JP2017021201A - エレクトロクロミック素子の製造方法 - Google Patents

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泰男 片野
碩燦 金
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碩燦 金
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Koji Takeuchi
弘司 竹内
峻 後藤
shun Goto
峻 後藤
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Yuma Usui
祐馬 臼井
八代 徹
Toru Yashiro
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Abstract

【課題】取り出し電極を容易かつ安価に形成することができるエレクトロクロミック素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第一の基板11、第一の電極層12、エレクトロクロミック層13、二の基板16、第二の電極層15、電解質層14を有するエレクトロクロミック素子の製造方法であって、第一の基板11と第二の基板16貼り合わせる工程と、貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を第二の基板16から第一の基板の方向11に一方向にのみ研磨する工程と、貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を第一の基板11から第二の基板16の方向に一方向にのみ研磨する工程と、研磨した領域内に導電性インクを塗布し、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極を形成する工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック素子の製造方法に関する。
電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムという。このエレクトロクロミズムを利用した装置がエレクトロクロミック素子である。エレクトロクロミック素子にはエレクトロクロミズムの特徴に由来する応用が実現できるとして、今日まで多くの研究がなされている。
エレクトロクロミック素子は、一般に、エレクトロクロミック材料を対向する2つの電極間に形成した後、イオン伝導可能な電解質層を介して貼り合せることにより作製される。エレクトロクロミック素子では、2つの電極間に電圧を印加するため、それぞれの電極を電源装置と接続するための取り出し電極を設ける必要がある。この取り出し電極は一般的には2つの電極のパターンをずらして貼り合せ、電極同士が対向しない領域を作ることにより形成されることが多い。
例えば特許文献1では、2つの電極の外縁を部分的に露出又は近接させて取り出し電極形成領域を設け、この取り出し電極形成領域に低抵抗部材を設けることにより取り出し電極を形成することが開示されている。
一方、エレクトロクロミック素子を駆動させるには、この取り出し電極を、電源装置の端子に電気的に接続させる必要があるが、この取り出し電極の領域は、電極が対向していないため、非アクティブな領域となる。
このため、取り出し電極は、あらかじめ形状の決まった平面形状には作りやすいが、利用する上であらかじめ形状を決定することが困難なアプリケーションの場合や、形状が異なるものを多品種生産する場合には、用途ごとに異なる電極設計を行う必要があり、準備する基板の数も増えるなど、量産する上で問題となる。
また、3D面や曲面などのアプリケーションには容易に適用できないという問題があるが、例えばレンズなどの3D形状に適用できれば、光学用途としての適用範囲が広がると期待されている。
しかし、貼り合せる2枚の基板の曲面精度や位置精度により、光学不良が発生しやすいという問題がある。さらに、例えばメガネレンズでは、ユーザーに合わせてレンズの使用する位置を変更する、度数調整するといった必要があるため、曲面形状の異なる高精度な基板を多数準備することが量産する上で問題となる。
これに対して、特許文献1では、あらかじめ片側の基板にエレクトロクロミック素子を形成することで、貼り合せプロセスの精度によらずに取り出し電極の位置ズレを低減できるエレクトロクロミック素子を提案している。
しかしながら、特許文献1で提案している方法では、エレクトロクロミック素子を形成する工程の前に使用する位置を決定する必要があるため、前述した生産性の問題を解消できるものではない。また、片側の基板にエレクトロクロミック素子を形成する場合、すなわち電解質層上に電極を形成する場合、全固体の電解質層を用いると応答速度が遅いという問題がある。
さらに全固体の電解質層として有機材料層を用いると、電解質層上に形成する電極層の電気抵抗が高くなりやすく、正常に酸化還元駆動できないという問題がある。特に、一般的に透明電極として採用されている真空製膜で形成されたITO等の酸化物層は、有機膜表面に製膜した場合、透明性と電気伝導度とを両立するのが困難である。
また、特許文献1においては、真空製膜で多層形成されているが、真空製膜では大型化が困難であるとともに、コストアップの要因となってしまう。加えて、製膜プロセスの熱影響が避けられず、基板がガラス等の耐熱性材料に限定されやすい。さらに、無機エレクトロクロミック反応は水分の影響を受けやすく、色彩も青色系に限定されてしまう。
一方、例えば特許文献2では貼り合せ基板に凹部を設け、そこに透明かつ導電性のインクを充填し厚みを増やすことで、基板の端部を取り出し電極として利用する方法を提案している。これによれば、レンズ締結部の緩みや電気配線のずれによる断線と、漏電によるショート等の電気的トラブルを防ぐことができるとしている。
しかし、特許文献2においては基材に凹部を設ける工程や、凹部にのみ導電性インクを塗り分ける工程が必要であり、生産性の面で問題があった。
以上のことから、取り出し電極を容易かつ安価に形成でき、光学用途として利用する際の形状を容易に得られるエレクトロクロミック素子が望まれていた。
本発明は従来における前記諸問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、取り出し電極を容易かつ安価に形成することができるエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、第一の基板と、前記第一の基板上に形成された第一の電極層と、前記第一の電極層上に形成されたエレクトロクロミック層と、前記第一の基板と対向する第二の基板と、前記第二の基板における前記第一の基板側の面に形成された第二の電極層と、前記第一の電極層と前記第二の電極層の間に形成された電解質層とを有するエレクトロクロミック素子の製造方法であって、前記第一の基板と前記第二の基板とを前記電解質を介して貼り合わせる工程と、前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を前記第二の基板から前記第一の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部であって、前記第二の基板から前記第一の基板の方向に研磨する部分を除いた領域を前記第一の基板から前記第二の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、前記研磨した領域内に導電性インクを塗布し、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極を形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、取り出し電極を容易かつ安価に形成することができるエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することができる。
エレクトロクロミック素子の一例における断面の模式図である。 エレクトロクロミック素子の他の例における断面の模式図である。 エレクトロクロミック素子の基板を研磨した場合の形状を説明するための模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための他の模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための他の模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための他の模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための他の模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状と導電性インクの塗布を説明するための他の模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子の加工工程と導電性インクの塗布を説明するための模式図である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を眼鏡フレームにはめ込んだ場合の要部模式図及び拡大写真である。 本発明におけるエレクトロクロミック素子を研磨した場合の形状を説明するための模式図である。
以下、本発明に係るエレクトロクロミック素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。なお、本発明は定型の形状の光学用途として利用するエレクトロクロミック素子にも効果があり、本発明によれば光学用途として利用する際にも、取り出し電極を容易かつ安価に形成することができる。
(第一の実施形態)
まず、本発明における一実施形態について説明する。本実施形態は、第一の基板と、前記第一の基板上に形成された第一の電極層と、前記第一の電極層上に形成されたエレクトロクロミック層と、前記第一の基板と対向する第二の基板と、前記第二の基板における前記第一の基板側の面に形成された第二の電極層と、前記第一の電極層と前記第二の電極層の間に形成された電解質層とを有するエレクトロクロミック素子の製造方法である。
そして、前記第一の基板と前記第二の基板とを前記電解質を介して貼り合わせる工程と、前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を前記第二の基板から前記第一の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部であって、前記第二の基板から前記第一の基板の方向に研磨する部分を除いた領域を前記第一の基板から前記第二の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、前記研磨した領域内に導電性インクを塗布し、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極を形成する工程とを有する。
図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子を示す概略断面図である。図1には、第一の基板11、第一の電極層12、エレクトロクロミック層13、電解質層14、第二の電極層15、第二の基板16が図示されている。図1に示されるように、第一の基板11と第二の基板16は対向し、電解質層14は第一の電極層12と第二の電極層15との間に形成されている。
なお、便宜上、第一の基板11と第二の基板16、第一の電極層12と第二の電極層15の各々において、互いに対向する面を内面と称し、各々の内面とは反対側の面を外面と称する。本実施形態では、第一の電極層12の内面はエレクトロクロミック層13と接しており、第一の電極層12の外面は第一の基板11と接している。また、第二の電極層15の内面は電解質層14と接しており、第二の電極層15の外面は第二の基板16と接している。
本実施形態のエレクトロクロミック素子においては、素子側面に露出する第一の電極層12と電源装置を接続する第一の取り出し電極が形成され、素子側面に露出する第二の電極層15と電源装置を接続する第二の取り出し電極が形成される。そして、第一の電極層12と第二の電極層15との間に電圧を印加することによって、エレクトロクロミック層が電荷を授受し、酸化還元反応して発消色する。
本発明によれば、第一の電極層12及び第二の電極層15に各取り出し電極のためのパターニングなしに、エレクトロクロミック素子の側面を一方向に研磨するだけで各取り出し電極を形成できるため、容易かつ安価に取り出し電極を形成することができる。これにより、安価な光学用素子を実現することができる。
図3に樹脂フィルムを研磨する場合の一般的な例を示す。図3(a)は、樹脂フィルム(符号17a、17b)の側面を研磨する場合の一例を示す図であり、図中の矢印は研磨方向を示す。図3(a)のように樹脂フィルム17a、17bのぞれぞれの側面を一方向のみ研磨すると、研磨により生じる摩擦熱により、図3(b)に示されるように、側面の研磨する方向に沿って、角がダレる箇所(符号24)とバリが発生する箇所(符号22)が生じてしまう。
このことから一般には、研磨によるダレやバリが生じないように、一方向のみの研磨ではなく、往復して研磨するのであるが、本発明は、このダレとバリの発生を逆にうまく利用したものである。
図4、図5は、本実施形態における研磨方法及び導電性インク26の塗布の一例を説明するための図である。図4、図5では、側面を一方向に研磨し、側面から第一の電極層12又は第二の電極層15と接続する取り出し電極について説明する。
本実施形態における例では、図1の素子構成のエレクトロクロミック素子において、素子の側面を図4(a)の矢印に示されるように、第二の基板16から第一の基板11の方向へ一方向のみ研磨する。すると、図4(b)に示されるように、第二の基板16の側面にバリ22が発生し、第二の電極層15の側面を覆うこととなり、第二の電極層15は素子側面に直接露出しなくなる。一方、第一の基板11の側面はダレ24が生じ、側面内部にすこしへこみができた状態で第一の電極層12は側面で露出する。
この研磨された素子側面の状態で、図4(c)に示されるように、研磨部分のみに導電性インク26を塗布すると、第二の電極層15は第二の基板16のバリにより遮蔽されて導電性インク26と接触しない。一方、第一の電極層12は、導電性インク26と接触する。このように、素子側面を一方向のみ研磨することで、第一の電極層12にのみ接続する第一の取り出し電極を形成することができる。
同様に、図1の素子構成のエレクトロクロミック素子において、素子の側面を図5(a)の矢印に示されるように、第一の基板11から第二の基板16の方向へ一方向のみ研磨する。すると、図5(b)に示されるように、第一の基板11の側面にバリ22が発生し、第一の電極層12の側面を覆うこととなり、第一の電極層12は素子側面に直接露出しなくなる。一方、第二の基板16の側面はダレ24が生じ、側面内部にすこしへこみができた状態で第二の電極層15は側面で露出する。
この研磨された素子側面の状態で、図5(c)に示されるように、研磨部分のみに導電性インク26を塗布すると、第一の電極層12は第一の基板11のバリにより遮蔽されて導電性インク26と接触しない。一方、第二の電極層15は、導電性インク26と接触する。このように、素子側面を一方向のみ研磨することで、第二の電極層15にのみ接続する第二の取り出し電極を形成することができる。
以上のように、第一の電極層12と第二の電極層15の両方が露出しているエレクトロクロミック素子の側面であっても、研磨する方向を一方向のみにして、その研磨方向を制御することで、第一の電極層12のみに接続する第一の取り出し電極と第二の電極層15のみに接続する第二の取り出し電極を形成することができる。
このように取り出し電極を形成することにより、エレクトロクロミック素子側面に第一の電極層12と第二の電極層15が両方とも露出していても、個別に取り出し電極を形成できるため、どんな任意形状にも簡単に対応でき、安価に取り出し電極付のエレクトロクロミック素子を提供可能となる。
また、本実施形態では、第一の基板11と第二の基板16を貼り合わせる工程の後、所望の形状に加工し、加工した後に研磨する工程を行ってもよい。
図6は取り出し電極形成の一例を示す図である。第一の基板11と第二の基板16を貼り合わせる工程の後、図6(a)に示されるような長径と短径を有する小判形状に切断加工してもよい。第一の電極層12と第二の電極層15の両方が露出しているエレクトロクロミック素子の側面であっても、図6(a)に示されるように、研磨する方向を一方向のみにして、その研磨方向を制御する。図6(a)では、矢印19aに示されるように、第二の基板16側から第一の基板11側の方向へ研磨し、また、矢印19bに示されるように、第一の基板11側から第二の基板16側の方向へ研磨する。これにより、図6(b)に示されるように、第一の電極層12のみに接続する第一の取り出し電極(導電性インク26a)と第二の電極層15のみに接続する第二の取り出し電極(導電性インク26b)を形成することができる。
以下、第一の実施の形態に係るエレクトロクロミック素子を構成する各構成要素について詳細に説明する。
<第一の基板及び第二の基板>
第一の基板11及び第二の基板16は、第一の電極層12、エレクトロクロミック層13、電解質層14、第二の電極層15を支持する機能を有する。第一の基板11及び第二の基板16としては、これらの各層を支持できれば、周知の熱成型可能な樹脂材料等をそのまま用いることができる。
第一の基板11及び第二の基板16としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基板を用いてもよい。
なお、エレクトロクロミック素子が第二の電極層15側から視認する反射型表示装置である場合は、第一の基板11と第二の基板16のどちらかの透明性は不要である。
また、第一の基板11、第二の基板16の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、視認性を高めるために透明絶縁層、反射防止層等がコーティングされていてもよい。
<第一の電極層及び第二の電極層>
第一の電極層12及び第二の電極層15の材料としては、例えば透明導電性酸化物材料が挙げられる。透明導電性酸化物材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下、「ITO」と称する)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と称する)等の無機材料などが挙げられる。
これらの中でも、真空成膜により形成されたインジウム酸化物(以下、「In酸化物」と称する)、スズ酸化物(以下、「Sn酸化物」と称する)、及び亜鉛酸化物(以下、「Zn酸化物」と称する)のいずれか1つを含む無機材料が好ましい。
前記In酸化物、Sn酸化物、及びZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であるとともに、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnO、InZnOが特に好ましい。
また、透明性を有する銀、金、銅、カーボンナノチューブ、金属酸化物などのネットワーク電極又はこれらの複合層も有用である。ネットワーク電極とは、カーボンナノチューブや他の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して透過率を持たせた電極である。
さらに、電極層をネットワーク電極と前記導電性酸化物の積層構成(以下、「導電性酸化物層」と称することがある)とすることがより好ましい。このような積層構成にすることにより、エレクトロクロミック層をムラなく発消色させることができる。なお、導電性酸化物層はナノ粒子インクを塗布することにより形成することができる。
第一の電極層12及び第二の電極層15における各々の厚みは、エレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整されるため、適宜変更が可能である。
第一の電極層12及び第二の電極層15の材料としてITO真空製膜を用いた場合、第一の電極層12及び第二の電極層15における各々の厚みは、20nm〜500nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましい。
導電性酸化物層では、ナノ粒子インクを塗布して形成する場合の厚みは、0.2μm〜5μmが好ましい。また、ネットワーク電極の場合は0.2μm〜5μmが好ましい。
さらに、調光ミラーとして利用する場合には、第一の電極層12及び第二の電極層15のいずれかが反射機能を有する構造であってもよい。その場合には、第一の電極層12及び第二の電極層15の材料として金属材料を含むことができる。
前記金属材料としては、例えば、Pt、Ag、Au、Cr、ロジウム、又はこれらの合金、あるいはこれらの積層構成などが挙げられる。
第一の電極層12及び第二の電極層12の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、第一の電極層12及び第二の電極層15の材料を塗布して形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法などを用いることができる。
また、必要に応じて、第一の電極層12と接する位置で、かつ第一の電極層12の内面に劣化防止層を形成してもよい。同様に、第二の電極層15と接する位置で、かつ第二の電極層15の内面に劣化防止層を形成してもよい。劣化防止層を形成することにより、酸素や水に対するバリア性を向上させることができる。劣化防止層の材料は、特に制限されるものではなく、適宜変更が可能であるが、例えば、ITO、FTO、ATO等が挙げられる。
<第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極>
取り出し電極として導電性インクを用いる場合の材料としては、特に制限されるものではなく、導電性の材料であれば適宜変更が可能である。
また、研磨した素子側面領域に導電性インクを塗布する方法としては、インクジェット方式やローラーコートなどが適する。
第一の電極層12及び第二の電極層15からの取り出し電極は、素子側面を研磨した部分に形成する。研磨方法としては、例えば取り出し電極と同じ幅の研磨ローラを素子側面にあてて、一方向のみ研磨する。研磨ローラの研磨面は、番手が#240〜#600のやや粗めの番手が望ましい。#800以上の細かな番手で研磨すると基板に発生するバリの長さが短くなりバリで電極層を十分に遮蔽できなくなる。また、研磨する場合、研磨により発生する摩擦熱を利用して基板にバリやダレを加工するため、ドライ研磨が望ましい。研磨ローラの幅は、1mm〜3mmが好ましい。
調光サングラス用のエレクトロクロミック素子の場合、素子側面に回転方向がお互い反対方向である研磨ローラを1mm〜2mmの間隔をあけて並列して配置し、エレクトロクロミック素子に接触させて同時に研磨すると生産性がよい(図6(a)参照。なお、研磨ローラは図示せず)。
研磨面への導電性インクの形成は、インクジェット塗布やローラ塗布等により行うことができる。インクジェット塗布の場合、銀や銅のナノサイズの微粒子を分散した分散液をインク(例えば、AgIc社製、銀インクなど)として、市販インクジェットプリンターヘッドを用いて、研磨面のみに塗布する(図6(b)参照。なお、インクジェットヘッドは図示せず)。ローラ塗布の場合、銀微粒子を分散した熱硬化性樹脂をペースト状にしたインクをローラ面に付与して、研磨面にローラを接触させて塗布する。ローラの幅は研磨面の幅よりも狭くしておくことが望ましい。
<エレクトロクロミック層>
エレクトロクロミック層13は、エレクトロクロミック材料を含む層である。
エレクトロクロミック材料としては、無機エレクトロクロミック化合物及び有機エレクトロクロミック化合物のいずれであっても構わない。また、エレクトロクロミズムを示すことで知られる導電性高分子を用いてもよい。
なお、有機材料は、その分子構造により様々な色彩発色が可能であることから、カラー表示装置として有望である。一方、無機材料は色彩の制御に課題があるが、この特徴を利用し、色彩度が低いことが利点となるアプリケーションとして調光ガラスやNDフィルタへの実用化が検討されている。
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタンなどが挙げられる。
有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、ビオロゲン、希土類フタロシアニン、スチリルなどが挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
エレクトロクロミック層は、導電性又は半導体性微粒子に有機エレクトロクロミック化合物を担持した構造であることが好ましい。具体的には、電極表面に粒径5nm〜50nm程度の微粒子を結着させ、前記微粒子の表面にホスホン酸やカルボキシル基、シラノール基等の極性基を有する有機エレクトロクロミック化合物を吸着させた構造である。
このような構造の場合、微粒子の大きな表面効果を利用して、効率よく有機エレクトロクロミック化合物に電子が注入されるため、従来のエレクトロクロミック表示素子と比較して高速応答が可能となる。さらに、微粒子を用いることで表示層として透明な膜を形成することができるため、エレクトロクロミック色素の高い発色濃度を得ることができる。また、複数種類の有機エレクトロクロミック化合物を導電性又は半導体性微粒子に担持することもできる。さらに導電性粒子は電極層としての導電性を兼ねることができる。
ポリマー系及び色素系のエレクトロクロミック化合物の具体例としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、ベンジジン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、発消色電位が低く良好な色値を示す点から、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましく、例えば、下記一般式(1)で表されるジピリジン系化合物がより好ましい。
前記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表し、R1及びR2の少なくとも一方は、COOH、PO(OH)、及びSi(OC2k+1(ただし、kは、1〜20を表す)から選択される置換基を有する。
前記一般式(1)において、Xは、一価のアニオンを表す。前記一価のアニオンとしては、カチオン部と安定に対をなすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )などが挙げられる。
前記一般式(1)において、n、m、及びlは、それぞれ独立に0、1、又は2を表す。
前記一般式(1)において、A、B、及びCは、各々独立に置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、及び複素環基のいずれかを表す。
また、金属錯体系及び金属酸化物系のエレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、プルシアンブルー等の無機系エレクトロクロミック化合物を用いることができる。
前記エレクトロクロミック化合物を担持する導電性又は半導体性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物を用いることが好ましい。
前記金属酸化物の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、及び酸化タングステンから選択される少なくとも1種が好ましく、より発消色の応答速度に優れた色表示が可能である点から、酸化チタンが特に好ましい。
また、導電性又は半導体性微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、エレクトロクロミック化合物を効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下、比表面積という)が大きい形状が好ましく用いられる。例えば、微粒子が、ナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比が優れる。
エレクトロクロミック層13及び導電性又は半導体性微粒子の層は真空製膜により形成することも可能であるが、生産性の点で粒子分散ペーストとして塗布形成することが好ましい。
エレクトロクロミック層13の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこいとができるが、0.2μm〜5.0μmが好ましい。厚みが0.2μm未満であると、発色濃度が得られにくくなることがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大するとともに、着色によって視認性が低下しやすくなることがある。
<電解質層>
電解質層14は、固体状であってもよく、液体としての電解液であってもよい。電解液の漏れや乾燥を防ぐ観点から、固体電解質層であることが好ましい。この場合、光又は熱硬化樹脂中に電解質を保持した膜として形成される。
さらに電解質層14の層厚を制御する無機微粒子を混合していることが好ましい。このような電解質層14は前記無機微粒子と硬化型樹脂、電解質を混合した溶液としてエレクトロクロミック層13上にコートした後、光又は熱で硬化した膜とすることが好ましいが、あらかじめ多孔質の無機微粒子層を形成した後、無機微粒子層に浸透するように、硬化型樹脂、電解質を混合した溶液としてコートした後、光又は熱で硬化した膜とすることもできる。さらに、エレクトロクロミック層13が導電性又は半導体性ナノ粒子にエレクトロクロミック化合物が担持された層である場合は、エレクトロクロミック層に浸透するように、硬化型樹脂、電解質を混合した溶液としてコートした後、光又は熱で硬化した膜とすることもできる。
前記電解液としては、イオン性液体等の液体電解質、又は固体電解質を溶媒に溶解した溶液が用いられる。
電解質の材料としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BFなどが挙げられる。
前記イオン性液体としては、特に制限はなく、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。
有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
前記分子構造は、カチオン成分とアニオン成分とからなる。
前記カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体等の芳香族系の塩;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム等の脂肪族4級アンモニウム系化合物などが挙げられる。
前記アニオン成分としては、大気中の安定性の面でフッ素を含んだ化合物が好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO、B(CNなどが挙げられる。
これらのカチオン成分とアニオン成分の組み合わせにより処方したイオン性液体を用いることができる。
前記溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類やそれらの混合溶媒等を用いることができる。
前記硬化樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの一般的な材料を挙げることができるが、電解質との相溶性が高い材料が好ましい。このような構造としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエチレングリコールの誘導体が好ましい。また、前記硬化樹脂としては、光硬化可能な樹脂を用いることが好ましい。熱重合や、溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間で素子を製造できるためである。
また、エレクトロクロミックは電気化学現象であるため、電解質層の性能(イオン伝導度等)が応答速度や発色のメモリ効果に影響する。電解質層は電解質を溶媒に溶かした液体状である場合は速い応答性を得やすいが、素子強度及び信頼性の点で固体化、ゲル化による改良が検討されている。
従来から、電気化学素子としての電池やエレクトロクロミック素子では、電解液が使用されているが、電解液の漏れや溶媒の揮発による電池内の乾燥があるばかりでなく、電池容器内では、電解液の偏りなどが内部インピーダンスの上昇や内部短絡の原因になりやすい。特にエレクトロクロミック素子は、調光ガラスや表示用途に用いる場合、少なくとも一方向は、ガラスやプラスチック等の透明材料で封止する必要があるため、金属等で電解質を完全に密閉してしまうことは困難であり、電解液の漏れや揮発がより大きな問題となる。このため、エレクトロクロミック素子の用途によっては、高分子固体電解質を用いることが好ましい場合がある。
そのため、特に好ましい組み合わせは、オキシエチレン鎖やオキシプロピレン鎖を含有するマトリックスポリマーとイオン性液体との固溶体で構成されている電解質層である。この構成を用いることにより、硬度と高いイオン伝導度を両立しやすく、さらに加工性に優れる。
前記無機微粒子としては、多孔質層を形成して電解質と硬化樹脂を保持することができる材料であれば特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック反応の安定性、視認性の点から、絶縁性、透明性、耐久性が高い材料が好ましい。具体的な材料としては、シリコン、アルミウム、チタン、亜鉛、錫等の酸化物又は硫化物、あるいはそれらの混合物を挙げることができる。
前記無機微粒子の大きさ(平均粒径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜10μmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
<保護層>
また、第一の基板11と第二の基板16からなるエレクトクロミック素子は、そのままでは、側面が大気と接触しているため、水分や酸素の浸入により素子の機能劣化が発生する恐れがある。このような不具合を防ぐため、エレクトロクロミック素子の側面及び/又は基板面を保護する保護層(不図示)を形成することが望ましい。保護形成工程は、所望の大きさに加工後に取り出し電極を作製し、その後実施する。
保護層は、取り出し電極部を除いて、エレクトロクロミック素子側面部を物理的及び化学的に保護するように形成する。保護層は、例えば、紫外線硬化性や熱硬化性の絶縁性樹脂等を、側面及び/又は基板面を覆うように塗布し、その後硬化させることにより形成できる。また、硬化樹脂と無機材料との積層保護層とすることがより好ましい。無機材料との積層構造にすることで、酸素や水に対するバリア性が向上する。
前記無機材料としては、絶縁性、透明性、耐久性が高い材料が好ましく、具体的な材料としては、シリコン、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫などの酸化物又は硫化物、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。これらの膜はスパッタ法や蒸着法などの真空製膜プロセスで容易に形成することができる。
前記硬化性樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが挙げられる。
保護層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜10μmが好ましい。
<その他>
また、必要に応じてエレクトロクロミック層13上に、ギャップ材層を形成してもよい。例えば絶縁性無機微粒子層や絶縁性有機微粒子層をギャップ材層として形成し、電極層どうしのショートを防止する機能を付与することができる。無機微粒子としては、大きさ10nmから50nmのシリカ微粒子などが適する。有機微粒子としては、大きさ10μmから50μmのポリアミド樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂などが適する。
(第二の実施形態)
次に、本発明におけるその他の実施形態について説明する。なお、上記の実施形態と同様の点についての説明は省略する。本実施形態におけるエレクトロクロミック素子では、第一の電極層12又は第二の電極層15に接し、かつ、第一の電極層12と第二の電極層15との間に形成された電気活性層34を少なくとも有し、必要に応じて多孔質絶縁層32を有する。
図2は、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の一例を示す概略断面図である。図2には、第一の基板11、第一の電極層12、エレクトロクロミック層13、電解質層14、多孔質絶縁層32、電気活性層34、第二の電極層15、第二の基板16が図示されている。図2に示されるように、第一の基板11と第二の基板16は対向し、電解質層14は第一の電極層12と第二の電極層15との間に形成されている。
図2の電気活性層34は、発色、消色時に電極パターン内側と外側の発消色状態を速やかにそろえるための電荷拡散を促進させる働きを担う。多孔質絶縁層32は、エレクトロクロミック素子形成後、素子に外力が加わったときに第一の基板11又は第二の基板16が変形してお互いの隙間が狭くなっても電気的にショートすることを防止するためである。絶縁層はポーラスな構造とすることで、電気活性層34へのイオン伝導性が確保できる。
本実施形態のエレクトロクロミック素子において、素子側面よりむき出した第一の電極層12に接触して第一の取り出し電極を形成し、第一の電極層12と電源装置を接続する。また、素子側面よりむき出した第二の電極層15に接触して第二の取り出し電極を形成し、第二の取り出し電極は、第二の電極層15と電源装置を接続する。そして、第一の電極層12と第二の電極層15との間に電圧を印加することによって、エレクトロクロミック層が電荷を授受し、酸化還元反応して発消色する。
本発明によれば、第一の電極層12及び第二の電極層15に各取り出し電極のためのパターニングなしに、エレクトロクロミック素子の側面を一方向に研磨するだけで各取り出し電極を形成できるため、容易かつ安価に取り出し電極を形成することができる。これにより、安価な光学用素子を実現することができる。
図7、図8は、本実施形態における研磨方法及び導電性インク26の塗布の一例を説明するための図である。図7、図8では、側面を一方向に研磨し、側面から第一の電極層12または第二の電極層15と接続する取り出し電極を説明する。
本実施形態における例では、図2の素子構成のエレクトロクロミック素子において、
素子の側面を図7(a)の矢印に示されるように、第二の基板16から第一の基板11の方向へ一方向のみ研磨する。すると、図7(b)に示されるように、第二の基板16の側面にバリ22が発生し、第二の電極層15の側面を覆うこととなり、第二の電極層15は素子側面に直接露出しなくなる。一方、第一の基板11の側面はダレ24が生じ、側面内部にすこしへこみができた状態で第一の電極層12は側面で露出する。
この研磨された素子側面の状態で、図7(c)に示されるように、研磨部分のみに導電性インク26を塗布すると、第二の電極層15は第二の基板16のバリにより遮蔽されて導電性インク26と接触しない。一方、第一の電極層12は、導電性インク26と接触する。このように、素子側面を一方向のみ研磨することで、第一の電極層12にのみ接続する第一の取り出し電極を形成することができる。
同様に、図2の素子構成のエレクトロクロミック素子において、素子側面を図8(a)の矢印に示されるように、第一の基板11から第二の基板16の方向へ一方向のみ研磨する。すると、図8(b)に示されるように、第一の基板11の側面にバリ22が発生し、第一の電極層12の側面を覆うこととなり、第一の電極層12は素子側面に直接露出しなくなる。一方、第二の基板16の側面はダレ24が生じ、側面内部にすこしへこみができた状態で第二の電極層15は側面で露出する。
この研磨された素子側面の状態で、図8(c)に示されるように、研磨部分のみに導電性インク26を塗布すると、第一の電極層12は第一の基板16のバリにより遮蔽されて導電性インク26と接触しない。一方、第二の電極層15は、導電性インク26と接触する。このように、素子側面を一方向のみ研磨することで、第二の電極層15にのみ接続する第二の取り出し電極を形成することができる。
また、本実施形態では、第一の基板11と第二の基板16を貼り合わせる工程の後、所望の形状に加工し、加工した後に研磨する工程を行ってもよい。
図9は取り出し電極形成の一例を示す図である。第一の基板11と第二の基板16を貼り合わせる工程の後、図9(a)に示されるような長径と短径を有する小判形状に切断加工してもよい。第一の電極層12と第二の電極層15の両方が露出しているエレクトロクロミック素子の側面であっても、図9(a)に示されるように、研磨する方向を一方向のみにして、その研磨方向を制御する。図9(a)では、矢印19aに示されるように、第二の基板16側から第一の基板11側の方向へ研磨し、また、矢印19bに示されるように、第一の基板11側から第二の基板16側の方向へ研磨する。これにより、図9(b)に示されるように、第一の電極層12のみに接続する第一の取り出し電極(導電性インク26a)と第二の電極層15のみに接続する第二の取り出し電極(導電性インク26b)を形成することができる。
このように取り出し電極の形成することにより、エレクトロクロミック素子側面に第一の電極層12と第二の電極層15が両方とも露出していても、個別に取り出し電極を形成できるため、どんな任意形状にも簡単に対応でき、安価に取り出し電極付のエレクトロクロミック素子を提供可能となる。
以下、第二の実施形態に係るエレクトロクロミック素子を構成する各構成要素について詳細に説明する。なお、第一の基板11及び第二の基板16、第一の電極層12及び第二の電極層15、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極、エレクトロクロミック層13、電解質層14、保護層の材料及び製造方法は第一の形態と同じである。
<電気活性層>
電気活性層34は、発色、消色時に電極パターン内側と外側の発消色状態を速やかにそろえるための電荷拡散を促進させる働きを担う。
エレクトロクロミック素子内部の電荷拡散は、エレクトロクロミック素子の発消色電圧エレクトロクロミック層13の発消色電位、電解質層14のイオン伝導度、エレクトロクロミック層13及び電気活性層34のシート抵抗などに依存する。
本実施形態における電気活性層34に用いる材料としては、前述したエレクトロクロミック材料に代表される可逆的な酸化還元反応を示す材料であれば特に制限はないが、エレクトロクロミック層の酸化還元反応と逆反応が起きるように組み合わせることが好ましい。これにより、エレクトロクロミック素子の発消色電圧を低く抑えることが可能となる。
また、電気活性層34の材料としては、前述した導電性高分子や導電性又は半導体性微粒子といった導電性材料も用いることができる。
電気活性層34は、第一の電極層12又は第二の電極層15に接し、かつ、第一の電極層12と第二の電極層15との間に形成される。電気活性層34は、第二の電極層15に接して形成されることが好ましいが、第一の電極層12に接して形成することもできる。
電気活性層34を第一の電極層12に接した状態で用いる場合、電極パターン内側と外側の間の電気抵抗が、エレクトロクロミック素子の第一の電極12と第二の電極15の間の電気抵抗を下回らないように導電性材料の濃度や厚みをコントロールする必要がある。これはパターン内外の電気的抵抗が低いと、電極パッドを形成した際、上下電極間の電気的絶縁性が悪化してしまうためである。
電気活性層34の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500nm〜5μmが好ましい。
<多孔質絶縁層>
また、必要に応じて多孔質絶縁層32を設けることができる。多孔質絶縁層32の材料としては、多孔質であればよく特に限定されるものではないが、絶縁性が高く、耐久性が高く、成膜性に優れた有機材料、無機材料、又はそれらの複合体が好ましい。
多孔質絶縁層32の形成方法としては、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダー等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダー等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。
具体例としては、金属酸化物微粒子(SiO粒子、Al粒子など)とポリマー結着剤からなるポリマー混合粒子膜、多孔性有機膜(ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂)、多孔質膜状に形成した無機絶縁材料膜などが挙げられる。
多孔質絶縁層32の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm〜10μmが好ましい。
(第三の実施形態)
次に、本発明におけるその他の実施形態について説明する。なお、上記の実施形態と同様の点についての説明は省略する。
本実施形態では、第一の基板11及び第二の基板16のうち少なくとも一つがレンズ基板であり、第二の実施形態におけるエレクトロミック素子が光学レンズであることを特徴とする。
これによって、例えばレンズの透過率を電気的に制御する調光レンズといった光学素子を作製することができる。そのため、本実施形態では調光制御が可能な光学レンズを提供することができる。なお、レンズ基板は、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。
一般に、2つの基板に挟まれたエレクトロクロミック素子では、各基板に電源装置に接続するため、各基板に取り出し電極用のパターンが形成された電極を有する。このため、エレクロトクロミック素子を光学素子、例えば調光サングラスなどに応用する場合、各サングラスのフレームデザインに応じて電極パターンを形成する必要があり、フレームデザインの種類数分の異なる電極パターンを形成した基板が必要であり、同一種類を大量生産することができず、安価な調光サングラスを作製することができない。更に度付サングラスの場合、度数に応じて基板が必要になり、更にコストアップとなる。
本発明は、2つの基板に挟まれたエレクトロクロミック素子をその後、所望の形状に加工した後、簡便に電極の取出しが可能となる製造方法であり、ベースとなる素子を大量生産し、必要に応じて所望の形状に加工して電極取り出し加工を行うため調光サングラスなどの用途に対して安価に製造することができる。また、本実施形態によれば光学用途として利用する際における所望の形状のエレクトロクロミック素子を安価に提供することができる。
図10は、本実施形態に係る調光レンズとしてのエレクトロクロミック素子を示す図である。なお、図10には、光学中心43が図示されている。
本実施形態では、光学レンズ41の光学中心43が、レンズ加工用の基準点と一致することが好ましい。これによって、例えばユーザーに合わせてレンズの使用する位置を変更する、度数調整するといったオンデマンド加工が必要とされる視力矯正用の調光眼鏡等に応用することが可能である。
特に視力矯正用の眼鏡では、レンズの光学中心と装用者の瞳の位置関係が視界のゆがみ等の不具合の原因となる。本実施形態によれば、レンズの光学中心をメガネフレームの任意の位置に配置することができる。
なお、光学レンズとしてのエレクトロクロミック素子は、第一の基板11もしくは第二の基板16そのものが光学レンズであってもよいし、電極層を形成した薄い樹脂製基板を樹脂製光学レンズと一体化させた光学レンズをどちらかの基板としてもよい。
エレクトロクロミック素子からなる円形の光学レンズの原版は、第一の電極層12及び第二の電極層15は各基板前面に形成しておく。このため、各度数のエレクトロクロミック素子からなる円形の光学レンズの原版は大量生産が可能であり、個人の度数やメガネフレームに応じてレンズ加工することができる。
図10(a)に示されるように、エレクトロクロミック素子からなる円形の光学レンズ41の原版は、光学中心43を基準点として、各メガネフレーム形状に応じて、破線部(フレームにあわせたカット部42)を切断加工する。切断には、レーザー加工や機械的切削加工などが適する。
破線に沿って切断した後、図10(b)に示されるように、取り出し電極部分のみ研磨方向がお互い異なる一方向のみの研磨を行う(図6(a)、図9(a)参照)。その後、研磨部分に導電性インクを塗布することで、図10(c)に示されるように、第一の電極12及び第二の電極15にのみ接続する取り出し電極(符号45)を形成する。
図11は、図10で製造した光学レンズをメガネフレームにはめ込んだ場合の要部模式図を示す図である。上記のようにして製造したエレクトロクロミック素子からなる円形の光学レンズは、図11の例に示されるように、エレクトロクロミック素子に電源を供給する電極端子を内蔵したメガネフレームにはめ込まれる。このとき、光学レンズをはめ込むため、上記研磨では、ヤゲン形状に加工することが好ましい。
なお、図11において、リム部52にエレクトロクロミック素子からなる円形の光学レンズ41をはめ込む際、リード電極51とレンズ部取り出し電極45との間に弾性導電性部材54を設け、そのレンズの取り出し電極45に対抗する位置には弾性部材53を設けることが好ましい。これにより、頭部装着後の人の行動によってメガネフレームがゆがんでもリード電極51とレンズ部取り出し電極45との接触が維持され、信頼性が向上する。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<エレクトロクロミック素子の作製>
実施例1は、図1に示すエレクトロクロミック素子を作製する例を示すものである。
<<第一の電極層及びエレクトロクロミック層の形成>>
まず、第一の基板11として一辺92mmの正方形のポリカーボネート基板(三菱ガス化学社製、ハードコートシート・ユーピロンIMR05、厚み0.5mm)を準備した。この基板上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第一の電極層12を第一の基板11全面に形成した。
次に、エレクトロクロミック層13を形成するため、このITO膜の表面に酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み約1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。続いて、この酸化チタン微粒子の層の上にエレクトロクロミック化合物として、下記構造式(1)で表される化合物を1.5質量%含む2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃で10分間アニール処理を行うことにより、酸化チタン粒子膜に担持(吸着)させて、エレクトロクロミック層13を形成した。
続いて、エレクトロクロミック層13上に、平均一次粒径20nmのSiO微粒子分散液(シリカ固形分濃度24.8質量%、ポリビニルアルコール1.2質量%、及び水74質量%)をスピンコートし、絶縁性無機微粒子層を電極層どうしのショートを防止するためのギャップ材層として形成した。形成した絶縁性無機微粒子層の厚みは約2μmであった。
<<第二の電極層の形成>>
第二の基板16として第一の基板11と同形状・同厚膜のポリカーボネート基板を準備した。この基板上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第二の電極層15を基板全面に形成した。
<<電解質層の形成>>
第一の基板11と第二の基板16をエレクトロクロミック層13及び第一の電極層12を内側にして予め貼り合せておいて、貼り合せ面の側面隙間から、下記組成の電解液を流し込み、毛管現象を利用して、第一の基板11と第二の基板16の間に電解質層14を充填し、その後、得られた貼り合せ素子をUV(波長250nm)照射装置(ウシオ電機社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射し、電解質液を硬化させて電解質層14を形成した。
[組成]
・IRGACURE184(BASFジャパン社製):5質量部
・PEG400DA(日本化薬社製):100質量部
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製):50質量部
<<取り出し電極の形成>>
レーザー加工機(CGC LaserPro VenusII)を用い、電解質層14を充填した第一の基板11と第二の基板16を張り合わせた基板を、図6に示されるような長径70mm、短径40mmの小判形状に切断加工した。基板切断後、研磨フィルム(3M社ラッピンングフィルム番手#400、幅2mm)を両面テープで巻き付けたローラ(材質POM、幅1.5mm 直径20mm)を回転数500rpmで回転させながら基板側面(19a)に5秒間接触させた。もう一箇所の基板側面(19b)に回転方向を逆にして研磨ローラを5秒間接触させた。
第二の基板16から第一の基板11の方向へ一方向のみ研磨した研磨面の拡大写真を図12に示す。図12(a)は研磨の様子を模式的に説明するための断面図であり、図12(b)及び図12(c)は、図12(a)における(A)部分である上部拡大写真である。また、図12(c)はダレ部分及びバリ部分を説明するために図12(b)に対して補助線を入れたものである。図12に示されるように、第二の基板16にはバリが発生し、第二の電極層15を塞ぎ、第二の電極層15が側面に露出するのを防止しているのを確認した。
次に、それぞれの研磨した基板側面に、幅1mmで熱硬化性導電性ペースト(トーヨーケム社、「RA FS 074」)を1mm幅、膜厚100μmでローラー塗布(幅1mm、厚み1mmのウレタンスポンジ付ローラ(直径10mm))した。
<<保護層の形成>>
次に、所望の大きさに切断加工したエレクトロクロミック素子の貼り合せた基板の側面部に取り出し電極部分を除いて、ディスペンサー(岩下エンジニアリング社製、AD3300C)を用いて、紫外線硬化接着剤(商品名:KARAYADR604、日本化薬社製)を微量塗布し、その後、スポットUV露光機(ウシオ電機、スポットUV照射装置)により、塗布面を紫外光照射により硬化させることで保護層を約100μmの厚みに形成した。
<発消色駆動>
得られたエレクトロクロミック素子について発消色を確認した。具体的には、第一の取り出し電極と第二の取り出し電極との間に、第一の電極層12がマイナス極となるように−3.5Vの電圧を3秒間印加させた。電圧を印加させたところ、エレクトロクロミック素子がマゼンタ色に発色することが確認された。
さらに、第一の取り出し電極と第二の取り出し電極との間に、第一の電極層12がプラス極となるように+3.5Vの電圧を2秒間印加させたところ、エレクトロクロミック色素が消色し、エレクトロクロミック素子が透明になることが確認された。
(実施例2)
<エレクトロクロミック素子の作製>
実施例2は、図2に示すエレクトロクロミック素子を作製する例を示すものである。基板、電極層、エレクトロクロミック層、電解質は実施例1と同じ材料、工程を用いた。
<電気活性層>
第一の電極に形成するエレクトロクロミック層に用いた材料と酸化還元反応が逆極性となる電気活性層34に用いる材料として、下記構造式(2)に示すトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を用いた。
電気活性層を形成するために、以下に示す組成物を調製した。
[組成]
・1官能アクリレートを有するトリアリールアミン化合物(構造式(2)):50質量部
・重合開始剤としてIRGACURE184(BASFジャパン社製):5質量部
・バインダーとして2官能アクリレートを有するPEG400DA(日本化薬社製):50質量部
・溶媒としてメチルエチルケトン:880質量部
・MEK−ST(日産化学工業社製、シリカのメチルエチルケトン溶液、固形分30質量%):20質量部
組成物を第二の電極層15に対してスピンコート法により塗布し、得られた塗布膜をUV(250nm)照射装置(ウシオ電機社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射し、60℃で10分間アニール処理を行うことにより、平均厚み1μmの架橋した電気活性層34を形成した。
<<取り出し電極の形成>>
レーザー加工機(CGC LaserPro VenusII)を用い、電解質層14を充填した第一の基板11と第二の基板16を張り合わせた基板を、図6に示されるような長径70mm、短径40mmの小判形状に切断加工した。基板切断後、研磨フィルム(3M社ラッピンングフィルム番手#320、幅2mm)を両面テープで巻き付けたローラ(材質POM、幅1.5mm、直径20mm)を回転数500rpmで回転させながら基板側面(19a)に2秒間接触させた。もう一箇所の基板側面(19b)に回転方向を逆にして研磨ローラを2秒間接触させた。
次に、それぞれの研磨した基板側面に、AgIc社製、銀ナノ粒子インクを充填したインクカートリッジ(ブラザー工業社製、LC12インクカートリッジ互換)を用い、市販インクジェットブリンター(ブラザー工業社製、MFC-J6710CDW)の紙搬送系を改造し、研磨部分にインクジェットヘッドが走査できるようにして、研磨部分に幅1mmで銀ナノ粒子インクを塗布した。
<<保護層の形成>>
次に、銀ナノ粒子インクを塗布した部分を除いた部分に、ディスペンサー(岩下エンジニアリング社製、AD3300C)を用いて、紫外線硬化接着剤(商品名:KARAYADR604、日本化薬社製)を微量塗布した。その後、スポットUV露光機(ウシオ電機、スポットUV照射装置)により、塗布面を紫外光照射により硬化させることで保護層を約100μmの厚みに形成した。
<発消色駆動>
得られたエレクトロクロミック素子について発消色を確認した。具体的には、第一の取り出し電極と第二の取り出し電極との間に、第一の電極層12がマイナス極となるように−3.5Vの電圧を3秒間印加させた。電圧を印加させたところ、エレクトロクロミック素子がマゼンタ色に発色することが確認された。
さらに、第一の取り出し電極と第二の取り出し電極との間に、第一の電極層12がプラス極となるように+3.5Vの電圧を2秒間印加させたところ、エレクトロクロミック色素が消色し、エレクトロクロミック素子が透明になることが確認された。
(実施例3)
<エレクトロクロミック素子からなる光学レンズの作製>
実施例1の電解質層14を挟んで第一の基板と第二の基板を貼り合わせたシートをベースに、レンズ形状の金型を用いてフィルムインサート成型法により、第一の基板11及び第二の基板16がポリカーボネート素材よりなるレンズ基板とし、光学レンズを作製した。
<<取り出し電極の形成>>
作製したエレクトロクロミック素子からなる光学レンズを眼鏡フレームにあうサイズに玉型加工した。研磨フィルム(3M社ラッピンングフィルム番手#400、幅2mm)を両面テープで巻き付けたローラ(材質POM、幅1.5mm、直径20mm)を回転数500rpmで回転させながら光学レンズ側面のヤゲン形状に沿って5秒間接触させた。研磨部分から2mm離して、同じ側面に回転方向を逆にして研磨ローラを5秒間接触させた(図10(b)参照)。
それぞれの研磨した基板側面に、AgIc社製銀ナノ粒子インクを充填したインクカートリッジ(ブラザー工業社製、LC12インクカートリッジ互換)を用い、市販インクジェットブリンター(ブラザー工業社製、MFC-J6710CDW)の紙搬送系を改造し、研磨部分にインクジェットヘッドが走査できるようにして、研磨部分に幅1mmで銀ナノ粒子インクを塗布した(図10(c)参照)。
<眼鏡フレームへの取り付け>
図11に示されるように、3Dプリンターで作製した眼鏡フレーム(焼結ナイロン製)に、厚み0.2mmの銅板を接着し、駆動制御回路(図示せず)に接続したリード電極51をハンダ付けした。電極上に導電性シリコーンゴム(弾性導電部材54、体積抵抗率2Ω・cm)を貼り付けた。作製した光学レンズの取り出し電極が導電性シリコーンゴムにきちんと接触するように眼鏡フレームに取り付けた。なお、図11に示されるように、光学レンズが眼鏡フレームの振動によりずれないようにするため、弾性部材53(ウレタンフォーム材)で補強した。
なお、エレクロトクロミック素子駆動用の回路及び発色用スイッチと消色用スイッチ及び電源は眼鏡フレームのテンプル部分に取り付けた(図11では図示せず)。
<発消色駆動>
光学レンズの取り出し電極間に+3.5V、10秒間電圧がかかるように設定された駆動回路の発色用スイッチを押下することで、光学レンズが発色し、消色用スイッチを押下することで、光学レンズが消色し、視力矯正用眼鏡の調光レンズとして機能したことを確認した。
11 第一の基板
12 第一の電極層
13 エレクトロクロミック層
14 電解質層
15 第二の電極層
16 第二の基板
17a、17b 樹脂フィルム
22 バリ
24 ダレ
26、26a、26b 導電性インク
32 多孔質絶縁層
34 電気活性層
41 光学レンズ
42 フレームにあわせたカット部
43 光学中心
44 取り出し電極のための研磨部分
45 レンズ部取り出し電極
51 リード電極
52 リム部
53 弾性部材
54 弾性導電部材
56 丁番
57 テンプル
特開平7−209677号公報 特許第5185288号公報

Claims (7)

  1. 第一の基板と、前記第一の基板上に形成された第一の電極層と、前記第一の電極層上に形成されたエレクトロクロミック層と、前記第一の基板と対向する第二の基板と、前記第二の基板における前記第一の基板側の面に形成された第二の電極層と、前記第一の電極層と前記第二の電極層の間に形成された電解質層とを有するエレクトロクロミック素子の製造方法であって、
    前記第一の基板と前記第二の基板とを前記電解質を介して貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を前記第二の基板から前記第一の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、
    前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部であって、前記第二の基板から前記第一の基板の方向に研磨する部分を除いた領域を前記第一の基板から前記第二の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、
    前記研磨した領域内に導電性インクを塗布し、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極を形成する工程とを有することを特徴とするエレクトロクロミック素子の製造方法。
  2. 第一の基板と、前記第一の基板上に形成された第一の電極層と、前記第一の電極層上に形成されたエレクトロクロミック層と、前記第一の基板と対向する第二の基板と、前記第二の基板における前記第一の基板側の面に形成された第二の電極層と、前記第一の電極層又は前記第二の電極層に接し、かつ、前記第一の電極層と前記第二の電極層との間に形成された電気活性層と、前記第一の電極層と前記第二の電極層の間に形成された電解質層とを有するエレクトロクロミック素子の製造方法であって、
    前記第一の基板と前記第二の基板とを前記電解質を介して貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部を前記第二の基板から前記第一の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、
    前記貼り合わせた基板側面の少なくとも一部であって、前記第二の基板から前記第一の基板の方向に研磨する部分を除いた領域を前記第一の基板から前記第二の基板の方向に一方向にのみ研磨する工程と、
    前記研磨した領域内に導電性インクを塗布し、第一の取り出し電極及び第二の取り出し電極を形成する工程とを有することを特徴とするエレクトロクロミック素子の製造方法。
  3. 前記電気活性層は、前記第二の電極層に接していることを特徴とする請求項2に記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  4. 前記第一の基板と前記第二の基板を貼り合わせる工程の後、所望の形状に加工し、加工した後に前記研磨する工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  5. 前記導電性インクを塗布した部分を除いた領域の少なくとも一部に、保護層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  6. 前記研磨する工程は、研磨ローラを用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
  7. 前記第一の基板及び前記第二の基板のうち少なくとも一つがレンズ基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021121351A1 (zh) * 2019-12-20 2021-06-24 维沃移动通信有限公司 显示模组的制备方法、显示模组及电子设备

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