JP2017013211A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切れ刃に高負荷が作用する高速断続重切削条件ですぐれた耐剥離性、耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】工具基体の表面に化学蒸着形成された下部層と上部層を備えた表面被覆切削工具において、下部層の最表面層の表層部における平均酸素含有量は1〜3原子%であり、上部層は、α型の結晶構造を有するAl層からなり、該Al層の結晶粒界に沿ってクラックが形成され、界面領域においてクラックの形成される長さ割合は、界面領域の全粒界長の10〜30%であり、また、表面領域でクラックの形成される長さ割合は、表面領域の全粒界長の30〜60%の割合であり、さらに、好ましくは、上部層のAl粒のΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄原子が偏析し、その粒界長は、界面領域ではΣ3以上の全粒界長の20〜40%、また、表面領域ではΣ3以上の全粒界長の30〜60%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高速で、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用し、さらに、工具基体が塑性変形を起こしやすい高送り・高切込みの高速断続重切削条件で行った場合でも、硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、Al層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層が蒸着形成された被覆工具が知られている。
しかし、前述したような従来の被覆工具は、例えば、各種の鋼や鋳鉄などの連続切削ではすぐれた耐摩耗性を発揮するが、これを、高速断続切削に用いた場合には、被覆層の剥離やチッピングが発生しやすく、工具寿命が短命になるという問題があった。
そこで、被覆層の剥離、チッピングを抑制するために、下部層、上部層に改良を加えた各種の被覆工具が提案されている。
例えば、特許文献1には、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAlおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)からなる対応粒界の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態からなる対応粒界をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60〜80%である構成原子共有格子点分布グラフを示す酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具は、高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を示すことが知られている。
また、特許文献2には、工具基体表面に下部層および上部層を被覆形成した被覆工具において、上部層を、次の(a)〜(c)を満足するクラック充填加熱変態α型酸化アルミニウム層とすることにより、高速断続切削における耐チッピング性を改善することが提案されている。
(a)化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層に、加熱処理を施して、結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、断面観察で層中に、加熱変態生成クラックとしての樹枝状不連続クラックが分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型酸化アルミニウム層を層基体とし、
(b)上記層基体中に存在する樹枝状不連続クラックの分布形態を、前記層基体表面に対するショットブラスト処理で、同じく断面観察で層中に網目状連続クラックが分布した状態とし、
(c)上記網目状連続クラックに前記層基体との合量に占める割合で0.5〜5質量%の窒化チタンを化学蒸着充填する。
また、特許文献3には、下部層がTi化合物層、上部層がα型Al層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具であって、下部層直上のAl結晶粒の30〜70%は(11−20)配向Al結晶粒とし、上部層の全Al結晶粒の45%以上は、(0001)配向Al結晶粒とし、さらに好ましくは、下部層の最表面層は、500nmまでの深さ領域に亘ってのみ0.5〜3原子%の酸素を含有する酸素含有TiCN層を形成し、また、下部層最表面層の酸素含有TiCN結晶粒数と、下部層と上部層の界面におけるAl結晶粒数との比の値を0.01〜0.5とすることにより、高速重切削、高速断続切削における耐剥離性、耐チッピング性を改善することが提案されている。
特開2006−198735号公報 特許第4389593号公報 特開2013−63504号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強い。これに伴い、切削加工は一段と高速化・高能率化すると共に、高切り込みや高送りなどの重切削、断続切削等で切刃に高負荷が作用する傾向にある。前述した従来の被覆工具を鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削に用いた場合には問題はない。しかし、従来の被覆工具を、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用するとともに、工具基体が塑性変形を起こしやすい高切り込み・高送りの高速断続重切削条件で用いた場合には、硬質被覆層の剥離が発生しやすく、これを原因として比較的短時間で工具寿命に至る。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用し、また、工具基体の塑性変形が発生しやすい高速高切り込み・高送りの断続重切削条件で使用した場合でも、硬質被覆層の剥離、チッピングが発生しない硬質被覆層の構造について鋭意研究を行ったところ、硬質被覆層の上部層を構成するAl層について、該Al層における前記全粒界長に対して、所定の長さ割合を有するクラックをAl結晶粒の結晶粒界に形成し、しかも、クラックの分布の形態を、層厚方向に沿って制御することによって、高速高切り込み・高送りの断続重切削条件における硬質被覆層の剥離、チッピングの発生が抑制されることを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に下部層と上部層からなる硬質被覆層が化学蒸着形成された表面被覆切削工具において、
(a)前記下部層は、3〜20μmの合計平均層厚を有し、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiCNOのうちの2層以上からなり、その内の少なくとも1層はTiCN層で構成したTi化合物層からなり、
(b)前記上部層は、2〜20μmの平均層厚を有し、α型の結晶構造を有するAl層からなり、
(c)前記上部層のAl結晶粒は、前記上部層の少なくとも切れ刃稜線部を含む逃げ面およびすくい面に研磨処理を施すことにより、その結晶粒界に沿ったクラックが形成され、前記下部層の最表面層と前記上部層の界面から、前記上部層の層厚方向へ1μmまでの界面領域においては、前記クラックの長さは、前記界面領域における測定範囲内の全粒界長の10〜30%の割合であり、また、前記界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、前記クラックの長さは、前記表面領域における測定範囲内の全粒界長の30〜60%の割合であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記下部層(a)の最表面層が、少なくとも500nm以上の層厚を有するTiCN層からなり、不可避不純物としての酸素を除けば、前記TiCN層と前記上部層の界面から500nmまでの深さ領域にのみ酸素が含有されており、前記深さ領域に含有される平均酸素含有量は、前記深さ領域に含有されるTi,C,N,Oの合計含有量の1〜3原子%であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記上部層のAl結晶粒について、断面研磨面に対して高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法による観察および元素分析を行った場合に、コランダム型六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が前記断面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、結晶格子界面を構成する構成原子のそれぞれが前記結晶格子相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合に、それぞれの分布割合を算出し、全対応粒界長に占める各構成原子共有格子点からなる対応粒界長の割合が示された対応粒界分布グラフにおいて、前記Σ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄が偏析しており、前記下部層の最表面層と前記上部層の界面から、前記上部層の層厚方向へ1μmまでの界面領域においては、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の粒界長は、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長の20〜40%を占め、また、前記界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の粒界長は、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長の30〜60%を占めることを特徴とする前記(1)、(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記上部層のAl結晶粒について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分するとともに、各区分内の存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布で表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
次に、本発明の被覆工具について詳細に説明する。
図1に、本発明被覆工具における、工具基体表面に垂直方向の断面の模式図を示す。
本発明被覆工具の硬質被覆層は、下部層と上部層を有し、上部層の界面領域および上部層の表面領域おいては、それぞれ、全粒界長に対して所定の長さ割合のクラック(図示せず)が形成されている。
(a)下部層:
下部層を構成するTi化合物層(例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層)は、基本的にはAl層の下部層として存在し、自身の持つすぐれた高温強度によって、硬質被覆層に対して高温強度を与える。その他にも、Ti化合物層は、工具基体表面、Al層からなる上部層のいずれにも密着し、硬質被覆層の工具基体に対する密着性を維持する作用を有する。しかしながら、このTi化合物層の合計平均層厚が3μm未満である場合、前述した作用を十分に発揮させることができない。一方、このTi化合物層の合計平均層厚が20μmを越える場合、特に高熱発生を伴う高速重切削・高速断続切削では熱塑性変形を起し易くなり、偏摩耗の原因となる。以上から、Ti化合物層の合計平均層厚は3〜20μmと定めた。
(b)下部層の最表面層:
本発明における下部層の最表面層は、例えば、以下のようにして形成する。
即ち、まず、通常の化学蒸着装置を使用して、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなる種々のTi化合物層を蒸着形成(なお、TiCN層のみを蒸着形成することも勿論可能である)する。その後、同じく通常の化学蒸着装置を使用して、
反応ガス組成(容量%):TiCl 2〜10%、CHCN 0.5〜1.0%、N 25〜60%、残部H
反応雰囲気温度:750〜930℃、
反応雰囲気圧力:5〜15kPa、
の条件で化学蒸着して、下部層の最表面層として、酸素を含有するTiCN(以下、酸素含有TiCNという)層を形成する。
この際、所定層厚を得るに必要とされる蒸着時間終了前の5分から30分の間は、全反応ガス量に対して1〜5容量%となるようにCOガスを添加して化学蒸着を行うことにより、層厚方向に最大500nmまでの深さ領域にのみ該深さ領域に含有されるTi、C、N、Oの合計含有量の1〜3原子%の平均酸素含有量の酸素を含有する酸素含有TiCN層を蒸着形成する。なお、この下部層の最表面層の500nmを超える深さ領域には、不可避不純物として0.5原子%未満の酸素が含有されることが許容される。このため、「酸素を含有しない」とは、厳密には酸素の含有量が0.5原子%未満であることを意味する。
酸素含有TiCN層からなる前記下部層の最表面層は、例えば、その上に、好ましいAl結晶粒を形成するためには(後記(c)参照)、少なくとも500nm以上の層厚として形成するとともに、さらに、この酸素含有TiCN層と上部層との界面から、層厚方向に最大500nmまでの深さ領域にのみ該深さ領域に含有されるTi、C、N、Oの合計含有量の1から3原子%の酸素を含有させ、最大500nmまでの深さ領域にのみ酸素を含有させる。
ここで、酸素含有TiCN層の深さ領域を前述のように限定したのは、500nmより深い領域において0.5原子%以上の酸素が含有されていると、TiCN最表面の組織形態が柱状組織から粒状組織に変化するとともに、下部層の最表面層直上のAl結晶粒の構成原子共有格子点形態を所望のものとできなくなるためである。
ただ、深さ領域500nmまでの平均酸素含有量が1原子%未満では、上部層と下部層TiCNの付着強度の向上を望むことはできないばかりか、下部層の最表面層直上のAl結晶粒の対応粒界の形成を充分に満足させることはできない。一方、この深さ領域における平均酸素含有量が3原子%を超えると、界面直上の上部層Alにおいて、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、各区分内の存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布で表した場合、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%未満となり、上部層の高温強度が低下する。
ここで、平均酸素含有量は、下部層の最表面層を構成する前記TiCN層と上部層との界面から、このTiCN層の層厚方向に500nmまでの深さ領域におけるチタン(Ti),炭素(C),窒素(N)及び酸素(O)の合計含有量に占める酸素(O)含有量を原子%(=O/(Ti+C+N+O)×100)で表したものをいう。
(c)上部層のAl結晶粒:
下部層の最表面層に前記(b)の酸素含有TiCN層を蒸着形成した後、該酸素含有TiCN層の表面を、
反応ガス組成(容量%):CO 3〜5%、CO 3〜5%、残部H
雰囲気温度:850〜950℃、
雰囲気圧力:5〜15kPa、
処理時間:20〜60min、
の条件で処理した後、ついで、上部層のAl層を形成する。
上部層の形成は、次のような工程からなる。
<Al初期成長>
反応ガス組成(容量%):AlCl 1〜5%、CO 1〜3%、HCl 1〜3%、残部H
雰囲気温度:850〜950℃、
雰囲気圧力:5〜15kPa、
処理時間:20〜90min、
の条件でさらに処理し、ついで、
<Al上層第1層形成>
反応ガス組成(容量%):AlCl 2〜5%、CO 2〜5%、HCl 1.0〜3.0%、HS 0.5〜1.0%、残部H
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:5〜15kPa、
処理時間:狙い1μmの層厚になるまでの90〜180min、
で蒸着し、ついで、
<Al上層第2層形成>
反応ガス組成(容量%):AlCl 2〜5%、CO 5〜10%、HCl 1.0〜3.0%、HS 0.75〜1.5%、残部H
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:5〜15kPa、
処理時間:(目標とする上部層層厚になるまで)
という条件で蒸着することにより、所定のクラック長さ、クラック分布、さらに、所定の構成原子共有格子点形態および傾斜角度数分布を有するAl結晶粒からなる上部層が形成される。ただし、第1層形成用と第2層形成用の反応ガス組成は異なる。
なお、上部層全体の層厚が、2μm未満であると長期の使用に亘ってすぐれた高温強度および高温硬さを発揮することができず、一方、20μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、上部層の層厚は2〜20μmと定めた。
本発明の被覆工具は、前記蒸着法により上部層のAl層を形成した後、上部層の少なくとも切れ刃稜線部を含む逃げ面およびすくい面に対して、例えば、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl微粒を配合した研磨液を噴射するウエットブラストによる研磨処理等を施すことにより、Al結晶粒の結晶粒界に沿ってクラックが形成されるが、上部層の断面の測定範囲について、TEM観察により得られた観察像に対して、5nm〜20nmの幅でAl結晶粒の結晶粒界に沿って存在しているものであるとし、クラックであるか結晶粒界であるかを識別する。また、TEM観察により得られた観察像に対して、クラックの長さおよび結晶粒界の長さを測定することによって、クラックの長さ割合を求めることができる。
なお、上記でいう測定範囲とは、例えば、下部層の最表面層と上部層の界面から、上部層の層厚方向へ1μmまでの界面領域においては、例えば、上部層縦断面の層厚方向2μm×工具基体に平行な方向30μmであり、また、界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、例えば、上部層縦断面の層厚方向20μm×工具基体に平行な方向30μmとすることが好ましいが、これに限定されることはない。
本発明の被覆工具においては、前記界面領域で形成されるクラックの長さ割合は、該界面領域における全粒界長の10〜30%とする。
これは、界面領域で形成されるクラックの長さ割合が10%未満であると、Al結晶粒の結晶粒界に沿ったクラックが少ないため、高速断続切削加工時に工具基体が塑性変形を起こした場合、上部層が工具基体の変形に追従できないため、剥離の原因となるからであり、一方、界面領域で形成されるクラックの長さ割合が30%を超えると、上部層と下部層の密着強度が低下するため、界面領域におけるクラックの長さ割合は10〜30%とする。
また、前記界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、高速断続切削加工時に生じる工具基体の塑性変形が、上部層の表面領域においてより強く反映され変形量が多くなるため、上部層の剥離発生を抑制するためには、クラックの長さ割合をより高めて30〜60%とする必要がある。
ここで、表面領域におけるクラックの長さ割合が30%未満であると、工具基体の塑性変形に追従して上部層が変形することができず、一方、表面領域におけるクラックの長さ割合が60%を超えると、上部層自体の粒界強度の低下が生じることから、表面領域におけるクラックの長さ割合は30〜60%とする。
さらに、上部層を構成するα型の結晶構造を有するAl結晶粒について、その断面研磨面に対して高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(High Angle Annular Dark Field Scanning transmission electron microscope:HAADF−STEM)による観察および元素分析を行い、その構成原子共有格子点形態を詳細に解析したところ、構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3〜Σ29までの構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄原子は殆ど存在せず、Σ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄原子が偏析していること、また、硫黄原子が偏析しているΣ31以上である構成原子共有格子点形態の粒界長は、前記上部層の界面領域においては、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して20〜40%を占め、また、前記上部層の表面領域においては、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して30〜60%を占めることが分かった。
前記の硫黄は、本発明による上部層の成膜法において、反応ガス成分である硫黄が吸着し、Al層中に取り込まれたものであるが、Σ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に偏析することによって、Σ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界にクラックが形成されやすくなり、その結果、上部層の界面領域および上部層の表面領域において、それぞれ、本発明で規定するクラックの長さ割合が得られる。
上部層の構成原子共有格子点形態は、以下の手順で測定することができる。
まず、被覆工具について、その縦断面を研磨面とする。
次に、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(High Angle Annular Dark Field Scanning transmission electron microscope:以下、「HAADF−STEM」と記す)を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在するコランダム型六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、結晶格子面のそれぞれの法線の方位のなす角度を測定する。
ついで、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、結晶格子界面を構成する構成原子のそれぞれが前記結晶格子間で1つの構成原子を共有する格子点(「構成原子共有格子点」という)の分布を算出する。
そして、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(但し、Nはコランダム型六方晶結晶格子の結晶構造上2以上の偶数となるが、4、8、14、24および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合に、それぞれの分布割合を算出し、Σ3以上の全対応粒界長の合計分布割合に占める割合で示す対応粒界分布グラフ(図2、3参照)を作成することによって、Σ3〜Σ29の分布割合さらにΣ31以上の分布割合を求めることができる。
なお、Σ31以上の分布割合の算出方法は、得られた測定結果から、Σ3、Σ7、Σ11、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、Σ29のそれぞれの対応粒界長を算出し、全対応粒界長からこれらの対応粒界長の和を差し引いた値を用いてΣ31以上の分布割合として求めた。
Σ29以下の対応粒界とΣ31以上の対応粒界を区別しているのは、H.Grimmerらの論文(Philosophical Magazine A,1990,Vol.61,No.3,493−509)にあるように、分布頻度の点からα―Alの対応粒界はNの上限を28としたΣ3からΣ29までの粒界が主な対応粒界であることが報告されているためである。従って本発明においてもΣ31以上は個々のNにおける分布割合を算出せず、Σ31以上としてひとまとめにした。Σ3、Σ7、Σ11、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、Σ29のそれぞれの対応粒界は上記論文に示された、対応粒界を構成する結晶粒間のなす角度の値を用いて同定した。また、隣接する結晶格子間で構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在する構成原子共有格子点形態を満たすΣN+1の対応粒界から、結晶粒間のなす角度の値にどの程度の誤差ΔΘまでを許容できるかという基準として、ΔΘ=5°として計算を行った。
また、上部層を構成するα型のコランダム型六方晶結晶格子を有するAl結晶粒について、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いて、構成原子共有格子点形態を観察した上記断面研磨面の測定範囲内で、エネルギー分散型X線分析法による元素分析を行うことで、Σ31以上である対応粒界に硫黄が偏析しており、その粒界長がΣ3以上である全粒界長に対して、界面領域では20〜40%であり、また、表面領域では30〜60%であるときに、特に優れた耐剥離性を示す。
このような結合状態をもつ粒界をAl結晶粒内に形成することで、その箇所が硬質皮膜中に広く分散された微細な破壊起点の役割を担うようになり、高速断続重切削加工といった切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用し、かつ、工具基体が塑性変形を起こすような切削条件でも、Al層の大きな剥離やチッピングを抑制することができるのである。
界面領域において、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の長さが、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して20%未満である場合は、上記に述べたような、クラック形成効果が少なく、所望の耐剥離性や耐チッピング性を得ることができず、一方、40%を超える場合には、下部層との密着強度が低下することから、界面領域において、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の長さは、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して20〜40%であることが望ましい。
また、表面領域において、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の長さが、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して30%未満である場合は、工具基体の変形に上部層が追従できなくなり、一方、60%を超える場合には、上部層のAl層が脆化し、高温強度が低下することから、表面領域において、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の長さは、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長に対して30〜60%であることが望ましい。
本発明の上部層のAl結晶粒は、(0001)配向のAl結晶粒の度数割合が多い場合に、上部層の高温硬さ、高温強度が維持されることから、本発明では、上部層の(0001)配向Al結晶粒の度数割合を、60%以上と定めた。
上記(0001)配向Al結晶粒の度数割合は、上部層の断面研磨面について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、その測定範囲内に存在するコランダム型六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、前記Al結晶粒の配向性に関わるデータを得る。そして、このデータを基に、工具基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、その傾斜角が0から10度である結晶粒((0001)配向Al結晶粒)が占める度数の、全体に対する割合として求めることができる。
本発明によれば、硬質被覆層が、工具基体の表面に形成された下部層と該下部層上に形成された上部層とを有し、下部層は、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiCNOのうちの2層以上のTi化合物層からなり、その内の最表面層のTiCN層の表層部(層厚方向に500nm迄の深さ領域)における平均酸素含有量は1〜3原子%であり、上部層は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するAl層からなり、該Al層の結晶粒界に沿ってクラックが形成され、界面領域でクラックの形成される長さ割合は、界面領域の全粒界長の10〜30%の割合であり、また、表面領域でクラックの形成される長さ割合は、表面領域の全粒界長の30〜60%の割合であり、上部層のAl粒のΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄原子が偏析し、その粒界長は、界面領域ではΣ3以上の全粒界長の20〜40%であり、また、表面領域ではΣ3以上の全粒界長の30〜60%である。
そのため、本発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用し、また、工具基体の塑性変形が発生しやすい高速断続重切削条件で行った場合であっても、硬質被覆層の剥離、チッピングが発生せず、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する。
本発明被覆工具における、工具基体表面に垂直方向の断面の模式図である。 本発明被覆工具の上部層の界面領域について求めた対応粒界分布グラフの一例を示す。 本発明被覆工具の上部層の界面領域について求めた対応粒界分布グラフの一例を示す。 本発明被覆工具の上部層について求めた傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
本発明の被覆工具の実施形態について、実施例に基づいて具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Mo2C粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを作製した。
ついで、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、以下の手順で本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
(a)まず、表3に示される条件にて、表7に示される目標層厚の下部層としてのTi化合物層を蒸着形成した。
(b)次に、表4に示される条件にて、下部層の最表面層としての酸素含有TiCN層(即ち、該層の表面から500nmまでの深さ領域にのみ、1から3原子%(O/(Ti+C+N+O)×100)の酸素が含有される)を、表8に示される目標層厚で形成した。なお、表4の酸素含有TiCN層種別Dでは、蒸着時間終了前の5〜30分の間にCOガスを添加しなかった。
(c)次に、表5に示される条件にて、下部層の最表面のTiCN層にCOとCOの混合ガスによる酸化処理(下部層表面処理)を行った。
(d)次に、表6に示される初期成長条件にて、Alの初期成長を行い、同じく表6に示される上層第1層および上層第2層の形成条件による蒸着を表9に示される目標層厚となるまで行った。
(e)次に、投射圧0.12MPa,200メッシュのAl粒子でウエットブラスト処理からなる研磨処理を施すことにより、表8に示される本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、前記本発明被覆工具1〜13の製造条件から外れる条件で前記工程(c)、(d)、(e)を行うことにより、表7、表10に示す比較例被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、本発明被覆工具1〜13と比較例被覆工具1〜13については、下部層の最表面層を構成するTiCN層について、このTiCN層の層厚方向に500nmまでの深さ領域における平均酸素含有量(=O/(Ti+C+N+O)×100)を、オージェ電子分光分析器を用い、被覆工具の断面研磨面に下部層Ti炭窒化物層の最表面からTi炭化物層の膜厚相当の距離の範囲に直径10nmの電子線を照射させていき、Ti、C、N、Oのオージェピークの強度を測定し、それらのピーク強度の総和からOのオージェピーク強度の割合を算出して求めた。さらに、上記の方法で、500nmを超える深さ領域における最大酸素含有量(=O/(Ti+C+N+O)×100)を求め、不純物以外の酸素含有量を求めた。最大酸素含有量は500nmを超える深さ領域における酸素含有量の最大値の値である。
500nmまでの深さ領域における平均酸素含有量と500nmを超える深さ領域における最大酸素含有量の値を表8に示した。
また、TiCN層に不可避的に含有する酸素含有量を求めるため、別途炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
反応ガス組成(容量%):TiCl 2〜10%、CHCN 0.5〜1.0%、N 25〜60%、残部H
反応雰囲気温度:780〜930℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で化学蒸着して、酸素を意図的に含有させないTiCN(以下、不可避酸素含有TiCNという)層を3μm以上の層厚で形成した。この不可避酸素含有TiCN層の表面から層厚方向に100nmより深い領域に不可避的に含まれる酸素含有量を、オージェ電子分光分析器を用いて前記深さ領域に含有されるTi、C、N、Oの合計含有量に対する割合から求め、オージェ電子分光分析器の精度の範囲内で求められる不可避酸素含有量を
0.5原子%未満と定めた。
また、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の上部層のAl層について、上部層の界面領域の断面の測定範囲(界面領域縦断面の層厚方向2μm×工具基体に平行な方向30μm)および上部層の表面領域の断面の測定範囲(表面領域縦断面の層厚方向20μm×工具基体に平行な方向30μm)をTEM観察することにより、Al結晶粒の結晶粒界であるかそれとも結晶粒界に沿って形成されたクラックであるかを識別し、同時に、クラックの長さおよび結晶粒界の全長を測定することによって、界面領域および表面領域のクラックの長さ割合を求めた。
表9、表10にその結果を示す。
ついで、硬質被覆層の上部層のAlについて、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いて、Al結晶粒の結晶格子面のそれぞれの法線のなす角度を測定するとともに、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出することにより、上部層のAlの対応粒界分布グラフを求めた。
具体的には、以下の方法で対応粒界分布グラフを測定した。
上記の本発明被覆工具1〜13の上部層の界面領域および表面領域のそれぞれの断面を研磨面とした状態で、前記被覆工具を電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記断面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記断面研磨面の測定範囲内に存在するコランダム型六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射した。より詳細には、電子線後方散乱回折装置を用い、基体表面に平行する方向に50μm、基体表面方向に直交する方向に該Al層の層厚を上限とする領域で0.1μm/stepの間隔で電子線を照射し、電子線が照射された各測定点において前記結晶粒を構成する結晶格子の各面の法線の方位を測定した。この測定結果から、隣接する測定点における結晶格子相互の結晶方位関係を算出した。この算出結果から、隣接する相互の測定点間において、結晶方位角度差が5度以上である測定点間に結晶粒界が存在するとみなし、この結晶粒界に囲まれた測定点の集合を1つの結晶粒と特定し、全体の結晶粒を特定した。それと共に、結晶格子界面を構成する測定点間の結晶方位関係が、前述のH.Grimmer等の文献に記載されている、対応粒界を構成する結晶粒間のなす角度の値に対して誤差Δθ=5°の範囲内となった場合に、その測定点間に対応粒界が存在するとみなし、全粒界長に対するΣN+1対応粒界の割合を求めた。測定結果をΣ3の分布割合(%)として表8に示した。Σ31以上の分布割合の算出方法は、得られた測定結果から、Σ3、Σ7、Σ11、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、Σ29のそれぞれの対応粒界長を算出し、全対応粒界長からこれらの対応粒界長の和を差し引いた値を用いてΣ31以上の分布割合(%)とした。
表9に、測定結果を示す。
次に、比較被覆工具1〜13の上部層のAl層の界面領域および表面領域についても、本発明被覆工具1〜13の場合と同様な方法により、対応粒界分布グラフを求めた。
表10に、測定結果を示す。
図2に、この測定により得られた本発明被覆工具1の界面領域について求めた対応粒界分布グラフの一例を示し、また、図3に、この測定により得られた本発明被覆工具1の表面領域について求めた対応粒界分布グラフの一例を示す。
次に、本発明被覆工具1〜13の上部層を構成するAl結晶粒について、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いて、構成原子共有格子点形態を測定した断面研磨面の測定範囲内で、エネルギー分散型X線分析法による元素マップ分析を行うことで、Al結晶粒界中硫黄の偏析について測定を行った。測定した元素はAl,O,Cl,Sであった。
硫黄がAl結晶粒の粒界に偏析しているという状態は、元素マップのデータに線分析を行ったときに、Al結晶粒内の硫黄原子による強度から測定時のバックグラウンド値を差し引いた値の平均値に対して、Al結晶粒の粒界上での硫黄原子による強度から測定時のバックグラウンド値を差し引いた値が3倍以上であるということで定義する。Σ31以上である構成原子共有格子点形態のAl結晶粒の粒界長のなかで、硫黄が偏析しているΣ31以上である構成原子共有格子点形態の粒界長を、界面領域および表面領域でそれぞれ電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用いて算出したあと、Σ3以上である構成原子共有格子点形態の全粒界長で除すことで、界面領域および表面領域におけるその割合が求められる。
その値を表9に示す。
次に、比較被覆工具1〜13の上部層のAl層についても、本発明被覆工具1〜13の場合と同様な方法により、Al結晶粒の粒界のΣ31以上である構成原子共有格子点形態の粒界長のなかで、硫黄が偏析しているΣ31以上である構成原子共有格子点形態の粒界長の、Σ3以上である構成原子共有格子点形態の全粒界長に対する割合を、界面領域および表面領域についてそれぞれ求めた。
その値を表10に示した。
Σ31以上である構成原子共有格子点形態の粒界への硫黄の偏析が20%未満である場合は、所定のクラックが形成されないため、耐剥離性効果が低下し、一方、硫黄の偏析が50%を超える場合には、上部層自体が脆化する。
また、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の上部層のAl層について、上部層の縦断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子線後方散乱回折装置を用いて、工具基体表面と水平方向に長さ100μm、工具基体表面と垂直な方向の断面に沿って膜厚以下の距離の測定範囲内について0.01μm/stepの間隔で、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分するとともに、各区分内の存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した。
そして、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフの度数全体に占める度数割合を求めた。
表9、表10にその結果を示す。
図4に、この測定により得られた本発明被覆工具1について求めた傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
なお、本発明被覆工具1〜13、比較例被覆工具1〜13の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。










つぎに、本発明被覆工具1〜13、比較例被覆工具1〜13の各種の被覆工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り棒材、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.4mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式高速断続高送り切削試験(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、200m/min、1.5mm,0.3mm/rev)、
被削材:JIS・SNCM439の丸棒、
切削速度:100m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:1.1mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)でのニッケルクロムモリブデン合金鋼の乾式高速高送り切削試験(通常の切削速度、送り量は、それぞれ、250m/min、0.3mm/rev)、
被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝入り棒材、
切削速度:450m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.4mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式高速断続高送り、高切り込み切削試験(通常の切削速度、切込量、送り量はそれぞれ250m/min、1.5mm、0.3mm/rev)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
表11にこの測定結果を示した。

表11に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、その上部層が界面領域と表面領域とからなり、それぞれの領域において所定のクラック長さ割合、硫黄の偏析する所定の粒界長さ割合を有することから、すぐれた耐剥離性、耐チッピング性を備えるため、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を示した。
これに対して、比較例被覆工具1〜13では、高速断続重切削加工においては、硬質被覆層の剥離発生、チッピング発生により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、高速断続重切削という厳しい切削条件下でも、硬質被覆層の剥離、チッピングが発生することはなく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (4)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に下部層と上部層からなる硬質被覆層が化学蒸着形成された表面被覆切削工具において、
    (a)前記下部層は、3〜20μmの合計平均層厚を有し、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiCNOのうちの2層以上からなり、その内の少なくとも1層はTiCN層で構成したTi化合物層からなり、
    (b)前記上部層は、2〜20μmの平均層厚を有し、α型の結晶構造を有するAl層からなり、
    (c)前記上部層のAl結晶粒は、前記上部層の少なくとも切れ刃稜線部を含む逃げ面およびすくい面に研磨処理を施すことにより、その結晶粒界に沿ったクラックが形成され、前記下部層の最表面層と前記上部層の界面から、前記上部層の層厚方向へ1μmまでの界面領域においては、前記クラックの長さは、前記界面領域における測定範囲内の全粒界長の10〜30%の割合であり、また、前記界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、前記クラックの長さは、前記表面領域における測定範囲内の全粒界長の30〜60%の割合であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記下部層(a)の最表面層が、少なくとも500nm以上の層厚を有するTiCN層からなり、不可避不純物としての酸素を除けば、前記TiCN層と前記上部層の界面から500nmまでの深さ領域にのみ酸素が含有されており、前記深さ領域に含有される平均酸素含有量は、前記深さ領域に含有されるTi,C,N,Oの合計含有量の1〜3原子%であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記上部層のAl結晶粒について、断面研磨面に対して高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法による観察および元素分析を行った場合に、コランダム型六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が前記断面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、結晶格子界面を構成する構成原子のそれぞれが前記結晶格子相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合に、それぞれの分布割合を算出し、全対応粒界長に占める各構成原子共有格子点からなる対応粒界長の割合が示された対応粒界分布グラフにおいて、前記Σ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界に硫黄が偏析しており、前記下部層の最表面層と前記上部層の界面から、前記上部層の層厚方向へ1μmまでの界面領域においては、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の粒界長は、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長の20〜40%を占め、また、前記界面領域よりも上部層の表面側である表面領域においては、硫黄が偏析するΣ31以上である構成原子共有格子点形態である粒界の粒界長は、Σ3以上である構成原子共有格子点形態である全粒界長の30〜60%を占めることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記上部層のAl結晶粒について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちの0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分するとともに、各区分内の存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布で表した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の表面被覆切削工具。
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