JP2017028123A - 拡散層を有する半導体基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子 - Google Patents

拡散層を有する半導体基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子 Download PDF

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Mitsunori Iwamuro
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明博 織田
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Abstract

【課題】複雑な工程を必要とせず簡便な方法で、ドナー拡散領域におけるシート抵抗値のバラつきを抑えることが可能な、拡散層を有する半導体基板の製造方法の提供。
【解決手段】拡散層を有する半導体基板の製造方法は、半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むドナーガラス粒子及び分散媒を含有するn型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記半導体基板上の前記ドナーガラス粒子を軟化する軟化工程と、前記半導体基板にn型拡散層を形成する熱処理工程と、をこの順に行い、前記軟化工程を、700℃未満の雰囲気で行なう。
【選択図】図1

Description

本発明は、拡散層を有する半導体基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子に関する。
従来の太陽電池素子においては、シリコン基板の受光面に、シリコン基板の導電型とは反対の導電型の不純物を拡散することにより、pn接合を形成している。そして、この受光面、及び受光面とは反対側の裏面に、それぞれ電極を形成している。
上記の太陽電池素子においては、受光面に電極が形成されているため、電極により太陽光の入射が妨げられ、発電効率が低下するという問題がある。そこで、受光面に電極を形成せずに裏面のみに電極を形成するバックコンタクト型(裏面電極型)太陽電池が提案されている。このようなバックコンタクト型太陽電池の製造方法に関する先行文献として、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、シリコン基板の裏面に酸化珪素、窒化ケイ素等の誘電体層を形成した後、誘導体層の一部を開口し、その開口部にドーパント源化合物を塗布して、ドーパントをシリコン基板にドープし、そして拡散している。
また、特許文献2は、BBrガスを用いてn型シリコン基板の受光面及び裏面の全面にp型拡散層を形成した後、裏面にレジストをパターン塗布し、裏面のレジスト塗布部以外の領域のp型拡散層及び受光面のp型拡散層をエッチングし、p型拡散層をエッチングした領域にn型拡散層を形成する方法を開示している。
また、上記のような片面受光型太陽電池に加えて、両面から受光できる両面受光型太陽電池が知られている。両面受光型太陽電池としては、壁等に設置して両面から受光できるタイプのものだけでなく、屋根等の構造体に設置するよう、バックシートに反射機能を持たせ、モジュール内の素子間の隙間から太陽電池の裏面側に到達した光を反射させて裏面側からも光を取り込むタイプのものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。両面受光型とすることにより、太陽電池の発電効率が向上するとされている。
両面受光型太陽電池に用いるシリコン基板の拡散層の形成方法では、まず、BBrガス等を用いて、テクスチャ構造を形成したシリコン基板の両面に一括してp型拡散層を形成し、その後、一方の面をエッチングして、生成したボロンシリケートガラス層とp型拡散層とを除去する。次いで、p型拡散層を残した他方の面にマスク層を形成した後、エッチングを行なった一方の面にPOClガス等を用いてn型拡散層を形成する。このように別々の工程でp型拡散層及びn型拡散層を形成する方法が一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
一方で、拡散層形成のために、ドナー元素としてリンを含有するガラス粒子が含有されるペースト状のn型拡散層形成組成物をシリコン基板の表面に塗布し、熱拡散して拡散層を形成する技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。この場合、ガラス粒子は拡散処理時の高温で軟化及び溶融し、シリコン基板上に均一に濡れ広がることになる。これにより、上述したPOClガス拡散において形成されるPSG層のような溶融ガラス層がシリコン基板上に形成され、その溶融ガラス層からリンがシリコン基板に拡散し、n型拡散層を形成する。
米国特許第4927770号明細書 米国特許第7883343号明細書 特開2012−195489号公報 特許第5176159号公報
Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 42 (2003), pp. 5397-5404
特許文献4に記載の方法では、ドナー拡散領域においてシート抵抗値のバラつきが発生する場合がある。これにより、太陽電池特性を劣化させるおそれがある。
本発明は、従来の上記問題点に鑑みなされたものであり、複雑な工程を必要とせず簡便な方法で、ドナー拡散領域におけるシート抵抗値のバラつきを抑えることが可能な、拡散層を有する半導体基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子を提供する。
特許文献4に記載の方法では、ドナー元素としてリンを含有するガラス粒子の軟化温度が高いと、拡散処理時においてリン拡散が始まる温度領域においても、一部のガラス粒子が溶融せずに粒子の状態で残ることがある。その場合、シリコン基板上に、溶融したガラスで覆われた領域と、溶融したガラスで覆われていない領域とが共存することになる。そうなれば、溶融したガラスで覆われた領域から先にリン拡散が開始され、溶融したガラスで覆われていない領域へのリン拡散の開始が遅れることになる。結果として、シリコン基板へのリン拡散量にムラが発生することが考えられる。
そこで、本発明は以下の態様を含む。
<1> 半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むドナーガラス粒子及び分散媒を含有するn型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記半導体基板上の前記ドナーガラス粒子を軟化する軟化工程と、
前記半導体基板にn型拡散層を形成する熱処理工程と、をこの順に行い、
前記軟化工程を、700℃未満の雰囲気で行う、拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<2> 前記半導体基板上の少なくとも一部に、アクセプター元素を含むアクセプターガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記半導体基板にp型拡散層を形成する熱処理工程と、
を更に含む、前記<1>に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<3> 前記n型拡散層を形成する熱処理工程と前記p型拡散層を形成する熱処理工程とを一括して行う、前記<2>に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<4> 前記ドナーガラス粒子の軟化温度は、500℃未満である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<5> 前記ドナーガラス粒子が、Te、Sn、Zn、V及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を更に含有する、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<6> 前記ドナーガラス粒子が、Teを更に含有する、前記<5>に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<7> 前記ドナーガラス粒子の成分を酸化物換算したときに、TeO、SnO、ZnO、V及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の割合が、前記ドナーガラス粒子全体の3モル%以上である、前記<5>又は<6>に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<8> 前記ドナーガラス粒子が、Ca及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を更に含有する、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<9> 前記ドナーガラス粒子が、Siを更に含有する、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<10> 前記n型拡散層形成組成物が、シランカップリング剤を更に含有する、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<11> 前記シランカップリング剤が、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを含む、前記<10>に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<12> 前記ドナーガラス粒子の体積平均粒子径が、10μm以下である、前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<13> 前記n型拡散層形成組成物中のドナーガラス粒子の含有率が、1質量%〜30質量%である、前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<14> 前記分散媒が、テルピネオール及びブチルカルビトールアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<15> 前記分散媒が、エチルセルロースを含む、前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
<16> 前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の製造方法により、拡散層を有する半導体基板を製造する工程と、
前記拡散層上に電極を形成する工程と、
を有する太陽電池素子の製造方法。
<17> 前記<16>に記載の製造方法によって得られる太陽電池素子。
本発明によれば、複雑な工程を必要とせず簡便な方法で、ドナー拡散領域におけるシート抵抗値のバラつきを抑えることが可能な、拡散層を有する半導体基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子が提供される。
バックコンタクト型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。 両面受光型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。また、本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
また、本明細書において、「含有率」とは、特に記載がなければ、n型拡散層形成組成物又はp型拡散層形成組成物の全量を100質量%としたときの、各成分の質量%を表す。
また、本明細書において「層」との語には当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
<拡散層を有する半導体基板の製造方法>
拡散層を有する半導体基板の製造方法は、半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むドナーガラス粒子及び分散媒を含有するn型拡散層形成組成物を付与する工程と、半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化する軟化工程と、半導体基板にn型拡散層を形成する熱処理工程と、をこの順に行い、軟化工程を700℃未満の雰囲気で行なう。この方法によれば、複雑な工程を必要とせず簡便な方法で、ドナー拡散領域におけるシート抵抗値のバラつきを抑えることが可能となる。その理由は明らかではないが、以下のように推測される。
n型拡散層を形成する熱処理工程の前に、700℃未満の雰囲気で半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化させて、n型拡散層形成組成物を付与した領域を溶融したガラス層で覆う。これにより、n型拡散層形成組成物を付与した領域において、ガラスと半導体基板との接触面積が大きくなり、ガラス内部から半導体基板へのドナー元素のドープ及び拡散が均一に行われやすくなる。その結果、半導体基板のn型拡散層形成組成物を付与した領域のシート抵抗値のバラつきが抑えられると考えられる。
尚、軟化工程の雰囲気の温度が700℃未満であれば、ドナー元素が半導体基板にドープし始めていたとしても、そのドープ量はシート抵抗値のばらつきに深刻な影響を与える程度のものではないと考えられる。
また、上記方法では、半導体基板にドナー元素とアクセプター元素とを一括してドーピングさせ且つ拡散させて、n型拡散層とp型拡散層とを一括して形成することが可能である。この方法では、n型拡散層形成組成物を形成する領域はドナーガラス粒子の軟化によりガラス層で覆われているため、アクセプター元素が飛散する雰囲気であっても、アクセプター元素の拡散が抑制される。これにより、n型拡散層のシート抵抗値を低く抑えることが可能となり、また、電荷空乏層が厚くなるのを抑えることができる。その結果、太陽電池素子の特性が向上する傾向にある。そして、上述の通り、n型拡散層とp型拡散層とを一括して形成することができるため、複雑な工程を必要とせず簡便な方法である。
(n型拡散層形成組成物を付与する工程)
この工程では、半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むドナーガラス粒子と分散媒とを含有するn型拡散層形成組成物を付与する。
n型拡散層形成組成物は、少なくとも、ドナー元素を含むドナーガラス粒子の少なくとも1種と、分散媒の少なくとも1種と、を含有する。更に塗布性等を考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、n型拡散層形成組成物とは、ドナー元素を含有し、半導体基板に付与した後に熱処理することで半導体基板にn型拡散層を形成することが可能な材料をいう。また、n型拡散層形成組成物は、電極形成組成物と区別される。そのため、n型拡散層形成組成物中のガラス粒子に対する金属粒子の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
ドナー元素がガラス粒子中に存在することで、ガラス粒子内のドナー元素が熱処理中に外部に揮散するのが抑制される。したがって、ドナーガラス粒子を含有するn型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にn型拡散層が形成され、不要な領域にn型拡散層が形成されることを抑制できる。この理由として、ドナー元素がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいものと考えられる。
したがって、ドナーガラス粒子を含有するn型拡散層形成組成物を適用すれば、従来広く採用されている気相反応法では必須のサイドエッチング工程が不要となり、工程が簡易化される。また、裏面に形成されたn型拡散層をp型拡散層へ変換する工程も不要となる。そのため、裏面のp型拡散層の形成方法、並びに裏面電極の材質、形状及び厚さが制限されず、適用する製造方法、材質及び形状の選択肢が広がる。また詳細は後述するが、裏面電極の厚さに起因した半導体基板内の内部応力の発生が抑えられ、半導体基板の反りも抑えられる。
更に、n型拡散層形成組成物は、ドナー元素の濃度を調整することで、所望の部位に所望の濃度のn型拡散層を形成することが可能であることから、ドナー元素の濃度の高い領域を位置選択的に形成することが可能となる。一方、n型拡散層の一般的な方法である気相反応法、又はリン酸塩含有溶液を用いる方法では、ドナー元素の揮発によって、ドナー元素の濃度の高い領域を位置選択的に形成することは困難である。
また、従来の太陽電池素子の製造工程では、半導体基板へのn型拡散層及びp型拡散層の形成は、別々の工程で行っている。そして、n型拡散層とp型拡散層の両層を形成するには、先に形成した一方の拡散層をバリア層等で覆う必要があり、多くの工程が必要となり煩雑となる。しかし、本実施形態の製造方法では、n型拡散層とp型拡散層の両層を形成する場合であってもバリア層で覆う工程を省くことができるため工程数が抑えられ、また、バリア層形成材料等の更なる材料を使用しなくともよく材料コストが削減される。
更には、本実施形態の製造方法では、n型拡散層とp型拡散層の両層を一括して形成することも可能である。
尚、n型拡散層形成組成物に含有されるドナーガラス粒子は熱処理(焼成)により溶融し、n型拡散層の上にガラス層を形成する。しかし、従来の気相反応法、及びリン酸塩含有の溶液又はペーストを付与する方法においても、n型拡散層の上にガラス層が形成されている。そのため、本実施形態において生成したガラス層は、従来の方法と同様に、エッチングにより除去することができる。したがって、本実施形態の方法は、従来の方法と比べても不要な生成物を発生させず、工程を増やすこともない。
ドナー元素を含むドナーガラス粒子について説明する。
ドナーガラス粒子は、ドナー元素の少なくとも1種を含有する。本明細書においてガラス粒子とは、ガラス(ガラス転移現象を示す非晶質固体)が粒子状になったものを意味する。
ドナー元素とは、半導体基板中にn型拡散層を形成しうる元素を意味する。ドナー元素としては、例えば、第15族の元素が使用できる。第15族の元素としては、例えば、P(リン)、Sb(アンチモン)及びAs(ヒ素)が挙げられる。安全性、ガラス化の容易さ等の観点からは、ドナー元素はP(リン)及びSb(アンチモン)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、P(リン)を含むことがより好ましい。
ドナー元素をガラス粒子に導入するために用いる物質(ドナー元素含有物質)としては、例えば、P、P、Sb及びAsが挙げられ、中でもP、P及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
ドナーガラス粒子中のドナー元素の含有率は、特に制限されない。例えば、n型拡散層の形成を充分に行う観点からは、ドナーガラス粒子の成分を酸化物換算したときに、ドナー元素酸化物(P、Sb、As等)の割合がドナーガラス粒子全体の20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましい。他の成分とのバランスの観点からは、例えば、酸化物換算でのドナー元素酸化物の割合がドナーガラス粒子全体の50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。特に、ドナー元素が吸湿性の高いリンを含む場合、その含有率を上記範囲とすることで、ドナーガラス粒子の吸湿を低く抑えることができる。
ドナーガラス粒子は、ドナー元素に加えて、Te、Sn、Zn、V及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の特定元素を含有することが好ましい。ドナーガラス粒子の軟化点を低くする効果、取扱い性等の観点からは、Teが好ましい。
特定元素をドナーガラス粒子に導入するために用いる物質(特定元素含有物質)としては、例えば、TeO、SnO、ZnO、V及びBiが挙げられ、中でもTeOが好ましい。
ドナーガラス粒子中の特定元素の含有率は、特に制限されない。例えば、ドナーガラス粒子の軟化点を効果的に低くする観点からは、ドナーガラス粒子の成分を酸化物換算したときに、特定元素酸化物(TeO、SnO、ZnO、V及びBi)の割合がドナーガラス粒子全体の3モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましい。他の成分とのバランスの観点からは、例えば、酸化物換算での特定元素酸化物の割合がドナーガラス粒子全体の40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
ドナーガラス粒子は、ドナー元素及び特定元素以外のその他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、例えば、Si、Ca、Mg、K、Na、Li、Ba、Sr、Be、Pb、Cd、Zr、Mo、La、Nb、Ta、Y、Ti、Ge、Al及びLuが挙げられる。
その他の元素をドナーガラス粒子に導入するために用いる物質(ガラス成分物質)としては、例えば、SiO、CaO、MgO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、BeO、PbO、CdO、ZrO、MoO、La、Nb、Ta、Y、TiO、GeO、Al及びLuが挙げられる。
ドナーガラス粒子は、その他の元素としてSiを含有してもよい。ドナーガラス粒子がSiを含有することで、半導体基板上に形成されたガラス層を除去するためのフッ酸によるエッチングを行う場合にガラス層の除去性が向上し、残渣の発生が抑制される。
ドナーガラス粒子がSiを含有する場合、その含有率は特に制限されない。例えば、ガラス層の除去性の観点からは、酸化物換算でのSiOの割合がドナーガラス粒子全体の30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。ドナーガラス粒子の軟化点を低く抑える観点からは、酸化物換算でのSiOの割合がドナーガラス粒子全体の70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。
ドナーガラス粒子は、その他の元素としてCa及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有してもよい。ドナーガラス粒子がCa及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有することで、ドナー元素として吸湿性が高いリンを用いる場合のドナーガラス粒子の吸湿を抑制することができる。
ドナーガラス粒子がCa及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する場合、その含有率は特に制限されない。例えば、充分な吸湿抑制効果を得る観点からは、酸化物換算でのCaO及びMgOからなる群より選択される少なくとも1種の割合がドナーガラス粒子全体の2モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましい。ガラスの軟化点を低く抑える観点からは、例えば、酸化物換算でのCaO及びMgOからなる群より選択される少なくとも1種の割合がドナーガラス粒子全体の30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましい。
ドナーガラス粒子がその他の元素を含有する場合は、ドナーガラス粒子の耐湿性及び溶融温度、ガラス層のエッチング除去性、ドナー元素の拡散性等の観点からは、例えば、酸化物換算でのその他の元素の酸化物の割合をドナーガラス粒子全体の0.01モル%〜10モル%とすることができ、0.1モル%〜5モル%とすることが好ましい。
ドナーガラス粒子は、軟化点が500℃未満であることが好ましい。ドナーガラス粒子として、軟化温度が500℃未満のものを用いると、容易に軟化又は溶融するため、半導体基板上にクラックが少ない緻密なガラス層が形成される。そのため、このガラス層はマスク性能が高く、n型拡散層のシート抵抗値を更に低く抑えることが可能である。
ガラス粒子の軟化点は、示差熱・熱重量同時測定装置(例えば、(株)島津製作所製、DTG−60H型)を用いて、示差熱(DTA)曲線等により求めることができる。
ドナー元素の半導体基板へのドーピングのための熱処理時において、ガラス粒子及びガラス層の粘度が低くなりすぎず、液だれの発生を抑制して、特定の部分以外にn型拡散層が形成されることを抑制しやすくする観点からは、ドナーガラス粒子の軟化点は、例えば、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが更に好ましい。
尚、軟化点が低いほど、軟化工程の温度を低く設定することができ経済的である。一方で、軟化点が400℃以上であると、軟化工程の温度を400℃以上に設定することになり、ドナー元素を半導体基板にドーピングする前までに、n型拡散層形成組成物に含まれる分散媒が充分に除去される。
ドナーガラス粒子の形状は、特に制限されず、例えば、略球状、扁平状、ブロック状、板状及び鱗片状が挙げられる。n型拡散層形成組成物とした場合の半導体基板への付与適性(塗布性)及び均一な拡散性の観点からは、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
ドナーガラス粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、溶融して形成したガラス層を平滑にしやすくする観点からは、ドナーガラス粒子の体積平均粒子径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。ドナーガラス粒子の体積平均粒子径の下限は特に制限されないが、例えば、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。
ドナーガラス粒子の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定される値であり、粒度分布において小径側からの体積累積50%に対応する粒子径(D50%)である。
ドナーガラス粒子の作製方法は、特に制限されない。例えば、以下の手順で作製される。
最初に原料を秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金−ロジウム、金、イリジウム、アルミナ、ジルコニア、石英、炭素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素等が挙げられる。るつぼの材質は、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性等を考慮して適宜選ばれる。次に、原料を、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが好ましい。続いて得られた融液をジルコニア基板、カーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。最後にガラスを粉砕し粒子状とする。粉砕にはスタンプミル、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル等の公知の装置が適用できる。
n型拡散層形成組成物中のドナーガラス粒子の含有率は、付与適性、ドナー元素の拡散性等を考慮して決定される。一般には、n型拡散層形成組成物中のガラス粒子の含有率は、1質量%〜30質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜25質量%の範囲であることがより好ましく、8質量%〜20質量%の範囲であることが更に好ましい。
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、n型拡散層形成組成物中においてドナーガラス粒子を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、バインダー及び溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が採用される。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、セルロースエーテル樹脂、セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸ナトリウム誘導体、キサンタン及びキサンタン誘導体、グアーガム及びグアーガム誘導体、スクレログルカン及びスクレログルカン誘導体、トラガカント及びトラガカント誘導体、デキストリン及びデキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。また、他にも、シロキサン樹脂等を適宜選択しうる。これらのバインダーは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。バインダーとしては、中でも、粘度特性の点で、エチルセルロースが好適である。
尚、「(メタ)アクリル」とはアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
バインダーの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度、印刷時の付与適性等を鑑みて適宜調整することが好ましい。また、組成物中のバインダーの含有率は、例えば組成物が下記の粘度を達成する量とすればよい。n型拡散層形成組成物中の粘度は、例えば、1Pa・s〜500Pa・sの範囲であることが好ましく、10Pa・s〜100Pa・sの範囲であることがより好ましい。粘度の測定は、東京計器製E型粘度計EHD型を用いて、25℃で、サンプル量0.4ml、回転数5回転/分(rpm)の条件で測定したものとする。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸s−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、s−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、s−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、s−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、s−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、s−テトラデシルアルコール、s−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;フェノール等のフェノール溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
半導体基板への付与適性の観点からは、溶剤は、テルピネオール及びブチルカルビトールアセテート(酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。n型拡散層形成組成物中の分散媒の含有率は、付与適性、ドナー濃度等を考慮し決定される。
n型拡散層形成組成物中の分散媒の含有率は、特に制限されず、付与適性、ドナー元素濃度等を考慮し決定される。例えば、60質量%〜95質量%であることが好ましく、70質量%〜90質量%であることがより好ましい。
n型拡散層形成組成物は、シラン化合物を含有してもよい。一般に、P、TeO等を成分として含有するドナーガラス粒子は吸湿性が高いが、シラン化合物を含有することで吸湿性を低く抑えることができる。そのため、n型拡散層形成組成物中にシラン化合物を含有することで、ドナーガラス粒子の吸湿が抑制されて、拡散能力の変動が抑制され、n型拡散層が安定して形成されやすくなる。
シラン化合物の種類は特に制限されない。例えば、以下の(a)〜(g)に該当するシラン化合物が挙げられる。
(a)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物
(b)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基又はグリシドキシ基を有するシラン化合物
(c)N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシラン化合物
(d)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカ化合物
(e)メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のアルキル基を有するシラン化合物
(f)フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のフェニル基を有するシラン化合物
(g)トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のトリフルオロアルキル基を有するシラン化合物
ドナーガラス粒子の吸湿を有効に抑える観点からは、シラン化合物はシランカップリング剤であることが好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤であることがより好ましく、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランであることが更に好ましい。シラン化合物は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
n型拡散層形成組成物がシラン化合物を含有する場合、その含有率は特に制限されない。n型拡散層形成組成物中のシラン化合物の含有率は、例えば、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.3質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが更に好ましい。シラン化合物の含有率が0.01質量%以上であると、有機金属化合物が良好にドナーガラス粒子の面に付着し、ドナーガラス粒子を水との接触から保護する機能が良好となる傾向にある。シラン化合物の含有率が20質量%以下であると、拡散性の低下を良好に抑制する傾向にある。
シラン化合物をn型拡散層形成組成物に添加する方法は、特に制限されない。例えば、シラン化合物をドナーガラス粒子、分散媒及び必要に応じて含まれるその他の成分とともに混合する方法、シラン化合物をまずドナーガラス粒子と混合して撹拌し、次いで得られた混合物と分散媒及び必要に応じて含まれるその他の成分とを混合する方法等を挙げることができる。ドナーガラス粒子の表面への付着のしやすさから、シラン化合物をまずドナーガラス粒子と混合し、次いで得られた混合物と分散媒及び必要に応じて含まれるその他の成分とを混合する方法が好ましい。シラン化合物とドナーガラス粒子とを混合して撹拌する方法は、乾式法又は湿式法のいずれでもよく、吸湿を抑制する観点からは湿式法が好ましい。具体的には、ドナーガラス粒子とシラン化合物を、分散媒として使用するバインダー、溶剤又はそれらの混合物中に加えて、撹拌する方法が挙げられる。撹拌装置に制限はないが、ドナーガラス粒子の粉砕も一括して行うことができる観点から、ビーズミル、ボールミル等が好ましい。
n型拡散層形成組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機酸塩等のチキソ性付与剤、濡れ性向上剤、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、安定剤、酸化防止剤、及び香料が挙げられる。これらのその他の成分の含有率は特に制限されず、例えば、n型拡散層形成組成物の総量100質量部に対して各成分をそれぞれ0.01質量部〜20質量部程度使用することができる。その他の成分は1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
n型拡散層形成組成物を付与する半導体基板の種類は特に制限されず、通常のものを適用することができる。半導体基板としては、例えば、シリコン基板、リン化ガリウム基板、窒化ガリウム基板、ダイヤモンド基板、窒化アルミニウム基板、窒化インジウム基板、ヒ化ガリウム基板、ゲルマニウム基板、セレン化亜鉛基板、テルル化亜鉛基板、テルル化カドミウム基板、硫化カドミウム基板、リン化インジウム基板、炭化ケイ素基板、ケイ化ゲルマニウム基板、銅インジウムセレン基板等が挙げられる。太陽電池素子に用いる場合には、半導体素子は、シリコン基板、ゲルマニウム基板、又は炭化ケイ素基板であることが好ましく、シリコン基板であることがより好ましい。
半導体基板は、予めアルカリ水溶液で洗浄してもよい。これにより、半導体基板の表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄等を例示することができる。例えば、アンモニア水−過酸化水素水の混合溶液に半導体基板を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去し洗浄することができる。洗浄時間は、例えば、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがより好ましい。
半導体基板の表面に存在するダメージ層は、n型拡散層形成組成物を付与する前に、予め除去されることが好ましい。ダメージ層の除去方法としては、酸性又はアルカリ性の溶液を用いてエッチングする方法が挙げられる。例えば、半導体基板としてシリコン基板を用いる場合、80℃程度に加熱した30質量%以上の高濃度のNaOH水溶液にシリコン基板を5分以上浸漬することで、シリコン基板の表面にあるダメージ層を除去できる。
また、バックコンタクト型太陽電池素子に適用する場合には受光面に、両面受光型太陽電池素子に適用する場合には受光面及び裏面に、テクスチャ構造と呼ばれる微細な凹凸構造を形成することが好ましい。テクスチャ構造の形成方法としては、例えば、アルカリ性の溶液を用いてエッチングする方法が挙げられる。半導体基板においてテクスチャ構造を形成したくない箇所には、予め保護層を設ける。半導体基板の片面のみにテクスチャ構造を形成するには、半導体基板の他方の面に耐水溶性のレジストを付与して保護する、或いは、フローティング装置を用いることができる。レジストを使用した場合には、テクスチャ構造を形成した後で、レジストを除去する。
半導体基板としてシリコン基板を用いる場合、例えば、水酸化カリウム及びイソプロピルアルコール(IPA)を含有する80℃程度の液に、シリコン基板を浸漬させることによってテクスチャ構造を形成することができる。
n型拡散層形成組成物の半導体基板への付与方法は特に制限されない。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、及びインクジェット法が挙げられる。中でも、印刷法、スプレー法、インクジェット法等のパターニングが可能な方法が好ましく、印刷法がより好ましく、スクリーン印刷法が更に好ましい。
半導体基板へのn型拡散層形成組成物の付与量としては特に制限はない。例えば、ドナーガラス粒子量として0.01g/m〜100g/mとなるようにn型拡散層形成組成物を半導体基板に付与することができ、0.1g/m〜10g/mとなるようにn型拡散層形成組成物を半導体基板に付与することが好ましい。
(軟化工程)
n型拡散層形成組成物を付与する工程の後、半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化する軟化工程を行う。この軟化工程は700℃未満の雰囲気で行なう。n型拡散層を形成する熱処理工程の前に、ドナーガラス粒子を軟化させてガラス層としておくことで、ガラス内部から半導体基板へのドナー元素のドープ及び拡散が均一に行われやすくなる。
軟化工程の雰囲気の温度は、700℃未満であってドナーガラス粒子が軟化する温度であれば特に限定されず、ドナーガラス粒子の成分に応じて適宜設定することができる。軟化工程の雰囲気の温度は、例えば、680℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、630℃以下であることが更に好ましく、600℃以下であることが特に好ましい。
また、軟化工程の雰囲気の温度は、ドナーガラス粒子が軟化する温度であれば、下限値は特に限定されず、ドナーガラス粒子の成分に応じて適宜設定することができる。軟化工程では、ドナーガラス粒子の全部が軟化しても、一部がドナーガラス粒子として残存してもよい。n型拡散層の均一性を向上させる観点からは、ドナーガラス粒子の全部が軟化する温度で行うことが好ましい。
n型拡散層形成組成物が分散媒としてバインダー等の有機物を含む場合には、軟化工程を400℃以上の雰囲気とすることが好ましい。軟化工程を400℃以上とすることで、ドナー元素を半導体基板にドーピングする熱処理工程の前に有機物を脱脂することができる。ドナー元素のドーピングの際には不要な有機物が除去されていると、分散媒に起因する残渣の発生、及び残渣によるドナー元素のドーピングの阻害を防止できる。その結果、ドナー元素の半導体基板へのドーピングが円滑に行なわれる傾向にある。
軟化工程中、雰囲気の温度が一定であってもよく、変化してもよい。雰囲気の温度を変化させる場合には、連続的に変化させても、多段的に変化させてもよい。
軟化工程における雰囲気のガスの種類は特に制限は無く、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン、及びこれらの混合ガスが挙げられる。
(熱処理工程)
軟化工程の後、半導体基板にn型拡散層を形成する熱処理工程を行う。熱処理の方法は特に制限されず、例えば、公知の連続炉、及びバッチ炉が適用できる。熱処理を行う温度は、ドナー元素が半導体基板にドーピング及び拡散する温度以上であれば特に制限されない。熱処理の温度は、n型拡散層形成工程を通じて一定であってもよく、変化してもよい。熱処理の温度を変化させる場合には、連続的に変化させても、多段的に変化させてもよい。
熱処理工程における雰囲気のガスの種類は特に制限は無く、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン、及びこれらの混合ガスが挙げられる。
熱処理工程における雰囲気の温度は、例えば、800℃〜1100℃であることが好ましく、850℃〜1050℃であることがより好ましく、870℃〜1030℃が更に好ましく、900℃〜1000℃が特に好ましい。
(その他の工程)
半導体基板の拡散層として、n型拡散層に加えてp型拡散層も形成する場合には、前記半導体基板上の少なくとも一部に、アクセプター元素を含むアクセプターガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記半導体基板にp型拡散層を形成する熱処理工程と、を更に含むことが好ましい。
本実施形態では、n型拡散層形成組成物の付与領域は、溶融したガラス層で覆われるため、n型拡散層とp型拡散層とが一括した熱処理により形成される場合であっても、n型拡散層形成組成物の付与領域において、アクセプター元素のドーピング及び拡散が抑制される。これにより、n型拡散層のシート抵抗値を低く抑えることが可能となり、また、電荷空乏層が厚くなるのが抑えられる傾向にある。その結果、太陽電池素子の特性が向上する傾向にある。
また、上記方法では、半導体基板にドナー元素とアクセプター元素とを一括してドープさせ且つ拡散させることが可能であり、複雑な工程を必要とせず簡便な方法である。
p型拡散層形成組成物は、少なくとも、アクセプター元素を含むアクセプターガラス粒子の少なくとも1種と、分散媒の少なくとも1種と、を含有し、更に塗布性等を考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、p型拡散層形成組成物とは、アクセプター元素を含有し、半導体基板に付与した後に熱処理することで半導体基板にp型拡散層を形成することが可能な材料をいう。また、p型拡散層形成組成物は、電極形成組成物と区別される。そのため、p型拡散層形成組成物中のガラス粒子に対する金属粒子の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。アクセプターガラス粒子を含有するp型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にp型拡散層が形成され、不要な領域にp型拡散層が形成されることを抑制できる。
アクセプター元素がガラス粒子中に存在することで、ガラス粒子内のアクセプター元素が熱処理中に外部に揮散するのが抑制される。このため、アクセプター元素が揮散して半導体基板の裏面又は側面にまでp型拡散層が形成されるのが抑制される。従って、アクセプターガラス粒子を含有するp型拡散層形成組成物を用いることで、半導体基板の裏面、側面等に不要なp型拡散層を形成せずに、所望の部位に選択的にp型拡散層を形成できる。この理由として、アクセプター元素がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいことが考えられる。
更に、p型拡散層形成組成物は、アクセプター元素の濃度を調整することで、所望の部位に所望の濃度のp型拡散層を形成することが可能であることから、アクセプター元素の濃度の高い領域を位置選択的に形成することが可能となる。
アクセプター元素とは、半導体基板中にp型拡散層を形成しうる元素を意味する。アクセプター元素としては、例えば、第13族の元素が使用できる。第13族の元素としては、例えば、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)が挙げられ、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、ガラス化の容易さ等の観点から、B(ほう素)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
アクセプター元素をガラス粒子に導入するために用いる物質(アクセプター元素含有物質)としては、例えば、B、Al、及びGaが挙げられ、中でもB、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
アクセプターガラス粒子は、アクセプター元素以外のその他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、例えば、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Zr、W、Mo、Mn、La、Nb、Ta、Y、Ti、Ge、Te及びLuが挙げられ、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Zr、W、Mo及びMnから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
その他の元素をアクセプターガラス粒子に導入するために用いる物質としては、例えば、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、WO、MoO、MnO、La、Nb、Ta、Y、TiO、GeO、TeO及びLuが挙げられ、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、TlO、V、SnO、ZrO、WO、MoO及びMnOから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
アクセプターガラス粒子は、溶融温度、軟化温度、ガラス転移点、及び化学的耐久性を考慮して、必要に応じて成分比率を適宜設定することが好ましい。例えば、p型拡散層の形成を充分に行う観点からは、酸化物換算でのアクセプター元素酸化物(B、Al、Ga等)の割合が、アクセプターガラス粒子全体の5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。他の成分とのバランスの観点からは、例えば、酸化物換算でのアクセプター元素酸化物の割合がアクセプターガラス粒子全体の99.9モル%以下であることが好ましく、99.5モル%以下であることがより好ましい。BとSiとCaとを含有するアクセプターガラス粒子の場合には、酸化物換算でのCaOの含有率は、アクセプターガラス粒子全体の1質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
アクセプター元素の半導体基板へのドーピングのための熱処理時におけて、ガラス層の粘度が低くなりすぎず、液だれの発生を抑制して、特定の部分以外にp型拡散層が形成されることを抑制しやすくする観点からは、アクセプターガラス粒子の軟化温度は、例えば、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが更に好ましい。また、製造コスト等の観点から、1000℃であることが好ましく、900℃であることがより好ましく、880℃であることが更に好ましく、860℃であることが特に好ましい。
上記範囲の軟化温度のアクセプターガラス粒子を用いることで、拡散のための熱処理時にアクセプター元素が揮散しにくくなり、揮散ガスの発生によって所望の領域以外にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、アクセプター元素がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいことが考えられる。アクセプターガラス粒子の軟化温度の測定方法は、ドナーガラス粒子の軟化温度の測定方法と同様である。
アクセプターガラス粒子の形状は、特に制限されず、例えば、略球状、扁平状、ブロック状、板状及び鱗片状等が挙げられる。n型拡散層形成組成物とした場合の半導体基板への付与適性(塗布性)及び均一な拡散性の観点からは、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
アクセプターガラス粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、アクセプターガラス粒子の体積平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。アクセプターガラス粒子の体積平均粒子径の下限は特に制限されず、例えば、0.01μm以上であることが好ましい。
アクセプターガラス粒子の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定される値であり、粒度分布において小径側からの体積累積50%に対応する粒子径(D50%)である。
アクセプターガラス粒子の作製方法は、n型拡散層形成組成物で例示した方法と同様の手順で作製される。
p型拡散層形成組成物中のアクセプターガラス粒子の含有率は、付与適性、アクセプター元素の拡散性等を考慮して決定される。一般には、アクセプターガラス粒子の含有率は、p型拡散層形成組成物の全質量の0.1質量%〜95質量%であることが好ましく、1質量%〜90質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜85質量%であることが更に好ましく、2質量%〜80質量%が特に好ましい。
p型拡散層形成組成物に用いることのできる分散媒は、n型拡散層形成組成物で例示した分散媒と同様であり、好適な分散媒についても同様である。
p型拡散層形成組成物中の分散媒の含有率は、付与適性、アクセプター元素濃度等を考慮し決定される。p型拡散層形成組成物の粘度は、付与適性を考慮して、例えば、25℃で、10mPa・s〜1000000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s〜500000mPa・sであることがより好ましい。
p型拡散層形成組成物はその他の成分を含有していてもよい。p型拡散層形成組成物におけるその他の成分は、n型拡散層形成組成物で例示したものと同様である。p型拡散層形成組成物の半導体基板への付与方法についても、n型拡散層形成組成物の場合と同様である。
n型拡散層を形成する熱処理工程とp型拡散層を形成する熱処理工程とは一括して行ってもよいし、別個に行ってもよい。製造コスト及び工程の簡便さの観点からは、一括して行うことが好ましい。
n型拡散層を形成する熱処理工程とp型拡散層を形成する熱処理工程とを一括して行なう場合、n型拡散層形成組成物とp型拡散層形成組成物との付与の順序はいずれであってもよい。
また、n型拡散層を形成する熱処理工程とp型拡散層を形成する熱処理工程とを別個に行なう場合、n型拡散層の形成と、p型拡散層の形成の順序はいずれであってもよい。但し、アクセプター元素をドナー元素と同程度に拡散させようとすれば、p型拡散層を形成した後で、n型拡散層を形成することが好ましい。これは、アクセプター元素は、リン等のドナー元素よりも半導体基板中への拡散速度が遅いため、一般的に、p型拡散層の形成のための熱処理温度を、n型拡散層の形成のための熱処理温度よりも高く設定していることに起因する。
半導体基板にp型拡散層を形成する熱処理の方法は特に制限されない。例えば、公知の連続炉、及びバッチ炉が適用できる。
熱処理工程における雰囲気のガスの種類は特に制限は無く、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン、及びこれらの混合ガスの雰囲気であることが好ましい。
熱処理工程における雰囲気の温度は、アクセプター元素が半導体基板にドーピング及び拡散する温度以上であれば特に制限されない。熱処理工程における雰囲気の温度は、例えば、800℃〜1100℃であることが好ましく、850℃〜1050℃であることがより好ましく、870℃〜1030℃が更に好ましく、900℃〜1000℃が特に好ましい。
熱処理の温度は、p型拡散層形成工程を通じて一定であってもよく、変化してもよい。熱処理の温度を変化させる場合には、連続的に変化させても、多段的に変化させてもよい。
p型拡散層及びn型拡散層を形成した後で、これらの拡散層の上に、パッシベーション層を形成する工程を更に有していてもよい。パッシベーション層としては、例えば、熱酸化層、酸化アルミニウム層、窒化珪素層、及びアモルファスシリコン層が挙げられる。パッシベーション層は、酸化ケイ素、窒化珪素及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
パッシベーション層は、蒸着法又は塗布法により形成することができる。パッシベーション層は、単層構造であっても、二層構造、三層構造等の複層構造であってもよく、例えば、熱酸化層、窒化ケイ素層の順で設けられていてもよい。
また、p型拡散層及びn型拡散層を形成した後で、反射防止層を形成する工程を更に有していてもよい。反射防止層としては、例えば、プラズマCVD法により形成された窒化物層を用いることができる。反射防止層として窒化珪素層を設ける場合には、この窒化珪素層はパッシベーション層の役割を兼ねることができる。
また、半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化する軟化工程の前に、分散媒の少なくとも一部を熱処理により除去する分散媒除去工程を設けてもよい。分散媒除去工程の雰囲気の温度は、例えば、100℃〜300℃とすることができる。この温度範囲に設定することで、分散媒としての溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。
(製造方法の一例)
拡散層を有する半導体基板の製造方法の一例として、バックコンタクト型太陽電池用の半導体基板の製造方法を説明する。ここでは、半導体基板としてシリコン基板を用いて説明する。
まず、シリコン基板(例えば、n型シリコン基板)の表面にあるダメージ層を除去する。次いで、シリコン基板の受光面にテクスチャ構造を形成する。次に、シリコン基板の受光面とは反対側の裏面側の表面上に、パターン状にn型拡散層形成組成物を付与する。その後、100℃〜300℃で熱処理し、分散媒の少なくとも一部を除去してもよい。その後、700℃未満で熱処理して半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化させる。次に、シリコン基板の裏面側の表面上に、パターン状にp型拡散層形成組成物を付与する。
ここでは、まずn型拡散層形成組成物を付与し、ドナーガラス粒子を軟化させてから、p型拡散層形成組成物を付与しているが、先にp型拡散層形成組成物を付与してから、n型拡散層形成組成物を付与し、ドナーガラス粒子を軟化させてもよい。
そして、p型拡散層及びn型拡散層を形成するための熱処理を行う。
次に、受光面上に、反射防止層を形成する。裏面側にはパッシベーション層を形成することが好ましい。
(製造方法の他の一例)
拡散層を有する半導体基板の製造方法の他の一例として、両面受光型太陽電池用の半導体基板の製造方法を説明する。この両面受光型太陽電池の製造方法では、半導体基板としてシリコン基板を用い、まずp型拡散層を形成してから、n型拡散層を形成する方法を説明する。しかしながら、この工程順に限定されず、n型拡散層を形成してからp型拡散層を形成してもよい。
まず、シリコン基板(例えば、n型シリコン基板)の表面にあるダメージ層を除去する。次いで、シリコン基板の両面にテクスチャ構造を形成する。次に、シリコン基板の少なくとも一部に、p型拡散層形成組成物を付与する。その後、100℃〜300℃で分散媒の少なくとも一部を除去してもよい。その後、p型拡散層形成組成物及が付与されたシリコン基板を熱処理してp型拡散層を部分的に形成する。
次に、裏面側の表面上に、n型拡散層形成組成物を付与する。その後、700℃未満で熱処理して、半導体基板上のドナーガラス粒子を軟化させる。そして、n型拡散層を形成するための熱処理を行う。そして、両面に反射防止層又はパッシベーション層を形成する。
<太陽電池素子の製造方法>
本実施態様の太陽電池素子の製造方法は、上記の製造方法により拡散層を有する半導体基板を製造し、その拡散層上に電極を形成する工程を有する。
以下では、図面を参照しながら太陽電池素子の製造方法の実施形態について説明する。但し、図面は本発明をなんら制限するものではない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
図1は、バックコンタクト型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。図1では、シリコン基板として、n型シリコン基板を用いた場合について説明する。
まず、50μm〜300μm程度の厚みを有するn型シリコン基板10を用意する。このn型シリコン基板10は、CZ(Czochralski)法、FZ(Floating Zone)法、EFG(Edge−defined Film−fed Growth)法、鋳造法等で形成された単結晶又は多結晶のシリコンインゴット等をスライスして得られ、例えば、リン等のn型不純物を1×1015atom/cm〜1×1019atom/cm程度含有する。次いで、n型シリコン基板10をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。
次いで、図1(a)に示すn型シリコン基板10は、アルカリエッチング等により受光面(表面)にテクスチャ構造(ピラミッド形状、図中ではテクスチャ構造の記載を省略する)を形成し、受光面からの太陽光の反射を抑える。
そして、図1(b)に示すように、p型拡散層形成組成物11を受光面とは反対側の裏面の一部に付与する。
図1(c)に示すように、n型拡散層形成組成物13を受光面及び反対側の裏面の一部に付与する。次に、700℃未満で熱処理してn型拡散層形成組成物中のドナーガラス粒子を軟化する。
その後、図1(d)に示すように、熱処理してp型拡散層12及びn型拡散層14を一括して形成する。このときの熱処理によって、p型拡散層形成組成物11は熱処理物11’となり、n型拡散層形成組成物13は熱処理物13’となっている。
次いで、図1(e)に示すように、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでp型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びn型拡散層形成組成物の熱処理物13’を除去する。
次いで、図1(f)に示すように、受光面及び裏面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成される。裏面において、反射防止層兼パッシベーション層は全面又は一部の領域に形成してもよく、電極との接触部に相当する部分をエッチングしてもよい。エッチングには、フッ化アンモニウム等の化合物を用いることができる。また、反射防止層兼パッシベーション層15が窒化ケイ素層である場合には、電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含有するものを用いることで、オーミックコンタクトを取ることもできる。反射防止層兼パッシベーション層15とn型シリコン基板10との間に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の表面保護層(図示せず)が更に存在していてもよく、部分的に反射防止層兼パッシベーション層15の組成を変えてもよい。
その後、図1(g)に示すように、裏面側に電極形成用ペーストを付与した後に加熱処理して、p電極16及びn電極17を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含有するものを用いることで、裏面全面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成されていても、反射防止層兼パッシベーション層15を貫通して、拡散層の上に、電極を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。上記のようにして、太陽電池素子を得ることができる。
図2は、本実施形態にかかる両面受光型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。図2では、シリコン基板としてn型シリコン基板を用いて説明する。
まず、n型シリコン基板10をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。次いで、図2(a)に示すn型シリコン基板10は、アルカリエッチング等により両面にテクスチャ構造(ピラミッド形状、不図示)を形成し、太陽光の反射を抑える。
そして、図2(b)に示すように、p型拡散層形成組成物11を一方の面に付与する。
図2(c)に示すように、n型拡散層形成組成物13を他方の面に付与する。次に、700℃未満で熱処理してn型拡散層形成組成物中のドナーガラス粒子を軟化する。
その後、図2(d)に示すように、熱処理してp型拡散層12及びn型拡散層14を一括して形成する。このときの熱処理によって、p型拡散層形成組成物11は熱処理物11’となり、n型拡散層形成組成物13は熱処理物13’となっている。
次いで、図2(e)に示すように、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでp型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びn型拡散層形成組成物の熱処理物13’を除去する。
次いで、図2(f)に示すように、受光面及び裏面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成される。反射防止層兼パッシベーション層15としては、窒化ケイ素層、酸化チタン層、酸化ケイ素層、酸化アルミニウム層等が挙げられる。反射防止層兼パッシベーション層15は受光面の全面又は一部の領域に形成してもよく、電極との接触部にあたる部分をエッチングしてもよい。反射防止層兼パッシベーション層15とn型シリコン基板10との間に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の表面保護層(図示せず)が更に存在していてもよく、部分的に反射防止層兼パッシベーション層15の組成を変えてもよい。
その後、図2(g)に示すように、受光面及び裏面のそれぞれに電極形成用ペーストを付与した後に加熱処理して、p電極16及びn電極17を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含有するものを用いることで、裏面全面に反射防止層兼パッシベーション層が形成されていても、反射防止層兼パッシベーション層を貫通して、拡散層の上に、電極を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。上記のようにして、太陽電池素子を得ることができる。
<太陽電池素子>
太陽電池素子は、上述の製造方法によって得られる。太陽電池素子は、半導体基板の不要な領域に拡散層が形成されるのが抑えられ、電池性能の向上が図られる。
太陽電池素子は、電極上にタブ線等の配線材料を配置し、この配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結されて太陽電池モジュールを構成してもよい。更に、太陽電池モジュールは、封止材で封止されて構成されてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、薬品は全て試薬を使用した。また「部」及び「%」は断りがない限り質量基準である。
[実施例1]
(n型拡散層形成組成物の調製)
体積平均粒子径が0.89μmのドナーガラス粒子(酸化物換算での組成が、P:30モル%、SiO:50モル%、CaO:10モル%、TeO:10モル%)10gと、エチルセルロース5gと、テルピネオール84gと、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1gとを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物を調製した。ドナーガラス粒子の軟化温度は500℃未満であった。
(p型拡散層形成組成物の調製)
体積平均粒子径が0.35μm、軟化温度が約800℃のアクセプターガラス粒子(酸化物換算での組成が、B:30モル%、SiO:50モル%、CaO:20モル%)10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物を調製した。
尚、ガラス粒子の平均粒子径はベックマン・コールター(株)製LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。また、ガラス粒子の軟化温度は、(株)島津製作所製DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。
(マスク性能の評価)
n型シリコン基板(表面ミラー加工)の一方の面にn型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間ホットプレートにて乾燥させた。次に、ドナーガラス粒子を軟化させてガラス層を形成するため、500℃に設定したトンネル型焼成炉((株)ノリタケカンパニーリミテド)に、n型シリコン基板を入れ10分間熱処理した。ドナーガラス粒子が軟化したか否かの確認には、工業用検査顕微鏡(オリンパス(株)製、MX−51)を用いた。500℃、10分間の熱処理により、ドナーガラス粒子が軟化していることが確認された。
次に、n型シリコン基板上のn型拡散層形成組成物を塗布していないもう一方の面にp型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間乾燥させた。
:10L/minを流した拡散炉(光洋サーモシステム(株)、206A−M100)中にて、700℃に設定した状態でn型シリコン基板を入れ、その後、950℃まで15℃/minで昇温し、950℃で30分間熱処理してn型拡散層及びp型拡散層を形成した。次いで、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉からn型シリコン基板を取り出した。
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層をフッ酸によって除去した。その後、n型拡散層形成組成物付与部における、n型シリコン基板表層のリン元素の濃度を、SIMS(二次イオン質量分析計、CAMECA社、IMS−7F)を用いて測定した。一次イオンにはCsを用いた。n型拡散層を形成した領域のn型シリコン基板表層のホウ素濃度は検出限界(1016atom/cm)以下であり、n型拡散層形成組成物の熱処理物によってホウ素の拡散を阻害していることが分かった。
(太陽電池素子の作製)
n型シリコン基板(表面テクスチャ加工)の一方の面にn型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間乾燥させた。500℃に設定したトンネル型焼成炉((株)ノリタケカンパニーリミテド)に、n型シリコン基板を入れ10分間熱処理した。
次に、n型シリコン基板のn型拡散層形成組成物を塗布していないもう一方の面にp型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間乾燥させた。
:10L/minを流した拡散炉中にて、700℃に設定した状態でn型シリコン基板を入れ、その後、950℃まで15℃/minで昇温し、950℃で30分間熱処理してn型拡散層及びp型拡散層を形成した。次いで、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉からn型シリコン基板を取り出した。
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層をフッ酸によって除去した。n型拡散層を形成した領域のシート抵抗の平均値は46Ω/□、n型拡散層を形成した領域のシート抵抗値のバラつきは、変動係数2.5%であった。
尚、シート抵抗は、三菱化学(株)製、Loresta−EP MCP−T360型低抵抗率計を用いて四探針法により25℃で測定した。そして、n型拡散層形成用組成物を塗布した一辺が156mmの角型基板の領域内のシート抵抗を、間隔が等しくなるように選択した9点で測定し、その平均値μを求めた。また、測定点9点のシート抵抗値の標準偏差σを求め、そのσを平均値μで割った変動係数(CV=σ/μ)でバラツキを評価した。変動係数は5%以下の場合に良好と判断した。
次いで、n型拡散層を形成した面に窒化珪素を蒸着することで反射防止層を形成した。また、p型拡散層を形成した面にはALD法で酸化アルミニウムを蒸着し、パッシベーション層を形成した。
次に、印刷マスクを用いて、両面にそれぞれ、銀電極(デュポン社、PV17F)をスクリーン印刷により形成した。次いで、150℃で乾燥後、トンネル型焼成炉を用いて820℃で焼成して太陽電池素子を作製した。作製後の太陽電池素子について、ソーラシミュレータ((株)ワコム電創、XS−155S−10)で発電特性を評価した。変換効率は、18.3%であり、良好であることを確認した。
[実施例2]
n型拡散層形成組成物を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、マスク性能の評価、太陽電池素子の作製、及び発電特性の評価を行なった。
体積平均粒子径が0.75μmのドナーガラス粒子(酸化物換算での組成が、P:30モル%、SiO:40モル%、MgO:20モル%、TeO:10モル%)10gと、エチルセルロース5gと、テルピネオール84gと、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1gとを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物を調製した。ドナーガラス粒子の軟化温度は500℃未満であった。
このn型拡散層形成組成物を用いた場合、500℃、10分間の熱処理により、ドナーガラス粒子が軟化していることが確認された。
また、n型拡散層を形成した領域のn型シリコン基板表層のホウ素濃度は検出限界(1016atom/cm)以下であり、n型拡散層形成組成物の熱処理物によってホウ素の拡散を阻害していることが分かった。
n型拡散層を形成した領域のシート抵抗の平均値は70Ω/□、シート抵抗値のバラつきは、変動係数4.1%であった。
太陽電池素子の変換効率は、18.0%であり、良好であることを確認した。
[実施例3]
n型拡散層形成組成物を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、マスク性能の評価、太陽電池素子の作製、及び発電特性の評価を行なった。
体積平均粒子径が0.75μmのドナーガラス粒子(酸化物換算での組成が、P:30モル%、SiO:40モル%、MgO:20モル%、SnO:10モル%)10gと、エチルセルロース5gと、テルピネオール84gと、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1gとを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物を調製した。ドナーガラス粒子の軟化温度は500℃未満であった。
このn型拡散層形成組成物を用いた場合、500℃、10分間の熱処理により、ドナーガラス粒子が軟化していることが確認された。
また、n型拡散層を形成した領域のn型シリコン基板表層のホウ素濃度は検出限界(1016atom/cm)以下であり、n型拡散層形成組成物の熱処理物によってホウ素の拡散を阻害していることが分かった。
n型拡散層を形成した領域のシート抵抗の平均値は81Ω/□、シート抵抗値のバラつきは、変動係数4.8%であった。
太陽電池素子の変換効率は、17.9%であり、良好であることを確認した。
[比較例1]
500℃、10分間の軟化工程を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして、マスク性能の評価、太陽電池素子の作製、及び発電特性の評価を行なった。
n型拡散層を形成した領域のn型シリコン基板表層のホウ素濃度は1017atom/cmであり、n型拡散層内にわずかにホウ素が拡散していることが分かった。n型拡散層形成組成物中のガラス粒子の軟化工程を省略したため、n型拡散層形成組成物の付与領域においてガラス層で覆われていない部分が存在し、その部分からホウ素が混入したものと考えられる。
n型拡散層を形成した領域のシート抵抗の平均値は120Ω/□、シート抵抗値のバラつきは、変動係数10.4%であった。
太陽電池素子の変換効率は、5.3%であり、n型拡散層にホウ素が拡散すると電池性能が低下することを確認した。
[比較例2]
n型拡散層形成組成物を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、マスク性能の評価を行なった。
体積平均粒子径が0.8μmのドナーガラス粒子(酸化物換算での組成が、P:30モル%、SiO:50モル%、MgO:19モル%、TeO:1モル%)10gと、エチルセルロース5gと、テルピネオール84gと、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1gを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物を調製した。ドナーガラス粒子の軟化温度は600℃であった。
このn型拡散層形成組成物を用いた場合、500℃、10分間の熱処理では、ドナーガラス粒子が軟化しないことが確認された。
n型拡散層を形成した領域のn型シリコン基板表層のホウ素濃度は1019atom/cmであり、n型拡散層内にホウ素が拡散していることが分かった。ドナーガラス粒子の軟化温度が600℃であるのに対して、500℃で10分間の熱処理では、ドナーガラス粒子を軟化させることができなかったものと考えられる。そのため、n型拡散層形成組成物の付与領域においてガラス層で覆われていない部分が存在し、その部分からホウ素が混入したものと考えられる。
10…n型シリコン基板、11…p型拡散層形成組成物、11’…p型拡散層形成組成物の熱処理物、12…p型拡散層形、13…n型拡散層形成組成物、11’…n型拡散層形成組成物の熱処理物、14…n型拡散層、15…反射防止層兼パッシベーション層、16…p電極、17…n電極

Claims (17)

  1. 半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むドナーガラス粒子及び分散媒を含有するn型拡散層形成組成物を付与する工程と、
    前記半導体基板上の前記ドナーガラス粒子を軟化する軟化工程と、
    前記半導体基板にn型拡散層を形成する熱処理工程と、をこの順に行い、
    前記軟化工程を、700℃未満の雰囲気で行なう、拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  2. 前記半導体基板上の少なくとも一部に、アクセプター元素を含むアクセプターガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
    前記半導体基板にp型拡散層を形成する熱処理工程と、
    を更に含む、請求項1に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  3. 前記n型拡散層を形成する熱処理工程と前記p型拡散層を形成する熱処理工程とを一括して行う、請求項2に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  4. 前記ドナーガラス粒子の軟化温度は、500℃未満である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  5. 前記ドナーガラス粒子が、Te、Sn、Zn、V及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を更に含有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  6. 前記ドナーガラス粒子が、Teを更に含有する、請求項5に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  7. 前記ドナーガラス粒子の成分を酸化物換算したときに、TeO、SnO、ZnO、V及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の割合が、前記ドナーガラス粒子全体の3モル%以上である、請求項5又は請求項6に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  8. 前記ドナーガラス粒子が、Ca及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を更に含有する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  9. 前記ドナーガラス粒子が、Siを更に含有する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  10. 前記n型拡散層形成組成物が、シランカップリング剤を更に含有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  11. 前記シランカップリング剤が、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを含む、請求項10に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  12. 前記ドナーガラス粒子の体積平均粒子径が、10μm以下である、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  13. 前記n型拡散層形成組成物中のドナーガラス粒子の含有率が、1質量%〜30質量%である、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  14. 前記分散媒が、テルピネオール及びブチルカルビトールアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  15. 前記分散媒が、エチルセルロースを含む、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の拡散層を有する半導体基板の製造方法。
  16. 請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の製造方法により、拡散層を有する半導体基板を製造する工程と、
    前記拡散層上に電極を形成する工程と、
    を有する太陽電池素子の製造方法。
  17. 請求項16に記載の製造方法によって得られる太陽電池素子。
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