以下に本発明の自動分析装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
本発明の自動分析装置の第1の実施形態の構成及び動作を、図1乃至図13を用いて説明する。最初に、図1を用いて本実施形態の自動分析装置100の全体構成を説明する。
図1は本発明の実施形態である自動分析装置100の構成図である。図1において、自動分析装置100は、主として、試料搬送機構3、反応ディスク5、試料分注機構6、試料分注機構7、試薬ディスク9、第1試薬分注機構10、第2試薬分注機構11、測光部12、コード読み取り機構13、通常洗浄機構14、第1攪拌機構15、第2攪拌機構16、制御装置20を備える。
試料ラック2は分析対象となる試料を入れた試料容器1を複数保持する。試料搬送機構3は試料ラック2を試料分注機構7まで搬送する。
反応ディスク5は反応および測光を行うための反応容器4を複数保持する。なお、反応ディスク5は回転可能であり、その形状は円盤状である。
反応ディスク5に保持される反応容器4は、試料と試薬とを混合して反応させた混合液を収容するものであり、試料に対して実施する前処理とこの前処理後の試料を用いた混合液の測定の双方に使用することができるように構成されている。
試料分注機構7は試料ラック2に保持された各試料容器1から試料を吸引する。その後、試料分注機構7は吸引した試料を反応ディスク5に保持された反応容器4へ分注する。
試料分注機構6は、前処理に使用した反応容器4から前処理済みの試料を吸引する。その後、測定に使用する別の反応容器4に前処理後の試料を吐出する。
試薬ディスク9は試薬容器8を複数保管しており、試薬容器8を保冷している。各試薬容器8には試料と混合し反応させるための第1試薬、第2試薬、第3試薬又は前処理用の試薬(前処理液)が充填されている。なお、試薬ディスク9は回転可能であり、その形状は円盤状である。また、本実施形態では、反応容器4を洗浄するための漬け置き用洗剤(所定の洗剤)もいくつかの試薬容器8に充填されており、試薬ディスク9に設置されている。ここで、漬け置き用洗剤としては、洗浄効果(酸、アルカリ性強度)の異なる複数のタイプの洗剤を設定することができる。例えば、酸系の洗剤(pH=2〜3)およびアルカリ系の洗剤(pH=12〜14)を漬け置き用洗剤として使用する。
第1試薬分注機構10は第1試薬を保持している試薬容器8から反応ディスク5に保持された反応容器4へ第1試薬を分注する機構である。また、この第1試薬分注機構10は、所定のタイミングで反応容器4に対して漬け置き用洗剤を吐出する機構であり、反応容器4を漬け置き洗浄する際にも使用する。更に、この第1試薬分注機構10は、所定のタイミングで反応容器4に対して前処理液を吐出する機構である。
第2試薬分注機構11は、第2試薬用又は第3試薬用の試薬容器8から反応ディスク5に保持された反応容器4へ第2試薬、第3試薬を分注する。
測光部12は反応容器4からの透過光を測光する。コード読み取り機構13は、試薬容器8に備えられた識別コードを読み取る。通常洗浄機構14は、洗浄水及び洗剤を吐出する吐出ノズル、反応液等を吸引する吸引ノズル等から構成される。通常洗浄機構14は、反応容器4を洗浄水及び洗剤で洗浄する。第1攪拌機構15は、反応ディスク5上の反応容器4内で反応している試料と試薬との混合液を撹拌する。第2攪拌機構16も第1撹拌機構15と同様の機能を有する。
制御装置20は、コンピュータ等から構成され、各テーブル(試料搬送機構3、反応ディスク5、試薬ディスク9等)及び各機構(試料分注機構7、第1試薬分注機構10等)の動作を制御する。また、制御装置20は、漬け置き用洗剤で反応容器4を漬け置き洗浄するように第1試薬分注機構10を制御するとともに、各反応容器4に対する漬け置き洗浄の実施が各ラウンドに分散するように漬け置き洗浄工程の実施の予定を割り当てる。
次に、図2を用いて自動分析装置100に備えられた制御装置20の構成及び機能の詳細を説明する。ここで、反応容器4において漬け置き洗浄を実施する条件となる使用回数の所定の閾値をNとする。なお、この所定の閾値Nは、制御装置20に接続された図示しない入力装置(キーボード、マウス等)から入力可能であり、オペレータ等が任意に設定可能な値である。
図2において、制御装置20はプロセッサ201、記憶部202(ハードディスク、メモリ等)を備える。
記憶部202は、反応容器4毎のHbA1c測定での使用回数を保持する第1記憶部202aと、各反応容器4の過去の洗浄履歴の情報を保持する第2記憶部202bを有する。第1記憶部202aで記憶される使用回数とは、反応容器4をHbA1c測定に使用した回数である。第2記憶部202bで記憶される洗浄履歴とは、過去2N−1までに実施した漬け置き洗浄の洗浄履歴のデータである。
プロセッサ201は、計数部201a、判断部201b、計画部201c、制御部201dの各部を有している。
計数部201aは、コード読み取り機構13で読み取られた試薬容器8の識別コードに基づいて、特定の分析項目、例えばHbA1cの分析に対する反応容器4毎の使用回数を計数し、記憶部202の第1記憶部202aに記憶する。
判断部201bは、試料分注機構7が試料を分注しようとする反応容器4に対して、第1記憶部202aで記憶したHbA1c測定に使用した回数が所定の閾値Nを超えたか否かを判断する。その上で、使用回数が所定の閾値Nを超えたと判断されるときは、その反応容器4に対して漬け置き用洗剤による漬け置き洗浄の実施を割り当てる。
計画部201cは、試料分注機構7が試料を分注しようとする反応容器4に対して、各反応容器4に対する漬け置き洗浄が各ラウンドに分散するように事前に漬け置き洗浄の実施予定を割り当てる。
また、計画部201cは、第2記憶部202bに記憶された各反応容器4の過去の洗浄履歴のデータを確認し、過去2N−1ラウンドまでに漬け置き洗浄を実施していたと判断されるときは、その反応容器4に対して漬け置き洗浄の実施が割り当てられないように制御する。
更に、計画部201cは、前処理用の反応容器4に対して漬け置き洗浄が割り当てられているときに、その前処理用の反応容器4で処理された前処理液を用いて測定を行う予定となっている、対応する測定用の反応容器4に対しても漬け置き洗浄を割り当てる。
制御部201dは、判断部201bや計画部201cにおいて漬け置き洗浄の実施が割り当てられた反応容器4に対して、試料分注機構7による試料の分注をキャンセルし、漬け置き用洗剤による漬け置き洗浄を実施するように第1試薬分注機構10を制御する。また、制御部201dは、漬け置き洗浄が実施された反応容器4に対する記憶部202の第1記憶部202aに保持された反応容器4の使用回数を0にリセットするとともに、第2記憶部202bに洗浄履歴の実施のデータを記憶させる。
上述のような自動分析装置による試料の分析処理(試料を搬入して試薬を混ぜて反応させて吸光度を測って濃度を求める処理)は、一般的に以下の順に従い実行される。
自動分析装置100では、試料中の目的成分と試薬の反応により起こる発色を測光部12による吸光度測定によって測定し、試料中の目的成分の濃度を制御装置20の演算処理によって算出する。自動分析装置100による試料の分析の概略は以下の通りである。
使用者は試料を試験管などの試料容器1に入れ、必要に応じて試料ラック2に設置する。その後、自動分析装置100への搬入位置に試料容器1または試料ラック2を設置する。自動分析装置100は試料容器1または試料ラック2を装置内へ搬入する。
試料は自動分析装置100内の試料分注機構7によって試料容器1から吸引され、反応容器4に吐出される。前述したように自動分析装置100は装置内に試薬を試薬容器8内に保持しており、第1試薬分注機構10によって試薬を試料の入った反応容器4に吐出する。反応容器4内の試料と試薬は必要に応じて第1攪拌機構15または第2撹拌機構16により攪拌される。以降、反応容器4内では試料と試薬の反応が進行する。
自動分析装置100内では、所定の位置、タイミングで反応容器4に対し光を当て、透過した光を測光部12で計測する。測定した吸光度から制御装置20内にて演算処理を行い、目的成分の濃度を算出し測定結果とする。測定が完了した反応容器4は必要に応じて通常洗浄機構14による洗浄を受け、次の分析に備える。
また、分析項目によっては異なるタイミングで試薬を複数回分注する場合がある。例えば、第1試薬を分注して吸光度を測定した後、第2試薬を分注して更に吸光度を測定し、複数の測定結果から目的成分の濃度を計算するといった場合がある。この場合は、第2試薬分注機構11によって混合液に第2試薬を分注し、その後、同様に反応容器4に対し光を当てて透過した光を測光部12で計測し、目的成分の濃度を算出する。
自動分析装置100は複数の反応容器4を保持しているため、上記動作により複数の分析を並行して連続的に行うことができるようになっている。
また、予め試料の前処理を必要とする項目の一例として、メタボ検診で使用されるHbA1c分析がある。HbA1c分析では、一般的な生化学分析項目と異なり、全血試料を分析する。全血試料はそのままでは分析しにくいため、溶血処理(赤血球を破壊し、血球の内部成分を溶出させる処理)などの前処理を行うことが普通である。溶血処理を行った試料は、その後、通常の血清試料と同様に試薬を添加し、分析を行う。本実施形態の自動分析装置100は、このような前処理についても反応容器4上で行い、通常の分析動作と並行して実施するものである。このような前処理の概略について以下に述べる。
前処理を実施する試料は通常の試料と同じように試料容器1に入れられており、自動分析装置100内へ搬入される。自動分析装置100では、試料分注機構7によって試料を反応容器4に分注する。ここで、通常の分析では第1試薬を分注するが、前処理を行う場合は第1試薬の代わりに前処理液を分注し、試料と混合させる。前処理が完了すると、試料分注機構6によって前処理済みの試料を別の反応容器4に移し替え、これに第1試薬を混合させて通常の分析と同様の分析手順に入る。以上の手順により自動分析装置100は前処理を反応容器上で通常の分析動作と並行して実施する。
この自動分析装置100の分析の際の反応ディスク5とその周辺機器との位置関係、動作について図3を用いて説明する。図3に自動分析装置100における反応ディスク5上の反応容器4と各種分注、攪拌、洗浄機構の位置関係を示す。ここで、まず、具体的説明のために反応ディスク5、試料分注機構6、試料分注機構7について以下の条件を定める。
図3に示すように、反応ディスク5に配置された反応容器4の総数は41個とする。また、反応ディスク5は1回の動作で反時計回り方向に反応容器8個分移動するものとする。ここで、この動作1回分を1サイクルと呼称する。反応ディスク5が5サイクル動作すると、反応容器4は時計回り方向に1個分ずれた位置へ停止する。反応容器4は41サイクル動作すると1サイクル目と同じ位置へ停止する。反応容器が1サイクル目と同じ位置へ戻るまでの41サイクルを1ラウンドと呼称する。
また、試料分注機構7はサイクル目の前のサイクルで試料を吸引し、次のサイクルで試料を吐出するため、試料の分注に2サイクルを要するものとする。試料分注機構7は1サイクル目の動作で試料容器1から試料を吸引する。試料分注機構7は続く2サイクル目の動作で、吸引した試料を反応容器4へ吐出する。
また、試料分注機構6は前処理用反応容器から反時計まわり方向に4個分ずれた反応容器に前処理済みの試料を分注することとする。この移し替え分注は1サイクルで吸引から吐出までを完了することとする。
また、反応容器番号Cは反応容器4が各機構に到着する順番に対応する連続番号(1,2,3,・・・)とする。また、ラウンド数Rは試料を吐出する予定の反応容器4が試料分注機構7の吐出位置に来るサイクルが何番目のラウンドに属しているかを示す数とする。
また、図3に示すように、試料分注機構7が吸引した試料を吐出する位置を試料吐出位置7a、試料分注機構6が前処理済み試料を吸引する位置を試料吸引位置6b、移し替え分注先に吐出する位置を試料吐出位置6aとする。また、試薬分注機構10が試薬を吐出する位置を第1試薬吐出位置10a、第2試薬分注機構11が試薬を吐出する位置を第2試薬吐出位置11aとする。ここで、第1試薬吐出位置10aでは第1試薬に加え、前処理用試薬および漬け置き用洗剤も吐出することが可能な位置となっている。第1攪拌機構15が試料と試薬とを混合した混合液を攪拌する位置を第1攪拌位置15a、第2攪拌機構16による攪拌位置を第2攪拌位置16aとする。通常洗浄機構14は廃液吸引、洗浄水吐出、洗浄水吸引の3つの動作を行い、それぞれの動作を行う位置を廃液吸引位置14a、洗浄水吐出位置14b、洗浄水吸引位置14cとする。
次に、図4を用いて、本実施形態における自動分析装置100での分析サイクルについて説明する。図4はある1つの反応容器4に対し、各サイクルで各機構により行われる動作を記述した図である。なお、ある反応容器4が試料吐出位置7aに来たサイクルを1サイクル目としている。
はじめに、反応容器4において前処理が行われる場合について説明する。この反応容器4を反応容器4aとして説明を進める。
図4に示すように、まず、1サイクル目において反応容器4aは試料吐出位置7aに位置しているため、試料分注機構7が試料容器1から分注した試料を反応容器4aに吐出する。2サイクル目では反応ディスク5が反応容器8個分反時計回りに回転し、反応容器4aは試料吐出位置6aに来る。反応容器4aは前処理用であるため、ここでは試料分注機構6は何も動作しない。3サイクル目では反応容器4aはさらに8個分移動し、第1試薬吐出位置10aに来る。ここで第1試薬分注機構10は前処理液を反応容器4aに吐出する。4サイクル目では反応容器4aは第1攪拌位置15aに来る。ここで第1攪拌機構15により試料と前処理液とが混合される。その後、反応容器4aでは前処理の反応が進行する。17サイクル目までに前処理の反応が完了し、反応容器4aは試料吸引位置6bに来る。ここでは試料分注機構6が前処理後の試料を吸引し、測定用の反応容器4に吐出する移し替え分注を行う。ここまでで反応容器4aにおける前処理は完了する。31サイクル目において反応容器4aは通常洗浄機構14による廃液吸引位置14aに来る。ここでは反応容器4aに残った試料と前処理液を通常洗浄機構14が廃液として吸引する。36サイクル目には反応容器4aは洗浄水吐出位置14bに来る。ここで通常洗浄機構14は洗浄水および洗剤を反応容器4aに吐出する。その後41サイクル目において反応容器4aは洗浄水吸引位置14cに到達し、通常洗浄機構14は反応容器4aの洗浄水を吸引する。ここまでで反応容器4aは1ラウンドを終了する。次のサイクルでは反応容器4aは試料吐出位置7aに到達し、次ラウンドが開始する。なお、次ラウンドでの反応容器4aの用途は前処理用にはならない。
次に、反応容器4において測定が行われる場合について説明する。この反応容器4を反応容器4bとして説明を進める。
図4に示すように、まず、1サイクル目において反応容器4bは試料吐出位置7aに来るが、反応容器4bは測定用であるため、ここでは何もしない。2サイクル目で反応容器4bは試料吐出位置6aに来る。ここで試料分注機構6により前処理済み試料が反応容器4bに吐出される。3サイクル目では反応容器4bは第1試薬吐出位置10aに来る。ここで第1試薬分注機構10は第1試薬を反応容器4bに吐出する。4サイクル目では反応容器4bは第1攪拌位置15aに来る。ここで第1攪拌機構15により前処理済みの試料と第1試薬とが混合される。その後、反応容器4bでは試料と第1試薬との反応が進行する。この間、第1攪拌機構15と第2攪拌機構16との間にある測光部12を反応容器4bが通過する度に試料と第1試薬との混合液の吸光度が測定され、反応過程が分析される。24サイクル目には反応容器4bは第2試薬吐出位置11aに来る。ここで第2試薬分注機構11により第2試薬が吐出される。次の25サイクル目では第2攪拌位置16aに到達し、試料と第2試薬とが混合される。この攪拌後の反応容器4bが31サイクル目の廃液吸引位置14aに到達するまでの間に、反応容器4bは測光部12を通過する。この時に第2試薬と試料との混合液の吸光度が測定され、反応が分析される。31サイクル目の廃液吸引以降は反応容器4aの場合と同様であるため、説明は省略する。
次に反応容器4において漬け置き洗浄が行われる場合について説明する。この反応容器4を反応容器4cとして説明を進める。
図4に示すように、まず、1サイクル目において反応容器4cは試料吐出位置7aに来る。ここで、後述するフローにより漬け置き洗浄の条件を満たしていれば、反応容器4cは漬け置き洗浄となるため、ここでは何もしない。2サイクル目で反応容器4cは試料吐出位置6aに来るが、ここでも同様に何もしない。3サイクル目で反応容器4cは第1試薬吐出位置10aに来る。ここで第1試薬分注機構10は漬け置き用洗剤を反応容器4cに吐出する。4サイクル目では反応容器4cは第1攪拌位置15aに来る。ここで第1攪拌機構15により漬け置き用洗剤が攪拌され、反応容器4c内の洗浄効果が高まる。その後、反応容器4cでは漬け置き用洗剤による洗浄が進行する。31サイクル目までに反応容器4cの漬け置き洗浄は完了し、廃液吸引位置14aに到達する。以降は反応容器4aの場合と同様であるため、説明は省略する。このように、本実施形態においては、漬け置き洗浄は、その長さが1ラウンド分となっている。
自動分析装置100における上記の図4に示す各動作は反応ディスク5上で並行して実施可能である。漬け置き洗浄についても他の分析動作と並行して行われ、ちょうど1ラウンド分かけて特定の分析項目による反応容器4の汚れを洗浄する。なお、この漬け置き洗浄の長さは、1ラウンド分に限定されるものではなく、任意の長さを設定することができる。
次に、図5乃至図7を用いて、制御装置20の処理フローについて、判断部201b、計画部201c、制御部201dの各部での処理フローを参照しながら説明する。
最初に、制御装置20は図5に示す判断部201bのフローに入る。
判断部201bでは、まず、通常洗浄機構14による洗浄が終了した反応容器4について、特定の分析項目(HbA1c)の測定に使用された回数が所定の閾値Nを超えたか否かを判断する(ステップS11)。使用回数が所定の閾値Nを超えたと判断された場合、ステップS12に処理を進め、反応容器4に漬け置き洗浄を割り当てる(ステップS12)。その後、判断部201bでの処理を終了する。
これに対し、ステップS11において使用回数が所定の閾値Nを超えていないと判断された場合は、そのまま判断部201bでの処理を終了する。
次いで、制御装置20は図6に示す計画部201cの処理に移行する。
計画部201cでは、まず、反応容器4について、使用用途が前処理か否かを判断する(ステップS21)。前処理であると判断された場合、ステップS22に処理を移行する。前処理でないと判断された場合、ステップS25に処理を移行する。
ステップS22では、反応容器4の反応容器番号Cとラウンド数Rをそれぞれ2Nで割った余りを求め、各々の余りが等しいか否かを判断する(ステップS22)。等しいと判断された場合、ステップS23に処理を移行する。等しくないと判断された場合は、計画部201cでの処理を終了する。
次いで、計画部201cは、記憶部202の第2記憶部202bに記憶されている反応容器4の洗浄履歴のデータから、過去2N−1ラウンドまでに漬け置き洗浄を実施したか否かを判断する(ステップS23)。実施していなかったと判断された場合は、ステップS24に処理を移行し、反応容器4に漬け置き洗浄を割り当てる(ステップS24)。その後、計画部201cでの処理を終了する。これに対し、実施していたと判断された場合は、そのまま計画部201cでの処理を終了する。
ステップS21において反応容器4の使用用途が前処理でないと判断された場合、計画部201cは、反応容器4について、使用用途が測定か否かを判断する(ステップS25)。測定であると判断された場合、ステップS26に処理を移行する。測定でないと判断された場合は、計画部201cでの処理を終了する。
ステップS25の後、計画部201cは、反応容器4に対する試料移し替えの元になる前処理用の反応容器4に漬け置き洗浄が割り当てられているか否かを判断する(ステップS26)。漬け置き洗浄が割り当てられていると判断された場合、ステップS24に処理を移行し、反応容器4に漬け置き洗浄を割り当て(ステップS24)、その後、計画部201cでの処理を終了する。漬け置き洗浄が割り当てられていないと判断された場合は、そのまま計画部201cでの処理を終了する。なお、ステップS26における前処理用の反応容器4とは、反応容器4が試料分注機構6の位置に来る15サイクル前に試料分注機構7の位置に来ていた反応容器4のことを意味する。
次いで、制御装置20は図7に示す制御部201dの処理に移行する。
まず、制御部201dでは、反応容器4に漬け置き洗浄が割り当てられているか否かを判断する(ステップS31)。漬け置き洗浄が割り当てられていると判断された場合はステップS32に処理を進め、割り当てられていないと判断されたときは制御部201dでの処理を終了する。
次いで、制御部201dは、試料分注機構7による試料分注をキャンセルする(ステップS32)。その後、漬け置き用洗剤を対象となる反応容器4に分注するよう試薬分注機構10を制御する(ステップS33)。次いで、制御部201dは、記憶部202の第1記憶部202aに記憶されている当該反応容器のHbA1c測定の使用回数をリセットするとともに、第2記憶部202bに記憶されている反応容器4の洗浄履歴のデータに洗浄実施のデータを記憶する(ステップS34)。その後、処理を終了する。
次に、図8および図9を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100における試料の分析中の動作を説明する。図8は、本発明の実施形態である自動分析装置100の動作を説明するためのタイムチャートの一例であり、図9は各ラウンドにおける反応容器4ごとの使用用途および使用回数の推移である。ここでは、反応容器番号1,2,3,6の反応容器4について2ラウンド目から3ラウンド目に移行する際の分析動作を、反応容器番号5の反応容器4については5ラウンド目における分析動作を説明する。漬け置き洗浄条件である所定の閾値Nは5に設定されていることとし、分析動作開始時は、全反応容器4の使用回数が0回とする。また、分析項目はすべてHbA1cであり、試料は連続的に投入され、常に試料分注機構7の吸引位置に試料があるものとする。この場合、奇数ラウンド目では奇数番目の反応容器4が前処理用となり、偶数ラウンド目では偶数番目の反応容器4が前処理用となる。また、各ラウンドの1サイクル目は反応容器番号1の反応容器4が試料分注機構7の吐出位置にくる時点とする。
なお、図8において、「反応容器の用途」の項目における「前処」とは前処理の実施、「測定」は測定の実施、「漬置」とは漬け置き洗浄の実施、をそれぞれ意味し、「反応容器に対する動作」の項目における「S吸」とは試料分注機構7による試料吸引、「S吐」とは試料分注機構7による試料吐出、「Txx」とは反応容器番号xxの反応容器に前処理済み試料を移し替える、「Fxx」とは反応容器番号xxの反応容器から前処理済み試料を移し替える、「前処」とは前処理用試薬を吐出する、「R1」とは第1試薬を吐出する、「洗浄」とは漬け置き用洗剤を吐出する、「漬置」とは漬け置き用洗剤を保持する、ことをそれぞれ意味する。また、図9において、「前処」とは前処理の実施、「測定」は測定の実施、「漬置」とは漬け置き洗浄の実施、「空き」とは何も実施しない、ことをそれぞれ意味する。
(反応容器番号1の反応容器)
まず、反応容器番号1の反応容器4における分析動作を説明する。
図8において、反応容器番号1の反応容器4は、3ラウンド目の1サイクル目で試料分注機構7が試料を吐出する位置にくる。それより前に、制御装置20は、図5で説明した判断部201bのフローに入る。ステップS11において、3ラウンド目の時点では、反応容器番号1の反応容器4は特定の分析項目に対する測定回数が所定の閾値Nを超えていない。そのため、反応容器番号1の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図6で説明した計画部201cのフローに入る。ステップS21において、反応容器番号1の反応容器4は前処理用であるため、ステップS22に移行する。ステップS22において、反応容器番号1の反応容器4の反応容器番号1を2Nで割った余りは1である。また、ラウンド数3を2Nで割った余りは3であり、一致しない。従って、反応容器番号1の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図7で説明した制御部201dのフローに入る。ステップS31において、反応容器番号1の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられていないため、制御部201dのフローはそのまま終了する。ここまでで反応容器番号1の反応容器4に対する制御装置20の処理は完了する。
2ラウンド目の41サイクル目で試料分注機構7は試料容器1から試料を吸引し、3ラウンド目の1サイクル目で反応容器番号1の反応容器4に試料を吐出する。その後、反応容器番号1の反応容器4は図4で示すような前処理のフローに入る。
(反応容器番号2の反応容器)
次に、反応容器番号2の反応容器4における分析動作を説明する。
図8において、反応容器番号2の反応容器4は、3ラウンド目の2サイクル目に試料分注機構7が試料を吐出する位置にくる。それより前に、制御装置20は、図5で説明した判断部201bのフローに入る。ステップS11において、3ラウンド目の時点では、反応容器番号2の反応容器4は特定の分析項目に対する測定回数が所定の閾値Nを超えていない。そのため、反応容器番号2の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図6で説明した計画部201cのフローに入る。ステップS21において、反応容器番号2の反応容器4は測定用であるため、ステップS25,ステップS26に移行する。ステップS26において、反応容器番号2の反応容器4に対して移し替え分注をする元の反応容器は反応容器番号28の反応容器4である。反応容器番号28の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられていない。従って、反応容器番号2の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図7で説明した制御部201dのフローに入る。ステップS31において、反応容器番号2の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられていないため、制御部201dのフローはそのまま終了する。ここまでで反応容器番号2の反応容器4に対する制御装置20の処理は完了する。
3ラウンド目の3サイクル目で試料分注機構6は反応容器番号28の反応容器4から前処理済みの試料を反応容器番号2の反応容器4に分注する。その後、反応容器番号2の反応容器4は測定のフローに入る。
(反応容器番号3の反応容器)
次に、反応容器番号3の反応容器4における分析動作を説明する。
図8において、反応容器番号3の反応容器4は、3ラウンド目の3サイクル目に試料分注機構7が試料を吐出する位置にくる。それより前に、制御装置20は、図5で説明した判断部201bのフローに入る。ステップS11において、3ラウンド目の時点では、反応容器番号3の反応容器4は特定の分析項目に対する測定回数が所定の閾値Nを超えていない。そのため、反応容器番号3の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図6で説明した計画部201cのフローに入る。ステップS21において、反応容器番号3の反応容器4は前処理用であるため、ステップS22に移行する。ステップS22において、反応容器番号3の反応容器4の反応容器番号3を2Nで割った余りは3である。また、ラウンド数3を2Nで割った余りも3であり、等しい値である。従って、ステップS23に移行する。ステップS23において、3ラウンド目の時点では過去2N−1ラウンド前までに漬け置き洗浄した履歴はない。従って、反応容器番号3の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられる(ステップS24)。次に、制御装置20は、図7で説明した制御部201dのフローに入る。ステップS31において、反応容器番号3の反応容器4は漬け置き洗浄が割り当てられている。従って、制御部201dは試料分注機構7による試料の分注をキャンセルする(ステップS32)。その後、漬け置き洗浄動作を実施するように試薬分注機構10を制御(ステップS33)し、漬け置き洗浄のフローに入り、記憶部202の各記憶データを更新する(ステップS34)。
(反応容器番号6の反応容器)
次に、反応容器番号6の反応容器4における分析動作を説明する。
図8において、反応容器番号6の反応容器4は、3ラウンド目の6サイクル目に試料分注機構7が試料を吐出する位置にくる。それより前に、制御装置20は、図5で説明した判断部201bのフローに入る。ステップS11において、3ラウンド目の時点では、反応容器番号6の反応容器4は特定の分析項目に対する測定回数が所定の閾値Nを超えていない。そのため、反応容器番号6の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。次に、制御装置20は、図6で説明した計画部201cのフローに入る。ステップS21において、反応容器番号6の反応容器4は測定用であるため、ステップS25,S26に移行する。ステップS26において、反応容器番号6の反応容器4に対して移し替え分注をする元の反応容器は反応容器番号32の反応容器4である。反応容器番号32の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられている。従って、反応容器番号6の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられる(ステップS24)。次に、制御装置20は、図7で説明した制御部201dのフローに入る。ステップS31において、反応容器番号6の反応容器4は漬け置き洗浄が割り当てられている。従って、制御部201dは試料分注機構7による試料の分注をキャンセルする(ステップS32)。その後、漬け置き洗浄動作を実施するように試薬分注機構10を制御(ステップS33)し、漬け置き洗浄のフローに入り、記憶部202の各記憶データを更新する(ステップS34)。
(反応容器番号5の反応容器)
反応容器番号5の反応容器4は、5ラウンド目において前処理が実施される予定となっている。ステップS11において、3ラウンド目の時点では、反応容器番号5の反応容器4は特定の分析項目に対する測定回数が所定の閾値Nを超えていない。そのため、反応容器番号5の反応容器4には漬け置き洗浄は割り当てられない。反応容器番号5の反応容器4に対する制御装置20の処理では、前処理が実施されるため、計画部201cのフローにおいてステップS22に移行する。ステップS22において、反応容器番号5の反応容器4の反応容器番号3を2Nで割った余りは5である。また、ラウンド数5を2Nで割った余りは5であり、一致する。従って、ステップS23に移行する。ステップS23において、反応容器番号5の反応容器4には、図9に示すように、2ラウンド目で漬け置き洗浄が行われており、過去2N−1ラウンド前までに漬け置き洗浄を実施した履歴がある。従って、反応容器番号5の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられない。ステップS31において、反応容器番号5の反応容器4には漬け置き洗浄が割り当てられていないため、制御部201dのフローはそのまま終了する。
以上の分析動作により、各ラウンドにおける反応容器ごとの使用用途および使用回数は図9のように推移する。
図9に示すように、1ラウンド目においては、反応容器番号1,11,21,31,41の反応容器4が漬け置き洗浄される。また、これらの反応容器4の移し替え分注先になる予定だった反応容器番号16,26,36の反応容器4も漬け置き洗浄される。2ラウンド目以降、各ラウンドで漬け置き洗浄される反応容器番号は1つずつずれていく。漬け置き洗浄される反応容器4が図9のように推移していくことで、全ての反応容器において漬け置き洗浄が同時に必要な状態となることを抑制している。これにより、試料分析に用いる反応容器の数を確保し、試料投入から結果報告までの時間が遅延する期間を短縮することができる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
ここで、比較のために、特許文献1に記載されたような一般的な自動分析装置における各反応容器の使用用途および使用回数の推移について図10を用いて説明する。図10も反応容器数が41、所定の閾値Nが5であり、前処理後の試料を15サイクル後に別の反応容器に移し替えて測定する場合の例である。
一般的な自動分析装置の場合、各反応容器では前処理と測定が交互に実施される。分析を実施し続けると、使用回数が所定の閾値Nに達した反応容器が1サイクルおきに分注位置に来る状態となる(図10における、10ラウンド目の反応容器番号16から11ラウンド目の反応容器番号29)。これらの反応容器は本来前処理に使用される予定であるが、使用回数が所定の閾値Nに達しているため、漬け置き洗浄が実施される。
また、前処理が実施できないため、15サイクル後に移し替え分注の位置に来る反応容器は空き状態となる。これにより1ラウンドの間全ての反応容器が使用不可となる(図10における、10ラウンド目の反応容器番号30から11ラウンド目の反応容器番号30)。この状態では試料を投入しても分析を開始できないため、試料投入から結果報告までの時間が遅延する。
このように、前処理と漬け置き洗浄を必要とする分析を連続で実施した場合、一般的な自動分析装置では、特定ラウンドに漬け置き洗浄が集中することにより試料投入から結果報告までの時間が遅延する。
しかしながら、本実施形態の自動分析装置100であれば、図9に示すように、使用回数の増加に伴って蓄積する汚れを漬け置き洗浄によって洗浄する場合に、試料の連続投入時に起こる分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
また、複数の反応容器4が、試料に対する前処理とこの前処理後の試料を用いた混合液の測定の双方に使用することができるように構成され、試料分注機構6は、前処理に使用した反応容器4から測定を実施する反応容器4に前処理後の試料を移し替えるよう構成されることで、分析項目が反応ディスク上での前処理を伴う場合であっても、試料の連続投入時に起こる分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
更に、反応容器4毎のHbA1c測定での使用回数を記憶する第1記憶部202aと、第1記憶部202aで記憶した使用回数が所定の閾値Nを超えたか否かを判断し、超えたと判断されるときはその反応容器4に対して漬け置き洗浄の実施を割り当てる判断部201bとを有することで、反応容器4の汚れの蓄積を防止し、正確な分析を実施することができる。
また、計画部201cは、第2記憶部202bに記憶された各反応容器4の過去の洗浄履歴において過去2N−1ラウンドまでに漬け置き洗浄を実施していた場合は、その反応容器4に対して漬け置き洗浄が割り当てられないように制御する(図6に示すステップS23)ことにより、当該ラウンドでの漬け置き洗浄が必要なものであるか判断し、必要以上に漬け置き洗浄が実施されることを抑制することができる。よって、分析に用いる反応容器数を確保することができ、より確実に分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
更に、計画部201cは、前処理用の反応容器4に対して漬け置き洗浄が割り当てられているときは、その前処理用の反応容器4で処理された前処理液を用いて測定を行う予定の対応する測定用の反応容器4にも漬け置き洗浄を割り当てる(図6に示すステップS26)ことで、前処理が実施されていないために分析ができない状態となっている反応容器に対しても漬け置き洗浄が割り当てられる。そのため、その反応容器が空き状態となってしまうタイミングで漬け置き洗浄を実施することができ、空きとなることを回避し、また次の漬け置き洗浄のタイミングを後伸ばしにすることができる。よって、分析に用いる反応容器数を確保することができ、より確実に分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
また、計画部201cは、反応ディスク5に保持された反応容器4の総数を所定の閾値Nの2倍で除したときの余りの値とラウンド数を所定の閾値Nの2倍で除したときの余りの値とを比較し、互いの余りの値が等しいときはその反応容器4に漬け置き洗浄を割り当てる(図6に示すステップS22)。
例えば、前処理と漬け置き洗浄が必要な分析を連続で実施した場合、ある反応容器では前処理と測定が交互に実施される。したがってあるラウンドにおいて使用回数が0の反応容器は少なくとも2Nラウンド後には漬け置き洗浄が必要になる。ここで、このステップS22の判断により各反応容器が2Nラウンドに1度漬け置き洗浄されることになる。より具体的には、1ラウンド目には反応容器番号1、11、21、31、41が、2ラウンド目では反応容器番号2、12、22、32が漬け置き洗浄対象となる。このように反応容器番号を1ずつずらしながら漬け置き洗浄が実施され、10ラウンド目には反応容器番号10、20、…が漬け置き洗浄対象となる。その次の11ラウンド目では再度反応容器番号1、11、21、…が漬け置き洗浄対象となる。このように2Nで割った余りの値を利用することで漬け置き洗浄対象の反応容器番号を循環させ、各ラウンドで一定数の反応容器群に漬け置き洗浄を割り当てることができ、より確実に分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
なお、計画部201cにおいて過去2N−1ラウンドまでに漬け置き洗浄を実施していた場合は、その反応容器4に対して漬け置き洗浄の実施が割り当てられないように制御する処理(ステップS23)を実施する場合について説明したが、このステップS23の処理を実施しない形態も考えられる。この場合の各ラウンドにおける反応容器4ごとの使用用途および使用回数の推移は図11に示すようなものとなる。この場合も、漬け置き洗浄を各ラウンドに分散させることができることが分かる。
また、計画部201cにおいて、前処理用の反応容器4に対して漬け置き洗浄が割り当てられているときに、その前処理用の反応容器4で処理された前処理液を用いて測定を行う予定の対応する測定用の反応容器4にも漬け置き洗浄を割り当てる処理(ステップS26)を実施する場合について説明したが、このステップS26の処理を実施しない形態も考えられる。この場合の各ラウンドにおける反応容器4ごとの使用用途および使用回数の推移は図12に示すようなものとなる。この場合も、同様に、漬け置き洗浄を各ラウンドに分散させることができることが分かる。
しかし、ステップS22によって反応容器の使用回数に依存せずに漬け置き洗浄を割り当てられるため、図11に示すように、図10に示す一般的な割り当て方法に比べて各ラウンドの漬け置き洗浄発生率が上昇する。また、図12に示すように、移し替え分注元となる前処理用の反応容器4が漬け置き洗浄であった場合には、移し替え分注先となる測定用の反応容器4は空き状態となってしまう。ここで、ステップS22により前処理用の反応容器は2Nラウンドに1回漬け置き洗浄されることに対し、ステップS23で2N−1ラウンド前までの履歴を参照することで、当該ラウンドでの漬け置き洗浄が必要なものであるか判断する。また、ステップS26で、移し替え分注元となる反応容器が漬け置き洗浄であった場合に、当該反応容器も漬け置き洗浄する。これらの処理を組み合わせることにより、各ラウンドにおける漬け置き洗浄と空き状態の反応容器の発生率を軽減することができることから、ステップS22に加えて、ステップS23、ステップS26の処理を実施することが望ましいことが分かる。
また、使用回数の閾値Nを越えたことを判断する判断部201bを有する場合について説明したが、この判断部201bを有しない形態も考えられる。この場合の各ラウンドにおける反応容器4ごとの使用用途および使用回数の推移は図13に示すようなものとなる。この図13に示すように、計画部201cの処理によって漬け置き洗浄を各ラウンドに分散させることができることが分かる。しかし、使用回数の判断を行う判断部201bを備えることによって、16ラウンド目の反応容器番号19において使用回数が閾値Nである5を上回ることを防止することができることから、判断部201bを有することが望ましいことがわかる。
更に、制御装置20において、判断部201bの次に計画部201cにおける判断処理を行う場合について説明したが、計画部201cの次に判断部201bの判断処理を行うようにしてもよいし、判断部201bと計画部201cの処理を平行して実施してもよい。
<第2の実施形態>
本発明の自動分析装置の第2の実施形態を図14乃至図18を用いて説明する。
本実施形態の自動分析装置では、あらかじめ使用回数の初期値を各反応容器4に対する漬け置き洗浄が各ラウンドに分散して実施されるように割り当てる設定を行う。これにより特定ラウンドへの漬け置き洗浄の集中を回避し、試料投入から結果報告までの時間遅延を低減する。
以下、自動分析装置の構成及び動作を説明する。自動分析装置の構成は、制御装置20A以外の構成は第1の実施形態である自動分析装置100の制御装置20と同様の構成であり、詳細は省略する。
図14に自動分析装置の制御装置20Aの構成を示す。図14において、制御装置20Aは、プロセッサ201Aおよび記憶部202Aを備えている。
記憶部202Aは、反応容器4毎のHbA1c測定での使用回数を保持する第1記憶部202aを有する。この第1記憶部202aは第1の実施形態の第1記憶部202aと同等の構成である。
プロセッサ201Aは、第1の実施形態の自動分析装置100に設けられたものと同等の構成である計数部201aと、異なる構成である計画部201e、判断部201f、制御部201gの各部を有している。
計画部201eは、各反応容器4に対する漬け置き洗浄の実施が各ラウンドに分散するように割り当てる機能部であり、第1記憶部202aに記憶される使用回数の初期値を、各反応容器4に対する漬け置き洗浄の実施が各ラウンドに分散するよう変更する。本実施形態では、計画部201eは、後述する制御部201gによって使用回数をリセットする保守機能が起動したタイミングなど、全反応容器の使用回数が0になった際に、使用回数の初期値を隣接する反応容器4で1つずつずらした値となるよう、使用回数の初期値を反応容器番号Cを所定の閾値Nで割ったときの余りの値に設定する。
判断部201fは、試料分注機構7が試料を分注しようとする反応容器4に対して、第1記憶部202aで記憶したHbA1c測定に使用した回数が所定の閾値Nを超えたか否かを判断する。使用回数が所定の閾値Nを超えたと判断されるときは、その反応容器4に対して漬け置き用洗剤による漬け置き洗浄の実施を割り当てる。
制御部201gは、計画部201eや判断部201fにおいて漬け置き洗浄を割り当てられた反応容器4に対して、試料分注機構7による試料の分注をキャンセルし、漬け置き用洗剤による漬け置き洗浄をするように第1試薬分注機構10を制御する。また、制御部201gは、漬け置き洗浄が実施された反応容器4に対する記憶部202の第1記憶部202aに保持された反応容器4の使用回数を0にリセットする。
更に、制御部201gは、全反応容器を漬け置き洗浄し、使用回数をリセットする保守機能を有する。制御部201gは、この保守機能が起動すると、全反応容器に対し漬け置き用洗剤による漬け置き洗浄をするように第1試薬分注機構10を制御する。その後一定時間が経過し、全反応容器にて漬け置き洗浄が完了した後、制御部201gは記憶部202の第1記憶部202aに保持された反応容器4の使用回数を0にリセットする。この保守機能の起動は、使用者が分析動作中以外の任意のタイミングで実行する場合や、分析動作後に自動で実施する場合、自動分析装置の起動時に自動で実施する場合などが想定される。
上述のような自動分析装置による試料の分析処理は、第1の実施形態の自動分析装置と同様である。
次に、図15乃至図17を用いて、制御装置20Aの処理フローについて、計画部201e、判断部201f、制御部201gの各部での処理フローを参照しながら説明する。
最初に、制御装置20は図15に示す計画部201eのフローに入る。
計画部201eでは、まず、反応容器4について、特定の分析項目(HbA1c)の測定に使用された回数が全ての反応容器4において0回か否かを判断する(ステップS41)。使用回数が0回であると判断された場合はステップS42に処理を進め、使用回数が0回でないと判断された場合はそのまま計画部201eでの処理を終了する。
次いで、計画部201eは反応容器番号Cを変数とし、初期値を1、終値を反応容器数、増分値を1と設定する(ステップS42)。次いで、当該反応容器番号CのHbA1c測定に使用された回数を、当該反応容器番号Cを所定の閾値Nで割ったときの余りの値に設定する(ステップS43)。次いで、反応容器番号Cに増分値1を加算して、同様に当該反応容器番号CのHbA1c測定に使用された回数を所定の閾値Nで割ったときの余りの値に設定するステップS42からステップS43の処理を、反応容器番号Cが反応容器数を超えるまで実施する(ステップS44)。次いで処理を終了する。
計画部201eの処理後は、第1記憶部202aに記憶される各反応容器の使用回数の初期値は次の表1の通りに設定される。
この表1に示す通り、計画部201eの処理によって各反応容器の使用回数の初期値は段階的な値となる。この効果については後述する。
次いで、制御装置20は図16に示す判断部201fの処理に移行する。
判断部201fでは、まず、反応容器がHbA1c測定に使用された回数が所定の閾値Nを超えたか否かを判断する(ステップS51)。使用回数が所定の閾値Nを超えたと判断された場合、ステップS52に処理を進め、反応容器4に漬け置き洗浄を割り当てる(ステップS52)。その後、判断部201fでの処理を終了する。
これに対し、ステップS51において使用回数が所定の閾値Nを超えていないと判断された場合は、処理をステップS53に進める。次いで、判断部201fは、反応容器4について、使用用途が測定か否かを判断する(ステップS53)。測定であったと判断された場合、ステップS54に処理を移行する。測定でなかったと判断された場合は、判断部201fでの処理を終了する。
次いで、判断部201fは、反応容器4に対する試料移し替えの元になる前処理用の反応容器4が漬け置き洗浄されているか否かを判断する(ステップS54)。漬け置き洗浄されていると判断された場合、ステップS52に処理を移行し、反応容器4に漬け置き洗浄を割り当てる(ステップS52)。漬け置き洗浄されていないと判断された場合は、判断部201fでの処理を終了する。なお、ステップS54における前処理用の反応容器4とは、第1の実施形態におけるステップS26における定義と同義である。
次いで、制御装置20は図17に示す制御部201gの処理に移行する。
まず、制御部201gでは、反応容器4に漬け置き洗浄が割り当てられているか否かを判断する(ステップS61)。漬け置き洗浄が割り当てられていると判断された場合はステップS62に処理を進め、割り当てられていないと判断されたときは制御部201gでの処理を終了する。
次いで、制御部201gは、試料分注機構7による試料分注をキャンセルする(ステップS62)。その後、漬け置き用洗剤を対象となる反応容器4に分注するよう試薬分注機構10を制御する(ステップS63)。次いで、制御部201gは、記憶部202の第1記憶部202aに記憶されている当該反応容器のHbA1c測定の使用回数をリセットする(ステップS64)。その後処理を終了する。
次に、図18を用いて各ラウンドにおける反応容器4ごとの使用用途および使用回数の推移について説明する。図の見方は図9と同様であり、これに加えて計画部201eによって変更・設定された各反応容器の使用回数初期値を記載している。
計画部201eの処理では、上述したように、各反応容器の使用回数初期値を段階的に設定する。これにより各反応容器の使用回数が所定の閾値Nを越えるタイミングは各ラウンドに分散する。
例えば、反応容器番号5の反応容器は使用回数の初期値が4であるため、2ラウンド目の測定で所定の閾値Nを越える。そのため3ラウンド目で漬け置き洗浄が実施される。一方、反応容器番号7の反応容器は使用回数の初期値が1であり、所定の閾値Nを越えるのは8ラウンド目である。このように、各反応容器の使用回数の初期値を段階的な値とすることで、特定ラウンドにおいて漬け置き洗浄が集中することを回避することができる。
また、判断部201fの処理では閾値Nを越えたかどうかの判断に加え、移し替え元の反応容器に漬け置き洗浄が割り当てられている場合に当該反応容器を漬け置き洗浄するようにしている。これにより空き状態となる反応容器をなくし、漬け置き洗浄が可能なうちに洗浄を実施することで、使用回数の蓄積を回避することができる。
上述したように、本発明の自動分析装置の第2の実施形態においても、計画部201eと判断部201fの処理により、前述した自動分析装置の第1の実施形態とほぼ同様な効果である漬け置き洗浄の特定ラウンドへの集中を回避することができる、との効果が得られる。
特に、計画部201eは、第1記憶部202aに記憶される使用回数の初期値を、各反応容器4に対する漬け置き洗浄の実施が各ラウンドに分散するよう変更することにより、複雑な設定を施すことなく各反応容器4に対する漬け置き洗浄の実施が各ラウンドに分散させることができる。よって、第1の実施形態に比べて容易に試料の連続投入時に起こる分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
また、計画部201eは、初期値を、隣接する反応容器4で1つずつずらした値とすることで、容易に各反応容器の使用回数の初期値を各ラウンドに分散させることができ、より確実に試料の連続投入時に起こる分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
更に、計画部201eは、初期値を、反応ディスク5に保持された反応容器4の番号Cを所定の閾値Nで除したときの余りの値とすることにより、所定の閾値Nに応じて初期値を設定することができ、各反応容器の使用回数が所定の閾値Nを越えるタイミングを各ラウンドに分散させることができ、より容易かつ確実に試料の連続投入時に起こる分析を開始できない期間の発生を回避することができる。
<その他>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
例えば、上述の実施形態ではHbA1cを測定する自動分析装置100を例示して説明したが、自動分析装置はHbA1cを測定する装置に限られず、本発明は血液、尿等の生体成分の定性・定量分析を行う自動分析装置に適用可能である。
また、漬け置き洗浄の実施の条件として、特定の分析項目(HbA1c)の分析への使用回数を基準とした、洗浄実施の条件はこれに限られず、所定の回数・時間実施した際に漬け置き洗浄を実施したほうが良い項目での使用回数などを適宜基準として用いることができる。
更に、分析の手順において、試薬の吐出に先立ち試料の吐出を行う場合について説明したが、試薬の吐出後に試料を吐出してもよい。