JP2017014605A - 希土類元素の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】希土類元素を含む塩類を沈殿させるための薬剤の使用量を増加させることなく、効率よく低コストに希土類元素を分離、回収可能な希土類元素の回収方法を提供する。
【解決手段】少なくとも希土類元素を含む精鉱原料に硫酸を加えて焙焼して焼鉱を得る硫酸焙焼工程と、前記焼鉱に水または無機酸の水溶液を添加して水浸出液を得る浸出工程と、前記水浸出液に水溶性硫酸塩を添加して希土類元素の硫酸複塩を生成させる希土類複塩生成工程とを備え、前記浸出工程において、前記水浸出液は、液体と固体との質量比率が3:1以上、7:1以下の範囲である。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも希土類元素を含む精鉱原料に硫酸を加えて焙焼して焼鉱を得る硫酸焙焼工程と、前記焼鉱に水または無機酸の水溶液を添加して水浸出液を得る浸出工程と、前記水浸出液に水溶性硫酸塩を添加して希土類元素の硫酸複塩を生成させる希土類複塩生成工程とを備え、前記浸出工程において、前記水浸出液は、液体と固体との質量比率が3:1以上、7:1以下の範囲である。
【選択図】図1
Description
この発明は、希土類元素を含む原料から希土類元素を選択的に回収する希土類元素の回収方法に関するものである。
希土類元素の回収精製プラントでは、希土類元素を含む精鉱、鉱石、例えば、バストネサイトやモナザイト等から希土類元素を粗分離し、更に溶媒抽出法等によって精製することで高純度の希土類元素を得る。特に精鉱は希土類元素を高濃度に含むため希土類元素を効率よく回収できるが、希土類元素が水に対して難溶性の化合物として存在していることが多い。このため、希土類元素を粗分離する際には、希土類元素を水に易溶性の化合物に転換する必要がある。
希土類元素を水に溶解させる手法の一つとして、酸分解法が挙げられる。例えば、精鉱、鉱石をそのまま硫酸溶液で浸出しても希土類元素の浸出速度は遅いが、精鉱、鉱石に濃硫酸を添加した後に焙焼(以下、硫酸焙焼と称する)を行うと、希土類元素が水に対して易溶性の硫酸塩(希土類元素硫酸塩)に転換される。その後、希土類元素硫酸塩を水浸出することによって、希土類元素を含む水浸出液を得ることができる。
希土類元素と、希土類元素以外の不純物元素との化学的な性質の違いを利用して、こうした希土類元素の水浸出液から不純物元素を除去(分離)することで、希土類元素を粗精製する。希土類元素と不純物元素とを粗分離する方法としては、例えば、弱酸性領域において希土類元素の水酸化物と比較して不純物元素の水酸化物の溶解度が低い性質を利用する。
具体的には、強酸性の水浸出液に対してアルカリ性物質を添加して水浸出液を弱酸性にして、不純物元素を水酸化物として析出させてから固液分離操作を行うことによって、不純物元素を水酸化物として分離、除去する中和法が挙げられる。また、希土類元素が溶解度の低い硫酸複塩を生成するという希土類元素に特有の晶析反応を利用し、水浸出液あるいはこれを中和した中和液(以下、水浸出液等と称する)に対して水溶性硫酸塩を添加することにより硫酸複塩を生成させる。そして、希土類元素を硫酸複塩として析出させてから固液分離操作を行うことによって、希土類元素を硫酸複塩として分離、回収する硫酸複塩沈殿法が挙げられる。
しかしながら、硫酸複塩沈殿法により生成させた硫酸複塩は難溶性であるものの、水に溶解可能な飽和濃度までの分量(溶解分)は、水浸出液等に溶存したままとなり、沈殿として回収することができない。特に、市場価値が高いとされる中重希土類元素(Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)については、硫酸複塩の溶解度が軽希土に対し比較的高く、かつ精鉱中に存在する濃度が低いため、その大部分が水浸出液等に溶解したままとなり、回収率が低いという課題があった。
特許文献1では、水浸出液等に添加するアルカリ金属硫酸塩の濃度を増やすことによって、硫酸複塩の溶解度を減少させ、かつ予め軽希土類元素の液中濃度を高めることが開示されている。これによって、軽希土類元素が硫酸複塩を生成、沈殿する際に中重希土類元素の共沈を促進させることによって、中重希土類元素の回収率を高めることができるとされている。
また、特許文献2では、アルカリ金属硫酸塩を添加する前に、硫酸イオンを含まない水溶性塩類を予め溶解させておくことで、希土類元素を含む塩類の溶解量を減少させ、中重希土類元素の回収率を高めることが開示されている。
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載されている硫酸複塩沈殿法による希土類元素の回収方法は、いずれも水浸出液等に対する硫酸複塩の溶解度を減少させるために、アルカリ金属硫酸塩を高濃度に溶解させたり、アルカリ金属硫酸塩に加えて更に硫酸イオンを含まない水溶性塩類を溶解させる必要がある。このため、水浸出液等に添加する塩類の種類や添加量が多くなり、添加薬剤に係るコストや、溶解させた塩類の回収に係るコストが増大するといった課題があった。また、複数の塩類を溶解させるために、希土類元素の回収工程が複雑化するとともに、回収装置の構造も複雑化するという課題もあった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、希土類元素を含む塩類を沈殿させるための薬剤の使用量を増加させることなく、効率よく低コストに希土類元素を分離、回収することが可能な希土類元素の回収方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のような希土類元素の回収方法を提供した。すなわち、本発明の希土類元素の回収方法は、少なくとも、希土類元素を含む精鉱原料に硫酸を加えて焙焼して焼鉱を得る硫酸焙焼工程と、前記焼鉱に水または無機酸の水溶液を添加して水浸出液を得る浸出工程と、前記水浸出液に水溶性硫酸塩を添加して希土類元素の硫酸複塩を生成させる希土類複塩生成工程とを備え、前記浸出工程において、前記水浸出液は、液体と固体との質量比率(液体質量:固体質量)が3:1以上、7:1以下の範囲であることを特徴とする。
本発明の希土類元素の回収方法によれば、金属元素濃度が高く、かつ、流動性を確保した、希土類元素を含む水浸出液を形成することができる。水浸出工程にて液体と固体との質量比率を高め、浸出液中の希土類元素濃度を高くすることによって、後工程で希土類元素を含む難溶性の析出物を形成する際に、液体に溶解して分離不能な希土類元素の割合を低減させ、高効率で精鉱原料から希土類元素を回収することが可能になる。
さらに、このような構成によれば、他の不純物を含む水浸出液から、希土類元素だけを希土類硫酸複塩として選択的に析出させることができる。これによって、希土類元素と、他の不純物、特に希土類元素以外の金属元素とを高精度に分離して、希土類元素を効率的に回収することができる。
さらに、このような構成によれば、他の不純物を含む水浸出液から、希土類元素だけを希土類硫酸複塩として選択的に析出させることができる。これによって、希土類元素と、他の不純物、特に希土類元素以外の金属元素とを高精度に分離して、希土類元素を効率的に回収することができる。
本発明の一態様においては、前記浸出工程によって得られた前記水浸出液は、中和工程において中和剤によってpHが調整されることを特徴とする。
このような構成によれば、水浸出液を中和することによって、水浸出液中に含まれる不純物元素を析出させ、濾過により容易に不純物元素を除去することができ、後段の希土類複塩生成工程にて、より純度の高い希土類硫酸複塩が得られる。
このような構成によれば、水浸出液を中和することによって、水浸出液中に含まれる不純物元素を析出させ、濾過により容易に不純物元素を除去することができ、後段の希土類複塩生成工程にて、より純度の高い希土類硫酸複塩が得られる。
本発明の一態様においては、前記中和剤は、粉末、またはスラリーの状態で添加されることを特徴とする。
このような構成によれば、水浸出液を中和する際に、水浸出液を極力希釈せずに中和することが可能になる。これによって、後工程で希土類硫酸複塩を形成する際に、液体に溶解して分離不能な希土類元素の割合を低減させ、高効率で精鉱原料から希土類元素を回収することが可能になる。
このような構成によれば、水浸出液を中和する際に、水浸出液を極力希釈せずに中和することが可能になる。これによって、後工程で希土類硫酸複塩を形成する際に、液体に溶解して分離不能な希土類元素の割合を低減させ、高効率で精鉱原料から希土類元素を回収することが可能になる。
本発明の一態様においては、前記中和剤は、酸化マグネシウムを含むことを特徴とする。
このような構成によれば、弱アルカリ性化合物である酸化マグネシウムを中和剤に用いることによって、少量の添加でpHが急激に変化することを防止して、中和工程における水浸出液のpH制御を容易にすることができる。
このような構成によれば、弱アルカリ性化合物である酸化マグネシウムを中和剤に用いることによって、少量の添加でpHが急激に変化することを防止して、中和工程における水浸出液のpH制御を容易にすることができる。
本発明の一態様においては 前記希土類元素は、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luのうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする。
本発明の希土類元素の回収方法によれば、特に市場価値の高いSm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luに代表される中重希土類元素を、高精度で効率的に分離、回収することを可能にする。
本発明の希土類元素の回収方法によれば、特に市場価値の高いSm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luに代表される中重希土類元素を、高精度で効率的に分離、回収することを可能にする。
本発明の希土類元素の回収方法によれば、希土類元素を含む塩類を沈殿させるための薬剤の使用量を増加させることなく、効率よく低コストに希土類元素を分離、回収することが可能になる。
以下、図面を参照して、本発明の希土類元素の回収方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、希土類元素の回収方法の一例を段階的に示したフローチャートである。
本発明の希土類元素の回収方法によって、希土類元素を多く含む精鉱から希土類元素を製造する際には、まず、希土類元素を含む精鉱を用意する。こうした精鉱としては、例えば、モナザイト精鉱、バストネサイト精鉱などが挙げられる。こうした精鉱は、Sc,Y,La,Se,Pr,Ndなどの軽希土類元素と、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等の中重希土類元素を含んでいる。これら希土類元素は、その多くが精鉱中にフッ化物、あるいはリン酸化合物として存在している。
本発明の希土類元素の回収方法によって、希土類元素を多く含む精鉱から希土類元素を製造する際には、まず、希土類元素を含む精鉱を用意する。こうした精鉱としては、例えば、モナザイト精鉱、バストネサイト精鉱などが挙げられる。こうした精鉱は、Sc,Y,La,Se,Pr,Ndなどの軽希土類元素と、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等の中重希土類元素を含んでいる。これら希土類元素は、その多くが精鉱中にフッ化物、あるいはリン酸化合物として存在している。
次に、このような希土類元素を含む精鉱を、例えば、粉砕機など機械粉砕によって粉砕する(粉砕工程S1)。これによって所定の最大寸法以下になるように粉砕された粉砕精鉱を形成する。また、精鉱の粉砕は、機械粉砕以外にも、水砕によって行うこともでき、粉砕方法は特に限定されるものでは無い。
次に、粉砕工程S1で得られた粉砕精鉱を、硫酸(H2SO4)を用いて焙焼する(硫酸焙焼工程S2)。なお、粉砕精鉱に水分が過剰に含まれている場合、硫酸焙焼工程S2に先立って、予め乾燥や、か焼を行っておくことが好ましい。硫酸焙焼工程S2では、焙焼炉を用いて、粉砕精鉱と硫酸とを例えば100℃以上、600℃以下の焙焼温度で焙焼を行う。こうした硫酸焙焼工程S2によって、希土類元素が硫酸化合物となった硫酸焙焼精鉱(焼鉱)が得られる。
硫酸焙焼工程S2で用いる焙焼炉としては、例えば、回転式焙焼炉、多段床式焙焼炉などが挙げられる。
硫酸焙焼工程S2で用いる焙焼炉としては、例えば、回転式焙焼炉、多段床式焙焼炉などが挙げられる。
硫酸焙焼工程S2に用いる硫酸は、例えば、96〜98%程度の濃硫酸が好ましい。硫酸焙焼の条件の一例として、粉砕精鉱と、この粉砕精鉱の重量の2〜4倍量の濃硫酸とを焙焼炉に投入し、焙焼温度100℃〜600℃の範囲で1時間〜5時間程度焙焼する。こうした硫酸焙焼工程S2によって、ペースト状または固形状の反応生成物からなる硫酸焙焼精鉱(焼鉱)が生成される。
硫酸焙焼工程S2では、フッ化物、あるいはリン酸化合物として存在している希土類元素が、硫酸との反応によって、硫酸化合物になる。この希土類元素の硫酸化合物は、水に対して容易に溶解する。これにより、後工程において、希土類元素を分離・精製するための操作を容易とする。
次に、硫酸焙焼工程S2で得られた硫酸焙焼精鉱(焼鉱)に、水または無機酸の水溶液を添加して、希土類元素を含む水浸出液を得る(浸出工程S3)。浸出工程S3に用いる硫酸焙焼精鉱(焼鉱)は、固形物である場合には、予め適切な寸法以下になるように粉砕しておくことが好ましい。浸出工程S3に無機酸を用いる場合、例えば、塩酸や硝酸を用いることができる。
精鉱に含まれる希土類元素は、前工程の硫酸焙焼工程S2によって水に対して易溶性の硫酸化合物となっているので、この浸出工程S3において、水や無機酸の水溶液に容易に溶解する。
浸出工程S3では、硫酸焙焼精鉱(焼鉱)に水または無機酸の水溶液を添加し、水浸出液を得る。ここで、浸出工程S3で生成する水浸出液の液体と固体との質量比率(液体質量:固体質量)が、3:1以上、7:1以下の範囲となるように、硫酸焙焼精鉱(焼鉱)と水または無機酸の水溶液との混合割合を調整する。なお、以下の説明において、水浸出液の液体と固体との質量比率を単に液固比と称する場合がある。硫酸焙焼精鉱(焼鉱)が水分を含む場合には、この硫酸焙焼精鉱(焼鉱)の水分含有率を考慮して、水浸出液の液固比が3:1〜7:1の範囲となるように水または無機酸の水溶液を添加すればよい。
なお、以下の説明においては、液固比の数値表記に関して、固体質量を1とした時の液体質量の比率を数値で表すことがある(例えば、水浸出液の液体質量と固体質量との比率が3:1の場合、単に液固比3と表記する)。
なお、以下の説明においては、液固比の数値表記に関して、固体質量を1とした時の液体質量の比率を数値で表すことがある(例えば、水浸出液の液体質量と固体質量との比率が3:1の場合、単に液固比3と表記する)。
液固比が3以上、7以下の範囲の水浸出液は、その多くがスラリーとなっている。液固比が3未満のように固形分が多くなると、流動性が大きく低下して取り扱いが困難になる。また、水に浸出される希土類元素の量が減少すると共に、後工程である中和工程S5において、希土類元素が多量に沈殿してしまう懸念もある。一方、液固比が7を超えて希土類元素濃度が低くなると、後工程である希土類複塩生成工程S7において、希土類硫酸複塩の溶解量が多くなり、希土類元素の収量が低下する懸念がある。このため、浸出工程S3では、液固比が3以上、7以下の範囲となるように水浸出液を生成する。
なお、浸出工程S3の後に、水浸出液に生じる残渣(沈殿物)を濾過して取り除く第1固液分離工程S4を設けることが好ましい。浸出工程S3で生じる残渣としては、例えばAl,Si,Caなどがある。
次に、浸出工程S3で得られた水浸出液に対して中和剤を加えて混合し、強酸性の水浸出液を中性、ないし弱酸性にすることが好ましい(中和工程S5)。この中和工程S5では、希土類元素と他の不純物、例えばFe,U,Thなどが溶解している水浸出液に対して、中和剤を添加することによって特定のpH(水素イオン濃度)にすることで、不純物を沈殿させる。これにより、希土類元素は液相に、Fe,U,Thなどの不純物は固形物相(沈殿物)に、それぞれ移行する。
この中和工程S5において水浸出液に添加する中和剤は、水浸出液に対するpH制御が容易な弱アルカリ性の化合物、例えば、MgO(酸化マグネシウム)、Ca(OH)2(水酸化カルシウム)、Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、CaCO3(炭酸カルシウム)などを例示することができる。特にMgOが好ましく用いられる。なお、NaOH(水酸化ナトリウム)などの強アルカリ性の化合物は、添加によってpHが急激に変化するため、水浸出液のpH制御が困難であり、中和剤としては好ましくない。
水浸出液に添加する中和剤の性状は、粉末、またはスラリー状のものを用いることが好ましい。例えば、中和工程S5では、粉末状のMgOを水浸出液に添加して撹拌する。中和剤の添加量は、水浸出液のpHを測定しつつ、所望のpHに達するまで添加すればよい。また、こうした中和剤を添加した後、中和液を例えば1〜3時間程度撹拌することによって、中和液全体のpHを均一にすることが好ましい。
こうした粉末、またはスラリー状の中和剤は、水溶液と比較して、水分を全く含まないか、水分量が大幅に少ない。粉末、またはスラリー状の中和剤を用いることによって、水浸出液中の希土類元素の濃度を全く減少させないか、あるいは少ない希土類元素濃度の減少量で、pHを中性ないし弱酸性にすることができる。このように、水浸出液に添加する中和剤の水分量を少なくすることによって、後工程である希土類複塩生成工程S7において、希土類硫酸複塩の溶解量を抑制して、希土類元素の収量を向上させることができる。
なお、中和工程S5の後に、希土類元素や希土類元素を除く不純物元素を含有する残渣(沈殿物)を濾過して中和液から取り除く第2固液分離工程S6を設けることが好ましい。中和工程S5で生じる残渣としては、例えば(Fe,U,Th)などがある。
次に、中和工程S5を経て得られた中和液に対して水溶性硫酸塩を添加し、中和液に含まれる希土類元素の硫酸複塩を生成させる(希土類複塩生成工程S7)。この希土類複塩生成工程S7では、水溶性硫酸塩、例えばアルカリ金属硫酸塩を中和液に対して添加し、撹拌することによって、中和液に溶解している水易溶性の希土類元素硫酸塩は、晶析反応によって難溶性の希土類硫酸複塩に転換される。そして、生成した希土類硫酸複塩は、固形物相として沈殿する。一方、希土類元素以外の不純物(Fe,Al等)は、液相に溶解した状態で移行する。
希土類複塩生成工程S7に用いる中和液は、浸出工程にて液固比が3以上、7以下の範囲で浸出し、かつ、中和工程にて粉末やスラリーなど水分の少ない中和剤によってpH調整がされているので、中和液中の希土類元素濃度が高く、生成された希土類硫酸複塩が水に溶解して液相に移行する量を極めて少なくすることができる。また、希土類元素濃度の高い中和液を用いることによって、希土類硫酸複塩の溶解度を低下させるNa+イオンやSO4 2−イオンの相対的な濃度を上げることができるので、より一層、希土類硫酸複塩が水に溶解して液相に移行する量を抑制することを可能にする。
希土類複塩生成工程S7で添加される水溶性硫酸塩としては、例えば、Na2SO4、K2SO4などのアルカリ金属硫酸塩などを挙げることができる。
希土類複塩生成工程S7の具体例としては、例えば、固液分離後の中和液を50〜90℃程度まで昇温させた後、希土類硫酸複塩の生成に必要な反応当量の2〜3倍程度の水溶性硫酸塩を添加して、30分〜3時間程度撹拌させることで行うことができる。
次に、希土類複塩生成工程S7で生成させた希土類硫酸複塩を含む固形物相と、希土類元素以外の不純物(Fe,Al等)が溶解している液相とを、固液分離する(第3固液分離工程S8)。第3固液分離工程S8では、例えば、濾過によって、固形物相と液相とを分離する。特に、本実施形態では浸出工程における液固比が高いため、希土類複塩生成工程において生成するスラリーの固形物濃度が高いため、吸引濾過などによって液相側を物理的に低圧にすることで、効率的に固形物相と液相とを分離することが好ましい。
この後、第3固液分離工程S8で分離した固形物相を乾燥させれば、中重希土類元素が高濃度に含まれた希土類硫酸複塩を得ることができる。
なお、得られた希土類硫酸複塩は、例えば陽イオン交換型抽出剤を用いた多段分離工程を適用することで、個々の希土類元素を分離することができる。こうした多段分離工程では、例えば、PC−88Aなどに代表される陽イオン交換型抽出剤を用いて、pHを段階的に変えていくことで、pHによる元素抽出率の差異を利用して個々の希土類元素を分離する。
一方、第3固液分離工程S8で分離した液相は、溶解している不純物(Fe,Al等)を分離させた後、排液として処理すればよい。
なお、得られた希土類硫酸複塩は、例えば陽イオン交換型抽出剤を用いた多段分離工程を適用することで、個々の希土類元素を分離することができる。こうした多段分離工程では、例えば、PC−88Aなどに代表される陽イオン交換型抽出剤を用いて、pHを段階的に変えていくことで、pHによる元素抽出率の差異を利用して個々の希土類元素を分離する。
一方、第3固液分離工程S8で分離した液相は、溶解している不純物(Fe,Al等)を分離させた後、排液として処理すればよい。
以上、詳細に説明した本実施形態の希土類元素の回収方法によれば、浸出工程S3において硫酸焙焼精鉱(焼鉱)に添加する水または無機酸の水溶液の量を、生成される水浸出液の液体と固体との質量比率(液固比)が3:1以上、7:1以下の範囲となるようにすることで、希土類元素濃度が高く、かつ流動性などハンドリング性に優れた水浸出液にすることができる。
こうした希土類元素濃度の高い水浸出液を中和して希土類複塩生成工程S7に適用すれば、生成した希土類硫酸複塩が水(液相)に溶解する量を確実に減らすことができる。その結果、第3固液分離工程S8で分離される液相に移行してしまう希土類元素の量を低減し、硫酸複塩に移行する希土類元素量を高めることができる。こうした希土類元素の回収量の多い希土類硫酸複塩を多段分離工程等から成る精製工程に組み合わせれば、特に市場価値が高いとされる中重希土類元素を低コストで効率的に分離、回収することが可能になる。
また、中和工程S5において、中和剤として粉末、またはスラリー状の弱アルカリ性の化合物を用いることによって、中和剤による希土類元素濃度の希釈を抑制することができる。これによって、第3固液分離工程S8で分離される液相に移行してしまう希土類元素の量をより一層確実に低減し、希土類硫酸複塩となる固形物相に移行する希土類元素濃度をより高めることができる。
以上、本発明の希土類元素の回収方法の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述した実施形態では、液固比を3以上、7以下の範囲にした水浸出液を用いて、中和後に水難溶性の希土類硫酸複塩を生成させることで希土類元素と不純物とを分離しているが、水浸出液から希土類元素を含む化合物を分離させる方法はこれに限定されるものではない。例えば、水浸出液に含まれる水溶性の希土類元素化合物を、希土類硫酸複塩以外の水難溶性化合物に転換して分離することもできる。
上述した実施形態では、液固比を3以上、7以下の範囲にした水浸出液を用いて、中和後に水難溶性の希土類硫酸複塩を生成させることで希土類元素と不純物とを分離しているが、水浸出液から希土類元素を含む化合物を分離させる方法はこれに限定されるものではない。例えば、水浸出液に含まれる水溶性の希土類元素化合物を、希土類硫酸複塩以外の水難溶性化合物に転換して分離することもできる。
上述した実施形態では、粗分離原料を得るための原材料として、モナザイト精鉱やバストネサイト精鉱などの希土類精鉱を用いているが、希土類元素を含む材料であれば適用することができ、希土類精鉱に限定されるものではない。
以下、本実施形態の効果を検証した実験例を示す。
[実験例1]
(試験手順)
図1に示すフローチャートに従って、希土類元素を含む精鉱(希土類精鉱)から希土類硫酸複塩を形成した。
中重希土類元素を含む希土類精鉱を用いて、実施例、および比較例の試験を行った。まず、この希土類精鉱に濃硫酸を添加した後、ボート炉を用いて硫酸焙焼を行った。硫酸焙焼の条件は実施例、比較例とも同一とし、希土類精鉱量は10g、濃硫酸添加量は希土類精鉱に対して重量比で1.9倍、焙焼温度は250℃、焙焼時間は3時間とした。
[実験例1]
(試験手順)
図1に示すフローチャートに従って、希土類元素を含む精鉱(希土類精鉱)から希土類硫酸複塩を形成した。
中重希土類元素を含む希土類精鉱を用いて、実施例、および比較例の試験を行った。まず、この希土類精鉱に濃硫酸を添加した後、ボート炉を用いて硫酸焙焼を行った。硫酸焙焼の条件は実施例、比較例とも同一とし、希土類精鉱量は10g、濃硫酸添加量は希土類精鉱に対して重量比で1.9倍、焙焼温度は250℃、焙焼時間は3時間とした。
硫酸焙焼工程によって得られた焼鉱を、実施例が液固比5、比較例が液固比20となるように水を添加し、撹拌しながら水に1時間浸出させた。実施例の液固比5は、実験に用いた希土類精鉱が容易にハンドリング可能なものとして選定し、比較例の液固比20は、実施例と比較するために、従来の水浸出において用いる条件として選定した。
硫酸焙焼により得られた焼鉱の量は実施例、比較例ともにほぼ同一であったため、液固比を変化させる目的で添加する水の量を変えた。水浸出後は濾過を行うことで、不純物が含まれる不溶性の残渣を第1固液分離工程で除去した後、得られた水浸出液を次の中和工程に用いた。
硫酸焙焼により得られた焼鉱の量は実施例、比較例ともにほぼ同一であったため、液固比を変化させる目的で添加する水の量を変えた。水浸出後は濾過を行うことで、不純物が含まれる不溶性の残渣を第1固液分離工程で除去した後、得られた水浸出液を次の中和工程に用いた。
中和工程では、水浸出液にMgOの粉末を添加し、pH4.5まで調整した後に1時間撹拌することで、不純物が含まれる中和残渣を析出させた後、第2固液分離工程で濾過を行うことで中和残渣を除去した。得られた中和後の水浸出液(実施例中では、中和剤添加後の水浸出液を中和液と称する)を次の希土類複塩生成工程に用いた。
希土類複塩生成工程では、中和液を70℃に昇温させつつ、希土類硫酸複塩が生成するための反応当量に対して2倍当量のNa2SO4を添加し、1時間撹拌することで晶析反応を促進させ、希土類硫酸複塩を析出させた。その後、第3固液分離工程にて濾材を用いた吸引濾過を行うことによって、希土類硫酸複塩(固形物相)と、希土類元素以外の不純物(Fe,Al等)が含まれる濾液(液相)とを得た。
以上の実験例1における実施例と比較例との試験条件を表1に纏めて示す。
以上の実験例1における実施例と比較例との試験条件を表1に纏めて示す。
(分析方法、分析結果)
希土類精鉱の一部を分取し、アルカリ融解後、融解液に含まれる希土類元素の濃度を誘導結合プラズマ型質量分析装置(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ型発光分析装置(ICP-AES)によって測定した。そして、測定した個々の希土類元素の濃度を希土類精鉱の重量に掛け合わせることで、希土類精鉱に含まれる希土類元素の含有量を算出した。実験例1に用いた希土類精鉱に含まれる希土類元素の組成を表2に示す。
希土類精鉱の一部を分取し、アルカリ融解後、融解液に含まれる希土類元素の濃度を誘導結合プラズマ型質量分析装置(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ型発光分析装置(ICP-AES)によって測定した。そして、測定した個々の希土類元素の濃度を希土類精鉱の重量に掛け合わせることで、希土類精鉱に含まれる希土類元素の含有量を算出した。実験例1に用いた希土類精鉱に含まれる希土類元素の組成を表2に示す。
水浸出工程で得られた水浸出液、中和工程で得られた中和液、および希土類複塩生成工程で得られた希土類硫酸複塩について、それぞれ得られた量を測定するとともに、それぞれに含まれる希土類元素の濃度をICP-MS及びICP-AESによって測定し、それぞれ得られた量と掛け合わせることで、水浸出工程、中和工程、および希土類複塩生成工程における希土類元素の含有量を測定した。各操作における物質収支を表3に示す。
水浸出工程で得た水浸出液における希土類元素の分析結果を表4に示す。また、希土類元素の精鉱から水浸出液への移行率を図2に示す。
中和工程で得た中和液における希土類元素の分析結果を表5に示す。また、希土類元素の精鉱から中和液への移行率を図3に示す。
希土類複塩生成工程で得られた希土類硫酸複塩生成後の濾液における希土類元素の分析結果を表6に示す。また、希土類元素の精鉱から硫酸複塩への移行率を図4に示す。
なお、表4、表5、表6における各項目の算出方法は以下のとおりである。
(表4)
浸出液中存在量(生データ)[mg]=浸出液中濃度[mg/L]× (浸出液量[mL]/1000[mL/L] )
浸出液中存在量(減損考慮)[mg]=浸出液中存在量(生データ)[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])
浸出液移行率[wt%]=浸出液中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
(表4)
浸出液中存在量(生データ)[mg]=浸出液中濃度[mg/L]× (浸出液量[mL]/1000[mL/L] )
浸出液中存在量(減損考慮)[mg]=浸出液中存在量(生データ)[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])
浸出液移行率[wt%]=浸出液中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
(表5)
中和液中存在量(生データ)[mg]=中和液中濃度[mg/L]×(中和液量[mL]/1000[mL/L] )
中和液中存在量(減損考慮[mg]=中和液中存在量(生データ)[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])×(浸出液量[mL]/浸出液使用量[mL])
中和液移行率[wt%]=中和液中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
中和液中存在量(生データ)[mg]=中和液中濃度[mg/L]×(中和液量[mL]/1000[mL/L] )
中和液中存在量(減損考慮[mg]=中和液中存在量(生データ)[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])×(浸出液量[mL]/浸出液使用量[mL])
中和液移行率[wt%]=中和液中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
(表6)
反応晶析液中存在量(生データ)[mg]=反応晶析液中濃度[mg/L]×(反応晶析液量[mL]/1 000[mL/L] )
反応晶析液中存在量(減損考慮)[mg]=液中存在量[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])×(浸出液量[mL]/浸出液使用量[mL])×(中和液量[mL]/中和液使用量[mL])
硫酸複塩中存在量(減損考慮)[mg]=中和液中存在量(減損考慮) [mL]−反応晶析液中存在量(減損考慮)[mg]
硫酸複塩移行率[wt%]=硫酸複塩中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
反応晶析液中存在量(生データ)[mg]=反応晶析液中濃度[mg/L]×(反応晶析液量[mL]/1 000[mL/L] )
反応晶析液中存在量(減損考慮)[mg]=液中存在量[mg]×(焼鉱量[g]/焼鉱使用量[g])×(浸出液量[mL]/浸出液使用量[mL])×(中和液量[mL]/中和液使用量[mL])
硫酸複塩中存在量(減損考慮)[mg]=中和液中存在量(減損考慮) [mL]−反応晶析液中存在量(減損考慮)[mg]
硫酸複塩移行率[wt%]=硫酸複塩中存在量(減損考慮)[mg]/精鉱10g中存在量[mg]×100
表4および図2に示す水浸出工程における結果によれば、実施例と比較例とでは液固比が4倍異なるが、浸出操作における精鉱から水浸出液への希土類の移行率は、ほぼ同等の値を示した。一般に浸出できる最大元素量は、溶解度に液量を掛け合わせた値となるため、固体量を一定とした場合は液固比が高いほど液量は増加し、それに従い元素浸出量も増加する。しかしながら、実験例1では浸出率は液固比に依存せず、ほぼ一定の値となることが確認できた。これは、液固比5から液固比20の範囲内において、希土類元素の濃度が溶解度以下であり、かつ浸出時間が十分であったことを示している。
表5および図3に示す中和工程における結果によれば、希土類元素の精鉱から中和液への移行率は、液固比5に設定した実施例の方が、液固比20に設定した比較例よりも全般的に低い値となった。実施例において希土類元素の移行率が低くなった原因は、中和によって希土類元素の溶解度が減少した際に、比較例と比較して実施例の液量が少ないため、液中に溶解できる希土類元素の量が減少し、結果として希土類の一部が水酸化物として析出し、中和工程後の濾過によって不純物と共に除去されたことによると考えられる。
表6および図4に示す希土類複塩生成工程における結果によれば、希土類元素の精鉱から硫酸複塩への移行率は、液固比5に設定した実施例と、液固比20に設定した比較例とを比較すると、軽希土類元素については同等かわずかに実施例の方が低い値ではあるものの、中重希土類元素については大幅に実施例の方が高い値となった。一例として、Dyの硫酸複塩への移行率は、比較例においては17%であるが、実施例では53%まで大きく向上した。また、比較例で回収率が極めて低かったHo,Er,Tm,Yb,Luは、実施例では15〜50%の移行率で硫酸複塩に回収されている。実施例での中重希土類元素の硫酸複塩への移行率が高められた理由は、晶析反応により希土類元素の溶解度が減少した際に、比較例と比較して実施例の浸出工程での液固比が小さく希土濃度が高いため、結果として硫酸複塩として回収される希土類元素の量が増加したことによる。特に、中重希土類元素については、軽希土類元素と比較して中和液中の濃度が低く、かつ硫酸複塩の溶解度が高いために、液固比を低くした効果が顕著に表れたと考えられる。
以上、実施例によれば、水浸出液の液固比を低くすることによって、浸出・中和工程における希土類元素の精鉱から浸出液および中和液への移行率は溶解度に従って低下することが考えられる。実際に中和工程においては、比較例と比較して実施例の方が希土類元素の精鉱から中和液への移行率が低下した。それでも、水浸出液の液固比を低くすることによって、希土類複塩生成工程まで操作した場合における精鉱から硫酸複塩への希土類元素の移行率は、市場価値の高い中重希土類元素において大幅に向上させることができることが確認された。
[実験例2]
上述した実験例1の分析結果を用いて、本発明で用いる水浸出液の液固比が7(7:1)以下であることの必然性を検証した。
浸出工程の液固比を小さくした場合は、希土類複塩生成工程において希土類硫酸複塩の収率向上が期待できる反面、水浸出工程や中和工程においては、液中に存在できる希土類元素の濃度が減少する。液固比を大きくした場合はそれとは逆の現象が起こる。これらのバランスにより、本発明の効果が見込める範囲が限定される。また、これとは別に水浸出液のハンドリング性の面からも検討が必要である。以下、実験例1の分析結果に基づいて、液固比7での希土類元素の硫酸複塩への移行率を算出する。
上述した実験例1の分析結果を用いて、本発明で用いる水浸出液の液固比が7(7:1)以下であることの必然性を検証した。
浸出工程の液固比を小さくした場合は、希土類複塩生成工程において希土類硫酸複塩の収率向上が期待できる反面、水浸出工程や中和工程においては、液中に存在できる希土類元素の濃度が減少する。液固比を大きくした場合はそれとは逆の現象が起こる。これらのバランスにより、本発明の効果が見込める範囲が限定される。また、これとは別に水浸出液のハンドリング性の面からも検討が必要である。以下、実験例1の分析結果に基づいて、液固比7での希土類元素の硫酸複塩への移行率を算出する。
データの解析にあたって、ベースとなるデータは、実験例1における液固比5(実施例)と液固比20(比較例)のそれぞれの場合における中和液中存在量(減損考慮)と反応晶析濾液中存在量(減損考慮)とし、それらの値から本来あるべき液中濃度を推測した(この段階では析出は考慮しない)。次に、液固比5と液固比20の間の各液固比における各液の濃度は、各液固比の浸出物を得るために液固比5と液固比20の液を混合する際の混合比に等しいと仮定した。精鉱量を10gに固定すると、液固比Zの液10×(Z+1)[mL]を得るためには、液固比5の液80−4Z[mL]と液固比20の液14Z−70[mL]とを混合することとなる。次に、この計算により得られた中和液(中和後の水浸出液)の液中濃度から反応晶析濾液の液中濃度を差し引き、濃度の差分×液量で求めた希土類元素量が硫酸複塩として析出すると仮定した。
図5に、計算により求めた液固比5、7、15、20における希土類元素の精鉱から硫酸複塩への移行率を示す。液固比5と液固比20の値は、図4に示す実測値である。この図5に示す結果は、実測値である液固比5と液固比20の値から求めたものであるので、それらの結果から逸脱したものではないが、液固比の低下によって移行率が変化する傾向はより明確になっている。Scは条件によらず硫酸複塩として回収することはできないが、Y及びEu以降の中重希土類元素は、液固比を小さくすることによって硫酸複塩として回収率を向上させることができる。それに対して、La〜Sm(軽希土類元素および中希土類元素の一部)は、液固比を小さくすることで回収率は徐々に減少する傾向にある。
図5に示す結果によれば、液固比を低下させるに従って中重希土類元素の回収効果が向上する結果となった。これにより、液固比7以下であれば、液固比5の場合と同等の結果を得ることができると推測される。
図5に示す結果によれば、液固比を低下させるに従って中重希土類元素の回収効果が向上する結果となった。これにより、液固比7以下であれば、液固比5の場合と同等の結果を得ることができると推測される。
[実験例3]
実験例3として、本発明で用いる水浸出工程における液固比が3(3:1)以上であることの必然性を検証した。
液固比3における希土類元素の挙動を確認すべく、実験例1における実施例と同様の手順で、液固比3の水浸出液を形成した。なお、実験では、秤量値の誤差から結果的に液固比3.3での実験となったが、結果は液固比3とほぼ同等と考えられる。そして、得られた液固比3の水浸出液を実験例1における実施例と同様の手順で分析を行った。各操作における物質収支を表7に示す。
実験例3として、本発明で用いる水浸出工程における液固比が3(3:1)以上であることの必然性を検証した。
液固比3における希土類元素の挙動を確認すべく、実験例1における実施例と同様の手順で、液固比3の水浸出液を形成した。なお、実験では、秤量値の誤差から結果的に液固比3.3での実験となったが、結果は液固比3とほぼ同等と考えられる。そして、得られた液固比3の水浸出液を実験例1における実施例と同様の手順で分析を行った。各操作における物質収支を表7に示す。
実験例3における水浸出工程で得られた液固比3.3の水浸出液の分析結果を表8に示す。また、実験例3における希土類元素の精鉱から水浸出液への移行率を図6に示す。また、実験例3における希土類元素の水浸出液中での濃度を図7に示す。なお、図6において、液固比5、液固比20の結果は図2と同様である。
液固比3.3と液固比5における希土類元素の挙動を比較すると、希土類元素の移行率は液固比3.3と液固比5(表3を参照)とは同等である。また、水浸出液中での希土類濃度は、液固比3.3が液固比5よりも高くなっている。これらの結果から、液固比3.3〜5の範囲では、水浸出工程では溶解度に達していないと考えられ、すなわち水浸出工程における精鉱から水浸出液への希土類移行率を損なわない液固比であるといえる。したがって水浸出工程の液固比を3以上とすることは、水浸出操作条件として適当であるといえる。
一方で、中和工程における希土類元素の回収率を考慮すると、図3の結果に基づいて液固比が小さいほど特に重希土類元素の回収率が低下する傾向が明らかであり、液固比5からの大幅な液固比の低下は、中和工程での希土類元素の損失量の増加を意味する。また、一般に液固比が低いほどスラリーのハンドリング性が低下し、例えば水浸出時の撹拌不良を招く恐れがある。本実験例における液固比3.3ではハンドリング性に問題なく操作できたが、液固比をさらに小さくした場合、スラリーの撹拌、移送が困難になることが予想される。以上の結果に基づいて水浸出液の液固比の下限は3以上とすることが適切であることが確認された。
S1 粉砕工程
S2 硫酸焙焼工程
S3 浸出工程
S4 第1固液分離工程
S5 中和工程
S6 第2固液分離工程
S7 希土類複塩生成工程
S8 第3固液分離工程
S2 硫酸焙焼工程
S3 浸出工程
S4 第1固液分離工程
S5 中和工程
S6 第2固液分離工程
S7 希土類複塩生成工程
S8 第3固液分離工程
Claims (5)
- 少なくとも、希土類元素を含む精鉱原料に硫酸を加えて焙焼して焼鉱を得る硫酸焙焼工程と、前記焼鉱に水または無機酸の水溶液を添加して水浸出液を得る浸出工程と、前記水浸出液に水溶性硫酸塩を添加して希土類元素の硫酸複塩を生成させる希土類複塩生成工程とを備え、
前記浸出工程において、前記水浸出液は、液体と固体との質量比率(液体質量:固体質量)が3:1以上、7:1以下の範囲であることを特徴とする希土類元素の回収方法。 - 前記浸出工程によって得られた前記水浸出液は、中和工程において中和剤によってpHが調整されることを特徴とする請求項1記載の希土類元素の回収方法。
- 前記中和工程において、前記中和剤は、粉末、またはスラリーの状態で添加されることを特徴とする請求項2記載の希土類元素の回収方法。
- 前記中和剤は、酸化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項3記載の希土類元素の回収方法。
- 前記希土類元素は、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luのうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項記載の希土類元素の回収方法。
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2015
- 2015-07-06 JP JP2015135598A patent/JP2017014605A/ja active Pending
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