JP2017019279A - 撥水撥油性表面を有する構造体及びその製造方法 - Google Patents

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邦彦 澁澤
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Abstract

【課題】 表面が親水性となるように改質されたフッ素含有カップリング剤を有する構造体をを提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態に係る構造体は、基材と、前記基材表面に形成されたフッ素含有カップリング剤膜と、を備える。一実施形態において、当該フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角は90°未満となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、撥水撥油性表面を有する構造体及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、フッ素含有カップリング剤膜等のフッ素コート膜が形成された構造体表面の撥水性の調整に関する。
基材にフッ素含有カップリング剤膜を形成することにより、当該基材の表面に撥水性及び撥油性を付与することが広く行われている。例えば、特開2006−205716号公報に記載されているように、スクリーン印刷用孔版の表面に非晶質炭素膜を介してフッ素含有カップリング剤膜を形成することで、スクリーン印刷時に印刷ペーストの滲みを抑制することが提案されている。
また、窓ガラス、ビーカー等の実験用ガラス容器、コップ等のガラス製食器、及びスマートフォンのディスプレイに貼り付けて使用される樹脂製の保護フィルム等の様々な構造体にフッ素含有カップリング剤膜を形成することが考えられる。フッ素含有カップリング剤により構造体表面に撥水性及び撥油性を付与することにより、その表面への汚れの付着を抑制することが期待される。
特開2006−205716号公報
しかしながら、フッ素含有カップリング剤膜等のフッ素コートの表面は水との接触角が100°以上の高い撥水性を有するため(例えば、特開2006−205716号公報の表1参照)、この高い撥水性に起因する不具合が生じることがある。例えば、スクリーン印刷用孔版の表面に水との接触角が100°以上の高い撥水性が付与されると、逆毛細管現象が顕著に現れるようになって、水性のインクが印刷パターン開口部に濡れ広がりにくくなる。また、フッ素含有カップリング剤によって構造体表面に高い撥水性が付与されると、当該構造体を洗浄する際に、洗浄用の水が洗浄を要する部分に到達しなくなることがある。さらに、フッ素含有カップリング剤膜等のフッ素コートは水を水玉状に分散して
弾くため、洗浄時に使用した汚れを含む水がフッ素コート表装に残留した場合、その水が蒸発した後に、当該構造体の表面に汚れが凝集された汚染部分が残されてしまう。
このように、構造体の表面にフッ素含有カップリング剤等のフッ素コートを形成すると、当該構造体の表面に必要以上に高い撥水性を付与し、むしろその撥水性により必要な部分に水が濡れ広がらないという問題がある。また、洗浄後に汚れが凝集した汚染部分が構造体表面に残存してしまうという問題が生じる。そこで、本発明は、上述の問題を解消又は緩和するために、その表面が親水性となるように改質されたフッ素含有カップリング剤を有する構造体を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る構造体は、基材と、前記基材表面に形成されたフッ素含有カップリング剤膜と、を備え、前記フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角が90°未満である。
当該実施形態によれば、フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角を90°未満とすることにより、構造体表面において逆毛細管現象の発生が防止又は抑制されるので、当該構造体の所望の位置に水を濡れ広がらせることができる。また、前記構造体表面においてある程度水を濡れ広がらせることにより、洗浄後であっても汚れが凝集した汚染部分の形成を抑制することができる。
フッ素含有カップリング剤を基材表面に密に塗布すると、その表面の水に対する接触角は通常100°以上となってしまう。そこで、例えば、基材上にフッ素含有カップリング剤膜を疎に形成することにより、フッ素含有カップリング剤膜が密に形成されている場合よりもフッ素含有カップリング剤の撥水性を低下させることができる。後述するように、2流体ノズルを用いて基材上に疎に形成されたフッ素含有カップリング剤膜は水に対する接触角が90°未満とすることができる。
一般的に、フッ素コート層の基材への形成は、フッ素を含有する化学物質を当該基材へ塗布することにより行われる。基材へ塗布される化学物質は、例えばフッ素含有カップリング剤である。フッ素含有カップリング剤は、基材の表層と共有結合や水素結合などの化学結合により結合する。一実施形態において、フッ素含有カップリング剤のフッ素コート層は、例えば、液体状のフッ素含有カップリング剤をスプレー等で基材表層に分散塗布する方法で形成されてもよく、基材をフッ素含有カップリング剤液中に浸漬させる方法によって形成されてもよい。また、フッ素コート層は、フッ素が含まれる化学物質(例えば、フッ素含有カップリング剤)を気化、蒸気化、またはプラズマ化させ、この気化、蒸気化、またはプラズマ化された化学物質を基材に堆積させることによって形成されてもよい。この場合、フッ素を含有する化学物質は、液体または固体(例えばタブレット状)に形成される。このように液体または固体の化学物質に対して蒸着装置中でエネルギーを加える(例えば加熱する)ことにより、当該化学物質を気化、蒸気化、またはプラズマ化することができる。
本発明の一実施形態にかかる水に対する接触角が90°未満のフッ素コート層は、撥水性(水に対する接触角が90°を超える低い表面自由エネルギーの表面)の発現源であるフッ素の量(存在密度)や配置、配向などを調整すること(例えばフッ素密度を疎に調整すること)で形成することが可能である。また、本発明の一実施形態にかかる水に対する接触角が90°未満のフッ素含有カップリング剤膜は、2流体ノズルを用いた塗布以外の方法でも実現することができる。例えば、水に対する接触角が90°以上のフッ素含有カップリング剤膜に対して、(1)大気圧プラズマプロセス、UV照射、及びコロナ放電プロセスもしくはこれら以外の公知の様々な手法により発生させたプラズマ、ラジカル、及びイオンのいずれか一つ、(2)紫外線、又は(3)オゾン等の活性酸素を照射して当該フッ素カップリング剤膜14の撥水性を発現するための構造(フッ素樹脂等)を破壊することにより、当該フッ素含有カップリング剤膜14の水に対する接触角を90°未満に調整することができる。本明細書では、大気圧プラズマプロセスによって発生させたプラズマを大気圧プラズマと呼ぶことがある。フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角を90°未満にするための方法は、本明細書で開示されたものに限定されず、、Arなどの各種不活性ガス、酸素や窒素などのプラズマやラジカルを生成する公知の各種真空プラズマプロセス、空気(大気)中での紫外線照射プロセス、コロナ放電プロセスも利用することができる。また、フッ素カップリング剤膜14の表面にレーザーを照射することによっても、その表面の撥水性を発現するための構造(フッ素樹脂等)を破壊して、当該フッ素含有カップリング剤膜14の水に対する接触角を90°未満に調整することができる。また、フッ素カップリング剤膜14の表面を加熱することによっても、その表面の撥水性を発現するための構造(フッ素樹脂等)を破壊して、当該フッ素含有カップリング剤膜14の水に対する接触角を90°未満に調整することができる。
特開2012−006390号公報に記載されているように、Si、O、及びNのうち少なくとも1つの元素を含有する非晶質炭素膜は、その表面に多くの官能基を有するので、当該官能基がフッ素含有カップリング剤の官能基と結合することにより、当該非晶質炭素膜の表面にフッ素含有カップリング剤を定着性良く保持することができる。フッ素含有カップリング剤が非晶質炭素膜を介して基材に設けられる場合には、当該非晶質炭素膜に添加されているSi、O、又はNの量を減らすことにより、当該非晶質炭素膜表面へのフッ素含有カップリング剤の定着性を意図的に劣化させて、当該フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角を90°未満に調整することができる。
また、非晶質炭素膜にTi、Al、及びZrのうちの少なくとも1つの元素、又は、SiO×および/もしくはTiO×を添加することによっても、当該非晶質炭素膜の表面にフッ素含有カップリング剤を定着性良く保持することができる。よって、Ti、Al、又はZrの量を減らすことによっても、当該フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角を90°未満に調整することができる。
フッ素含有カップリング剤膜は、水酸基等の有極性の各種官能基を表層に発現する各種金属、各種金属合金、各種金属酸化物、もしくは各種金属窒化物からなる基材、水酸基等の有極性の各種官能基を表層に発現する各種金属、各種金属合金、各種金属酸化物、、もしくは各種金属窒化物を表層に含む基材、または水酸基等の有極性の各種官能基を表層に発現するプライマー層の表層に定着良く形成することができる。
本発明の実施形態によれば、その表面が親水性となるように改質されたフッ素含有カップリング剤を有する構造体を提供することができる。本発明のこれ以外の有利な効果は、本明細書の他の部分を参照することにより明らかになる。
本発明の一実施形態に係る構造体を模式的に示す断面図
本発明の様々な実施形態について添付図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る構造体10は、基材本体12と、プライマー層13と、フッ素含有カップリング剤膜14と、を備える。本明細書では、基材本体12とプライマー層13とを併せて「基材」と呼ぶことがある。本発明の一実施形態においては、プライマー層13を省略して、フッ素含有カップリング剤膜14を基材本体12の上面12aに直接形成してもよい。なお、図1は、本発明の一実施形態に係る構造体10の構成を模式的に示すものであり、その寸法は必ずしも正確に図示されていない点に留意されたい。
この構造体10は、最上層にフッ素含有カップリング剤膜14が形成されていることから撥水性及び撥油性を有する。このような性質から、構造体10は、スクリーン印刷用の孔版(例えば、スクリーン版、メタルマスク(ステンシルと呼ばれることもある。)、電鋳マスク、及び樹脂マスク)、インクジェットプリンタのノズル、ろ過フィルター、各種成型用の型(金型、樹脂製型、これら以外の材質の成型型)、蒸着用又はスプレー用の養生マスク、窓ガラス、ビーカなどの実験用のガラス容器、コップなどの食器、及びスマートフォンのディスプレイに貼り付けて使用される樹脂製の保護フィルム、信号機、カーブミラー、監視カメラ・車載カメラ・観測のカメラのレンズ及びレンズカバー、自動車のバックミラー及びサイドミラー、医療用メス、カテーテル等の様々な物品の部材として、又は、かかる部材の一部として用いられる。本明細書で明示的に説明する構造体10の用途はその一例に過ぎず、構造体10は本明細書に明示されていない様々な用途に用いることができる。
一実施形態において、基材本体12は、例えば、鉄鋼、チタン、マグネシウム、アルミニウム、錫、真鍮、銅等の金属、SUS304等のステンレス鋼などの前記金属を含む合金、各種のアモルファス金属、SKD等のベアリング工具鋼、タングステンカーバイド等の超硬合金、金・銀・銅・白金・ロジウム等の貴金属又はこれらの合金、アルミナ・ジルコニア・チタニア等の金属酸化物から成る。
また、基材本体12は、タイル等の陶磁器、土器、ポリエステル・ポリプロピレン・ポリエチレン・ポリ塩化ビニル・アクリル等の樹脂、ウルテム材等のエンジニアリングプラスチック、FRP、炭素繊維材料、紙(セルロース)・絹・綿・羊毛又はこれらの混紡材料、攪拌用具やパテ塗り用具に用いられるゴム材料、木材、コルク、シリコンやゲルマニウム等の半導体材料、及び/又はガラス等から成るものであってもよい。基材本体12の材質は本明細書で例示するものに限られない。また、基材本体12は、前記の材料から成る層を積層したものであってもよい。例えば、基材本体12は、ステンレス鋼と、当該ステンレス鋼の表層に形成した、ポリイミド、ポリイミドアミド、シリコーン等の樹脂皮膜層との2層から成るものであってもよい。また、基材本体12は、ガラスと、当該ガラスの下層にCrやAgの蒸着膜から成る光の反射層との2層から成る鏡であってもよい。
本発明の一実施形態において、基材本体12は、Si、Ti、Al、Zr又はこれらの酸化物もしくは窒化物を含む素材から成る。このような素材の例には、AlN、TiN、TiAlN、ZrOx、SiNx、TiOx、Al23が含まれる。このような基材本体12の表層には、水酸基やカルボニル基などの官能基が自然形成されやすいので、カプリング剤と結合しやすい。また、かかる基材本体12は、当該官能基が極性を有するために、水を吸着しやすい。
基材本体12は、様々な平面形状及び立体形状を取り得る。例えば、基材本体12は、シート状やメッシュ状等の様々な平面形状、または、角柱状、円柱状、立方体形状、直方体形状、球体形状、管状、及びこれら以外の様々な立体形状を取り得る。基材本体12は、その用途に応じた様々な形状に形成され得る。
基材本体12は、その表面に切削、研磨、ブラスト加工、ホーニング加工、電解研磨、化学研磨、化学的エッチングによる粗面加工などの様々な加工が施されたものであってもよい。また、基材本体12は、その用途に応じた様々な機械加工がなされたものであってもよい。さらに、基材本体12は、他の要素とともに組み立てられたものであってもよく、他の要素と接着されたものであってもよい。
本発明の一実施形態において、基材本体12の上面12aは親水性を有する。例えば、基材本体12の上面12aは、水との接触角が90°未満、60°又は未満、40°未満である。また、基材本体12の上面12aを、大気圧プラズマ、紫外線照射、又はこれら以外の任意の公知の手法によって親水性に改質し、改質後の上面12aの水との接触角が90°未満、60°又は未満、40°未満となるようにしてもよい。これにより、特に、プライマー層13を省略して基材本体12に後述するフッ素含有カップリング剤膜14を直接疎に形成した場合に、構造体10の表面が親水性を示しやすくすることができる。
本発明の一実施形態において、基材本体12の表面12a上には、プライマー層13を形成してもよい。このプライマー層13は、公知のゾル−ゲル法に従って、シリコン、チタン、又はアルミニウムなどの各種金属アルコキシド(金属エトキシド、メトキシドも含む)を出発原料として形成することができる。例えば、マツモトファインケミカル株式会社のチタン有機金属アルコキシド(「オルガチックスTA−25」)、及び、メチルトリイソシアネートシラン「オルガチックスSI−310」を基材本体12に塗布することにより、プライマー層13を形成することができる。このプライマー層13により、フッ素含有カップリング剤14の剥離・脱落を抑制することができる。
本発明の一実施形態においては、非晶質炭素膜の表面を改質することにより、その表面(つまり、プライマー層13の表面)に親水性を付与することができる。例えば、非晶質炭素膜に酸素プラズマ又は窒素プラズマを照射することにより、当該非晶質炭素膜の表層に、カルボキシル基(−COOH)や水酸基(−OH)等の官能基を形成することができる。プライマー層の表層に形成されたこのような官能基がフッ素含有カップリング剤の官能基と結合することにより、プライマー層13とフッ素含有カップリング剤膜とを強固に結合させることができる。
本発明の一実施形態におけるプライマー層13は、Si、O、N、Ti、Al、及びZrのうちの少なくとも1つの元素を含む非晶質炭素膜であってもよい。非晶質炭素膜は、例えば、炭素及び水素を主成分とする非晶質の硬質膜であり、ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれることもある。また、本発明の一実施形態におけるプライマー層13は、SiO×及びTiO×の少なくとも一方を含む非晶質炭素膜であってもよい。これらの添加物に由来する水酸基は、後述するフッ素含有カップリング剤の官能基と,脱水縮合反応による共有結合、水素結合、及び/又はこれら以外の結合を形成するため、プライマー層13とフッ素含有カップリング剤膜14とを強固に結合させることができる。
本発明の他の実施形態におけるプライマー層13は、Si、O、N、Ti、Al、及びZrのうちの少なくとも1つの元素を含む、蒸着膜、スパッタリング膜、及びこれら以外のドライプロセスで形成される様々な(非晶質炭素膜以外の)薄膜であっても良い。かかる薄膜においても、非晶質炭素膜と同様に、これらの添加物(Si、O、N、Ti、Al、及びZr)に由来する水酸基が、後述するフッ素含有カップリング剤の官能基と、脱水縮合反応による共有結合、水素結合、及び/又はこれら以外の結合を形成するため、プライマー層13とフッ素含有カップリング剤膜14とを強固に結合させることができる。
後述するように、非晶質炭素膜におけるSi、O、N、Ti、Al、Zr、SiO×及びTiO×の含有量を調整することにより、フッ素含有カップリング剤膜14の定着性を制御することができ、さらにはフッ素含有カップリング剤膜14の定着性の制御を通じて構造体10の表面の親水性を調整することができる。例えば、当該非晶質炭素膜をCVD法により形成する場合には、Siを含有する原料ガスを他のSiを含まない原料ガスと混合することで、原料ガス全体におけるSiの含有比率を下げたり、Siを含む原料ガスの導入時間を調整することにより、基材本体12に成膜される非晶質炭素膜におけるSiの含有量を調整することができる。例えば、Siを含有するトリメチルシランガスを原料ガスとして用いる場合には、このトリメチルシランガスをSiを含有しないC22などの原料ガスと混合することにより、原料ガス全体におけるSiの含有比率を下げることができる。また、当該非晶質炭素膜をスパッタリング法で形成する場合には、Siの固形スパッタターゲットをスパッタリングするためのスパッタリングガスであるArガスに対して、C22などの炭化水素系原料ガスを混合導入することで、炭化水素系のガス中の炭素や水素を固形のSiターゲットからスパッタされるSiと一緒に基材本体12上に堆積させることが可能となる。このとき、Siターゲットの露出面積、Siターゲットと基材との距離、入力電力、及びその他のパラメータを調整することにより、基材本体12に堆積する非晶質炭素膜におけるSiの含有量を調整することができる。Siを例にとって非晶質炭素膜における添加物の含有量の調整方法を説明したが、Si以外の添加物についても同様の方法でその含有量を調整することができる。
本発明の一実施形態において、上記の非晶質炭素膜は、プラズマCVD法、プラズマPVD法、大気圧プラズマ法、スパッタリング法等の様々なドライプロセスにより形成される。非晶質炭素膜をドライプロセスにて形成することにより、当該非晶質炭素膜を基材本体12の上面12aの微細な凹凸に追従させることができる。つまり、基材本体12に非晶質炭素膜を形成した後であっても、その表面に基材本体12の上面12aの微細な凹凸構造が現れるようにすることができる。これにより、基材本体12の凹凸構造に由来する親水性(又は撥水性)を非晶質炭素膜の形成後にも維持することができる。
本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、フッ素含有カップリング剤から成る薄膜である。本発明の一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤膜14は、フッ素を含有するカップリング剤を基材(基材本体12又はプライマー層13)に塗布することにより形成される。フッ素含有カップリング剤は、その分子構造内にフッ素の置換基を有するカップリング剤であり、撥水・撥油機能を奏する。フッ素含有カップリング剤膜14として使用可能なフッ素含有カップリング剤には、以下のものが含まれる。
(i) CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
(ii) CF3(CF27CH2CH2SiCH3 Cl2
(iii) CF3(CF27CH2CH2SiCH3(OCH32
(iv) (CH33SiOSO2CF3
(v) CF3CON(CH3)SiCH3
(vi) CF3CH2CH2Si(OCH33
(vii) CF3CH2SiCl3
(Viii) CF3(CF25CH2CH2SiCl3
(ix) CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
(x) CF3(CF27CH2CH2SiCl3
これらのフッ素カップリング剤はあくまで一例であり、本発明に適用可能なフッ素含有カップリング剤はこれらの例に限定されるものではない。フッ素を含有するカップリング剤として、例えば、フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2の溶液(フッ素樹脂0.02〜0.2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)を用いることができる。
本発明の他の実施形態においては、フッ素を含有しないカップリング剤を基材に塗布した後に、当該塗布されたカップリング剤の薄膜にフッ素が導入される。フッ素含有カップリング剤は、基材上に直接形成してもよく、基材上に形成されたフッ素を含有しないカップリング剤のさらに上層に形成してもよい。
本発明に適用し得るカップリング剤には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びジルコネート系カップリング剤が含まれる。これらのカップリング剤は、他の種類のカップリング剤と混合して用いることもできる。
シランカップリング剤は、例示するまでもなく広く普及している。本発明の実施形態においては、市販されている様々なシランカップリング剤を用いることができる。本発明に適用可能なシランカップリング剤の一例は、デシルトリメトキシシラン(商品名「KBM−3103」信越化学工業(株))等である。
撥水撥油層を構成する本発明に適用可能なチタネート系カップリング剤には、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、及びイソプロピルトリクミルフェニルチタネートが含まれる。商品名「プレンアクト38S」(味の素ファインテクノ株式会社)が市販されている。
撥水撥油層を構成する本発明に適用可能なアルミネート系カップリング剤には、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、及びアルミニウムモノイソプロポキシモノオレキシエチルアセトアセテートが含まれる。商品名「プレンアクトAL−M」(アルキルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ(株)製)が市販されている。
撥水撥油層を構成する本発明に適用可能なジルコニア系カップリング剤には、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリメタクリルジルコネイト、テトラ(2、2ジアリロキシメチル)ブチル、ジ(ジトリデシル)ホスフェイトジルコネイト、及びシクロ[ジネオペンチル(ジアリル)]ピロホスフェイトジネオペンチル(ジアリル)ジルコネイトが含まれる。商品名「ケンリアクトNZ01」(ケンリッチ社)が市販されている。
フッ素含有カップリング剤膜14は、例えば、2流体スプレーノズルを用いて基材上に形成される。2流体スプレーノズルを用いてフッ素含有カップリング剤膜14を形成する場合には、フッ素含有カップリング剤液と噴霧ガスとを2流体スプレーノズルの内部に供給し、当該2流体スプレーノズルの内部でフッ素含有カップリング剤液と噴霧ガスとを混合して、フッ素含有カップリング剤をミスト化する。そして、このようにミスト化されたフッ素含有カップリング剤を2流体スプレーノズルから基材(基材本体12又はプライマー層13)表面に噴霧することで、基材上にフッ素含有カップリング剤膜14を形成することができる。
本発明の一実施形態においては、フッ素含有カップリング剤膜14は基材上に疎に形成される。フッ素含有カップリング剤は、撥水性を発現させるためのフッ素樹脂等の撥水撥油成分が含有されている。このようなフッ素含有カップリング剤を他の部材に満遍なく塗布してフッ素含有カップリング剤膜を「密に」形成すると、当該フッ素含有カップリング剤膜においては、フッ素樹脂が加水分解、脱水縮合反応によって当該フッ素含有カップリング剤膜の表層外界側に向けて配向し、これにより当該フッ素含有カップリング剤膜が撥水性を示すことになる。本発明の一実施形態にかかるフッ素含有カップリング剤膜14は、基材上にフッ素樹脂が疎に分散し形成されたフッ素含有カップリング剤の薄膜である。本明細書において、「疎に形成」されたフッ素含有カップリング剤膜とは、例えば基材上にフッ素含有カップリング剤に含まれるフッ素樹脂等の撥水撥油成分が均等に分散するように、当該フッ素含有カップリング剤を噴霧、蒸着又は塗布することにより得られる、フッ素樹脂等の撥水撥油成分が基材上に疎に分散し固定された薄膜である。例えば、本発明の一実施形態におけるフッ素樹脂が疎に分散したフッ素含有カップリング剤膜の薄膜は、水との接触角が110°(又はそれ以上)を示す(密に形成された)フッ素含有カップリング剤膜の所定の領域におけるフッ素の検出構成比(原子%)に対して概ね60%以下、50%以下、45%以下、又は約40%以下のフッ素の検出構成比(原子%)を有するものとする。本発明の一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤膜のフッ素の検出構成比(原子%)が密に形成されたフッ素含有カップリング剤膜の40%程度となる場合には、当該本発明の一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤膜の水との接触角は54°程度となる。
このようなフッ素樹脂成分が疎に分散し固定された薄膜は、フッ素含有カップリング剤中のフッ素樹脂の含有量を予めフッ素含有カップリング剤「膜」が架橋反応で形成された際に撥水性を示さない程度に少なく含有させることによっても形成可能である。
本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、基材(基材本体12又はプライマー層13)を完全に覆うように連続的に形成されていてもよく、基材の一部が露出するように非連続的に形成されていてもよい。フッ素含有カップリング剤膜14が連続的に形成されている場合には、当該フッ素含有カップリング剤膜14において、フッ素含有カップリング剤のフッ素樹脂等の撥水撥油成分が疎に分散している。いずれの場合においても、フッ素含有カップリング剤膜14には、フッ素含有カップリング剤の撥水撥油成分の含有量が相対的に少ない親水親油性部分と、相対的に多い撥水撥油性部分とが含まれる。フッ素含有カップリング剤膜14においては、この親水親油性部分の撥水撥油性部分に対する比率を調整することにより、フッ素含有カップリング剤膜14の表面(したがって、構造体10の表面)の水に対する接触角が90°未満となるように調整される。
本発明者は、フッ素樹脂が疎に分散するようにフッ素含有カップリング剤膜14を形成すると、当該フッ素含有カップリング剤膜14の表面がより水及び油に対して濡れやすくなるように改質されるが、フッ素樹脂の減少に対する濡れ性の変化が水と油とで大きく異なることを発見した。この性質を利用することにより、本発明の実施形態では、フッ素樹脂が疎に分散するようにフッ素含有カップリング剤膜14を形成することにより、疎油性を維持したままで、フッ素含有カップリング剤膜14の表面の水に対する接触角を90°未満の親水性にする。
2流体スプレーノズルを用いてフッ素含有カップリング剤膜14を形成することにより、フッ素含有カップリング剤膜14の撥水性部分の大きさ、数、密度、及び一定範囲に分散するフッ素の原子量構成比(原始%)を容易に調整することができる。具体的には、フッ素含有カップリング剤膜14の撥水撥油性部分の大きさ、数、密度、及び一定範囲に分散するフッ素の原子量構成比(原始%)は、2流体スプレーノズルから噴霧される噴霧ガスの圧力、噴霧時における基材の搬送速度、基材と2流体スプレーノズルとの距離、及びこれら以外の2流体スプレーノズルに関するパラメータを調整することにより工業的に容易に再現可能な状態で調整され得る。2流体スプレーノズルを用いることにより、フッ素含有カップリング剤膜14の全面にわたってほぼ均一に、フッ素含有カップリング剤の撥水撥油成分を含む撥水撥油性部分を疎に分散させることができる。
2流体スプレーノズルによる噴霧以外の方法でも、疎水疎油成分(フッ素樹脂等)が基材上に疎に且つ均等に分散するように基材上への成膜を行うことができる。例えば、抵抗加熱法によってフッ素を基材上に蒸着させることにより、また、CF4やC6F6などのフッ素含む原料ガスを用いたプラズマCVD法により、基材上に疎水疎油成分を疎に且つ均等に分布させることができる。
本発明の一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤膜14は、その撥水撥油性部分が基材上に疎に分布するように形成されているので、その表面の撥水性及び撥油性は、フッ素含有カップリング剤を密に塗布した場合に得られる撥水性及び撥油性とは異なったものとなる。例えば、フッ素含有カップリング剤膜14の下層にある基材本体12又はプライマー層13が親水性の表面を有している場合には、フッ素含有カップリング剤膜14の表面(すなわち、構造体10の表面)は、フッ素含有カップリング剤を密に塗布した場合よりも親水性となる。本発明の一実施形態においては、フッ素含有カップリング剤膜14の表面(すなわち、構造体10の表面)の水に対する接触角が90°未満となるように、フッ素含有カップリング剤膜14の撥水撥油性部分の大きさ、数、密度及び一定範囲に分散するフッ素の原子量構成比(原始%)密度が調整される。
構造体10表面の撥水性は、上述した2流体スプレーノズルのパラメータの調整以外にも、本明細書によって開示される様々な方法によってより親水性の方向へ調整され得る。例えば、基材上にフッ素含有カップリング剤膜14を形成した後に、その表面に対して大気圧プラズマ、紫外線、又はオゾンを照射することにより、フッ素含有カップリング剤膜14を部分的に破壊して当該破壊部分が撥水性を発現しないようにすることで、フッ素含有カップリング剤膜14がより親水性となるようにその表面を改質することができる。大気圧プラズマ、紫外線、及びオゾンの照射は、市販されている一般的な装置を用いて行うことができる。例えば、大気圧プラズマの照射は、株式会社ウェル社製の大気圧プラズマHPW-01を用いて行うことができる。
また、構造体10表面の撥水性は、その表面(つまり、フッ素含有カップリング剤膜14の表面)の凹凸構造によって影響を受ける。構造体10表面の凹凸構造は、基材本体12の表面の凹凸構造を様々な物理的方法、化学的方法、又はその両方を併用した方法により変更することができる。そして、基材本体12の表面に形成された凹凸構造は、プライマー層13及びフッ素含有カップリング剤膜14を基材本体12の凹凸構造に追従できる程度に薄膜化することにより、構造体10の表面における撥水性にも影響を与えることができる。基材本体12の表面の凹凸構造を形成するための物理的方法には、バフ研磨及び電解研磨が含まれる。基材本体12の表面の凹凸構造を形成するための化学的方法には、湿式メッキ皮膜の形成が含まれる。
本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、その表面(すなわち、構造体10の表面)の水に対する接触角が90°未満となるように基材上に形成される。このように、フッ素含有カップリング剤膜14の水に対する接触角を90°未満とすることにより、その表面において逆毛細管現象の発生が防止又は抑制されるので、構造体10の所望の位置に水を濡れ広がらせることができる。したがって、構造体10の水洗浄、雨水等の流水によるセルフクリーニング、及び水滴による曇り防止が容易となる。
また、フッ素含有カップリング剤膜14の表面を疎油性を維持したままで水に対する接触角を90°未満の親水性にすることで、構造体10の水との濡れ性を確保し、水(例えば洗浄流水や降雨等)によるセルフクリーニング性や、濡れた水により水膜を形成することでの曇り防止性(視認性の確保)、水滴の落下防止性、または水滴の蒸発による水分中の汚れの濃縮防止性を維持しつつ油の付着を防止し、また、付着した油を容易に除去することができる。したがって、本発明の各実施形態に係る構造体10は、水及び油の両方に濡れることが想定される用途に特に適している。かかる用途には、水処理用フィルター、信号機、カーブミラー、監視カメラ・車載カメラ・観測カメラ等のレンズ、及びそのレンズカバー、窓ガラス、車両のバックミラー・サイドミラー、スマートフォン等の各種電子画像表示装置の表示カバー、医療用メス、カテーテルが含まれる。本発明の構造体10は、これらの用途において、水の付着や油汚れの付着を防止するため、また、曇りを防止するために使用され得る。また、本発明の各実施形態に係る構造体10は、油と水のエマルション状態の液状物質を収納する各種包装資材において、内容物の付着防止や排出の容易化のために用いられる。
近年は、印刷パターンの微細化が進み、印刷用孔版を構成するスクリーンメッシュの
目開き(メッシュ繊維糸を編んだ開口部分の径や印刷パターン開口部の徑の大きさが30μm以下のものが多く確認できるようになった。このような微細な開口部を有する基材に通常の撥水撥油性のフッ素含有カップリング剤を塗布した場合、当該メッシュや印刷パターン開口部が形成する凹凸構造により構造撥油性が発現され、油(油性のインクやフラックスなど)との接触角が90°を超えてしまい油(油性のインクやフラックスなど)に逆毛管現象が発現されて当該開口部への充填が上手くできないケースが増えてきている。また、印刷用孔版を構成するスクリーンメッシュの表層が強い撥油性を示すと、インクがメッシュから強力に弾かれ、印刷物のインクに連続性や厚みに支障が出るケースが多くなっている。
本発明の一実施形態における、フッ素含有カップリング剤膜14を採用することで撥油性の制御(低減)も可能となる。構造撥油性に発現される微細な開口を有する印刷用孔版にフッ素含有カップリング剤膜14を適用する場合には、当該印刷用孔版のスキージ面側(インクを充填する側の面)では油との接触角が90°未満となり、一方、印刷基板面側においては油との接触角が90°以上となるように、フッ素含有カップリング剤膜14を形成することができる。これにより、当該印刷用孔版においては、インク充填性を向上させることができる。このような撥油性の調整は、上述したように2流体スプレーノズルの噴霧速度を調整するだけで簡単に変更することが可能となる。
インク突出口を有するインクジェットノズル(特にインク充填面側)、ピペットやディスペンサー、インジェクションなどのパイプ(例えば、当該パイプの外表面、内壁表面、及び/又は開口部断面)、凹凸版、グラビア印刷版の凹部においても、φ30μm未満の微細な穴(開口部や管)が見られる。したがって、インクジェットノズルのインク充填面側、微細なパイプ形状品の内径表面、凹凸版、グラビア印刷版の凹部に、油との接触角を90°未満に調整したフッ素含有カップリング剤膜14を形成することにより、これらの用途において油性インク等の液状物質のインク充填性を改善することができる。
また、本発明の各実施形態における構造体を印刷用孔版に利用することができる。従来から、印刷用孔版の印刷パターン開口部をフッ素含有カップリング剤でコーティングすることで、印刷用孔版の印刷ペーストに対する離型性を高めることが提案されている。しかしながら、当該フッ素含有カップリング剤を印刷パターン開口部のみに形成することは難しく、印刷用ペーストを充填する側の面(スキージ面)にも当該フッ素含有カップリング剤が形成されてしまうことが問題となっている。スキージ面にフッ素含有カップリング剤による撥水撥油性が付与されてしまうと、印刷用ペーストの充填性やペーストのスキージによるローリング性(ペースト粘弾性の制御)が阻害され、印刷カスレなどの不具合を引き起こすおそれがある。そこで、印刷用孔版の印刷パターン開口部に、上述したようにしてフッ素含有カップリング剤膜を疎に形成することにより、印刷用孔版のスキージ面へフッ素含有カップリング剤が付着した場合であっても、当該フッ素含有カップリング剤膜の表面は撥水性及び撥油性が弱められているため、印刷用ペーストの充填性の阻害やペーストのスキージによるローリング性の阻害といった上述した不具合を抑制することができる。
印刷用の孔版は印刷使用後にインクの硬化による目詰まりを防ぐため洗浄される。印刷用孔版の洗浄には、通常、アセトンやシンナーなどの溶剤、グリコール系の洗浄剤など作業環境や地球環境への負荷の大きい洗浄剤が多く使用されている。本発明の実施形態にかかる構造体を適用した印刷用孔版は、親水かつ撥油の表面を使用するため、水や湯を使用して油性インクを洗浄することが可能となる。これにより、印刷作業環境を改善することができる。
また、本発明の他の実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、その表面(すなわち、構造体10の表面)の水に対する接触角が65°未満となるように基材上に形成される。この場合、構造体10表面における逆毛細管現象の発生をより一層抑制することができる。
フッ素含有カップリング剤膜14の水に対する接触角が90°以上の場合には、上述したように、フッ素含有カップリング剤膜14の表面に大気圧プラズマ、紫外線、又はオゾンを照射することにより、当該接触角が90°未満となるようにフッ素含有カップリング剤膜14の表面を改質することができる。
本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、上述した水との接触角に関する条件を満たすとともに、その表面の油に対する接触角が15°以上50°未満となるように形成される。また、本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜14は、上述した水との接触角に関する条件を満たすとともに、その表面の油に対する接触角が15°以上40°未満となるように形成される。
以下に述べる方法により、適切にパラメータを調整した2流体スプレーノズルにより、水との接触角が90°未満となるフッ素含有カップリング剤膜を基材上に形成できることを確認した。
まず、ステンレス鋼製(SUS304 2B)の板状(400mm×400mm、厚さ0.5mm)の基材を必要枚数準備した。また、Si(100)ウエハ(30mm×30mm、厚さ0.625mm)を必要枚数準備した。
比較例1のサンプル
次に、準備したステンレス鋼製基材の表面に、非晶質炭素膜を160nmの厚さで形成した。ステンレス鋼製基材表面への非晶質炭素膜の形成は以下のようにして行った。まず、準備したステンレス鋼製基材をエタノールの入った超音波洗浄機で超音波洗浄した後乾燥させ、高圧パルスプラズマCVD装置に投入し、CVD装置の反応容器を1x10-3Paまで真空減圧した。次に、この真空減圧後のCVD装置に、流量30SCCM、ガス圧2Paでアルゴンガスを導入し、印加電圧−4kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件で、アルゴンガスプラズマによりステンレス鋼基材をクリーニングした。次に、アルゴンガスを排気した後、当該CVD装置に、流量30SCCM、ガス圧2Paでトリメチルシランガスを導入し、印加電圧−4kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件でプラズマし、ステンレス鋼基材上にSiを含有する非晶質炭素膜を形成した後、トリメチルシランガスを排気し、当該CVD装置に、流量30SCCM、ガス圧1Paで酸素ガスを導入し、印加電圧−3V、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件で酸素プラズマを生成し、ステンレス鋼基材上のSiを含有する非晶質炭素膜に酸素を導入し、ステンレス鋼製基材の表面に、Si及びOを含む非晶質炭素膜を形成した。次に、このようにして非晶質炭素膜が形成されたステンレス鋼製基材の表面(非晶質炭素膜が形成された面)に、フッ素含有シランカップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)を旭化成株式会社製のベンコット(製品名)を用いて塗布した。このようにして比較例1のサンプルを作成した。
比較例2のサンプル
準備したステンレス鋼製基材の表面にSi(100)ウエハを貼り付け、このSiウエハ上に、比較例1と同一の条件で非晶質炭素膜を形成し、この非晶質炭素膜の上にさらに比較例1と同一の条件でフッ素含有シランカップリング剤を塗布した。このようにして比較例2のサンプルを作成した。
比較例3のサンプル
準備したステンレス鋼製基材の表面にSi(100)ウエハを貼り付けた。このSiウエハが貼り付けられた基材に、比較例1と同様にしてフッ素含有シランカップリング剤を塗布した。このようにして比較例3のサンプルを作成した。
実施例1のサンプル
準備したステンレス鋼製基材に、比較例1と同一の条件で非晶質炭素膜を形成した。そして、このステンレス鋼製基材の非晶質炭素膜が形成された面に、2流体スプレーノズル(株式会社いけうち製の微霧発生ノズル小噴量扇形サクションタイプ)を用いて、以下の条件で、フッ素含有シランカップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2の溶液(フッ素樹脂0.02〜0.2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)を噴霧した。
・ノズル高さ:40mm
・エアー圧:0.30MPa
・搬送速度:500mm/sec
まず、2流体スプレーノズル(の噴出口)をステンレス鋼製基材の一辺の中央付近にセットした後、当該辺に垂直な方向に搬送速度500mm/secでノズルを移動させながらミスト化されたフッ素含有シランカップリング剤を当該ステンレス鋼製基材の非晶質炭素膜が形成された面に噴霧した。次に、ノズルを当該辺に沿って30mm移動させ、その位置から、当該辺に垂直な方向に搬送速度500mm/secでノズルを移動させながら2回目の噴霧を行った。次に、ノズルを再び当該辺に沿って30mm移動させ、その位置から、当該辺に垂直な方向に搬送速度500mm/secでノズルを移動させながら3回目の噴霧を行った。このようにして実施例1のサンプルを形成した。
実施例2のサンプル
実施例1の製造工程において、搬送速度を1000mm/secに変更して、非晶質炭素膜が形成されたステンレス鋼製基材の表面にフッ素含有シランカップリング剤を噴霧した。このようにして実施例2のサンプルを形成した。
実施例3のサンプル
準備したステンレス鋼製基材の表面にSi(100)ウエハを貼り付けた。このSiウエハが貼り付けられた基材に、実施例2と同一の条件でフッ素含有シランカップリング剤を噴霧した。このようにして実施例3のサンプルを形成した。
以上のようにして形成した各サンプル(比較例1〜比較例3及び実施例1〜実施例3)を、室温(20℃±3℃)、湿度20%±5%のクリーンルームに5日間放置した。次に、IPAを満たした超音波洗浄機にて各サンプルを2分間洗浄した。
この洗浄後のサンプルの各々について以下のようにして水及び油との接触角を測定した。測定は、室温25℃、湿度30%の環境にて、携帯式接触角計PG−X(モバイル接触角計)Fibro system社製を使用して行った。測定ポイントは、基材上のノズルの走行位置に対応する位置から選択した10点とした。この10点の平均の接触角は以下のとおりであった。
比較例1
水との接触角:113°
油との接触角:62.1°
比較例2
水との接触角:111°
油との接触角:61.1°
比較例3
水との接触角:105.1°
油との接触角:53.1°
実施例1
水との接触角:53.9°(最小値は48.3°、最大値は60.1°)
油との接触角:48°(最小値は47.1°、最大値は52.3°)
実施例2
水との接触角:43.3°(最小値は41.5°、最大値は49.4°)
油との接触角:35°(最小値は33.2°、最大値は40.3°)
実施例3
水との接触角:53.3°(最小値は51.2°、最大値は60.9°)
油との接触角:30、1°(最小値は27.2°、最大値は34.3°)
準備したステンレス鋼板の中心から150mm離れた部分(つまり、ステンレス鋼板の端部から中心に向かって50mmの部分、スプレーによりフッ素含有カップリング剤が噴霧されていない部分)において、ほぼ横一直線上(端部から50mmの距離にある直線上の部分)の任意の10点における水及び油との接触角を測定した。その平均値は、水との接触角が29.5°であり、油との接触角が4.1°であった。このように、ステンレス鋼板の表面は強い親水性となっていることが確認できた。これは、ステンレス鋼板上に形成されたSi及びOを含む非晶質炭素膜の強い親水性表面によるものと考えられる。
以上の検証により、基材上に2流体スプレーノズルを用いてフッ素含有カップリング剤を形成することにより、当該フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角を90°未満(親水性)とすることができることが確認できた。一方、当該フッ素含有カップリング剤膜の油に対する接触角は30°〜48°であり、得られたフッ素含有カップリング剤膜は、親水性である一方で疎油性であることが確認できた。
また、実施例1と実施例2とを比較することにより、ノズルの移動速度(搬送速度)を速くすることにより、サンプル表面の水及び油に対する接触角が小さくなること(より親水性及び親油性となるように調整されること)が分かった。
次に、フッ素がサンプルの表面に均一に分散していることを以下のようにして検証した。
比較例2と同じ方法及び条件でサンプルを2つ作成した。このサンプルを比較例2−1、比較例2−2とする。また、実施例1と同じ方法及び条件でサンプルを2つ作成した。このサンプルを実施例1−1、実施例1−2とする。さらに、実施例2と同じ方法及び条件でサンプルを2つ作成した。このサンプルを実施例2−1、実施例2−2とする。
以上のようにして準備した各サンプル(比較例2−1、比較例2−2、実施例1−1、実施例1−2、実施例2−1、実施例2−2)について、日立ハイテク社製のFE−SEM(SU−70)を用いて、加速電圧5kV、電流モードMed−Highの条件で、観測倍率は以下のように調整して、各サンプルの表面観察(組成分析並びに組成のマッピング)を行った。また、炭素、Si、酸素、及びフッ素を元素指定し、フッ素の検出量の構成比(原子数%)を確認した。
フッ素の検出量の構成比(原子数%)の確認結果は以下のとおりであった。
比較例2−1
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:4.19%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:1.95%
比較例2−2
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:3.89%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:1.79%
実施例1−1(スプレー500mm・s)
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:1.31%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:0%
実施例1−2
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:1.51%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:0.90%
実施例2−1(スプレー1000mm・s)
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:1.04%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:0%
実施例2−2(スプレー1000mm・s)
SEM観察倍率100倍におけるフッ素検出量構成比:0.86%
SEM観察倍率300倍におけるフッ素検出量構成比:0%
いずれのサンプルのフッ素のマッピング画像においても、視野内でのフッ素の偏在は確認できなかった。よって、実施例1−1、実施例1−2、実施例2−1、実施例2−2のように、その表面の撥水性が親水性となるほどフッ素含有カップリング剤膜を疎に形成しても、フッ素はフッ素含有カップリング剤膜に均一に分布していることが確認できた。
また、実施例1−1、実施例1−2のフッ素検出量と、実施例2−1、実施例2−2のフッ素検出量とを比較することにより、ノズルの移動速度を速くする(噴霧時間を短くする)ことにより、フッ素をより疎に分布させられることが分かった。
次に、フッ素含有カップリング剤膜に大気圧プラズマを照射することによる水及び油との接触角の変化を以下のようにして検証した。
比較例4のサンプル
Si(100)基板に比較例1のサンプルと同一の条件でSiを含む非晶質炭素膜を形成した後、酸素プラズマを照射した。酸素プラズマ照射後に、非晶質炭素膜が形成されたSi基板にフッ素含有カップリング剤をディップ塗布した。このフッ素含有カップリング剤が塗布された試料を常温湿度25%の環境で90分間乾燥させた後、フッ素含有カップリング剤を再度ディップ塗布した。その後、当該試料を90分間常温湿度25%の環境で60分間乾燥させ、そのご1週間放置した。その後、当該試料をIPA(イソプロピルアルコール)を満たした超音波洗浄器中で2分間洗浄し、試料表層の余剰未反応残渣を除去した。このようにして比較例4のサンプルを作成した。
比較例5のサンプル
Si(100)基板に、比較例1のサンプルと同一の条件でSiを含む非晶質炭素膜を形成した。その後、酸素プラズマは照射せずに、非晶質炭素膜が形成された基板に対して比較例4と同様にフッ素含有カップリング剤を2度ディップ塗布し、比較例4と同様に乾燥及び洗浄した。このようにして比較例5のサンプルを作成した。
実施例4−1のサンプル
比較例4と同様にして、Si基板に非晶質炭素膜及びフッ素含有カップリング剤が塗布された試料を作成した。この試料の表面に、移動速度30mm/sで大気圧プラズマを2回照射した。大気圧プラズマ照射後の試料を、IPAを満たした超音波洗浄層にて2分間洗浄し、フッ素含有カップリング剤膜から大気圧プラズマにより破壊された部分を除去した。このようにして、実施例4−1のサンプルを作成した。
実施例4−2のサンプル
大気圧プラズマの照射回数を6回に変更した以外は実施例4−1と同一の条件・工程で実施例4−2のサンプルを作成した。
実施例5−1のサンプル
比較例5と同様にして、Si基板に非晶質炭素膜及びフッ素含有カップリング剤が塗布された試料を作成した。この試料の表面に、移動速度30mm/sで大気圧プラズマを2回照射した。大気圧プラズマ照射後の試料を、IPAを満たした超音波洗浄層にて2分間洗浄し、フッ素含有カップリング剤膜から大気圧プラズマにより破壊された部分を除去した。このようにして、実施例5−1のサンプルを作成した。
実施例5−2のサンプル
大気圧プラズマの照射回数を6回に変更した以外は実施例5−1と同一の条件・工程で実施例5−2のサンプルを作成した。
このようにして作成した各サンプルについて、以下のようにして水及び油との接触角を測定した。測定は、室温25℃、湿度30%の環境にて、携帯式接触角計PG−X(モバイル接触角計)Fibro system社製を使用して行った。測定ポイントは、基材上のノズルの走行位置に対応する位置から選択した10点とした。この10点の平均の接触角は以下のとおりであった。
比較例4
水との接触角:117°
油との接触角:60°
比較例5
水との接触角:114°
油との接触角:58°
実施例4−1
水との接触角:58.2°
油との接触角:59.1°
実施例4−2
水との接触角:50.4°
油との接触角:58.9°

実施例5−1
水との接触角:60.2°
油との接触角:59.7°
実施例5−2
水との接触角:51.0°
油との接触角:58.0°
以上の検証結果から、油との接触角は、大気圧プラズマの照射回数を増加させても大して変化しないことが分かった。よって、フッ素含有カップリング剤膜に大気圧プラズマを照射することにより、当該フッ素含有カップリング剤膜の撥油性をほぼ維持したままで(大きく親油性にすることなく)、水との接触角を親水性寄りに制御できることが確認できた。これは、フッ素含有カップリング剤膜に大気圧プラズマを照射した場合、フッ素樹脂等の撥水撥油成分を破壊し撥水性及び撥油性を低下させることに加え、フッ素含有カップリング剤の層の表層に水との濡れ性を向上させる有極性の官能基が形成されるためとが考えられる。このように、撥水性及び撥油性を発現するフッ素樹脂の破壊に加えて、親水性を発現する官能基を形成することにより、フッ素含有カップリング剤膜の撥油性を大きく親油性にすることなく、親水性の表面とすることができることが確認できた。
フッ素含有カップリング剤膜の表面に紫外線やオゾンを照射することによっても、大気圧プラズマを照射した場合と同様に、当該表面を撥油性を大きく変化させないまま親水性に改質することができる。したがって、本発明は、医療用メスやカテーテル等の医療用物品のように紫外線やオゾン照射による殺菌が予定される用途に適用すると効果的である。
また、本発明は、紫外線LEDが搭載され紫外線が照射される物品(例えば、紫外線LEDを搭載したトイレの便器や流し台)、紫外線を常時受ける用途(例えば、コロナ放電の放電電極部、グランド部、及びガイド)に適用すると効果的である。
次に、以下のようにして、フッ素含有カップリング剤膜を加熱することにより、当該フッ素含有カップリング剤膜の表面を親水性側及び親油性側に改質できることを確認した。
比較例6の作成
まず、比較例4と同じ工程で、Si(100)基板に非晶質炭素膜が形成され、その上にフッ素含有カップリング剤が塗布された試料を準備した。このようにして準備した試料を表面温度が180°となるように予熱されたホットプレート上に、フッ素含有カップリング剤が上面外界側を向くように配置し、1時間加熱した。このようにして比較例6のサンプルを作成した。
実施例6の作成
ホットプレートでの加熱時間を2時間とする以外は比較例6と同じ方法で実施例6のサンプルを作成した。
このようにして作成した各サンプルについて、以下のようにして水及び油との接触角を測定した。測定は、室温25℃、湿度30%の環境にて、携帯式接触角計PG−X(モバイル接触角計)Fibro system社製を使用して行った。測定ポイントは、基材上のノズルの走行位置に対応する位置から選択した10点とした。この10点の平均の接触角は以下のとおりであった。
比較例6
水との接触角:95.9°
油との接触角:37°
実施例6 水との接触角:83.9°
油との接触角:28,0°
このように、加熱時間を制御することによっても、フッ素含有カップリング剤膜の表面を撥油性としたままで親水性に改質することができることが確認できた。
10 構造体
12 基材本体
13 プライマー層
14 フッ素含有カップリング剤膜

Claims (14)

  1. 基材と、
    前記基材表面に形成されたフッ素含有カップリング剤膜と、
    を備え、
    前記フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角が90°未満であることを特徴とする構造体。
  2. 前記基材は、基材本体と、前記基材本体の表面に形成されたプライマー層とを備えることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  3. 前記プライマー層が非晶質炭素膜であることを特徴とする請求項2ないし請求項4に記載の構造体。
  4. 前記プライマー層が、Si、O、N、Ti、Al、Zr、SiO×及びTiO×のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の構造体。
  5. 前記プライマー層は、ドライプロセスより形成されることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の構造体。
  6. 前記ドライプロセスは、プラズマCVD法、プラズマPVD法、又は大気圧プラズマ法であることを特徴とする請求項5に記載の構造体。
  7. 前記フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角が65°未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の構造体。
  8. 前記フッ素含有カップリング剤膜の油に対する接触角が15°以上50°未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の構造体。
  9. 前記フッ素含有カップリング剤膜の油に対する接触角が15°以上40°未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の構造体。
  10. 前記基材は、印刷パターンに対応する開口部が形成された印刷用孔版、印刷用スクリーンメッシュ、液体噴出用ノズル、成型型、カメラのレンズ、レンズカバー、及び窓ガラスのいずれか1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の構造体。
  11. 前記基材は、カメラのレンズ、レンズカバー、窓、標識、水処理フィルターのいずれか1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の構造体。
  12. 前記基材は、医療用物品であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の構造体。
  13. 当該基材の表面に、その表面の水に対する接触各が90°未満になるように、2流体スプレーノズルを用いてフッ素含有カップリング剤膜を形成する工程を備える構造体の製造方法。
  14. 基材の表面にフッ素含有カップリング剤膜を形成する工程と、
    前記フッ素含有カップリング剤膜の表面に、大気圧プラズマプロセス、UV照射、及びコロナ放電プロセスもしくはこれら以外の公知の様々な手法により発生させたプラズマ、ラジカル、及びイオンのいずれか一つ、紫外線、又は活性酸素を、前記フッ素含有カップリング剤膜の水に対する接触角が90°未満となるように照射する工程と、
    を備える構造体の製造方法。
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