しかしながら、上記従来技術を含めて既存の技術では以下の問題が懸念される。すなわち、下面に下地金物が取り付けられた状態の梁に対して耐火被覆を施し、その後に下地金物に対して界壁下地フレーム(上ランナ)を取り付ける構成では、耐火被覆層の存在が支障となり、界壁下地フレームの高さ位置の調整等の作業が困難になることが考えられる。また、界壁部の施工作業中に下地金物の位置ずれが生じた場合に、その修正に手間がかかるといった不都合が生じる。特許文献1に記載の技術のように下地金物の下面が耐火被覆されていない場合には、その下面を用いることで界壁下地フレームの固定が容易になると考えられるものの、下地金物の下面以外が耐火被覆されているために梁の耐火被覆後に下地金物の高さ位置を変更することができず、高さ位置の調整を要する場合にその調整作業が困難となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、界壁部の施工作業を容易かつ適正に実施することができる建物の界壁構造を提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
第1の発明は、
形鋼よりなり周囲が所定厚さの耐火材(13)により被覆された耐火梁(11)を備え、前記耐火梁に沿って、その耐火梁の下方に界壁部(30)が設けられる建物の界壁構造であって、
前記耐火梁の下フランジ(11c)に固定される吊り金具(21,56)と、
前記吊り金具の下端部に固定され、前記界壁部の下地となる界壁下地フレーム(31,34)を支持する支持部材(24)と、
を備え、
前記吊り金具は、前記下フランジの下側において前記耐火材よりも下方に突出しており、その突出部分であって前記耐火材から離れた位置に固定具(27,28)により前記支持部材が固定されていることを特徴とする。
上記構成では、耐火梁の下フランジに吊り金具が固定されるとともに、その吊り金具の下端部に、界壁下地フレームを支持する支持部材が固定されているため、その支持部材を用いての界壁部の構築が可能となる。また、耐火梁の下フランジに固定される吊り金具は、下フランジの下側において耐火材よりも下方に突出しており、その突出部分であって耐火材から離れた位置に固定具により支持部材が固定されるものであるため、耐火梁に対して耐火材が既に先付けされている状況であっても、耐火材に干渉することなく支持部材の固定作業を行うことができる。この場合、吊り金具において耐火材よりも下方に突出している突出部分を用いて、支持部材の高さ位置の調整等を容易に実施できる。その結果、界壁部の施工作業を容易かつ適正に実施することができる。
第2の発明は、前記吊り金具は、前記耐火梁の長手方向に所定間隔で複数固定されており、前記支持部材は、前記耐火梁の長手方向に延びる長尺材(26)を有し、その長尺材が、前記複数の吊り金具により吊り下げ支持されていることを特徴とする。
上記構成では、耐火梁の長手方向に沿って長尺材が設けられ、その長尺材により界壁下地フレームが支持されることとなる。この場合、耐火梁に沿うようにして界壁部を好適に構築できる。
第3の発明は、前記耐火梁には前記下フランジの幅方向に異なる位置に前記吊り金具として第1吊り金具及び第2吊り金具がそれぞれ固定されており、前記界壁下地フレームは、前記界壁部の壁厚み方向に並べて配置される第1フレームと第2フレームとを含み、前記第1吊り金具における前記突出部分に、前記支持部材として前記第1フレームを支持する第1支持部材が固定されるとともに、前記第2吊り金具における前記突出部分に、前記支持部材として前記第2フレームを支持する第2支持部材が固定されていることを特徴とする。
耐火梁の下フランジにおいて幅方向に異なる位置にそれぞれ吊り金具(第1,第2吊り金具)が固定され、それら各々に支持部材(第1,第2支持部材)が固定されるとともに、支持部材ごとに界壁下地フレーム(第1,第2フレーム)が支持される構成とした。この場合、界壁部の下地を壁厚み方向に二重構造とすることで、界壁部の厚みを確保して遮音性の向上を図ることができる。また、厚み方向左右の界壁下地フレームごとに高さ位置の調整が可能となる。そのため、界壁部の厚み方向中心位置を境にして左右で床面材(下階側の床面材)の上面高さ位置が相違していても、それに好適に対処することができる。
第4の発明は、前記下フランジの下側の前記耐火材よりも下方において、前記第1吊り金具及び前記第2吊り金具の間となる位置に、前記耐火梁の長手方向に沿って断熱材(29)が設けられていることを特徴とする。
耐火梁の下フランジの下側において耐火材よりも下方には、下フランジの幅方向に離れて第1吊り金具及び第2吊り金具がそれぞれ突出しており、その間に断熱材が配置される。この場合、界壁部において壁厚み方向の中心付近に断熱材を保持することができ、耐火梁周りの耐火材とその下方の界壁下地フレームとの間において断熱性能を好適に付与することができる。
第5の発明は、前記界壁部において耐火性のある壁面材(37)が前記界壁下地フレームよりも上方に延び、その壁面材と前記下フランジの下側の前記耐火材とで連続的に耐火層が形成されており、前記支持部材が前記壁面材の内側面に当接し、その状態で前記壁面材が前記支持部材により壁内側から支持されていることを特徴とする。
界壁部において壁面材が界壁下地フレームよりも上方に延び、その壁面材と下フランジの下側の耐火材とで連続的に耐火層が形成されているため、界壁部における耐火性能を高めることができる。また、界壁部において壁面材を壁内側から支持部材により支持する構成にしたため、界壁下地フレームよりも上方の延出部を含めて壁面材を安定状態で支持することができる。
第6の発明は、前記耐火梁は、建物の上階部の上階床梁であり、その上階床梁の上方に上階部の界壁部(53)が設けられる建物に適用され、前記耐火梁には、上フランジ(11b)の上面にも前記耐火材が被覆されており、前記吊り金具は、前記上フランジの上方において前記耐火材よりも上方に突出しており、その突出部分であって前記耐火材から離れた位置に、上階部の界壁下地フレーム(54a,54b)を支持する支持部材(61)が固定具により固定されていることを特徴とする。
上記構成では、耐火梁(上階床梁)を上下に貫通するように吊り金具が設けられ、吊り金具の下端側で下階部の界壁支持用の界壁下地フレームが支持されるとともに、上端側で上階部の界壁支持用の界壁下地フレームが支持されるようになっている。この場合、下階界壁部の支持と上階界壁部の支持とで1つの吊り金具を共用でき、構成の簡素化を図ることができる。
また、吊り金具の上端部は上フランジの上方において耐火材よりも上方に突出しており、その突出部分であって耐火材から離れた位置に固定具により支持部材が固定されるため、吊り金具の下端部と同様に、耐火梁に対して耐火材が既に先付けされている状況であっても、耐火材に干渉することなく支持部材の固定作業を行うことができる。
第7の発明は、集合住宅の上階部において前記界壁部を挟んで二住戸の各玄関部が設けられており、前記玄関部の床構造として、前記上階床梁である前記耐火梁の両側に分断された状態で設けられる上階用の床面材(12)と、その上面に設けられる土間部(52)とを有しており、前記耐火梁の上フランジの上面の前記耐火材は、前記分断された床面材に挟まれ、かつ当該床面材の側端面に接触した状態で設けられていることを特徴とする。
耐火梁(上階床梁)を挟んで両側に分断された状態で上階用の床面材が設けられる構成では、上階界壁部を構築する場合に界壁下地フレームの下端を床面材で支えることが不可となる。この点、吊り金具の上端側で上階部の界壁支持用の界壁下地フレームが支持されることで、床面材が分断された構成であっても上階部の界壁部を好適に施工できる。
また、耐火梁の上フランジの上面の耐火材が、分断された床面材に挟まれ、かつ床面材の側端面に接触した状態で設けられているため、床面材及び耐火材により水平方向に連続する耐火層を構築できる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、複数の住戸からなる集合住宅として具体化した建物において、住戸間に存在する界壁部の構成について詳しく説明する。建物は、鉄骨軸組工法により構築される多層階建物であり、形鋼を用いて建物の躯体が構成されている。
図1は、建物10において界壁部30の納まりを示す縦断面図である。図1に示すように、建物10は、上階用の床梁11を有しており、床梁11により、耐火材質であるALCからなる床面材12が支持されている。床梁11はH形鋼からなる。床梁11に沿って界壁部30が設けられている。図1においては紙面直交方向に界壁部30が延びるものとなっている。
床梁11には、その周囲を囲むようにして所定厚さの耐火材13が被覆されている。床梁11が耐火梁に相当する。耐火材13は、例えばシート状の耐熱ロックウールにより構成されており、横断面の一端側と他端側とがそれぞれ床面材12の下面側に固定され、その間の中間部分にて床梁11を囲むようにして設けられている。
また、下階天井の納まりとして、躯体(床梁等)に支持された状態で複数の天井吊り具15が取り付けられ、その天井吊り具15により野縁受け16が支持されている。野縁受け16は、床梁11に平行になるとともに床梁11に直交する向きに延びるよう設けられている。野縁受け16には支持具としてのクリップ17により野縁18が支持されている。野縁18は野縁受け16に直交するように設けられている。そして、野縁18の下面に石膏ボードからなる天井面材19が固定されている。
次に、界壁部30の支持構造を詳細に説明する。床梁11は、ウェブ11aと上フランジ11bと下フランジ11cとを有しており、そのうち下フランジ11cに吊り金具としての吊りボルト21が固定されている。この場合、下フランジ11cには、ウェブ11aを挟んで両側にそれぞれ貫通孔が形成されており、その貫通孔に挿通させた状態で吊りボルト21が上下のナット22,23により固定されている(図2参照)。吊りボルト21は、下フランジ11cにおいて幅方向に異なる位置にそれぞれ固定されており、図の左右の吊りボルト21が第1吊りボルト、第2吊りボルトに相当する。吊りボルト21は、丸鋼の長さ方向の全てにねじが切られた全ねじボルトであり、そのねじによって固定相手の固定位置(固定高さ)の調整が可能となっている。吊りボルト21は、床梁11の長手方向に所定間隔で複数固定されている。
吊りボルト21は、その上端部が下フランジ11cに固定されるとともに、下端部が下フランジ11cの下側において耐火材13よりも下方に突出する突出部分となっている。そして、吊りボルト21において耐火材13よりも下方の突出部分に、界壁下地フレームを支持する支持部材24が固定されている。
支持部材24の構成を図2により詳しく説明する。図2に示すように、支持部材24は、吊りボルト21の下端部に固定されるブラケット25と、床梁11の長手方向に延び複数のブラケット25に対して固定される通し材26とを有している。
ブラケット25は断面L字状をなし、上板部に吊りボルト21が挿通状態で固定されるとともに、側板部にビス等の固定具により通し材26が固定されている。通し材26は角形鋼よりなる長尺材である。ブラケット25は、上板部の貫通孔(図示略)に吊りボルト21を挿通させた状態で、上下のナット27,28により吊りボルト21に固定されている。この場合、ナット27,28の回動により、吊りボルト21の長手方向におけるブラケット25の位置が調整可能であり、ひいては、支持部材24の高さ位置の調整が可能となっている。
床梁11の下フランジ11cにおいて、ウェブ11aを挟んで両側の吊りボルト21にはそれぞれ支持部材24が固定されており、図1において左右の通し材26が隣合うように横並びで設けられている。
ここで特に、図1に示すように、吊りボルト21において耐火材13よりも下方に突出する突出部分に対して支持部材24が固定されている。また、固定具としてのナット27,28を含め支持部材24の全体が耐火材13から下方に離れている。そのため、吊りボルト21に対する支持部材24の固定作業を容易に実施できる。また、ナット27,28による支持部材24の高さ調整作業も同様に容易に実施できる。
ウェブ11aを挟んで両側の吊りボルト21の間には、床梁11の長手方向に延びるようにして断熱材29が取り付けられている。断熱材29は、図の左右の吊りボルト21により挟まれた状態で保持されている。
そして、支持部材24の通し材26を上端側の支持部、下階側の床面材14を下端側の支持部として界壁部30が取り付けられている。なお、下階側の床面材14は、界壁部30の厚み方向中心位置を見切り位置として左右個別に設けられていることもある。
界壁部30は、ランナ及びスタッドからなる界壁下地フレームが壁厚み方向に2列に設けられた構造を有している。詳しくは、界壁部30は、一方の界壁下地フレーム31(第1フレーム)として上ランナ32a、下ランナ32b及びスタッド33を有し、他方の界壁下地フレーム34(第2フレーム)として上ランナ35a、下ランナ35b及びスタッド36を有している。各下地フレームの上端側について特に言うと、上ランナ32a,35aはそれぞれ、通し材26の下面に当接させた状態で、その通し材26にビス等の固定具により固定されている。上記の各界壁下地フレーム31,34は、壁厚み方向の中央部にて互いに離間するように配置されており、各々外側に、耐火性を有する壁面材37(例えば石膏ボード)が固定されている。
壁面材37は、その上端部において耐火材13に対して連続する耐火層を形成するものとなっている。この場合、壁面材37の上端面と耐火材13の下面との間にはこれら両者間の境界部における耐火性能を強化するためのシール材38が充填されている。また、壁面材37の下端面と床面材14と間の隙間部分にはやはり境界部の耐火性能を強化するためのシール材39が充填されている。上記構成によれば、上階側の床面材12から下階側の床面材14までの間において連続性が途切れることなく耐火層が構築されている。
界壁部30の内部には、界壁下地フレーム31,34に固定された状態で断熱材40が取り付けられており、図3には壁内部に配置された断熱材40が示されている。断熱材40は、例えばグラスウールよりなり、断熱性能、遮音性能、耐火性能を有する。ここで、壁内部においては、2つ界壁下地フレーム31,34の各スタッド33,36が壁面方向において互いに相違する位置に、すなわち壁面方向に見て千鳥状に配置されており、その各スタッド33,36に対して断熱材40が固定されている。断熱材40は、壁厚み方向において各スタッド33,36の間となる位置に設けられている。
壁厚み方向に見て各スタッド33,36の間の離間距離は、断熱材40の厚み(自然状態での厚み)よりも小さい。そのため、仮に各スタッド33,36が壁面方向において同一の位置に並べて配置される場合には、断熱材40が壁厚み方向に過剰に押しつぶされて断熱性能の低下が懸念される。これに対して、各スタッド33,36が壁面方向において互いに相違する位置に千鳥状に配置されているため、断熱材40が壁厚み方向に過剰に押しつぶされることが抑制されている。
建物10の施工時における界壁部30の施工手順を説明する。
床梁11等の建物10の躯体が施工された状態で、床梁11の下フランジ11cに吊りボルト21を取り付ける。その後、耐火梁としての床梁11に耐火材13をまき付ける。このとき、例えば耐火材13に切れ目を入れておき、その切れ目に吊りボルト21を通しながら耐火材13をまき付けるとよい。耐火材13のまき付け状態では、吊りボルト21の一部が耐火材13よりも下方に突出した状態となる。
その後、吊りボルト21の下端部に支持部材24を固定する作業を実施する。その固定作業としては、まずは各吊りボルト21の下端部に、ナット27,28によりブラケット25を固定するとともに、床梁11の長手方向に沿うようにして複数のブラケット25に対してビス等により通し材26を固定する。このとき、ナット27,28によるブラケット25の固定作業も含めて、支持部材24の固定作業は全て耐火材13よりも下方で行われるため、その固定作業(高さ調整作業を含む)を容易に実施できる。なお、先に通し材26において所定間隔で複数のブラケット25を固定しておき、その後、ブラケット25と通し材26との一体物を複数の吊りボルト21に対して固定することも可能である。
また、耐火材13よりも下方において、フランジ幅方向の2つの吊りボルト21の間に挟んだ状態で、床梁11の長手方向に沿って断熱材29を配置する。
その後、界壁部30を構築する。この場合、界壁下地フレーム31,34の上ランナ32a,35aを通し材26に対してビス等により固定し、さらに下ランナ32b,35bやスタッド33,36、断熱材40の施工を行う。そして、界壁下地フレーム31,34に対する壁面材37の固定やシール材38,39の充填の作業を行う。こうした一連の作業により、図1に示す界壁構造が構築される。なお、界壁部30が構築された後に、その左右両側の天井部分が構築される。
また、集合住宅の上階側の玄関付近においては、土間面を形成するべく上下階の境界線(スタッキングラインSL)に対して床面材12を下げて配置することがあり、かかる場合における界壁構造について説明する。図4は、建物10において上階玄関付近の界壁部30の納まりを示す縦断面図である。
図4において、上階用の床梁11には支持金具51が固定され、その支持金具51により床面材12が支持されている。この場合、図1の構成とは異なり、床面材12は、床梁11を挟んで両側に分断されるようにして設けられている。また、床面材12は、床梁11の上面をスタッキングラインSLとする場合に、そのスタッキングラインSLを上下に横切る高さ位置に設けられている。そして、床面材12の上面側に、モルタル等よりなる土間部52が形成されている。
また、床梁11に対しては、横断面の一端側と他端側とがそれぞれ床面材12の下面側に固定され、その間の中間部分にて床梁11を囲むようにして、耐火材13が設けられている。
上階部には、床梁11の上方に界壁部53が設けられている。界壁部53は、下階側の界壁部30と同様に、ランナ及びスタッドからなる界壁下地フレーム54a,54bと、その外側に固定される壁面材55とを有している。壁面材55は、例えば耐火性を有する石膏ボードである。界壁部53においても、界壁下地フレーム54a,54bが壁厚み方向に2列に設けられた構造となっている。界壁部53を挟んで対峙する二住戸の間においては、それぞれの土間部52の間に隙間があり、その隙間内において床面材12の上面付近まで壁面材55が入り込む状態となっている。壁面材55は、その厚み方向において一部が床面材12からはみ出るように設けられている。
また、図4の構成では、床梁11の上フランジ11b及び下フランジ11cを上下に貫通するようにして、吊り金具としての吊りボルト56が固定され、吊りボルト56の上端部及び下端部に、界壁支持用の支持部材が固定されている。その構成について以下説明する。
床梁11のフランジ11b,11cを上下に貫通するようにして吊りボルト56を設ける場合、フランジ11b,11cの間にはナットを介在させることができないため、吊りボルト56は、床梁11に対して、上フランジ11bの上面側のナット57と下フランジ11cの下面側のナット58とにより固定されている。この場合、図1の構成と同様に、吊りボルト56の下端部が下フランジ11cの下側において耐火材13よりも下方に突出しており、その突出部分に、下階界壁支持用の支持部材24が固定されている。
また、吊りボルト56の上端部が上フランジ11bの上方に突出しており、その突出部分に、上階界壁支持用の支持部材61が固定されている。支持部材61は、基本構成が支持部材24と同様であり、吊りボルト56の上端部に固定されるブラケット62と、床梁11の長手方向に延び複数のブラケット62に対して固定される通し材63とを有している。ブラケット62は断面L字状をなし、下板部に吊りボルト56が挿通状態で固定されるとともに、側板部にビス等の固定具により通し材63が固定されている。通し材63は角形鋼よりなる長尺材である。ブラケット62は、下板部の貫通孔(図示略)に吊りボルト56を挿通させた状態で、上下のナットにより吊りボルト56に固定されている。この場合、ナットの回動により、吊りボルト56の長手方向におけるブラケット62の位置が調整可能であり、ひいては、支持部材61の高さ位置の調整が可能となっている。
床梁11の上フランジ11bにおいて、ウェブ11aを挟んで両側の吊りボルト56にはそれぞれ支持部材61が固定されており、図4において左右の通し材63が隣合うように横並びで設けられている。
また特に、床梁11の上フランジ11bの高さ位置は、床面材12の上面よりも低い位置にあり、床梁11の上フランジ11bの上面には、両側の床面材12の側端面の間に耐火材65が取り付けられている。耐火材65は、耐火材13と同様に、例えばシート状の耐熱ロックウールにより構成されている。この場合、耐火材65は、少なくとも床梁11の上面と床面材12の上面との高さ位置の差分と同じ厚み寸法を有しており、耐火層として、上階側の界壁部53の壁面材55と耐火材65とが連続する構成となっている。
吊りボルト56の上端部は、上フランジ11bの上方において耐火材65よりも上方に突出する突出部分となっている。そして、吊りボルト56において耐火材65よりも上方の突出部分であって耐火材65から離れた位置に、上階側の界壁下地フレーム54a,54bを支持する支持部材61がナットにより固定されている。この場合、吊りボルト56に対する支持部材61の固定作業を容易に実施できる。また、吊りボルト56の上端部において、ナットによる支持部材61の高さ調整作業も同様に容易に実施できる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
上記構成では、床梁11の下フランジ11cに吊りボルト21が固定されるとともに、その吊りボルト21の下端部に、界壁下地フレーム31,34を支持する支持部材24が固定されているため、その支持部材24を用いての界壁部30の構築が可能となる。また、吊りボルト21は、床梁11の下フランジ11cの下側において耐火材13よりも下方に突出しており、その突出部分であって耐火材13から離れた位置に固定具により支持部材24が固定されるものであるため、床梁11に対して耐火材13が既に先付けされている状況であっても、耐火材13に干渉することなく支持部材24の固定作業を行うことができる。この場合、吊りボルト21において耐火材13よりも下方に突出している突出部分を用いて、支持部材24の高さ位置の調整等を容易に実施できる。その結果、界壁部30の施工作業を容易かつ適正に実施することができる。
床梁11の長手方向に所定間隔で吊りボルト21を複数固定するとともに、その複数の吊りボルト21により支持部材24としての通し材26を吊り下げ支持する構成とした。この場合、通し材26により界壁下地フレーム31,34を支持することで、床梁11に沿うようにして界壁部30を好適に構築できる。
床梁11の下フランジ11cにおいて幅方向に異なる位置にそれぞれ吊りボルト21が固定され、それら各々に支持部材24が固定されるとともに、支持部材24ごとに界壁下地フレーム31,34が支持される構成とした。この場合、界壁部30の下地を壁厚み方向に二重構造とすることで、界壁部30の厚みを確保して遮音性の向上を図ることができる。また、厚み方向左右の界壁下地フレーム31,34ごとに高さ位置の調整が可能となる。そのため、界壁部30の厚み方向中心位置を境にして左右で下階側の床面材14の上面高さ位置が相違していても、それに好適に対処することができる。
床梁11の下フランジ11cの下側において耐火材13よりも下方には、左右の吊りボルト21の間に断熱材29が配置されている。この場合、界壁部30において壁厚み方向の中心付近に断熱材29を保持することができ、床梁11周りの耐火材13とその下方の界壁下地フレーム31,34との間において断熱性能を好適に付与することができる。
上階玄関部の構成として、床梁11を上下に貫通するように吊りボルト56を設け、吊りボルト56の下端側で下階部の界壁下地フレーム31,34を支持するとともに、上端側で上階部の界壁下地フレーム54a,54bを支持する構成とした。この場合、下階界壁部30の支持と上階界壁部53の支持とで1つの吊りボルト56を共用でき、構成の簡素化を図ることができる。
また、吊りボルト56の上端部は上フランジ11bの上方において耐火材65よりも上方に突出しており、その突出部分であって耐火材65から離れた位置に固定具により支持部材61が固定されるため、吊りボルト56の下端部と同様に、床梁11に対して耐火材65が既に先付けされている状況であっても、耐火材65に干渉することなく支持部材61の固定作業を行うことができる。
集合住宅の上階部の玄関床部において、上階の床梁11を挟んで両側に分断された状態で上階用の床面材12が設けられる構成では、上階界壁部53を構築する場合に界壁下地フレーム54a,54bの下端を床面材12で支えることが不可となる。この点、吊りボルト56の上端側で上階部の界壁下地フレーム54a,54bが支持されることで、床面材12が分断された構成であっても上階部の界壁部53を好適に施工できる。
また、床梁11の上フランジ11bの上面の耐火材65が、分断された床面材12に挟まれ、かつ床面材12の側端面に接触した状態で設けられているため、床面材12及び耐火材65により水平方向に連続する耐火層を構築できる。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・支持部材24のブラケット25により、壁面材37を壁内側から支持する構成としてもよい。具体的には、図5に示すように、界壁部30において壁面材37が界壁下地フレーム31,34よりも上方に延びており、その壁面材37と耐火材13とで連続的に耐火層が形成されている。そして、支持部材24のブラケット25が壁面材37の内側面に当接し、その状態で壁面材37がブラケット25により壁内側から支持されている。例えば、ビス等の固定具により壁面材37に対してブラケット25が固定されている。また、図1の構成に比べて、左右の通し材26の間隔が広くなっており、その左右の通し材26の間に断熱材29が配設されている。
界壁部30において壁面材37と耐火材13とで連続的に耐火層が形成されているため、界壁部30における耐火性能を高めることができる。また、界壁部30において壁面材37を壁内側から支持部材24により支持する構成にしたため、界壁下地フレーム31,34よりも上方の延出部を含めて壁面材37を安定状態で支持することができる。また、上下方向において、左右の界壁下地フレーム31,34の間の断熱材40から耐火材13までの範囲で断熱材29が設けられるため、界壁部30の断熱性能を向上させることができる。
・上記実施形態では、床梁11において厚み方向に2つの吊りボルト21を固定するとともに、それら吊りボルト21ごとに界壁下地フレーム54a,54bを設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、床梁11において厚み方向に1つの吊りボルト21を固定するとともに、その吊りボルト21に1つの界壁下地フレームを設ける構成としてもよい。
・床梁11の下フランジ11cに対する吊りボルト21の固定の構成として、下フランジ11cの貫通孔に吊りボルト21を挿通させて固定する以外の構成を用いてもよい。例えば、床梁11の下フランジ11cに吊りボルト21の固定用部材を取り付け、その固定用部材から下方に延びるようにして吊りボルト21を固定するとよい。
・形鋼は、H形鋼以外でもよく、例えば断面コ字状の溝形鋼でもよい。この場合、溝形鋼の下フランジにおいて幅方向に異なる位置に第1,第2吊りボルトを固定し、それら各吊りボルトの下端部に支持部材を固定するとよい。
・吊りボルトは、全ねじボルトでなく、両端ねじ切りボルトでもよい。また、吊り金具として吊りボルト以外の部材を用いてもよい。いずれにしても、耐火梁に対して固定可能な上側固定部を有するとともに、それよりも下方(下端部)に、支持部材を固定可能な下側固定部を有する構成とする。また、吊り金具の下端部に、支持部材の高さ位置を調整可能な高さ調整部が設けられているとよい。