JP2018144139A - 硬質被覆層が優れた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
硬質被覆層が優れた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高速高送り加工でも、優れた靭性、耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
【解決手段】硬質被覆層が(a)組成は(Ti1−xAlx)(CyN1−y)0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(b)上部層は、基体表面の法線に対する{100}面の法線がなす傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の傾斜角を0.25度のピッチ区分で度数集計し、2〜12度に最高ピークが存在し、2〜12度の合計度数が度数全体の45%以上で、下部層は、基体表面の法線に対する{111}面の法線がなす傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の傾斜角を0.25度のピッチ区分内で度数集計し、2〜12度に最高ピークが存在し、2〜12度の度数合計が度数全体の45%以上で、(c)上部層と下部層の平均膜厚が、0.5〜10μmであり、(d)すくい面において下部層が露出している、表面被覆切削工具。
【選択図】図5
【解決手段】硬質被覆層が(a)組成は(Ti1−xAlx)(CyN1−y)0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(b)上部層は、基体表面の法線に対する{100}面の法線がなす傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の傾斜角を0.25度のピッチ区分で度数集計し、2〜12度に最高ピークが存在し、2〜12度の合計度数が度数全体の45%以上で、下部層は、基体表面の法線に対する{111}面の法線がなす傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の傾斜角を0.25度のピッチ区分内で度数集計し、2〜12度に最高ピークが存在し、2〜12度の度数合計が度数全体の45%以上で、(c)上部層と下部層の平均膜厚が、0.5〜10μmであり、(d)すくい面において下部層が露出している、表面被覆切削工具。
【選択図】図5
Description
この発明は、炭素鋼、合金鋼や鋳鉄等を、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する高速高送り条件で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐チッピング性を備え、長期の使用にわって優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
切削工具の切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された基体(以下、これらを総称して基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体表面の組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)の複合炭窒化物層について、EBSDにより該層の縦断面を解析したとき、(1){111}面の法線がなす傾斜角のうち2〜12度の範囲にあるものの度数分布が傾斜角度数分布全体の45%以上、(2)基体界面から前記複合炭窒化物層へ0.1〜0.5μmの範囲をFE−SEMの観察により、構成元素であるTi、Al、CおよびNの構成原子共有格子点の分布を算出して、該構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在するときをΣN+1で表すと、Σ5の分布割合が30%以上かつ該Σ5に分布のピークがある、被覆工具が記載されている。
また、特許文献2には、TiNからなる第一単位層とTi1−xAlxN(0.6≦x≦0.9)からなる第二単位層とが交互に積層され、該第二単位層は(111)面に配向している被覆工具が記載されている。
さらに、特許文献3には、工具基体表面にTiとAlの周期的な組成変化が存在する上部層と周期的な組成変化が存在しない下部層を含み、前記上部層は、組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)で表したとき、0.70≦x≦0.95であってI(200)/I(111)>10であり、前記下部層は組成式:(Ti1−uAlu)(CvN1−v)で表したとき、0≦u<0.70であって0≦v≦0.005、I(200)/I(111)<3であり工具基体表面から上部層に向かってuが順次増加する、被覆工具が記載されている。
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速高送り化、高効率化の傾向にあって加工時の負荷は高まっており、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわって優れた耐摩耗性が求められている。
しかし、前記特許文献1に記載された被覆工具では、{111}面の法線がなす傾斜角のうち2〜12度の範囲にあるものの度数分布が傾斜角度数分布全体の45%以上とすることにより、耐チッピング性の向上を図っているが、高速高送り加工では、耐チッピング性が不十分となる虞がある。
しかし、前記特許文献1に記載された被覆工具では、{111}面の法線がなす傾斜角のうち2〜12度の範囲にあるものの度数分布が傾斜角度数分布全体の45%以上とすることにより、耐チッピング性の向上を図っているが、高速高送り加工では、耐チッピング性が不十分となる虞がある。
また、特許文献2に記載された被覆工具は、合金鋼の乾式ミーリング加工において優れた耐摩耗性を示すものの、高速高送りのような厳しい乾式のミーリング加工では耐チッピング性が十分とはいえず工具寿命が短くなる。
さらに、特許文献3に記載された被覆工具は、下部層のAl原子%が工具基体表面から上部層に向かって順次増加するため被覆層の耐剥離性に優れるものの、上部層が(100)配向のために高速高送り加工では、耐摩耗性が不十分となる可能性が否定できない。
そこで、本発明は、炭素鋼、鋳鉄、合金鋼等の高速高送り等に供した場合であっても、優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくともTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「(Ti1−xAlx)(CyN1−y)」で示すことがある)を含む硬質被覆層を形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
まず、本発明者らは、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)からなる硬質被覆層において、結晶配向を変化させたときの耐チッピング性と耐摩耗性について検討したところ、{100}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)は耐チッピング性に優れ、他方、{111}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層は耐摩耗性に優れていることを見出した。
一方、被覆工具において切れ刃稜線部(刃先稜線部)を含むすくい面には耐チッピングが求められ、逃げ面には耐摩耗性が求められている。
そこで、すくい面には{100}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設け、逃げ面には{111}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設けることにより、高速高送り加工であっても耐チッピング性と耐摩耗性を両立することができるとの知見を得た。
一方、被覆工具において切れ刃稜線部(刃先稜線部)を含むすくい面には耐チッピングが求められ、逃げ面には耐摩耗性が求められている。
そこで、すくい面には{100}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設け、逃げ面には{111}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設けることにより、高速高送り加工であっても耐チッピング性と耐摩耗性を両立することができるとの知見を得た。
また、前記知見の実現のためには、CVD法により{100}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設け、その上に{111}面の法線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を設け、すくい面のみにブラスト処理を実施して、{100}面の放線方向に配向の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を露出させればよいことを見出した。
さらに、被覆工具表面の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層をブラスト加工により平滑化すると、耐溶着性が向上することも併せて知見した。
本発明は、前記各知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物層からなり、その平均組成を、
組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、Al含有割合xおよびC含有割合y(但し、x、yは何れも原子比)は、それぞれ、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005を満足し、
(b)前記複合炭窒化物層は、上部層と下部層からなり、
前記上部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記下部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
(c)前記上部層と前記下部層の平均膜厚が、ともに、0.5〜10μmであり、
(d)すくい面において下部層が露出していること、
を特徴とする表面被覆切削工具。
(2)工具厚さ方向に対して垂直方向の前記下部層の露出幅が0.01mmを超え、0.5mm未満であることを特徴とする(1)に記載の表面切削工具。
(3)前記上部層の平均膜厚が前記下部層の平均膜厚よりも薄いことを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記上部層および前記下部層の結晶粒径が100〜3000nmで、結晶粒径アスペクト比が2〜10であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記下部層が露出している部分の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
である。
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物層からなり、その平均組成を、
組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、Al含有割合xおよびC含有割合y(但し、x、yは何れも原子比)は、それぞれ、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005を満足し、
(b)前記複合炭窒化物層は、上部層と下部層からなり、
前記上部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記下部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
(c)前記上部層と前記下部層の平均膜厚が、ともに、0.5〜10μmであり、
(d)すくい面において下部層が露出していること、
を特徴とする表面被覆切削工具。
(2)工具厚さ方向に対して垂直方向の前記下部層の露出幅が0.01mmを超え、0.5mm未満であることを特徴とする(1)に記載の表面切削工具。
(3)前記上部層の平均膜厚が前記下部層の平均膜厚よりも薄いことを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記上部層および前記下部層の結晶粒径が100〜3000nmで、結晶粒径アスペクト比が2〜10であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記下部層が露出している部分の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
である。
本発明は、耐チッピング性と耐摩耗性を高次元で両立させることができ、高速高送り加工においても工具寿命を延ばすことができるという顕著な効果を奏するものである。
次に、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より詳細に説明する。
TiとAlの複合炭窒化物層((Ti1−xAlx)(CyN1−y))の平均組成
前記複合炭窒化物層は、組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合x、および、CのCとNの合量に占める平均含有割合y(但し、x、yはいずれも原子比)は、それぞれ、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005を満足するように組成を制御する。
その理由は、Alの平均含有割合xが0.70未満であると、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層は耐酸化性に劣り、合金鋼等の高速高送りに供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合xが0.95より大きくなると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。したがって、Alの平均含有割合xは、0.70≦x≦0.95と定めた。
また、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層に含まれるC成分の平均含有割合yは、0≦y<0.005の範囲の微量であるとき、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果として(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層の耐チッピング性、耐欠損性が向上する。一方、C成分の平均含有割合yが0≦y<0.005の範囲を逸脱すると、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層の靭性が低下するため耐チッピング性、耐欠損性が低下し好ましくない。したがって、Cの平均含有割合yは、0≦y<0.005と定めた。
なお、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外しており、不可避的なCの含有割合を差し引いた値をyとして求めた。
前記複合炭窒化物層は、組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合x、および、CのCとNの合量に占める平均含有割合y(但し、x、yはいずれも原子比)は、それぞれ、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005を満足するように組成を制御する。
その理由は、Alの平均含有割合xが0.70未満であると、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層は耐酸化性に劣り、合金鋼等の高速高送りに供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合xが0.95より大きくなると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。したがって、Alの平均含有割合xは、0.70≦x≦0.95と定めた。
また、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層に含まれるC成分の平均含有割合yは、0≦y<0.005の範囲の微量であるとき、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果として(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層の耐チッピング性、耐欠損性が向上する。一方、C成分の平均含有割合yが0≦y<0.005の範囲を逸脱すると、(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層の靭性が低下するため耐チッピング性、耐欠損性が低下し好ましくない。したがって、Cの平均含有割合yは、0≦y<0.005と定めた。
なお、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外しており、不可避的なCの含有割合を差し引いた値をyとして求めた。
TiとAlの複合炭窒化物層((Ti1−xAlx)(CyN1−y))の下部層
前記複合炭窒化物層((Ti1−xAlx)(CyN1−y))の下部層について、電子線後方散乱回折装置(以下、EBSDという)を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析し、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角(図1−a、図1−b)参照)を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示すならば、前記TiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、立方晶構造を維持したままで高硬度を有し、しかも、前記傾斜角度数分布形態によって靭性を向上させる。
なお、EBSDを用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に、基体表面の法線に対する傾斜角が12度より大きい結晶面は{100}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{100}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであることから、測定によって度数を求める傾斜角区分の範囲を0〜12度と定めた。
前記複合炭窒化物層((Ti1−xAlx)(CyN1−y))の下部層について、電子線後方散乱回折装置(以下、EBSDという)を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析し、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角(図1−a、図1−b)参照)を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示すならば、前記TiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、立方晶構造を維持したままで高硬度を有し、しかも、前記傾斜角度数分布形態によって靭性を向上させる。
なお、EBSDを用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に、基体表面の法線に対する傾斜角が12度より大きい結晶面は{100}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{100}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであることから、測定によって度数を求める傾斜角区分の範囲を0〜12度と定めた。
ここで、前記下部層の平均層厚は、0.5μm未満では、長期の使用にわたっての耐チッピング性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が10μmを超えると、高熱発生を伴う高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚は0.5〜10μmと定めた。
TiとAlの複合炭窒化物層((Ti1−xAlx)(CyN1−y))の上部層
上部層についても、EBSDを用いて前記下部層と同様の方法と処理によって、{111}面の法線がなす傾斜角(図2−a、2−b参照)を測定し、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示すならば、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、高硬度を有して耐チッピング性に優れ、しかも、前記傾斜角度数分布形態によって硬質被覆層と基体との密着性が飛躍的に向上する。
なお、EBSDを用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に、基体表面の法線に対する傾斜角が12度より大きい結晶面は{111}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{111}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであることから、測定によって度数を求める傾斜角区分の範囲を0〜12度と定めた。
上部層についても、EBSDを用いて前記下部層と同様の方法と処理によって、{111}面の法線がなす傾斜角(図2−a、2−b参照)を測定し、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示すならば、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、高硬度を有して耐チッピング性に優れ、しかも、前記傾斜角度数分布形態によって硬質被覆層と基体との密着性が飛躍的に向上する。
なお、EBSDを用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に、基体表面の法線に対する傾斜角が12度より大きい結晶面は{111}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{111}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであることから、測定によって度数を求める傾斜角区分の範囲を0〜12度と定めた。
ここで、前記上部層の平均層厚は、0.5μm未満では、長期の使用にわたっての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が10μmを超えると、高熱発生を伴う高速高送り加工で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚は0.5〜10μmと定めた。
なお、上部層の平均層厚は下部層の平均層厚よりも薄いが好ましい。その理由は、下部層の平均層厚の方が厚いと切れ刃稜線部耐チッピング性がより向上するためである。
なお、上部層の平均層厚は下部層の平均層厚よりも薄いが好ましい。その理由は、下部層の平均層厚の方が厚いと切れ刃稜線部耐チッピング性がより向上するためである。
すくい面における下部層の露出
本発明では、すくい面、すなわち、切れ刃稜線部(すくい面と逃げ面をそれぞれ直線で近似した場合に、当該直線が交差する領域)からすくい面方向の全面の上部層が除去され、下部層が露出している。すくい面において露出している下部層、図5に示すようにlaの長さで露出をしており、露出している下部層の表面粗さ(Ra)は、0.5μm未満であることが好ましい。その理由は、0.5μm未満であると耐溶着性がより一層向上するためである。
表面粗さはJIS B06012001に準拠し、カットオフ値:0.08mm、基準長さ:0.8mm、走査速度:0.1mm/秒にてレーザー式表面粗さ測定器を用いて測定した値とする。
本発明では、すくい面、すなわち、切れ刃稜線部(すくい面と逃げ面をそれぞれ直線で近似した場合に、当該直線が交差する領域)からすくい面方向の全面の上部層が除去され、下部層が露出している。すくい面において露出している下部層、図5に示すようにlaの長さで露出をしており、露出している下部層の表面粗さ(Ra)は、0.5μm未満であることが好ましい。その理由は、0.5μm未満であると耐溶着性がより一層向上するためである。
表面粗さはJIS B06012001に準拠し、カットオフ値:0.08mm、基準長さ:0.8mm、走査速度:0.1mm/秒にてレーザー式表面粗さ測定器を用いて測定した値とする。
上部層および下部層の結晶粒径とアスペクト比
上部層および下部層の結晶粒径は、100〜3000nmであることが好ましく、結晶粒径アスペクト比は2〜10が好ましい。その理由は、結晶粒径が100nm未満であると粒界滑りを抑制する効果が十分ではないときがあり、3000nmを超えると層内のゆがみが大きくなり硬さが低下することがあるためである。
また、結晶粒径アスペクト比は、2未満であると十分な柱状組織となっていないため、アスペクト比の小さな等軸結晶の脱落を招くことがあり、十分な耐摩耗性を発揮することが出来ないことがある。また、10を超えると結晶粒そのものの強度を保つことができず、耐チッピング性が低下する虞があるため好ましくない。
ここで、結晶粒径とアスペクト比は、上部層および下部層の厚さ方向の断面(縦断面)をSEMにて幅100μm、高さは各層全体を含む範囲で観察した際に、各結晶粒について粒子径の最も長い長さを長軸とし前記長軸と直行する方向の最大長さを結晶粒径とし、前記長軸を結晶粒径で除した値の観察範囲での平均値とする。
上部層および下部層の結晶粒径は、100〜3000nmであることが好ましく、結晶粒径アスペクト比は2〜10が好ましい。その理由は、結晶粒径が100nm未満であると粒界滑りを抑制する効果が十分ではないときがあり、3000nmを超えると層内のゆがみが大きくなり硬さが低下することがあるためである。
また、結晶粒径アスペクト比は、2未満であると十分な柱状組織となっていないため、アスペクト比の小さな等軸結晶の脱落を招くことがあり、十分な耐摩耗性を発揮することが出来ないことがある。また、10を超えると結晶粒そのものの強度を保つことができず、耐チッピング性が低下する虞があるため好ましくない。
ここで、結晶粒径とアスペクト比は、上部層および下部層の厚さ方向の断面(縦断面)をSEMにて幅100μm、高さは各層全体を含む範囲で観察した際に、各結晶粒について粒子径の最も長い長さを長軸とし前記長軸と直行する方向の最大長さを結晶粒径とし、前記長軸を結晶粒径で除した値の観察範囲での平均値とする。
なお、下部層の下に下部層と基体界面との接着を向上させるために、必要に応じて公知の例えば、Alの含有率を基体側から表面側に漸次変化させたAlTiCN層や、公知のTiN層、TiCN層等の下地層を設けてもよい。
上部層、下部層およびすくい面の露出部の製造方法
本発明の製造方法は、概略次のとおりである。
1.通常の製法により超硬合金基体を製造する。
2.次に、この超硬合金基体上に、必要に応じて下地層を成膜する。
3.続いて、通常のCVD装置によって、2段階の成膜を行う。その際、NH3/(TiCl4+AlCl3)を変化させることにより配向性に差異を生じさせる。
3−1.第1段階の成膜(下部層の成膜)
例えば、反応ガス組成(容量%)
TiCl4 0.1〜0.8%、AlCl3 0.5〜1.5%、NH3 0.8〜4.5%、C2H4 0〜1%、N2 0〜10.0%、Ar 0〜10%、残りH2
反応雰囲気温度: 700〜900 ℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5 kPa、
という条件下で蒸着することによって、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(但し、x、yは何れも原子比)を満足し、また、基体表面の法線方向に対して{100}面の法線がなす傾斜角を測定した傾斜角度数分布において、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する傾斜角度数分布の割合が45%以上である本発明の立方晶構造の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層からなる硬質被覆層(下部層)を形成することができる。
3−2.第2段階の成膜(上部層の成膜)
例えば、反応ガス組成(容量%)
TiCl4 0.1〜0.8%、AlCl3 0.5〜1.5%、NH3 0.8〜4.5%、C2H4 0〜1%、N2 0〜10.0%、Ar 0〜10%、残りH2
反応雰囲気温度: 700〜900 ℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5 kPa、
という条件下で蒸着することによって、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(但し、x、yは何れも原子比)を満足し、また、基体表面の法線方向に対して{111}面の法線がなす傾斜角を測定した傾斜角度数分布において、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する傾斜角度数分布の割合が45%以上である本発明の立方晶構造の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層からなる硬質被覆層(上部層)を形成することができる。
4.すくい面の下部層の露出
切れ刃稜線部およびすくい面の上部層の除去は、種々の方法があるが、例えば、Al2O3を用いたウエットブラストによる方法が望ましい。
本発明の製造方法は、概略次のとおりである。
1.通常の製法により超硬合金基体を製造する。
2.次に、この超硬合金基体上に、必要に応じて下地層を成膜する。
3.続いて、通常のCVD装置によって、2段階の成膜を行う。その際、NH3/(TiCl4+AlCl3)を変化させることにより配向性に差異を生じさせる。
3−1.第1段階の成膜(下部層の成膜)
例えば、反応ガス組成(容量%)
TiCl4 0.1〜0.8%、AlCl3 0.5〜1.5%、NH3 0.8〜4.5%、C2H4 0〜1%、N2 0〜10.0%、Ar 0〜10%、残りH2
反応雰囲気温度: 700〜900 ℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5 kPa、
という条件下で蒸着することによって、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(但し、x、yは何れも原子比)を満足し、また、基体表面の法線方向に対して{100}面の法線がなす傾斜角を測定した傾斜角度数分布において、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する傾斜角度数分布の割合が45%以上である本発明の立方晶構造の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層からなる硬質被覆層(下部層)を形成することができる。
3−2.第2段階の成膜(上部層の成膜)
例えば、反応ガス組成(容量%)
TiCl4 0.1〜0.8%、AlCl3 0.5〜1.5%、NH3 0.8〜4.5%、C2H4 0〜1%、N2 0〜10.0%、Ar 0〜10%、残りH2
反応雰囲気温度: 700〜900 ℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5 kPa、
という条件下で蒸着することによって、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005(但し、x、yは何れも原子比)を満足し、また、基体表面の法線方向に対して{111}面の法線がなす傾斜角を測定した傾斜角度数分布において、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する傾斜角度数分布の割合が45%以上である本発明の立方晶構造の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層からなる硬質被覆層(上部層)を形成することができる。
4.すくい面の下部層の露出
切れ刃稜線部およびすくい面の上部層の除去は、種々の方法があるが、例えば、Al2O3を用いたウエットブラストによる方法が望ましい。
次に、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
次に、これらの工具基体A〜Cの表面に、通常のCVD装置を用い、まず、表2に示される条件で、下部層である所定の組成を有する(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を目標層厚になるまで蒸着形成した後、同じく表2に示される条件で上部層である所定の組成を有する(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を形成し、その後、表5で示された条件にてAl2O3を用いたウエットブラスト法によりすくい面部の上部層を除去して、表6に示される本発明被覆工具1〜10を製造した。
なお、本発明被覆工具8〜10については、表4で示される形成条件で表6に示される下地層を形成した。
なお、本発明被覆工具8〜10については、表4で示される形成条件で表6に示される下地層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体A〜Cの表面に、通常のCVD装置を用い、表3に示される条件で、比較例の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層を目標層厚で蒸着形成し、その後、表5で示された条件にてAl2O3を用いたウエットブラスト法によりすくい面部の上部層を除去して、表7に示される比較被覆工具1〜10を製造した。なお、表7において、「切れ刃稜線部の幅(mm)」の欄が「−」のものは、逃げ面稜線部において下部層の露出がないものを示す。
また、本発明被覆工具8〜10については、表4で示される形成条件で表7に示される下地層を形成した。
また、本発明被覆工具8〜10については、表4で示される形成条件で表7に示される下地層を形成した。
本発明被覆工具1〜10、比較例被覆工具1〜10の各構成層の断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表6および表7に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
次いで、前記の本発明被覆工具1〜10の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合x、平均C含有割合y、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)、および、基体表面の法線方向に対する{111}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(β)を測定した。
次いで、前記の本発明被覆工具1〜10の硬質被覆層について、硬質被覆層の平均Al含有割合x、平均C含有割合y、基体表面の法線方向に対する{100}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)、および、基体表面の法線方向に対する{111}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(β)を測定した。
なお、前記それぞれの具体的な測定法は次のとおりである。
硬質被覆層の平均Al含有割合x、平均C含有割合yについては、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary‐Ion‐Mass‐Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均Al含有割合x、平均C含有割合yは深さ方向の平均値を示す。
硬質被覆層の平均Al含有割合x、平均C含有割合yについては、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary‐Ion‐Mass‐Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均Al含有割合x、平均C含有割合yは深さ方向の平均値を示す。
また、硬質被覆層の傾斜角度数分布については、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、工具基体と水平方向に長さ100μmにわたり硬質被覆層について0.1μm/stepの間隔で、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対して、前記結晶粒の結晶面である{100}面と{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより、2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)および(β)を求めた。
なお、図3、4に、本発明被覆工具について測定した{100}面と{111}面の傾斜角度数分布グラフの一例をそれぞれ示す。
なお、図3、4に、本発明被覆工具について測定した{100}面と{111}面の傾斜角度数分布グラフの一例をそれぞれ示す。
次いで、比較例被覆工具1〜10についても、本発明被覆工具1〜10と同様にして、硬質被覆層の平均Al含有割合x、平均C含有割合y、基体表面の法線方向に対する{100}面と{111}面の法線がなす傾斜角についての傾斜角度数分布における2〜12度の範囲内に存在する度数の割合(α)と(β)を測定した。
表6、表7にその結果を示す。
表6、表7にその結果を示す。
次に、前記の各種の被覆工具をいずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1〜10、比較例被覆工具1〜10について、以下に示す、合金鋼の高速高送り切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。寿命基準は逃げ面摩耗幅が0.20mmとした。
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 943 min−1、
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
一刃送り量: 0.5 mm/刃、
切削時間: 5分
表8に、前記切削試験の結果を示す。また、比較被覆工具に関しては、切削時間5分以下で寿命となったものは、寿命に達した時間を記載した。
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 943 min−1、
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
一刃送り量: 0.5 mm/刃、
切削時間: 5分
表8に、前記切削試験の結果を示す。また、比較被覆工具に関しては、切削時間5分以下で寿命となったものは、寿命に達した時間を記載した。
表6〜8に示される結果から、本発明被覆工具1〜10は、立方晶構造の(Ti1−xAlx)(CyN1−y)層が成膜され、上部層と下部層からなり、
前記上部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記下部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記上部層と前記下部層の逃げ面全体の平均膜厚が、ともに、0.5〜10μmであり、
さらに、すくい面において下部層が露出しているから、合金鋼の高速高送り切削加工において優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
これに対して、本発明の発明特定事項を一つでも満足しない比較例被覆工具1〜10については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前記上部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記下部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記上部層と前記下部層の逃げ面全体の平均膜厚が、ともに、0.5〜10μmであり、
さらに、すくい面において下部層が露出しているから、合金鋼の高速高送り切削加工において優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
これに対して、本発明の発明特定事項を一つでも満足しない比較例被覆工具1〜10については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、合金鋼の高速高送り切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (5)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物層からなり、その平均組成を、
組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、Al含有割合xおよびC含有割合y(但し、x、yは何れも原子比)は、それぞれ、0.70≦x≦0.95、0≦y<0.005を満足し、
(b)前記複合炭窒化物層は、上部層と下部層からなり、
前記上部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
前記下部層は、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、前記TiとAlの複合炭窒化物層の縦断面方向から解析し、前記基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記傾斜角のうち、前記法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、2〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記2〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
(c)前記上部層と前記下部層の平均膜厚が、ともに、0.5〜10μmであり、
(d)すくい面において下部層が露出していること、
を特徴とする表面被覆切削工具。 - 工具厚さ方向に対して垂直方向の前記下部層の露出幅が0.01mmを超え、0.5mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の表面切削工具。
- 前記上部層の平均膜厚が前記下部層の平均膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記上部層および前記下部層の結晶粒径が100〜3000nmで、結晶粒径アスペクト比が2〜10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
- 前記下部層が露出している部分の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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WO2021024737A1 (ja) * | 2019-08-06 | 2021-02-11 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削工具 |
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-
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