本発明は、系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法に関する。
太陽電池パネルによる直流発電電力および電力貯蔵装置の直流充放電電力を合わせて、直流電力を交流電力に変換して商用系統と連系するため系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナを備えている。
当該系統連系インバータ装置は、インバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御部と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部とを備えている。
商用系統に停電等の異常が生じて解列した状態で、商用系統の交流負荷とは異なる自立系統の特定負荷に給電するために自立運転制御部が設けられている。
このような系統連系インバータ装置を用いて商用系統と連系する場合、LCフィルタを構成するコンデンサの劣化及び系統連系リレー接点の劣化を回避するため、商用系統から当該コンデンサへの突入電流を抑制する必要がある。特に太陽電池パネルを用いる場合には、商用系統との連系及び解列が毎日一度は繰り返されるため、その必要性が高い。
特許文献1には、系統連系インバータの交流出力端が、少なくとも分路接続のフィルタコンデンサを含む出力フィルタおよび開閉器を介して系統に接続される系統連系インバータ装置であって、開閉器を開放した状態でフィルタコンデンサをインバータにより系統電圧よりほぼ90°進んだ電流で充電し、フィルタコンデンサを系統電圧とほぼ同電圧値・同位相にした後、開閉器を投入して連系運転するように構成された系統連系インバータ装置が提案されている。
特許文献2には、インバータの出力側に備えられたコンデンサの突入電流防止回路として抵抗とスイッチの並列回路を備え、パワーコンディショナの制御部は、インバータを停止させ、かつ、コンデンサよりも電力系統側に備えられる系統連系用リレー接点を短絡させて、スイッチの接点を短絡状態と開放状態とに切り換える制御を行い、その切り換え前後のパワーコンディショナの出力電流の値に基づいてスイッチの故障診断を行う制御構成を備えたパワーコンディショナが提案されている。
特許文献3には、コンデンサに直列に配置された突入電流抑制抵抗及び突入電流抑制抵抗と並列に配置された突入電流抑制抵抗短絡用開閉器を備えたLCフィルタと、LCフィルタでフィルタリングされた交流電力を交流系統電源へ出力する系統連系開閉器と、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の制御状態およびフィルタからの出力電流の変化に基づいて、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の故障を判定する制御装置とを備えた電力変換器が開示されている。
特許文献4には、直流電力が生じる直流電源又は直流電力にて駆動される直流負荷と、3相交流電力が流れる電力系統との間に設けられ、相互間で直流−交流変換又は交流−直流変換を行うスイッチング回路を備えた電力変換装置であって、直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続を図る接続スイッチと、前記スイッチング回路と前記電力系統との接続を図る連系スイッチと、前記接続スイッチと前記スイッチング回路との間において前記直流電力を平滑化する直流側コンデンサと、前記スイッチング回路と前記連系スイッチとの間において所定周波数帯域の前記交流電力を通過させるためのフィルタ回路を構成するフィルタコンデンサとを備えるとともに、起動時に前記連系スイッチを介さずに入力される前記電力系統からの交流電力を整流して直流電力を生成し、生成した直流電力を充電抵抗を介して前記直流側コンデンサに供給して充電を行う初期充電回路を備え、前記起動時において先ず前記接続スイッチ及び前記連系スイッチをオフ状態として前記初期充電回路の整流動作による直流電力の生成と前記スイッチング回路の動作とを行って前記直流側コンデンサの充電、及び前記スイッチング回路を介しての前記フィルタコンデンサの充電を行い、次いで前記各コンデンサが所定充電電圧まで上昇すると前記スイッチング回路を一旦停止して前記直流側コンデンサを前記電力系統の整流電圧まで更に充電し、次いで前記スイッチング回路の停止時と同タイミングでの前記連系スイッチのオンによる前記スイッチング回路と前記電力系統との接続と、前記接続スイッチのオンによる前記直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続と、前記スイッチング回路の動作の再開とを行って、前記直流電源又は前記直流負荷と前記電力系統との前記スイッチング回路を介した接続を図るべく制御する起動時制御手段を備えたことを特徴とする電力変換装置が開示されている。
特開1997−28040号公報
特開2015−27146号公報
特開2015−23650号公報
特開2011−193633号公報
しかし、特許文献1に開示された系統連系インバータ装置では、コンデンサに流れる電流をインバータの定格電流の数%程度に制御する必要があり、そのための制御が非常に煩雑になるという問題や、その際に発生するコンデンサ電流の数%程度(インバータの定格電流の0.1〜0.01%程度)の直流分でコンデンサが充電されるため、接点投入時に突入電流が流れるという問題もあった。そして、そのような直流分を放電させるために抵抗を設ける必要があり、部品点数の増加によりコストが上昇するという問題があった。
特許文献2,3に開示された構成によれば、突入電流防止回路に加えて、突入電流防止回路に備えた短絡用のスイッチの故障を検知する必要もあり、やはり部品点数の増加によるコスト上昇を招くという問題が解決されるような構成ではなかった。
特許文献4に開示された電力変換装置は、突入電流を防ぐために、先ず主回路の直流・交流側のコンデンサに充電し、所定電圧を超えると運転停止の処理を行なってから連系スイッチを投入して系統連系運転を行なうように構成されており、連系スイッチの投入時間のばらつきの発生が避けられず、想定している連系点とずれた場合には、交流側のフィルムコンデンサに印加された電圧が大きくなり、過電流が生じてインバータ装置の部品の破損を招く虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による系統連系インバータ装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、商用系統と連系して前記インバータを制御する系統連系運転制御部と、商用系統と切り離して前記インバータを制御する自立運転制御部と、前記自立運転制御部を起動した後に前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させ、整合状態を維持して前記系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替える運転モード切替部と、を備えている点にある。
系統連系運転制御部により商用系統と連系する際に、運転モード切替部によって先ず自立運転制御部が起動されて自立運転が行なわれ、その後インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧の振幅、位相及び周波数と整合するように調整され、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えられるので、商用系統との連系時にLCフィルタのコンデンサへの突入電流を抑制または回避できるようになる。さらに、系統連系リレーの寿命も延ばすことができる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている点にある。
インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅、各位相及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、商用系統と連系するまでの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
系統連系インバータ装置において、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧をモニタして整合状態に調整するので、系統連系リレーの接点を接続する場合に異常な放電等が生じることがなく、接点の劣化が回避できるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合には故障していると判断され、系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
交流電圧の検出回路の故障や商用系統電圧の歪などの要因により、所定時間経過しても所定の閾値以下にならないと判断される場合等、本来的に整合可能な状態である場合に、整合処理を繰り返すことによって適正に整合されて系統連系できる機会を確保できるようになる。そして故障判定カウンタの値に閾値を設けることにより故障判定の確度を高めることができるようになる。
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、商用系統と連系して前記インバータを制御する系統連系運転制御ステップと、商用系統と切り離して前記インバータを制御する自立運転制御ステップと、を含み、前記自立運転制御ステップを起動した後に前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させ、整合状態を維持して前記系統連系運転制御ステップに切り替える運転モード切替ステップと、を備えている点にある。
同第二の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記電圧整合ステップで前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、前記系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている点にある。
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
同第四の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記系統連系運転切替ステップは、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
同第五の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
本発明による系統連系インバータ装置の第六の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、自立運転モードと系統連系運転モードの何れかに切替可能な制御部を備えて構成された系統連系インバータ装置であって、系統連系運転モードが選択されると、前記制御部が上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行するように構成されている系統連系インバータ装置。
本発明による系統連系インバータ装置の第七の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、LCフィルタを構成するコンデンサ及び系統連系リレー接点の劣化を回避するために上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行する制御部を備えている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供することができるようになった。
本発明による系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナの回路構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転時および自立運転時の制御ブロック構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の制御ブロック構成図
起動処理の制御フローチャート
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の実験結果の説明図
以下、本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である蓄電ハイブリッド発電装置100が示されている。蓄電ハイブリッド発電装置100は太陽電池パネルSP、太陽電池パネルSPおよび電力貯蔵装置BATが直流リンク電圧で接続され、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナPCを備えて構成されている。
当該パワーコンディショナPCは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ1Aと、自然エネルギーを活用する電力貯蔵装置BATを用いて,双方向DC/DCコンバータ1Bを介して,充放電できる系統連系インバータ装置2を備えている。
系統連系インバータ装置2の出力端子には、商用系統電源eGridに接続するための系統連系リレーSGridと、自立系統の特定負荷ZLoadに給電するための自立系統リレーSstdが分岐接続されている。
系統連系インバータ装置2は、DC/DCコンバータ1A,1Bから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ2Aと、インバータ2Aを制御するインバータ制御装置2Bと、インバータ2Aの出力から高調波成分を除去するLCフィルタ2C等を備えている。LCフィルタ2CはリアクトルLfとコンデンサCfで構成されるローパスフィルタとして機能する。
インバータ制御装置2Bは、商用系統と連系してインバータ2Aを制御する系統連系運転制御部21と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部23と、自立運転制御部23を起動した後にインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように調整し、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替える運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と、実際にインバータ2Aを構成するスイッチング素子S1,S2,S3,S4を制御するPWM制御部24を備えている。
インバータ制御装置2Bは、直流リンク電圧Vdc、インバータ2Aの出力電流iinv、商用系統電圧euw、自立系統電圧esd等の入力信号に基づいてインバータ2AをPWM制御するための制御演算を実行するマイクロコンピュータ及び入出力回路等を備えて構成されている。
図2には、系統連系運転制御部21と運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と自立運転制御部23の各制御ブロックの要部が示されている。
系統連系運転制御部21は、商用系統電圧euwから商用系統電圧の位相θuwを求めるPLL回路21Aと、当該位相θuw及び有効電流指令値I* pに基づいて有効電流成分を生成する有効電流生成部21Bと、当該位相θuw及び無効電流指令値I* qに基づいて無効電流成分を生成する無効電流生成部21Cと、系統連系電流制御部21Dを備えている。
系統連系運転時の電流制御部21Dは、有効電流生成部21Bで生成された有効電流成分及び無効電流生成部21Cで生成された無効電流成分を加算して得られるインバータ出力電流指令値i* invと、直流リンク電圧Vdcと、フィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとから、インバータ出力電流iinvがインバータ出力電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比daを算出するように構成されている。
自立運転制御部23は、自立系統電圧指令値e* sdと、フィードバック信号である自立系統電圧esdとから、インバータ出力電流指令値i* invを算出する自立電圧制御部23Aと、インバータ出力電流指令値i* invとフィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとからとから、インバータ出力電流iinvが電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比dbを算出するように構成されている。尚、自立系統電圧指令値e* sdは、自立系統電圧指令値の最大値E* sd.max、位相角θxとして以下の数式〔数1〕で定められる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、系統連系運転制御部21から出力されたデューティ比daをPWM制御部24に出力するか、自立運転制御部23から出力されたデューティ比dbをPWM制御部24に出力するかを切り替える切替回路Swを備えている。
図4には、起動処理の制御シーケンスが示されている。運転モード切替部22は、先ず系統連系リレーSGridと自立系統リレーSStdをオフ(初期には本来的にオフされている)し、運転モードのスイッチSsdを0の位置にするとともに切替回路Swを自立運転制御部23側に切り替えて、自立運転制御部23を起動する(S1)。
自立運転制御部23によって、インバータ2Aに対するインバータ出力電圧指令値e* sdが徐々に上昇するように設定され、例えば1秒前後の時間をかけてインバータ電圧esdが徐々に立ち上がり、自立系統電圧の最大値の指令値Ecstに達するまで、ソフトスタート制御が実行される(S2)。このとき、インバータ出力電圧esd及び電流iinvがソフトスタートのプログラムに従って処理されることにより、LCフィルタ2CのコンデンサCfには大きな突入電流が生じることが無い。
インバータ2Aが定常状態に立ち上がると運転モード切替部22によって運転モードが選択される(S3)。系統連系運転モードでは、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され(S4)、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧と整合するように制御され(S5)、所定時間内に整合されると(S6,S7)、切替回路Swを系統連系運転制御部21側に切り替え、故障判定回数カウンタの値をリセットするとともに(S8)、系統連系リレーSGridをオンする(S9)。
所定時間内に整合されなかった場合には(S6)、故障が発生したと判定されて、故障判定回数カウンタの値がインクリメントされ(S10)、故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になると(S11)、系統連系リレーSGridをオンすることなく停止し(S12)、その状態を報知するための警告処理が実行される(S13)。故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になるまでは(S11)、再度整合処理を行なうための再起動処理が実行される(S14)。
ステップS3で、自立運転モードと判断されると、自立系統リレーSstdがオンされ、自立系統の特定負荷立ZLoadに給電される(S15)。
故障判定に要する所定時間は特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。本実施形態では約10秒に設定されている。また、故障判定回数カウンタの閾値、つまり故障判定回数も適宜設定すればよく、本実施形態では3回に設定されている。尚、運転停止処理に到る基準を厳格にする場合には、故障判定回数カウンタの閾値を1に設定すればよい。この場合、故障判定部は、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に直ちに故障と判定することになる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、上述した数式〔数1〕で示される自立系統電圧指令値e* sdを調整することによりインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように構成されている。
図3を参照して、運転モード切替部22により実行される自立系統電圧指令値e* sdの調整アルゴリズムを説明する。
運転モードのスイッチSsdが1の位置にあると、自立運転制御部23が起動されて自立運転制御が実行される。自立系統電圧の位相角θsdは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路によって求められる。基本周波数f0は50Hz/60Hz等の固定値である。また、自立系統電圧の最大値E* sd.maxは固定値Ecstに設定される。このような最大値及び位相角が数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められる。尚、固定値Ecstは上述したようにソフトスタートが実現されるように、所定の時間間隔で次第に上昇して一定値になるように設定される値で任意に値が変動するという性質でないため固定値と表現している。
このようにして自立運転制御部23によってインバータ2Aが定常状態に立ち上がると、次に運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22により、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され、インバータ2Aの出力電圧が商用系統電圧の振幅及び位相に整合するように制御される。
具体的に、位相整合ブロックでは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路によって求められる位相角θsdと、商用系統電圧euw及び基本周波数f0が入力される商用系統電圧調整用のPLL回路によって求められる位相角θuwとの制御ブロックの入力の誤差の値Δeが零になるように商用系統電圧と自立系統電圧との位相差ΔφがPI演算部によって算出され、位相差Δφと商用系統電圧の位相角θuwとの加算値が電圧整合時の出力電圧の位相角θtとして出力される。PI演算部で実行される演算は、Kp+1/STiである。Kpは比例ゲイン、Tiは積分器の時定数である。
また、振幅整合ブロックでは、商用系統電圧の最大値Euw.maxと自立系統電圧の最大値Esd.maxの差分が零になるように比例制御部で比例演算され、k次サンプリング周期の一つ前の自立系統電圧指令値E* sd.max(k−1)との加算値が現在の自立系統電圧指令値E* sd.maxとして出力される。
これらの位相角θt及び自立系統電圧指令値E* sd.maxが数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められ、自立電圧制御部23Aに入力される。尚、商用系統電圧の最大値Euw.max及び自立系統電圧の最大値Esd.maxは、商用系統周期Tuwを基準として以下の数式〔数2〕で算出される。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が、以下の数式〔数3〕で示されるように所定の閾値以下になると、系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている。
運転モード切替部22は、数式〔数3〕を満たすと整合していると判定して、その制御状態を維持して、つまり瞬時に系統連系運転制御部21による系統連系運転制御に切り替えるべく、系統連系リレーSGridをオンする。尚、xは、0<x<1の任意の値に設定可能であり、本実施形態ではx=0.03、つまり系統周波数fuwの±3%の範囲に設定されている。
即ち、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、系統連系までの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
また、図4のフローチャートで説明したように、運転モード切替部22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備え、故障していると判断されると系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができるようになる。
以上説明したように、本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法は、直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御ステップと、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御ステップと、を含み、自立運転制御ステップを起動した後にインバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させ、整合状態を維持して系統連系運転制御ステップに切り替える運転モード切替ステップと、を備えている。
また、運転モード切替ステップは、電圧整合ステップでインバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている。
そして、運転モード切替ステップは、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると整合状態に到ったと判断して、系統連系リレーの接点を接続するように構成されている。
さらに、運転モード切替ステップは、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている。
図5には、図4に示す制御フローチャートに従って運転モード切替部を動作させた実験結果の特性図が示されている。系統連系リレーSGridがオンされた直後にスムーズに系統連系運転が行なわれ、逆潮流電流ispが徐々に増大する状態が示されている。本発明によれば、系統連系リレーSGridをオンする瞬間に逆潮流電流ispにスパイク状の突入電流が発生しないことが確認された。また、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数を整合する制御方式を導入することにより、商用系統電圧euwと自立系統電圧esdとの位相差が無くなることが確認された。
尚、系統連系運転切替ステップは、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に、直ちに故障と判定する故障判定ステップを備えていてもよい。
上述した実施形態は、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置について説明したが、電力貯蔵装置BATを備えていないパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能であることはいうまでもない。また、太陽電池パネル以外の直流発電装置、例えば風力発電装置を備えたパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能である。
上述の各実施形態は本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の一例に過ぎず、各構成ブロックの具体的な構成(ハードウェアやソフトウェア)や各種の数値等は本発明による作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することも可能であることはいうまでもない。
2:系統連系インバータ装置
2A:インバータ
2B:インバータ制御装置
2C:LCフィルタ
21:系統連系運転制御部
22:運転モード切替部
23:自立運転制御部
本発明は、系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法に関する。
太陽電池パネルによる直流発電電力および電力貯蔵装置の直流充放電電力を合わせて、直流電力を交流電力に変換して商用系統と連系するため系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナを備えている。
当該系統連系インバータ装置は、インバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御部と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部とを備えている。
商用系統に停電等の異常が生じて解列した状態で、商用系統の交流負荷とは異なる自立系統の特定負荷に給電するために自立運転制御部が設けられている。
このような系統連系インバータ装置を用いて商用系統と連系する場合、LCフィルタを構成するコンデンサの劣化及び系統連系リレー接点の劣化を回避するため、商用系統から当該コンデンサへの突入電流を抑制する必要がある。特に太陽電池パネルを用いる場合には、商用系統との連系及び解列が毎日一度は繰り返されるため、その必要性が高い。
特許文献1には、系統連系インバータの交流出力端が、少なくとも分路接続のフィルタコンデンサを含む出力フィルタおよび開閉器を介して系統に接続される系統連系インバータ装置であって、開閉器を開放した状態でフィルタコンデンサをインバータにより系統電圧よりほぼ90°進んだ電流で充電し、フィルタコンデンサを系統電圧とほぼ同電圧値・同位相にした後、開閉器を投入して連系運転するように構成された系統連系インバータ装置が提案されている。
特許文献2には、インバータの出力側に備えられたコンデンサの突入電流防止回路として抵抗とスイッチの並列回路を備え、パワーコンディショナの制御部は、インバータを停止させ、かつ、コンデンサよりも電力系統側に備えられる系統連系用リレー接点を短絡させて、スイッチの接点を短絡状態と開放状態とに切り換える制御を行い、その切り換え前後のパワーコンディショナの出力電流の値に基づいてスイッチの故障診断を行う制御構成を備えたパワーコンディショナが提案されている。
特許文献3には、コンデンサに直列に配置された突入電流抑制抵抗及び突入電流抑制抵抗と並列に配置された突入電流抑制抵抗短絡用開閉器を備えたLCフィルタと、LCフィルタでフィルタリングされた交流電力を交流系統電源へ出力する系統連系開閉器と、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の制御状態およびフィルタからの出力電流の変化に基づいて、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の故障を判定する制御装置とを備えた電力変換器が開示されている。
特許文献4には、直流電力が生じる直流電源又は直流電力にて駆動される直流負荷と、3相交流電力が流れる電力系統との間に設けられ、相互間で直流−交流変換又は交流−直流変換を行うスイッチング回路を備えた電力変換装置であって、直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続を図る接続スイッチと、前記スイッチング回路と前記電力系統との接続を図る連系スイッチと、前記接続スイッチと前記スイッチング回路との間において前記直流電力を平滑化する直流側コンデンサと、前記スイッチング回路と前記連系スイッチとの間において所定周波数帯域の前記交流電力を通過させるためのフィルタ回路を構成するフィルタコンデンサとを備えるとともに、起動時に前記連系スイッチを介さずに入力される前記電力系統からの交流電力を整流して直流電力を生成し、生成した直流電力を充電抵抗を介して前記直流側コンデンサに供給して充電を行う初期充電回路を備え、前記起動時において先ず前記接続スイッチ及び前記連系スイッチをオフ状態として前記初期充電回路の整流動作による直流電力の生成と前記スイッチング回路の動作とを行って前記直流側コンデンサの充電、及び前記スイッチング回路を介しての前記フィルタコンデンサの充電を行い、次いで前記各コンデンサが所定充電電圧まで上昇すると前記スイッチング回路を一旦停止して前記直流側コンデンサを前記電力系統の整流電圧まで更に充電し、次いで前記スイッチング回路の停止時と同タイミングでの前記連系スイッチのオンによる前記スイッチング回路と前記電力系統との接続と、前記接続スイッチのオンによる前記直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続と、前記スイッチング回路の動作の再開とを行って、前記直流電源又は前記直流負荷と前記電力系統との前記スイッチング回路を介した接続を図るべく制御する起動時制御手段を備えたことを特徴とする電力変換装置が開示されている。
特開1997−28040号公報
特開2015−27146号公報
特開2015−23650号公報
特開2011−193633号公報
しかし、特許文献1に開示された系統連系インバータ装置では、コンデンサに流れる電流をインバータの定格電流の数%程度に制御する必要があり、そのための制御が非常に煩雑になるという問題や、その際に発生するコンデンサ電流の数%程度(インバータの定格電流の0.1〜0.01%程度)の直流分でコンデンサが充電されるため、接点投入時に突入電流が流れるという問題もあった。そして、そのような直流分を放電させるために抵抗を設ける必要があり、部品点数の増加によりコストが上昇するという問題があった。
特許文献2,3に開示された構成によれば、突入電流防止回路に加えて、突入電流防止回路に備えた短絡用のスイッチの故障を検知する必要もあり、やはり部品点数の増加によるコスト上昇を招くという問題が解決されるような構成ではなかった。
特許文献4に開示された電力変換装置は、突入電流を防ぐために、先ず主回路の直流・交流側のコンデンサに充電し、所定電圧を超えると運転停止の処理を行なってから連系スイッチを投入して系統連系運転を行なうように構成されており、連系スイッチの投入時間のばらつきの発生が避けられず、想定している連系点とずれた場合には、交流側のフィルムコンデンサに印加された電圧が大きくなり、過電流が生じてインバータ装置の部品の破損を招く虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による系統連系インバータ装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、自立から連系にインバータ停止させずに切替可能、自立周波数未定直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、商用系統と連系して前記インバータを制御する系統連系運転制御部と、商用系統と切り離して前記インバータを制御する自立運転制御部と、前記自立運転制御部を起動した後に前記自立運転制御部を制御して前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させ、整合状態を維持して前記自立運転制御部による自立運転制御から前記系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替える運転モード切替部と、を備えている点にある。
系統連系運転制御部により商用系統と連系する際に、運転モード切替部によって先ず自立運転制御部が起動されて自立運転が行なわれ、その後インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧の振幅、位相及び周波数と整合するように調整され、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えられるので、商用系統との連系時にLCフィルタのコンデンサへの突入電流を抑制または回避できるようになる。さらに、系統連系リレーの寿命も延ばすことができる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている点にある。
インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅、各位相及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、商用系統と連系するまでの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
系統連系インバータ装置において、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧をモニタして整合状態に調整するので、系統連系リレーの接点を接続する場合に異常な放電等が生じることがなく、接点の劣化が回避できるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合には故障していると判断され、系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
交流電圧の検出回路の故障や商用系統電圧の歪などの要因により、所定時間経過しても所定の閾値以下にならないと判断される場合等、本来的に整合可能な状態である場合に、整合処理を繰り返すことによって適正に整合されて系統連系できる機会を確保できるようになる。そして故障判定カウンタの値に閾値を設けることにより故障判定の確度を高めることができるようになる。
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、商用系統と連系して前記インバータを制御する系統連系運転制御ステップと、商用系統と切り離して前記インバータを制御する自立運転制御ステップと、を含み、前記自立運転制御ステップを起動した後に前記自立運転制御ステップにおいて前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させる電圧整合ステップを実行し、前記電圧整合ステップで得られた整合状態を維持して前記系統連系運転制御ステップに切り替える運転モード切替ステップと、
を備えている点にある。
同第二の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記電圧整合ステップで前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、前記系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている点にある。
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
同第四の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
同第五の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
本発明による系統連系インバータ装置の第六の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、自立運転モードと系統連系運転モードの何れかに切替可能な制御部を備えて構成された系統連系インバータ装置であって、系統連系運転モードが選択されると、前記制御部が上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行するように構成されている系統連系インバータ装置。
本発明による系統連系インバータ装置の第七の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、LCフィルタを構成するコンデンサ及び系統連系リレー接点の劣化を回避するために上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行する制御部を備えている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供することができるようになった。
本発明による系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナの回路構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転時および自立運転時の制御ブロック構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の制御ブロック構成図
起動処理の制御フローチャート
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の実験結果の説明図
以下、本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である蓄電ハイブリッド発電装置100が示されている。蓄電ハイブリッド発電装置100は太陽電池パネルSP、太陽電池パネルSPおよび電力貯蔵装置BATが直流リンク電圧で接続され、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナPCを備えて構成されている。
当該パワーコンディショナPCは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ1Aと、自然エネルギーを活用する電力貯蔵装置BATを用いて,双方向DC/DCコンバータ1Bを介して,充放電できる系統連系インバータ装置2を備えている。
系統連系インバータ装置2の出力端子には、商用系統電源eGridに接続するための系統連系リレーSGridと、自立系統の特定負荷ZLoadに給電するための自立系統リレーSstdが分岐接続されている。
系統連系インバータ装置2は、DC/DCコンバータ1A,1Bから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ2Aと、インバータ2Aを制御するインバータ制御装置2Bと、インバータ2Aの出力から高調波成分を除去するLCフィルタ2C等を備えている。LCフィルタ2CはリアクトルLfとコンデンサCfで構成されるローパスフィルタとして機能する。
インバータ制御装置2Bは、商用系統と連系してインバータ2Aを制御する系統連系運転制御部21と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部23と、自立運転制御部23を起動した後にインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように調整し、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替える運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と、実際にインバータ2Aを構成するスイッチング素子S1,S2,S3,S4を制御するPWM制御部24を備えている。
インバータ制御装置2Bは、直流リンク電圧Vdc、インバータ2Aの出力電流iinv、商用系統電圧euw、自立系統電圧esd等の入力信号に基づいてインバータ2AをPWM制御するための制御演算を実行するマイクロコンピュータ及び入出力回路等を備えて構成されている。
図2には、系統連系運転制御部21と運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と自立運転制御部23の各制御ブロックの要部が示されている。
系統連系運転制御部21は、商用系統電圧euwから商用系統電圧の位相θuwを求めるPLL回路21Aと、当該位相θuw及び有効電流指令値I* pに基づいて有効電流成分を生成する有効電流生成部21Bと、当該位相θuw及び無効電流指令値I* qに基づいて無効電流成分を生成する無効電流生成部21Cと、系統連系電流制御部21Dを備えている。
系統連系運転時の電流制御部21Dは、有効電流生成部21Bで生成された有効電流成分及び無効電流生成部21Cで生成された無効電流成分を加算して得られるインバータ出力電流指令値i* invと、直流リンク電圧Vdcと、フィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとから、インバータ出力電流iinvがインバータ出力電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比daを算出するように構成されている。
自立運転制御部23は、自立系統電圧指令値e* sdと、フィードバック信号である自立系統電圧esdとから、インバータ出力電流指令値i* invを算出する自立電圧制御部23Aと、インバータ出力電流指令値i* invとフィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとからとから、インバータ出力電流iinvが電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比dbを算出するように構成されている。尚、自立系統電圧指令値e* sdは、自立系統電圧指令値の最大値E* sd.max、位相角θxとして以下の数式〔数1〕で定められる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、系統連系運転制御部21から出力されたデューティ比daをPWM制御部24に出力するか、自立運転制御部23から出力されたデューティ比dbをPWM制御部24に出力するかを切り替える切替回路Swを備えている。
図4には、起動処理の制御シーケンスが示されている。運転モード切替部22は、先ず系統連系リレーSGridと自立系統リレーSStdをオフ(初期には本来的にオフされている)し、運転モードのスイッチSsdを1の位置にするとともに切替回路Swを自立運転制御部23側に切り替えて、自立運転制御部23を起動する(S1)。
自立運転制御部23によって、インバータ2Aに対するインバータ出力電圧指令値e* sdが徐々に上昇するように設定され、例えば1秒前後の時間をかけてインバータ電圧esdが徐々に立ち上がり、自立系統電圧の最大値の指令値Ecstに達するまで、ソフトスタート制御が実行される(S2)。このとき、インバータ出力電圧esd及び電流iinvがソフトスタートのプログラムに従って処理されることにより、LCフィルタ2CのコンデンサCfには大きな突入電流が生じることが無い。
インバータ2Aが定常状態に立ち上がると運転モード切替部22によって運転モードが選択される(S3)。系統連系運転モードでは、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され(S4)、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧と整合するように制御され(S5)、所定時間内に整合されると(S6,S7)、切替回路Swを系統連系運転制御部21側に切り替え、故障判定回数カウンタの値をリセットするとともに(S8)、系統連系リレーSGridをオンする(S9)。
所定時間内に整合されなかった場合には(S6)、故障が発生したと判定されて、故障判定回数カウンタの値がインクリメントされ(S10)、故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になると(S11)、系統連系リレーSGridをオンすることなく停止し(S12)、その状態を報知するための警告処理が実行される(S13)。故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になるまでは(S11)、再度整合処理を行なうための再起動処理が実行される(S14)。
ステップS3で、自立運転モードと判断されると、自立系統リレーSstdがオンされ、自立系統の特定負荷立ZLoadに給電される(S15)。
故障判定に要する所定時間は特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。本実施形態では約10秒に設定されている。また、故障判定回数カウンタの閾値、つまり故障判定回数も適宜設定すればよく、本実施形態では3回に設定されている。尚、運転停止処理に到る基準を厳格にする場合には、故障判定回数カウンタの閾値を1に設定すればよい。この場合、故障判定部は、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に直ちに故障と判定することになる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、上述した数式〔数1〕で示される自立系統電圧指令値e* sdを調整することによりインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように構成されている。
図3を参照して、運転モード切替部22により実行される自立系統電圧指令値e* sdの調整アルゴリズムを説明する。
運転モードのスイッチSsdが1の位置にあると、自立運転制御部23が起動されて自立運転制御が実行される。自立系統電圧の位相角θsdは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路によって求められる。基本周波数f0は50Hz/60Hz等の固定値である。また、自立系統電圧の最大値E* sd.maxは固定値Ecstに設定される。このような最大値及び位相角が数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められる。尚、固定値Ecstは上述したようにソフトスタートが実現されるように、所定の時間間隔で次第に上昇して一定値になるように設定される値で任意に値が変動するという性質でないため固定値と表現している。
このようにして自立運転制御部23によってインバータ2Aが定常状態に立ち上がると、次に運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22により、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され、インバータ2Aの出力電圧が商用系統電圧の振幅及び位相に整合するように制御される。
具体的に、位相整合ブロックでは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路によって求められる位相角θsdと、商用系統電圧euw及び基本周波数f0が入力される商用系統電圧調整用のPLL回路によって求められる位相角θuwとの制御ブロックの入力の誤差の値Δeが零になるように商用系統電圧と自立系統電圧との位相差ΔφがPI演算部によって算出され、位相差Δφと商用系統電圧の位相角θuwとの加算値が電圧整合時の出力電圧の位相角θtとして出力される。PI演算部で実行される演算は、Kp+1/STiである。Kpは比例ゲイン、Tiは積分器の時定数である。
また、振幅整合ブロックでは、商用系統電圧の最大値Euw.maxと自立系統電圧の最大値Esd.maxの差分が零になるように比例制御部で比例演算され、k次サンプリング周期の一つ前の自立系統電圧指令値E* sd.max(k−1)との加算値が現在の自立系統電圧指令値E* sd.maxとして出力される。
これらの位相角θt及び自立系統電圧指令値E* sd.maxが数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められ、自立電圧制御部23Aに入力される。尚、商用系統電圧の最大値Euw.max及び自立系統電圧の最大値Esd.maxは、商用系統周期Tuwを基準として以下の数式〔数2〕で算出される。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が、以下の数式〔数3〕で示されるように所定の閾値以下になると、系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている。
運転モード切替部22は、数式〔数3〕を満たすと整合していると判定して、その制御状態を維持して、つまり瞬時に系統連系運転制御部21による系統連系運転制御に切り替えるべく、系統連系リレーSGridをオンする。尚、xは、0<x<1の任意の値に設定可能であり、本実施形態ではx=0.03、つまり系統周波数fuwの±3%の範囲に設定されている。
即ち、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、系統連系までの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
また、図4のフローチャートで説明したように、運転モード切替部22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備え、故障していると判断されると系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができるようになる。
以上説明したように、本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法は、直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御ステップと、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御ステップと、を含み、前記自立運転制御ステップを起動した後に前記自立運転制御ステップにおいて前記インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させる電圧整合ステップを実行し、前記電圧整合ステップで得られた整合状態を維持して前記系統連系運転制御ステップに切り替える運転モード切替ステップと、を備えている。
また、運転モード切替ステップは、電圧整合ステップでインバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている。
そして、運転モード切替ステップは、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると整合状態に到ったと判断して、系統連系リレーの接点を接続するように構成されている。
さらに、運転モード切替ステップは、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている。
図5には、図4に示す制御フローチャートに従って運転モード切替部を動作させた実験結果の特性図が示されている。系統連系リレーSGridがオンされた直後にスムーズに系統連系運転が行なわれ、逆潮流電流ispが徐々に増大する状態が示されている。本発明によれば、系統連系リレーSGridをオンする瞬間に逆潮流電流ispにスパイク状の突入電流が発生しないことが確認された。また、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数を整合する制御方式を導入することにより、商用系統電圧euwと自立系統電圧esdとの位相差が無くなることが確認された。
尚、運転モード切替ステップは、インバータの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に、直ちに故障と判定する故障判定ステップを備えていてもよい。
上述した実施形態は、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置について説明したが、電力貯蔵装置BATを備えていないパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能であることはいうまでもない。また、太陽電池パネル以外の直流発電装置、例えば風力発電装置を備えたパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能である。
上述の各実施形態は本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の一例に過ぎず、各構成ブロックの具体的な構成(ハードウェアやソフトウェア)や各種の数値等は本発明による作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することも可能であることはいうまでもない。
2:系統連系インバータ装置
2A:インバータ
2B:インバータ制御装置
2C:LCフィルタ
21:系統連系運転制御部
22:運転モード切替部
23:自立運転制御部
本発明は、系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法に関する。
太陽電池パネルによる直流発電電力および電力貯蔵装置の直流充放電電力を合わせて、直流電力を交流電力に変換して商用系統と連系するため系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナを備えている。
当該系統連系インバータ装置は、インバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御部と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部とを備えている。
商用系統に停電等の異常が生じて解列した状態で、商用系統の交流負荷とは異なる自立系統の特定負荷に給電するために自立運転制御部が設けられている。
このような系統連系インバータ装置を用いて商用系統と連系する場合、LCフィルタを構成するコンデンサの劣化及び系統連系リレー接点の劣化を回避するため、商用系統から当該コンデンサへの突入電流を抑制する必要がある。特に太陽電池パネルを用いる場合には、商用系統との連系及び解列が毎日一度は繰り返されるため、その必要性が高い。
特許文献1には、系統連系インバータの交流出力端が、少なくとも分路接続のフィルタコンデンサを含む出力フィルタおよび開閉器を介して系統に接続される系統連系インバータ装置であって、開閉器を開放した状態でフィルタコンデンサをインバータにより系統電圧よりほぼ90°進んだ電流で充電し、フィルタコンデンサを系統電圧とほぼ同電圧値・同位相にした後、開閉器を投入して連系運転するように構成された系統連系インバータ装置が提案されている。
特許文献2には、インバータの出力側に備えられたコンデンサの突入電流防止回路として抵抗とスイッチの並列回路を備え、パワーコンディショナの制御部は、インバータを停止させ、かつ、コンデンサよりも電力系統側に備えられる系統連系用リレー接点を短絡させて、スイッチの接点を短絡状態と開放状態とに切り換える制御を行い、その切り換え前後のパワーコンディショナの出力電流の値に基づいてスイッチの故障診断を行う制御構成を備えたパワーコンディショナが提案されている。
特許文献3には、コンデンサに直列に配置された突入電流抑制抵抗及び突入電流抑制抵抗と並列に配置された突入電流抑制抵抗短絡用開閉器を備えたLCフィルタと、LCフィルタでフィルタリングされた交流電力を交流系統電源へ出力する系統連系開閉器と、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の制御状態およびフィルタからの出力電流の変化に基づいて、突入電流抑制抵抗短絡用開閉器の故障を判定する制御装置とを備えた電力変換器が開示されている。
特許文献4には、直流電力が生じる直流電源又は直流電力にて駆動される直流負荷と、3相交流電力が流れる電力系統との間に設けられ、相互間で直流−交流変換又は交流−直流変換を行うスイッチング回路を備えた電力変換装置であって、直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続を図る接続スイッチと、前記スイッチング回路と前記電力系統との接続を図る連系スイッチと、前記接続スイッチと前記スイッチング回路との間において前記直流電力を平滑化する直流側コンデンサと、前記スイッチング回路と前記連系スイッチとの間において所定周波数帯域の前記交流電力を通過させるためのフィルタ回路を構成するフィルタコンデンサとを備えるとともに、起動時に前記連系スイッチを介さずに入力される前記電力系統からの交流電力を整流して直流電力を生成し、生成した直流電力を充電抵抗を介して前記直流側コンデンサに供給して充電を行う初期充電回路を備え、前記起動時において先ず前記接続スイッチ及び前記連系スイッチをオフ状態として前記初期充電回路の整流動作による直流電力の生成と前記スイッチング回路の動作とを行って前記直流側コンデンサの充電、及び前記スイッチング回路を介しての前記フィルタコンデンサの充電を行い、次いで前記各コンデンサが所定充電電圧まで上昇すると前記スイッチング回路を一旦停止して前記直流側コンデンサを前記電力系統の整流電圧まで更に充電し、次いで前記スイッチング回路の停止時と同タイミングでの前記連系スイッチのオンによる前記スイッチング回路と前記電力系統との接続と、前記接続スイッチのオンによる前記直流電源又は前記直流負荷と前記スイッチング回路との接続と、前記スイッチング回路の動作の再開とを行って、前記直流電源又は前記直流負荷と前記電力系統との前記スイッチング回路を介した接続を図るべく制御する起動時制御手段を備えたことを特徴とする電力変換装置が開示されている。
特開1997−28040号公報
特開2015−27146号公報
特開2015−23650号公報
特開2011−193633号公報
しかし、特許文献1に開示された系統連系インバータ装置では、コンデンサに流れる電流をインバータの定格電流の数%程度に制御する必要があり、そのための制御が非常に煩雑になるという問題や、その際に発生するコンデンサ電流の数%程度(インバータの定格電流の0.1〜0.01%程度)の直流分でコンデンサが充電されるため、接点投入時に突入電流が流れるという問題もあった。そして、そのような直流分を放電させるために抵抗を設ける必要があり、部品点数の増加によりコストが上昇するという問題があった。
特許文献2,3に開示された構成によれば、突入電流防止回路に加えて、突入電流防止回路に備えた短絡用のスイッチの故障を検知する必要もあり、やはり部品点数の増加によるコスト上昇を招くという問題が解決されるような構成ではなかった。
特許文献4に開示された電力変換装置は、突入電流を防ぐために、先ず主回路の直流・交流側のコンデンサに充電し、所定電圧を超えると運転停止の処理を行なってから連系スイッチを投入して系統連系運転を行なうように構成されており、連系スイッチの投入時間のばらつきの発生が避けられず、想定している連系点とずれた場合には、交流側のフィルムコンデンサに印加された電圧が大きくなり、過電流が生じてインバータ装置の部品の破損を招く虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による系統連系インバータ装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、系統連系リレーを介して商用系統と連系すべく、所定周波数の基準信号及び商用系統電圧が入力され当該商用系統電圧の位相を検知する第1のPLL回路を備え、前記第1のPLL回路で検知した商用系統電圧の位相を基準に前記インバータから所定の有効電流指令値及び無効電流指令値に対応する電流が出力されるように前記インバータをフィードバック制御する系統連系運転制御部と、前記基準信号及び自立系統電圧が入力され当該自立系統電圧の位相を検知する第2のPLL回路を備え、自立系統リレーを介して商用系統とは異なる自立系統の負荷に給電すべく、前記第2のPLL回路で検知した自立系統電圧の位相を位相成分とする自立系統電圧指令値に対応する電圧が前記インバータから出力されるように前記インバータをフィードバック制御する自立運転制御部と、前記第1のPLL回路で検知した商用系統電圧の位相と前記第2のPLL回路で検知した自立系統電圧の位相との位相差が零になるように前記自立系統電圧指令値の位相成分をフィードバック制御する位相整合部と、商用系統電圧と自立系統電圧の最大値の差分が零になるように前記自立系統電圧指令値の振幅成分をフィードバック制御する振幅整合部とを備え、系統連系運転時に前記系統連系リレー及び自立系統リレーを開放した状態で、前記自立系統電圧指令値の位相成分を前記第2のPLL回路で検知した位相に設定するとともに振幅成分を所定の固定値に設定して前記自立運転制御部を起動した後に、前記自立系統電圧指令値を前記位相整合部及び振幅整合部でフィードバック制御された自立系統電圧指令値に設定し、前記自立運転制御部により制御される自立系統電圧の振幅及び位相が商用系統電圧の振幅及び位相と整合すると、前記インバータの制御を前記系統連系運転制御部に切り替え、前記系統連系リレーを接続する運転モード切替部と、を備えている点にある。
系統連系運転制御部により商用系統と連系する際に、運転モード切替部によって先ず自立運転制御部が起動されて自立運転が行なわれ、その後自立系統電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧の振幅、位相及び周波数と整合するように調整され、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えられるので、商用系統との連系時にLCフィルタのコンデンサへの突入電流を抑制または回避できるようになる。さらに、系統連系リレーの寿命も延ばすことができる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている点にある。
自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅、各位相及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、商用系統と連系するまでの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
系統連系インバータ装置において、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧をモニタして整合状態に調整するので、系統連系リレーの接点を接続する場合に異常な放電等が生じることがなく、接点の劣化が回避できるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合には故障していると判断され、系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第二または第三の特徴構成に加えて、前記運転モード切替部は、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定部を備えている点にある。
交流電圧の検出回路の故障や商用系統電圧の歪などの要因により、所定時間経過しても所定の閾値以下にならないと判断される場合等、本来的に整合可能な状態である場合に、整合処理を繰り返すことによって適正に整合されて系統連系できる機会を確保できるようになる。そして故障判定カウンタの値に閾値を設けることにより故障判定の確度を高めることができるようになる。
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の第一の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、系統連系リレーを介して商用系統と連系すべく、所定周波数の基準信号及び商用系統電圧が入力される第1のPLL回路で検知した商用系統電圧の位相を基準に前記インバータから所定の有効電流指令値及び無効電流指令値に対応する電流が出力されるように前記インバータをフィードバック制御する系統連系運転制御ステップと、自立系統リレーを介して商用系統とは異なる自立系統の負荷に給電すべく、前記基準信号及び自立系統電圧が入力される第2のPLL回路で検知した自立系統電圧の位相を位相成分とする自立系統電圧指令値に対応する電圧が前記インバータから出力されるように前記インバータをフィードバック制御する自立運転制御ステップと、前記第1のPLL回路で検知した商用系統電圧の位相と前記第2のPLL回路で検知した自立系統電圧の位相との位相差が零になるように前記自立系統電圧指令値の位相成分をフィードバック制御する位相整合ステップと、商用系統電圧と自立系統電圧の最大値の差分が零になるように前記自立系統電圧指令値の振幅成分をフィードバック制御する振幅整合ステップとを備え、系統連系運転時に前記系統連系リレー及び自立系統リレーを開放した状態で、前記自立運転制御ステップを起動した後に、前記自立系統電圧指令値を前記位相整合ステップ及び振幅整合ステップでフィードバック制御された自立系統電圧指令値に設定する電圧整合ステップを実行し、前記電圧整合ステップにより制御される自立系統電圧の振幅及び位相が商用系統電圧の振幅及び位相と整合すると、前記インバータの制御を前記系統連系運転制御ステップに切り替え、前記系統連系リレーを接続する運転モード切替ステップと、を備えている点にある。
同第二の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記電圧整合ステップで前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、前記系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている点にある。
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると前記整合状態に到ったと判断して、前記系統連系リレーの接点を接続するように構成されている点にある。
同第四の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
同第五の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記運転モード切替ステップは、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている点にある。
本発明による系統連系インバータ装置の第六の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタと、自立運転モードと系統連系運転モードの何れかに切替可能な制御部を備えて構成された系統連系インバータ装置であって、系統連系運転モードが選択されると、前記制御部が上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行するように構成されている系統連系インバータ装置。
本発明による系統連系インバータ装置の第七の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置であって、LCフィルタを構成するコンデンサ及び系統連系リレー接点の劣化を回避するために上述した第一から第五の何れかの特徴構成を備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を実行する制御部を備えている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、特段の突入電流防止回路を設けることなく、LCフィルタを構成するコンデンサへの突入電流を抑制して系統連系可能な系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を提供することができるようになった。
本発明による系統連系インバータ装置が組み込まれた蓄電ハイブリッドパワーコンディショナの回路構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転時および自立運転時の制御ブロック構成図
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の制御ブロック構成図
起動処理の制御フローチャート
本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の実験結果の説明図
以下、本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法を図面に基づいて説明する。
図1には、分散型電源の一例である蓄電ハイブリッド発電装置100が示されている。蓄電ハイブリッド発電装置100は太陽電池パネルSP、太陽電池パネルSPおよび電力貯蔵装置BATが直流リンク電圧で接続され、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナPCを備えて構成されている。
当該パワーコンディショナPCは、太陽電池パネルSPで発電された直流電圧を所定の直流リンク電圧Vdcに昇圧するDC/DCコンバータ1Aと、自然エネルギーを活用する電力貯蔵装置BATを用いて,双方向DC/DCコンバータ1Bを介して,充放電できる系統連系インバータ装置2を備えている。
系統連系インバータ装置2の出力端子には、商用系統電源eGridに接続するための系統連系リレーSGridと、自立系統の特定負荷ZLoadに給電するための自立系統リレーSstdが分岐接続されている。
系統連系インバータ装置2は、DC/DCコンバータ1A,1Bから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ2Aと、インバータ2Aを制御するインバータ制御装置2Bと、インバータ2Aの出力から高調波成分を除去するLCフィルタ2C等を備えている。LCフィルタ2CはリアクトルLfとコンデンサCfで構成されるローパスフィルタとして機能する。
インバータ制御装置2Bは、商用系統と連系してインバータ2Aを制御する系統連系運転制御部21と、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御部23と、自立運転制御部23を起動した後にインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように調整し、整合状態を維持して系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替える運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と、実際にインバータ2Aを構成するスイッチング素子S1,S2,S3,S4を制御するPWM制御部24を備えている。
インバータ制御装置2Bは、直流リンク電圧Vdc、インバータ2Aの出力電流iinv、商用系統電圧euw、自立系統電圧esd等の入力信号に基づいてインバータ2AをPWM制御するための制御演算を実行するマイクロコンピュータ及び入出力回路等を備えて構成されている。
図2には、系統連系運転制御部21と運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22と自立運転制御部23の各制御ブロックの要部が示されている。
系統連系運転制御部21は、商用系統電圧euwから商用系統電圧の位相θuwを求めるPLL回路21Aと、当該位相θuw及び有効電流指令値I* pに基づいて有効電流成分を生成する有効電流生成部21Bと、当該位相θuw及び無効電流指令値I* qに基づいて無効電流成分を生成する無効電流生成部21Cと、系統連系電流制御部21Dを備えている。
系統連系運転時の電流制御部21Dは、有効電流生成部21Bで生成された有効電流成分及び無効電流生成部21Cで生成された無効電流成分を加算して得られるインバータ出力電流指令値i* invと、直流リンク電圧Vdcと、フィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとから、インバータ出力電流iinvがインバータ出力電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比daを算出するように構成されている。
自立運転制御部23は、自立系統電圧指令値e* sdと、フィードバック信号である自立系統電圧esdとから、インバータ出力電流指令値i* invを算出する自立電圧制御部23Aと、インバータ出力電流指令値i* invとフィードバック信号であるインバータ出力電流iinvとからとから、インバータ出力電流iinvが電流指令値i* invになるようにフィードバック演算を行ない、PWM制御のためのデューティ比dbを算出するように構成されている。尚、自立系統電圧指令値e* sdは、自立系統電圧指令値の最大値E* sd.max、位相角θxとして以下の数式〔数1〕で定められる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、系統連系運転制御部21から出力されたデューティ比daをPWM制御部24に出力するか、自立運転制御部23から出力されたデューティ比dbをPWM制御部24に出力するかを切り替える切替回路Swを備えている。
図4には、起動処理の制御シーケンスが示されている。運転モード切替部22は、先ず系統連系リレーSGridと自立系統リレーSStdをオフ(初期には本来的にオフされている)し、運転モードのスイッチSsdを1の位置にするとともに切替回路Swを自立運転制御部23側に切り替えて、自立運転制御部23を起動する(S1)。
自立運転制御部23によって、インバータ2Aに対する自立系統電圧指令値e* sdが徐々に上昇するように設定され、例えば1秒前後の時間をかけて自立系統電圧esdが徐々に立ち上がり、自立系統電圧の最大値の指令値Ecstに達するまで、ソフトスタート制御が実行される(S2)。このとき、自立系統電圧esd及び電流iinvがソフトスタートのプログラムに従って処理されることにより、LCフィルタ2CのコンデンサCfには大きな突入電流が生じることが無い。
インバータ2Aが定常状態に立ち上がると運転モード切替部22によって運転モードが選択される(S3)。系統連系運転モードでは、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され(S4)、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数が商用系統電圧と整合するように制御され(S5)、所定時間内に整合されると(S6,S7)、切替回路Swを系統連系運転制御部21側に切り替え、故障判定回数カウンタの値をリセットするとともに(S8)、系統連系リレーSGridをオンする(S9)。
所定時間内に整合されなかった場合には(S6)、故障が発生したと判定されて、故障判定回数カウンタの値がインクリメントされ(S10)、故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になると(S11)、系統連系リレーSGridをオンすることなく停止し(S12)、その状態を報知するための警告処理が実行される(S13)。故障判定回数カウンタの値が予め設定された値になるまでは(S11)、再度整合処理を行なうための再起動処理が実行される(S14)。
ステップS3で、自立運転モードと判断されると、自立系統リレーSstdがオンされ、自立系統の特定負荷立ZLoadに給電される(S15)。
故障判定に要する所定時間は特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。本実施形態では約10秒に設定されている。また、故障判定回数カウンタの閾値、つまり故障判定回数も適宜設定すればよく、本実施形態では3回に設定されている。尚、運転停止処理に到る基準を厳格にする場合には、故障判定回数カウンタの閾値を1に設定すればよい。この場合、故障判定部は、自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に直ちに故障と判定することになる。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、上述した数式〔数1〕で示される自立系統電圧指令値e* sdを調整することによりインバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合するように構成されている。
図3を参照して、運転モード切替部22により実行される自立系統電圧指令値e* sdの調整アルゴリズムを説明する。
運転モードのスイッチSsdが1の位置にあると、自立運転制御部23が起動されて自立運転制御が実行される。自立系統電圧の位相角θsdは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路17によって求められる。基本周波数f0は50Hz/60Hz等の固定値である。また、自立系統電圧の最大値E* sd.maxは固定値Ecstに設定される。このような最大値及び位相角が数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められる。尚、固定値Ecstは上述したようにソフトスタートが実現されるように、所定の時間間隔で次第に上昇して一定値になるように設定される値で任意に値が変動するという性質でないため固定値と表現している。
このようにして自立運転制御部23によってインバータ2Aが定常状態に立ち上がると、次に運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22により、運転モードのスイッチSsdが0の位置に設定され、インバータ2Aの出力電圧が商用系統電圧の振幅及び位相に整合するように制御される。
具体的に、位相整合ブロックでは、自立系統電圧esd及び基本周波数f0が入力される自立運転時のPLL回路17によって求められる位相角θsdと、商用系統電圧euw及び基本周波数f0が入力される商用系統電圧調整用のPLL回路21Aによって求められる位相角θuwとの制御ブロックの入力の誤差の値Δeが零になるように商用系統電圧と自立系統電圧との位相差ΔφがPI演算部によって算出され、位相差Δφと商用系統電圧の位相角θuwとの加算値が電圧整合時の出力電圧の位相角θtとして出力される。PI演算部で実行される演算は、Kp+1/STiである。Kpは比例ゲイン、Tiは積分器の時定数である。
また、振幅整合ブロックでは、商用系統電圧の最大値Euw.maxと自立系統電圧の最大値Esd.maxの差分が零になるように比例制御部で比例演算され、k次サンプリング周期の一つ前の自立系統電圧指令値E* sd.max(k−1)との加算値が現在の自立系統電圧指令値E* sd.maxとして出力される。
これらの位相角θt及び自立系統電圧指令値E* sd.maxが数式〔数1〕に適用されて自立系統電圧指令値e* sdが定められ、自立電圧制御部23Aに入力される。尚、商用系統電圧の最大値Euw.max及び自立系統電圧の最大値Esd.maxは、商用系統周期Tuwを基準として以下の数式〔数2〕で算出される。
運転モード切替部(運転モード切替スイッチSw)22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が、以下の数式〔数3〕で示されるように所定の閾値以下になると、系統連系運転制御部による系統連系運転制御に切り替えるように構成されている。
運転モード切替部22は、数式〔数3〕を満たすと整合していると判定して、その制御状態を維持して、つまり瞬時に系統連系運転制御部21による系統連系運転制御に切り替えるべく、系統連系リレーSGridをオンする。尚、xは、0<x<1の任意の値に設定可能であり、本実施形態ではx=0.03、つまり系統周波数fuwの±3%の範囲に設定されている。
即ち、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数との整合状態を、各振幅の差分、各位相の差分及び各周波数の差分で評価し、その値に閾値を設けることにより、系統連系までの時間を短くしながらもLCフィルタのコンデンサへの突入電流を効果的に抑制することができるようになる。
また、図4のフローチャートで説明したように、運転モード切替部22は、インバータ2Aの出力電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障と判定する故障判定部を備え、故障していると判断されると系統連系運転制御に移行しないので、万一の重大な事態の発生も効果的に回避することができるようになる。
以上説明したように、本発明による系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法は、直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータの出力から高調波成分を除去するLCフィルタを備えた系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法であって、商用系統と連系してインバータを制御する系統連系運転制御ステップと、商用系統と切り離してインバータを制御する自立運転制御ステップと、を含み、前記自立運転制御ステップを起動した後に前記自立運転制御ステップにおいて前記自立系統電圧の振幅、位相及び周波数を調整して商用系統電圧と整合させる電圧整合ステップを実行し、前記電圧整合ステップで得られた整合状態を維持して前記系統連系運転制御ステップに切り替える運転モード切替ステップと、を備えている。
また、運転モード切替ステップは、電圧整合ステップで自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると、系統連系運転制御ステップに切り替えるように構成されている。
そして、運転モード切替ステップは、インバータと商用系統とを接続する系統連系リレーを挟む両側の交流電圧の振幅、位相及び周波数の各差分が所定の閾値以下になると整合状態に到ったと判断して、系統連系リレーの接点を接続するように構成されている。
さらに、運転モード切替ステップは、自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に故障判定カウンタを更新して、自立系統電圧の振幅、位相及び周波数を商用系統電圧と整合する処理を繰返し、前記故障判定カウンタの値が所定値になると故障と判定する故障判定ステップを備えている。
図5には、図4に示す制御フローチャートに従って運転モード切替部を動作させた実験結果の特性図が示されている。系統連系リレーSGridがオンされた直後にスムーズに系統連系運転が行なわれ、逆潮流電流ispが徐々に増大する状態が示されている。本発明によれば、系統連系リレーSGridをオンする瞬間に逆潮流電流ispにスパイク状の突入電流が発生しないことが確認された。また、商用系統電圧の振幅、位相及び周波数を整合する制御方式を導入することにより、商用系統電圧euwと自立系統電圧esdとの位相差が無くなることが確認された。
尚、運転モード切替ステップは、自立系統電圧の振幅、位相及び周波数と商用系統電圧の振幅、位相及び周波数の各差分の何れかが所定時間経過しても所定の閾値以下にならない場合に、直ちに故障と判定する故障判定ステップを備えていてもよい。
上述した実施形態は、蓄電ハイブリッドパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置について説明したが、電力貯蔵装置BATを備えていないパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能であることはいうまでもない。また、太陽電池パネル以外の直流発電装置、例えば風力発電装置を備えたパワーコンディショナに組み込まれた系統連系インバータ装置であっても本発明が適用可能である。
上述の各実施形態は本発明による系統連系インバータ装置及び系統連系インバータ装置の系統連系運転起動方法の一例に過ぎず、各構成ブロックの具体的な構成(ハードウェアやソフトウェア)や各種の数値等は本発明による作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することも可能であることはいうまでもない。
2:系統連系インバータ装置
2A:インバータ
2B:インバータ制御装置
2C:LCフィルタ
21:系統連系運転制御部
22:運転モード切替部
23:自立運転制御部