JP2017020628A - 流体輸送配管 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐放射線性の高い高密度ポリエチレンを主成分とする流体輸送配管を提供する。【解決手段】本発明に係る流体輸送配管は、高密度ポリエチレンを主成分とし、上記高密度ポリエチレンは、添加剤として、ヒドロ芳香族型劣化防止剤またはプロピルフルオランテンを1〜7質量部含むことを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、流体輸送配管に係り、特に、原子力関連施設などの放射線環境下において流体の輸送に用いる流体輸送配管に関する。
原子力関連施設において、放射性物質を含む流体の輸送、もしくは高放射線量下における流体の輸送には耐放射線性を考慮して鋼管が用いられているが、空間的・時間的な制約が多い環境下での鋼管の敷設では、必要とされる工数や必要機材の多さが問題となる。そこで、例えば、鋼管に比べて移動や加工が容易であり、水道用配管などの長距離配管としても用いられる高密度ポリエチレンを用いた流体輸送配管の使用が検討されている。
しかしながら、高密度ポリエチレンは鋼管の材質とは異なり耐放射線性に劣るという欠点を有している。すなわち、高密度ポリエチレンに放射線が作用することによって非常に反応性の高い水素ラジカルや炭化水素ラジカルが発生し、このラジカルによる再結合や付加反応による架橋と呼ばれる分子量の増大や、不均化反応による崩壊と呼ばれる分子量の減少などによって、弾性、耐応力環境き裂性、衝撃特性が低下してしまう。従って、放射線環境下において高密度ポリエチレンを流体輸送配管として用いる場合には、高い耐放射線性を付加する必要がある。
ポリマへの耐放射線性の付与に関する技術として、例えば、特許文献1(特開2012‐238528号公報)には、原子力発電所、特にBWRの格納容器内に適用でき、耐熱性、耐放射線性及び電気特性に優れた組成物からなる絶縁体を備えた耐放射線性絶縁電線を提供することを目的として、導体と、導体の周囲を被覆する絶縁層を備えた絶縁電線であって、絶縁層は、オレフィン系ポリマ100質量部に対し、老化防止剤を10〜15質量部、芳香族系プロセスオイルを5〜40質量部含有し、更に焼成クレーを5〜40質量部含有することを特徴とする耐放射線性絶縁電線が開示されている。
しかしながら、上記従来技術におけるポリマは、引き回したり動かしたりしたときの負荷(応力)に対する柔軟性が必要とされるケーブルの被覆に用いられることを想定した低密度ポリエチレンであり、原子力関連施設における流体の輸送に用いる配管に必要とされる耐圧性や硬度を有していない。また、上記従来技術における低密度ポリエチレンは高密度ポリエチレンと分子構造が異なるため、その組成を高密度ポリエチレンに適用しても所望の特性を得ることはできない。
本発明は、上記事情に鑑み、耐放射線性の高い高密度ポリエチレンを主成分とする流体輸送配管を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、高密度ポリエチレンを主成分とし、上記高密度ポリエチレンは、添加剤として、ヒドロ芳香族型劣化防止剤またはプロピルフルオランテンを1〜7質量部含むことを特徴とする流体輸送配管を提供する。
本発明によれば、耐放射線性の高い高密度ポリエチレンを主成分とする流体輸送配管を提供することができる。
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で様々な改良および変更を加えることができる。
図1は、本発明に係る流体輸送配管の一部を模式的に示す斜視図である。
図1において、本実施の形態に係る流体輸送配管1は、原子力関連施設における各施設内部や複数の汚染水滞留エリア間の流体の輸送に用いられるものであり、放射性物質を含む水や海水などの流体2の輸送、もしくは高放射線量下における流体の輸送に用いられる。すなわち、流体輸送配管1は、内部を流通する放射性物質を含む流体2からの放射線3や、高放射線量下における外部からの放射線4等に晒される環境下で用いられる。
本発明に係る流体輸送配管1は、高密度ポリエチレンを主成分として用いる。高密度ポリエチレンとしては、例えば、密度が0.95グラム/cm3以上、溶解指数(MFR)が0.45g/10min(190℃、荷重5.0kg)以下のものを用いることができる。そして、必須の添加剤として、以下の(A)または(B)を1〜7質量部含む。
添加剤(A):ヒドロ芳香族型劣化防止剤
ヒドロ芳香族型劣化防止剤として、石油系高芳香族重質油を部分核水素化したヒドロ芳香族型劣化防止剤を用いる。ここで言う「石油系高芳香族重質油を部分核水素化したヒドロ芳香族型劣化防止剤」とは、流動パラフィン、ゴム配合油、潤滑油などのプロセスオイルである。特に、石油系重質油(沸点300℃以上)を400〜500℃で熱処理して蒸留することによって得られる重質高芳香族油を水素化触媒存在下で反応温度350〜400℃、反応圧力100〜150kgf/cm2の条件下で水素化したもので、HHAP(Heavy hydroaromatics from petroleum)と呼ばれているものが良い。
ヒドロ芳香族型劣化防止剤として、石油系高芳香族重質油を部分核水素化したヒドロ芳香族型劣化防止剤を用いる。ここで言う「石油系高芳香族重質油を部分核水素化したヒドロ芳香族型劣化防止剤」とは、流動パラフィン、ゴム配合油、潤滑油などのプロセスオイルである。特に、石油系重質油(沸点300℃以上)を400〜500℃で熱処理して蒸留することによって得られる重質高芳香族油を水素化触媒存在下で反応温度350〜400℃、反応圧力100〜150kgf/cm2の条件下で水素化したもので、HHAP(Heavy hydroaromatics from petroleum)と呼ばれているものが良い。
添加剤(B):プロピルフルオランテン
さらに、任意の添加剤として、以下の添加剤(C)または(D)を1〜5質量部含むことができる。
さらに、任意の添加剤として、以下の添加剤(C)または(D)を1〜5質量部含むことができる。
添加剤(C):フェノール系酸化防止剤(一次酸化防止剤)
具体的には、3,9‐Bis{2‐[3‐(3‐tert‐butyl‐4‐hydroxy‐5‐methylphenyl)propionyloxy]‐1,1‐dimethylethyl}‐2,4,8,10‐tetraoxaspiro[5.5]undecane(3,9‐ビス[2‐[3‐(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ]‐1,1‐ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)が挙げられる。
具体的には、3,9‐Bis{2‐[3‐(3‐tert‐butyl‐4‐hydroxy‐5‐methylphenyl)propionyloxy]‐1,1‐dimethylethyl}‐2,4,8,10‐tetraoxaspiro[5.5]undecane(3,9‐ビス[2‐[3‐(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ]‐1,1‐ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)が挙げられる。
添加剤(D)
具体的には、N,N‐Diphenyl‐p‐phenylenediamine( N,N´‐ジフェニル‐1,4‐フェニレンジアミン)を用いることが好ましい。
具体的には、N,N‐Diphenyl‐p‐phenylenediamine( N,N´‐ジフェニル‐1,4‐フェニレンジアミン)を用いることが好ましい。
さらに、任意の添加剤として、以下の添加剤(E)を1〜5質量部含むことができる。
添加剤(E):チオエーテル系酸化防止剤
具体的には、2,2‐Bis{[3‐(dodecylthio)‐1‐oxopropoxy]methyl}propane‐1,3‐diylbis[3‐(dodecylthio)propionate](ビス[3‐(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2‐ビス[[3‐(ドデシルチオ)‐1‐オキソプロピルオキシ]メチル]‐1,3−プロパンジイル)が挙げられる。
具体的には、2,2‐Bis{[3‐(dodecylthio)‐1‐oxopropoxy]methyl}propane‐1,3‐diylbis[3‐(dodecylthio)propionate](ビス[3‐(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2‐ビス[[3‐(ドデシルチオ)‐1‐オキソプロピルオキシ]メチル]‐1,3−プロパンジイル)が挙げられる。
さらに、任意の添加剤として、以下の添加剤(F)を1〜2.5質量部含むことができる。
添加剤(F):ヒンダードアミン系光安定剤
具体的には、Poly[[6‐[(1,1,3,3‐tetramethylbutyl)amino]‐1,3,5‐triazine‐2,4−diyl][(2,2,6,6‐tetramethyl‐4‐piperidinyl)imino]‐1,6‐hexanediyl[(2,2,6,6‐tetramethyl‐4‐piperidinyl)imino]])(ポリ((6‐((1,1,3,3‐テトラメチルブチル)アミノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4−ジイル)ビス((2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジニル)イミノ)‐1,6‐ヘキサンジイル))が挙げられる。
具体的には、Poly[[6‐[(1,1,3,3‐tetramethylbutyl)amino]‐1,3,5‐triazine‐2,4−diyl][(2,2,6,6‐tetramethyl‐4‐piperidinyl)imino]‐1,6‐hexanediyl[(2,2,6,6‐tetramethyl‐4‐piperidinyl)imino]])(ポリ((6‐((1,1,3,3‐テトラメチルブチル)アミノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4−ジイル)ビス((2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジニル)イミノ)‐1,6‐ヘキサンジイル))が挙げられる。
さらに、任意の添加剤として、以下の添加剤(G)を1〜2.5質量部含むことができる。
添加剤(G):サリチレート系紫外線吸収剤
具体的には、2´,4´‐di‐tert‐butylphenyl3,5‐di‐tertbutyl‐4‐hydroxybenzoate(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ安息香酸2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)が挙げられる。
具体的には、2´,4´‐di‐tert‐butylphenyl3,5‐di‐tertbutyl‐4‐hydroxybenzoate(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ安息香酸2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)が挙げられる。
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
原子力関連施設において、放射性物質を含む流体の輸送、もしくは高放射線量下における流体の輸送には耐放射線性を考慮して鋼管が用いられているが、空間的・時間的な制約が多い環境下での鋼管の敷設では、必要とされる工数や必要機材の多さが問題となる。そこで、例えば、鋼管に比べて移動や加工が容易であり、水道用配管などの長距離配管としても用いられる高密度ポリエチレンを用いた流体輸送配管の使用が検討されている。しかしながら、高密度ポリエチレンは鋼管の材質とは異なり耐放射線性に劣るという欠点を有している。すなわち、高密度ポリエチレンに放射線が作用することによって非常に反応性の高い水素ラジカルや炭化水素ラジカルが発生し、このラジカルによる再結合や付加反応による架橋と呼ばれる分子量の増大や、付均化反応による崩壊と呼ばれる分子量の減少などによって、弾性、耐応力環境き裂性、衝撃特性が低下してしまう。
一般に高分子材料は、放射線が作用すると分子が励起され、結合が切断して分解することが知られている。放射線が高密度ポリエチレンに作用すると、水素ラジカルや炭化水素ラジカルが生成する。このラジカルは反応性が高く、ラジカル同士が結合したり(再結合)、ラジカルが元素を引き抜いて別のラジカルを生成させたり(引き抜き反応)、ラジカルが二重結合の隣に付加したり(付加反応)、ラジカル同士が結合すると同時に分子鎖が切断されたり(不均化反応)する。再結合や付加反応は架橋と呼ばれる分子量の増大をもたらすが、不均化反応は崩壊と呼ばれる分子量の減少をもたらす。崩壊も架橋も弾性が低下して、衝撃や屈曲に対する抵抗性が低下する、脆くなるなどの物性の変化が生じるため、配管として使用する場合、亀裂が入る、あるいは破裂するなどの不具合を生じる懸念がある。配水管用ポリエチレンもまた、同様である。配水管用ポリエチレンは高分子量領域を増加、結晶構造を繋ぐタイ分子を増やすことで長期静水圧強度と耐環境応力き裂性を向上させている。放射線環境では結晶領域の分子鎖はあまり影響を受けないが、非晶部、即ち、タイ分子鎖の酸化切断が進行する。タイ分子鎖の切断が進むと、外部応力が加えられた際に樹脂内で応力集中が起こり、長期静水圧強度や耐環境応力き裂性、衝撃特性が低下する。
また、酸素が存在する大気中では放射線が高密度ポリエチレンに作用すると、ラジカルが酸素に対して強い反応性をもつので、ラジカルと酸素が反応する。酸素は水素との親和性が高いので、これを引き抜いて過酸化ラジカル(ROO・)を生成し、酸化の伝播反応(連鎖反応)を開始する以下の(式1)のような反応が進行することが知られている。
R・+O2→ROO・ …(式1)
この過酸化ラジカルは反応性に富み、他の分子から水素を引き抜いて、過酸化物(ROOH)とラジカル(R・)に変化する(下記(式2)参照)。
この過酸化ラジカルは反応性に富み、他の分子から水素を引き抜いて、過酸化物(ROOH)とラジカル(R・)に変化する(下記(式2)参照)。
ROO・+RH→ROOH+R・ …(式2)
新たに発生したラジカル(R・)は酸素存在下で、上記(式1)によりまた新たなパーオキシラジカルを形成させる。過酸化物(ROOH)も不安定なため、分解して結果的にパーオキシラジカル(ROO・)、オキシラジカル(RO・)やラジカル(R・)が形成される(下記(式3)〜(式5)参照)。
新たに発生したラジカル(R・)は酸素存在下で、上記(式1)によりまた新たなパーオキシラジカルを形成させる。過酸化物(ROOH)も不安定なため、分解して結果的にパーオキシラジカル(ROO・)、オキシラジカル(RO・)やラジカル(R・)が形成される(下記(式3)〜(式5)参照)。
ROOH→RO・+・OH …(式3)
2ROOH→ROO・+RO・+H2O …(式4)
RO・+RH→ROH+R・ …(式5)
この様に、最初に発生した一つのラジカル(R・)がパーオキシラジカル(ROO・)を経て、新たなラジカルを多数増殖させることとなり、連鎖的に酸化の伝播反応(連鎖反応)が進行する。これにより、ますます、分子構造の分解(架橋や崩壊)が促進される。
2ROOH→ROO・+RO・+H2O …(式4)
RO・+RH→ROH+R・ …(式5)
この様に、最初に発生した一つのラジカル(R・)がパーオキシラジカル(ROO・)を経て、新たなラジカルを多数増殖させることとなり、連鎖的に酸化の伝播反応(連鎖反応)が進行する。これにより、ますます、分子構造の分解(架橋や崩壊)が促進される。
原子力関連施設に敷設される流体輸送配管は多くの場合、放射性物質を含む水や海水を移送する。また、屋外で使用する場合、配管は雨が直接あたる環境に施工されている。そのため、配管の内部、および外部からの水の影響も考慮しなければならない。一般に放射線環境下における水分の影響は原子力ケーブルに使用される絶縁体のLOCA(Loss of Coolant Accident)の模擬試験でも検討されているように劣化が厳しいことが分かっている。特に、雰囲気中に水分が存在する場合、前述の酸化により生成した過酸化物(ROOH)が水中のプロトンの影響で解離してカルボニル基(>C=O)と水を生成し分子鎖中の水素を遊離する触媒反応が進行することが知られている。生成したカルボニル基(>C=O)は分子鎖を切断してラジカルになり易いこと、さらにカルボニル基に隣接する水素が引き抜かれ易いことから、酸化劣化が促進されると考えられている。
さらに放射線環境下ではオゾンが生成することが知られている。オゾンは分子鎖に二重結合を持つ高密度ポリエチレンに対して強く作用する。例えば、二重結合部にオゾンが攻撃するとオゾナイドが形成され、これが不安定であるため、O−O結合が切断されてアルデヒドやケトン、エステル、ラクトン、過酸化物等を形成する。オゾンによる分子構造の分解は、微小のクラック(オゾンクラック)を形成させることが知られている。特に、1MPaの配管圧力がかかる場合、常に伸長された状態となっており、これがオゾンの浸透率を高めるとともに応力集中によってオゾンクラックが成長し、破裂につながる懸念がある。
また、流体輸送配管は高温の放射性物質を含む流体を移送する場合もある。この場合、前述した分子構造の分解をもたらす様々な素反応は、分子運動、即ち、振動や衝突確立と関係する。分子運動は高温になるほど激しくなるため、分解反応が加速され、劣化は著しい。特に、酸化反応を伴う系では、温度は試料中の酸化層厚さ、酸素の拡散速度、酸化分解の反応速度に影響を及ぼすことが分かっており、酸化による分解が益々加速される。一般に、温度が10℃上昇すると反応速度は2倍になる。したがって、高温の放射性物質を含む流体を移送すると酸化劣化が加速され、分子構造が容易に分解する。このような分子構造の変化は、弾性率の低下、引張強さの低下、伸びの低下など種々な特性の低下に繋がる。これらの特性が低下すると、配管に亀裂や微小なクラックが入る、あるいは破裂するなどの不具合を生じる恐れがある。
以上のような課題に対して、本実施の形態においては、原子力関連施設に用いる流体輸送配管の高密度ポリエチレンに添加剤として、上記添加剤(A)または(B)を1〜7質量部の範囲含むように構成したもので、放射線環境下の流体輸送配管の劣化を抑制することができる。特に、添加剤(A)および(B)は(式1)(式2)(式5)に示されるR・のラジカル捕捉作用が高いことにより、その効果は絶大である。添加量は多ければ多いほどよいが、高密度ポリエチレンに添加できる量は最大でも7質量部である。7質量部より多いと、染み出しが起こり、添加が難しい。また、1重量部未満では添加量が少なく、十分なラジカル捕捉の効果が得られない。
また、上記任意の添加剤(C)および(D)は、放射線環境下の流体輸送配管の劣化を抑制することができる。特に、(式1)(式2)(式4)に示されるROO・にプロトンを供与してラジカルを捕捉する一次酸防剤の効果が高いことが特徴である。添加量は多ければ多いほどよいが、高密度ポリエチレンに添加できる量は最大でも5質量部である。5質量部より多いと、染み出しが起こり、添加が難しい。また、1重量部未満では添加量が少なく、十分なラジカル捕捉の効果が得られない。
さらに、上記添加剤(E)は、放射線環境下の流体輸送配管の劣化を抑制することができる。特に、(式2)(式3)(式4)に示されるROOHからOを奪って連鎖反応を止める二次酸防剤の効果が高いことが特徴である。添加量は多ければ多いほどよいが、高密度ポリエチレンに添加できる量は最大でも5質量部である。5質量部より多いと、染み出しが起こり、添加が難しい。また、1質量部未満では添加量が少なく、十分な連鎖反応の抑制効果が得られない。この二次酸防剤は先の一次酸防剤と一緒に添加することで、より一層、放射線環境下の流体輸送配管の劣化を抑制することができる。特に、一次酸化防剤である添加剤(D)との相乗効果が高く、この組合せによって、放射線環境下の流体輸送配管の劣化をより一層抑制することができる。
また、添加剤(F)および(G)は、放射線環境下の流体輸送配管の劣化を抑制することができる。ヒンダードアミン系光安定化剤とサリチレート系紫外線吸収剤は、それぞれ単独では十分な効果が得られないが、一緒に添加すると放射線によるラジカル生成の抑制効果が高い。特に、(式1)のR・の生成を抑制する働きが顕著である。添加量は多ければ多いほどよいが、高密度ポリエチレンに添加できる量は最大でも2.5質量部である。2.5質量部より多いと、染み出しが起こり、添加が難しい。また、1質量部未満では添加量が少なく、十分なラジカル捕捉の効果が得られない。
すなわち、本実施の形態においては、耐放射線性の高い高密度ポリエチレンからなる流体輸送配管を提供することができる。より具体的には、放射線による高密度ポリエチレンのタイ分子の切断が抑制されることによって、長期静水圧強度や耐環境応力き裂性、衝撃特性の低下が抑制される。すなわち、本発明に係る流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンは、外気の高い放射線環境や紫外線環境、大気中の酸素や酸性雨、輸送対象である高線量の放射性物質を含む水や海水、放射線により発生するオゾン、高温の流体の輸送等の過酷な条件下によって生じるタイ分子構造の分解による劣化を抑制することができ、亀裂や微小クラック、破裂などの不具合を長期間抑制することができる。これは、冬場の低温環境において流体が凍結した場合にも、衝撃による流体輸送配管のクラックの発生確率抑制に繋がる。
また、本発明の流体輸送配管を用いることにより、原子力関連施設の設備の構築における流体輸送配管の施工に関しては、放射性物質を扱う設備として十分な安全性を担保した上で、時間的、空間的制約による工数や必要機材の増大による影響を抑制することができる。
また、流体輸送配管の劣化を抑制することができるので、原子力関連施設のような広大な設備に敷設された非常に長い流体輸送配管の点検、すなわち亀裂や微小なクラックが発生していないかの点検頻度を抑制することができる。したがって、点検ごとの精度を向上することができるので点検漏れの発生を抑制することができ、また、配管に不具合が認められた場合に生じる流体輸送配管の交換のための多くの時間と労力を抑制することができる。さらに、配管交換のためにシステムを停止することによって全体のシステムに多大な支障をきたすことを抑制することができ、システム全体の安定性を向上させることができ
る。
る。
以下、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、本発明の一実施形態に係る流体輸送配管を作製し、耐放射線性を評価した。以下に、本実施例の流体輸送配管の作製方法について説明する。
本実施例の高密度ポリエチレンは、エチレンを槽状反応器に導入し、メタロセン触媒、チーグラー触媒、フィリップス触媒等を用いて、低圧(反応圧力:5〜200kgf/cm2)および低温(反応温度:60〜100℃)下で重合させて得られたものであり、結晶化度が62.1〜81.6%と高く、密度が0.94〜0.97g/cm3の分岐を有さない重合体である。メルトフローレート(MFR)が0.1g/10mim以上3g/10mim以下、特に0.2〜0.5g/10mim以下のものが好ましい。
混練機としてはバンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸混練機、ロータ型二軸混練機、ブスコニーダー等が使用できるが、特に限定されない。混練温度は、120〜180℃が望ましい。この範囲であれば機械的負荷が大きくならず加工が容易であり、材料が分解することがない。
流体輸送配管(以下、「パイプ」と称する。)の押出成形において、パイプ用ポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂100質量部に対して酸化チタンを0.1〜5質量部の範囲で含有している。パイプ製造装置のホッパーには、ポリエチレン樹脂ペレットをドライブレンドしながら供給し、押出機中で加熱溶融し、ダイスから円筒状に押出し、冷却しパイプとする。なお、別の方法としては、事前に、マスターバッチペレットとポリエチレン樹脂ペレットを、ペレット製造装置のホッパーに投入し、溶融混練し、溶融樹脂組成物を多数の孔(直径3mm程度)が開けられているステンレス円盤を通過させ水中にうどん状に押出し、円盤面に平行に設置されている回転するナイフによって長さ3mm程度に切断し、パイプ用ポリエチレン樹脂組成物ペレットとして貯蔵し、高密度ポリエチレンパイプを製造するときに貯蔵しておいたパイプ用ポリエチレン樹脂組成物ペレットをパイプ製造装置のホッパーに供給し、押出機中で加熱溶融し、ダイスから円筒状に押出し、冷却してパイプとしてもよい。
パイプ用ポリエチレン樹脂組成物ペレットからパイプに成形するには、該組成物を例えば150〜230℃の温度で押出機からダイスを通して押出し、サイジングを行った後、冷却水槽で冷却し、引取り機を通して切断または巻取る方法が挙げられる。パイプは単層パイプまたは2層パイプとすることができる。押出機としては単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機等が挙げられる。ダイスはストレートヘッドダイス、クロスヘッドダイス、オフセットダイスなどいずれのタイプのものも利用できる。サイジング方法は、サイジングプレート法、アウトサイドマンドレル法、サイジングボックス法、インサイドマンドレル法等のいずれの方法も利用できる。
マスターバッチペレット、又はポリエチレン樹脂ペレットに後述する表1に示す添加剤を添加してパイプを作製する。まず、チーグラー触媒を使用して製造された高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm3、メルトフローレート0.5g/10分)を100質量部として秤量する。これに、Irganox(登録商標) 1010(チバガイギー社製)0.05質量部と酸化チタン0.5質量部を配合し、さらに、添加剤(A)および添加剤(C)を秤量して加えた。これをバンバリーミキサーで温度150℃、10分間混練してから造粒してポリエチレン樹脂ペレットとした。このポリエチレン樹脂ペレットを用いてパイプを成型した。得られたパイプからダンベル形状に切り出した試験片を作製した。実施例1の添加剤を後述する表1に記載する。
上記試験片に放射線を照射した後、引張試験を実施した。ここで、試験片への放射線照射および引張試験について詳述する。
<放射線照射>
放射線照射では、Co60線源から放出されるγ線を1kGy/hの線量率で試験片に照射した。照射時間は、50h、100h、150h、200h、250hであり、吸収線量は、50kGy、100kGy、150kGy、200kGy、250kGyである。
放射線照射では、Co60線源から放出されるγ線を1kGy/hの線量率で試験片に照射した。照射時間は、50h、100h、150h、200h、250hであり、吸収線量は、50kGy、100kGy、150kGy、200kGy、250kGyである。
<引張試験>
引張試験は、日本水道協会規格「水道配水用ポリエチレン管 JWWA K 144」に準拠する。試験機は、最大の引張力を指示する装置を備え、ダンベル状の試験片を締めるつかみ具を備えるJIS(Japanese Industrial Standards) B7721に記載の装置を使用する。また、試験片としては、プレス機で成形したパイプからJIS K7162に記載されている1B形のダンベル試験片を切り出して用いる。ダンベル試験片の厚さと平行部の幅を測定し、さらに伸び測定用の標線を平行部分の中心部に付けた後に、20mm/minで引張試験機を用いて室温で引張試験を行う。標線間距離は50mmである。引張試験では破断時の伸びを測定する。破断時の伸びは、試験片が破断に至るまでの標線間の長さを測定する。試験片の破断時の伸びは下記(式6)によって算出される。
引張試験は、日本水道協会規格「水道配水用ポリエチレン管 JWWA K 144」に準拠する。試験機は、最大の引張力を指示する装置を備え、ダンベル状の試験片を締めるつかみ具を備えるJIS(Japanese Industrial Standards) B7721に記載の装置を使用する。また、試験片としては、プレス機で成形したパイプからJIS K7162に記載されている1B形のダンベル試験片を切り出して用いる。ダンベル試験片の厚さと平行部の幅を測定し、さらに伸び測定用の標線を平行部分の中心部に付けた後に、20mm/minで引張試験機を用いて室温で引張試験を行う。標線間距離は50mmである。引張試験では破断時の伸びを測定する。破断時の伸びは、試験片が破断に至るまでの標線間の長さを測定する。試験片の破断時の伸びは下記(式6)によって算出される。
EB=(L1−L0)/L0×100 ・・・(式6)
ここで、上記(式6)において、EBは破断時の伸び(%)、L0は標線間距離(mm)、L1は破断時の標線間距離(mm)をそれぞれ示している。これより、破断時伸びが350%に低下するときの最大吸収線量(kGy)を求める。実施例1の評価結果を表1に記載する。
[比較例1]
比較例1では、添加剤を加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてパイプを作製し、評価を行った。比較例1の評価結果を表1に併記する。
比較例1では、添加剤を加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてパイプを作製し、評価を行った。比較例1の評価結果を表1に併記する。
図2Aは実施例1において、添加剤(C)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(A)の濃度との関係を示すグラフである。また、図2Bは、実施例1において、添加剤(A)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(C)の濃度との関係を示すグラフである。図2Aおよび2Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤(A)および(C)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(A)の添加量を1〜7質量部、添加剤(C)の添加量を1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(A)および添加剤(D)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例2の添加剤および評価結果を表1に示す。
図3Aは実施例2において、添加剤(D)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(A)の濃度との関係を示すグラフである。また、図3Bは実施例2において、添加剤(A)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(D)の濃度との関係を示すグラフである。図3Aおよび3Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤(A)および(D)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(A)の添加量を1〜7質量部、添加剤(D)の添加量を1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(A)、(C)および(E)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例3の添加剤および評価結果を表1に示す。
図4Aは実施例3において、添加剤(C)および(E)をそれぞれ1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(A)の濃度との関係を示すグラフである。また、図4Bは実施例3において、添加剤(A)および(C)をそれぞれ1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(E)の濃度との関係を示すグラフである。より図4Aおよび4Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(A)、(C)および(E)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(A)の添加量は1〜7質量部、添加剤(C)の添加量は1〜5質量部、
添加剤(E)の添加量は1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
添加剤(E)の添加量は1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(A)、(F)および(G)を添加した場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例4の添加剤および評価結果を表1に示す。
図5Aは実施例4において、添加剤(F)および(G)を1質量部(比率1:1)としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(A)の濃度との関係を示すグラフである。また、図5Bは実施例4において、添加剤(A)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(F)+(G)(比率1:1)の濃度との関係を示すグラフである。図5Aおよび5Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(A)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(A)の添加量は1〜7質量部、添加剤(F)および添加剤(G)の添加量は、それぞれ1〜2.5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(B)および(C)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例5の添加剤および評価結果を表1に示す。
図6Aは実施例5において、添加剤(C)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(B)の濃度との関係を示すグラフである。また、図6Bは実施例5において、添加剤(B)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(C)の濃度との関係を示すグラフである。図6Aおよび6Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(B)および(C)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(B)の添加量は1〜7質量部、添加剤(C)の添加量は1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(B)および(D)を添加した場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例6の添加剤および評価結果を表1に示す。
図7Aは実施例6において、添加剤(D)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(B)の濃度との関係を示すグラフである。また、図7Bは実施例6において、添加剤(B)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(D)の濃度との関係を示すグラフである。図7Aおよび7Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(B)および(D)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(B)の添加量は1〜7質量部および添加時あ(D)添加量は1〜5質量部とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(B)、(C)および(E)を添加した場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例7の添加剤および評価結果を表1に示す。
図8Aは実施例7において、添加剤(C)および(E)をそれぞれ1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(B)の濃度との関係を示すグラフである。また、図8Bは実施例7において、添加剤(B)および(C)をそれぞれ1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(E)の濃度との関係を示すグラフである。図8Aおよび8Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(B)、(C)および(E)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(B)の添加量は1〜7質量部、添加剤(C)の添加量は1〜5質量部、添加剤(E)の添加量は1〜5質量部の範囲とすることで、パイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(B)添加剤(F)および添加剤(G)を添加した場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例8の添加剤および評価結果を表1に示す。
図9Aは実施例8において、添加剤(F)+(G)(比率1:1)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(B)の濃度との関係を示すグラフである。また、図9Bは実施例8において、添加剤(B)を1質量部としたときの配管の破断伸び率350%の最大吸収線量と添加剤(F)+(G)(比率1:1)の濃度との関係を示すグラフである。図9Aおよび9Bに示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(B)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
また、高密度ポリエチレンポリマ100質量部に対する、添加剤(C)の添加量は1〜7質量部、添加剤(F)の添加量は1〜2.5質量部、添加剤(G)の添加量は1〜2.5質量部の範囲とすることでパイプの耐放射線性の向上効果が十分に得られることが示された。
本実施例では、添加剤(A)、(C)、(E)、(F)および(G)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。添加剤(A)の添加量を7質量部とし、添加剤(C)、(E)、(F)および(G)の添加量は、それぞれ1質量部とした。実施例9の添加剤および評価結果を表1に記載する。
なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射、および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射、および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
表1に示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として添加剤(A)、(C)、(E)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が185kGyと高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
本実施例では、添加剤(A)、(D)、(F)および(G)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。添加剤(A)の添加量を7質量部とし、添加剤(D)、(F)および(G)の添加量は、それぞれ1質量部とした。実施例10の添加剤および評価結果を表1に記載する。
表1に示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤として、添加剤(A)、(D)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が191kGyと高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
本実施例では、添加剤(B)、(C)、(E)、(F)および(G)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。添加剤(B)の添加量を7質量部とし、添加剤(C)、(E)、(F)および(G)の添加量は、それぞれ1質量部とした。実施例11の添加剤および評価結果を表1に記載する。
表1に示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤(B)、(C)、(E)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が196kGyと高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
本実施例では、添加剤(B)、(D)、(F)および(G)を用いた場合について説明する。なお、流体輸送配管(パイプ)の形成、試験片の作成、放射線照射および引張試験等については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。添加剤(B)の添加量を7質量部とし、添加剤(D)、(F)および(G)の添加量は、それぞれ1質量部とした。実施例12の添加剤および評価結果を表1に記載する。
表1に示すように、流体輸送配管を構成する高密度ポリエチレンに添加剤を添加しない比較例1の場合には、破断時伸びが350%以下となる最大吸収線量が120kGyと低いのに対し、高密度ポリエチレンに添加剤(B)、(D)、(F)および(G)を添加した場合には、添加しない場合に比べて吸収線量が198kGyと高く、耐放射線性が向上(寿命が延長)していることがわかる。
上記結果から、必須の添加剤(A)または(B)の添加のみでも耐放射線性が十分に向上する。さらに、任意の添加剤(C)〜(G)を添加すると耐放射線性が高くなり、(C)または(D)と(E)〜(G)を添加した場合に最も耐放射線性が高くなることがわかる(実施例10および12)。
以上説明したように、本発明によれば、耐放射線性の高い高密度ポリエチレンを主成分とする流体輸送配管を提供することができることが実証された。
なお、上記した実施例は、本発明の理解を助けるために具体的に説明したものであり、本発明は、説明した全ての構成を備えることに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
1…流体輸送配管、2…流体、3,4…放射線。
Claims (9)
- 高密度ポリエチレンを主成分とし、
前記高密度ポリエチレンは、添加剤として、ヒドロ芳香族型劣化防止剤またはプロピルフルオランテンを1〜7質量部含むことを特徴とする流体輸送配管。 - さらに、フェノール系酸化防止剤またはN,N´‐ジフェニル‐1,4‐フェニレンジアミンを1〜5質量部含むことを特徴とする請求項1記載の流体輸送配管。
- 前記フェノール系酸化防止剤が、3,9‐ビス[2‐[3‐(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ]‐1,1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンであることを特徴とする請求項2記載の流体輸送配管。
- さらに、チオエーテル系酸化防止剤を1〜5質量部含むことを特徴とする請求項1記載の流体輸送配管。
- 前記チオエーテル系酸化防止剤が、ビス[3‐(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2‐ビス[[3‐(ドデシルチオ)‐1‐オキソプロピルオキシ]メチル]‐1,3‐プロパンジイルであることを特徴とする請求項4記載の流体輸送配管。
- さらに、ヒンダードアミン系光安定剤または紫外線吸収剤を1〜2.5質量部含むことを特徴とする請求項1記載の流体輸送配管。
- 前記ヒンダードアミン系光安定剤が、ポリ((6‐((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル)ビス((2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジニル)イミノ)‐1,6‐ヘキサンジイル)であることを特徴とする請求項6記載の流体輸送配管。
- 前記紫外線吸収剤が、3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ安息香酸2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェニルであることを特徴とする請求項6記載の流体輸送配管。
- 前記流体輸送配管は、原子力関連施設を構成する部材であることを特徴とする請求項1記載の流体輸送配管。
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WO2018147295A1 (ja) | 2017-02-07 | 2018-08-16 | 株式会社有沢製作所 | 感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたソルダーレジストフィルム、フレキシブルプリント配線板及び画像表示装置 |
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2015
- 2015-07-15 JP JP2015140927A patent/JP2017020628A/ja active Pending
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