたり、巻きズレを抑制したりできる。ここで、十点平均粗さSRzは、JIS B0601−1982に規定されたものである。樹脂フィルム220がナール部を有する場合、樹脂フィルム220のナール部以外の部分が、前記の十点平均粗さSRzを有することが好ましい。
樹脂フィルム220の中心面平均粗さSRa及び十点平均粗さSRzを前記の範囲に収める方法としては、例えば、樹脂フィルム220として、粒子を含む樹脂を樹脂フィルム220の材料として用いることが挙げられる。
樹脂フィルム220が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、樹脂フィルム220のレターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。ここで、揮発性成分とは、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
樹脂フィルム220の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、樹脂フィルム220のレターデーション等の特性の経時変化を小さくすることができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。樹脂の飽和吸水率は、例えば、当該樹脂が含む重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。したがって、飽和吸水率をより低くする観点から、樹脂フィルム220に含まれる樹脂が含む重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
樹脂フィルム220の厚みは、機械的強度を高くする観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。樹脂フィルム220の厚みにバラつきがある場合、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の中央部の厚みとフィルム幅方向の端部の厚みとの平均厚みが、前記範囲に収まることが好ましい。ここで、樹脂フィルム220がナール部を有する場合、樹脂フィルム220のナール部以外の部分が、前記の厚みを有することが好ましい。
樹脂フィルム220の厚みのバラつきは、樹脂フィルム220のフィルム長手方向及びフィルム幅方向にわたって、前記厚さの±3%以内に収まっていることが好ましい。ここで、樹脂フィルム220の厚みのバラつきとは、樹脂フィルム220の厚みの最大値又は最小値と樹脂フィルム220の平均厚みとの差のうち、大きい値をいう。
巻回体200の所望の硬度を達成する観点から、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の縁からの距離が30mmの位置における厚みは、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の中央部の厚みに対して、厚くすることが好ましい。この際、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の縁からの距離が30mmの位置における厚みと、樹脂フィルム220のフィルム幅方向の中央部の厚みとの差は、樹脂フィルム220の平均厚みの0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。これにより、欠陥の発生を更に効果的に抑制することができる。
樹脂フィルム220の幅に制限は無いが、巻回体200において経時的な欠陥の発生を抑制できるとの効果を顕著に発揮させる観点では、好ましくは700mm以上、より好ましくは1000mm以上、特に好ましくは1200mm以上であり、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2200mm以下、特に好ましくは2000mm以下である。
(3.3.硬化型粘着剤の説明)
硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、エステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アミド系粘着剤、エーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。また、前記の例に挙げた硬化型粘着剤は、通常はモノマーを含み、硬化時に当該モノマーが重合しうる粘着剤であるが、前記モノマーのオリゴマー、ポリマー、及び、前記モノマーから得られるゴム、などを含むポリマー粘着剤を用いてもよい。また、これらの硬化型粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、接着性に優れ、積層体断面弾性率を効果的に高められることから、アクリル系紫外線硬化型粘着剤が、特に好ましい。
硬化型粘着剤の層260の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。硬化型粘着剤の層260の厚みが、前記範囲の下限値以上であることによりフィルムの粘着性が向上し、前記範囲の上限値以下であることにより高弾性積層体の剛性を高くすることができる。つまり前記範囲の下限値以上、上限値以下とすることにより、積層体断面弾性率を制御しやすくなる。
硬化型粘着剤の層260を樹脂フィルム220上に設ける方法は、特に限定されず、例えば、グラビアコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、スプレーコーター等のコーターを用いた塗布法を用いうる。また、必要に応じて、硬化型粘着剤の層260を設けた後で、その層260に含まれる硬化型粘着剤を硬化させてもよい。
(3.4.巻回体の製造方法の説明)
前記の巻回体200は、例えば、樹脂フィルム220を用意する工程と、巻回体200の高弾性積層部230に相当する樹脂フィルム220の部分上に硬化型粘着剤の層260を設ける工程と、この樹脂フィルム220を巻き取る工程と、を含む製造方法によって、製造しうる。また、この製造方法において、前記の工程は、順番に行ってもよく、その全体又は一部を同時に行ってもよい。以下、この製造方法について説明する。
図11は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体200の製造方法において、樹脂フィルム220を巻き芯210に巻き取って巻回体200を得る様子を模式的に示す側面図である。
図11に示すように、この製造方法では、長尺の樹脂フィルム220をその長手方向に連続的に搬送し、巻き芯210に巻き取る。ここでは、タッチロール270によって巻き取り途中の巻回体280の表面280Sを押さえながら巻き取りを行う例を示す。ただし、タッチロール270の代わりに巻き取り途中の巻回体280の表面280Sを押さえないニアロール(図示せず。)を用いてもよく、タッチロール270及びニアロールを用いないで巻き取りを行ってもよい。樹脂フィルム220の巻き取りを開始すると、巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221が巻き取られ、巻回体200の内周部分240が形成される。この際、巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221上に硬化型粘着剤の層は設けられない。
巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221の長さは、樹脂フィルム220の全長の、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221は、巻回体200の内周部分240に含まれる。そのため、巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221の長さを前記のように長くすることにより、最終的な製品として使用可能な樹脂フィルム220の量を多くできる。
図12は、第一発明に係る第一実施形態の巻回体200の製造方法において、樹脂フィルム220を巻き芯210に巻き取って巻回体200を得る様子を模式的に示す側面図である。
図12に示すように、この製造方法では、巻回体200の高弾性積層部230に相当する樹脂フィルム220の部分222上に硬化型粘着剤の層260を設ける。通常は、樹脂フィルム220の部分222のフィルム幅方向の全体に、硬化型粘着剤の層260を設ける。ここでは、コーター290が樹脂フィルム220の表面220Dに硬化型粘着剤を塗布することにより、硬化型粘着剤の層260を設けた例を示す。こうして硬化型粘着剤の層260を設けられた樹脂フィルム220の部分222は、巻回体200の内周部分240に相当する樹脂フィルム220の部分221の巻き取りが終わって巻回体200の内周部分240の形成が完了した後、その内周部分240の外周に巻き取られる。このように硬化型粘着剤の層260を設けられた樹脂フィルム220の部分222が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部230が形成されて、巻回体200が得られる。
樹脂フィルム220の巻き取りの際には、樹脂フィルム220に巻取張力を与えてもよい。巻取張力の大きさは、好ましくは50N/m以上であり、好ましくは200N/m以下、より好ましくは150N/m以下、特に好ましくは100N/m以下である。巻取張力が、前記範囲の下限値以上であることにより、巻きズレを抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂フィルム220のブロッキング及び巻回体200の変形を効果的に抑制できる。
前記の巻取張力は、巻き取り開始時点の張力に対して巻き取り完了時点の張力が小さくなるように、張力を線形的に次第に小さくなるように調整してもよい。このように巻取張力を次第に小さくすることを、張力テーパーを設けるという。また、巻き取り開始時点の張力に対する、巻き取り開始時点の張力と巻き取り完了時点の張力との差の比率を、テーパー比率という。テーパー比率は、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。このように張力テーパーを設けることにより、巻回体200内における径方向の応力を低く抑えることができる。
樹脂フィルム220の巻き取りの際にタッチロール270を用いる場合、タッチロール270が巻き取り途中の巻回体280の表面280Sを押さえる接圧の大きさは、好ましくは20N/m以上、より好ましくは30N/m以上、特に好ましくは40N/m以上であり、好ましくは200N/m以下、より好ましくは150N/m以下である。接圧が、前記範囲の下限値以上であることにより、巻きズレを抑制でき、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂フィルム220のブロッキング及び巻回体200の変形を効果的に抑制できる。
樹脂フィルム220の巻取り速度は、好ましくは5m/分以上、より好ましくは10m/分以上であり、好ましくは150m/分以下、より好ましくは100m/分以下、特に好ましくは80m/分以下である。巻取り速度が、前記範囲の下限値以上であることにより、製造効率を良好にでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、空気の巻き込みを抑制して、巻回体200における座屈を効果的に抑制できる。
巻回体200の巻回数に制限は無いが、好ましくは40回以上、より好ましくは60回以上であり、好ましくは27000回以下、より好ましくは13000回以下である。
巻回体200の直径に制限はないが、好ましくは160mm以上、より好ましくは190mm以上であり、好ましくは2300mm以下、より好ましくは1200mm以下である。
前記の巻回体200の製造方法は、上述した工程に加えて、任意の工程を含んでいてもよい。例えば、前記の製造方法は、樹脂フィルム220に塗布した硬化型粘着剤を硬化させる工程を含んでいてもよい。硬化型粘着剤の硬化は、硬化型粘着剤を塗布された樹脂フィルム220を巻き取る前に行ってもよく、硬化型粘着剤を塗布された樹脂フィルム220を巻き取った後に行ってもよい。
また、例えば、前記の製造方法は、樹脂フィルム220を巻き取って巻回体200を得た後で、樹脂フィルム220の巻き取りが完了した直後から所定時間以上、巻回体200の巻取り軸を水平方向に平行に保持した状態で巻回体200を周方向に回転させる回転処理工程を行ってもよい。この際、巻回体200の回転状態を保持する時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、特に好ましくは6時間以上であり、上限は生産性の観点から好ましくは24時間以下である。また、周方向への回転速度は、好ましくは0.5rpm以上、より好ましくは1rpm以上であり、好ましくは100rpm以下、より好ましくは50rpm以下、特に好ましくは20rpm以下である。さらに、この際の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、特に好ましくは20℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、特に好ましくは30℃以下である。このように巻回体200の巻取り軸を水平方向に平行な状態として回転させることにより、巻取り直後のエアー抜け、並びに、樹脂フィルム220の物性変化を原因とする層間圧力の増加によって生じる巻回体200内の樹脂フィルム220のブロッキング、シワ及び折れの発生頻度を低減させることができる。特に、この回転処理工程によれば、配向緩和による欠陥、及び、巻回体200の軸方向中央部付近の空気層250による変形を、効果的に抑制できる。
[4.第一発明に係る第二実施形態]
複層構造を有する樹脂フィルムの中には、当該樹脂フィルムが含む一部の層を取り除くと、フィルム間の密着性が向上し、巻き取った場合にフィルム間の空気層の厚みを薄くできるタイプのフィルムがある。このような複層構造を有する樹脂フィルムを含む巻回体においては、例えば、外周部分においては当該樹脂フィルムが含む一部の層を取り除いてもよい。具体例を挙げると、平滑な表面を有する平滑層と、粗い表面を有する粗面層とを備える樹脂フィルムは、粗面層が有する粗い表面の作用によって、フィルム間の密着性が低い傾向がある。しかし、この樹脂フィルムから粗面層を取り除くと、当該樹脂フィルムの表面の平滑性が向上し、フィルム間の密着性が向上する傾向がある。そこで、前記のようなタイプの複層構造の樹脂フィルムを用いる場合には、巻回体の内周部分においては複層構造の樹脂フィルムを巻き取り、且つ、高弾性積層部においては前記の樹脂フィルムから一部の層(例えば、前記粗面層)を取り除いて得られるフィルム(例えば、前記平滑層)を巻き取ってもよい。このような態様で得られる巻回体の高弾性積層部では、フィルム間の空気層の厚みを薄くできるので、積層体断面弾性率を高くできる。そのため、この態様で得られた巻回体において、内周部分よりも前述のように高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部を実現しうる。以下、この態様について、実施形態を示して説明する。
(4.1.巻回体の説明)
図13は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300を模式的に示す斜視図である。
図13に示すように、第一発明に係る第二実施形態の長尺の樹脂フィルムの巻回体300は、巻き芯310と、当該巻き芯310に巻き取られた樹脂フィルム320とを含む。また、巻回体300は、フィルム積層部として、当該巻回体300の外周部分に設けられた高弾性積層部330と、この高弾性積層部330よりも径方向内側に設けられた内周部分340とを含む。
図14は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の内周部分340の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図14に示すように、巻回体300の内周部分340は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム320と、樹脂フィルム320の間にある空気層350とを含む。巻回体300の内周部分340は、通常、樹脂フィルム320及び空気層350を、径方向において交互に含んでいる。また、この内周部分340においては、樹脂フィルム320は、第一層321及び第二層322を備える。このように第一層321及び第二層322を備える樹脂フィルム320の部分を、以下、適宜「複層フィルム部323」ということがある。このような内周部分340の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
図15は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の高弾性積層部330の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図15に示すように、巻回体300の高弾性積層部330は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム320を含む。高弾性積層部330において、樹脂フィルム320は、第一層321を備えるが、第二層322を備えない。このように第一層321を備えるが第二層322を備えない樹脂フィルム320の部分を、以下、適宜「外周フィルム部324」ということがある。
本実施形態において、第二層322を備えない樹脂フィルム320の外周フィルム部324は、第二層322を備える当該樹脂フィルム320の複層フィルム部323と比べて、フィルム間の密着性が高い。そのため、重なった外周フィルム部324同士は、容易に密着する。したがって、巻回体300の高弾性積層部330では、樹脂フィルム320の間には空気層350が形成されないか、厚みの薄い空気層350が形成されうる。通常は、高弾性積層部330は、樹脂フィルム320及び空気層350を、径方向において交互に含んでいる。このような高弾性積層部330の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
前記のように、高弾性積層部330では、樹脂フィルム320が、複層フィルム部323よりもフィルム間の密着性が高い外周フィルム部324を有している。そのため、高弾性積層部330では、空気層350が形成されないか、空気層350の厚みが薄い。その結果、高弾性積層部330の積層体断面弾性率は、巻回体300の内周部分340の積層体断面弾性率よりも相対的に高くなる。したがって、本実施形態に係る巻回体300においては、高弾性積層部330の積層体断面弾性率を巻回体300の内周部分340の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる。よって、この巻回体300においては、座屈を抑制することが可能である。
(4.2.樹脂フィルムの説明)
樹脂フィルム320としては、第一実施形態において説明した複層構造のフィルムを用いうる。中でも、特に、第一層としての基材フィルム層321と第二層322としての易接着層とを備える複層構造のフィルムは、第二実施形態の樹脂フィルム320として好適である。
(4.3.巻回体の製造方法の説明)
前記の巻回体300は、例えば、第一層321を用意する工程と、巻回体300の内周部分340に相当する第一層321の部分上に第二層322を設けて、複層フィルム部323及び外周フィルム部324を備える樹脂フィルム320を得る工程と、樹脂フィルム320を巻き取る工程と、を含む製造方法によって、製造しうる。また、この製造方法において、前記の工程は、順番に行ってもよく、その全体又は一部を同時に行ってもよい。以下、この製造方法について説明する。
図16は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の製造方法において、樹脂フィルム320を巻き芯310に巻き取って巻回体300を得る様子を模式的に示す側面図である。
図16に示すように、この製造方法では、長尺の第一層321をその長手方向に連続的に搬送し、巻回体300の内周部分340に相当する第一層321の部分325上に第二層322を設ける。本例では、コーター360から第二層322の材料として塗布液を第一層321上に塗布して第二層322を設け、オーブン361による加熱によってこの第二層322を硬化させる例を示す。第二層322を第一層321上に設けたことにより、樹脂フィルム320の複層フィルム部323が得られる。この樹脂フィルム320の複層フィルム部323は、更に搬送され、巻き芯310に巻き取られる。巻き取りの際、必要に応じて、巻き取り途中の巻回体380の表面380Sを押さえるためのタッチロール370、又は、巻き取り途中の巻回体380の表面380Sを押さえないニアロール(図示せず。)を用いてもよい。このように樹脂フィルム320の複層フィルム部323を巻き取ることで、巻回体300の内周部分340が形成される。
樹脂フィルム320の複層フィルム部323の長さは、樹脂フィルム320の全長の、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。樹脂フィルム320の複層フィルム部323の長さを前記のように長くすることにより、最終的な製品として使用可能な樹脂フィルム320の量を多くできる。
図17は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の製造方法において、樹脂フィルム320を巻き芯310に巻き取って巻回体300を得る様子を模式的に示す側面図である。
図17に示すように、この製造方法では、巻回体300の内周部分340に相当する第一層321の部分325上での第二層322の形成が完了すると、塗布液の塗布を停止する。塗布液の塗布を停止したことにより、巻回体300の高弾性積層部330に相当する第一層321の部分326上には、第二層322は設けられない。第二層322が設けられなかった第一層321の部分326は、樹脂フィルム320の外周フィルム部324として、巻き芯310へと搬送される。外周フィルム部324は、樹脂フィルム320の複層フィルム部323の巻き取りが終わって巻回体300の内周部分340の形成が完了した後、その内周部分340の外周に巻き取られる。このように外周フィルム部324が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部330が形成されて、巻回体300が得られる。
また、前記の巻回体300は、例えば、第一層321を用意する工程と、第一層321上に第二層322を設けて複層フィルム部323を得る工程と、巻回体300の高弾性積層部330に相当する複層フィルム部323の部分において、第二層322を除去して外周フィルム部324を得ることにより、複層フィルム部323及び外周フィルム部324を備える樹脂フィルム320を得る工程と、樹脂フィルム320を巻き取る工程と、を含む製造方法によって、製造しうる。また、この製造方法において、前記の工程は、順番に行ってもよく、その全体又は一部を同時に行ってもよい。以下、この製造方法について説明する。
図18は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の製造方法において、樹脂フィルム320を巻き芯310に巻き取って巻回体300を得る様子を模式的に示す側面図である。
図18に示すように、この製造方法では、長尺の第一層321をその長手方向に連続的に搬送し、当該第一層321に第二層322を設ける。本例では、コーター360から塗布液を第一層321上に塗布して第二層322を設け、オーブン361による加熱によってこの第二層322を硬化させる例を示す。第二層322を第一層321上に設けたことにより、樹脂フィルム320の複層フィルム部323が得られる。そして、巻回体300の内周部分340に相当する部分327の複層フィルム部323が巻き芯310に巻き取られ、巻回体300の内周部分340が形成される。
図19は、第一発明に係る第二実施形態の巻回体300の製造方法において、樹脂フィルム320を巻き芯310に巻き取って巻回体300を得る様子を模式的に示す側面図である。
図19に示すように、この製造方法では、第一層321に塗布液を塗布して複層フィルム部323を得た後で、巻回体300の高弾性積層部330に相当する部分328において、複層フィルム部323から第二層322を除去する。本例では、スポンジ等で形成された拭き取り材362で硬化前の第二層322に含まれる塗布液を拭き取ることにより、第二層322を除去する例を示す。第二層322が除去される部分328では、外周フィルム部324が得られる。この外周フィルム部324は、巻き芯310へと搬送される。そして、外周フィルム部324は、樹脂フィルム320の複層フィルム部323の巻き取りが終わって巻回体300の内周部分340の形成が完了した後、その内周部分340の外周に巻き取られる。このように外周フィルム部324が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部330が形成されて、巻回体300が得られる。
前記の製造方法において、巻取張力、タッチロール370の折圧、巻取速度等の巻き取り条件は、第一実施形態で説明したのと同様に設定しうる。
前記の製造方法の例では、塗布法によって第二層322を設ける方法を例に挙げたが、第二層を設ける方法は塗布法に限定されない。例えば、第二層322としてマスキングフィルム層等のようなフィルム層を用いることにより、貼り合わせ法によって第二層322を第一層321に設け、剥離により第二層322を除去してもよい。
前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、第一実施形態で説明した回転処理工程等の任意の工程を含んでいてもよい。
[5.第一発明に係る第三実施形態]
第一発明においては、樹脂フィルムの厚みによって、その樹脂フィルムの巻回体の高弾性積層部の積層体断面弾性率を上述した要件を満たすように高くしうる。具体的には、巻回体の高弾性積層部における樹脂フィルムの厚みを、巻回体の内周部分における樹脂フィルムの厚みよりも厚くする態様を採用してもよい。このような態様の巻回体では、高弾性積層部においてフィルム間の空気層の厚みの割合を低減することができ、その結果、高弾性積層部において積層体断面弾性率を高くできる。以下、この態様について、実施形態を示して説明する。
(5.1.巻回体の説明)
図20は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体400を模式的に示す斜視図である。
図20に示すように、第一発明に係る第三実施形態の長尺の樹脂フィルムの巻回体400は、巻き芯410と、当該巻き芯410に巻き取られた樹脂フィルム420とを含む。また、巻回体400は、フィルム積層部として、当該巻回体400の外周部分に設けられた高弾性積層部430と、この高弾性積層部430よりも径方向内側に設けられた内周部分440とを含む。
図21は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体400の内周部分440の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図21に示すように、巻回体400の内周部分440は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム420と、樹脂フィルム420の間にある空気層450とを含む。巻回体400の内周部分440は、通常、樹脂フィルム420及び空気層450を、径方向において交互に含んでいる。このような内周部分440の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
図22は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体400の高弾性積層部430の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図22に示すように、巻回体400の高弾性積層部430は、通常、樹脂フィルム420及び空気層450を、径方向において交互に含んでいる。また、この高弾性積層部430における樹脂フィルム420の厚みT430は、巻回体400の内周部分440における樹脂フィルム420の厚みT440よりも、厚くなっている。このような高弾性積層部430の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
前記のように、高弾性積層部430における樹脂フィルム420の厚みT430は、巻回体400の内周部分440における樹脂フィルム420の厚みT440よりも、厚い。そのため、高弾性積層部430における空気層450と樹脂フィルム420との厚み比T450/T430は、巻回体400の内周部分440における空気層450と樹脂フィルム420との厚み比T450/T440よりも小さくなる。これにより、高弾性積層部430における空気層450の厚みの割合を、巻回体400の内周部分440における空気層450の厚みの割合よりも低減できる。その結果、高弾性積層部430の積層体断面弾性率は、巻回体400の内周部分440の積層体断面弾性率よりも相対的に高くなる。したがって、本実施形態に係る巻回体400においては、高弾性積層部430の積層体断面弾性率を巻回体400の内周部分440の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる。よって、この巻回体400においては、座屈を抑制することが可能である。
高弾性積層部430における樹脂フィルム420の厚みT430は、高弾性積層部430における樹脂フィルム420の厚みT430と巻回体400の内周部分440における樹脂フィルム420の厚みT440との差「T430−T440」が、所定範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的には、前記の差「T430−T440」が、巻回体400の内周部分440における樹脂フィルム420の厚みT440の、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上である。このように高弾性積層部430における樹脂フィルム420の厚みT430を厚くすることにより、巻回体400における座屈を効果的に抑制できる。
(5.2.樹脂フィルムの説明)
樹脂フィルム420としては、第一実施形態において説明した複層構造のフィルムを用いうる。
(5.3.巻回体の製造方法の説明)
前記の巻回体400は、例えば、巻回体400の高弾性積層部430に相当する樹脂フィルム420の部分における厚みT430が、巻回体400の内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分における厚みT440よりも厚くなるように、樹脂フィルム420を製造する工程と、樹脂フィルム420を巻き取る工程と、を含む製造方法によって製造しうる。また、この製造方法において、前記の工程は、順番に行ってもよく、その全体又は一部を同時に行ってもよい。以下、この製造方法について説明する。
図23は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体400の製造方法において、樹脂フィルム420を巻き芯410に巻き取って巻回体400を得る様子を模式的に示す側面図である。
図23に示すように、この製造方法では、長尺の樹脂フィルム420を製造する。ここでは、ダイ461及びキャストロール462を備えるフィルム製造装置460を用いた溶融押出法によって樹脂フィルム420を製造する例を示して説明する。この例では、樹脂フィルム420の材料となる樹脂をダイ461から溶融状態でキャストロール462に押し出し、押し出された樹脂をキャストロール462によって冷却して、長尺の樹脂フィルム420を連続的に得ている。
前記のダイ461からの樹脂の押し出しの際、キャストロールの引き取り速度を調整することにより、厚みT440を有する樹脂フィルム420の部分421を製造する。この部分421は、巻回体400の内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分である。この樹脂フィルム420の部分421は、その長手方向に連続的に搬送され、巻き芯410に巻き取られる。巻き取りの際、必要に応じて、巻き取り途中の巻回体480の表面480Sを押さえるためのタッチロール470、又は、巻き取り途中の巻回体480の表面480Sを押さえないニアロール(図示せず。)を用いてもよい。このようにこの樹脂フィルム420の部分421を巻き取ることで、巻回体400の内周部分440が形成される。
巻回体400の内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分421の長さは、樹脂フィルム420の全長の、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。巻回体400の内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分421の長さを前記のように長くすることにより、最終的な製品として使用可能な樹脂フィルム420の量を多くできる。
図24は、第一発明に係る第三実施形態の巻回体400の製造方法において、樹脂フィルム420を巻き芯410に巻き取って巻回体400を得る様子を模式的に示す側面図である。
図24に示すように、巻回体400の内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分421の製造後、巻回体400の高弾性積層部430に相当する樹脂フィルム420の部分422を製造する。具体的には、ダイ461からのキャストロールの引き取り速度を遅くすることにより、内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分421の厚みT440よりも、厚い厚みT430を有する樹脂フィルム420の部分422を製造する。この樹脂フィルム420の部分422は、巻き芯410へと搬送され、内周部分440に相当する樹脂フィルム420の部分421の巻き取りが終わって巻回体400の内周部分440の形成が完了した後、その内周部分440の外周に巻き取られる。このように厚い厚みT430を有する樹脂フィルム420の部分422が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部430が形成されて、巻回体400が得られる。
前記の製造方法において、巻取張力、タッチロール470の折圧、巻取速度等の巻き取り条件は、第一実施形態で説明したのと同様に設定しうる。
前記の製造方法の例では、溶融押出法によって樹脂フィルム420を製造する方法を例に挙げたが、樹脂フィルム420の製造方法は溶融押出法に限定されない。
前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、第一実施形態で説明した回転処理工程等の任意の工程を含んでいてもよい。
[6.第一発明に係る第四実施形態]
第一発明においては、巻回体が含む樹脂フィルムは、単一のフィルムでなくてもよい。例えば、巻回体が含む樹脂フィルムとして、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムという異なるフィルムを用い、巻回体の内周部分及び高弾性積層部の一方が第一樹脂フィルムを含み、他方が第二樹脂フィルムを含む態様を採用してもよい。以下、この態様について、実施形態を示して説明する。
(6.1.巻回体の説明)
図25は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体500を模式的に示す斜視図である。
図25に示すように、第一発明に係る第四実施形態の長尺の樹脂フィルムの巻回体500は、巻き芯510と、当該巻き芯510に巻き取られた樹脂フィルム520とを含む。また、巻回体500は、フィルム積層部として、当該巻回体500の外周部分に設けられた高弾性積層部530と、この高弾性積層部530よりも径方向内側に設けられた内周部分540とを含む。さらに、この巻回体500の樹脂フィルム520は、当該巻回体500の内周部分540に第一樹脂フィルム521を含み、高弾性積層部530に第二樹脂フィルム522を含む。第一樹脂フィルム521及び第二樹脂フィルム522の組み合わせは、巻回体500の高弾性積層部530の積層体断面弾性率を巻回体500の内周部分540の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる範囲で、任意に選択しうる。本実施形態では、厚みT521を有する第一樹脂フィルム521と、その第一樹脂フィルム521の厚みT521よりも厚い厚みT522を有する第二樹脂フィルム522とを組み合わせた例を示して、説明する。
図26は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体500の内周部分540の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図26に示すように、巻回体500の内周部分540は、巻き取られることによって重なった複数層の第一樹脂フィルム521と、第一樹脂フィルム521の間にある空気層550とを含む。巻回体500の内周部分540は、通常、第一樹脂フィルム521及び空気層550を、径方向において交互に含んでいる。このような内周部分540の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
図27は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体500の高弾性積層部530の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図27に示すように、巻回体500の高弾性積層部530は、通常、第二樹脂フィルム522及び空気層550を、径方向において交互に含んでいる。また、この高弾性積層部530に含まれる第二樹脂フィルム522の厚みT522は、巻回体500の内周部分540に含まれる第一樹脂フィルム521の厚みT521よりも、厚くなっている。このような高弾性積層部530の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
前記のように、高弾性積層部530に含まれる第二樹脂フィルム522の厚みT522は、巻回体500の内周部分540に含まれる第一樹脂フィルム521の厚みT521よりも、厚い。したがって、本実施形態に係る巻回体500においては、高弾性積層部530の積層体断面弾性率を巻回体500の内周部分540の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる。よって、この巻回体500においては、座屈を抑制することが可能である。
(6.2.樹脂フィルムの説明)
第一樹脂フィルム521及び第二樹脂フィルム522は、第一実施形態において説明したフィルムの範囲から、任意に選択して使用しうる。中でも、第一樹脂フィルム521及び第二樹脂フィルム522は、同じ樹脂からなる基材フィルム層を含む樹脂フィルムが好ましい。
(6.3.巻回体の製造方法の説明)
前記の巻回体500は、例えば、第一樹脂フィルム521を巻き取って巻回体500の内周部分540を得る工程と、この内周部分540の外周に第二樹脂フィルム522を巻き取って巻回体500の高弾性積層部530を得る工程と、を含む製造方法によって製造し得る。以下、この製造方法について説明する。
図28は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体500の製造方法において、第一樹脂フィルム521を巻き芯510に巻き取って巻回体500の内周部分540を得る様子を模式的に示す側面図である。また、図28には、第二樹脂フィルム522の搬送路を破線523で示すが、通常は、第一樹脂フィルム521の巻き取りの際には第二樹脂フィルム522の巻き取りは行わない。
図28に示すように、この製造方法では、長尺の第一樹脂フィルム521を長手方向に連続的に搬送して、巻き芯510に巻き取る。巻き取りの際、必要に応じて、巻き取り途中の巻回体580の表面580Sを押さえるためのタッチロール570、又は、巻き取り途中の巻回体580の表面580Sを押さえないニアロール(図示せず。)を用いてもよい。このように第一樹脂フィルム521を巻き取ることで、巻回体500の内周部分540が形成される。
第一樹脂フィルム521の長さは、樹脂フィルム420の全長(即ち、第一樹脂フィルム521及び第二樹脂フィルム522の合計長さ)の、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。第一樹脂フィルム521の長さを前記のように長くすることにより、最終的な製品として使用可能な第一樹脂フィルム521の量を多くできる。
図29は、第一発明に係る第四実施形態の巻回体500の製造方法において、第二樹脂フィルム522を巻き芯510に巻き取って巻回体500の内周部分540を得る様子を模式的に示す側面図である。また、図29には、第一樹脂フィルム521の搬送路を破線524で示すが、通常は、第二樹脂フィルム522の巻き取りの際には第一樹脂フィルム521の巻き取りは行わない。
図29に示すように、この製造方法では、第一樹脂フィルム521の巻き取りが終わって巻回体500の内周部分540の形成が完了した後、その内周部分540の外周に第二樹脂フィルム522を巻き取る。このように第二樹脂フィルム522が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部530が形成されて、巻回体500が得られる。
前記の製造方法において、巻取張力、タッチロール570の折圧、巻取速度等の巻き取り条件は、第一実施形態で説明したのと同様に設定しうる。
前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、第一実施形態で説明した回転処理工程等の任意の工程を含んでいてもよい。
[7.第一発明に係る第五実施形態]
第一発明においては、樹脂フィルム中のナール部の有無によって、その樹脂フィルムの巻回体の高弾性積層部の積層体断面弾性率を上述した要件を満たすように高くしうる。具体的には、巻回体の高弾性積層部において樹脂フィルムがナール部を有さないで、且つ、巻回体の内周部分において樹脂フィルムがナール部を有する態様を採用してもよい。このような態様の巻回体では、巻回体の内周部分におけるフィルム間の空気層の厚みよりも、高弾性積層部におけるフィルム間の空気層の厚みを薄くでき、その結果、高弾性積層部において積層体断面弾性率を高くできる。以下、この態様について、実施形態を示して説明する。
(7.1.巻回体の説明)
図30は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体600を模式的に示す斜視図である。
図30に示すように、第一発明に係る第五実施形態の長尺の樹脂フィルムの巻回体600は、巻き芯610と、当該巻き芯610に巻き取られた樹脂フィルム620とを含む。また、巻回体600は、フィルム積層部として、当該巻回体600の外周部分に設けられた高弾性積層部630と、この高弾性積層部630よりも径方向内側に設けられた内周部分640とを含む。
図31は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体600の内周部分640の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図31に示すように、巻回体600の内周部分640は、巻き取られることによって重なった複数層の樹脂フィルム620と、樹脂フィルム620の間にある空気層650とを含む。巻回体600の内周部分640は、通常、樹脂フィルム620及び空気層650を、径方向において交互に含んでいる。また、巻回体600の内周部分640において、樹脂フィルム620は、フィルム幅方向の両端部にナール部を有する。ナール部は、凸部を有するので、通常、見かけ上の厚みが厚い。そのため、巻回体600の内周部分640では、当該ナール部の無い部分(例えば、フィルム幅方向の両端部以外の部分)において、空気層650の厚みT650が厚くなっている。このような内周部分640の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
図32は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体600の高弾性積層部630の一部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
図32に示すように、巻回体600の高弾性積層部630は、通常、樹脂フィルム620及び空気層650を、径方向において交互に含んでいる。また、巻回体600の高弾性積層部630において、樹脂フィルム620は、ナール部を有さない。そのため、巻回体600の高弾性積層部630では、空気層650の厚みT650が薄くなっている。このような高弾性積層部630の積層体断面弾性率は、上述した式(2)によって計算しうる。
前記のように、高弾性積層部630における樹脂フィルム620間の空気層650の厚みT650は、巻回体600の内周部分640における樹脂フィルム620間の空気層650の厚みT650よりも、薄い。その結果、高弾性積層部630の積層体断面弾性率は、巻回体600の内周部分640の積層体断面弾性率よりも相対的に高くなる。したがって、本実施形態に係る巻回体600においては、高弾性積層部630の積層体断面弾性率を巻回体600の内周部分640の積層体断面弾性率よりも上記要件を満たすように高くできる。よって、この巻回体600においては、座屈を抑制することが可能である。
(7.2.樹脂フィルムの説明)
樹脂フィルム620としては、第一実施形態において説明した、ナール部を有する樹脂フィルムを用いる。
(7.3.巻回体の製造方法の説明)
前記の巻回体600は、例えば、樹脂フィルム620を用意する工程と、巻回体600の内周部分640に相当する樹脂フィルム620の部分にナール部を形成する工程と、樹脂フィルム620を巻き取る工程と、を含む製造方法によって、製造し得る。また、この製造方法において、前記の工程は、順番に行ってもよく、その全体又は一部を同時に行ってもよい。以下、この製造方法について説明する。以下の説明においては、樹脂フィルム620には、ナール部を形成される前と後とで同じ符号「620」を付して説明する。
図33は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体600の製造方法において、樹脂フィルム620を巻き芯610に巻き取って巻回体600を得る様子を模式的に示す側面図である。
図33に示すように、この製造方法では、長尺の樹脂フィルム620をその長手方向に連続的に搬送し、巻回体600の内周部分640に相当する部分621にナール部622を形成する。本例では、レーザー光照射装置等のナーリング処理装置660によって、樹脂フィルム620のフィルム幅方向の両端部に多数の凸部を形成することにより、ナール部622を形成した例を示す。ナール部622が形成された樹脂フィルム620の部分621は、更に搬送され、巻き芯610に巻き取られる。巻き取りの際、必要に応じて、巻き取り途中の巻回体680の表面680Sを押さえるためのタッチロール670、又は、巻き取り途中の巻回体680の表面680Sを押さえないニアロール(図示せず。)を用いてもよい。このようにナール部622が形成された樹脂フィルム620の部分621を巻き取ることで、巻回体600の内周部分640が形成される。
ナール部622を形成された樹脂フィルム620の部分621の長さは、樹脂フィルム620の全長の、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。ナール部622を形成された樹脂フィルム620の部分621の長さを前記のように長くすることにより、最終的な製品として使用可能な樹脂フィルム620の量を多くできる。
図34は、第一発明に係る第五実施形態の巻回体600の製造方法において、樹脂フィルム620を巻き芯610に巻き取って巻回体600を得る様子を模式的に示す側面図である。
図34に示すように、この製造方法では、巻回体600の内周部分640に相当する樹脂フィルム620の部分621でのナール部622の形成が完了すると、ナーリング処理装置660がナール部622の形成を停止する。ナール部622の形成を停止したことにより、巻回体600の高弾性積層部630に相当する樹脂フィルム620の部分623には、ナール部622は形成されない。ナール部622が形成されなかった樹脂フィルム620の部分623は、巻き芯610へと搬送され、ナール部622が形成された樹脂フィルム620の部分621の巻き取りが終わって巻回体600の内周部分640の形成が完了した後、その内周部分640の外周に巻き取られる。このようにナール部622が形成されなかった樹脂フィルム620の部分623が巻き取られることにより、高い積層体断面弾性率を有する高弾性積層部630が形成されて、巻回体600が得られる。
前記の製造方法において、巻取張力、タッチロール670の折圧、巻取速度等の巻き取り条件は、第一実施形態で説明したのと同様に設定しうる。
前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、第一実施形態で説明した回転処理工程等の任意の工程を含んでいてもよい。
[9.第二発明の説明]
次に、第二発明に係る巻回体収納物について、第六実施形態を示して説明する。
図35は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体収納物700を模式的に示す斜視図である。また、図36は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体収納物700を、その軸方向から見た様子を模式的に示す側面図である。
図35及び図36に示すように、巻回体収納物700は、長尺の樹脂フィルムの巻回体710と、この巻回体710の周面710Sに当接するカバー720とを備える。
巻回体710は、長尺の樹脂フィルムを巻き芯711に巻き取ったものであり、径方向の中心に近い方から、巻き芯711及び前記樹脂フィルムを含むフィルム積層部712をこの順に有している。樹脂フィルムとしては、第一実施形態において説明したフィルムの範囲から、任意に選択して使用しうる。
カバー720は、当該カバー720内に巻回体710を収納しうる円筒状の空間を有する部材であり、本実施形態では、パイプ形状を有するカバー720を例に挙げて説明する。このカバー720は、当該カバー720の内周面720Sで巻回体710の周面710Sに当接するように、巻回体710に装着されている。このようにカバー720が装着されたことで、巻回体710における座屈の原因となりうる応力が巻回体710に生じた場合でも、カバー720が当該応力による巻回体710の変形を抑制するように働く。そのため、巻回体710における座屈を抑制できるので、座屈を原因とした樹脂フィルムのシワ、折れ及び欠陥を抑制できる。
座屈を効果的に抑制する観点から、カバー720の弾性率は、巻回体710のフィルム積層部712の積層体断面弾性率よりも高いことが好ましい。カバー720の具体的な弾性率は、巻回体のフィルム積層部712の積層体断面弾性率の、好ましくは1.05倍以上、好ましくは1.08倍以上、より好ましくは1.10倍以上である。カバー720がこのように高い弾性率を有することは、カバー720が高い曲げ剛性を有することを示す。そのため、カバー720によって巻回体710における座屈を効果的に抑制できる。カバー720の弾性率の上限には、特段の制限は無い。工業生産上で現実的な範囲を挙げると、カバー720の弾性率は、巻回体710のフィルム積層部712の積層体断面弾性率の、好ましくは1000倍以下、より好ましくは800倍以下、特に好ましくは500倍以下である。
ここで、カバー720の弾性率及び巻回体710のフィルム積層部712の積層体断面弾性率に係る前記の要件は、巻回体710の周方向及び軸方向の少なくとも一方において満たされることが好ましく、周方向及び軸方向の両方において満たされることがより好ましい。したがって、カバー720の弾性率は、巻回体710の周方向及び軸方向の少なくとも一方において上述した範囲に収まることが好ましく、周方向及び軸方向の両方において上述した範囲に収まることがより好ましい。
また、巻回体710が含む樹脂フィルムの構造によっては、巻回体710のフィルム積層部712の積層体断面弾性率が軸方向において一定でないことがありうる。例えば、樹脂フィルムがフィルム幅方向の両端部にナール部を有する場合、その樹脂フィルムを含む巻回体710の積層体断面弾性率は、巻回体710の軸方向で一定でない場合がありうる。このような場合には、巻回体710の軸方向の中心位置において、カバー720の弾性率及び巻回体710のフィルム積層部712の積層体断面弾性率に係る前記の要件が満たされることが好ましい。
前記のようなカバー720は、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂によって形成しうる。
カバー720の厚みTcは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは3.0mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。カバー720の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、巻回体710における座屈を効果的に抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、巻回体収納物700を小さくできるので、省スペース化に貢献できる。
カバー720は、巻回体710の周面710Sに圧接するように装着されていることが好ましい。この圧接の圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、特に好ましくは0.5MPa以下である。前記の圧力が、前記範囲の下限値以上であることにより、巻回体710における座屈を効果的に抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、過剰な圧力による樹脂フィルムのブロッキングを抑制できる。
前記の巻回体収納物700は、例えば、樹脂フィルムを巻き取って巻回体710を得る工程と、巻回体710にカバー720を装着する工程と、を含む製造方法によって、製造しうる。
巻回体710の製造方法は、任意である。巻回体710は、例えば、第一実施形態において説明した巻き取り条件で樹脂フィルムを巻き芯711に巻き取ることにより、製造しうる。
図37は、第二発明に係る第六実施形態の巻回体梱包物700を製造する様子を模式的に示す斜視図である。
巻回体710へのカバー720の装着方法は、任意である。例えば、図37に示すように、半円筒形状の2つの部材721及び722に分割可能に形成されたカバー720を用いる場合、矢印A1及びA2で示すように、巻回体710を前記の部材721及び部材722で挟み込むことによって、カバー720を巻回体710に装着しうる。また、必要に応じて、結束バンド等の固定部材によって、巻回体710の周面710Sにカバー720を圧接させてもよい。これにより、巻回体710にカバー720を装着して、巻回体収納物700が得られる。
前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、第一実施形態で説明した回転処理工程等の任意の工程を含んでいてもよい。
[10.用途]
上述した巻回体及び巻回体収納物に含まれる樹脂フィルムは、巻回体から繰り出し、所望の形状に切り出して使用しうる。第一発明に係る巻回体においては、通常、高弾性積層部に含まれる樹脂フィルムの部分は、通常は取り除かれ、巻回体の内周部分に含まれていた樹脂フィルムが製品として使用されうる。他方、第二発明に係る巻回体収納物においては、カバーが取り外された後、巻回体に含まれる樹脂フィルム全体が製品として使用されうる。
上述した樹脂フィルムとしては、広範な用途のフィルムを用いうる。その例としては、液晶表示装置用の光学フィルムなどが挙げられる。特に好ましい例としては、位相差フィルム、偏光板の保護フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、反射フィルム等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。第二実施形態を実施例3で、第四実施形態を実施例1で、第五実施形態を実施例2で、第六実施形態を実施例4で説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」、「ppm」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
[評価方法]
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルム幅方向の中央部、及び、フィルム幅方向の縁から30mmの位置で、フィルムの厚みを、スナップゲージを用いて、流れ方向にそれぞれ10点測定した。フィルム幅方向の中央部における測定値の平均値を、当該フィルムのフィルム幅方向の中央部の厚みとした。また、フィルム幅方向の縁から30mmの位置における測定値の平均値を、当該フィルムのフィルム幅方向の端部の厚みとした。さらに、こうして測定されたフィルム幅方向の中央部の厚みとフィルム幅方向の端部の厚みとの平均値を計算し、この平均値を当該フィルムの厚みとした。
(ナール部の凸部の形状の評価方法)
フィルムのナール部に形成された凸部のうち、任意に抽出した100個の凸部の径W及び高さHを、干渉型表面形状測定装置(ZYGO社製「NewView7200」)を用いて測定し、大きさと高さの平均値を算出した。
(フィルムのレターデーションの測定方法)
ミュラーマトリクス・ポラリメータ(AXOMETRIX社製「AXOSCAN」)を用い、フィルムの面内の任意の10箇所で、面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定した。この際、厚み方向のレターデーションRthは、フィルムの主面の法線方向から40°傾けた方向での測定値を元に算出した。得られた測定値の平均値を計算し、この平均値を当該フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthとした。
(フィルムの表面粗さの測定方法)
フィルム幅方向の中央部、フィルム幅方向の片方の縁から100mmの位置、並びに、フィルム幅方向のもう片方の縁から100mmの位置の合計3点において、中心面平均粗さSRa及び十点平均粗さSRzの値を測定した。この測定は、表面粗さ測定装置(小坂研究所製「SE3500K」)を用い、カットオフ0.25mm、測定範囲1mm×1mmの条件で行った。得られた測定値の平均値を計算し、この平均値を当該フィルムの中心面平均粗さSRa及び十点平均粗さSRzとした。
(フィルム積層部の積層体断面弾性率の測定方法)
フィルム積層部の積層体断面弾性率は、上述した方法で計算により算出した。また、積層体断面弾性率の計算に用いるパラメータは、下記の方法で測定した。
フィルムの弾性率Eは、インストロン社製「Instron5564」によって測定した。前記の弾性率は、温度25℃、湿度55%の条件で測定した。
フィルム積層部の径方向長さDは、ノギスを用いて測定した。
フィルム積層部に含まれるフィルムの積層数nは、ノギスを用いて測定したフィルム積層部の軸方向端面に塗料を塗り、巻回体からフィルムを引き出して、その積層数を数えた。
フィルムの厚みは、前記のように引き出したフィルムの厚みを実測して求めた。
(カバーの弾性率の測定方法)
カバーの弾性率は、インストロン社製「Instron5564」によって測定した。前記の弾性率は、温度25℃、湿度55%の条件で測定した。
(巻回体に含まれるフィルムの欠陥の評価方法)
巻回体(実施例1〜3及び比較例1)を1か月間保管した。また、巻回体収納物(実施例4)を1か月間保管し、カバーを外して巻回体を取り出した。この際の保管条件は、温度25℃、湿度55%RHであった。
その後、巻回体からフィルムを引き出し、巻き芯からフィルム長手方向に1000mの位置で、10mの面積でフィルムからサンプルを切り取った。2枚の直線偏光板を用意し、これらの直線偏光板で前記のサンプルを挟んだ。これにより、直線偏光板、サンプル及び直線偏光板をこの順に備える積層体を得た。この際、2枚の直線偏光板はクロスニコルとして、厚み方向から見て偏光透過軸が互いに垂直になるようにした。この状態で厚み方向から積層体を観察して、光抜けが生じた部分を欠陥として、その数を数えた。
(巻回体に含まれるフィルムの折れ及びシワの評価方法)
巻回体(実施例1〜3及び比較例1)を1か月間保管した。また、巻回体収納物(実施例4)を1か月間保管し、カバーを外して巻回体を取り出した。この際の保管条件は、温度25℃、湿度55%RHであった。
その後、巻回体からフィルムを引き出し、巻き芯からフィルム長手方向に1000mの位置で、10mの面積でフィルムからサンプルを切り取った。このサンプルを目視で観察して、下記の基準で評価した。
○:折れ及びシワが、無い。
△:小さい折れ、又は、小さいシワが、ある。
×:大きい折れ、又は、大きいシワが、ある。
(巻回体の座屈の評価方法)
巻回体(実施例1〜3及び比較例1)を1か月間保管した。また、巻回体収納物(実施例4)を1か月間保管し、カバーを外して巻回体を取り出した。この際の保管条件は、温度25℃、湿度55%RHであった。
その後、巻回体を目視で観察して、下記の基準で評価した。
○:座屈が、無い。
△:小さい座屈が、ある。
×:大きい座屈が、ある。
[製造例1:コート液Aの製造]
温度計、攪拌機、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に、ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製「マキシモールFSK−2000」;水酸基価56mgKOH/g)840部、トリレンジイソシアネート119部、及びメチルエチルケトン200部を入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸35.6部を加え、75℃で反応させて、酸構造を含有するポリウレタンの溶液を得た。前記のポリウレタンのイソシアネート基(−NCO基)の含有量は、0.5%であった。
次いで、このポリウレタンの溶液を40℃にまで冷却し、水1,500部、イソフタル酸ジヒドラジド(沸点224℃以上)120部(ポリウレタン100部に対し7部)を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去し、中和されたポリウレタンの水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は40%であった。
さらに、この水分散体を、含まれるポリウレタンが100部となる量だけ取り分けた。取り分けた前記の水分散体に、エポキシ化合物であるグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「デナコールEX−313」;エポキシ当量141g/eq)15部と、平均粒子径80nmのシリカ微粒子(日産化学工業社製「スノーテックスZL」)10部と、非イオン系界面活性剤として4,7−ジヒドロキシ−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンのエチレンオキサイド付加物(日信化学工業社製「サーフィノール465」)と、水とを配合して、未硬化状態の水系ウレタン樹脂として固形分濃度5%のコート液Aとして得た。ここで、非イオン系界面活性剤の添加量は、得られる水系ウレタン樹脂に対し100ppmとなる量とした。
[実施例1]
(1−1.押出し工程)
第一樹脂フィルムに相当する位相差フィルムの原料として、ノルボルネン系重合体を含む熱可塑性樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」、ガラス転移温度136℃)のペレットを用意し、100℃で5時間乾燥した。このペレットを、押出し機及びTダイを用いた溶融押出法によってフィルム状に成形して、厚み47μmの熱可塑性樹脂フィルムからなる延伸前フィルムを得た。この際、後述するナーリング処理工程の前の位相差フィルムの膜厚プロファイルにおいて、フィルム幅方向の両方の端部の厚みがフィルム幅方向の中央部の厚みよりも2μm厚くなるように、Tダイのリップ温度及び間隙を調整しておいた。
(1−2.縦延伸工程)
製造された延伸前フィルムを、そのまま流れ方向に連続して搬送し、調整ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機に供給した。この縦延伸機において、140℃の温度で延伸前フィルムをフィルム長手方向に1.2倍に延伸して、縦延伸フィルムを得た。
(1−3.コート液Aの塗布工程)
製造された縦延伸フィルムを、さらに流れ方向へ連続して搬送して、2本のロールを備えたリバースコーターに供給した。このリバースコーターにおいて、縦延伸フィルムの片面に、易接着層としてコート層を形成するために、コート液Aを塗布した。この際、コート液Aの塗布量は、コート液を乾燥させた後で得られるコート層の厚みが、横延伸工程の後において90nmとなるように調整した。また、コート液Aの塗布量の調整は、リバースコーターのロール回転数を調整することによって行った。
(1−4.横延伸工程)
その後、コート液Aを塗布した縦延伸フィルムを、さらに流れ方向に連続して搬送して、テンター法を用いた横延伸機に供給した。この横延伸機において、延伸が開始される前に縦延伸フィルムを加熱して、縦延伸フィルムに塗布されたコート液Aを乾燥させた。これにより、縦延伸フィルムの表面に、コート層が形成された。その後、この横延伸機において、150℃の温度で縦延伸フィルムをフィルム幅方向に1.4倍に延伸して、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム層及びコート層を備えており、その厚みは47μm、その面内レターデーションReは50nm、その厚み方向のレターデーションRthは130nmであった。
(1−5.ナーリング処理工程)
横延伸工程によって得られた位相差フィルムの、フィルム幅方向の両方の縁から10mm以内の領域に、レーザーマーカーを用いてレーザー光を照射することにより、複数の凸部を形成して、ナール部を設けた。形成された凸部は、図9及び図10に示すような円形を有しており、その径Wは150μm、高さHは8μmであった。また、ナール部は、フィルム長手方向の全長に渡って設けられていて、ナール部における凸部の密度は50個/cmであった。
(1−6.フィルムの巻き取り工程)
ナール部が設けられた位相差フィルムを、ライン速度25m/分、巻き取り開始時の張力100N/m、巻き取り終了時の張力は95N/mとなるようにテーパー比率5%の条件で、半径84.2mmの円柱状の巻き芯にロール状に巻き取って、巻回体を得た。巻き取られた位相差フィルムは、幅1330mm、長さ3900mであった。
(1−7.第二樹脂フィルムの巻き重ね工程)
位相差フィルムを巻き取って得られた巻回体の外周に、直ちに、別途用意した厚さ67μmの第二樹脂フィルム(ノルボルネン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなるフィルム。日本ゼオン社製「ZeonorFilm」)を、長さ100mだけ、ライン速度25m/分、巻取り張力150N/mの条件で巻き取った。第二樹脂フィルムを巻き取ったこの巻回体において、位相差フィルムを巻き取ったフィルム積層部が当該巻回体の内周部分となり、その外周で第二樹脂フィルムを巻き取ったフィルム積層部が高弾性積層部となっていた。
(1−8.回転処理工程)
その後、製造された巻回体の軸方向を水平に保った状態で、1時間の間、回転速度3rpmで巻回体を周方向に回転させることにより、巻回体のフィルム積層部(高弾性積層部及び内周部分)の内部の空気層が均一になるように処理した。こうして得られた巻回体の半径は274mmであった。また、この巻回体の高弾性積層部の径方向長さは、巻回体の最表面(周面)から4.1mmであった。
こうして得られた巻回体の、高弾性積層部の積層体断面弾性率、及び、内周部分の積層体断面弾性率を測定した。そして、測定された値から、「(巻回体の高弾性積層部の積層体断面弾性率)/(巻回体の内周部分の積層体断面弾性率)」で表される弾性率比を計算した。
また、製造された巻回体について、当該巻回体に含まれる位相差フィルムの欠陥、巻回体に含まれる位相差フィルムの折れ及びシワ、並びに、巻回体の座屈を評価した。
[実施例2]
前記工程(1−5.ナーリング処理工程)において、位相差フィルムの巻き終わり前の長さ100m分の部分(即ち、位相差フィルムの長手方向の、巻き終わり側の末端から100m分の部分)に、ナール部を設けなかった。
また、前記工程(1−7.第二樹脂フィルムの巻き重ね工程)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、巻回体を製造した。この巻回体においては、ナール部を形成した位相差フィルムの部分を巻き取った巻回体のフィルム積層部が内周部分となり、ナール部を形成しなかった位相差フィルムの部分を巻き取った巻回体のフィルム積層部が高弾性積層部となっていた。また、得られた巻回体の半径は272mmであり、巻回体の高弾性積層部の径方向長さは、巻回体の最表面から2.9mmであった。
この巻回体について、実施例1と同様に、評価を行った。
[実施例3]
前記工程(1−3.コート液Aの塗布工程)において、位相差フィルムの巻き終わり前の長さ100m分の部分に、コート液Aを塗布しなかった。
また、前記工程(1−7.第二樹脂フィルムの巻き重ね工程)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、巻回体を製造した。この巻回体においては、コート液Aの塗布により形成されたコート層を備える位相差フィルムの部分を巻き取った巻回体のフィルム積層部が内周部分となり、コート層を備えない位相差フィルムの部分を巻き取った巻回体のフィルム積層部が高弾性積層部となっていた。また、得られた巻回体の半径は271mmであり、巻回体の高弾性積層部の径方向長さは、巻回体の最表面から2.8mmであった。
この巻回体について、実施例1と同様に、評価を行った。
[実施例4]
前記工程(1−7.第二樹脂フィルムの巻き重ね工程)を行わなかった。
また、前記(1−6.フィルムの巻き取り工程)で位相差フィルムを得た後、前記(1−8.回転処理工程)を行う前に、巻回体に、カバーを装着した。このカバーは、厚み2mmのポリスチレン製の円筒形状のカバーであった。また、このカバーは、前記円筒形状の軸を含む平面で図37に示すように2つに分割可能であり、分割されたカバーで巻回体を挟み込むようにして、巻回体に装着しうるように設けられていた。さらに、巻回体にカバーを装着する際、巻回体の外周にカバーが圧接するように、結束バンドでカバーの軸方向の端部を固定した。結束バンドとしては、0.001MPa以上の圧力で、全周にわたってカバーを締めうる、幅2cmのバンドを使用した。このように巻回体にカバーを装着したことにより、円筒形状のカバー内に巻回体が収納された。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムの巻回体と、この巻回体の外周に圧接するカバーとを備えた巻回体収納物を得た。
こうして得られた巻回体収納物の、カバーの弾性率、及び、巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率を測定した。そして、測定された値から、それらの弾性率比(カバーの弾性率/巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率)を計算した。
また、巻回体収納物に含まれる巻回体について、当該巻回体に含まれる位相差フィルムの欠陥、巻回体に含まれる位相差フィルムの折れ及びシワ、並びに、巻回体の座屈を評価した。
[比較例1]
前記工程(1−7.第二樹脂フィルムの巻き重ね工程)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、巻回体を製造した。得られた巻回体の半径は270mmであった。
この巻回体について、実施例1と同様に、評価を行った。この際、比較例1の巻回体においては、高弾性積層部は形成されていなかったので、弾性率比の計算は、径方向長さが巻回体の最表面から10mmの外周部の積層体断面弾性率を、高弾性積層部の積層体断面弾性率の代わりに用いて行った。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
Figure 2017030209
[検討]
前記の表から分かるように、実施例1〜4においては、座屈の発生が無く、位相差フィルムに折れ及びシワが発生しなかったので、位相差フィルムにおける欠陥の発生を抑制できた。このことから、本発明により、巻回体における座屈の抑制が可能であることが確認された。
本発明者の検討によれば、本発明の前記の効果は、以下の仕組みによって得られていると考えられる。ただし、本発明は、以下に示す仕組みによって制限されるものでは無い。
巻回体において、巻き取られたフィルム間の空気層から経時的に空気が抜けると、通常、巻回体内に見かけ上の負圧が生じる。この状態では、自重によって巻回体を変形させようとする力が当該巻回体に加わると、巻回体に圧縮応力が生じ、この圧縮応力によって座屈が生じる。これに対し、本発明では、高弾性積層部又はカバーによって巻回体の表面近傍において曲げ剛性を高めると、自重による巻回体を変形させようとする力への耐性が向上し、さらに、巻回体の軸方向において応力を分散させられる。その結果、本発明の巻回体及び巻回体収納物では、座屈を抑制することが可能になっている。
10、100、200、300、400、500、600、710 巻回体
11、110、210、310、410、510、610、711 巻き芯
12、120、220、320、420、520、620 樹脂フィルム
13、20、30、712 フィルム積層部
14、250、350、450、550、650 空気層
15 粘着剤層
40 凸部
41 周部
42 央部
130、230、330、430、530、630 高弾性積層部
140、240、340、440、540、640 巻回体の内周部分
221 巻回体の内周部分に相当する樹脂フィルムの部分
222 巻回体の高弾性積層部に相当する樹脂フィルムの部分
260 硬化型粘着剤の層
270、370、470、570、670 タッチロール
280、380、480、580、680 巻き取り途中の巻回体
290、360 コーター
321 第一層
322 第二層
323 複層フィルム部
324 外周フィルム部
325 巻回体の内周部分に相当する第一層の部分
326 巻回体の高弾性積層部に相当する第一層の部分
327 巻回体の内周部分に相当する複層フィルム部の部分
328 巻回体の高弾性積層部に相当する複層フィルム部の部分
361 オーブン
362 拭き取り材
421 巻回体の内周部分に相当する樹脂フィルムの部分
422 巻回体の高弾性積層部に相当する樹脂フィルムの部分
460 フィルム製造装置
461 ダイ
462 キャストロール
521 第一樹脂フィルム
522 第二樹脂フィルム
523 第二樹脂フィルムの搬送路
524 第一樹脂フィルムの搬送路
621 巻回体の内周部分に相当する樹脂フィルムの部分
622 ナール部
623 巻回体の高弾性積層部に相当する樹脂フィルムの部分
660 ナーリング処理装置
700 巻回体収納物
720 カバー
721、722 ハープパイプ形状の部材

Claims (8)

  1. 長尺の樹脂フィルムの巻回体であって、
    前記巻回体が、前記巻回体の外周部分に、高弾性積層部を含み、
    前記高弾性積層部の積層体断面弾性率が、前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率の1.05倍以上である、巻回体。
  2. 前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルム上に硬化型粘着剤の層が設けられている、請求項1記載の巻回体。
  3. 前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部において、前記樹脂フィルムが、第一層及び第二層を備え、
    前記巻回体の前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルムが、第一層を備え且つ第二層を備えない、請求項1又は2記載の巻回体。
  4. 前記高弾性積層部における前記樹脂フィルムの厚みが、前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部における前記樹脂フィルムの厚みよりも、厚い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の巻回体。
  5. 前記樹脂フィルムが、第一樹脂フィルム及び第二樹脂フィルムを含み、
    前記高弾性積層部が、前記第二樹脂フィルムを含み、
    前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部が、前記第一樹脂フィルムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の巻回体。
  6. 前記高弾性積層部よりも径方向内側にある前記巻回体のフィルム積層部において、前記樹脂フィルムが、ナール部を有し、
    前記巻回体の前記高弾性積層部において、前記樹脂フィルムが、前記ナール部を有さない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の巻回体。
  7. 長尺の樹脂フィルムの巻回体と、
    前記巻回体の周面に当接するカバーとを備える、巻回体収納物。
  8. 前記カバーの弾性率が、前記巻回体のフィルム積層部の積層体断面弾性率の1.05倍以上である、請求項7記載の巻回体収納物。
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