JP2017024255A - 成形体及び成形体の製造方法 - Google Patents

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寛一 砂川
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隆 河向
勝人 鈴木
Katsuto Suzuki
勝人 鈴木
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Abstract

【課題】本発明は、紙の風合いを有しながらも、十分な強度と形状保持性を有する成形体を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維強化プラスチック領域と、繊維強化プラスチック領域の少なくとも一方の面側に接する紙基材領域とを含み、繊維強化プラスチック領域は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含み、熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である成形体に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、成形体及び成形体の製造方法に関する。具体的には、本発明は、繊維強化プラスチック領域と、繊維強化プラスチック領域に接合する紙基材領域を有する成形体及び該成形体の製造方法に関する。
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む不織布(繊維強化プラスチック成形体用基材ともいう)から成形された繊維強化プラスチック成形体は、既にスポーツ、レジャー用品、航空機用材料、電子機器部材など様々な分野で用いられている。繊維強化プラスチック成形体においてマトリックスとなる樹脂には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられているが、近年は熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック成形体の開発が進められている。熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いた不織布は、保存管理が容易であり、長期保管ができるという利点を有する。また、熱可塑性樹脂を含む不織布は、熱硬化性樹脂を含む不織布と比較して成形加工が容易であり、加熱加圧処理を行うことにより成形加工品を成形することができる。
強化繊維には、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等が用いられている。このような強化繊維は、繊維強化プラスチック成形体の強度を高める働きをする。このような成形加工品を廃棄する場合には、埋め立てたり、焼却処分することが行われているが、上記のような強化繊維を使用した成形加工品は埋め立て後の生分解性が低く、焼却処理時には焼却炉等にかかる負荷が大きいという問題がある。
このため、近年は、強化繊維としてパルプ繊維を用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1及び2では、パルプ繊維と熱可塑性樹脂を含むスラリーを抄紙し、成形した抄造成形中間品を加熱加圧成形することで成形品を得ている。特許文献3では、パルプ繊維と熱可塑性樹脂を含むスラリーからペレットを形成し、このペレットを射出成形することにより成形品を製造することが提案されている。
特開平6−322699号公報 特開平6−346399号公報 特開平6−345944号公報
上述したように、強化繊維としてパルプ繊維を用いることにより、生分解性を高めたり、焼却時の負荷を軽減することはできる。しかしながら、強化繊維としてパルプ繊維を用いた場合、成形体の強度が不十分な場合があり改善が求められていた。
また、成形体は様々な分野で応用されるようになってきており、成形体には多様な意匠性が求められている。近年、成形体に求められる意匠性は、図柄の多様性のみならず、手触りや紙の風合いといった表面性状にも及んでいる。しかしながら、紙の風合いを出すために、紙基材から成形体を構成したり、紙基材を貼合することで成形体を形成した場合は、成形体の強度が十分に得られず、また、成形体として形状を保持することが困難であった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、強化繊維としてパルプ繊維を用いた場合であっても十分な強度を有する成形体であって、かつ優れた意匠性を発揮し得る成形体を提供することを目的として検討を進めた。すなわち、本発明者らは、紙の風合いを有しながらも、十分な強度と形状保持性を維持できる成形体を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、所定の構成を有する繊維強化プラスチック領域と、繊維強化プラスチック領域に接合する紙基材領域とを含む成形体を形成することにより、紙の風合いを有しつつも、十分な強度と形状保持性を発揮し得る成形体が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]繊維強化プラスチック領域と、繊維強化プラスチック領域の少なくとも一方の面側に接する紙基材領域とを含み、繊維強化プラスチック領域は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含み、熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である成形体。
[2]紙基材領域はパルプ繊維を含み、紙基材領域に含まれるパルプ繊維と、繊維強化プラスチック領域に含まれるパルプ繊維の合計含有量は、成形体の全質量に対して51質量%以上である[1]に記載の成形体。
[3]紙基材領域は、繊維強化プラスチック領域の両面に配される領域である[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]繊維強化プラスチック領域の密度が0.6〜1.7g/cm3である[1]〜[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]紙基材領域の坪量は50〜210g/m2である[1]〜[4]のいずれかに記載の成形体。
[6]熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸、エチレンビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンおよびポリエチレンから選ばれる少なくとも一種である[1]〜[5]のいずれかに記載の成形体。
[7]紙基材領域は塗工層を有する紙基材から形成される領域である[1]〜[6]のいずれかに記載の成形体。
[8]塗工層は、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含む[7]に記載の成形体。
[9]紙基材領域は、顔料を含む[1]〜[8]のいずれかに記載の成形体。
[10]曲げ強度が100MPa以上である[1]〜[9]のいずれかに記載の成形体。
[11]曲げ弾性率が9GPa以上である[1]〜[10]のいずれかに記載の成形体。
[12]繊維強化プラスチック成形体用基材と、紙基材を積層し、加熱加圧成形する工程を含み、加熱加圧成形する工程は、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を接合する工程であり、繊維強化プラスチック成形体用基材は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、熱可塑性樹脂繊維の融点は200℃以下である成形体の製造方法。
[13]加熱加圧成形する工程では、150℃以上となるように加熱し、かつ5MPa以上となるように加圧する[12]に記載の成形体の製造方法。
[14]紙基材は、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含有する塗工層を有する[12]又は[13]に記載の成形体の製造方法。
本発明によれば、強化繊維としてパルプ繊維を用いた場合であっても十分な強度と形状保持性を有する成形体であって、優れた意匠性を発揮し得る成形体を得ることができる。すなわち、本発明によれば、紙の風合いを有する成形体であって、その強度が十分に高められ、かつ形状保持性に優れた成形体を得ることができる。
図1は、本発明の成形体の構成の一例を説明する概略断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(成形体)
本発明は、繊維強化プラスチック領域と、繊維強化プラスチック領域の少なくとも一方の面側に接する紙基材領域とを含む成形体に関する。ここで、繊維強化プラスチック領域は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含む。また、繊維強化プラスチック領域における熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である。
本発明の成形体は、上記構成を有するため、紙の風合いを有している。本発明の成形体は、優れた強度を有しつつも、紙の手触りや質感を有しており、優れた意匠性を発揮することができる。また、本発明では、紙基材領域の表面には、容易に印刷を施すことができる。このため、特殊な印刷用インクや機器を用いずとも表面に様々な模様等を印刷することができる。このように、本発明の成形体は、多様な嗜好性や高い意匠性が求められる分野において好適に用いられる。
また、本発明の成形体は紙の風合いを有しつつも、優れた強度を有しており、高い曲げ強度及び曲げ弾性率を有する。さらに、本発明の成形体においては、繊維強化プラスチック領域と紙基材領域との密着性が高く、長期間に亘る使用や過酷環境下における使用によっても層間剥離等が生じることが抑制されている。加えて、本発明の成形体は、優れた形状保持性も有しており、複雑な凹凸形状を有する成形体とすることもできる。
本発明の成形体は、表面が紙基材領域であるため、成形体を成形する際に用いる金型から容易に剥離することができる。特に、繊維強化プラスチック領域の両面に紙基材領域を有する成形体を作製する際には、成形時に金型から容易に剥離することができる。このように、本発明の成形体は金型離型性に優れているため、成形体を製造する際の生産効率を高めることができ、製造コストを抑制することができる。
さらに、本発明の成形体は、強化繊維としてパルプ繊維を用いているため、埋め立て後の生分解性が高く、焼却処理時の負荷を低減することができる。このように、本発明の成形体は、環境への負荷が少ない成形体である。
図1は、本発明の成形体の構成の一例を説明する概略断面図である。図1に示されているように、本発明の成形体10は、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14とを有する。図1(a)に示されているように、本発明の成形体10は、少なくとも繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14を各々一領域ずつ有していればよい。
図1(a)に示されているように、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14は接している。ここで、各領域が接した状態とは、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14の間に、全く異なる構成(成分)を有する他の層が存在しないことをいう。特に、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14の間は常温接着剤フリーな状態であることが好ましい。
本発明の成形体10は、繊維強化プラスチック領域12を構成する基材と紙基材領域14を構成する基材を単に重ねた後に、共に加熱加圧成形されることで形成される。本発明においては、加熱加圧成形によって、繊維強化プラスチック領域12が成形されると同時に、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14との接合が行われる。すなわち、成形体10においては、繊維強化プラスチック領域12に含まれる熱可塑性樹脂の一部が接着剤として機能し、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14を融着接合する。このような熱可塑性樹脂によって、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14は強固に接合される。なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、繊維強化プラスチック領域12を構成する基材と紙基材領域14を構成する基材との間に、繊維強化プラスチック領域12に含まれる樹脂と共通の樹脂を重ねた後に、共に加熱加圧成形して成形体10を形成してもよい。
本発明の成形体10においては、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14の間には、直線的な境界面が存在しない。このため、繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14の間には、繊維強化プラスチック領域12の構成成分の一部と、紙基材領域14の構成成分の一部が交じり合った境界領域が存在しているということもできる。
このように、境界領域は、繊維強化プラスチック領域12の構成成分の一部と、紙基材領域14の構成成分の一部が交じり合った領域である。なお、本発明の成形体においては、上述したような境界領域を有することによって繊維強化プラスチック領域12と紙基材領域14の融着接合が行われているということができる。
本発明では、紙基材領域はパルプ繊維を含み、紙基材領域に含まれるパルプ繊維と、繊維強化プラスチック領域に含まれるパルプ繊維の合計含有量は、成形体の全質量に対して51質量%以上であることが好ましい。パルプ繊維の合計含有量は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。成形体に含まれるパルプ繊維の含有量を上記範囲とすることにより、成形体を処分する際の生分解性を高めたり、焼却時の負荷を軽減することができる。一方で、本発明の成形体はパルプ繊維の含有量が上記範囲であっても優れた強度を有している。
本発明では、紙基材領域14は、繊維強化プラスチック領域12の両面に配される領域であることが好ましい。図1(b)には、紙基材領域14が、繊維強化プラスチック領域12の両面に接した状態で設けられている構成が示されている。このように、成形体10の両表面に紙基材領域14を設けることにより、いずれの表面においても高い意匠性を発揮することができる。また、成形体10が金型を用いて成形されるものである場合、成形体10の金型離型性を高めることができる。
本発明の成形体の曲げ強度は、100MPa以上であることが好ましく、110MPa以上であることがより好ましく、120MPa以上であることがさらに好ましく、150MPa以上であることが特に好ましい。なお、本明細書において、成形体の曲げ強度は、JIS K 7074に準じて測定された値である。
本発明の成形体の曲げ弾性率は、9GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、12GPa以上であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、成形体の曲げ弾性率は、JIS K 7074に準じて測定された値である。
成形体の厚みは、特に限定されないが、0.05〜50mmであることが好ましい。本発明の成形体は、上記のような構成により、所望の曲げ強度及び曲げ弾性率を有し得る。
(繊維強化プラスチック領域)
繊維強化プラスチック領域は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含む。熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である。ここで、繊維強化プラスチック領域とは、融点が200℃以下の熱可塑性樹脂を5質量%以上含有する領域をいう。
繊維強化プラスチック領域におけるパルプ繊維の含有量は、繊維強化プラスチック領域を構成する固形分の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、パルプ繊維の含有量は、95質量%以下であることが好ましい。パルプ繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域及び成形体全体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
本発明では、繊維強化プラスチック領域の密度は、0.6〜1.7g/cm3であることが好ましく、0.8〜1.6g/cm3であることがより好ましく、1.0〜1.5g/cm3であることがさらに好ましい。繊維強化プラスチック領域の密度を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域及び成形体全体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。なお、本明細書において、繊維強化プラスチック領域の密度は、繊維強化プラスチック領域を形成する繊維強化プラスチック成形体用基材を単独で加熱加圧成形して得られる繊維強化プラスチック成形体の密度と同等である。すなわち、繊維強化プラスチック成形体の密度を測定することで、繊維強化プラスチック領域の密度とすることができる。
<パルプ繊維>
繊維強化プラスチック領域は、強化繊維としてパルプ繊維を含む。パルプ繊維を構成するパルプについては、その製法および種類等に特に限定はない。例えば、広葉樹や針葉樹のクラフトパルプ(KP)のような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、ならびにケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等の非木材パルプが挙げられる。また、パルプとしては、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲においてガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も併用することができる。
本発明で用いられるパルプ繊維のろ水度は、JIS P 8121−2:2 パルプ −ろ水度試験方法− 第2部:カナダ標準ろ水度法で規定されるカナディアンスタンダードフリーネスで800ml以下であることが好ましく、700ml以下であることがより好ましく、600ml以下であることがさらに好ましく、500ml以下であることが特に好ましい。また、ろ水度は、300ml以上であることが好ましい。パルプ繊維のろ水度を上記範囲内とすることにより、加熱成形時に熱可塑性樹脂を良好に保持することができ、溶融した樹脂が流出することを防止できる。
パルプ繊維の質量平均繊維長は、0.1〜15mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることがより好ましく、1〜5mmであることがさらに好ましい。パルプ繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、成形体を成形する際に、繊維強化プラスチック領域からパルプ繊維が脱落することを抑制することができ、かつ、強度に優れた成形体を形成することが可能となる。また、パルプ繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、パルプ繊維の分散性を良好にすることができる。なお、本明細書において、質量平均繊維長は、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。
<熱可塑性樹脂>
繊維強化プラスチック領域は、熱可塑性樹脂を含む。ここで、熱可塑性樹脂の融点は、200℃以下であればよく、195℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の融点は、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の融点を上記範囲内とすることにより、併用するパルプ繊維が劣化することを抑制することができ、かつ成形体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
本発明で用いることができる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリスチレン、非晶質PETなどのポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン12、ポリアセタール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ乳酸等が挙げられる。中でも、ポリ乳酸、エチレンビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンおよびポリエチレンから選ばれる少なくとも一種は好ましく用いられ、ポリ乳酸は特に好ましく用いられる。これらの樹脂は、融点が150〜180℃であり、溶融した場合のパルプ繊維との濡れ性が優れており、成形体の強度が得られやすいため好ましい。
繊維強化プラスチック領域に含まれる熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂繊維が溶融したものであることが好ましい。なお、繊維強化プラスチック領域には、熱可塑性樹脂繊維の一部が溶融せずに存在していてもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維は、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。繊維強化プラスチック領域を形成するために用いられる熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、質量平均繊維長は2〜50mmであることが好ましく、5〜40mmであることがより好ましく、10〜25mmであることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域を形成する際に熱可塑性樹脂繊維が脱落することを抑制することができ、かつ、強度に優れた成形体を形成することが可能となる。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の分散性を良好にすることができる。
繊維強化プラスチック領域における熱可塑性樹脂の含有量は、繊維強化プラスチック領域を構成する固形分の全質量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量は、49質量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域及び成形体全体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
<その他成分>
繊維強化プラスチック領域は、その他成分として、バインダー成分を含有してもよい。バインダー成分は、繊維強化プラスチック領域を構成する固形分の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されてもよく、0.3〜10質量%となるように含有されてもよく、0.4〜9質量%となるように含有されてもよく、0.5〜8質量%となるように含有されてもよい。バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、成形体を製造する際の、ハンドリング性等を向上させることができる。
バインダー成分としては、各種デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂及びこれらを組み合わせた芯鞘型構造のバインダー繊維(芯鞘PET)、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドーアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が使用できる。また、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂も好適に使用することができ、これらを変性させて適宜融点を調整した樹脂を使用した合成パルプは少量でも十分な強度が得られるため好ましい。
繊維強化プラスチック領域は、さらに、填料や製紙薬品を含有していてもよい。填料としては、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂等の有機顔料が挙げられる。
製紙薬品としては、紙力増強剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。さらに湿潤紙力増強剤も併用可能であり、例えばポリアミド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素―ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。
(紙基材領域)
紙基材領域は、繊維強化プラスチック領域の少なくとも一方の面側に接する領域であり、パルプ繊維を95質量%以上含有する領域をいう。紙基材領域は、紙基材から形成され、このような紙基材には、パルプ繊維が95質量%以上含まれる。すなわち、紙基材に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は紙基材の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。なお、上記含有量には、後述する塗工層で用いられる樹脂量が含まれており、本発明で用いる紙基材は、後述する塗工層で用いられる樹脂以外に熱可塑性樹脂が実質的に含まれていないものである。
紙基材領域の坪量は50〜210g/m2であることが好ましく、75〜185g/m2であることがより好ましく、100〜160g/m2であることがさらに好ましい。紙基材領域の坪量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域から樹脂が紙基材領域の表面にまで滲みだしてくることを抑制することができる。これにより、成形体の表面に均一でかつ良好な紙の風合いを持たせることができる。なお、本明細書において、紙基材領域の坪量は、紙基材領域を形成する紙基材の坪量と同等である。すなわち、紙基材の坪量を測定することで、紙基材領域の坪量とすることができる。
紙基材領域は、紙基材から形成されるが、この紙基材は塗工層を有しているものであることが好ましい。すなわち、紙基材領域は、塗工紙から形成されることが好ましい。塗工層は、紙基材の少なくとも一方の面に設けられていればよいが、両面に設けられていてもよい。本発明の成形体は、後述するように、紙基材と繊維強化プラスチック成形体用基材を重ねて加熱加圧成形する工程を含む。この時、塗工層が、繊維強化プラスチック成形体用基材と接する側に配されるように積層され、加熱加圧成形されることが好ましい。なお、塗工層が含有し得る成分等については、後述する紙基材の項目で説明する。
(成形体の製造方法)
本発明は、繊維強化プラスチック成形体用基材と、紙基材を積層し、加熱加圧成形する工程を含む成形体の製造方法に関する。ここで、加熱加圧成形する工程は、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を接合する工程である。すなわち、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を積層した時点では、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材は接合(接着)されておらず、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材は、加熱加圧成形することで接合(接着)される。
繊維強化プラスチック成形体用基材は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、熱可塑性樹脂繊維の融点は200℃以下である。
また、成形体を製造する際に用いる紙基材は、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含有する塗工層を有する紙基材であることが好ましい。このような塗工層を、紙基材の少なくとも一方の表面に設けることにより、紙基材と繊維強化プラスチック成形体用基材の接着性(密着性)をより効果的に高めることができる。
加熱加圧成形する工程では、繊維強化プラスチック成形体用基材と、紙基材を積層したものを、150℃以上となるように加熱し、かつ5MPa以上となるように加圧することが好ましい。加熱加圧成形する工程における加熱温度は、150℃以上であることが好ましいが、繊維強化プラスチック領域に含有される熱可塑性樹脂の種類により適宜調節することが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂繊維の融点の±20℃の範囲内で加熱を行うことが好ましい。なお、熱可塑性樹脂としてポリ乳酸を用いた場合、加熱温度は150〜180℃であることが好ましく、160〜180℃であることがより好ましい。このような温度範囲内で加熱成形を行うことにより、繊維強化プラスチック領域に含有されるパルプ繊維の熱分解(ヘミセルロースの分解)を抑制することができ、より強度に優れた成形体を得ることができる。
加熱加圧成形する工程における圧力条件は、5〜25MPaであることが好ましい。また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜30℃/分が好ましく、所望の加熱加圧条件での保持時間としては1〜30分、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とすることが好ましい。
なお、生産効率はやや落ちるものの、所望の加熱加圧条件から熱可塑性樹脂の融点までは空冷でゆっくりと0.1〜3℃/分で冷却することも、強度向上の観点からは好ましい。また、急速加熱、急速冷却(ヒートアンドクール)成形を用いて加熱加圧成形することも可能であり、その場合の昇温、冷却速度はそれぞれ30〜500℃/分である。
加熱加圧成形の方法としては、各種存在するプレス成形の方法の中でも、大型の航空機などの成形体部材を作製する際によく使用されるオートクレーブ法や、工程が比較的簡便である金型プレス法が好ましく挙げられる。ボイドの少ない高品質な成形体を得るという観点からはオートクレーブ法が好ましい。一方、設備や成形工程でのエネルギー使用量、使用する成形用の治具や副資材等の簡略化、成形圧力、温度の自由度の観点からは、金属製の型を用いて成形をおこなう金型プレス法を用いることが好ましく、これらは用途に応じて選択することができる。
金型プレス法には、ヒートアンドクール法やスタンピング成形法を採用することができる。ヒートアンドクール法は、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を積層したものを型内に予め配置しておき、型締とともに加圧、加熱を行い、次いで型締をおこなったまま、金型の冷却により該シートの冷却を行い成形体を得る方法である。スタンピング成形法は、予め繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を積層したものを加熱し、熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。加熱には、遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置を用いることができる。また、低密度の成形体を得る場合など、成形時の温度が比較的低い場合は、ホットプレス法を採用することもできる。
成形用の金型は大きく2種類に分類され、1つは鋳造や射出成形などに使用される密閉金型であり、もう1つはプレス成形や鍛造などに使用される開放金型である。成形時の分解ガスや混入空気を型外に排除する観点からは開放金型が好ましいが、過度の樹脂の流出を抑制するためには、成形加工中においては開放部をできるだけ少なくし、樹脂の型外への流出を抑制するような形状を採用することも好ましい。
さらに、金型には打ち抜き機構、タッピング機構から選択される少なくとも一種を有する金型を使用することができる。2段プレス機構を用いるなどの工夫で、加熱加圧後に連続して、成形体を打ち抜き加工することも可能である。また、成形体は、その使用目的などによってはリブやボス等の強度補強・加工用の突起やネジ穴の形成、意匠性の付与を目的とした模様の付与を行うことができる。
繊維強化プラスチック成形体用基材と、紙基材を積層したものは、目的とする成形品の形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。繊維強化プラスチック成形体用基材は、1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層することができ、積層枚数を調節することで、成形体の厚みや強度を調整することができる。
本発明の成形体を加熱加圧成形する工程では、パルプ繊維および熱可塑性樹脂の伸び不足によるやぶれ等の欠損を防ぐことを目的として、加熱加圧成形を複数回行なってもよい。これにより、より強度及び意匠性に優れる成形体を得ることができる。
<繊維強化プラスチック成形体用基材>
本発明の成形体の製造工程で用いられる繊維強化プラスチック成形体用基材は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含む。熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である。
繊維強化プラスチック成形体用基材におけるパルプ繊維の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、パルプ繊維の含有量は、95質量%以下であることが好ましい。パルプ繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域及び成形体全体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
本発明では、繊維強化プラスチック成形体用基材の密度は、0.6〜1.7g/cm3であることが好ましく、0.8〜1.6g/cm3であることがより好ましく、1.0〜1.5g/cm3であることがさらに好ましい。繊維強化プラスチック成形体用基材の密度を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域及び成形体全体の曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
<紙基材>
本発明の成形体の製造工程で用いられる紙基材は、繊維強化プラスチック成形体用基材の少なくとも一方に接合し、紙基材領域を形成する。本発明で用いられる紙基材は、パルプ繊維を95質量%以上含有する。紙基材に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は紙基材の全質量に対して、5質量%以下であり、この含有量には、後述する塗工層で用いられる樹脂量が含まれている。すなわち本発明で用いる紙基材は、後述する塗工層で用いられる樹脂以外に熱可塑性樹脂が実質的に含まれていないものである。
紙基材としては、新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙、段ボール原紙、紙器用板紙等を挙げることができる。中でも、紙基材としては、印刷・情報用紙の1種である上質紙や塗工紙、紙器用板紙の1種である白板紙を用いることが好ましく、塗工紙を用いることが特に好ましい。
上述した塗工紙の原紙は、特に限定されるものではないが、一般塗被紙原紙を用いることができる。
原紙の主成分であるパルプとしては、例えば、広葉樹や針葉樹のクラフトパルプ(KP)のような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、ならびにケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等の非木材パルプが挙げられる。また、パルプとしては、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲においてガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も併用することができる。なお、パルプ繊維以外の繊維が含まれる場合、それらの繊維の含有量は紙基材の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
紙基材の坪量は50〜210g/m2であることが好ましく、75〜185g/m2であることがより好ましく、100〜160g/m2であることがさらに好ましい。紙基材の坪量を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック領域から樹脂が紙基材領域の表面にまで滲みだしてくることを抑制することができる。これにより、成形体の表面に均一でかつ良好な紙の風合いを持たせることができる。
紙基材は填料を含んでもよく、填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機系填料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機系填料等を挙げることができる。填料は2種以上の混合使用も可能である。混合比率は紙基材の品質に応じて調整することが可能である。填料の含有量は、一般に、原紙灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加されることが好ましい。
中でも、紙基材は、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、紙基材領域で挙げた顔料を含むことが好ましい。さらに、紙基材は、顔料として酸化チタンを含有することが好ましい。酸化チタンを使用すると、高い隠蔽性が得られ、低坪量の紙基材を用いても、加熱加圧成形により成形体を製造する際に、繊維強化プラスチック領域中の熱可塑性樹脂が成形体表面に滲みだすことを抑制できる。
また、紙基材中にはその他に、内添サイズ剤、歩留り向上剤(アニオン性、ノニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留り向上剤)、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、スチレン−アクリル系サイズ剤、高級脂肪酸系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
紙基材は、塗工層を有しているものであることが好ましい。すなわち、紙基材は、塗工紙であることが好ましい。塗工層は、紙基材の少なくとも一方の面に設けられていればよいが、両面に設けられていてもよい。本発明の成形体は、上述するように、紙基材と繊維強化プラスチック成形体用基材を重ねて加熱加圧成形する工程を含む。この時、塗工層が、繊維強化プラスチック成形体用基材と接する側に配されるように積層され、加熱加圧成形されることが好ましい。
塗工層を有する紙基材から紙基材領域を形成する場合、塗工層は、接着性樹脂を含むことが好ましい。接着性樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体樹脂などの共役ジエン系重合体樹脂、アクリル系重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのビニル系重合体樹脂などが例示でき、中でも、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を用いることが好ましい。塗工層に上述したような樹脂が含有されることにより、紙基材領域と繊維強化プラスチック領域の密着性をより強固なものとすることができる。なお、接着性樹脂の含有量は、紙基材の全質量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
また、紙基材領域は、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、酸化チタン(二酸化チタン)、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト、製紙スラッジから調製された再生顔料等の無機顔料の他、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等が挙げられる。中でも、顔料としては、酸化チタンを用いることが好ましい。
紙基材領域が顔料を含有する場合、顔料は、紙中灰分が30〜70質量%(JIS P8251に準ずる)となるように添加することが好ましく、40〜60質量%となるように添加することがより好ましい。
塗工層には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光増白染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
塗工層は、1層の単層であってもよく、2層以上の多層であってもよい。また、塗工層を形成する塗布液の塗工量も、特に限定されるものではなく、片面あたり3〜40g/m2程度であることが好ましい。
<繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法>
成形体を製造する際に用いられる繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法は、特に限定されるものではなく、湿式又は乾式のシート形成方法を用いることができる。例えば、湿式抄紙法を用いて繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する際には、熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維、必要に応じて、バインダー、填料、製紙薬品等を水などの溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウェブを形成する方法を採用することができる。
湿式抄紙法を用いて繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する際には、pHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、pH6の弱酸性からpH9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等を採用することができる。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー型抄紙機、単網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜用いることができる。特に円網抄紙機、単網抄紙機等の多層抄紙機を用いることにより、坪量の大きな繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。また、多層抄紙機を用いることにより、各層の処方を変更することができ、深さ方法で異なった機能を有する繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることもできる。
乾式抄紙法を用いて繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する際には、例えば、カーディング法やエアレイド法などの乾式でウェブ形成を行う方法を採用することができる。カーディング法は、繊維塊を機械的に梳りながら均一なシート状のウェブを形成させる方法であり、繊維長のやや長い短繊維を用いる場合に好適な方法である。エアレイド法は、空気中で解繊した熱可塑性樹脂繊維及びパルプ繊維等を気流中で均一に混合した原料繊維などを含む気流を、下側にサクションボックスを備えたメッシュ状無端ベルト上に吐出してエアレイドウェブを形成する方法である。乾式法で形成されたウェブは、以下に示すような繊維結合工程によってシート化される。繊維結合工程としては、例えば、ニードルパンチ法のようにウェブ面に垂直方向に針を通すことにより熱可塑性樹脂繊維やパルプ繊維を互いに交絡させてシートを形成する方法がある。このような結合工程は、カーディング法によるウェブ形成方法と組み合わせて好ましく用いられる。また、繊維結合工程では、加熱により乾式法ウェブに配合された熱融着性接着剤を融着させて原料繊維を結合する工程(サーマルボンド法)、得られた乾式法ウェブに接着剤を付与して原料繊維を結合する工程(ケミカルボンド法)、あるいはサーマルボンド法とケミカルボンド法を組み合わせた方法(マルチボンド法)を採用することができる。
サーマルボンド法やマルチボンド法が採用される場合には、粒子状あるいは繊維状の熱融着性接着剤が使用される。粒子状の熱融着性接着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの熱融着性の樹脂粒子が用いられる。繊維状の熱融着性接着剤としては、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリアミド、アクリル樹脂、酢酸ビニル(PVAc)の樹脂類が用いられる。また、熱融着性合成繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維の表面のみが溶融する芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維も好ましく用いることができる。芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有する。具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維、PVAc/PET複合樹脂 )が挙げられる。
また、繊維の結合にケミカルボンド法が用いられる場合、繊維同士を固着させるために使用されるバインダーは、必要に応じて適宜選択可能であり、たとえば、デンプン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体、尿素−メラミン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。なお、上記のバインダーとしては、繊維、粉体、顆粒状、溶液あるいはエマルジョンなど、種々の形態のものを用いることができ、二種以上を併用することもできる。
<紙基材の製造方法>
成形体を製造する際に用いられる紙基材の製造方法としては、通常の製造方法を採用することができる。具体的には、パルプスラリーに必要に応じて填料等を添加し、抄紙することで紙基材原紙を得ることができる。紙基材原紙を抄紙する際には、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機等の抄紙機を用いることが好ましい。
次いで、紙基材原紙にはサイズプレス処理が施されることが好ましい。サイズプレス処理工程においては、例えば、澱粉を紙基材原紙の両面に塗工し、ロールコーターを用いて処理をすることが好ましい。紙基材原紙にはさらにマシンカレンダー等で平滑化処理を施してもよい。
紙基材の製造工程は、さらに塗料を塗工する工程を含むことが好ましい。塗料には、顔料や接着性樹脂が含まれていることが好ましい。特に、塗料には、接着剤として、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(JSR社製、OJ3000H)が含まれていることが好ましい。また、塗料には、必要に応じて澱粉や消泡剤等の助剤が含まれていてもよい。
塗料を塗工する工程においては、紙基材原紙の両面に、塗料が塗工されることが好ましい。塗工には、例えば、ジェットファウンテン方式で塗布液を供給するブレードコーターを用いることができる。塗工層を有する紙基材には、カレンダ処理を施してもよい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
(繊維強化プラスチック成形体用基材の作製)
3kgの水中に、ポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(住友化学社製、スミフロックFA−40)を0.03質量%含有する溶液を100g添加した後、ポリ乳酸繊維(ユニチカ社製、PL01、繊維太さ:40μm、繊維長:3mm)を15g添加した。この溶液を撹拌し、繊維を分散させて、固形分が0.5質量%のポリ乳酸繊維分散液を得た。さらに針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を0.5質量%含有する分散液を7kg投入し、混合撹拌した。このようにして、ポリ乳酸:パルプの質量比が30:70の繊維強化プラスチック成形体用基材スラリーを得た。
手漉き機を用いて、上記繊維強化プラスチック成形体シートスラリーを抄紙しウェブを形成し、このウェブを110℃のシリンダードライヤーで乾燥させて、坪量150g/m2の繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
(塗工紙用原紙の作製)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を85質量%含むパルプスラリーに填料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製、タマパールTP−121−6S)を紙中灰分が15質量%になるように添加した。その後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウムが0.5質量%、予め糊化したカチオン澱粉(王子コーンスターチ社製、エースK100)が0.5質量%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(荒川化学工業社製、サイズパインK−287)が0.1質量%、カチオン性ポリアクリルアミド(ソマール社製、リアライザーR−300)が0.1質量%となるように順次添加し、紙料を調製した。この紙料を用いて、運転抄速1200m/分で走行するギャップフォーマーにより紙層を形成した。その後、紙層片面当たり固形量として0.5g/m2となるように予め糊化した澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)を両面に塗工し、ロールコーターでサイズプレス処理を行い、1ニップのマシンカレンダーで平滑化処理して坪量120g/m2の塗工紙用原紙を得た。
(塗工紙用塗料の調製)
重質炭酸カルシウムの顔料スラリー100質量部に、予め糊化した酸化澱粉(前出社製、エースB)4質量部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR社製、OJ3000H)6質量部を添加した(いずれも固形分換算)。さらに、助剤として消泡剤0.1質量部を添加し、最終的に固形分濃度62質量%の塗工紙用塗料を調製した。
(塗工紙の作製)
塗工紙用原紙の両面に、塗工紙用塗料を塗工した。塗工には、ジェットファウンテン方式で塗布液を供給するブレードコーターを用い、塗工速度1300m/分で、片面当たりの乾燥重量が15g/m2となるように両面塗工し、その後乾燥を行い、塗工層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度100℃に加熱した金属ロールと樹脂ロールが傾斜配置されているマルチニップカレンダで、線圧200kN/m、通紙速度1000m/分の条件下で処理した。カレンダ処理では、片面が金属ロールと樹脂ロールにそれぞれ4回ずつ接触するように合計8ニップの通紙を行った。このようにして坪量150g/m2の塗工紙を得た。
(スマートフォン背面ケース用金型の作製)
アルミニウム合金板を用い、縦120mm×横65mm×高さ8mm、肩R5mm、肉厚0.50mmのスマートフォン背面ケースを得ることが出来るオス金型とメス金型を作製した。
(成形体Aの作製)
上記塗工紙1枚、上記繊維強化プラスチック成形体用基材3枚、上記塗工紙1枚の合計5枚をこの順で積層し、縦150mm×横90mmのサイズにカットした後、積層品を上記のスマートフォン背面ケース用のオス金型とメス金型で挟んだ。その後、30tプレス機(東洋精機工業社製)の常温のホットプレス機に挿入して1MPaの加圧下で170℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、10分かけて30℃まで冷却して、成形体Aを得た。得られた成形体Aの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<実施例2>
(白板紙用原紙の作製)
第1層目の表面層に晒化学パルプ、第2層目の表面下層に脱墨古紙パルプ、第3層目の中層、第4層目の中層、および第5層目の裏面層に未脱墨パルプをそれぞれ使用して5層に抄き合わせた後にマシンカレンダー処理して、坪量130g/m2の白板紙用原紙を得た。
(白板紙用塗工液の調製)
水中に、重質炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、ハイドロカーブ90)100質量部(固形分換算)、ポリアクリル酸ソーダ分散剤(東亜合成社製、アロンT−50)0.25質量部、酸化澱粉(王子コーンスターチ社製、王子エースY)3質量部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(日本エイアンドエル社製、PA7070)14質量部(固形分)を加え、固形分濃度62質量%の白板紙用塗工液を調製した。
(白板紙の作製)
上記の白板紙用原紙の両面に、白板紙用塗工液を塗工した。塗工には、ロッドコーターを用い、片面あたりの乾燥重量が10g/m2になるように両面塗工し、その後乾燥を行い、塗工層を設けた。このようにして得られた塗被紙に対して、金属ロール表面温度が200℃、2ニップのソフトカレンダーによる通紙処理を行った。このようにして、坪量150g/m2の白板紙を得た。
(成形体Bの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、上記白板紙1枚、上記繊維強化プラスチック成形体用基材3枚、上記白板紙1枚、合計5枚をこの順で積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Bを得た。得られた成形体Bの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<実施例3>
(上質紙の作製)
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を90質量%含むパルプスラリーに、パルプ絶乾質量に対して、カチオン化澱粉(PIRAAB STARCH Co.Ltd製、P3Y)が1.2質量%、硫酸アルミニウムが1.5質量%、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業社製、SKS−298)が0.1質量%、歩留向上剤(ソマール社製、R−300)が0.1質量%となるように添加した。さらに填料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製、タマパールTP−121)を紙中灰分が10質量%(JIS P8251に準ずる)になるように添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、原紙を得た。
上記原紙の両面に、カチオン化澱粉(P4N、PIRAAB STARCH Co.Ltd製)を8質量%含むサイズ液を塗工した。塗工は、乾燥後の塗工量が片面当たり0.5g/m2となるようにゲートロールコーターを用いて行い、その後乾燥して坪量75g/m2の上質紙を得た。
(成形体Cの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、上記上質紙1枚、上記繊維強化プラスチック成形体用基材4枚、上記上質紙1枚、合計6枚をこの順で積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Cを得た。得られた成形体Cの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<実施例4>
(成形体Dの作製)
実施例3の成形体Cの作製において、成形温度を170℃から150℃へ変更した以外は、実施例3と同様にして、成形体Dを得た。得られた成形体Dの坪量は750g/m2、厚さは0.55mmであった。
<実施例5>
(高隠蔽紙の作製)
実施例3の上質紙の作製において、填料として酸化チタン(石原産業社製、R−780)を紙中灰分が50質量%(JIS P8251に準ずる)となるように添加した以外は、実施例3と同様にして坪量75g/m2の高隠蔽紙を得た。
(成形体Eの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、上記高隠蔽紙1枚、上記繊維強化プラスチック成形体用基材4枚、上記高隠蔽紙1枚、合計6枚をこの順で積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Eを得た。得られた成形体Eの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<比較例1>
(成形体Fの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、塗工紙を積層せずに上記繊維強化プラスチック成形体用基材を5枚積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Fを得た。得られた成形体Fの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<比較例2>
(成形体Gの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、繊維強化プラスチック成形体用基材を積層せずに上記塗工紙を5枚積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Gを得た。得られた成形体Gの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<比較例3>
(成形体Hの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、繊維強化プラスチック成形体用基材を積層せずに上記白板紙を5枚積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Hを得た。得られた成形体Hの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<比較例4>
(成形体Iの作製)
実施例1の成形体Aの作製において、繊維強化プラスチック成形体用基材を積層せずに上記上質紙を10枚積層した以外は、実施例1と同様にして、成形体Iを得た。このときの坪量は750g/m2、厚さは0.50mmであった。
<比較例5>
(成形体Jの作製)
上記繊維強化プラスチック成形体用基材を3枚積層し、縦150mm×横90mmのサイズにカットした後、積層品を上記のスマートフォン背面ケース用のオス金型とメス金型で挟んだ。その後、30tプレス機(東洋精機工業社製)の常温のホットプレス機に挿入して1MPaの加圧下で170℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、10分かけて30℃まで冷却して、繊維強化プラスチック成形体を得た。
上記繊維強化プラスチック成形体の両面に、市販のビニル共重合樹脂系エマルジョン接着剤(コニシ社製、木工用ボンド)を乾燥重量が0.1g/m2となるように塗布した。その後直ちに、縦150mm×横90mmのサイズにカットした上記塗工紙を上面に1枚、下面に1枚貼り合せ、平面部は指で押し接着させ、端面のR部は指で形状になじませ接着させ、24時間静置し、接着剤を乾燥させた後、成形体Jを得た。得られた成形体Jの坪量は750g/m2、厚さは0.60mmであった。
<比較例6>
(成形体Hの作製)
上記繊維強化プラスチック成形体用基材を3枚積層し、縦150mm×横90mmのサイズにカットした後、積層品を上記のスマートフォン背面ケース用のオス金型とメス金型で挟んだ。その後、30tプレス機(東洋精機工業社製)の常温のホットプレス機に挿入して1MPaの加圧下で170℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、10分かけて30℃まで冷却して、繊維強化プラスチック成形体を得た。
実施例1で作製した塗工紙1枚を、縦150mm×横90mmのサイズにカットした後、上記のスマートフォン背面ケース用のオス金型とメス金型で挟んだ。その後、30tプレス機(東洋精機工業社製)の常温のホットプレス機に挿入して1MPaの加圧下で170℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、10分かけて30℃まで冷却して、塗工紙成形体を得た。同様の作業を繰り返し、合計2枚の塗工紙成形体を得た。
上記繊維強化プラスチック成形体の両面に、市販のビニル共重合樹脂系エマルジョン接着剤(コニシ社製、木工用ボンド)を乾燥重量が0.1g/m2となるように塗布した。その後直ちに、上記塗工紙成形体を上面に1枚、下面に1枚貼り合せ、24時間静置し、接着剤を乾燥させた後、成形体Hを得た。得られた成形体Jの坪量は750g/m2、厚さは0.60mmであった。
(評価)
<曲げ強度、曲げ弾性率の測定>
得られた成形体の曲げ強度と曲げ弾性率を、JIS K 7074に準じて測定した。測定には、得られた成形体の平面部を用いた。
<紙の風合い(平滑度の測定)>
得られた成形体の平面部の紙の風合いを評価した。紙の風合いは、JIS P 8155に準じた平滑度試験を行うことで評価した。
○:平滑度が1500秒未満で、紙の風合いがある。
×:平滑度が1500秒以上で、紙の風合いがない。
<離型性>
成形体を作製する際、30℃に冷却後、スマートフォン背面ケース用金型からの剥離性を、下記の基準で評価した。
○:剥離用冶具を用いなくとも容易に剥離し、成形体が得られる。
△:剥離用冶具を用いることにより剥離し、成形体が得られる。
×:剥離用冶具を用いても、剥離できない。
<形状保持性>
得られた成形体が、金型で作製しようとしたスマートフォン背面ケースの形状を保持できているかを、下記の基準で評価した。
○:スマートフォン背面ケースの形状を保持できている。
×:成形体の層間の密着性が不十分であり、形状を保持できていない、あるいは、端面のR部(曲面)が折り重なっており、スマートフォン背面ケースの形状を保持できていない、あるいは、表層の紙基材領域がスマートフォン背面ケースの形状を保持できていない。
<密着性>
複数枚積層して得られたスマートフォン背面ケース成形体の層間の密着性を、下記の基準で評価した。
◎:非常に強固に密着しており、表層を爪で強く剥がそうとしても剥れない。
○:強固に密着しているが、表層を爪で強く剥がそうとすると、表層の端面部が一部めくれる場合がある。
△:密着しているが、表層を爪で強く剥がそうとすると、表層の端面部がめくれる。
×:密着していない。
<外観>
得られた成形体の外観を、下記の基準で評価した。
◎:プレス時のムラ等がなく、均一な外観である。
○:プレス時の熱により溶融した樹脂分が少量表層に染み出しているが、ほぼ均一な外観であり、実用上問題とならないレベルである。
△:プレス時の熱により溶融した樹脂分が一部表層に染み出し、外観が均一でない部分があるが、実用上問題とならないレベルである
×:プレス時の熱により溶融した樹脂分が表層に染み出し、外観が均一でなく、実用上問題となる。
Figure 2017024255
表1から分かるように、実施例で得られた成形体においては、高い強度、形状保持性及び紙の風合いの全ての項目で高評価であることがわかる。また、実施例で得られた成形体を成形する際には、金型からの剥離性が良好であり、生産性も良好であることがわかる。特に、紙基材領域を塗工紙から形成した実施例1、および紙基材領域を白板紙から形成した実施例2は、高い強度と紙の風合いを両立すると共に、成形性(剥離性)および外観にも優れている。また、実施例1および実施例2は、塗工紙および白板紙の表層中に、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスが含まれているため、密着性がより強固となっている。なお、実施例4では、成形温度を下げることで外観評価を高めており、実施例5では、紙層に高隠蔽紙を用いることで外観評価を高めている。
一方、比較例1は、高い強度が得られたものの、紙の風合いが得られていない。比較例2〜4は、いずれも、強度が低く、高い強度と紙の風合いを両立できていない。比較例5は、紙の風合いは得られているが、成形体の強度は十分ではない。また、比較例5では、離型性及び形状保持性も劣っている。比較例6は、成形体の強度が十分ではなく、形状保持性も劣っている。
10 成形体
12 繊維強化プラスチック領域
14 紙基材領域

Claims (14)

  1. 繊維強化プラスチック領域と、前記繊維強化プラスチック領域の少なくとも一方の面側に接する紙基材領域とを含み、
    前記繊維強化プラスチック領域は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂とを含み、
    前記熱可塑性樹脂の融点は200℃以下である成形体。
  2. 前記紙基材領域はパルプ繊維を含み、
    前記紙基材領域に含まれるパルプ繊維と、前記繊維強化プラスチック領域に含まれるパルプ繊維の合計含有量は、前記成形体の全質量に対して51質量%以上である請求項1に記載の成形体。
  3. 前記紙基材領域は、前記繊維強化プラスチック領域の両面に配される領域である請求項1又は2に記載の成形体。
  4. 前記繊維強化プラスチック領域の密度が0.6〜1.7g/cm3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
  5. 前記紙基材領域の坪量は50〜210g/m2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸、エチレンビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンおよびポリエチレンから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 前記紙基材領域は塗工層を有する紙基材から形成される領域である請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形体。
  8. 前記塗工層は、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含む請求項7に記載の成形体。
  9. 前記紙基材領域は、顔料を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形体。
  10. 曲げ強度が100MPa以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形体。
  11. 曲げ弾性率が9GPa以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形体。
  12. 繊維強化プラスチック成形体用基材と、紙基材を積層し、加熱加圧成形する工程を含み、前記加熱加圧成形する工程は、繊維強化プラスチック成形体用基材と紙基材を接合する工程であり、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材は、パルプ繊維と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、前記熱可塑性樹脂繊維の融点は200℃以下である成形体の製造方法。
  13. 加熱加圧成形する工程では、150℃以上となるように加熱し、かつ5MPa以上となるように加圧する請求項12に記載の成形体の製造方法。
  14. 前記紙基材は、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含有する塗工層を有する請求項12又は13に記載の成形体の製造方法。
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