JP2017013067A - フッ素の溶出抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フッ素汚染土壌に、セメント若しくはセメント系固化材を添加すると同時に、または、セメント若しくはセメント系固化材を添加して混合した後に、酸性塩化物、石膏を除く酸性無機硫酸塩、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上の酸性塩を添加して混合するフッ素の溶出抑制方法。
【選択図】なし
Description
かかる状況を受けて、フッ素汚染土壌の処理方法がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、可溶性フッ素に汚染された土壌を、リン酸、セメント系固化材、および石灰系固化材から選ばれた少なくとも1種の含カルシウム材と接触処理する、フッ素イオンの固定化方法等が提案されている。また、特許文献2には、高炉セメント、カルシウムアルミネート、および石膏を含有するふっ素不溶化材が提案されている。
上記の特許文献1によれば、セメント系固化材にリン酸を組合せるとフッ素の溶出抑制効果は向上するが、該組合せでは添加量が多くなるという問題がある(特許文献1の実施例と、後掲の表3中の比較例5を参照)。そして、セメント系固化材の添加量が多くなると、改良土の一軸圧縮強さが高くなり過ぎて、再掘削等の再利用が困難になる場合がある。
[1]フッ素汚染土壌に、セメント若しくはセメント系固化材を添加すると同時に、または、セメント若しくはセメント系固化材を添加して混合した後に、酸性塩化物、石膏を除く酸性硫酸塩、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上の酸性塩を添加して混合することを特徴とする、フッ素の溶出抑制方法。
[3]前記細粒土は、Al2O3の含有率が15質量%以上、または、アロフェンおよび非晶質無機成分の合計の含有率が15質量%以上の、少なくともいずれかの条件を満たす細粒土である、前記[2]に記載のフッ素の溶出抑制方法。
[4]前記酸性塩が、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
[5]材齢7日における改良土の一軸圧縮強さが1500kN/m2以下である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
[6]前記セメントまたはセメント系固化材に含まれるセメントクリンカーの水硬率が2.2以上である、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
以下、本発明について構成要素に分けて説明する。
本発明の対象土壌は、環境省庁告示第18号(平成15年3月)に準拠して測定した場合に、溶出検液中のフッ素の溶出濃度が0.8〜2.0mg/Lである、比較的汚染度が低いフッ素汚染土壌が好適である。
上記の土壌としては、例えば、粗粒土、細粒土、および細粒土を含む土壌等が挙げられるが、特に、細粒土、および細粒土を含む土壌が好適である。なお、前記細粒土は、非特許文献1の55頁の図3に記載されている工学的分類体系により定義された土質材料であり、例えば、粘性土、有機質土、および火山灰質粘土等が挙げられる。また、細粒土に含まれる鉱物には、ハロイサイト、アロフェン、イモゴライト、ギブサイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、オパールシリカ、クロライト、鉄とアルミニウムの和水酸化物、腐植とアルミニウムおよび/または鉄の複合体が挙げられる。
また、本発明でいう細粒土を含む土壌とは、細粒土を50質量%以上含むものである。
本発明においてセメントとは、セメントおよびセメント系固化材に含まれるセメントである。該セメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント等が挙げられる。また、該セメント系固化材は、例えば、前記セメントに石膏をSO3換算で10質量%以下添加して混合したものや、早強ポルトランドセメント30〜60質量%と高炉スラグ粉末70〜40質量%からなる混合物100質量部に対し、石膏をSO3換算で20質量部以下含むもの等が挙げられる。
前記石膏は、具体的には、無水石膏、半水石膏、リン酸石膏、または二水石膏等が挙げられる。このうち、無水石膏は、天然無水石膏、フッ酸の製造時に副生するフッ酸無水石膏等が挙げられ、二水石膏は、天然二水石膏、排脱二水石膏等が挙げられる。
また、前記セメントやセメント系固化材に含まれるセメントクリンカーの水硬率(HM)は2.2以上が好ましい。該値が2.2以上で、後掲の表3の実施例7に示すように、フッ素の溶出抑制効果はより高くなる。
本発明において用いる酸性塩は、酸性塩化物、石膏を除く酸性硫酸塩、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上である。該酸性塩は、例えば、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。なお、本発明において「酸性塩」とは、水溶液のpHが7.0未満を示す塩をいう。
前記酸性塩は、添加量の増加に伴い改良土のpHを低下させる効果が高い。そして、改良土のpHが低いほどフッ素の溶出抑制効果は高いため、これらの酸性塩を用いて改良土のpHを10.5以下にすると、フッ素の溶出抑制効果はさらに向上する。なお、改良土のpHは10.2以下が好ましく、pH9.8以下がより好ましい。
酸性塩の添加量は、フッ素の溶出抑制、改良土の一軸圧縮強さやコスト等の観点から、セメントまたはセメント系固化材100質量部に対して、5〜25質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。該値が5質量部未満ではpHの低下は期待できず、また、フッ素の溶出抑制効果を向上させることも困難になるおそれがあり、25質量部を越えると、改良土の一軸圧縮強さが著しく低下する傾向があるうえ、コストも高くなる。
また、前記(1)および(2)の方法において、フッ素汚染土壌にセメントまたはセメント系固化材を添加する方法として、フッ素汚染土壌にセメント等を粉体のまま添加し混合するドライ添加方法や、セメント等に水を加えてスラリーとした後に、該スラリーをフッ素汚染土壌に添加し混合するスラリー添加方法が挙げられる。ここで、セメント等のスラリーにおける水/粉体の質量比は、フッ素汚染土壌の性状等にもよるが、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。該比が0.5未満ではスラリーの流動性が低く、1.5を超えるとスラリーの容積が大きくなり過ぎてスラリーの輸送等が不便になる。
セメントまたはセメント系固化材と、酸性塩と、フッ素汚染土壌とを混合した改良土の一軸圧縮強さは、材齢7日で1500kN/m2以下であることが好ましく、100〜1000kN/m2であることがより好ましく、100〜500kN/m2であることが特に好ましい。該一軸圧縮強さが1500kN/m2を越えると、再掘削等の再利用が困難となるおそれがある。
また、セメントまたはセメント系固化材の添加量は、フッ素の溶出抑制、改良土の一軸圧縮強さやコスト等の観点から、フッ素汚染土壌1m3に対して100〜200kgが好ましく、120〜180kgがより好ましい。また、該添加量が100kg未満ではフッ素の溶出抑制が困難となるおそれがあり、200kgを越えると改良土の一軸圧縮強さが材齢7日で1500kN/m2以上となる場合があるため、再掘削等の再利用が困難になるおそれがある。
1.使用した材料
表3の配合に従い、セメントまたはセメント系固化材と、酸性塩と、細粒土とを同時に混合して改良土を作製した。次に、材齢7日の該改良土を用いて、JIS A 1216に準拠して一軸圧縮強さを測定するとともに、環境省庁告示第18号(平成15年3月)に準拠して、溶出検液中のフッ素の溶出濃度と該検液のpHを測定した。その結果を表3に示す。
(1)処理対象が細粒土Aの場合
セメントの添加量が150kg/m3の場合、フッ素の溶出量は、高炉セメントB種の単独使用例(比較例2)や、高炉セメントB種と無水石膏の混合使用例(比較例3)では、それぞれ1.30mg/Lと1.20mg/Lであるのに対し、本発明の方法(実施例1〜9)では、0.40〜0.75mg/Lと少ない。したがって、本発明の方法は、従来のセメントやセメント系固化材を用いた場合と比べ、フッ素の溶出量を30〜60%程度にまで抑制することができる。
なお、実施例におけるセメント系固化材の添加量は、質量部で示すと、フッ素汚染土壌100質量部に対して12質量部であり、酸性塩化物等の添加量はフッ素汚染土壌100質量部に対して0.5〜1.0質量部である。
処理対象が細粒土BおよびCと土の種類が異なっても、前記の細粒土Aの場合と同様に、本発明の方法は従来の方法と比べフッ素の溶出抑制効果が高い。
酸性塩(硫酸第一鉄)の添加量のみが異なる実施例1、8および9を比べると、pHは実施例8が10.3、実施例2が9.9、実施例9が9.2と低下するにしたがい、フッ素の溶出量も、それぞれ0.8mg/L、0.70mg/L、0.50mg/Lと低下している。
以上のことから、本発明の方法は、従来の方法と比べ、セメントやセメント系固化材を含む添加材の添加量が少なくても、フッ素の溶出抑制効果が高いことが分かる。
Claims (6)
- フッ素汚染土壌に、セメント若しくはセメント系固化材を添加すると同時に、または、セメント若しくはセメント系固化材を添加して混合した後に、酸性塩化物、石膏を除く酸性硫酸塩、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上の酸性塩を添加して混合することを特徴とする、フッ素の溶出抑制方法。
- 前記フッ素汚染土壌が、細粒土、または細粒土を含む土壌である、請求項1に記載のフッ素の溶出抑制方法。
- 前記細粒土は、Al2O3の含有率が15質量%以上、または、アロフェンおよび非晶質無機成分の合計の含有率が15質量%以上の、少なくともいずれかの条件を満たす細粒土である、請求項2に記載のフッ素の溶出抑制方法。
- 前記酸性塩が、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム、およびこれらの含水塩から選ばれる、少なくとも1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
- 材齢7日における改良土の一軸圧縮強さが1500kN/m2以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
- 前記セメントまたはセメント系固化材に含まれるセメントクリンカーの水硬率が2.2以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフッ素の溶出抑制方法。
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