JP2017020610A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この車輪用軸受装置100では、転がり軸受101がアクスルチューブ102の外周に嵌め合わされていて、図示しない車輪を取り付けるためのハブ103が、転がり軸受101の外周に嵌め合わされている。アクスルシャフト104は、アクスルチューブ102と同軸に配置されていて、アクスルシャフト104の一端が図示しないデファレンシャルギアに連結されている。アクスルシャフト104の他端には、径方向に拡がるフランジ105が形成されていて、フランジ105とハブ103とがボルト106で締結されている。こうして、デファレンシャルギアの駆動力が車輪に伝達されている。
従来のリアアクスルでは、デフオイルの流出を防止するため、転がり軸受101の内輪108とアクスルチューブ102の間に図8に示すようなシールリング109が装着されている。シールリング109は、弾性体で形成されており、アクスルチューブ102と内輪108とで軸方向に圧縮することによって、デフオイルの流出を遮断している。
上述したように、シールリング109の組み付け状態が不良になると、ブレーキ性能に影響があるため、組み付けにあたっては慎重な作業が要求される。そのため、手で容易に組み付けることが出来るとともに、正しく装着されたことを明確に認識できるシールリング109が要望されていた。
本発明の第1実施形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態であるリアアクスルの車輪用軸受装置10において、転がり軸受30が組み込まれている部分を拡大した軸方向断面図である。第1実施形態の車輪用軸受装置10は、転がり軸受30とアクスルチューブ12との間を密封するシールリング60に特徴がある。リアアクスルの構造は、図7に示した従来技術に開示されている構造と同等である。このため、リアアクスルの構造については簡単に説明し、その後、図1によって転がり軸受30について詳細に説明する。
また、以下の説明では、リアアクスルは、図1の右方が車両外側となるので、以下の説明では、図1における右方を「アウター側」、左方を「インナー側」という。
軸受装着面16と転がり軸受30とは、数10μm程度の径方向すきまをもって嵌め合わされている。このため、リアアクスルを定期的に分解点検するときに、転がり軸受30をアクスルチューブ12から容易に取り外すことが出来る。アクスルチューブ12のアウター側の軸端部には雄ねじが形成されている。ナット20を締め付けることによって、転がり軸受30がアクスルチューブ12に固定される。
転がり軸受30は、外輪37と、一対の内輪31,31と、転動体としての複数の円すいころ33と、保持器34,34とを備えている。
内輪31の内周面31aは円筒形状である。内周面31aの直径寸法は、アクスルチューブ12の軸受装着面16の外径寸法より50μm程度大きく設定されている。
内輪31の外周には、内側軌道面38が形成されている。内側軌道面38はテーパ面で形成されている。内輪31の軸方向両端は、軸線に直交する面である。内側軌道面38の小径側に形成された面を小端面39、大径側に形成された面を大端面40という。
一対の内輪31,31は、互に小端面39,39が向き合うように組み合わされている。内輪31の内周には、突き合わされた小端面39,39を軸方向に跨いで連結環42が嵌め合わされている。こうして、内輪31,31が軸方向に互いに連結されている。また、内輪31,31の外周には、突き合わされた小端面39、39を軸方向に跨いで、密封部材43が嵌め合わされている。
大端面40の内周側には、環状段部50が形成されている。環状段部50にはシールリング60が組み付けられる。環状段部50の詳細については後述する。
図2は、図1の要部拡大図であって、転がり軸受30が段差部15に組み付けられた状態を示している。
嵌合面51は、転がり軸受30と同軸の円筒面である。嵌合面51の大端面40側の端部には、面取り54が形成されている。壁面52は、軸と直交する面である。
逃げ部53は、軸方向断面が円弧状である。逃げ部53の径方向の最大寸法D5は、嵌合面51の内径寸法D0より大きい。
図2に示すように、たわみ部材61の軸方向断面の形状は長方形である。また、図3に示すように、軸に直交する向きの断面では、たわみ部材61は円環状である。円周上の一カ所が切断されており、周方向に所定の大きさですきま63が設けられている。たわみ部材61の外周の直径寸法D1は、嵌合面51の内径寸法D0より大きい。なお、たわみ部材61の軸方向断面の形状は第1実施形態の形状に限定されない。径方向に撓みうる形状であればよく、円形、楕円形など適宜選択できる。
シール部材62は、金型にゴム材を充填して成形される。成形するときに、あらかじめたわみ部材61が金型に挿入されている。金型に充填した状態で加熱することによって、ゴム材が所定の形状に加硫成形される。また、成形時の熱によってたわみ部材61とシール部材62とが加硫接着されている。こうして、たわみ部材61とシール部材62とが同軸に形成されている。
各円筒部64,64の外径寸法D4は、嵌合面51の直径寸法D0とほぼ同等である。たわみ部材61の外径寸法D1は嵌合面51の直径寸法D0より大径である。これにより、シールリング60の外周には、全周にわたって径方向に突出した凸部65が形成されている。各円筒部64,64の軸方向端部は、軸方向断面の形状が円弧状である。
各円筒部64,64の内周は、たわみ部材61の内周より大径である。たわみ部材61の径方向内方の端部が、全周にわたってシール部材62の径方向内方に露出している。
こうして、シールリング60は、たわみ部材61を中心にして、軸方向に対称な形状に形成されている。
第1実施形態では、逃げ部53の内径寸法D5は、たわみ部材61の外径寸法D1より大きい。したがって、たわみ部材61は径方向に拘束されない。また、円筒部64の外径寸法D4が嵌合面51の内径寸法D0とほぼ同等である。このため、シールリング60は、嵌合面51に案内されて環状段部50と同軸に組み込まれている。
リアアクスルでは、軸部22とアクスルチューブ12との間のすきまを通ってデフオイルがフランジ部23の側の空間Aに流入する(図7参照)。さらに、このデフオイルは、内輪31と軸受装着面16とのすきまを通ってシールリング60に向かって流出する。第1実施形態では、シールリング60が、内輪31と段差部15とのすきまを遮断しているので、デフオイルの流出を防止できる。
なお、アウター側の環状段部50ではデフオイルの流出という不具合が想定できない。このため、シールリング60は、インナー側の環状段部50にのみ組み込まれており、アウター側の環状段部50には組み込まれていない。
図4は、シールリング60を組み付けるときの、シールリング60と環状段部50との位置関係を表している。図4は、(a)から(c)の順で、組み付け作業が進行している状態を示している。
また、シールリング60の装着作業は、通常、トラックの修理工場等で行われる。このとき、以下の作業は、機械等を使用することなく、もっぱら手作業で行なわれている。
すきま63が小さくなることによってたわみ部材61の直径が縮小する。すきま63が閉じたときのたわみ部材61の直径寸法の変化量ΔDは、すきま63の当初の大きさをL0とした場合には、ΔD=L0/πで求めることが出来る。なお、すきま63が閉じたときの外径寸法をD3としたとき、ΔD=D1−D3である。πは円周率である。
すきま63が閉じたときの外径寸法D3を、嵌合面51の内径寸法D0より小さくなるように設定することによって、組み換え作業をする人は、シールリング60を嵌合面51の内周に容易に押し込むことが出来る。
こうして、シールリング60を手作業で組み付けた場合に、図4(c)に示すように、たわみ部材61が逃げ部53に装着されたことを、手の感覚によって明確に認識することが出来る。
比較例では、環状段部114の形態は第1実施形態の環状段部50と同等である。比較例においては、逃げ部112に、シールリング109の外周に設けた凸部111を嵌め合わせることによって、シールリング109の抜け止めがされている。シールリング109の凸部111が逃げ部112に嵌め合わされていないときは、シールリング109の姿勢がずれるので密封性能が低下する。
比較例では、シールリング109の全体がゴム材等の弾性体のみで構成されている。ゴム材料のヤング率は0.1GPa程度であり、シールリング109を篏合面113に嵌め合わせたときに、弾性によって元の外径寸法に復元しようとする力が極めて小さい。このため、シールリング109を軸方向に押し込むときのすべり摩擦力Pが極めて小さい。この結果、シールリング109が逃げ部112に嵌め合わされたとしても、軸方向に押し込むときの力はほとんど変化しない。
こうして、比較例のシールリング109を手作業で環状段部114に組み込む場合には、その組み込み作業をする人にとって、凸部111が逃げ部112に装着されたか否かを認識することが困難である。
第1実施形態の車両用軸受装置では、このすべり摩擦力Pの変化量が大きいことによって、シールリング60を手作業で組み付けた場合でも、図4(c)に示すように、たわみ部材61が確実に逃げ部53に装着されたことを、手の感覚によって明確に認識することが出来る。
この場合には、嵌合面51とたわみ部材61とが直接接触するので、たわみ部材61が逃げ部53と嵌合したときに、すべり摩擦力Pの変化を更に明確に把握することが出来る。
本発明の第2実施形態について、図を参照しつつ説明する。図5は、図2と同様の要部拡大図であって、環状段部80にシールリング72が装着されて、転がり軸受30が段差部15に組み付けられた状態を示している。
第2実施形態は、第1実施形態と比較して、環状段部の逃げ部の形態と、シールリングの形態が異なる。その他の、リアアクスルの構造、及び、転がり軸受30の形態は同等であるので、これらの説明を省略する。なお、第1実施形態と同一の形態については、同一の番号を付して説明する。
逃げ部83は、軸方向断面が円弧状である。逃げ部83の径方向の最大寸法D6は、嵌合面81の内径寸法D7より大きい。
たわみ部材86は環状であって、円環部88と切離し部89とが一体となっている。円環部88は、円筒形状であって、外径寸法D8は嵌合面81の内径寸法D0と同等である。切離し部89は、円環部88の軸方向の一方の端部に一体に形成されており、軸方向断面の形状が略円形である。その外径寸法D9は、嵌合面81の内径寸法D7より大きく、逃げ部83の径方向の最大寸法D6より小さい。
軸方向断面において、切離し部89と円環部88とは、径方向外方ではV字状の切り欠き90でつながっており、径方向内方では円弧状のつなぎ部91でつながっている。切り欠き90は、円環部88の外周面95が切離し部89の径方向内方に入り込むことによって形成されている。円環部88の外周面95が切離し部89とつながる部分に、切離し部89に向かうにしたがって直径寸法が小さくなる傾斜面92が形成されている。傾斜面92の傾斜角度を適宜選択することによって、円環部88と切離し部89とをつなぐ部分の板厚Cを小さくすることが出来る。これによって、シールリング72を環状段部80から引き抜くときに、切離し部89を容易に切除できる。引き抜き時の状態については後述する。
シール部材87は、金型にゴム材を充填して成形される。成形するときに、あらかじめたわみ部材86が金型に挿入されている。
(シール部材87(ゴム)とたわみ部材86(樹脂)の接合方法は記載していません)
図5に示したように、シール部材87は、たわみ部材86の内周に一体に形成されている。シール部材87には、軸方向の一方に突出する突起93が形成されている。軸方向の他方には、径方向の平面で、ガイド面94が形成されている。
逃げ部83の内径寸法D6は、切離し部89の外径寸法D9より大径である。したがって、逃げ部83と切離し部89とが径方向で当接しない。また、円環部88の外径寸法D8は、嵌合面81の内径寸法D7とほぼ同等である。このため、シールリング72は、嵌合面81に案内されて環状段部80と同軸に組み込まれている。
こうして、第2実施形態の車輪用軸受装置70では、デフオイルがシールリング72を通り越して外部に流出することがない。なお、第2実施形態においても、シールリング72は、インナー側の環状段部80にのみ組み込まれており、アウター側の環状段部80には組み込まれていない。
こうして、シールリング72を手作業で組み付けた場合に、図6(c)に示すように、切離し部89が逃げ部83に装着されたことを、組み付け作業をする人の手の感覚によって明確に認識することが出来る。
シールリング72を取り外す時には、円環部88と切離し部89とをつなぐ部分では、円環部88の外周側で引張応力が高くなる。シールリング72では、円環部88の外周側に切り欠き90を形成している(図5参照)ので、応力集中によってさらに高い応力が生じる。このため、円環部88と切離し部89とをつなぐ部分が容易に破断するので、切離し部89を容易に切除できる。この結果、シールリング72では、篏合面81より大径の部分が切除されるので、環状段部80から容易に取り外すことが出来る。
また、切除された切離し部89は、シール部材87と一体に形成されているので、シールリング72と一体として取り外される。したがって、環状段部80の中に残留しない。
さらに、切離し部89を設けたので、車両の定期点検時にシールリング72を交換するときに、古いシールリング72を容易に取り外すことが出来る。このため、定期点検の作業をより効率よく実施できる。
10:車輪用軸受装置、12:アクスルチューブ、14:ハブ、15:段差部、16:軸受装着面、17:軸受当接面、18:R面、21:アクスルシャフト、22:軸部、23:フランジ部、25:ブレーキロータ、30:転がり軸受、31:内輪、33:円すいころ、34:保持器、36:外側軌道面、37:外輪、38:内側軌道面、39:小端面、40:大端面、42:連結環、43:密封部材、50:環状段部、51:嵌合面、52:壁面、53:逃げ部、60:シールリング、61:たわみ部材、62:シール部材、63:すきま、64:円筒部、65:凸部、
(第2実施形態)
70:車輪用軸受装置、72:シールリング、73:内輪、76:大端面、80:環状段部、81:嵌合面、82:壁面、83:逃げ部、86:たわみ部材、87:シール部材、88:円環部、89:切離し部、90:切り欠き、91:つなぎ部、92:傾斜面、93:突起、94:ガイド面、
(従来技術)
100:車輪用軸受装置、101:転がり軸受、102:アクスルチューブ、103:ハブ、104:アクスルシャフト、105:フランジ、106:ボルト、107:ブレーキロータ、108:内輪、109:シールリング、111:凸部、112:逃げ部、113:篏合面、114:環状段部
Claims (3)
- デファレンシャルギアと連結される駆動軸が内挿されたアクスルチューブと、
前記アクスルチューブのアウター側端部の外周に形成された段差部に嵌め合わされて、車輪を回転自在に支持する転がり軸受とを備え、
前記転がり軸受は、内周に複列の外側軌道面を有する外輪と、外周に前記外側軌道面と径方向に向き合う内側軌道面を有する一対の内輪と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に配置された複数の転動体を有しており、
前記一対の内輪のうち前記段差部と軸方向に衝合する内輪の大端面の内周側に環状段部が形成され、前記環状段部にシールリングが装着された車輪用軸受装置において、
前記環状段部では、円筒形状の嵌合面と前記篏合面より大径の逃げ部とが、前記篏合面の前記大端面から離れた側でつながっており、
前記シールリングでは、弾性体で形成された環状のシール部材と、前記シール部材に沿って略環状で径方向に弾性を有するたわみ部材とが一体に形成されるとともに、前記たわみ部材の外径寸法が、前記嵌合面の内径寸法より大径で、かつ、前記逃げ部の内径寸法より小径であって、
前記アクスルチューブに組付けた状態で、前記たわみ部材が前記逃げ部に装着されている車輪用軸受装置。 - 前記たわみ部材では、円周上の1カ所が切断されて周方向のすきまが形成されており、前記すきまが閉じたときの外径寸法が、前記嵌合面の内径寸法より小径である、請求項1に記載する車輪用軸受装置。
- デファレンシャルギアと連結される駆動軸が内挿されたアクスルチューブと、
前記アクスルチューブのアウター側端部の外周に形成された段差部に嵌め合わされて、車輪を回転自在に支持する転がり軸受とを備え、
前記転がり軸受は、内周に複列の外側軌道面を有する外輪と、外周に前記外側軌道面と径方向に向き合う内側軌道面を有する一対の内輪と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に配置された複数の転動体を有しており、
前記一対の内輪のうち前記段差部と軸方向に衝合する内輪の大端面の内周側に環状段部が形成され、前記環状段部にシールリングが装着された車輪用軸受装置において、
前記環状段部では、円筒形状の嵌合面と前記篏合面より大径の逃げ部とが、前記篏合面の前記大端面から離れた側でつながって形成されており、
前記シールリングでは、弾性体で形成された環状のシール部材と、前記シール部材に沿って略環状で径方向に弾性を有するたわみ部材とが一体に形成されており、
前記たわみ部材では、前記嵌合面に嵌め合わされる円環部と、前記篏合面より大径で、かつ、前記逃げ部の内径寸法より小径の切離し部とが一体に形成されており、前記たわみ部材の外周側で、前記円環部と前期切離し部とがつながる位置に切り欠きが形成されており、
前記アクスルチューブに組付けた状態で、前記切離し部が前記逃げ部に装着されている車輪用軸受装置。
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