図により本発明に係る画像形成装置の一実施形態を具体的に説明する。尚、以下の各実施形態に記載されている構成は、あくまでも一例であり、本発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
先ず、図1〜図7を用いて本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
<画像形成装置>
図1及び図2を用いて本実施形態の画像形成装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の構成を示す断面説明図である。図1に示すように、像担持体となる感光ドラム2は、例えば、377mm/sec程度のプロセススピードで図1の矢印f方向に回転される。感光ドラム2の表面は、帯電手段となる帯電ローラ3により均一に帯電される。
帯電ローラ3により均一に帯電された感光ドラム2の表面に画像情報に応じたレーザ光10を照射して静電潜像を形成する像露光手段となるスキャナユニット1は、ポリゴンミラーやレンズ等を有して構成される。
スキャナユニット1から画像信号に応じて変調されたレーザ光10がスキャン出力される。スキャナユニット1から出射されたレーザ光10は、ミラー11で反射して、帯電ローラ3により均一に帯電され、図1の矢印f方向に回転する感光ドラム2の表面上に照射される。
レーザ光10の照射によって感光ドラム2の表面上には、画像情報に応じた静電潜像が形成される。スキャナユニット1により感光ドラム2の表面上に形成された静電潜像に対して、現像手段となる現像装置4の現像剤容器4a内に収容された現像剤となるトナーtが現像剤担持体となる現像スリーブ4bによって供給される。これにより感光ドラム2の表面上に形成された静電潜像にトナーtが付着されてトナー像として現像されて顕像化される。
一方、給送カセット7内に収納された記録材Pは、給送ローラ13によって繰り出され、図示しない分離手段との協働により一枚ずつ分離給送される。給送ローラ13によって繰り出された記録材Pは、感光ドラム2の表面に形成される静電潜像の形成動作と同期して一旦停止したレジストローラ9に搬送される。
記録材Pの先端部が一旦停止したレジストローラ9のニップ部に突き当たり、該記録材Pの腰の強さにより該記録材Pの先端部がレジストローラ9のニップ部に沿って斜行が補正される。その後、記録材Pはレジストローラ9により挟持搬送されて感光ドラム2の表面上に形成されたトナー像の先端位置と同期して感光ドラム2と、転写手段となる転写ローラ6との転写ニップ部Ntからなる転写領域に搬送される。
転写ローラ6の作用により感光ドラム2の表面上に形成されたトナー像が記録材Pに転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着手段となる定着装置8に設けられた定着ローラと加圧ローラとにより挟持搬送される過程で加熱及び加圧されてトナー像が熱溶融して記録材P上に熱定着される。
定着装置8から排出された記録材Pは、図示しない排出手段により画像形成装置100の外部に排出される。尚、転写後に感光ドラム2の表面上に残留したトナーtは、クリーニング手段となるクリーニング装置5に設けられた弾性ブレードからなるクリーニングブレードにより掻き取られて除去される。
<除電手段>
クリーニング装置5よりも感光ドラム2の回転方向下流側には、画像形成装置100本体に設けられた制御手段となる制御部24により動作制御される除電手段となる前露光装置12が設けられている。前露光装置12は、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)やハロゲンランプ等により構成される。
転写ローラ6により感光ドラム2の表面に形成されたトナー像を記録材Pに転写した後、転写後の感光ドラム2の表面に前露光装置12から光を照射する。これにより該感光ドラム2の表面を除電して該感光ドラム2の表面電位を一様に均している。
<転写手段>
次に、図2を用いて転写手段となる転写ローラ6の制御系の構成について説明する。図2は、本実施形態の転写ローラ6に転写バイアス電圧Vt(転写バイアス)を印加する転写バイアス印加手段となる転写バイアス電源21の構成を示すブロック図である。
図2の矢印f方向で示す感光ドラム2の回転方向において、現像装置4に設けられた現像スリーブ4bと該感光ドラム2とが対向する現像領域Gよりも下流側には、感光ドラム2と転写ローラ6とが圧接される転写ニップ部Ntが形成される。感光ドラム2の図2の矢印f方向で示す回転につれて現像スリーブ4bが対向する現像領域Gにおいて該感光ドラム2の表面に形成されたトナー像が転写ニップ部Ntに到達する。
すると、そのタイミングに合わせてレジストローラ9に挟持搬送される記録材Pが該転写ニップ部Ntに到達する。
これと同時に転写バイアス印加手段となる転写バイアス電源21によって転写ローラ6に正(+)極性の転写バイアス電圧Vtが印加される。これにより感光ドラム2の表面に形成されたトナー像が記録材Pに転写される。
この転写時には、転写ローラ6が回転しながら記録材Pの裏側に接触する。これにより該記録材Pの裏側には、感光ドラム2の表面に形成されたトナー像の電荷とは逆極性の電荷が付与される。
本実施形態の転写ローラ6は、NBR(Nitril-Butadiene Rubber;ニトリルブタジエンゴム)、ヒドリンからなる弾性層6bを有するスポンジ状の転写ローラ6を用いた。該転写ローラ6は、外径直径が5mmの導電性を有するステンレス(SUS)製の芯金6aの外周面上に肉厚が4.5mmの弾性層6bを形成し、該転写ローラ6の外径直径は14mmに設定される。
感光ドラム2の表面に対して圧接された転写ローラ6の荷重を3.92N(400g重)に設定し、転写ローラ6を118mm/secの周速度で回転させ、転写バイアス電源21から該転写ローラ6の芯金6aに2.0kVの転写バイアス電圧Vtを印加した。
そのとき、転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itを検知手段となる電流計23により検知(測定)する。そして、該転写電流Itと、転写バイアス電圧Vtとを用いてオームの法則(Rt=Vt/It)により転写ローラ6と感光ドラム2との間の抵抗値Rtは、約5.0×107Ωと計算される。
帯電ローラ3により均一に帯電された感光ドラム2の表面上の帯電電位(暗部の部位の電位)Vdは−600Vである。一方、帯電ローラ3により帯電電位(暗部の部位の電位)Vd(−600V)に均一に帯電された感光ドラム2の表面上にスキャナユニット1から出射されるレーザ光10が照射されて静電潜像が形成された露光電位(明部の部位の電位)Veは−100Vである。
また、転写バイアス電源21は、可変定電圧電源22、電流計23、制御部24等を有して構成される。画像形成装置100による画像形成時に転写バイアス電源21により転写ローラ6の芯金6aに所定の正の転写バイアス電圧Vtを印加する。このときの転写電流Itを電流計23により測定する。電流計23により測定した転写電流Itに応じて制御手段となる制御部24により前露光装置12による除電光量を制御する。
<除電手段>
次に、本実施形態の除電手段となる前露光装置12の構成について説明する。前露光装置12の光源としては、公知のLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)、ヒューズランプ、ハロゲンランプ等を用いることができる。LEDを用いると光源の駆動電圧が小さく、前露光装置12の小型化が可能である。本実施形態では前露光装置12として、ピーク波長が700nmの複数のLEDを感光ドラム2の回転軸方向に整列させた図示しないアレイ状光源を用いた。
前露光装置12の光量は、感光ドラム2の表面にスキャナユニット1から照射されるレーザ光10の光量と略等しい。尚、前露光装置12の光量は、図2に示す電流計23により測定された転写電流Itに基づいて制御部24により制御される。
図3は、記録材P上に形成されたゴースト画像と呼ばれる画像不良の一例を示す図である。図3に示す記録材P上の印字領域Tは、全面が同一のトナー濃度である。それにも関わらず記録材Pの先端部P1側に形成される印字領域Sから感光ドラム2が一周回転した後に相当する該感光ドラム2の外周長Ld分だけずれた位置に現われるゴースト画像領域Sgのみが薄くなっている。このゴースト画像は、記録材Pに流れる転写電流Itが多い場合に顕著になり易い。
次に、図4(a)〜(e)に示す感光ドラム2の表面電位図を用いて図3に示すゴースト画像が発生するメカニズムについて説明する。図3に示す記録材P上の印字領域Sに対応する感光ドラム2の表面上の明部の部位bと、該印字領域Sの両隣りの非印字領域に対応する感光ドラム2の表面上の暗部の部位a,cは以下の通りである。図4(a)〜(e)に示す感光ドラム2の表面上の部位a〜c,a1〜c1,a2〜c2,a3〜c3,a4〜c4にそれぞれ対応する。
説明の都合上、画像露光のON/OFFのみの二値の画像形成条件を用いて説明する。本実施形態では、負(−)極性に帯電した感光ドラム2の表面の露光部を、負(−)極性に帯電したトナーtにより反転現像方式により現像している。
図4(a)〜(e)及び図5(a)〜(f)に示す各部位a〜a4,a2´は、感光ドラム2の表面上の同一部位を示す。同様に各部位b〜b4,b2´、各部位c〜c4,c2´もそれぞれ感光ドラム2の表面上の他の同一部位を示す。
図4(a)において、感光ドラム2の表面上の部位a,cは、該感光ドラム2の表面上の画像露光後の未露光部(暗部)である。その暗部の電位Vdは、感光ドラム2の帯電後の負(−)極性の表面電位と同じである。
感光ドラム2の表面上の部位bは、該感光ドラム2の表面上の画像露光後の露光部(明部)である。その明部の部位bの電位Veは、露光により暗部の部位a,cの電位Vdよりも正(+)極性側(図4(a)の下方向)に移動し、暗部の部位a,cの電位Vdと、明部の部位bの電位Veとの間に電位差ΔVが発生する。
現像装置4の現像スリーブ4bは、現像剤容器4a内に収容されたトナーt(現像剤)を感光ドラム2の表面上に運ぶ。この現像スリーブ4bに感光ドラム2の表面上の暗部の部位a,cの電位Vdと明部の部位bの電位Veとの間に位置する現像バイアス電位Vdcを印加する。
具体的な現像バイアス電位Vdcは、現像条件により適宜決定される。これにより感光ドラム2の表面上の暗部(未露光部)の部位a,cにトナーtが付着せず、明部(露光部)の部位bにトナーtが付着する。これにより感光ドラム2の表面上の明部の部位bに形成された静電潜像にトナーtを付着させてトナー像として現像する。
図4(b)に示すように、現像装置4による現像後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a1,c1の電位Vd1は、図4(a)に示す現像前の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a,cの電位Vdと同じである。
一方で、図4(b)に示す現像後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b1の電位Ve1は、該明部の部位b1に付着した負(−)極性に帯電したトナーtの電荷分だけ負(−)極性側(図4(b)の上方向)に移動する。
これにより図4(b)に示す現像後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a1,c1の電位Vd1と、明部の部位b1の電位Ve1との電位差ΔV1は以下の通りである。図4(a)に示す現像前の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a,cの電位Vdと、明部の部位bの電位Veとの電位差ΔVよりも明部の部位b1に付着した負(−)極性に帯電したトナーtの電荷分だけ小さくなる。
図4(b)に示すように、感光ドラム2の表面上の暗部の部位a1,c1にトナーtが存在せず、明部の部位b1にトナーtが存在する状態で転写ローラ6による転写行程に進む。転写行程では、該感光ドラム2の表面上の負(−)極性に帯電したトナーtを記録材Pに転写する。このため転写バイアス電源21により転写ローラ6に正(+)極性の転写バイアス電圧を印加する。
これにより感光ドラム2の表面上には、転写ローラ6により正(+)極性の電荷が与えられる。そして、図4(c)に示すように、転写後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b2の電位Ve2と、暗部の部位a2,c2の電位Vd2とが全体的に正(+)極性側(図4(c)の下方向)に移動する。
このとき、図4(c)に示すように、転写ローラ6により正(+)極性の電荷が与えられる。そのとき、負(−)極性に帯電したトナーtが存在する感光ドラム2の表面上の明部の部位b2の電位Ve2と、トナーtが存在しない暗部の部位a2,c2の電位Vd2との間に電位差ΔV2が生じる。
図4(c)に示す転写ローラ6により正(+)極性の電荷が与えられた転写後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a2,c2の電位Vd2と、明部の部位b2の電位Ve2との電位差ΔV2は、図4(b)に示す現像後で転写前の電位差ΔV1よりも減少する。
本実施形態では、図4(c)に示す転写後の電位差ΔV2は、約15V〜20V程度である。即ち、感光ドラム2の表面上のトナーtが存在しない暗部の部位a2,c2では、負(−)極性に帯電したトナーtが存在する明部の部位b2に比べてより多くの正(+)極性の電荷が感光ドラム2の表面上に注入されると考えられる。
この傾向は、転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itが多いほど顕著になる。感光ドラム2の表面上の暗部の部位a2,c2と、明部の部位b2とにそれぞれ注入される電荷の差は、該転写電流Itが多いほど大きくなる。
この状態で、再度、帯電ローラ3による帯電、スキャナユニット1による画像露光を行なう。そのとき、感光ドラム2の表面上の各部位a2〜c2が未露光部となって暗部の部位a3〜c3になる場合を考慮する。すると、該暗部の部位a3〜c3の相互間では図4(d)に示すように電位差ΔV3は略無い(ΔV3=0V)。
一方、感光ドラム2の表面上の各部位a2〜c2が露光部となって明部の部位a4〜c4になる場合を考慮する。すると、図4(e)に示すように、該明部の部位a4〜c4の相互間では、図4(a)〜(c)に示す電位の影響を受けて、前回の明部の部位b4と、前回の暗部の部位a4,c4との間で電位差ΔV4が生じる。この電位差ΔV4により感光ドラム2の表面上の明部の部位a4〜c4の静電潜像中に正(+)極性の電荷のパターンであるメモリゴーストが残り、図3に示すように、印字領域T内にゴースト画像領域Sgが生じる。
この現象は、図4(c)に示す転写後の感光ドラム2の表面上の負(−)極性に帯電したトナーtが存在しない暗部の部位a2,c2において転写ローラ6からより多くの正(+)極性の電荷が感光ドラム2の表面上に注入される場合に発生する。
その後の露光で生じる感光ドラム2の表面の感光層からの正(+)極性の電荷の発生量が見かけ上、負(−)極性に帯電したトナーtが存在しない暗部の部位a2,c2だけ多くなったことによると考えられる。
このような帯電、画像露光後の図4(e)に示す明部の部位a4〜c4間の電位差ΔV4は、本実施形態では、約5V〜15V程度である。このように図4(e)に示す明部の部位a4〜c4間の電位差ΔV4がシャープな段差となったときに、図3に示すように、記録材P上に形成されたトナー画像上に目視できる程度のゴースト画像が現われて画像不良となる。
このようなゴースト画像の発生を抑制するには、転写後に感光ドラム2の表面上の除電を行なえば良い。本実施形態では、図2に示す転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itが所定の閾値Isよりも大きいことを電流計23により検知する。すると、制御部24は前露光装置12を制御して感光ドラム2の表面を全面露光して除電する。
図5(a)〜(c)は、図4(a)〜(c)と同様であるため重複する説明は省略する。図5(d)に示すように、転写ローラ6による転写後に、前露光装置12により感光ドラム2の表面上を全面露光して除電する。
すると、感光ドラム2の表面上の暗部の部位a2´,c2´と、明部の部位b2´とは、約2V〜3V程度の電位差ΔV2´しかないため略電位差ΔV2´が無い(ΔV2´=0V)部位a2′〜c2′になる。
その結果、再度、帯電ローラ3による帯電、スキャナユニット1による画像露光を行って、該感光ドラム2の表面上の各部位a2′〜c2′が露光により明部になる場合を考慮する。すると、図5(f)に示すように、感光ドラム2の表面上の明部の部位a4〜c4の相互間では電位差ΔV4が生じない(ΔV4=0V)。
即ち、図4(e)に示すように、前露光装置12により感光ドラム2の表面上を露光して除電しない場合は以下の通りである。図4(c)に示す転写ローラ6による転写後に、再度、帯電ローラ3による帯電、スキャナユニット1による画像露光を行なう。すると、感光ドラム2の表面上の明部の部位a4〜c4の相互間の電位差ΔV4が5V〜15V程度になる。
このため図4(e)に示すように、前露光装置12により感光ドラム2の表面上を露光して除電しない場合は、図4(c)に示す転写後の履歴が次の画像露光後にメモリゴーストとして現われていた。
これに対して、本実施形態では、図5(c)に示す転写後に、図5(d)に示すように、前露光装置12により感光ドラム2の表面上を露光して除電する。これにより図5(c)に示す転写後の感光ドラム2の表面上の電位の履歴が図5(f)に示すように、次の画像露光後にメモリゴーストとして現われていない。
図5(d)に示す前露光装置12による除電後に、再度、帯電ローラ3による帯電、スキャナユニット1による画像露光を行なう。これにより感光ドラム2の表面上の各部位a2′〜c2′が図5(e)に示すように、未露光の暗部となる場合を考慮する。すると、その暗部の部位a3〜c3の相互間には電位差ΔV3が生じない(ΔV3=0V)。
しかも図5(a),(b)に示す前回のときの現像前の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a,cの電位Vdよりも絶対値で約20V程度低めになる。
これにより前露光装置12の露光により転写後の感光ドラム2の表面上を除電してメモリゴーストを十分に減衰させることができる。更に、感光ドラム2の表面の感光層内の電荷減衰の基となるキャリアを該感光ドラム2の表面上に光を十分に与える。これにより該感光ドラム2の表面の感光層内の不均一な光減衰特性を該感光ドラム2の表面の全面でキャリアを生成し、全面ゴーストのような状態にして解消していると考えられる。
<除電手段の除電量制御>
次に、図6を用いて本実施形態の除電手段となる前露光装置12の光量(除電量)制御について説明する。本実施形態では、先ず、画像形成装置100の印刷動作を開始すると、所定のタイミングで前露光装置12により感光ドラム2の表面上の全面露光を開始する。
次に、先行する記録材Pの先端部P1の余白部が転写ニップ部Ntを通過する。そのタイミングで、図2に示す転写バイアス電源21により転写ローラ6に所定の転写バイアス電圧Vtを印加する。そのときの該転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itを検知手段となる電流計23により検知する。
この電流計23により検知した転写電流Itが予め設定した閾値Is未満の場合は以下の通りである。感光ドラム2の表面上における記録材Pの先端部P1の位置に対応する部位が前露光装置12による露光位置M(除電領域)に到達するタイミングで該前露光装置12から出射する除電光量をOFFする。
一方、電流計23により検知した転写電流Itが予め設定した閾値Is以上の場合は、前露光装置12による感光ドラム2の表面上の全面露光を継続する。
そして、再び、先行する記録材Pが転写ニップ部Ntを通過するときの転写電流Itの検知結果によらず、後続する記録材Pの先端部P1の余白部が転写ニップ部Ntを通過する度に電流計23により転写電流Itを検知し続ける。その検知結果に応じて、前述のタイミングで前露光装置12から出射する除電光量のON/OFFを切り替える。
除電手段となる前露光装置12は、記録材Pの先端部P1の余白部(非印字領域)が転写領域となる転写ニップ部Ntを通過するタイミングで検知手段となる電流計23により転写電流Itを検知する。その検知した転写電流Itに基づいて、その検知時に転写領域となる転写ニップ部Ntに位置していた感光ドラム2の表面上の領域が前露光装置12による除電領域となる露光位置Mに到達するタイミングを考慮する。そのタイミングで前露光装置12から出射する除電光量(除電量)を変更する。
次に、最後の記録材Pの後端部P2が転写ニップ部Ntを通過したタイミングで前露光装置12から出射する除電光量をONに復帰し、所定時間が経過した後に該前露光装置12から出射する除電光量をOFFして印刷動作を終了する。
図7に示すように、本実施形態では、前露光装置12から出射する除電光量をON/OFFする。そのときの前露光装置12のON/OFFの切り替えを行なう転写電流Itの閾値Isは、20μAに設定した。
電流計23により検知した転写電流Itが閾値Is(20μA)未満の場合は、図5(c)に示す転写後の電位差ΔV2が10Vよりも小さくなる。これにより前露光装置12から出射する除電光量をOFFにしても図3に示すゴースト画像は殆ど目立たないレベルである。
一方、電流計23により検知した転写電流Itが閾値Is(20μA)以上の場合は、図5(c)に示す転写後の電位差ΔV2が10V以上となる。これにより前露光装置12から出射する除電光量をONすることで図3に示すゴースト画像の発生を抑制している。
尚、前述した電流計23による転写電流Itの検知は以下の通りである。該電流計23により検知した転写電流Itの検知結果が記録材P上のトナーtの印字率に左右されないように転写ニップ部Ntに記録材P上のトナーtが存在しない余白領域が進入した状態で実施した方が良い。
ただし、転写ニップ部Ntを記録材Pが通過中でも前露光装置12から出射する除電光量の変更ができるようにする。その場合は、記録材P上の画像領域や該記録材Pが転写ニップ部Ntに存在しない記録材P間において電流計23により検知した転写電流Itの検知結果を前露光装置12から出射する除電光量にフィードバックして制御しても良い。
その場合には、記録材P上の画像領域や非画像領域、或いは、記録材P間の検知区間や記録材P上のトナーtの印字率情報に応じて前露光装置12から出射する除電光量にフィードバックする転写電流Itの閾値Isを変更しても良い。
例えば、記録材P上のトナーtの印字率が100%(ベタ画像)の場合は、より電気抵抗が小さい記録材Pの端部の余白部に転写電流Itが集中し易い。
また、記録材P上のトナーtの印字率が100%未満の場合でも長手方向に印字領域と非印字領域とが混在する場合は、より電気抵抗が小さい記録材P上のトナーtの非印字領域に転写電流Itが集中し易い。
つまり、記録材P上のトナーtの印字率が高くなるほど転写電流Itの局所的な集中が起こり易い傾向にある。この局所的な転写電流Itの集中によるメモリゴーストを抑制するには、前述したように、20μAに設定した転写電流Itの閾値Isを記録材P上のトナーtの印字率情報に応じて20μA未満に設定するのが好ましい。
また、制御部24により制御する前露光装置12から出射する除電光量は、ON/OFFの二段階以外にも電流計23により検知した転写電流Itに応じて中間の除電光量を設定しても良い。つまり、転写電流Itと複数の閾値を比較し、除電量(除電光量)を複数段階で切り換えても良い。このように、上述した二段階の切り換えと同様に転写電流Itが小さい程、除電量(除電光量)を小さく(除電量=0を含む)設定すれば、除電量切り換えの段階数は適宜設定すれば良い。
また、感光ドラム2の表面電位の変動を抑制するために前露光装置12から出射する除電光量の切り替えタイミングに合わせて帯電ローラ3に印加する帯電バイアス電圧を補正しても良い。
尚、本実施形態では、図2に示すように、モノクロ(単色)の画像形成装置100に適用した場合の一例について説明した。他に、中間転写ベルトを使用したカラーの画像形成装置100にも適用出来る。
本実施形態では、転写後の前露光装置12から出射する除電光量は、電流計23により検知した印刷中の転写電流Itに応じて制御する。該転写電流Itが少なくなるほど転写後の前露光装置12から出射する除電光量を抑制する。
これにより前露光装置12により感光ドラム2の表面上の全面露光を常に継続している場合に比べて、転写電流Itの過多によるゴースト画像を防止しつつ該感光ドラム2の表面に設けられた感光層の光疲労の促進を抑えることができる。
また、前露光装置12から出射する除電光量を制御するために新たに部品を設置する必要も無い。
次に、図8〜図11を用いて本発明に係る画像形成装置の第2実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号、或いは符号が異なっても同一の部材名を付して説明を省略する。
本実施形態では、前露光装置12から出射する除電光量の制御において、先行する記録材Pと、その直後に後続する記録材Pとの間で転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itに応じて前露光装置12から出射する除電光量を変更する。他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため重複する説明は省略する。
図8は、記録材P上に形成される黒斑点画像からなる画像不良の一例を示す。図8に示す記録材P上の印字領域Uは、該印字領域Uの全面が同一のトナー濃度で一様なハーフトーン画像により形成されている。
図8に示す記録材P上の印字領域Uにおいて、図8の矢印h方向に搬送される該記録材Pの先端部P1側に黒斑点画像領域U1が形成されている。黒斑点画像は、先行する記録材Pの後端部P2から感光ドラム2の表面の一周分の外周長Ld以降に、先行する記録材Pの後端部P2と、その直後に後続する記録材Pの先端部P1との間隔L1と同じ長さでランダムに発生する。
図8に示す記録材P上に形成された黒斑点画像は、転写ローラ6の表面の凹凸形状に倣って発生する。これは、転写バイアス電源21から転写ローラ6に印加された転写バイアス電圧により該転写ローラ6の表面から感光ドラム2の表面に向かう転写電流Itの放電ムラに起因する。
図9(a)に示すように、本実施形態の転写ローラ6は、導電性の芯金6aの外周にゴムを発泡させたスポンジタイプの弾性層6bが設けられている。該弾性層6bの外周面6b1には、図9(b)に示すように、数百ミクロン(μm)単位の微小な空隙Kがランダムに存在する。
転写ローラ6の弾性層6bの外周面6b1の感光ドラム2の表面と圧接した転写ニップ部Ntにおいて以下の通りである。該転写ローラ6の弾性層6bの外周面6b1の空隙Kが存在する箇所と、該空隙Kが存在しない箇所Jとでは、転写電流Itの放電量に差異が生じる。即ち、転写バイアス電源21から転写ローラ6に印加された転写バイアス電圧により該転写ローラ6の表面から感光ドラム2の表面に向かう転写電流Itの放電量に差異が生じる。
転写ローラ6の弾性層6bの外周面6b1の空隙Kが存在する箇所の方が感光ドラム2の表面とのギャップ間で生じる放電による電荷の移動量が多い。このため感光ドラム2の表面電位が図10(a)に示す転写後の正(+)極性側(図10(a)の下方向)に大きく変化し易い。
尚、図10(a)及び図11(a)は、図4(c)及び図5(c)に示したと同様である。転写後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a5,c5と、転写後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b5とを示す。更に、転写後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b5の電位Ve5と、暗部の部位a5,c5の電位Vd5との電位差ΔV5を示す。
尚、図10(a),(b)及び図11(a)〜(c)に示す各部位a5,a5´,a6,a6´は、感光ドラム2の表面上の同一部位を示す。同様に各部位b5,b5´,b6,b6´、各部位c5,c5´,c6,c6´は、感光ドラム2の表面上の同一部位を示す。
図10(a)の電位図で示すように、転写ローラ6の弾性層6bの外周面6b1の空隙Kが存在する箇所と、該空隙Kが存在しない箇所Jとの放電量の差が転写後の感光ドラム2の表面電位差となる。この局所的な電位ムラが帯電ローラ3による帯電やスキャナユニット1による露光後にも残存する。
図10(b)は、露光後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a6,c6と、露光後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b6と、露光後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b6の電位Ve6と、暗部の部位a6,c6の電位Vd6との電位差ΔV6を示す。
これにより図8に示すように、先行する記録材Pの後端部P2が転写ニップ部Ntを通過してから該感光ドラム2が一周回転した後に、その直後に後続する記録材Pの先端部P1側に黒い斑点状の画像となって転写される。
尚、図8に示すように、記録材P上に形成される黒斑点画像は以下の通りである。先行する記録材Pの後端部P2と、その直後に後続する記録材Pの先端部P1との間で転写ローラ6から感光ドラム2に多量の転写電流Itが流れるほど発生し易い。多量の転写電流Itが流れると、図10(a)に示すように、転写ローラ6の弾性層6bの外周面6b1の空隙Kに起因する転写時の正(+)極性側(図10(a)の下方向)への電位変化が大きくなる。これにより図8に示す記録材P上に形成される黒斑点画像も顕著に現われ易い。
そこで、前露光装置12により感光ドラム2の表面を除電する制御において、従来では前露光装置12を常時ONしていたのに対して、本実施形態では、通常は前露光装置12をOFF、或いは、前露光装置12から出射する除電光量を弱めに制御する。
そして、先行する記録材Pの後端部P2と、その直後に後続する記録材Pの先端部P1との間で電流計23により検知した転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itが予め設定された閾値Isよりも大きいことを検知する。その場合は、制御部24は、感光ドラム2の表面上における先行する記録材Pの後端部P2と、その直後に後続する記録材Pの先端部P1との間の検知位置が前露光装置12による露光位置Mに到達するまでのタイミングを考慮する。そして、そのタイミングで前露光装置12から出射する除電光量をOFFからONに切り替える。或いは、前露光装置12から出射する除電光量を通常時に比べて大きく設定する。
即ち、本実施形態の除電手段となる前露光装置12は、記録材Pが転写領域となる転写ニップ部Ntに存在しないタイミングで検知手段となる電流計23により検知した転写電流Itに基づいて以下の通りである。その検知時に転写ニップ部Ntに位置していた感光ドラム2の表面上(像担持体上)の領域が前露光装置12による除電領域となる露光位置Mに到達するタイミングを考慮する。そのタイミングで前露光装置12から出射する除電光量(除電量)を変更する。
その結果、図11(b),(c)に示すように、転写後に生じた感光ドラム2の表面上の電位ムラは、前露光装置12による除電により平滑化され、図8に示す黒い斑点状の画像も発生しなくなる。
尚、図11(b)は、図5(d)に示したと同様である。除電後の感光ドラム2の表面上の暗部の部位a5´,c5´と、除電後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b5´と、除電後の感光ドラム2の表面上の明部の部位b5´の電位Ve5´とを示す。更に、暗部の部位a5´,c5´の電位Vd5´との電位差ΔV5´(=0V)を示す。
また、図11(c)は、図5(e),(f)に示したと同様である。再度、帯電、画像露光を行ったときの感光ドラム2の表面上の部位a6´〜c6´と、再度、帯電、画像露光を行ったときの感光ドラム2の表面上の部位a6´〜c6´の相互間の電位差ΔV6´(=0V)を示す。
本実施形態のように、先行する記録材Pと、その直後に後続する記録材Pとの間で図2に示す電流計23により検知した転写電流Itに応じて前露光装置12から出射する除電光量を制御する。これにより前露光装置12による感光ドラム2の表面上の全面露光を常に継続していた比較例と比べて以下の通りである。
先行する記録材Pの後端部P2と、その直後に後続する記録材Pの先端部P1との間で転写ローラ6から感光ドラム2に流れる転写電流Itにより後続する記録材Pの先端部P1側に形成される黒斑点画像を抑制する。更に、感光ドラム2の表面に設けられる感光層の光疲労の促進を抑えることができる。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。